JP2013026478A - リアクトル - Google Patents

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Abstract

【課題】少なくとも一部が成形硬化体の磁性コアを備えるリアクトルにおいて、その成形硬化体とケースとの密着力を確保しながら、成形硬化体に割れが発生し難いリアクトルを提供する。
【解決手段】リアクトル1Aは、筒状のコイル2と、コイル2の励磁により閉磁路を形成する磁性コアと、コイル2と磁性コア3との組合体を収納するケース4Aとを備える。このリアクトル1Aの磁性コア3は、コイル2の外周の少なくとも一部を覆い、かつケース4Aに接触する外側コア部32を有する。この外側コア部32は、磁性粉末が分散された樹脂を硬化させた成形硬化体からなる。ケース4Aの内面のうち外側コア部32と接触する箇所の少なくとも一部に凹凸を有し、この凹凸の最大高さが1mm以下である。
【選択図】図1

Description

本発明は、車載用DC-DCコンバータといった電力変換装置の構成部品などに用いられるリアクトル、リアクトルを備えるコンバータ、及びコンバータを備える電力変換装置に関する。特に、コイルとコアとをケースに収納したリアクトルにおいて、コアの一部をケース内の収納物が脱落しにくいリアクトルに関する。
電圧の昇圧動作や降圧動作を行う回路の部品の一つにリアクトルがある。例えば、ハイブリッド自動車などの車両に載置されるコンバータに利用されるリアクトルとして、O字状といった環状の磁性コアの外周に、巻線を螺旋状に巻回してなる一対のコイルが並列に配置された形態が挙げられる(特許文献1)。このリアクトルでは、コイルと磁性コアとの組合体をケースに収納し、そのケースと組合体の間に樹脂を充填した構成が挙げられている。そして、ケースの内面に凹凸を設けることで、樹脂ごと組合体がケースから脱落することを防止している。
一方、コイルを一つのみ備える小型なリアクトルがある(特許文献2)。このリアクトルは、いわゆるポット型コアを備え、特許文献2の図1に示すように、コイルの内周に配置される円柱状の内側コア部と、このコイルの外周に配置される中空円筒状の円筒コア部と、コイルの両端部を覆って内側コア部と円筒コア部とを連結する円板コア部とを備える。円筒コア部と円板コア部の具体例としては、軟磁性粉末と流動性の樹脂との混合流体を成形し、その樹脂を硬化させた成形硬化体が挙げられる。
特開2010-034228号公報 特開2009-033051号公報
磁性コアの少なくとも一部に成形硬化体を用いた場合、混合流体を硬化させた成形硬化体とケースとの十分な密着性を確保できないと、特許文献1のリアクトルと同様に、ケース内の収納物(コイル、内側コア部及び成形硬化体)がケース内から脱落する虞がある。
また、成形硬化体は、それ自体が磁性コアの一部を構成するため、僅かな割れなどが生じても、リアクトルのインダクタンスに影響を及ぼしてしまう。そのため、成形硬化体に割れ等の欠陥が生じ難いリアクトルの構成が求められる。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的の一つは、少なくとも一部が成形硬化体の磁性コアをケースに収納したリアクトルにおいて、その成形硬化体とケースとの密着力を確保しながら、成形硬化体に割れが発生し難いリアクトルを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、上記リアクトルを備えるコンバータ、このコンバータを備える電力変換装置を提供することにある。
本発明者は、少なくとも一部を成形硬化体とする磁性コアをコイルと共にケース内に収納したリアクトルについて、ケースとケース内の収納物との密着性を改善するため、ケースの内側に凹凸を設けることを試みた。その結果、ケース内に複数の比較的大きな突起(数mm以上の突出量)を設けたところ、突起の角部に対応する成形硬化体に応力が集中し易く、その集中箇所に割れが生じる場合があることが判明した。特に、成形硬化体の樹脂をエポキシ樹脂のような高硬度な樹脂とした場合、割れが生じ易い傾向がある。一方、ケース内面で成形硬化体に接する箇所に所定の粗面を形成し、その箇所に大きな角部を設けないようにすることで、ケースとケース内の収納物との密着性を確保しつつ成形硬化体の割れを抑制できるとの知見を得た。本発明は、これらの知見に基づいてなされたもので、下記の構成を規定する。
本発明のリアクトルは、筒状のコイルと、このコイルの励磁により閉磁路を形成する磁性コアと、前記コイルと前記磁性コアとの組合体を収納するケースとを備える。このリアクトルの磁性コアは、前記コイルの外周の少なくとも一部を覆い、かつケースに接触する外側コア部を有する。この外側コア部は、磁性粉末が分散された樹脂を硬化させた成形硬化体からなる。そして、前記ケースの内面のうち前記外側コア部と接触する箇所の少なくとも一部に凹凸を有し、この凹凸の最大高さが1mm以下である。
この構成によれば、ケースの内面に設けた凹凸の最大高さを規定することで、樹脂のみの場合に比べて割れの発生し易い成形硬化体であっても、割れの発生を効果的に抑制できる。また、ケース内面の所定箇所に凹凸を設けることで、成形硬化体とケースとの密着力も十分に確保できる。
本発明リアクトルの一形態として、前記ケースの内面のうち前記外側コア部と接触する箇所の面積比で50%以上の領域に前記凹凸を有することが挙げられる。
この構成によれば、ケースと成形硬化体との間に密着力の高い箇所を十分に確保することができ、ケースに蓋がない場合であっても、ケース内の収納物が脱落することを抑制できる。
本発明リアクトルの一形態として、前記ケースは、熱伝導率が100W/m・K以上の材料であって、非磁性の導電材料から構成されていることが挙げられる。
この構成によれば、ケースを所定の熱伝導率の材料で構成することにより、高い放熱性を有するリアクトルとできる。また、ケースの材料が非磁性の導電材料から構成されていることで、ケースを磁気シールドとして利用でき、漏れ磁束を低減することができる。
本発明リアクトルの一形態として、前記ケースは開口部を有し、その開口部を覆う蓋をさらに備えることが挙げられる。この形態において、前記外側コア部は蓋に接触し、前記蓋の内面のうち前記外側コア部に接触する箇所の少なくとも一部に前記凹凸を有する。
この構成によれば、蓋を設けることで、ケース内の収納物の脱落を確実に防止できる。加えて、蓋の内面にも所定の凹凸を設けることで、成形硬化体をケースの内面のみならず蓋に対しても十分に密着させることができ、蓋を介しての効率的な放熱が期待できる。
本発明コンバータは、スイッチング素子と、前記スイッチング素子の動作を制御する駆動回路と、スイッチング動作を平滑にするリアクトルとを備え、前記スイッチング素子の動作により、入力電圧を変換する。このコンバータにおいて、前記リアクトルは、上記の本発明リアクトルである。
この構成によれば、動作時の熱履歴に対して成形硬化体をケースに密着させられ、かつ成形硬化体での割れの発生を抑制可能なコンバータとできる。
本発明電力変換装置は、入力電圧を昇降圧するコンバータと、前記コンバータに接続されて、直流と交流とを相互に変換するインバータとを備え、このインバータで変換された電力により負荷を駆動するため装置である。この電力変換装置において、前記コンバータは、上記の本発明コンバータである。
この構成によれば、動作時の熱履歴に対して成形硬化体をケースに密着させられ、かつ成形硬化体での割れの発生を抑制可能な電力変換装置とできる。
本発明のリアクトルは、成形硬化体とケースとの密着力を確保しながら、成形硬化体に割れが発生し難い。
本発明のコンバータや本発明の電力変換装置は、本発明のリアクトルを備えることで、ケースから成形硬化体が脱落し難く、かつ成形硬化体に割れが発生し難い。
実施形態1に係る本発明リアクトルの透視斜視図である。 実施形態1に係る本発明リアクトルを示し、(A)は図1のA-A断面図、(B)はB-B断面図である。 実施形態2に係る本発明リアクトルを示し、(A)は縦断面図、(B)は横断面図である。 (A)は実施形態3に係る本発明リアクトルの透視斜視図、(B)は同斜視図のB-B断面図である。 ハイブリッド自動車の電源系統を模式的に示す概略構成図である。 本発明コンバータを備える本発明電力変換装置の一例を示す概略回路である。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を具体的に説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。
[実施形態1]
図1、図2を参照して、実施形態1のリアクトル1Aを説明する。リアクトル1Aは、巻線2wを巻回してなる一つのコイル2と、コイル2の内外に配置されて閉磁路を形成する磁性コア3と、コイル2と磁性コア3との組合体を収納するケース4Aとを備える。リアクトル1Aの特徴とするところは、磁性コアの一部を、磁性粉末が分散された樹脂を硬化させた成形硬化体で構成し、ケースの内面に所定の凹凸を形成したことにある。以下、各構成を詳細に説明する。
〔コイル2〕
コイル2は、1本の連続する巻線2wを螺旋状に巻回してなる筒状体である。巻線2wは、銅やアルミニウム、その合金といった導電性材料からなる導体の外周に、絶縁性材料からなる絶縁被覆を備える被覆線が好適に利用できる。導体は、横断面形状が長方形である平角線、円形状である丸線、多角形状である異形線などの種々の形状のものを利用できる。絶縁被覆を構成する絶縁性材料は、ポリアミドイミドといったエナメル材料が代表的である。絶縁被覆の厚さは、20μm以上100μm以下が好ましく、厚いほどピンホールを低減でき、絶縁性を高められる。例えば、エナメル材料を多層に塗布して絶縁被覆を形成すると、絶縁被覆の厚さを厚くできる。また、絶縁被覆は、異なる材質の多層構造とすることもできる。例えば、ポリアミドイミド層の外周にポリフェニレンスルフィド層を備える多層構造が挙げられる。多層構造の絶縁被覆も電気絶縁性に優れる。巻き数(ターン数)は適宜選択でき、30〜70程度のものが車載部品に好適に利用することができる。
ここでは、コイル2は、導体が銅製で、横断面形状が長方形状の平角線(アスペクト比:幅/厚さが5以上、好ましくは10以上)からなり、絶縁被覆がエナメルからなる被覆平角線をエッジワイズ巻きにして形成されたエッジワイズコイルとしている(例えば、巻き数:50)。
《端面形状》
図2(B)は、リアクトル1Aをコイル2の軸方向に直交する平面で切断した断面図である。コイル2は、その軸方向の断面形状が一様であり、端面形状と等しい。コイル2の端面形状は、図2(B)に示すように円形である。その他、コイル2の端面形状は、並行配置された一対の直線部と、両直線部の端部同士を繋ぐように配置された一対の半円弧部とから構成されるレーストラック状であっても良い。
《配置》
このコイル2は、その内周に磁性コア3の一部(内側コア部31)が挿入された状態でケース4A内に収納されている。特に、本発明のリアクトル1Aでは、当該リアクトル1Aを冷却台といった設置対象(図示略)に設置したとき、コイル2の軸方向が当該設置対象の表面に平行するようにケース4Aに収納された横型配置である。ここで、リアクトル1Aでは、設置対象に接触する設置面が平面で構成されたケース4Aの外底面40o(図2)であることから、コイル2は、外底面40oに平行にケース4Aに収納されている。また、コイル2の端面形状がレーストラック状の場合、その外周面において直線部がつくる平面領域がケース4Aの外底面40oに平行となるようにコイルを配置する。端的に言うと、コイル2は、ケース4Aに対して横長に収納すればよい。
また、コイル2は、その外周面のほぼ全周が磁性コア3(外側コア部32)に覆われている。但し、コイル2の外周面の一部がケースの内底面に接触したり、外側コア部の表面に接したりして、コイル周方向の一部が磁性コアに覆われていない箇所を備えていても良い。
《巻線端部の処理》
コイル2を形成する巻線2wは、ターン形成部分から適宜引き延ばされて外側コア部32の外部に引き出された引出箇所を有し、その両端部の絶縁被覆が剥がされて露出された導体部分に、銅やアルミニウムなどの導電性材料からなる端子部材(図示せず)が接続される。この端子部材を介して、コイル2に電力供給を行う電源などの外部装置(図示せず)が接続される。巻線2wの導体部分と端子部材との接続には、TIG溶接などの溶接、圧着などが利用できる。図1に示す例では、コイル2の軸方向に直交するように巻線2wの両端部を上方に引き出しているが、両端部の引き出し方向は適宜選択することができる。例えば、巻線2wの両端部をコイル2の軸方向に平行するように引き出してもよいし、各端部の引き出し方向をそれぞれ異ならせることもできる。
上記引出箇所のうち、少なくとも磁性コア3(特に外側コア部32)に接触する可能性がある箇所には、絶縁紙や絶縁性テープ(例えば、ポリイミドテープ)、絶縁フィルム(例えば、ポリイミドフィルム)などの絶縁材を配置したり、絶縁材をディップコーティングしたり、絶縁性チューブ(熱収縮チューブや常温収縮チューブなど)によって覆ったりすることが好ましい。ここで、例えば、巻き数:50ターンのコイルに電圧を印加したとき、ターン間電圧が12V〜14V程度であっても、引出箇所には600V〜700V程度の電圧が加わる場合がある。従って、上記引出箇所のうち、少なくとも磁性コア3との接触部分を絶縁材で覆っておくことで、当該引出箇所と外側コア部32との間の絶縁を確保することができる。
〔磁性コア3〕
磁性コア3は、図1に示すようにコイル2内に挿通された柱状の内側コア部31と、内側コア部31の少なくとも一方の端面、及びコイル2の筒状の外周面の少なくとも一部を覆うように形成された外側コア部32とを備え、コイル2を励磁した際に閉磁路を形成する。本例では、内側コア部31の構成材料と、外側コア部32の構成材料とが異なっており、磁性コア3は、部分的に磁気特性が異なる。具体的には、内側コア部31は、外側コア部32よりも飽和磁束密度が高く、外側コア部32は、内側コア部31よりも透磁率が低い。
《内側コア部31》
内側コア部31は、コイル2の内周形状に沿った外形を有する円柱体である。内側コア部31は、その全体が圧粉成形体から構成され、ここでは、ギャップ材やエアギャップが介在していない中実体としているが、アルミナ板などの非磁性材料からなるギャップ材やエアギャップが介在した形態とすることができる。
圧粉成形体は、代表的には、表面にシリコーン樹脂などからなる絶縁被膜を備える軟磁性粉末や、この軟磁性粉末に加えて適宜結合剤を混合した混合粉末を成形後、上記絶縁被膜の耐熱温度以下で焼成することにより得られる。圧粉成形体の作製にあたり、軟磁性粉末の材質や、軟磁性粉末と結合剤との混合比、絶縁被膜を含む種々の被膜の量などを調整したり、成形圧力を調整したりすることで飽和磁束密度を変化させることができる。例えば、飽和磁束密度の高い軟磁性粉末を用いたり、結合剤の配合量を低減して軟磁性材料の割合を高めたり、成形圧力を高くしたりすることで、飽和磁束密度が高い圧粉成形体が得られる。
上記軟磁性粉末は、Fe,Co,Niなどの鉄族金属、Feを主成分とするFe基合金、例えばFe-Si,Fe-Ni,Fe-Al,Fe-Co,Fe-Cr,Fe-Si-Alなどといった鉄基材料からなる粉末、希土類金属粉末、フェライト粉末などが挙げられる。特に、鉄基材料は、フェライトよりも飽和磁束密度が高い磁性コアを得易い。軟磁性粉末に形成される絶縁被膜は、例えば、燐酸化合物、珪素化合物、ジルコニウム化合物、アルミニウム化合物、又は硼素化合物などが挙げられる。この絶縁被覆は、特に磁性粉末を構成する磁性粒子が鉄族金属やFe基合金といった金属からなる場合に備えると、渦電流損を効果的に低減できる。結合剤は、例えば、熱可塑性樹脂、非熱可塑性樹脂、又は高級脂肪酸が挙げられる。この結合剤は、上記焼成により消失したり、シリカなどの絶縁物に変化したりする。圧粉成形体は、磁性粒子間に絶縁被膜などの絶縁物が存在することで、磁性粒子同士が絶縁されて渦電流損失を低減でき、コイルに高周波の電力が通電される場合であっても、上記損失を低減することができる。圧粉成形体は、公知のものを利用することができる。
ここでは、内側コア部31は、絶縁被膜などの被膜を備える軟磁性材料からなる圧粉成形体から構成されており、飽和磁束密度が1.6T以上、かつ外側コア部32の飽和磁束密度の1.2倍以上である。また、内側コア部31の比透磁率は例えば100〜500であり、内側コア部31及び外側コア部32からなる磁性コア3全体の比透磁率は例えば10〜100である。一定の磁束を得る場合、内側コア部31の飽和磁束密度の絶対値が高いほど、また、内側コア部31の飽和磁束密度が外側コア部よりも相対的に大きいほど、内側コア部31の断面積を小さくできる。そのため、内側コア部31の飽和磁束密度が高い形態は、リアクトルの小型化に寄与することができる。内側コア部31の飽和磁束密度は、1.8T以上、更に2T以上が好ましく、外側コア部32の飽和磁束密度の1.5倍以上、更に1.8倍以上が好ましく、いずれも上限は設けない。なお、圧粉成形体に代えて、珪素鋼板に代表される電磁鋼板の積層体を利用すると、内側コア部の飽和磁束密度を更に高め易い。
図1に示す例では、内側コア部31におけるコイル2の軸方向の長さ(以下、単に長さと呼ぶ)がコイル2の長さよりも長い。そして、コイル2内に挿通配置された状態において内側コア部31の両端面及びその近傍がコイル2の各端面からそれぞれ突出している。内側コア部31の突出長さは適宜選択することができる。ここでは、内側コア部31においてコイル2の各端面からそれぞれ突出する突出長さを等しくしているが、異ならせてもよいし、コイル2のいずれか一方の端面からのみ突出部分が存在するように内側コア部を配置することができる。また、内側コア部の長さとコイルの長さとが等しい形態、内側コア部の長さがコイルの長さよりも短い形態とすることもできる。内側コア部の長さがコイルの長さと同等以上である場合、この例に示すように、内側コア部の各端面がそれぞれコイルの各端面から突出した形態の他、内側コア部の各端面とコイルの各端面とがそれぞれ面一である形態、或いは、内側コア部の一端面がコイルの一端面に面一で、内側コア部の他端面がコイルの他端面から突出した形態であると、低損失にすることができる。上述のいずれの形態にしても、コイル2を励磁したときに内側コア部31を通る閉磁路が形成されるように外側コア部32を備えるとよい。
本発明のリアクトル1Aでは、上述のように横型配置であることから、リアクトル1Aを設置対象に固定したとき、内側コア部31もコイル2の配置形態に則って横長に配置される。
また、コイル2と内側コア部31との間の絶縁性をより高めるために、内側コア部31とコイル2との間に絶縁材(図示略)を介在させてもよい。絶縁材は、例えば、コイル2の内周面や内側コア部31の外周面に、絶縁性テープを貼り付けたり、絶縁紙や絶縁シートを配置したりすることが挙げられる。また、内側コア部31の外周に、絶縁性材料からなるボビン(図示せず)を配置してもよい。ボビンは、内側コア部31の外周を覆う筒状体からなる形態、この筒状体と筒状体の両端に設けられたフランジ部(代表的には環状)とを備える形態などが挙げられる。ボビンの構成材料には、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂などの絶縁性樹脂が好適に利用できる。また、ボビンは、分割片を組み合せて筒状となる形態とすると、内側コア部31の外周に配置し易い。
《外側コア部32》
外側コア部32は、内側コア部31と組み合わされることで、閉磁路を構成する。本例では、コイル2の両端面、コイル2の外周面の実質的に全て、及び内側コア部31の両端面及びその近傍を覆うように形成されており、以下のような断面形状を有する。リアクトル1Aにおいてコイル2が存在する領域について、縦断面(図2(A))、横断面(図2(B))及び水平断面(コイル2の軸を通り、ケース4Aの外底面40oに平行な平面で切断した断面)をとった場合、各断面形状がいずれも環状である。外側コア部32の一部が内側コア部31の両端面を連結するように設けられていることで、磁性コア3は閉磁路を形成する。
外側コア部32は、閉磁路が形成できればよく、その形状(コイル2の被覆領域)は特に問わない。例えば、コイル2の外周の一部が外側コア部により覆われていない形態を許容する。この形態は、例えば、コイル2の外周面においてケース4Aの開口側領域が外側コア部に覆われず露出された形態が挙げられる。或いは、ケース4Aの内底面40iにコイルを外周から支持する台座(図示略)を設け、台座とコイルとの間には外側コア部が介在されない形態や、コイルの外周面がケース4Aの少なくとも一方の側壁41に接し、その接触箇所には外側コア部が介在されない形態が挙げられる。
ここでは、外側コア部32は、その全体が磁性粉末と樹脂とを含む混合物(成形硬化体)により形成され、内側コア部31と外側コア部32とは接着剤を介在することなく、外側コア部32の構成樹脂により接合されている。また、外側コア部32もギャップ材やエアギャップが介在していない形態としている。従って、磁性コア3は、その全体に亘ってギャップ材を介することなく一体化された一体化物である。
また、外側コア部32は、コイル2と内側コア部31とをケース4Aに封止していることから、コイル2と内側コア部31との封止材としても機能する。従って、リアクトル1Aは、外側コア部32により、コイル2や内側コア部31を外部環境から保護したり、機械的保護の強化を図ったりすることができる。
成形硬化体は、代表的には、射出成形、注型成形により形成することができる。射出成形は、通常、磁性材料からなる粉末と流動性のある樹脂とを混合し、この混合流体を、所定の圧力をかけて成形型(ここではケース4A)に流し込んで成形した後、上記樹脂を硬化させる。注型成形は、射出成形と同様の混合流体を得た後、この混合流体を、圧力をかけることなく成形型に注入して成形・硬化させる。
いずれの成形手法も、磁性粉末には、上述した内側コア部31に利用する軟磁性粉末と同様のものを利用することができる。特に、外側コア部32に利用する軟磁性粉末は、純鉄粉末やFe基合金粉末といった鉄基材料からなるものが好適に利用できる。材質の異なる複数種の磁性粉末を混合して用いてもよい。軟磁性材料(特に金属材料)からなる磁性粒子の表面に燐酸塩などからなる絶縁被膜を備える被覆粉末を利用してもよい。被覆粉末を利用すると、渦電流損を低減できる。磁性粉末は、平均粒径が1μm以上1000μm以下、更に10μm以上500μm以下の粉末が利用し易い。粒径が異なる複数種の粉末を利用すると、飽和磁束密度が高く、低損失なリアクトルが得られ易い。
また、上記いずれの成形手法も、バインダとなる樹脂には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂が好適に利用できる。熱硬化性樹脂を用いた場合、成形体を加熱して樹脂を熱硬化させる。バインダとなる樹脂に常温硬化性樹脂、或いは低温硬化性樹脂を用いてもよく、この場合、成形体を常温〜比較的低温に放置して樹脂を硬化させる。成形硬化体は、非磁性材料である樹脂が比較的多く存在するため、内側コア部31を構成する圧粉成形体と同じ軟磁性粉末を用いた場合でも、圧粉成形体よりも飽和磁束密度が低く、かつ透磁率も低いコアを形成し易い。
成形硬化体の構成材料に磁性粉末及びバインダとなる樹脂に加えて、アルミナやシリカといったセラミックスからなるフィラーを混合させてもよい。磁性粉末に比較して比重が小さい上記フィラーを混合することで、磁性粉末の偏在を抑制して、全体に磁性粉末が均一的に分散した外側コア部を得易い。また、上記フィラーが熱伝導性に優れる材料から構成される場合、放熱性の向上に寄与することができる。上記フィラーを混合する場合、フィラーの含有量は、成形硬化体を100質量%とするとき、0.3質量%以上30質量%以下が挙げられ、磁性粉末とフィラーとの合計含有量は、外側コア部を100体積%とするとき、20体積%〜70体積%が挙げられる。また、フィラーを磁性粉末よりも微粒とすると、フィラーを磁性粒子間に介在させて、偏在を効果的に防止して、磁性粉末を均一的に分散できる上に、フィラーの含有による磁性粉末の割合の低下を抑制し易い。
なお、リアクトル1Aのように横型配置で、かつコイル2がケース4Aの内底面40iに近接した状態でケース4Aに収納されている場合、成形硬化体の製造途中、磁性粉末がケース4Aの底面40側に沈降し、底面40側に磁性粉末が偏在した外側コア部となることがある。しかし、この場合でも、外側コア部のうち磁性粉末が高密度な領域が内側コア部31に接した状態に容易にできることから、閉磁路を十分に形成できる。
ここでは、外側コア部32は、平均粒径100μm以下の鉄基材料からなる粒子の表面に上記被膜を備える被覆粉末とエポキシ樹脂との成形硬化体から構成され、比透磁率:5〜30、飽和磁束密度:0.5T以上内側コア部31の飽和磁束密度未満である。外側コア部32の透磁率を内側コア部31よりも低くすることで、磁性コア3の漏れ磁束を低減したり、ギャップレス構造の磁性コア3としたりすることができる。成形硬化体の透磁率や飽和磁束密度は、磁性粉末とバインダとなる樹脂との配合を変えることで調整することができる。例えば、磁性粉末の配合量を減らすと、透磁率が低い成形硬化体が得られる。各コア部31,32の飽和磁束密度や比透磁率は、各コア部31,32から作製した試験片を用意し、市販のB-HカーブトレーサーやVSM(試料振動型磁力計)などを用いることで測定することができる。
〔ケース4A〕
ケース4Aは、代表的には、図1、図2に示すように矩形状の底面40と、底面40から立設される四つの側壁41とで構成される直方体状の箱体であり、底面40との対向面が開口したものが挙げられる。このケース4Aは、成形硬化体の外側コア部32を成形する際の金型、コイル2と磁性コア3との組合体を収納する容器、及び放熱経路として利用される。従って、ケース4Aの構成材料は、熱伝導性に優れる材料、好ましくは鉄などの磁性材料よりも熱伝導率が高い材料、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金といった金属を好適に利用することができる。これらアルミニウムやマグネシウム、その合金は、軽量であることから、軽量化が望まれる自動車部品の構成材料にも好適である。また、これらアルミニウムやマグネシウム、その合金は、非磁性材料で、かつ導電性材料でもあることから、ケース4A外部への漏れ磁束も効果的に防止できる。ここでは、ケース4Aは、アルミニウム合金から構成している。
このケースの内面には、多数の微細な凹凸が形成されている(図2(A)の一点鎖線の円内の拡大部を参照)。この凹凸は、ケース内面と成形硬化体との接触面積を増大させることで両者の密着力を高めながら、成形硬化体に割れが生じることを抑制できるようなサイズ・形状とする。
具体的には、最大高さ(凹部と凸部との最大高低差)が1mm以下、好ましくは0.5mm以下とすること挙げられる。このようなサイズとすることで、混合流体の樹脂が硬化する際に樹脂が収縮してもケースから剥離し難く、かつ成形硬化体に割れが生じることを抑制できる。この凹凸のサイズの下限としては、ケース内面と成形硬化体の密着性を確保する必要上、最小高さが0.05mm以上の凹凸を有することが好ましい。
一方、凹凸の形状としては、微細な凹凸の表面が湾曲面で構成され、実質的に角がない形状が好ましい。角がない湾曲面で表面が構成される凹凸とすることで、成形硬化体に割れが生じることを効果的に抑制できる。
より具体的な凹凸の形態としては、図2(A)に示すように、湾曲面で構成された波形の凹凸とすることが挙げられる。特に、ケース側壁の高さ方向に複数の突条が並列されたような波形であれば、ケース内の収納物の脱落防止に効果的である。その他、多数の山型突起がケース内面に形成された凹凸としても良い。
凹凸を形成する箇所は、ケース内面のうち、成形硬化体と接触する箇所の少なくとも一部、好ましくは面積比で50%以上、より好ましくは80%以上の領域とすることが挙げられる。このような領域に微細な凹凸を形成することで、ケース内面と成形硬化体の密着性を確保することができる。本例では、ケース内面の全面に凹凸を形成している。
この凹凸を設けるための粗面化処理には、ショットブラストやサンドブラスト、水酸化ナトリウムによる艶消し処理、やすり掛け、研削などの他、ケース4Aがアルミニウムやその合金で構成されている場合には、アルマイト処理などを利用することができる。
ケース4Aの底面40は、図2(B)に示すように、水冷台といった設置対象への設置面となる外底面40oと、コイルと磁性コアとの組合体に対向される内底面40iとを備える。外底面40oは平面であることが好ましいが、設置対象の表面が非平面であれば、その非平面に応じた形状の凹凸面であっても良い。内底面40iは平面の他、コイル2の外周面の一部を支持する台座(図示略)を備えても良い。この台座は、例えば、コイル外周面に適合する凹状の湾曲面を内底面40iと一体に形成することが挙げられる。このような湾曲面は、ケース内でのコイル2の位置決め部としても機能する。その湾曲面の表面は上述した微細な凹凸が形成されていなくても良い。それにより、コイル2の絶縁被覆の損傷を抑制できる。
ケース4Aの内底面40iに湾曲面を有していない場合、コイル2をケース4A内に位置決めし易いように、位置決め部材(図示せず)を別途配置してもよい。この位置決め部材は、例えば、外側コア部32の構成材料と同様の材料からなる成形硬化体とすると、外側コア部32の形成時に容易に一体化できる上に、当該別部材を磁路に利用することができる。或いは、位置決め部材を放熱性に優れる材料で構成すると、放熱性を高められる。
〔その他の構成〕
図1に示す例では、ケース4Aは、リアクトル1Aを設置対象にボルトといった固定部材により固定するためのボルト孔45hを有する取付部45を備える。取付部45を有することで、ボルトなどの固定部材によりリアクトル1Aを設置対象に容易に固定できる。このように複雑な三次元形状のケース4Aは、鋳造や切削加工などにより、容易に製造できる。
コイル2とケース4Aとの間の絶縁性を高めるために、上述した絶縁紙や絶縁性シート、絶縁性テープといった絶縁材を介在させた形態としてもよい。例えば、コイル2の表面に上記絶縁性テープなどを巻回することで、コイル2の内周面及び外周面の双方(コイル2の端面を含んでいてもよい)に絶縁材が存在する形態とすることができる。この絶縁材は、コイル2とケース4Aとの間に求められる最低限の絶縁を確保できる程度に存在すればよく、できるだけ薄くすることで、当該絶縁材の介在による熱伝導性の低下を抑制できる上に、小型化を図ることができる。
或いは、この絶縁材として、絶縁性接着剤を利用することができる。即ち、コイル2とケース4Aとを接着剤により固定する形態とすることができる。この形態は、コイル2とケース4Aとの間の絶縁性を高められる上に、外側コア部32の樹脂成分に係わらず、接着剤によってコイル2をケース4Aに密着できる。上記接着剤は、特に、熱伝導性に優れるもの、例えば、アルミナなどの熱伝導性・電気絶縁性に優れるフィラーを含有するものが好適に利用できる。この接着剤による層の厚さを薄くすると共に多層構造とすると、合計厚さが薄くても電気絶縁性を高められる。また、この接着剤は、シート状のものを利用すると、作業性に優れる。このような接着剤は、市販品を利用することができる。
その他、温度センサや電流センサなどの物理量測定センサ(図示せず)を備える形態とすることができる。この形態では、センサに接続される配線をケースの開口部から引き出す。
〔用途〕
上記構成を備えるリアクトル1Aは、通電条件が、例えば、最大電流(直流):100A〜1000A程度、平均電圧:100V〜1000V程度、使用周波数:5kHz〜100kHz程度である用途、代表的には電気自動車やハイブリッド自動車などの車載用電力変換装置の構成部品に好適に利用することができる。この用途では、直流通電が0Aのときのインダクタンスが、10μH以上2mH以下、最大電流通電時のインダクタンスが、0Aのときのインダクタンスの10%以上を満たすものが好適に利用できると期待される。
〔リアクトルの製造方法〕
リアクトル1Aは、例えば、以下のようにして製造することができる。まず、コイル2、及び圧粉成形体からなる内側コア部31を用意し、コイル2内に内側コア部31を挿入して、コイル2と内側コア部31との組物を作製する。上述のようにコイル2と内側コア部31との間に絶縁材(図示略)を適宜配置させてもよい。また、巻線2wの引出箇所に上述のように絶縁性チューブなどの絶縁材を配置させてもよい。
次に、上記組物をケース4A内に収納する。このケース4A内に、外側コア部32を構成する磁性粉末と樹脂との混合流体を適宜流し込んで、所定の形状に成形した後、樹脂を硬化させることで、外側コア部32を形成できると同時に、リアクトル1A(図1)が得られる。
〔効果〕
リアクトル1Aは、外側コア部32に成形硬化体を用い、ケース4Aの内面で成形硬化体に接する箇所に所定の凹凸を形成することで、ケース4Aとその収納物との密着性を高めることができる。それに伴い、成形硬化体がケースから剥離して両者の間に空隙が形成され、ケース4Aを介した放熱が阻害されることを回避でき、さらには上記密着性の向上により、収納物の脱落を効果的に抑制できる。また、この凹凸を微細な凹凸とすることで、成形硬化体との接触箇所に大きな角部が形成されることを回避し、成形硬化体に割れが生じることを抑制できる。そのため、リアクトル1Aの動作時にインダクタンスが変動したりすることを回避できる。
リアクトル1Aは、コイル2を一つとし、このコイル2の軸方向がケース4Aの外底面40oに平行となるように、当該コイル2がケース4Aに収納された横型配置であることで、嵩が小さく、小型である。
また、リアクトル1Aは、外側コア部32が磁性粉末と樹脂とを含む混合物から構成されていることで、任意の形状の外側コア部32を容易に製造できる。従って、リアクトル1Aは、コイル2の外周面の一部を覆うといった複雑な形状であっても外側コア部32を容易に形成できて、生産性に優れる。その他、上記混合物を利用することで、(1)外側コア部32の磁気特性を容易に変更可能である、(2)外側コア部32が樹脂成分を備えることで、ケース4Aが開口していても、コイル2や内側コア部31における外部環境から保護・機械的保護を図ることができる、といった効果を奏する。
更に、リアクトル1Aは、内側コア部31の飽和磁束密度が外側コア部32よりも高いことで、単一の材質から構成されて、全体の飽和磁束密度が均一的な磁性コアと同じ磁束を得る場合、内側コア部31の断面積(磁束が通過する面)を小さくでき、この点から小型である。また、リアクトル1Aは、コイル2が配置される内側コア部31の飽和磁束密度が高く、かつコイル2の外周面の一部を覆う外側コア部32の透磁率が低いことで、ギャップを省略しても磁気飽和を抑制でき、ギャップの省略により小型である。リアクトル1Aは、磁性コア3の全体に亘ってインダクタンスを調整するためのギャップが存在しないことで、このギャップ箇所での漏れ磁束がコイル2に影響を及ぼすことが無いため、内側コア部31の外周面とコイル2の内周面とを近付けて配置できる。従って、内側コア部31の外周面とコイル2の内周面との間の隙間を小さくでき、この点からも、リアクトル1Aを小型にできる。
その他、リアクトル1Aは、外側コア部32の形成と同時に、外側コア部32の構成樹脂により内側コア部31と外側コア部32とを接合して磁性コア3を形成し、その結果リアクトル1Aを製造できるため、製造工程が少なく生産性に優れる。更に、リアクトル1Aは、ギャップレス構造であることから、ギャップ材の接合工程が不要であり、この点からも生産性に優れる。
[実施形態2]
次に、図3を参照して、実施形態2のリアクトルを説明する。このリアクトル1Bの実施形態1との相違点は、さらに蓋5を設けた点にある。他の構成は、実施形態1と共通であるため、以下の説明は、主にこの相違点について行う。
〔構成〕
蓋5は、ケース4Bの開口部の少なくとも一部を覆う。本例では、ケース開口部のほぼ全面を覆うように蓋5を設けている。ケース4Bの開口部を覆う面積が大きければ外側コア部32の保護や、ケース4B内の収納物の脱落を効果的に抑制できる。ケース4B内の収納物の脱落を抑制するには、少なくとも開口部の対向する箇所に跨るように蓋5を設けることが好ましい。
この蓋5には、成形硬化体に対向する内面に凹凸を設けることが好ましい。この凹凸は、ケース4Bの内面に設けた凹凸と同様の構成とすることが好適である。特に、ケース4Bの内面に設けた凹凸と同様の凹凸とすることで、蓋5と成形硬化体とが接触する場合、両者の密着性を十分に確保することができる。蓋5と成形硬化体との間に空隙が形成される構成であっても良く、その場合は上記凹凸がなくても良い。
コイル2を構成する巻線2wの端部をケース4Bの開口部側に引き出した場合、蓋5には巻線2wの端部の引出口を設ける。この引出口は、貫通孔であっても良いし、蓋5の外周縁から内側に形成される切欠であっても良い。その他、リアクトル1Bに温度センサや電流センサなどの物理量測定センサを設け、そのセンサに接続される配線をケースの開口部から引き出す場合、これら配線用の引出口を蓋5に設ける。この引出口も、貫通孔でも切欠でも構わない。
蓋5の材質は、特に限定されないが、非磁性の導電性材料で構成することが好ましい。成形硬化体は、樹脂成分が多いため、圧粉成形体や積層鋼板の磁性コアに比べれば磁束が漏洩し易い。ケース開口部に非磁性の導電性材料からなる蓋5を設けることで、この漏れ磁束を遮蔽することができる。具体的には、ケース4Bの材質と同様に非磁性金属を蓋5の材質とすることが好適である。本例では、ケース4Bと同様にアルミニウム合金で蓋5を構成している。
蓋5の厚さは、成形硬化体の保護ができ、漏れ磁束の遮蔽が可能な厚さとすることが好ましい。例えば、1〜5mm程度とすることが挙げられる。
蓋5をケース4Bの開口部に対して固定するには、溶接、ボルトを用いた締め付けなどが利用できる。後者の場合、ボルトに螺合される或いは貫通される取付部(図示略)をケース4Bの内側又は外側に突出して設けておくことが好ましい。その他、成形硬化体の構成する樹脂により蓋5を外側コア部32と一体にすることで蓋5の固定を行っても良い。
〔効果〕
蓋5を設けることで、外側コア部32の保護、ケース内の収納物の脱落防止を図ることができる。蓋5の内面に所定の凹凸を設けることで、蓋5を導電性材料で構成した場合、磁束の漏れを防止することができる。
[実施形態3]
図4を参照して、実施形態3のリアクトル1Cを説明する。リアクトル1Cの基本的構成は、上述した実施形態1のリアクトル1Aと同様であり、コイル2と、磁性コア3と、コイル2及び磁性コア3を収納するケース4Cとを備える。磁性コア3は、コイル2に挿通配置された内側コア部31と、コイル2の外周を覆う外側コア部32とを備え、外側コア部32は、磁性体粉末と樹脂とを含有する複合材料で構成されている。また、この複合材料中の気泡の最大径が300μm以下である。リアクトル1Cにおいてリアクトル1Aとの相違点は、コイル2の収納形態にある。以下、この相違点及びその効果を主に説明し、実施形態1と共通するその他の構成及び効果は詳細な説明を省略する。
ケース4Cは、矩形板状の底面40と底面40から立設される矩形枠状の側壁41とを備える。コイル2は、ケース4Cの内底面40iに対して、コイル2の軸が底面40(外底面40o)に垂直になるようにケース4Cに収納されている(以下、この形態を縦型形態と呼ぶ)。また、コイル2に挿通された内側コア部31もその軸が底面40に垂直になるように収納され、内側コア部31の一方の端面31eがケース4Cの内底面40iに接している。外側コア部32は、ケース4Cに収納されたコイル2の外周面と、内側コア部31の一方の端面31eの近傍の外周面と、内側コア部31の他方の端面31e及びその近傍の外周面とを覆う。
このようなケース4Cの内面にも、実施形態1と同様の凹凸が形成されている。
但し、本例では、ケース底面のうち、内側コア部の一方の端面と接触する箇所には上記の凹凸を設けていない。
ケース4C内には、図4(B)に示すようにケース4Cの中間部にコイル2を配置するために、コイル2の位置決め部材(図示せず)を備える。位置決め部材は、ケース4Cに一体に成形された形態でも、外側コア部32を構成する複合材料などで構成した別部材である形態でもよい。内側コア部31の位置決め部材(図示せず。例えば、内底面40iから突出した突起など)も備える形態とすることができる。
縦型形態のリアクトル1Cは、ケース4Cの底面40を小さくできることから、横型形態のリアクトル1Aと比較して設置面積を小さくできる。また、内側コア部31は、その端面31eをケース4Cに対する接触面とすることでケース4Cに対する安定性に優れる。
縦型形態のリアクトル1Cも、横型形態のリアクトル1Aと同様にして製造することができる。
本例のリアクトル1Cでも、ケース4Cの内面の凹凸により、同内面と外側コア部との密着性を確保することができ、かつ外側コア部32での割れの発生を抑制できる。ケース4Cの底面のうち、内側コア部31の一方の端面と接触する箇所には上記の凹凸を設けないことで、圧粉成形体の内側コア部31を構成する被覆軟磁性粉末の絶縁被覆が損傷することを抑制できる。その他、この実施形態3においても、実施形態2と同様の蓋を設けても良い。
[変形例]
実施形態1〜3では、成形硬化体からなる外側コア部内にコイルを埋設したが、このコイルを内側樹脂部で予め成形したコイル成形体(図示略)を用い、このコイル成形体を外側コア部内に埋設する構成としても良い。コイルをコイル成形体とした点が他の実施形態との相違点であるため、以下に説明は主としてこの相違点について行う。
コイル成形体は、コイルの軸方向の長さを内側樹脂部により保持した構成である。特に、コイルの軸方向の長さを自由長よりも圧縮した状態に保持したコイル成形体とすることで、小型化できる。内側樹脂部がコイルを覆う領域は、コイルの両端面と外周面の少なくとも一部とすることが挙げられる。さらにコイル内周面の少なくとも一部を内側樹脂部で覆っても良い。コイルの内周面を覆う内側樹脂部の厚さを調整することで、当該樹脂部を内側コア部の位置決めに利用することができる。但し、コイルを構成する巻線の端部は内側樹脂部から露出させておく。
コイル成形体は、コイル内周側に内側コア部を嵌める中空孔が形成された構成でもよいし、コイルと内側コア部とを内側樹脂部により一体に成形した構成でも良い。この場合、コイルと内側コア部との一体物をケースに収納し易い。このようにコイル成形体は、コイルを取り扱い易く、コイルの軸方向の長さを短くできる。コイル成形体における内側樹脂部の厚さは、例えば、1mm〜10mm程度が挙げられる。
コイル成形体の製造には、例えば、特開2009-218293号公報に記載される製造方法を利用することができる。成形には、射出成形やトランスファー成形、注型成形が挙げられる。
内側樹脂部の樹脂は、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂やPPS樹脂、LCPなどの熱可塑性樹脂が好適に利用できる。これら樹脂に、窒化珪素、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ほう素、及び炭化珪素から選択される少なくとも1種のセラミックスからなるフィラーを混合したものを利用すると、放熱性を高められる。
コイル成形体を用いることで、コイルを伸縮の抑制された部品として取り扱うことができ、リアクトルの製造性に優れる。特に、内側コア部とコイルとを一体化したコイル成形体であれば、製造時に取り扱う部品点数を少なくでき、より一層リアクトルの製造性に優れる。
[実施形態4]
実施形態1〜3のリアクトルは、例えば、車両などに載置されるコンバータの構成部品や、このコンバータを備える電力変換装置の構成部品に利用することができる。
例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車といった車両200は、図5に示すようにメインバッテリ210と、メインバッテリ210に接続される電力変換装置100と、メインバッテリ210からの供給電力により駆動して走行に利用されるモータ(負荷)220とを備える。モータ220は、代表的には、3相交流モータであり、走行時、車輪250を駆動し、回生時、発電機として機能する。ハイブリッド自動車の場合、車両200は、モータ220に加えてエンジンを備える。なお、図5では、車両200の充電箇所としてインレットを示すが、プラグを備える形態とすることができる。
電力変換装置100は、メインバッテリ210に接続されるコンバータ110と、コンバータ110に接続されて、直流と交流との相互変換を行うインバータ120とを有する。この例に示すコンバータ110は、車両200の走行時、200V〜300V程度のメインバッテリ210の直流電圧(入力電圧)を400V〜700V程度にまで昇圧して、インバータ120に給電する。また、コンバータ110は、回生時、モータ220からインバータ120を介して出力される直流電圧(入力電圧)をメインバッテリ210に適合した直流電圧に降圧して、メインバッテリ210に充電させている。インバータ120は、車両200の走行時、コンバータ110で昇圧された直流を所定の交流に変換してモータ220に給電し、回生時、モータ220からの交流出力を直流に変換してコンバータ110に出力している。
コンバータ110は、図6に示すように複数のスイッチング素子111と、スイッチング素子111の動作を制御する駆動回路112と、リアクトルLとを備え、ON/OFFの繰り返し(スイッチング動作)により入力電圧の変換(ここでは昇降圧)を行う。スイッチング素子111には、FET,IGBTなどのパワーデバイスが利用される。リアクトルLは、回路に流れようとする電流の変化を妨げようとするコイルの性質を利用し、スイッチング動作によって電流が増減しようとしたとき、その変化を滑らかにする機能を有する。このリアクトルLとして、上記実施形態1〜4のリアクトルを備える。放熱性に優れるこれらのリアクトルを備えることで、電力変換装置100やコンバータ110は、放熱性に優れる。
なお、車両200は、コンバータ110の他、メインバッテリ210に接続された給電装置用コンバータ150や、補機類240の電力源となるサブバッテリ230とメインバッテリ210とに接続され、メインバッテリ210の高圧を低圧に変換する補機電源用コンバータ160を備える。コンバータ110は、代表的には、DC-DC変換を行うが、給電装置用コンバータ150や補機電源用コンバータ160は、AC-DC変換を行う。給電装置用コンバータ150のなかには、DC-DC変換を行うものもある。給電装置用コンバータ150や補機電源用コンバータ160のリアクトルに、上記実施形態1〜3のリアクトルと同様の構成を備え、適宜、大きさや形状などを変更したリアクトルを利用することができる。また、入力電力の変換を行うコンバータであって、昇圧のみを行うコンバータや降圧のみを行うコンバータに、上記実施形態1〜3のリアクトルを利用することもできる。
[試験例]
実施形態1に相当するリアクトルで、ケース内面の凹凸の状態が異なる試験モデルを用い、この試験モデルに所定の熱履歴を与えた後、成形硬化体からなる外側コア部の割れの有無、及び外側コア部のケースからの剥がれの有無(密着性)を調べた。ケースの凹凸は、ケース内面の全面に設けている。熱履歴は、-40℃⇔140℃の範囲で100サイクルとした。割れと剥がれの有無は、熱履歴後の試験モデルを目視観察して調べた。各試験モデルのケース内面に形成した凹凸の最大高さと試験結果を表1に示す。なお、試験例4はケース内面に凹凸を実質的に設けていない。
Figure 2013026478
この表から明らかなように、ケース内面に凹凸を設け、その凹凸の最大高さが1.0mm以下の場合、外側コア部に割れがなく、ケースに対する密着性も良好であることがわかる。一方、凹凸の最大高さが2mmの試験例3は割れがあり、凹凸を設けていない試験例4は剥がれが生じている。
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能である。例えば、内側コア部も磁性粉末と樹脂とからなる成形硬化体で構成しても良い。その場合、ケース内にコイル若しくはコイル成形体を収納しておき、ケース内に磁性粉末と樹脂の混合流体を充填することで、内側コア部と外側コア部とを同時に成形すれば良い。
本発明リアクトルは、各種のリアクトル(車載部品、発電・変電設備の部品など)に好適に利用することができる。特に、本発明リアクトルは、ハイブリッド自動車や電気自動車、燃料電池自動車といった車両に搭載されるDC-DCコンバータといった電力変換装置の構成部品に利用することができる。本発明コンバータや本発明電力変換装置は、車載用、発電・変電設備用などの種々の用途に利用することができる。
1A、1B、1C リアクトル
2 コイル 2w 巻線 2c コイル成形体
3 磁性コア 31 内側コア部 31e 端面32 外側コア部
4A、4B、4C ケース 40 底面 40i 内底面 40o 外底面 41 側壁
45 取付部 45h ボルト孔
5 蓋
100 電力変換装置 110 コンバータ 111 スイッチング素子
112 駆動回路
120 インバータ 150 給電装置用コンバータ 160 補機電源用コンバータ
200 車両 210 メインバッテリ 220 モータ 230 サブバッテリ
240 補機類
250 車輪

Claims (6)

  1. 筒状のコイルと、このコイルの励磁により閉磁路を形成する磁性コアと、前記コイルと前記磁性コアとの組合体を収納するケースとを備えるリアクトルであって、
    前記磁性コアは、前記コイルの外周の少なくとも一部を覆い、かつケースに接触する外側コア部を有し、
    この外側コア部は、磁性粉末が分散された樹脂を硬化させた成形硬化体からなり、
    前記ケースの内面のうち前記外側コア部と接触する箇所の少なくとも一部に凹凸を有し、この凹凸の最大高さが1mm以下であることを特徴とするリアクトル。
  2. 前記ケースの内面のうち前記外側コア部と接触する箇所の面積比で50%以上の領域に前記凹凸を有することを特徴とする請求項1に記載のリアクトル。
  3. 前記ケースは、熱伝導率が100W/m・K以上の材料であって、非磁性の導電材料から構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のリアクトル。
  4. 前記ケースは開口部を有し、
    その開口部を覆う蓋をさらに備え、
    前記外側コア部は前記蓋に接触し、
    前記蓋の内面のうち前記外側コア部に接触する箇所の少なくとも一部に前記凹凸を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のリアクトル。
  5. スイッチング素子と、前記スイッチング素子の動作を制御する駆動回路と、スイッチング動作を平滑にするリアクトルとを備え、前記スイッチング素子の動作により、入力電圧を変換するコンバータであって、
    前記リアクトルは、請求項1〜4のいずれか1項に記載のリアクトルであることを特徴とするコンバータ。
  6. 入力電圧を昇降圧するコンバータと、前記コンバータに接続されて、直流と交流とを相互に変換するインバータとを備え、このインバータで変換された電力により負荷を駆動するための電力変換装置であって、
    前記コンバータは、請求項5に記載のコンバータであることを特徴とする電力変換装置。
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