JP2013019430A - 転がり軸受用保持器 - Google Patents

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真一 河田
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Abstract

【課題】軸受の仕様を大きく変更することなく、容易かつ安価に掛り代(ステーク)の剛性を調整可能な転がり軸受用保持器を提供する。
【解決手段】外輪もしくは内輪のいずれか一方および転動体6と非分離一体、または転動体とのみ非分離一体に組み付けられ、軌道溝間を回転する転がり軸受用の保持器8にあって、円筒部8aを備え、当該円筒部の周方向に配された複数のポケット8bに転動体が1つずつ挿入された状態で回転案内され、ポケットは、円筒部の外径側および内径側にそれぞれ開口部86,88を有する貫通孔として形成されており、円筒部には、ポケットの周方向両側に、当該ポケットの外径側の開口部もしくは内径側の開口部を拡張させるための開口拡張手段が備えられ、当該開口拡張手段として、軸方向に沿って溝10を形成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、外輪もしくは内輪のいずれか一方のみが分離可能(換言すれば、他方と転動体および保持器は非分離一体)、または外輪および内輪の双方と分離可能(換言すれば、転動体とのみ非分離一体)となっている転がり軸受の保持器に関し、具体的には、軸受組立時(保持器へ転動体を挿入する際)に、転動体に傷が発生し難い、保持器からの脱落防止技術の改良に関する。
従来から、保持器(そのポケット)に対して挿入した転動体(一例として、玉)の当該ポケットからの脱落防止を図るべく、各ポケットの開口周縁(別の捉え方をすれば、各ポケットを形成する一対の柱部の対向部など)に掛り代(以下、ステークという)を設けた保持器構成(特許文献1参照)や、保持器のポケットへ転動体(一例として、玉)を挿入する際、当該転動体の表面(転動面)に対して傷が生ずることを防止すべく、転動体をポケットへスムーズに導入するための導入部を設けた保持器構成(特許文献2参照)などが知られている。
例えば、外内輪、転動体、保持器を具備し、外輪もしくは内輪のいずれか一方のみが分離可能(換言すれば、他方と転動体および保持器は非分離一体)に組み付けられている転がり軸受において、軌道輪案内方式で使用される保持器(もみぬき一体保持器)にあっても、かかる軸受の組み立て時や分解時などに転動体がポケットから脱落しないように、保持器の外径側(内輪案内方式の場合)もしくは内径側(外輪案内方式の場合)にステークを設けた構成が知られている。
一般的に、ステークはポケットの開口部を挟んで一対をなし、当該開口部を狭めるように突出した構成となっている。この場合、転動体がポケットから脱落することを防止するため、一対のステーク間の距離(これらステークによって狭められた部分の開口径に相当)は、転動体がポケットから落下しようとする際にこれらステークが当該転動体と干渉し、脱落防止が図られるように、転動体直径寸法よりも若干小さく設定されている。
このため、ポケットへの転動体挿入時には、当該転動体の表面(転動面)に沿って一対のステークを押圧し、開口部が拡張(換言すれば、一対のステークが離間)するようにこれらステークを弾性変形させ、これにより転動体をポケットへ挿入することを可能としている。その際、ステークの剛性が大き過ぎると、転動体による押圧時に当該転動体の表面(転動面)に傷を生じさせてしまうため、ステークの厚み(径方向に対する肉厚)や幅(軸方向に対する寸法)などに応じてその剛性を適宜調整しなければならない。
特開2006−250189号公報 特開2007−205535号公報
しかしながら、軸受の仕様(例えば、転動体の数やサイズ(径寸法)の制約など)によっては、転動体の保持器(ポケット)からの脱落防止を図りつつ、転動体に対する損傷防止をも図るために十分な程度までステークの剛性を低減させることが困難となる場合も少なくない。
本発明は、このような課題を解決するためになされており、その目的は、転動体の数やサイズ(径寸法)の制約などといった軸受の仕様を大きく変更することなく、容易かつ安価に掛り代(ステーク)の剛性を調整可能な転がり軸受用保持器を提供することにある。
このような目的を達成するために、本発明に係る転がり軸受用の保持器は、同一の回転軸周りに相対回転可能に対向配置された外輪および内輪と、これら外輪および内輪の対向周面部にそれぞれ形成されて相互に対向する軌道溝間で転動する複数の転動体を備えた転がり軸受において、前記外輪もしくは前記内輪のいずれか一方および前記転動体と非分離一体、または前記転動体とのみ非分離一体に組み付けられ、前記軌道溝間を回転する。かかる転がり軸受用の保持器は、円筒部を備え、当該円筒部の周方向に配された複数のポケットに前記転動体が1つずつ挿入された状態で回転案内され、前記ポケットは、前記円筒部の外径側および内径側にそれぞれ開口部を有する貫通孔として形成されており、前記円筒部には、前記ポケットの周方向両側に、当該ポケットの外径側の開口部もしくは内径側の開口部を拡張させるための開口拡張手段が備えられ、当該開口拡張手段として、軸方向に沿って溝が形成されている。
この場合、前記円筒部には、前記ポケットの周方向両側に、当該ポケットに挿入された前記転動体の脱落を防止するための脱落防止手段が備えられ、当該脱落防止手段として、当該ポケットの外径側の開口部および内径側の開口部の少なくとも一方の周縁部からその開口部を狭めるように対をなす掛り代が当該開口部を挟んで設けられており、前記溝は、前記掛り代よりも前記ポケットに対して周方向の外側に形成されている。
なお、前記円筒部には、外周部よりも拡径方向および内周部よりも縮径方向の少なくとも一方へ突出するとともに、周方向に沿って隣り合う2つの前記ポケット間に亘って周方向へ連続する突出部を設け、当該突出部に対し、前記溝を形成するとともに、前記掛り代を設けることが可能である。
その際、前記対をなす掛り代は、前記ポケットの周方向両側に配される2つの突出部から当該ポケットの外径側の開口部および内径側の開口部の少なくとも一方を狭めるようにそれぞれ1つずつ突設し、その開口部を挟んで対向させればよい。
以上のような転がり軸受用保持器は、例えば、前記溝および前記掛り代を前記円筒部の外径側に配し、前記突出部を前記円筒部の外周部から拡径方向へ突出させ、内輪案内により回転案内される構成とすることができる。あるいは、前記溝および前記掛り代を前記円筒部の内径側に配し、前記突出部を前記円筒部の内周部から縮径方向へ突出させ、外輪案内により回転案内される構成としても構わない。いずれの構成においても、前記溝および前記掛り代を前記円筒部の外径側および内径側に配し、前記突出部を前記円筒部の外周部から拡径方向へ突出させるとともに、当該円筒部の内周部から縮径方向へ突出させることが可能である。
本発明の転がり軸受用保持器によれば、転動体の数やサイズ(径寸法)の制約などといった軸受の仕様を大きく変更することなく、掛り代(ステーク)の配設側に、かつ当該ステークよりもポケットに対して周方向外側へ所定の溝を形成することで、容易かつ安価にステークの剛性を調整することができる。この結果、ステークの剛性を転動体に対する損傷防止を図るために十分な程度まで確実に低減させることができ、軸受組立時(保持器へ転動体を挿入する際)などに転動体がステークを押圧した場合であっても、転動体の表面(転動面)に傷を生じさせ難くすることが可能となり、同時に、保持器(ポケット)からの脱落防止をも確実に図ることが可能となる。
本発明の第1実施形態に係る転がり軸受用保持器の構成を示す図であって、(a)は、径方向に対する要部断面図、(b)は、外径側の要部周面図、(c)は、軸方向の要部断面を同図(a)の矢印1a方向から示す図である。 突出部に溝を1つだけ形成した構成(突出部を挟んで隣り合う2つのポケットで1つの溝を共有する構成)を示す径方向に対する要部断面図である。 本発明の第2実施形態に係る転がり軸受用保持器の構成を示す径方向に対する要部断面図である。 本発明の第3実施形態に係る転がり軸受用保持器の構成を示す径方向に対する要部断面図である。 本発明の第1実施形態に係る転がり軸受用保持器が組み込まれる転がり軸受の構成を示す要部断面図である。
以下、本発明の転がり軸受用保持器について、添付図面を参照して説明する。なお、本発明に係る転がり軸受用保持器(以下、単に保持器ともいう)が組み込まれる転がり軸受としては、例えば、ジェットエンジンやガスタービンのギアボックス、ロケットエンジンの燃料ポンプ、あるいは低粘度流体中において使用される軸受などを想定可能であるが、これらに限定されるものではない。
かかる転がり軸受(以下、単に軸受ともいう)は、同一の回転軸周りに相対回転可能に対向配置された外輪および内輪と、これら外輪および内輪の対向周面部にそれぞれ形成されて相互に対向する軌道溝間で転動する複数の転動体とを備えている。このような軸受の構成の一例を図5に示す。この場合、外輪2は、軌道溝2aの溝肩の軸方向一方側(図5においては、右側)の内径寸法が軸受外方(同、右方)へ向かうに従って徐々に拡径されるように傾斜したテーパ状(いわゆるカウンタボア)をなしており、その軸方向幅(図5においては、左右方向に対する寸法)が内輪4の軸方向幅よりも若干小寸に設定されている。ただし、図5に示す軸受構成は一例であって、内輪4の軌道溝4aの溝肩をカウンタボアとすることや、外内輪2,4がいずれもカウンタボアを有しない構成とすることも想定可能である。また、外内輪2,4の軸方向幅を同寸に設定することや、外輪2の軸方向幅を内輪4の軸方向幅よりも大寸に設定することも想定可能である。さらに、図5には、転動体6として玉を適用した玉軸受の構成を示しているが、転動体は各種のころ(円筒ころ、円すいころ、球面ころなど)を適用することも想定可能である。すなわち、軸受構成は、当該軸受の使用条件や使用目的などに応じて任意に設定することが可能であり、特に限定されるものではない。
保持器8は、外内輪2,4の軌道溝2a,4a間において、複数の転動体(一例として、玉)6を互いに接触させることなく、所定間隔(一例として、等間隔)で配するための金属製や樹脂製などの円筒状の部材(いわゆるもみぬき保持器)となっており、外輪2もしくは内輪4のいずれか一方(図5においては、内輪4)および転動体(玉)6と非分離一体に組み付けられ(以下、この組付体を保持器組付体という)、軌道溝2a,4a間を回転している。なお、前記保持器組付体が非分離一体に組み付けられているのに対し、当該保持器組付体と外輪2もしくは内輪4の他方(図5においては、外輪2)とは分離可能な構成となっている。また、保持器は、転動体とのみ非分離一体に組み付けられて保持器組付体を構成し、外輪および内輪の双方と分離可能に構成することも可能である。
図1には、本発明の第1実施形態に係る保持器8の構成が示されている。かかる保持器8は、円筒部8aを備え、当該円筒部8aの周方向に等配された複数のポケット8bに転動体(玉)6が1つずつ挿入された状態で内輪案内により回転案内されている。これにより、各転動体(玉)6は等間隔に保たれた状態で、その転動面を相互に接触させることなく、軌道溝2a,4a間を転動することができ、結果として、当該各転動体(玉)6が相互に接触して摩擦が生じることによる回転抵抗の増大や、焼付きなどを防止することができる。
なお、図1には、内輪案内の保持器8を示しており、円筒部8aの内周部には、軸方向(同図(c)における左右方向)の両側周縁から縮径方向へ突出する一対の突条8cが全周に亘って連続して設けられている。この場合、一対の突条8cは、その内径寸法が内輪4の外径寸法よりも僅かに大寸に設定されており、転動体(玉)6をポケット8bに挿入した保持器8が軌道溝2a,4a間を回転する際、内輪4の対向周面部(軌道溝4aの溝肩部)と接触可能な構成となっている。これにより、保持器8は、転動体(玉)6をポケット8bに挿入した状態で、一対の突条8cを案内部として内輪4の対向周面部(軌道溝4aの溝肩部)へ積極的に接触させて回転案内(内輪案内)される。各突条8cの突出幅(軸方向に対する幅寸法)は、保持器8の大きさなどに応じて任意に設定することが可能であるため、ここでは特に限定しない。なお、このような突条8cを設けることなく、円筒部8aの内周部を一定の径寸法(内径寸法)に設定した保持器構成とすることも可能である。
ポケット8bは、円筒部8aの外径側および内径側にそれぞれ開口部86,88を有する貫通孔として形成されており、図1に示す内輪案内の保持器8においては、外径側(つまり、外輪2側)の開口部86から転動体(玉)6をポケット8bへ挿入する(具体的には、押し込む)ことで(図1(a)参照)、当該転動体(玉)6をポケット8b内で回転自在に保持する構成となっている。
本実施形態において、円筒部8aには、ポケット8bの周方向両側に、当該ポケット8bの外径側の開口部86を拡張させるための開口拡張手段が備えられており、当該拡張手段として、軸方向(図1(a)においては、表裏方向)に沿って溝10が形成されている。
また、円筒部8aには、ポケット8bの周方向両側に、当該ポケット8bに挿入された転動体(玉)6の脱落を防止するための脱落防止手段が備えられ、当該脱落防止手段として、当該ポケット8bの外径側の開口部86の周縁部からその開口部86を狭めるような一対の掛り代(以下、ステークという)12が当該開口部86を挟んで設けられている。このように、円筒部8aは、ポケット8bの周方向両側にそれぞれ溝10とステーク12の双方を有しており、これらは、溝10がステーク12よりも当該ポケット8bに対して周方向の外側に位置付けられるように配されている。
図1に示す構成において、円筒部8aには、外周部の軸方向中央位置(軸方向に対する幅(同図(c)における左右方向に対する寸法)の中間位置)に沿って、当該外周部よりも拡径方向へ突出するとともに、周方向に隣り合う2つのポケット8b間(例えば、図1(a)におけるポケット80とポケット82の間、およびポケット80とポケット84の間など)に亘って周方向へ連続する突出部14が設けられている。すなわち、保持器8は、その円筒部8aの周方向に沿ってポケット8bと突出部14が交互に1つずつ配された構成となっている。なお、これらポケット8bと突出部14の個数は、保持器8の大きさ(転動体(玉)6の数やサイズ(径寸法))や負荷容量などに応じて任意に設定することが可能である。また、突出部14の外径寸法や軸方向に対する幅寸法は、ポケット8bに転動体(玉)6を挿入した状態で保持器8が軌道溝2a,4a間を回転する際、外輪2の対向周面部や軌道溝2aと干渉することがないような任意の寸法に設定する。また一例として、図1(c)には、径方向の断面形状が略台形状(拡径方向へ向かうに従って先細りとなる台形状)の突出部12の構成を示しているが、かかる形状は矩形状などであってもよい。
一対のステーク12は、ポケット8bの周方向両側に配される2つの突出部14から当該ポケット8bの外径側の開口部86を狭めるようにそれぞれ1つずつ突設されており、かかる開口部86を挟んで対向している。換言すれば、各突出部14には、その周方向の両端部からポケット8bの外径側の開口部86を狭めるようにステーク12がそれぞれ突設されている。これにより、ポケット8bは、外周側の開口部86の周縁部から一対をなしてステーク12が突出し、当該開口部86がこれらステーク12の分だけ狭められた状態となっている。その際、ポケット8bの開口部86を挟んで一対をなすステーク12間の距離(これらステーク12によって狭められた部分の開口径に相当)は、転動体(玉)6の直径寸法よりも若干小さく設定されている。
したがって、ポケット8bに挿入された転動体(玉)6が当該ポケット8bの外径側の開口部86の方へ位置ずれした場合であっても、位置ずれした転動体(玉)6を一対のステーク12と干渉(接触)させることができ、当該転動体(玉)6がポケット8bから脱落してしまうことを確実に防止することができる。
本実施形態において、溝10は、ポケット8bの周方向両側に配される2つの突出部14にそれぞれ形成されている。かかる溝10の個数や大きさ、深さや形状(開口形状および断面形状)などは、保持器8の大きさ(転動体(玉)6の数やサイズ(径寸法))や負荷容量などに応じて任意に設定することが可能であり、特に限定されない。図1(a)には、ポケット8bの周方向両側に対をなしてそれぞれ一つずつ、ステーク12よりも前記ポケット8bに対して周方向の外側に位置付けられるように溝10を形成した構成を、一例として示している。この場合、各突出部14には、それぞれ溝10が2つずつ形成されているが、図1(a)に示す一対の溝10aがポケット80の周方向両側で、ステーク12よりも周方向外側に配された溝10に相当する。同様に、一対の溝10bはポケット82、一対の溝10cはポケット84の周方向両側で、それぞれステーク12よりも周方向外側に配された溝10に相当している。また、図1には、径方向の断面形状が略U字状(壁部が径方向に沿って放射状に対向し、底部が凹曲状)(図1(a))、開口形状が略矩形状(同図(b))、そして、深さが円筒部8aの外径寸法よりも小寸となる(円筒部8aの外周部よりも深くなる)ように形成された溝10の構成を示している。
なお、図2に示すように、各突出部14に溝10を1つのみ形成し、当該溝10を当該突出部14を挟んで隣り合う2つのポケット8bに対し、その周方向両側でステーク12よりも周方向外側に配する構成(つまり、突出部14を挟んで隣り合う2つのポケット8bで1つの溝10を共有する構成)とすることも可能である。このような構成とした場合、保持器8(具体的には、突出部14)に形成すべき溝10の数が減少し、その分だけ突出部14の大きさも縮小させること(換言すれば、ポケット8bの数を増加させること)ができる。結果として、保持器8の剛性(強度)の向上、あるいは転動体(玉)6の組込数増加やサイズ(径寸法)拡大による保持器8の負荷容量の向上などに寄与することも可能となる。
軸受組立時において、かかる保持器8のポケット8bへ転動体(玉)6を挿入する場合、その挿入作業は次のような手順により行う。なお、軸受分解時において、保持器8のポケット8bへ転動体(玉)6を挿入する必要が生じたような場合にも、その挿入作業は同様の手順で行えばよい。
この場合には、まず、内輪と保持器8を同一の回転軸(図1(a)においては、表裏方向に延出する直線軸)上に位置付けるとともに、当該保持器8のポケット8bの外径側に転動体(玉)を位置付ける。次いで、転動体(玉)をステーク12に当接させつつ、その剛性に抗してポケット8bへ押し込む(図1(a)において、ポケット80の上方に破線で示す転動体(玉)6aの状態)。この状態においては、当該転動体(玉)6aの表面(転動面)に沿って一対のステーク12が押圧され、開口部86が拡張(換言すれば、一対のステーク12が離間)するように、これらのステーク12とともにポケット8bの周方向両側の突出部14が弾性変形する(図1(a)において、ポケット80の周方向両側に破線で示す突出部14aの状態)。この時、突出部14(14a)は、一対のステーク12よりも周方向外側に配された溝10(10a)を、周方向に押し潰しながら(縮小させながら)弾性変形する。このため、突出部14を容易に弾性変形させることができ、結果として、一対のステーク12を容易に離間させ、開口部86を拡張させることができる。これにより、転動体(玉)6aをスムーズにポケット8bへ挿入することができ、その際、剛性に抗してステーク12を転動体(玉)6aの表面(転動面)に沿って摺接させても、当該表面(転動面)に傷を生じさせ難くすることが可能となる。
そして、転動体(玉)6aが一対のステーク12を押圧しなくなるまで、当該転動体(玉)6aをポケット8bへ押し込んでいく(図1(a)において、各ポケット8b内に破線で示す転動体(玉)6の状態)。この状態においては、ステーク12とともに弾性変形していたポケット8bの周方向両側の突出部14が弾性変形前の状態に復元される(図1(a)に実線で示す突出部14の状態)。突出部14が弾性変形前の状態に復元されることで、一対のステーク12は、ポケット8bの開口部86を狭めるように突出することとなり、当該ポケット8bに挿入された転動体(玉)6が開口部86の方へ位置ずれした場合であっても、位置ずれした転動体(玉)6を一対のステーク12と干渉(接触)させることができ、当該転動体(玉)6がポケット8bから脱落してしまうことを確実に防止することができる。なお、この状態においては、内輪、転動体(玉)6および保持器8が非分離一体に組み付けられ、保持器組付体が構成される。
上述したように、溝10の個数や大きさ、深さや形状(開口形状および断面形状)などは、保持器8の大きさ(転動体(玉)6の数やサイズ(径寸法))や負荷容量などに応じて任意に設定することが可能であるため、ステーク12の幅(軸方向(図1(c)においては、左右方向)に対する寸法)を極端に狭める必要がなく、ポケット8bの開口部86の開口径に対してある程度確保することができる。このため、ポケット8bに挿入された転動体(玉)6を当該ポケット8b内で安定した位置に保持することも可能となる。
また、溝10を形成することにより突出部14を容易に弾性変形させることができ、一対のステーク12を容易に離間させること(開口部86を拡張させること)ができるため、転動体(玉)6に対する損傷防止を図るためにステーク12の剛性を従来のように低減させる必要がない。したがって、ステーク12の厚み(径方向に対する肉厚)や幅などを調整して、転動体(玉)6の保持器8(ポケット8b)からの脱落防止を図りつつ、転動体に対する損傷防止をも図るために十分なステーク12の剛性を容易に確保することができる。
なお、上述した本発明の第1実施形態においては、保持器8を内輪案内として構成しているが、本発明に係る保持器は外輪案内として構成することも可能であり、外輪案内であっても同様の作用効果を奏することができる。図3には、外輪案内の保持器18の構成例が示されており、当該保持器18を本発明の第2実施形態として以下、説明する。かかる保持器18は、上述した本発明の第1実施形態に係る保持器8(図1)と案内方式は相違するが、その基本的構成は同一とすることが可能である。したがって、かかる保持器8と同一もしくは類似する構成要素については、図面上で同一の符号を付してその説明を省略もしくは簡略化する。
図3には、本発明の第2実施形態に係る保持器18の構成が示されており、かかる保持器18は、円筒部18aを備え、当該円筒部18aの周方向に等配された複数のポケット18bに転動体(玉)6が1つずつ挿入された状態で外輪案内により回転案内されている。なお、保持器18は、転がり軸受の外輪(図示しない)および転動体(玉)6と非分離一体に組み付けられ、保持器組付体を構成している(当該保持器組付体と内輪(図示しない)とは分離可能な構成となっている)。
本実施形態においては、図3に示すように、円筒部18aの外周部を一定の径寸法(外径寸法)に設定して保持器18を構成している。すなわち、保持器18の円筒部18aには、上述した第1実施形態に係る保持器8(図1)の突条8cに相当する案内部を設けていない。ただし、かかる突条8cと同様に一対の案内部を円筒部18aの外周部に設けた保持器構成とすることも可能である。この場合、前記一対の案内部の外径寸法を前記外輪の内径寸法よりも僅かに小寸に設定し、転動体(玉)6をポケット18bに挿入した保持器18が外内輪軌道溝間を回転する際、前記外輪の対向周面部(外輪軌道溝の溝肩部)と接触可能となるように構成すればよい。
ポケット18bは、円筒部18aの外径側および内径側にそれぞれ開口部86,88を有する貫通孔として形成されており、図3に示す外輪案内の保持器18においては、内径側(つまり、内輪側)の開口部88から転動体(玉)6をポケット18bへ挿入する(具体的には、押し込む)ことで(図3参照)、当該転動体(玉)6をポケット18b内で回転自在に保持する構成となっている。
本実施形態においては、ポケット18bの内径側の開口部88を拡張させるべく、開口拡張手段である溝20を、当該ポケット18bの周方向両側に軸方向(図3においては、表裏方向)へ沿って円筒部18aに形成している。
また、ポケット18bに挿入された転動体(玉)6の脱落を防止するべく、脱落防止手段である一対のステーク22を、当該ポケット18bの内径側の開口部88の周縁部からその開口部88を狭めるように、当該開口部88を挟んで設けている。すなわち、円筒部18aは、ポケット18bの周方向両側にそれぞれ溝20とステーク22の双方を有し、溝20がステーク22よりもポケット18bに対して周方向の外側に位置付けられるようにこれらを配した構成となっている。
図3に示す構成において、円筒部18aには、内周部の軸方向中央位置(軸方向に対する幅の中間位置)に沿って、当該内周部よりも縮径方向へ突出するとともに、周方向に隣り合う2つのポケット18b間(例えば、図3におけるポケット90とポケット92の間、およびポケット90とポケット94の間など)に亘って周方向へ連続する突出部24が設けられている。なお、これらポケット18bと突出部24の個数は、保持器18の大きさ(転動体(玉)6の数やサイズ(径寸法))や負荷容量などに応じて任意に設定することが可能であることは、上述した第1実施形態と同様である。また、突出部24の内径寸法や軸方向に対する幅寸法は、ポケット18bに転動体(玉)6を挿入した状態で保持器18が外内輪軌道溝間を回転する際、内輪の対向周面部や内輪軌道溝と干渉することがないような任意の寸法に設定すればよい。
一対のステーク22は、ポケット18bの周方向両側に配される2つの突出部24から当該ポケット18bの内径側の開口部88を狭めるようにそれぞれ1つずつ突設されており、かかる開口部88を挟んで対向している。これにより、ポケット18bは、内径側の開口部88の周縁部から一対をなしてステーク22が突出し、当該開口部88が当該ステーク22の分だけ狭められた状態となっている。その際、ポケット18bの開口部88を挟んで一対をなすステーク22間の距離(これらステーク22によって狭められた部分の開口径に相当)は、転動体(玉)6の直径寸法よりも若干小さく設定されていることは、上述した第1実施形態と同様である。
したがって、ポケット18bに挿入された転動体(玉)6が当該ポケット18bの内径側の開口部88の方へ位置ずれした場合であっても、位置ずれした転動体(玉)6を一対のステーク22と干渉(接触)させることができ、当該転動体(玉)6がポケット18bから脱落してしまうことを確実に防止することができる。
本実施形態において、溝20は、ポケット18bの周方向両側に配される2つの突出部24にそれぞれ形成されている。かかる溝20の個数や大きさ、深さや形状(開口形状および断面形状)などは、保持器18の大きさ(転動体(玉)6の数やサイズ(径寸法))や負荷容量などに応じて任意に設定することが可能であり、特に限定されないことは、上述した第1実施形態と同様である。図3には、ポケット18bの周方向両側に対をなしてそれぞれ一つずつ、ステーク22よりも前記ポケット18bに対して周方向の外側に位置付けられるように溝20を形成した構成を、一例として示している。この場合、各突出部24には、それぞれ溝20が2つずつ形成されているが、図3に示す一対の溝20aがポケット90の周方向両側で、ステーク22よりも周方向外側に配された溝20に相当する。同様に、一対の溝20bはポケット92、一対の溝20cはポケット94の周方向両側で、それぞれステーク22よりも周方向外側に配された溝20に相当している。
なお、各突出部に溝を1つのみ形成し、当該溝を当該突出部を挟んで隣り合う2つのポケットに対し、その周方向両側でステークよりも周方向外側に配する構成(つまり、突出部を挟んで隣り合う2つのポケットで1つの溝を共有する構成)とすることも可能であることは、上述した第1実施形態と同様である(図2参照)。このような構成とした場合、保持器18の剛性(強度)の向上、あるいは転動体(玉)6の組込数増加やサイズ(径寸法)拡大による保持器18の負荷容量の向上などへの寄与が可能となることは、上述した第1実施形態と同様である。
軸受組立時(さらには、軸受分解時)において、かかる保持器18のポケット18bへ転動体(玉)6を挿入する場合、その挿入作業は次のような手順により行う。
この場合には、まず、外輪と保持器18を同一の回転軸(図3においては、表裏方向に延出する直線軸)上に位置付けるとともに、当該保持器18のポケット18bの内径側に転動体(玉)を位置付ける。次いで、転動体(玉)をステーク22に当接させつつ、その剛性に抗してポケット18bへ押し込む(図3において、ポケット90の下方に破線で示す転動体(玉)6aの状態)。この状態においては、当該転動体(玉)6aの表面(転動面)に沿って一対のステーク22が押圧され、開口部88が拡張(換言すれば、一対のステーク22が離間)するように、これらのステーク22とともにポケット18bの周方向両側の突出部24が弾性変形する(図3において、ポケット90の周方向両側に破線で示す突出部24aの状態)。この時、突出部24(24a)は、一対のステーク22よりも周方向外側に配された溝20(20a)を、周方向に押し潰しながら(縮小させながら)弾性変形する。このため、突出部24を容易に弾性変形させることができ、結果として、一対のステーク22を容易に離間させ、開口部88を拡張させることができる。これにより、転動体(玉)6aをスムーズにポケット18bへ挿入することができ、その際、剛性に抗してステーク22を転動体(玉)6aの表面(転動面)に沿って摺接させても、当該表面(転動面)に傷を生じさせ難くすることが可能となる。
そして、転動体(玉)6aが一対のステーク22を押圧しなくなるまで、当該転動体(玉)6aをポケット18bへ押し込んでいく(図3において、各ポケット18b内に破線で示す転動体(玉)6の状態)。この状態においては、ステーク22とともに弾性変形していたポケット18bの周方向両側の突出部24が弾性変形前の状態に復元される(図3に実線で示す突出部24の状態)。突出部24が弾性変形前の状態に復元されることで、一対のステーク22は、ポケット18bの開口部88を狭めるように突出することとなり、当該ポケット18bに挿入された転動体(玉)6が開口部88の方へ位置ずれした場合であっても、位置ずれした転動体(玉)6を一対のステーク22と干渉(接触)させることができ、当該転動体(玉)6がポケット18bから脱落してしまうことを確実に防止することができる。なお、この状態においては、外輪、転動体(玉)6および保持器18が非分離一体に組み付けられ、保持器組付体が構成される。
上述したように、溝20の個数や大きさ、深さや形状(開口形状および断面形状)などは、保持器18の大きさ(転動体(玉)6の数やサイズ(径寸法))や負荷容量などに応じて任意に設定することが可能であるため、ステーク22の幅(軸方向に対する寸法)を極端に狭める必要がなく、ポケット18bの開口部88の開口径に対してある程度確保することができる。このため、ポケット18bに挿入された転動体(玉)6を当該ポケット18b内で安定した位置に保持することも可能となる。
また、溝20を形成することにより突出部24を容易に弾性変形させることができ、一対のステーク22を容易に離間させること(開口部88を拡張させること)ができるため、転動体(玉)6に対する損傷防止を図るためにステーク22の剛性を従来のように低減させる必要がない。したがって、ステーク22の厚み(径方向に対する肉厚)や幅などを調整して、転動体(玉)6の保持器18(ポケット18b)からの脱落防止を図りつつ、転動体に対する損傷防止をも図るために十分なステーク22の剛性を容易に確保することができる。
なお、上述した本発明の第1実施形態(図1)、および第2実施形態(図3)においては、内輪もしくは外輪のいずれか一方および転動体と非分離一体に組み付けられており(他方軌道輪とは分離可能)、突出部を円筒部の外周部もしくは内周部のいずれか一方のみから突出させ、ステークをポケットの外径側もしくは内径側のいずれか一方の開口部の周縁部のみから突出させた保持器構成(保持器8,18)としているが、転動体とのみ非分離一体に組み付けられた保持器構成(外内輪とは分離可能)や、突出部を円筒部の外周部および内周部の双方からそれぞれ突出させた保持器構成、あるいはステークをポケットの外径側および内径側の双方の開口部の周縁部からそれぞれ突出させた保持器構成とすることも可能である。このような保持器構成とした場合であっても、上述した第1実施形態(図1)、および第2実施形態(図3)と同様の作用効果を奏することができる。
例えば、図4には、転動体とのみ非分離一体に組み付けられ(外内輪(いずれも図示しない)とは分離可能)、突出部を円筒部の外周部および内周部の双方からそれぞれ突出させるとともに、ステークをポケットの外径側及び内径側の双方の開口部の周縁部からそれぞれ突出させた保持器28の構成例が示されており、当該保持器28を本発明の第3実施形態として以下、説明する。かかる保持器28は、上述した本発明1の第1実施形態に係る保持器8(図1)、および第2実施形態に係る保持器18(図3)とその基本的構成を同一とすることが可能であり、これらと同一もしくは類似する構成要素については、図面上で同一の符号を付してその説明を省略もしくは簡略化する。
図4には、本発明の第3実施形態に係る保持器28の構成が示されており、かかる保持器28は、円筒部28aを備え、当該円筒部28aの周方向に等配された複数のポケット28bに転動体(玉)6が1つずつ挿入された状態で内輪案内により回転案内されている。
この場合、ポケット28bは、円筒部28aの外径側および内径側にそれぞれ開口部86,88を有する貫通孔として形成されており、図4に示す保持器28においては、内径側(つまり、内輪側)の開口部88から転動体(玉)6をポケット28bへ挿入する(具体的には、押し込む)ことで、当該転動体(玉)6をポケット28b内で回転自在に保持する構成となっている。
本実施形態においては、ポケット28bの内径側の開口部88を拡張させるべく、開口拡張手段である溝30を、当該ポケット28bの周方向両側に軸方向(図4においては、表裏方向)へ沿って円筒部28aに形成している。
また、ポケット28bに挿入された転動体(玉)6の脱落を防止するべく、脱落防止手段である対をなすステークを、当該ポケット28bの外径側の開口部86の周縁部および内径側の開口部88の周縁部の双方からその開口部86,88を狭めるように、当該開口部86,88を挟んで設けている。すなわち、円筒部28aは、ポケット28bの内径側の周方向両側にそれぞれ溝30とステーク32bの双方を有し、溝30がステーク32よりもポケット28bに対して周方向の外側に位置付けられるようにこれらを配するとともに、当該ポケット28bの外径側の周方向両側にステーク32aを配した構成となっている。
図4に示す構成において、円筒部28aには、外周部および内周部の軸方向中央位置(軸方向に対する幅の中間位置)に沿って、当該外周部よりも拡径方向へ突出するとともに、当該内周部よりも縮径方向へ突出し、周方向に隣り合う2つのポケット28b間に亘って周方向へ連続する突出部34が設けられている。すなわち、突出部34は、円筒部28aの外周部および内周部の双方からそれぞれ突設されている。なお、これらポケット28bと突出部34の個数は、保持器28の大きさ(転動体(玉)6の数やサイズ(径寸法))や負荷容量などに応じて任意に設定することが可能であることは、上述した第1実施形態および第2実施形態と同様である。また、突出部34の外内径寸法や軸方向に対する幅寸法は、ポケット28bに転動体(玉)6を挿入した状態で保持器28が外内輪軌道溝間を回転する際、外内輪の対向周面部や外内輪軌道溝と干渉することがないような任意の寸法に設定すればよい。
対をなすステーク32a,32bは、ポケット28bの周方向両側に配される2つの突出部34から当該ポケット28bの外径側の開口部86および内径側の開口部88を狭めるようにそれぞれ1つずつ突設されており、これら開口部86,88を挟んで対向している。具体的には、外径側の一対のステーク32aがポケット28bの周方向両側に配される2つの突出部34から当該ポケット28bの外径側の開口部86を狭めるようにそれぞれ1つずつ突設され、かかる開口部86を挟んで対向し、内径側の一対のステーク32bがポケット28bの周方向両側に配される2つの突出部34から当該ポケット28bの内径側の開口部88を狭めるようにそれぞれ1つずつ突設され、かかる開口部88を挟んで対向している。
これにより、ポケット28bは、外径側の開口部86の周縁部から一対をなしてステーク32aが突出し、当該開口部86が当該ステーク32aの分だけ狭められた状態となっているとともに、内径側の開口部88の周縁部から一対をなしてステーク32bが突出し、当該開口部88が当該ステーク32bの分だけ狭められた状態となっている。その際、ポケット18bの各開口部86,88を挟んで対をなすステーク間の距離(外径側の一対のステーク32aによって狭められた部分の開口径、および内径側の一対のステーク32bによって狭められた部分の開口径にそれぞれ相当)は、転動体(玉)6の直径寸法よりも若干小さく設定されていることは、上述した第1実施形態および第2実施形態と同様である。
したがって、ポケット28bに挿入された転動体(玉)6が当該ポケット28bの外径側の開口部86および内径側の開口部88のいずれ側へ位置ずれした場合であっても、位置ずれした転動体(玉)6を対をなすステーク(一対のステーク32aもしくは一対のステーク32b)と干渉(接触)させることができ、当該転動体(玉)6がポケット28bから脱落してしまうことを確実に防止することができる。
本実施形態において、溝30は、ポケット28bの周方向両側に配される2つの突出部34にそれぞれ形成されている。かかる溝30の個数や大きさ、深さや形状(開口形状および断面形状)などは、保持器28の大きさ(転動体(玉)6の数やサイズ(径寸法))や負荷容量などに応じて任意に設定することが可能であり、特に限定されないことは、上述した第1実施形態および第2実施形態と同様である。図4には、各突出部34の内径側に溝30を1つのみ形成し、当該溝30を当該突出部34を挟んで隣り合う2つのポケット28bに対し、その内径側の周方向両側でステーク32bよりも周方向外側に配する構成(つまり、突出部34を挟んで隣り合う2つのポケット28bで1つの溝30を共有する構成)を、一例として示している。
なお、ポケット28bの内径側の周方向両側に対をなしてそれぞれ一つずつ、ステーク32bよりも前記ポケット28bに対して周方向の外側に位置付けられるように溝30を形成した構成(各突出部34にそれぞれ溝20を2つずつ形成した構成)とすることも可能である(図3参照)。
また、外径側(つまり、外輪側)の開口部86から転動体(玉)6をポケットへ挿入する(具体的には、押し込む)保持器構成とした場合、各突出部の外径側に溝を1つのみ形成し、当該溝を当該突出部を挟んで隣り合う2つのポケットに対し、その外径側の周方向両側で外径側ステークよりも周方向外側に配してもよいし、ポケットの外径側の周方向両側に対をなしてそれぞれ一つずつ、外径側ステークよりも前記ポケットに対して周方向の外側に位置付けられるように溝を形成しても構わない。
軸受組立時(さらには、軸受分解時)において、かかる保持器28のポケット28bへ転動体(玉)6を挿入する場合、その挿入作業は、内径側(つまり、内輪側)の開口部88から転動体(玉)6をポケット18bへ挿入する(具体的には、押し込む)保持器構成となっている上述した第2実施形態(図3)に準じて行えばよい。この場合、外輪(さらには内輪も)と保持器28を同一の回転軸上に位置付ける作業は省略可能であり、挿入作業完了後においては、転動体(玉)6と保持器28のみが非分離一体に組み付けられ、保持器組付体が構成される。
以上のように、本発明の第1実施形態(図1)、第2実施形態(図3)、および第3実施形態(図4)に係る保持器8,18,28によれば、転動体(玉)6の数やサイズ(径寸法)の制約などといった軸受の仕様を大きく変更することなく、ステーク12,22,32bの配設側(外径側もしくは内径側)に、かつ当該ステーク12,22,32bよりもポケット8b,18b,28bに対して周方向外側へ溝10,20,30を形成することで、容易かつ安価にステーク12,22,32bの剛性を調整することができる。この結果、ステーク12,22,32bの剛性を転動体(玉)6に対する損傷防止を図るために十分な程度まで確実に低減させることができ、軸受組立時(保持器8,18,28へ転動体(玉)6を挿入する際)などに転動体(玉)6がステーク12,22,32bを押圧した場合であっても、転動体(玉)6の表面(転動面)に傷を生じさせ難くすることが可能となり、同時に、保持器8,18,28(ポケット8b,18b,28b)からの脱落防止をも確実に図ることが可能となる。
2 外輪
2a 外輪軌道溝
4 内輪
4a 内輪軌道溝
6 転動体(玉)
8,18,28 保持器
8a,18a,28a 円筒部
8b,18b,28b ポケット
10,20,30 溝
86 外径側開口部
88 内径側開口部

Claims (7)

  1. 同一の回転軸周りに相対回転可能に対向配置された外輪および内輪と、これら外輪および内輪の対向周面部にそれぞれ形成されて相互に対向する軌道溝間で転動する複数の転動体を備えた転がり軸受において、前記外輪もしくは前記内輪のいずれか一方および前記転動体と非分離一体、または前記転動体とのみ非分離一体に組み付けられ、前記軌道溝間を回転する転がり軸受用の保持器であって、
    円筒部を備え、当該円筒部の周方向に配された複数のポケットに前記転動体が1つずつ挿入された状態で回転案内され、
    前記ポケットは、前記円筒部の外径側および内径側にそれぞれ開口部を有する貫通孔として形成されており、
    前記円筒部には、前記ポケットの周方向両側に、当該ポケットの外径側の開口部もしくは内径側の開口部を拡張させるための開口拡張手段が備えられ、当該開口拡張手段として、軸方向に沿って溝が形成されていることを特徴とする転がり軸受用保持器。
  2. 前記円筒部には、前記ポケットの周方向両側に、当該ポケットに挿入された前記転動体の脱落を防止するための脱落防止手段が備えられ、当該脱落防止手段として、当該ポケットの外径側の開口部および内径側の開口部の少なくとも一方の周縁部からその開口部を狭めるように対をなす掛り代が当該開口部を挟んで設けられており、
    前記溝は、前記掛り代よりも前記ポケットに対して周方向の外側に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の転がり軸受用保持器。
  3. 前記円筒部には、外周部よりも拡径方向および内周部よりも縮径方向の少なくとも一方へ突出するとともに、周方向に沿って隣り合う2つの前記ポケット間に亘って周方向へ連続する突出部が設けられており、
    当該突出部に対し、前記溝が形成されているとともに、前記掛り代が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の転がり軸受用保持器。
  4. 前記対をなす掛り代は、前記ポケットの周方向両側に配される2つの突出部から当該ポケットの外径側の開口部および内径側の開口部の少なくとも一方を狭めるようにそれぞれ1つずつ突設され、その開口部を挟んで対向していることを特徴とする請求項3に記載の転がり軸受用保持器。
  5. 前記溝および前記掛り代は、前記円筒部の外径側に配され、前記突出部は、前記円筒部の外周部から拡径方向へ突出しており、
    内輪案内により回転案内されることを特徴とする請求項3または4に記載の転がり軸受用保持器。
  6. 前記溝および前記掛り代は、前記円筒部の内径側に配され、前記突出部は、前記円筒部の内周部から縮径方向へ突出しており、
    外輪案内により回転案内されることを特徴とする請求項3または4に記載の転がり軸受用保持器。
  7. 前記溝および前記掛り代は、前記円筒部の外径側および内径側に配され、前記突出部は、前記円筒部の外周部から拡径方向へ突出するとともに、当該円筒部の内周部から縮径方向へ突出することを特徴とする請求項5または6に記載の転がり軸受用保持器。
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