JP2013014573A - 光と微生物による養液栽培植物の病害及び/又は害虫防除方法 - Google Patents

光と微生物による養液栽培植物の病害及び/又は害虫防除方法 Download PDF

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Abstract

【課題】植物の養液栽培において、環境への負荷を軽減しながら高い防除効果を発揮し、幅広い防除対象(植物病害、害虫など)に有効な防除技術を提供する。
【解決手段】400〜750nmの波長域の光線のみ又は該波長域の光照度をこれ以外の波長域の光照度より強くした光線を植物に照射し、且つ、植物の病害防除効果及び/又は害虫防除効果を有する非病原性の微生物を添加した養液で植物を栽培することで、各種植物病害及び/又は害虫等を効果的に防除する。
【選択図】なし

Description

本発明は、養液栽培植物の病害及び/又は害虫防除方法、及び、この方法を利用した養液栽培植物の病害及び/又は害虫防除装置・システムに関するものである。詳細には、特定の波長域の光を植物に照射することと非病原性の微生物を添加した養液での植物栽培の併用による、養液栽培植物の病害及び/又は害虫防除方法等に関するものである。
近年、農業従事者の減少、高齢化、女性農業者の増加等の課題から、農業にも自動化、機械化等を通して省力化が求められている。そのような中、養液栽培は、省力化、機械化が可能な栽培方法として関心がもたれ、その面積は着実に増加している。平成19年現在で設置面積は1,686haに達し、施設栽培全面積50,608haの3%以上を占めるまで増加した。さらに、近年、農業収益の向上を目指したものとして養液栽培を取り入れた植物工場も増加している。このように養液栽培は近年、農業分野においても重要な栽培体系となっている。
このような養液栽培は、土壌を使用しない事から連作障害や土壌伝染病が発生し難い点が特長の一つではある。しかしながら、一度病原菌が侵入すると、たちまち施設全体に蔓延し甚大な被害を引き起こす。その防除方法としては、資材や栽培装置の消毒、オゾンや紫外線を使った培養液消毒といった手段、さらに薬剤を使った防除法として、農薬登録を取得した銀イオンを利用した剤がある。しかしながら、それらの効果は安定せず、十分とは言えない。安定した防除方法として培養液中への化学農薬の添加が考えられるが、多量に発生する廃液処理の問題から事実上不可能である。このような状況から、本分野において有効な防除手段が確立されていないのが現状である。
一方で、近年の栽培体系では化学農薬よりも環境への負荷が小さいと考えられる生物的防除が注目され、既に一部は実用化されている。例えば、農園芸植物の病害等防除に用いる微生物として、トリコデルマ属、グリオクラディウム属、タラロマイセス属に属する糸状菌、アグロバクテリウム属、シュードモナス属、バシルス属に属する細菌等が挙げられる。
しかし、これらの微生物による農園芸作物の病害等防除は、これのみでは効果が十分でない場合も多く見受けられ、そのため、病害等防除効果を有する微生物を化学農薬と併用することも多く行われている(例えば、特許文献1〜3)。
また、ごく最近では、植物の抵抗性誘導を利用した光による防除技術も注目されている。例えば、UV−BとUV−Cの一部、さらには可視光の一部を重畳して照射する技術(特許文献4)、緑色光照射を利用した技術(特許文献5)等が挙げられる。しかし、これも化学農薬との併用を必要とする場合が多く見受けられ、この光による防除のみでは実用的にはやや課題がある。さらに、微生物による農園芸植物の病害防除あるいは光による防除技術は養液栽培においてもそれぞれ適用が試みられているが、同様にその効果が十分でないことが多く見受けられる。
このような背景技術の中、化学農薬を使用することなく、養液栽培において簡便かつ効率的で、従来技術より実用的、効果的な防除技術の開発が当業界において強く求められていた。
特表2005−512947号公報 特開2005−29477号公報 特開2006−96753号公報 特開2009−153397号公報 国際公開第2007/105599号
本発明は、植物の養液栽培において環境への負荷を軽減しながらも、高い病害防除効果、害虫防除効果を発揮し、幅広い防除対象にも有効な防除技術を提供する目的でなされたものである。
上記目的達成のため、本発明者らは各方面から鋭意検討した結果、特定の波長域の光を植物に照射することと、植物の病害防除効果及び/又は害虫防除効果を有する非病原性の微生物を添加した養液で植物を栽培することを併用することにより、それぞれの単独での防除手段よりも相乗的に高い病害防除効果(植物病害の発病抑制及び治療効果)、害虫防除効果(害虫からの防御及び害虫駆除効果)を得ることができることをはじめて見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の実施形態は次のとおりである。
(1)400〜750nmの波長域の光線のみ又は該波長域の光照度をこれ以外の波長域の光照度より強くした光線を植物に照射し、且つ、植物の病害防除効果及び/又は害虫防除効果を有する非病原性の微生物を添加した養液で植物を栽培すること、を特徴とする養液栽培植物の病害防除及び/又は害虫防除方法。
(2)430〜660nmの波長域の光線のみ又は該波長域の光照度をこれ以外の波長域の光照度より強くした光線を植物に照射すること、を特徴とする(1)に記載の方法。
(3)480〜580nmの波長域の光線のみ又は該波長域の光照度をこれ以外の波長域の光照度より強くした光線を植物に照射すること、を特徴とする(2)に記載の方法。
(4)植物の病害防除効果及び/又は害虫防除効果を有する非病原性の微生物が、非病原性の細菌又は糸状菌から選ばれる1又は2種以上であること、を特徴とする(1)〜(3)のいずれか1つに記載の方法。
(5)植物の病害防除効果及び/又は害虫防除効果を有する非病原性の微生物が、バシルス(Bacillus)属に属する細菌、パエニバシルス(Paenibacillus)属に属する細菌、エルビニア(Erwinia)属に属する細菌、シュードモナス(Pseudomonas)属に属する細菌、バークホルデリア(Burkholderia)属に属する細菌、バリオボラックス(Variovorax)属に属する細菌、トリコデルマ(Trichoderma)属に属する糸状菌、フザリウム(Fusarium)属に属する糸状菌、タラロマイセス(Talaromyces)属に属する糸状菌、コニオチリウム(Coniothyrium)属に属する糸状菌から選ばれる1又は2種以上であること、を特徴とする(4)に記載の方法。
(6)植物の病害防除効果及び/又は害虫防除効果を有する非病原性の微生物が、バシルス・エスピー(Bacillus sp.)D747株、バシルス・サチリス(Bacillus subtilis)QST−713株、バシルス・サチリス(Bacillus subtilis)MBI600株、バシルス・サチリス(Bacillus subtilis)Y−1336株、バシルス・サチリス(Bacillus subtilis)HAI−0404株、バシルス・シンプレクス(Bacillus simplex)CGF2856株、エルビニア・カロトボーラ(Erwinia carotovora)CGE234M403株、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)G7090株、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)FPT−9601株、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)FPH−9601株、シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.)CAB−02株、バークホルデリア・エスピー(Burkholderia sp.)CRSE−3株、バリオボラックス・パラドクス(Variovorax paradoxus)CGF4526株、トリコデルマ・アトロビリデ(Trichoderma atroviride)SKT−1株、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)SK−102株、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)SNF−356株、タラロマイセス・フラバス(Talaromyces flavus)SAY−Y−94−01株、タラロマイセス・フラバス(Talaromyces flavus)B−422株、タラロマイセス・フラバス(Talaromyces flavus)胞子、コニオチリウム・ミニタンス(Coniothyrium minitans)CON/M/91−08株から選ばれる1又は2種以上であること、を特徴とする(5)に記載の方法。
(7)480〜580nmの波長域の光線のみ又は該波長域の光照度をこれ以外の波長域の光照度より強くした光線を植物に照射し、且つ、バシルス・エスピー(Bacillus sp.)D747株(FERM BP−8234)、エルビニア・カロトボーラ(Erwinia carotovora)CGE234M403株、トリコデルマ・アトロビリデ(Trichoderma atroviride)SKT−1株(FERM P−16510)、タラロマイセス・フラバス(Talaromyces flavus)SAY−Y−94−01株から選ばれる少なくともひとつを添加した養液で植物を栽培すること、を特徴とする養液栽培植物の病害防除及び/又は害虫防除方法。
(8)光線の植物への照射を夜間のみ行うこと、を特徴とする(1)〜(7)のいずれか1つに記載の方法。
(9)植物への1時間以上の光線の照射を1日のうちに1回または複数回行い、それを1〜7日間隔で繰り返す(例えば、1回に1時間の照射を1日に2回行い、それを3日ごとに繰り返すなど)こと、を特徴とする(1)〜(8)のいずれか1つに記載の方法。
(10)400〜750nmの波長域の光線のみ又は該波長域の光照度をこれ以外の波長域の光照度より強くした光線を植物に照射する手段と、養液栽培を行う手段とを備えていることを特徴とする、養液栽培植物の病害防除及び/又は害虫防除装置。
本発明によれば、養液栽培での光による防除技術と培養養液への非病原性微生物の添加による防除技術を組み合わせる(併用する)ことにより、相乗的な高い防除効果が得られ、養液栽培においてより安定した生産を簡便に実現する。更には、本発明は化学農薬を併用する必要がないことから環境への負荷も少なく、環境に配慮した農業生産を実現するものである。
本発明の養液栽培植物の病害防除方法に用いる微生物としては、養液栽培の養液に処理することにより植物の病害菌と拮抗する非病原性の微生物であれば特に制限されないが、例えば、バシルス(Bacillus)属に属する細菌、パエニバシルス(Paenibacillus)属に属する細菌、エルビニア(Erwinia)属に属する細菌、シュードモナス(Pseudomonas)属に属する細菌、バークホルデリア(Burkholderia)属に属する細菌、バリオボラックス(Variovorax)属に属する細菌、トリコデルマ(Trichoderma)属に属する糸状菌、フザリウム(Fusarium)属に属する糸状菌、タラロマイセス(Talaromyces)属に属する糸状菌、コニオチリウム(Coniothyrium)属に属する糸状菌などを挙げることができる。
バシルス属に属する細菌としては、好ましくはバシルス・サチリス(Bacillus subtilis)、バシルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、あるいはバシルス・シンプレクス(Bacillus simplex)が挙げられ、その中でもより好ましくはバシルス・エスピー(Bacillus sp.)D747株、バシルス・サチリス(Bacillus subtilis)QST−713株、バシルス・サチリス(Bacillus subtilis)MBI600株、バシルス・サチリス(Bacillus subtilis)Y−1336株、バシルス・サチリス(Bacillus subtilis)HAI−0404株、バシルス・シンプレクス(Bacillus simplex)CGF2856株が挙げられる。
なお、バシルス・エスピーD747株は、静岡県菊川市の空気中から単離された菌株であって、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(〒305−8566 日本国茨城県つくば市東1−1−1 つくばセンター 中央第6)に、2000年(平成12年)11月28日に寄託された後、2002年(平成14年)11月8日付けで国際寄託に移管されており、その受託番号はFERM BP−8234である。
このバシルス・エスピーD747株の主な菌学的性質を以下に示す。なお、菌学的性質の試験はBergey's Manual of Systematic Bacteriology、volume 1(1984)に基づいて行った。
(A)形態学的性質
形態:桿菌
大きさ:幅1.0〜1.2μm、長さ3〜5μm
運動性:+
鞭毛の着生状態:周鞭毛
内生胞子:+
胞子の位置:中央
胞子の膨張:−
(B)培養的性質
コロニーの色:白色〜薄い茶色
肉汁寒天平板培養:白色〜クリーム色のコロニーを形成し、表面はしわ状
(c)生理学的性質
グラム染色性:+
硝酸塩の還元:+
MR試験:−
VP試験:+
インドールの生成:−
澱粉の加水分解:+
クエン酸の資化性:+
無機窒素源:+
オキシダーゼ:−
カタラーゼ:+
生育pH
6.8、肉エキス培地:+
5.7、肉エキス培地:+
生育温度
30℃:+
50℃:−
生育NaCl濃度
2%:+
5%:+
7%:+
好気的生育:+
嫌気的生育:−
O−Fテスト:O
卵黄反応:−
グルコースからの酸生成:+
マンニトールからの酸生成:−
L−アラビノースからの酸生成:−
D−キシロースからの酸生成:−
グルコースからのガス生成:−
β−ガラクトシダーゼ:−
NaCl及びKCl要求性:−
なお、このバシルス・エスピーD747株はエコショット(登録商標)の商品名で、バシルス・サチリスQST−713株はインプレッション(登録商標)の商品名で、バシルス・サチリスMBI600株はボトキラー(登録商標)及びボトピカ(登録商標)の商品名で、バシルス・サチリスY−1336株はバイオワーク(登録商標)の商品名で、バシルス・サチリスHAI−0404株はアグロケア(登録商標)の商品名で、バシルス・シンプレクスCGF2856株はモミホープ(登録商標)の商品名で、農薬として販売されている。
エルビニア属に属する細菌としては、好ましくはエルビニア・カロトボーラ(Erwinia carotovora)が挙げられ、その中でもより好ましくはエルビニア・カロトボーラ(Erwinia carotovora)CGE234M403株が挙げられる。
なお、このエルビニア・カロトボーラCGE234M403株は、エコメイト(登録商標)及びバイオキーパー(登録商標)の商品名で農薬として販売されている。
シュードモナス属に属する細菌としては、好ましくはシュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)が挙げられ、その中でもより好ましくはシュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)G7090株、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)FPT−9601株、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)のFPT−9601株とFPH−9601株の混合物、シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.)CAB−02株が挙げられる。
なお、このシュードモナス・フルオレッセンスG7090株はベジキーパー(登録商標)の商品名で、シュードモナス・フルオレッセンスFPT−9601株は小苗ふく土(登録商標)の商品名で、シュードモナス・フルオレッセンスのFPT−9601株とFPH−9601株の混合物はセル苗元気(登録商標)の商品名で、農薬として販売されている。
バークホルデリア属に属する細菌としては、好ましくはバークホルデリア・エスピー(Burkholderia sp.)CRSE−3株が挙げられる。
このバークホルデリア・エスピーCRSE−3株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(〒292−0818 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に、2008年(平成20年)2月13日に寄託されており、その受託番号はNITE P−486である。
バリオボラックス属に属する細菌としては、好ましくはバリオボラックス・パラドクス(Variovorax paradoxus)が挙げられ、その中でもより好ましくはバリオボラックス・パラドクス(Variovorax paradoxus)CGF4526株が挙げられる。
なお、このバリオボラックス・パラドクスCGF4526株は、フィールドキーパー(登録商標)の商品名で農薬として販売されている。
トリコデルマ属に属する糸状菌としては、好ましくはトリコデルマ・アトロビリデ(Trichoderma atroviride)が挙げられ、その中でもより好ましくはトリコデルマ・アトロビリデ(Trichoderma atroviride)SKT−1株が挙げられる。
このトリコデルマ・アトロビリデSKT−1株は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(〒305−8566 日本国茨城県つくば市東1−1−1 つくばセンター 中央第6)に、1997年(平成9年)11月10日に寄託されており、その受託番号はFERM P−16510である。
なお、このトリコデルマ・アトロビリデSKT−1株は、エコホープ(登録商標)の商品名で農薬として販売されている。
フザリウム属に属する糸状菌としては、好ましくはフザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)が挙げられ、その中でもより好ましくはフザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)SK−102株又はフザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)SNF−356株が挙げられる。
このフザリウム・オキシスポラムSK−102株は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(〒305−8566 日本国茨城県つくば市東1−1−1 つくばセンター 中央第6)に、1992年(平成4年)5月20日に寄託されており、その受託番号はFERM P−12965である。
また、フザリウム・オキシスポラムSNF−356株は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(〒305−8566 日本国茨城県つくば市東1−1−1 つくばセンター 中央第6)に、1997年(平成9年)6月20日に寄託されており、その受託番号はFERM P−16280である。
タラロマイセス属に属する糸状菌としては、好ましくはタラロマイセス・フラバス(Talaromyces flavus)が挙げられ、その中でもより好ましくはタラロマイセス・フラバス(Talaromyces flavus)SAY−Y−94−01株、タラロマイセス・フラバス(Talaromyces flavus)B−422株、タラロマイセス・フラバス(Talaromyces flavus)胞子(例えば、農薬製剤バイオトラスト(登録商標)など)が挙げられる。
なお、このタラロマイセス・フラバスSAY−Y−94−01株は、タフブロック(登録商標)及びタフパール(登録商標)の商品名で農薬として販売されており、タラロマイセス・フラバスB−422株はモミキーパー(登録商標)の商品名で農薬としての販売が準備されている。また、タラロマイセス・フラバスの胞子であるバイオトラスト(登録商標、商品名)も農薬として販売されている。
コニオチリウム属に属する糸状菌としては、好ましくはコニオチリウム・ミニタンス(Coniothyrium minitans)が挙げられ、その中でもより好ましくはコニオチリウム・ミニタンス(Coniothyrium minitans)CON/M/91−08株が挙げられる。
なお、このコニオチリウム・ミニタンスCON/M/91−08株は、ミニタン(登録商標)の商品名で農薬として販売されている。
本発明の光と微生物による養液栽培植物の病害防除方法に用いる微生物としては、上記のような微生物株を含む他に、それらの変異体で非病原性且つ植物の病害防除効果及び/又は害虫防除効果を有するものでも使用することができる。この変異体は、上記の微生物株の自然突然変異株、紫外線や化学変異剤を用いての突然変異株、また細胞融合株および遺伝子組み換え株などとして取得することができる。
本発明における養液栽培の形態には、薄膜水耕(NFT)、湛液型水耕(DFT)、浮根水耕、毛管水耕のような水耕栽培が含まれる。さらには、天然培地や人工・加工培地を用いた固形培地耕も含まれる。例えば、ピートモス耕、おがくず耕、ロックウール耕、バーミュキュライト耕等が挙げられる。それ以外にも、噴霧耕でも有効である。
本発明の光線照射に用いる光源には、様々なものが含まれる。例えば発光ダイオード、蛍光管、冷陰極管、アーク灯、ネオン管、エレクトロルミナックス(EL)、無電極放電管、電球、レーザー光、あるいは、燐光、蛍光などの化学反応による光などが挙げられる。さらに、着色フィルム、偏向フィルターなどを使用して太陽光から特定波長を選択的に照射する手段も有効である。
本発明に用いられる光線は、400〜750nmの光線のみまたは、該波長域の光照度をこれ以外の波長域の光照度より強くした光線が包含される。更には、450〜750nm、あるいは430〜660nm、あるいは450〜620nm、あるいは470〜600nm、あるいは480〜580nmの波長域の光線などが選択できる。特に、460〜560nmの青色または緑色光が好ましい。
ここで、「該波長域の光照度をこれ以外の波長域の光照度より強くした光線」とは、例えば太陽光の存在下では、400〜750nmのいずれかの波長の光照度が太陽光による該波長の光照度と比較して1.5倍以上、好ましくは2倍以上、更に好ましくは3倍以上であって、植物が日焼けによる障害を受けない範囲を指す。また、夜間に照射する場合では、400〜750nmのいずれかの波長の光照度がそれ以外の波長域の光照度よりも1.5倍以上、好ましくは2倍以上、更に好ましくは3倍以上強い光源を用い、植物が日焼けによる障害を受けない範囲の光照度を指し、400〜750nm以外の波長の光が混在していても良いことを意味する。
また、光線の照射方法については、植物体上部より照射する方法、植物体の株元より照射する方法、さらには、植物体側部より照射する方法のいずれの方法においても効果が示される。また、1回の照射時間は1〜10時間が適当であり、照射回数は1日に1回以上、それを1〜7日毎に反復実施するのが適当である。好ましくは、夜間に2〜3時間の照射を3日に1回以上行うことが効果的である。
本発明の養液栽培での防除法では、藻菌類(Oomycetes)、子嚢菌類(Ascomycetes)、担子菌類(Basidiomycetes)、接合菌類(Zygomycetes)、及び不完全菌類(Deuteromycetes)に属する菌類、および細菌類に起因する植物の病害を防除することができる。
本発明により防除することのできる植物の病原菌としては、具体的にはシュードペロノスポラ(Pseudoperonospora)属菌、例えばキュウリべと病菌(Pseudoperonospora cubensis)、ベンチュリア(Venturia)属菌、例えばリンゴ黒星病菌(Venturia inaequalis)、エリシフェ(Erysiphe)属菌、例えばコムギうどんこ病菌(Erysiphe graminis)、ピリキュラリア(Pyricularia)属菌、例えばイネいもち病菌(Pyricularia oryzae)、ボトリチス(Botrytis)属菌、例えばキュウリ灰色かび病菌(Botrytis cinerea)、リゾクトニア(Rhizoctonia)属菌、例えばイネ紋枯病菌(Rhizoctonia solani)、クラドスポリウム(Cladosporium)属菌、例えばトマト葉かび病菌(Cladosporium fulvum)、コレトトリカム(Colletotrichum)属菌、例えばイチゴ炭そ病菌(Colletotrichum fragariae)、パクシニア(Puccinia)属菌、例えばコムギ赤さび病菌(Puccinia recondita)、セプトリア(Septoria)属菌、例えばコムギふ枯病菌(Septoria nodorum)、スクレロティニア(Sclerotinia)属菌、例えばキュウリ菌核病菌(Sclerotinia sclerotiorum)、ピシウム(Pythium)属菌、例えばキュウリ苗立枯病菌(Pythium debaryanum Hesse)、ゲウマノマイセス(Gaeumannomyces)属菌、例えばコムギ立枯病菌(Gaeumannomyces graminis)、また細菌として、キュウリ斑点細菌病菌(Peudomonas syringae)などをあげることができるが、これらの例により限定されるものではない。
また、本発明が防除することのできる植物の害虫として、具体的にはアワヨトウ、イネヨトウ、フタオビコヤガ、タマナヤガ、ワタアカキリバ、オオタバコガ、シロイチモジヨトウ、ハスモンヨトウ、カブラヤガ、ヨトウガ、タマナギンウワバ、ニカメイガ、コブノメイガ、サンカメイガ、ナシオオシンクイ、ハイマダラメイガ、マメノメイガ、イネツトムシ、ワタアカミムシ、ジャガイモガ、ノシメマダラメイガ、チャノコカクモンハマキ、キンモンホソガ、ミカンハモグリガ、ブドウホソハマキ、ナシヒメシンクイ、マメシンクイガ、モモシンクイガ、ブドウスカシバ、チャノホソガ、コナガ、イガ等の鱗翅目害虫;タバココナジラミ、オンシツコナジラミ、ミカントゲコナジラミ、ワタアブラムシ、ユキヤナギアブラムシ、リンゴワタムシ、モモアカアブラムシ、ダイコンアブラムシ、ニセダイコンアブラムシ、マメアブラムシ、コミカンアブラムシ、ミカンクロアブラムシ、ブドウネアブラムシ、ムギミドリアブラムシ、ジャガイモヒゲナガアブラムシ、チャノミドリヒメヨコバイ、フタテンヒメヨコバイ、ヒメトビウンカ、トビイロウンカ、セジロウンカ、ツマグロヨコバイ、タイワンツマグロヨコバイ、シロオオヨコバイ、ルビーロウムシ、オリーブカタカイガラムシ、サンホーゼカイガラムシ、リンゴカキカイガラムシ、アカマルカイガラムシ、アカホシマルカイガラムシ、ヤノネカイガラムシ、クワコナカイガラムシ、ミカンコナカイガラムシ、イセリアカイガラムシ、リンゴキジラミ、ミカンキジラミ、ミナミアオカメムシ、ホソヘリカメムシ、ナシグンバイ等の半翅目害虫;イネミズゾウムシ、イネドロオイムシ、キスジノミハムシ、コロラドハムシ、テンサイトビハムシ、ディアブロチカ属(Diabrotica spp.)、クリヤケシキスイ、ニジュウヤホシテントウ、インゲンマメゾウムシ、アズキゾウムシ、ヨツモンマメゾウムシ、ドウガネブイブイ、ヒメコガネ、マメコガネ、ゴマダラカミキリ、タバコシバンムシ、ヒメマルカツオブシムシ、コクヌストモドキ、ヒラタキクイムシ等の鞘翅目害虫;ナミハダニ、カンザワハダニ、ミカンハダニ、リンゴハダニ、チャノホコリダニ、ミカンサビダニ、ニセナシサビダニ等のダニ目害虫などをあげることができるが、本発明はこれらの例により限定されるものではない。
本発明の養液栽培における光による防除と微生物による防除の組み合わせにより高い防除効果が期待される植物としては、穀類(例えば、イネ、コムギ、オオムギ、トウモロコシ、ソバ)、イモ類(例えば、ジャガイモ、サツマイモ、サトイモ、ヤマイモ)、マメ類(例えば、ダイズ、インゲン、アズキ、エンドウ)、野菜類(例えば、ウリ類、トマト、ナス、ピーマン、キャベツ、ハクサイ、ダイコン、レタス、ニンジン、ネギ、タマネギ、イチゴ、ホウレンソウ、セロリ)、果樹(例えば、リンゴ、ナシ、オウトウ、モモ、ブドウ、カキ、カンキツ類、キウイ)、特用作物(例えば、ワタ、ナタネ、ヒマワリ、ビート、サトウキビ、タバコ)、芝、樹木、観賞用植物(例えば、バラ、キク、チューリップ、カスミ草、トルコキキョウ、等)などをあげることができるが、本発明はこれらの例により限定されるものではない。
本発明の農園芸用組成物(微生物農薬)は、水耕栽培における養液中にそのまま直接施用するか、あるいは水などで希釈して施用することができる。そのまま直接施用する場合は、水耕栽培システム中の養液中に直接投入する方法、あるいは育苗段階で育苗用マットに付着させて養液中に投入する方法、または水耕システム外で養液に投入する方法があげられるが、これらに限定されるものではない。水などで希釈して施用する場合は、水和剤、粒剤、懸濁製剤、乳剤などを、使用に適する濃度になるよう水で希釈し、その懸濁液を水耕栽培システム中の養液中に直接投入する方法、あるいは育苗段階で育苗用マットに含浸させて養液中に投入する方法、または水耕システム外で養液に投入する方法があげられるが、これらに限定されるものではない。なお、本発明の農園芸用組成物を施用するために希釈する水には、必要に応じて展着剤、肥料、他の農薬を添加することも可能である。更に、本発明の農園芸用組成物は、環境への負荷を高めない(本発明における環境への負荷軽減作用を充分に発揮させる)範囲であれば他の殺菌剤、殺虫剤、殺線虫剤、除草剤、植物生長調節剤、肥料、土壌改良資材等と混合施用、交互施用、または同時施用することも可能である。
本発明の農園芸用組成物(微生物農薬)の施用量は、病害虫の種類、適用植物の種類、剤型等によって異なるため、一概に規定できないが、例えば水耕栽培用養液中に、芽胞又は胞子若しくは菌体の濃度として10〜1010cfu(コロニー形成単位)/mlであり、好ましくは10〜10cfu/mlである。また、施用する養液量に制限はない。
以下、本発明の実施例について述べるが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内においてこれらの様々な変形が可能である。
(製造例1:湿菌体の製造)
静岡県内の空気中より分離されたバシルスsp.D747菌株(FERM BP−8234)を平板培地上で培養し、分離したコロニーをフラスコに植菌し、20mlのブイヨン培地(肉エキス1%、ペプトン1%、塩化ナトリウム0.5%)で、27℃、120rpm、1日間振盪培養した。得られた培養液をグルコース1%、可溶性澱粉2%、ポリペプトン0.5%、乾燥酵母1%、脱脂大豆1%、KHPO0.2%、NaCl0.2%、炭酸カルシウム0.3%を含む、pH6.0の培地20Lに植菌し27℃、120rpm、3日間振盪培養した後、遠心集菌(10,000×g,15分間)し、滅菌水中に懸濁し、培地成分を洗浄した。この操作を2回行い、湿重量約1kgの湿菌体(芽胞画分)を得た。この芽胞画分はバシルスsp.D747の芽胞を乾燥重量で50重量%含有するものである。
(試験例1:ホウレンソウ立枯病防除効果確認試験I)
ビニールハウス内の水耕ベッドに3〜4葉期のホウレンソウ(品種:アクティオン)を定植し、大塚ハウス1号(商品名)肥料1,500gと大塚ハウス2号(商品名)肥料1,000gを1,000リットルの水に配合した水耕液(大塚A処方)で1週間栽培したものを供試植物として用いた。水耕液にバシルス・エスピーD747株芽胞懸濁液(1×1011cfu/ml)を水耕液の1/1000容量投入し、その翌日にホウレンソウ立枯病菌(Pythium ultimum NBRC32426)を25℃でポテトデキストロース寒天培地を用いて4日間培養した菌叢をガーゼに包み、水耕ベッドの培養液中に沈めて接種した。光照射は、緑色光源としてカラー蛍光ランプ(形名FL40S・G、ピーク波長529nm;東芝ライテック株式会社製)を用い且つ440nm以下の波長の光をカットするフィルターを装着し、80μmol/m/sの光量子束密度で、定植時より3日に1回ずつ試験終了時まで、夜間に2時間照射した(試験期間中の照射回数としては計10回)。定植1ヶ月後に各区の株の発病の有無を調査し、下記の数1の式により発病株率(%)を、数2の式により防除価(%)を求めた。
Figure 2013014573
Figure 2013014573
2種類の防除手段を併用して処理した際に期待される防除効果は、コルビー(Colby)の計算式より求めることができる(除草剤の組み合わせの相乗的及び拮抗的反応の計算:Calculating Synergistic and Antagonistic Responses of Herbicide Combination、 Weed 15、20〜22ページ、1967)。コルビー(Colby)の計算式を下記数3に示す。
Figure 2013014573
上記の数3の式で、Xは一方の防除手段を施した場合の防除効果(防除価)を表し、Yは他方の防除手段を施した場合の防除効果(防除価)を表わす。その場合、Eは前者の防除手段と後者の防除手段を併用した場合の防除効果(防除価)の相加作用による期待値を表している。
本発明の光と微生物の併用による防除効果が、Xとしてバシルスsp.D747のみを処理した防除効果、Yとして光照射のみを処理した防除効果を用いてコルビー(Colby)の計算式より求められた計算値(E)より大きくなれば、この組み合わせによる防除効果が相乗効果により発揮されていることを示すこととなる。試験によって得られた実験値の防除価(%)、及びコルビーの計算式より求められた計算値の防除価(%)を下記表1に示した。
Figure 2013014573
(試験例2:ホウレンソウ立枯病防除効果確認試験II)
ビニールハウス内の水耕ベッドに3〜4葉期のホウレンソウ(品種:アクティオン)を定植し、大塚ハウス1号(商品名)肥料1,500gと大塚ハウス2号(商品名)肥料1,000gを1,000リットルの水に配合した水耕液(大塚A処方)で1週間栽培したものを供試植物として用いた。水耕液にエコメイト(エルビニア・カロトボーラ(Erwinia carotovora)CGE234M403株;クミアイ化学工業株式会社製、登録商標)を水耕液100リットル当たり90g投入し、ホウレンソウ立枯病菌(Pythium ultimum NBRC32426)を25℃でポテトデキストロース寒天培地を用いて4日間培養した菌叢をガーゼに包んだものをエコメイト投入2日後、9日後、13日後の3回水耕ベッドの培養液中に沈めて接種した。光照射は、緑色光源としてカラー蛍光ランプ(形名FL40S・G、ピーク波長529nm;東芝ライテック株式会社製)を用い且つ440nm以下の波長の光をカットするフィルターを装着し、赤色光源としてカラー蛍光ランプ(形名FL40S・R、ピーク波長660nm付近;パナソニック株式会社製)を用い、65μmol/m/sの光量子束密度で、定植時より3日に1回ずつ試験終了時まで、夜間に2時間照射した(試験期間中の照射回数としては計11回)。定植1ヶ月後に各区の株の発病の有無を調査し、上記の数1の式により発病株率(%)を、数2の式により防除価(%)を求めた。
この結果を下記表2に示した。本発明の構成(エコメイト処理及び光照射の併用)により、無処理だけでなくエコメイト処理のみ、光照射のみよりも高い防除価が得られることが示された。
Figure 2013014573
(試験例3:イネばか苗病防除効果確認試験)
開花期にイネばか苗病菌(Gibberella fujikuroi)を接種し感染させたイネ(品種:短銀坊主)の罹病籾を、15℃で5日間、水に浸漬(体積浴比は籾1に対して水2)した後、水を捨て、気温30℃の暗黒条件湿室に1日間保って催芽させた。ロックウール(やさいはなブロック30;日本ロックウール株式会社製)の10ブロックをプラスチックトレーに置き、1ブロック(31mm×31mm)当たり12粒の催芽籾を播種した。エコホープ(トリコデルマ・アトロビリデ(Trichoderma atroviride)SKT−1株,1×10cfu/ミリリットル;クミアイ化学工業株式会社製、登録商標)またはタフブロック(タラロマイセス・フラバス(Talaromyces flavus)SAY−Y−94−01株,1×10cfu/g;出光興産株式会社製、登録商標)を水で100倍に希釈し、その希釈液を1ブロック当たり20ミリリットル滴下した。無処理の籾には水のみを同量滴下した。気温30℃の暗黒条件湿室に3日間保って出芽管理した後、大塚ハウス1号(商品名)肥料0.75gと大塚ハウス2号(商品名)肥料0.5gを1リットルの水に配合した培養液をそれぞれのプラスチックトレーに200ミリリットルずつ入れ、気温20℃、明期16時間、暗期8時間の植物培養装置の中で栽培管理した。
光照射は、緑色光源として緑色LEDロープライト(ピーク波長520nm)を用い、9μmol/m/sの光量子束密度で、青色光源としてカラー蛍光ランプ(形名FL20S・B、ピーク波長430nm;東芝ライテック株式会社製)を用い、10μmol/m/sの光量子束密度で、毎週3回(月、水、金曜日)、植物培養装置の中で暗期に処理した。2週間の光照射処理後に全苗について発病の有無を調査し、数4の式により発病苗率(%)を、数5の式により防除価(%)を求めた。
Figure 2013014573
Figure 2013014573
この結果を下記表3に示した。本発明の構成(エコホープ処理及び光照射の併用、タフブロック処理及び光照射の併用)により、無処理だけでなくエコホープ処理のみ、タフブロック処理のみ、光照射のみのいずれよりも高い防除価が得られることが示された。
Figure 2013014573
(試験例4:イネばか苗病防除効果確認試験)
開花期にイネばか苗病菌(Gibberella fujikuroi)を接種し感染させたイネ(品種:短銀坊主)の罹病籾を、15℃で5日間、水に浸漬(体積浴比は籾1に対して水2)した後、水を捨て、気温30℃の暗黒条件湿室に1日間保って催芽させた。ロックウール(やさいはなブロック30;日本ロックウール株式会社製)の10ブロックをプラスチックトレーに置き、1ブロック(31mm×31mm)当たり12粒の催芽籾を播種した。タフブロック(タラロマイセス・フラバス(Talaromyces flavus)SAY−Y−94−01株,1×10cfu/g;出光興産株式会社製、登録商標)を水で100倍に希釈し、その希釈液を1ブロック当たり20ミリリットル滴下した。無処理の籾には水のみを同量滴下した。気温30℃の暗黒条件湿室に3日間保って出芽管理した後、大塚ハウス1号(商品名)肥料0.75gと大塚ハウス2号(商品名)肥料0.5gを1リットルの水に配合した培養液をそれぞれのプラスチックトレーに200ミリリットルずつ入れ、気温20℃、明期16時間、暗期8時間の植物培養装置の中で栽培管理した。
光照射は、緑色LEDロープライト(ピーク波長520nm)を用い、9μmol/m/sの光量子束密度で毎週3回(月、水、金曜日)、植物培養装置の中で暗期に処理した。26日間の光照射処理後に全苗について発病の有無を調査し、上記の数4の式により発病苗率(%)を、数5の式により防除価(%)を求めた。
この結果を下記表4に示した。本発明の構成(タフブロック処理及び緑色光照射の併用)での長期処理により、無処理だけでなくタフブロック処理のみ、緑色光照射のみのいずれよりも高い防除価が得られることが示された。
Figure 2013014573
本発明を要約すれば次のとおりである。
すなわち本発明は、植物の養液栽培において、環境への負荷を軽減しながら高い防除効果を発揮し、幅広い防除対象(植物病害、害虫など)に有効な防除技術を提供することを目的とする。
そして、400〜750nmの波長域の光線のみ又は該波長域の光照度をこれ以外の波長域の光照度より強くした光線を植物に照射し、且つ、植物の病害防除効果及び/又は害虫防除効果を有する非病原性の微生物を添加した養液で植物を栽培することで、各種植物病害及び/又は害虫等を効果的に防除する。
本発明において寄託されている微生物の受託番号を下記に示す。
(1)バシルス・エスピー(Bacillus sp.)D747株(FERM BP−8234)。
(2)バークホルデリア・エスピー(Burkholderia sp.)CRSE−3株(NITE P−486)。
(3)トリコデルマ・アトロビリデ(Trichoderma atroviride)SKT−1株(FERM P−16510)。
(4)フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)SK−102株(FERM P−12965)。
(5)フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)SNF−356株(FERM P−16280)。

Claims (10)

  1. 400〜750nmの波長域の光線のみ又は該波長域の光照度をこれ以外の波長域の光照度より強くした光線を植物に照射し、且つ、植物の病害防除効果及び/又は害虫防除効果を有する非病原性の微生物を添加した養液で植物を栽培すること、を特徴とする養液栽培植物の病害防除及び/又は害虫防除方法。
  2. 430〜660nmの波長域の光線のみ又は該波長域の光照度をこれ以外の波長域の光照度より強くした光線を植物に照射すること、を特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 480〜580nmの波長域の光線のみ又は該波長域の光照度をこれ以外の波長域の光照度より強くした光線を植物に照射すること、を特徴とする請求項2に記載の方法。
  4. 植物の病害防除効果及び/又は害虫防除効果を有する非病原性の微生物が、非病原性の細菌又は糸状菌から選ばれる1又は2種以上であること、を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 植物の病害防除効果及び/又は害虫防除効果を有する非病原性の微生物が、バシルス(Bacillus)属に属する細菌、パエニバシルス(Paenibacillus)属に属する細菌、エルビニア(Erwinia)属に属する細菌、シュードモナス(Pseudomonas)属に属する細菌、バークホルデリア(Burkholderia)属に属する細菌、バリオボラックス(Variovorax)属に属する細菌、トリコデルマ(Trichoderma)属に属する糸状菌、フザリウム(Fusarium)属に属する糸状菌、タラロマイセス(Talaromyces)属に属する糸状菌、コニオチリウム(Coniothyrium)属に属する糸状菌から選ばれる1又は2種以上であること、を特徴とする請求項4に記載の方法。
  6. 植物の病害防除効果及び/又は害虫防除効果を有する非病原性の微生物が、バシルス・エスピー(Bacillus sp.)D747株、バシルス・サチリス(Bacillus subtilis)QST−713株、バシルス・サチリス(Bacillus subtilis)MBI600株、バシルス・サチリス(Bacillus subtilis)Y−1336株、バシルス・サチリス(Bacillus subtilis)HAI−0404株、バシルス・シンプレクス(Bacillus simplex)CGF2856株、エルビニア・カロトボーラ(Erwinia carotovora)CGE234M403株、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)G7090株、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)FPT−9601株、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)FPH−9601株、シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.)CAB−02株、バークホルデリア・エスピー(Burkholderia sp.)CRSE−3株、バリオボラックス・パラドクス(Variovorax paradoxus)CGF4526株、トリコデルマ・アトロビリデ(Trichoderma atroviride)SKT−1株、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)SK−102株、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)SNF−356株、タラロマイセス・フラバス(Talaromyces flavus)SAY−Y−94−01株、タラロマイセス・フラバス(Talaromyces flavus)B−422株、タラロマイセス・フラバス(Talaromyces flavus)胞子、コニオチリウム・ミニタンス(Coniothyrium minitans)CON/M/91−08株から選ばれる1又は2種以上であること、を特徴とする請求項5に記載の方法。
  7. 480〜580nmの波長域の光線のみ又は該波長域の光照度をこれ以外の波長域の光照度より強くした光線を植物に照射し、且つ、バシルス・エスピー(Bacillus sp.)D747株(FERM BP−8234)、エルビニア・カロトボーラ(Erwinia carotovora)CGE234M403株、トリコデルマ・アトロビリデ(Trichoderma atroviride)SKT−1株(FERM P−16510)、タラロマイセス・フラバス(Talaromyces flavus)SAY−Y−94−01株から選ばれる少なくともひとつを添加した養液で植物を栽培すること、を特徴とする養液栽培植物の病害防除及び/又は害虫防除方法。
  8. 光線の植物への照射を夜間のみ行うこと、を特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 植物への1時間以上の光線の照射を1日のうちに1回または複数回行い、それを1〜7日間隔で繰り返すこと、を特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 400〜750nmの波長域の光線のみ又は該波長域の光照度をこれ以外の波長域の光照度より強くした光線を植物に照射する手段と、養液栽培を行う手段とを備えていることを特徴とする、養液栽培植物の病害防除及び/又は害虫防除装置。
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