JP2013014286A - 車両接近通報装置およびプログラム - Google Patents

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Abstract

【課題】喧噪な場所では環境音に埋もれず、閑静な場所では不必要に大音量の騒音源とならない通報音を発生する車両接近通報装置を実現する。
【解決手段】DSP13は、通報音を含む環境音のオクターブ分析で得られた中心周波数f1〜f8の各オクターブバンドの音圧P1〜P8の内、通報音が含まれるオクターブバンドの音圧Poutから通報音の音圧Pgen分を減算して環境音のみのオクターブバンド特性を取得する。環境音のみのオクターブバンド特性から環境音の最も音圧が小さいオクターブバンド(中心周波数fmin)および環境音の最も音圧が大きいオクターブバンド(中心周波数fmax)の音圧Pmaxを検出する。環境音の最も音圧の小さいオクターブバンド(中心周波数fmin)において、環境音の最も音圧の大きいオクターブバンド(中心周波数fmax)の音圧Pmaxとほぼ同等の音圧Pgenの出力波形(通報音データ)を生成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、歩行者に車両の接近を知らしめる通報音を発生する車両接近通報装置およびプログラムに関する。
低速走行時にエンジンを用いずにモータ走行するEV(電気自動車)やHV(ハイブリッド車)は、走行音が静か過ぎる為、車両の接近に歩行者が気付き難く、安全面からの対策が望まれている。この為、近年では、車両の接近を歩行者に通報する装置が各種開発されており、例えば特許文献1には、走行方向前方に歩行者の存在を検知した場合に、その歩行者の後方から車両が接近していることを報知する技術が開示されている。
特開平7−209424号公報
ところで、上記特許文献1に開示の技術のように、単に歩行者に向けて報知音を放音するだけでは、例えば住宅街のような閑静な場所では騒音源に成りかねず、一方、繁華街のような騒がしい場所では環境音(周囲の音)に報知音が埋もれて歩行者に認知させることが難しい。つまり、言い換えれば、喧噪な場所であっても環境音に埋もれず、しかも閑静な場所では不必要に大音量の騒音源とならない通報音を発生することが出来ないという問題がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、喧噪な場所であっても環境音に埋もれず、しかも閑静な場所では不必要に大音量の騒音源とならない通報音を発生することができる車両接近通報装置およびプログラムを提供することを目的としている。
上記目的を達成するため、本発明の車両接近通報装置は、通報音が含まれる車両周囲の音を収音して周波数特性を分析する分析手段と、前記分析手段により分析された車両周囲の音の周波数特性から通報音成分を相殺して環境音のみの周波数特性を取得する取得手段と、前記取得手段により取得された環境音のみの周波数特性から最も音圧の小さい帯域および最も音圧の大きい帯域の音圧を検出する検出手段と、前記検出手段により検出された環境音の最も音圧の小さい帯域を周波数成分とし、前記検出手段により検出された環境音の最も音圧の大きい帯域の音圧と同等の発音音圧で前記通報音を発生する通報音発生手段とを具備することを特徴とする。
本発明では、喧噪な場所であっても環境音に埋もれず、しかも閑静な場所では不必要に大音量の騒音源とならない通報音を発生することが出来る。
実施の一形態による車両接近通報装置100の全体構成を示すブロック図である。 メインルーチンの動作を示すフローチャートである。 入力波形分析処理の動作を示すフローチャートである。 オクターブバンド中心周波数の一例を示す図である。 出力波形生成処理の動作を示すフローチャートである。
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
A.構成
図1は、本発明の実施の一形態による車両接近通報装置100の構成を示すブロック図である。車両に搭載される車両接近通報装置100は、マイク10、増幅器11、A/D変換器12、DSP(デジタル・シグナル・プロセッサ)13、入力ポート14、ROM15、RAM16、D/A変換器17、増幅器18およびスピーカ19から構成される。
マイク10は、無指向性を有し、例えば車両のルーフ部分(屋根)等に設置されて車両周囲の音(以下、環境音と称す)を収音して環境音信号を出力する。増幅器11は、マイク10から出力される環境音信号を所定レベルに増幅して次段のA/D変換器12に供給する。A/D変換器12は、所定のサンプリング周波数で環境音信号をPCMサンプリングして環境音データを発生する。
DSP13は、ROM15に格納される各種プログラムを実行して装置各部を制御する。本発明の要旨に係わるDSP13の特徴的な処理動作については追って述べる。入力ポート14は、車両側が発生する車速パルス信号を取り込んでDSP13に供給する。ROM15は、プログラムエリアおよびデータエリアを備える。ROM15のプログラムエリアには、DSP13が実行する各種プログラムデータが記憶される。ここで言う各種プログラムとは、後述するメインルーチン、入力波形分析処理および出力波形生成処理を含む。
RAM16は、ワークエリア、入力バッファエリアおよび出力バッファエリアを備える。RAM16のワークエリアには、DSP13の演算に用いられる各種レジスタ・フラグデータが一時記憶される。RAM16の入力バッファエリアには、DSP13の制御の下に、A/D変換器12から出力される環境音データが所定時間分(所定サンプル数分)取り込まれる。なお、入力バッファエリアに格納された所定時間分の環境音データは、後述する入力波形分析処理に用いられる。RAM16の出力バッファエリアには、後述する出力波形生成処理により生成される通報音データが所定時間分(所定サンプル数分)一時記憶される。
D/A変換器17は、DSP13の制御の下に、RAM16の出力バッファエリアから読み出される通報音データをアナログ形式の通報音信号に変換して出力する。増幅器18は、D/A変換器17から出力される通報音信号を所定レベルに増幅してスピーカ19に供給する。スピーカ19は、例えば車両前部バンパ近傍に配設され、車両進行方向に向けて通報音を放音する。
B.動作
次に、図2〜図5を参照して車両接近通報装置100が備えるDSP13の動作について説明する。以下では、最初にメインルーチンの動作を説明した後、このメインルーチンからコールされる入力波形分析処理および出力波形生成処理の各動作について述べる。
(1)メインルーチンの動作
上記構成による車両接近通報装置100がパワーオンされると、DSP13は図2に図示するメインルーチンを実行してステップSA1に進み、RAM16のワークエリアに格納される各種レジスタやフラグデータをゼロリセットしたり初期値セットしたりする他、RAM16の入出力バッファエリアを初期化するイニシャライズを行う。イニシャライズが完了すると、ステップSA2に進み、入力ポート14を介して車両側から入力される車速パルス信号に基づき車速が「0」でないか否か、つまり車両が走行中であるか否かを判別する車速モニタを開始する。
車両停止中であれば、ステップSA2の判断結果は「NO」になり、車速モニタを継続するが、車軸の回転に比例した車速パルス信号が入力され、これにより車両走行が検知されると、上記ステップSA2の判断結果は「YES」となり、ステップSA3に進む。そして、ステップSA3では、A/D変換器12から出力される環境音データを、RAM16の入力バッファエリアに所定時間分(所定サンプル数分)取り込む。
次いで、ステップSA4では、入力波形分析処理を実行する。入力波形分析処理では、後述するように、RAM16の入力バッファエリアに取り込んだ所定時間分(所定サンプル数分)の環境音データを順次読み出してFFT(高速フーリエ変換)処理を施して得られる周波数分析結果(各周波数成分毎の振幅スペクトル)について中心周波数f1〜f8の各オクターブバンド毎の音圧(オクターブバンドレベル)を検出するオクターブ分析を行い、スピーカ19から通報音を放音出力中ならば、その通報音を含む環境音のオクターブ分析で得られたオクターブバンド特性(中心周波数f1〜f8の各オクターブバンドの音圧P1〜P8)の内、通報音が含まれるオクターブバンドの音圧Poutを取得する。
音圧Poutが適正範囲に収まっている状態(状態フラグstatusが「OK」)ならば、通報音が含まれるオクターブバンドの音圧Poutから実際に放音される通報音の音圧Pgen分を減算し、中心周波数fnのオクターブバンドを環境音のみの音圧Pnに補正して環境音のみのオクターブバンド特性(中心周波数f1〜f8の各オクターブバンドの音圧P1〜P8)を取得する。この後、環境音のみのオクターブバンド特性(中心周波数f1〜f8の各オクターブバンドの音圧P1〜P8)の内、環境音の最も音圧が小さいオクターブバンドの中心周波数fminおよびその音圧Pminと、環境音の最も音圧が大きいオクターブバンドの中心周波数fmaxおよびその音圧Pmaxとをそれぞれ検出する。
続いて、ステップSA5では、出力波形生成処理を実行する。出力波形生成処理では、後述するように、入力波形分析処理で得られたオクターブ分析結果に基づき、環境音の最も音圧の小さいオクターブバンド(中心周波数fmin)において、通報音の音圧Poutが環境音の最も音圧の大きいオクターブバンド(中心周波数fmax)の音圧Pmaxとほぼ同等になる適正範囲(Pmax<Pout<Pmax+Pc)に収まるようにレベル制御された音圧Pgenの出力波形(通報音データ)を生成してRAM16の出力バッファエリアにストアする。
次いで、ステップSA6では、RAM16の出力バッファエリアにストアされた通報音データ(出力波形)を読み出してD/A変換器17に供給する。これにより、通報音データはアナログ形式の通報音信号に変換された後、増幅器18において音圧Pgenに相当するレベルに増幅されてスピーカ19から通報音として放音される。この後、上述のステップSA2に処理を戻し、車両走行中ならば、上記ステップSA2〜SA6を繰り返し、収音された環境音のオクターブ分析結果に応じて発音周波数帯域および音圧が変化する通報音を生成して放音する。
(2)入力波形分析処理の動作
次に、図3を参照して入力波形分析処理の動作を説明する。上述したメインルーチンのステップSA4(図2参照)を介して本処理が実行されると、DSP13は図3に図示するステップSB1に進み、RAM16の入力バッファエリアに取り込んだ所定時間分(所定サンプル数分)の環境音データを順次読み出し、続くステップSB2では、読み出した一連の環境音データにFFT(高速フーリエ変換)処理を施して公知の周波数分析を行う。
次いで、ステップSB3では、上記ステップSB2で得られた周波数分析結果(各周波数成分毎の振幅スペクトル)にオクターブ分析を施す。すなわち、図4に図示する各周波数f1〜f8をそれぞれ中心周波数とする各オクターブバンド(f/√2からf・√2までの1オクターブの帯域幅)の音圧(オクターブバンドレベル)P1〜P8を検出する。そして、ステップSB4に進み、スピーカ19から通報音を放音出力中であるか否かを判断する。通報音を放音出力中でなければ、判断結果は「NO」になり、後述のステップSB9に進む。
一方、通報音を放音出力中であると、上記ステップSB4の判断結果は「YES」となり、ステップSB5に進む。ステップSB5では、通報音を含む環境音のオクターブ分析で得られた中心周波数f1〜f8の各オクターブバンドの音圧P1〜P8の内、通報音が含まれるオクターブバンドの音圧Poutを取得する。
通報音が含まれるオクターブバンドは、後述の出力波形生成処理(図5参照)の動作説明において言及するが、環境音の最も音圧の小さいオクターブバンドとなる。そのオクターブバンドの中心周波数をfnと称す。中心周波数fnは、オクターブ分析に用いた各オクターブバンドの中心周波数f1〜f8のいずれかに該当するという表記である。
続いて、ステップSB6では、後述の出力波形生成処理(図5参照)において判別される状態フラグstatusが「OK」であるか否かを判断する。状態フラグstatusとは、出力波形(通報音データ)に基づき放音される通報音の状態を表すフラグであり、「OK」の場合には音圧Poutが適正範囲に収まっている状態を、「UNDER」の場合には音圧Poutが適正範囲より小さい状態を、「OVER」の場合には音圧Poutが適正範囲より大きい状態をそれぞれ指す。
状態フラグstatusが「OK」以外の「UNDER」又は「OVER」の何れかであると、上記ステップSB6の判断結果は「NO」になり、本処理を一旦終了させるが、音圧Poutが適正範囲に収まって状態フラグstatusが「OK」であると、上記ステップSB6の判断結果は「YES」になり、ステップSB7に進む。ステップSB7では、上記ステップSB5において取得した通報音が含まれるオクターブバンド(中心周波数fn)の音圧Poutから出力波形生成処理(後述する)において生成される通報音圧Pgenを減算して音圧Pnを算出する。
つまり、通報音を含んだ環境音のオクターブ分析で得られた中心周波数f1〜f8の各オクターブバンドの音圧P1〜P8の内、通報音が含まれるオクターブバンド(中心周波数fn)における環境音のみの音圧を実測することが出来ない。そこで、上記ステップSB7では、通報音が含まれるオクターブバンド(中心周波数fn)の音圧Poutから実際に放音される通報音圧Pgen分を減算することによって中心周波数fnのオクターブバンドを環境音のみの音圧Pnに補正する。
そして、ステップSB8では、通報音を含んだ環境音のオクターブ分析で得られた中心周波数f1〜f8の各オクターブバンドの音圧P1〜P8の内、上記ステップSB7で補正された中心周波数fnのオクターブバンドを環境音のみの音圧Pnに変更し、これにより環境音のみのオクターブバンド特性(中心周波数f1〜f8の各オクターブバンドの音圧P1〜P8)を取得する。この後、ステップSB9に進み、後述のステップSB10〜SB11において新たなfmin、Pmaxを検出する為、前回検出したfminの値をレジスタfminoldに、前回検出したPmaxの値をレジスタPmaxoldにそれぞれ退避格納する。
次いで、ステップSB10では、上記ステップSB8で取得された環境音のみのオクターブバンド特性(中心周波数f1〜f8の各オクターブバンドの音圧P1〜P8)から環境音の最も音圧が小さいオクターブバンドの中心周波数fminとその音圧Pminとを検出し、続くステップSB11では、環境音の最も音圧が大きいオクターブバンドの中心周波数fmaxとその音圧Pmaxとを検出して本処理を終える。
このように、入力波形分析処理では、RAM16の入力バッファエリアに取り込んだ所定時間分(所定サンプル数分)の環境音データを順次読み出してFFT(高速フーリエ変換)処理を施して周波数分析を行い、これにより得られる周波数分析結果(各周波数成分毎の振幅スペクトル)について中心周波数f1〜f8の各オクターブバンド毎の音圧(オクターブバンドレベル)を検出するオクターブ分析を行い、スピーカ19から通報音を放音出力中ならば、その通報音を含む環境音のオクターブ分析で得られた中心周波数f1〜f8の各オクターブバンドの音圧P1〜P8の内、通報音が含まれるオクターブバンドの音圧Poutを取得する。
そして、音圧Poutが適正範囲に収まっている状態(状態フラグstatusが「OK」)ならば、通報音が含まれるオクターブバンドの音圧Poutから実際に放音される通報音の音圧Pgen分を減算し、中心周波数fnのオクターブバンドを環境音のみの音圧Pnに補正することで環境音のみのオクターブバンド特性(中心周波数f1〜f8の各オクターブバンドの音圧P1〜P8)を取得する。この後、取得された環境音のみのオクターブバンド特性(中心周波数f1〜f8の各オクターブバンドの音圧P1〜P8)から環境音の最も音圧が小さいオクターブバンドの中心周波数fminおよびその音圧Pmin、環境音の最も音圧が大きいオクターブバンドの中心周波数fmaxおよびその音圧Pmaxをそれぞれ検出する。
(2)出力波形生成処理の動作
次に、図5を参照して出力波形生成処理の動作を説明する。前述したメインルーチンのステップSA5(図2参照)を介して本処理が実行されると、DSP13は図5に図示するステップSC1に処理を進め、上述の入力波形分析処理において今回検出された中心周波数fminと、レジスタfminoldに格納され、前回検出された中心周波数fminとが不一致であるか否か、つまり環境音の最も音圧が小さいオクターブバンドの中心周波数fminが前回から変化したかどうかを判断する。中心周波数fminが前回から変化していなければ、上記ステップSC1の判断結果は「NO」になり、ステップSC2に進み、一方、中心周波数fminが前回から変化していれば、上記ステップSC1の判断結果が「YES」になり、ステップSC3に進む。
ステップSC2では、上述の入力波形分析処理において今回検出された音圧Pmaxと、レジスタPmaxoldに格納され、前回検出された音圧Pmaxとの差分絶対値(変動分)が許容値Pcより大きいか否か、つまり環境音の最も音圧の大きいオクターブバンド(中心周波数fmax)の音圧Pmaxの前回からの変動分が許容値Pcを超えているかどうかを判断する。音圧Pmaxの前回からの変動分が許容値Pcを超えなければ、上記ステップSC2の判断結果は「NO」になり、後述のステップSC5に処理を進める。
一方、音圧Pmaxの前回からの変動分が許容値Pcを超えていると、上記ステップSC2の判断結果は「YES」となり、ステップSC3に進む。ステップSC3では、出力波形(通報音データ)の生成開始からの経過時間を計時するDSP13内部のタイマtimerの値が、生成波形変更最短時間Tcを超えているかどうかを判断する。タイマtimerの値が生成波形変更最短時間Tcを超えてなければ、判断結果は「NO」になり、後述のステップSC5に処理を進める。
一方、タイマtimerの値が生成波形変更最短時間Tcを超えていれば、上記ステップSC3の判断結果は「YES」になり、ステップSC4に進み、タイマtimerおよび音圧Poutをゼロリセットする。なお、音圧Poutは、前述した入力波形分析処理(図3参照)で取得されるものであり、通報音を含むオクターブバンドの音圧を指す。
このように、ステップSC1〜SC3では、環境音の最も音圧が小さいオクターブバンドの中心周波数fminが前回から変化し、かつタイマtimerの値が生成波形変更最短時間Tcを超えている場合や、環境音の最も音圧が小さいオクターブバンドの中心周波数fminが前回から変化していないが、環境音の最も音圧の大きいオクターブバンド(中心周波数fmax)の音圧Pmaxの前回からの変動分が許容値Pcを超え、かつタイマtimerの値が生成波形変更最短時間Tcを超えている場合に、ステップSC4に進み、音圧Poutを「0」にした後、ステップSC5以降を実行させる。つまり出力波形(通報音データ)の音圧を一旦ゼロにしてから新たな出力波形を生成し始める。
これに対し、環境音の最も音圧が小さいオクターブバンドの中心周波数fminが前回から変化しているが、タイマtimerの値が生成波形変更最短時間Tcを超えていない場合や、環境音の最も音圧が小さいオクターブバンドの中心周波数fminが前回から変化せず、かつ環境音の最も音圧の大きいオクターブバンド(中心周波数fmax)の音圧Pmaxの前回からの変動分が許容値Pcを超えていない場合には、ステップSC5に進み、現出力波形(通報音データ)の音圧Pgenを、前回の値としてレジスタPgenoldに退避格納する。つまり、前回生成された出力波形を引き継いで現出力波形を生成する。
続いて、ステップSC6では、通報音を含むオクターブバンドの音圧Poutが、環境音の最も音圧の大きいオクターブバンド(中心周波数fmax)の音圧Pmaxより大きいか否かを判断する。音圧Poutが音圧Pmaxより小さければ、判断結果は「NO」になり、ステップSC7に進み、レジスタPgenoldに格納される前回の音圧Pgenに定数Pc1を加算して現出力波形(通報音データ)の音圧Pgenを更新すると共に、Pout<Pmaxの状態を表す為に状態フラグstatusを「UNDER」に設定した後、後述のステップSC11に進む。
一方、音圧Poutが音圧Pmaxより大きいと、上記ステップSC6の判断結果は「YES」になり、ステップSC8に進む。ステップSC8では、音圧Poutが音圧Pmaxに増分値Pcを加算した値(Pmax+Pc)より小さいか否かを判断する。音圧Poutが音圧Pmaxより大きく、かつ音圧Pmaxに定数Pcを加算した値(Pmax+Pc)より小さい適正範囲(Pmax<Pout<Pmax+Pc)に収まっていれば、判断結果は「YES」になり、ステップSC9に進み、レジスタPgenoldに格納される前回の音圧Pgenを、そのまま現出力波形(通報音データ)の音圧Pgenに更新すると共に、音圧Poutが適正範囲に収まっている状態を表す為に状態フラグstatusを「OK」に設定した後、後述のステップSC11に進む。
これに対し、音圧Poutが音圧Pmaxに定数Pcを加算した値(Pmax+Pc)より大きいと、上記ステップSC8の判断結果は「NO」になり、ステップSC10に進む。ステップSC10では、レジスタPgenoldに格納される前回の音圧Pgenから定数Pc2を減算した値(Pgenold−Pc2)を、現出力波形(通報音データ)の音圧Pgenに更新すると共に、Pout>Pmax+Pcの状態を表す為に状態フラグstatusを「OVER」に設定した後、後述のステップSC11に進む。なお、上記定数Pc、Pc1、Pc2の関係はPc>Pc1>Pc2である。
こうして、環境音の最も音圧の大きいオクターブバンド(中心周波数fmax)の音圧Pmaxとほぼ同等になるように音圧Pgenが制御されると、ステップSC11に進み、環境音の最も音圧が小さいオクターブバンド(中心周波数fmin)において音圧Pgenの出力波形(通報音データ)を生成し、続くステップSC12では、生成された出力波形(通報音データ)をRAM16の出力バッファエリアにストアして本処理を終える。なお、出力波形(通報音データ)は、例えばDSP13において、ホワイトノイズ(あるいはピンクノイズ)を発生させ、これに中心周波数fminのオクターブバンドに相当する周波数帯域のバンドパスフィルタリングを施すことによって生成される。
このように、出力波形生成処理では、前述した入力波形分析処理(図3参照)で得られた環境音のオクターブ分析結果に基づき、通報音を含むオクターブバンドの音圧Poutが、環境音の最も音圧の大きいオクターブバンド(中心周波数fmax)の音圧Pmaxとほぼ同等になる適正範囲(Pmax<Pout<Pmax+Pc)に収まるよう追随的に制御された音圧Pgenの出力波形(通報音データ)を、環境音の最も音圧の小さいオクターブバンド(中心周波数fmin)で生成する。
以上説明したように、本実施の形態では、車両から供給される車速パルス信号に基づき車両の走行が検知されると、マイク10によって収音された環境音がサンプリングされ、環境音データとしてRAM16の入力バッファエリアに取り込んでFFT(高速フーリエ変換)処理による周波数分析を施し、さらに周波数分析結果にオクターブ分析を施して中心周波数f1〜f8の各オクターブバンド毎の音圧(オクターブバンドレベル)を検出する。
スピーカ19から通報音を放音出力中に環境音を収音した時には、通報音を含む環境音のオクターブ分析で得られた中心周波数f1〜f8の各オクターブバンドの音圧P1〜P8の内、通報音が含まれるオクターブバンドの音圧Poutが適正範囲に収まっている状態(状態フラグstatusが「OK」)ならば、通報音が含まれるオクターブバンドの音圧Poutから実際に放音される通報音の音圧Pgen分を減算し、中心周波数fnのオクターブバンドを環境音のみの音圧Pnに補正することで環境音のみのオクターブバンド特性(中心周波数f1〜f8の各オクターブバンドの音圧P1〜P8)を取得する。そして、取得した環境音のみのオクターブバンド特性(中心周波数f1〜f8の各オクターブバンドの音圧P1〜P8)から環境音の最も音圧が小さいオクターブバンドの中心周波数fminおよびその音圧Pminと、環境音の最も音圧が大きいオクターブバンドの中心周波数fmaxおよびその音圧Pmaxとをそれぞれ検出する。
そして、通報音が含まれるオクターブバンドの音圧Poutが、環境音の最も音圧の大きいオクターブバンド(中心周波数fmax)の音圧Pmaxとほぼ同等になる適正範囲(Pmax<Pout<Pmax+Pc)に収まるよう追随的に制御された音圧Pgenの出力波形(通報音データ)を、環境音の最も音圧の小さいオクターブバンド(中心周波数fmin)で生成するので、喧噪な場所であっても環境音に埋もれず、しかも閑静な場所では不必要に大音量の騒音源とならない通報音を発生することが可能になる。
なお、上述の実施形態では、車速パルス信号に基づき車両が走行しているかどうかを判別し、車両の走行が検知された場合に通報音を発生する形態としたが、これに限らず、車両が走行し始めてから所定速度に達するまでの間だけ通報音を発生する形態としても構わない。つまり、所定速度以上で車両が走行すると、タイヤと路面とで生じる走行音(ロードノイズ)が増大して通報音が不要になる為である。
また、本実施形態では、ホワイトノイズ(あるいはピンクノイズ)を基にして通報音を発生するようにしたが、これに限らず、環境音の最も音が小さい周波数帯域に合わせてフィルタリングした楽器音、チャイム音、人声音など歩行者が認知し易い音を通報音として用いる態様としてもよい。
以上、本発明の実施の一形態について説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、本願出願の特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。以下では、本願出願当初の特許請求の範囲に記載された各発明について付記する。
(付記)
[請求項1]
通報音が含まれる車両周囲の音を収音して周波数特性を分析する分析手段と、
前記分析手段により分析された車両周囲の音の周波数特性から通報音成分を相殺して環境音のみの周波数特性を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された環境音のみの周波数特性から最も音圧の小さい帯域および最も音圧の大きい帯域の音圧を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された環境音の最も音圧の小さい帯域を周波数成分とし、前記検出手段により検出された環境音の最も音圧の大きい帯域の音圧と同等の発音音圧で前記通報音を発生する通報音発生手段と
を具備することを特徴とする車両接近通報装置。
[請求項2]
前記分析手段は、
車両が走行しているか否かを検知する検知手段を有し、
当該検知手段によって車両の走行が検知された場合に、通報音が含まれる車両周囲の音を収音することを特徴とする請求項1記載の車両接近通報装置。
[請求項3]
前記取得手段は、前記分析手段により分析された車両周囲の音の周波数帯域の音圧の内、通報音が含まれる周波数帯域の音圧から当該通報音の発音音圧分を減算して環境音のみの周波数帯域特性を取得することを特徴とする請求項1記載の車両接近通報装置。
[請求項4]
コンピュータに、
通報音が含まれる車両周囲の音を収音して周波数特性を分析する分析ステップと、
前記分析ステップにて分析された車両周囲の音の周波数特性から通報音成分を相殺して環境音のみの周波数特性を取得する取得ステップと、
前記取得ステップにて取得された環境音のみの周波数特性から最も音圧の小さい帯域および最も音圧の大きい帯域の音圧を検出する検出ステップと、
前記検出ステップにて検出された環境音の最も音圧の小さい帯域を周波数成分とし、前記検出ステップにて検出された環境音の最も音圧の大きい帯域の音圧と同等の発音音圧で前記通報音を発生する通報音発生ステップと
を実行させることを特徴とするプログラム。
10 マイク
11 増幅器
12 A/D変換器
13 DSP
14 入力ポート
15 ROM
16 RAM
17 D/A変換器
18 増幅器
19 スピーカ
100 車両接近通報装置
上記目的を達成するため、本発明の車両接近通報装置は、通報音が含まれる車両周囲の音を収音して周波数特性を分析する分析手段と、前記分析手段により分析された車両周囲の音から環境音の周波数特性を取得する取得手段と、前記取得手段により取得された環境音の周波数特性から最も音圧の小さい帯域および最も音圧の大きい帯域の音圧を検出する検出手段と、前記検出手段により検出された環境音の最も音圧の小さい帯域を周波数成分とし、前記検出手段により検出された環境音の最も音圧の大きい帯域の音圧と同等の発音音圧で前記通報音を発生する通報音発生手段とを具備することを特徴とする。

Claims (4)

  1. 通報音が含まれる車両周囲の音を収音して周波数特性を分析する分析手段と、
    前記分析手段により分析された車両周囲の音の周波数特性から通報音成分を相殺して環境音のみの周波数特性を取得する取得手段と、
    前記取得手段により取得された環境音のみの周波数特性から最も音圧の小さい帯域および最も音圧の大きい帯域の音圧を検出する検出手段と、
    前記検出手段により検出された環境音の最も音圧の小さい帯域を周波数成分とし、前記検出手段により検出された環境音の最も音圧の大きい帯域の音圧と同等の発音音圧で前記通報音を発生する通報音発生手段と
    を具備することを特徴とする車両接近通報装置。
  2. 前記分析手段は、
    車両が走行しているか否かを検知する検知手段を有し、
    当該検知手段によって車両の走行が検知された場合に、通報音が含まれる車両周囲の音を収音することを特徴とする請求項1記載の車両接近通報装置。
  3. 前記取得手段は、前記分析手段により分析された車両周囲の音の周波数帯域の音圧の内、通報音が含まれる周波数帯域の音圧から当該通報音の発音音圧分を減算して環境音のみの周波数帯域特性を取得することを特徴とする請求項1記載の車両接近通報装置。
  4. コンピュータに、
    通報音が含まれる車両周囲の音を収音して周波数特性を分析する分析ステップと、
    前記分析ステップにて分析された車両周囲の音の周波数特性から通報音成分を相殺して環境音のみの周波数特性を取得する取得ステップと、
    前記取得ステップにて取得された環境音のみの周波数特性から最も音圧の小さい帯域および最も音圧の大きい帯域の音圧を検出する検出ステップと、
    前記検出ステップにて検出された環境音の最も音圧の小さい帯域を周波数成分とし、前記検出ステップにて検出された環境音の最も音圧の大きい帯域の音圧と同等の発音音圧で前記通報音を発生する通報音発生ステップと
    を実行させることを特徴とするプログラム。
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