JP2013011105A - 梁部材と鉛直部材との接合構造 - Google Patents

梁部材と鉛直部材との接合構造 Download PDF

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Abstract

【課題】繊維補強セメント系材料からなる短スパン梁などの梁部材と耐震壁や柱などの鉛直部材との接続構造において、梁部材が大きく変形したときの靭性が優れた接合構造を提供する。
【解決手段】予め梁主筋13とスターラップとが埋設され、セメントに短繊維を混入した繊維補強セメント系材料からなるプレキャスト部材であり、梁主筋13が側端面から突出する梁本体11と、柱主筋21と横筋25とが直交して配筋され、コンクリートからなるコア壁20との接合構造であって、梁主筋13と柱主筋21とが直交して配筋されるとともに、コア壁20の最も梁本体11側の柱主筋21aと梁本体11の側端面との間に、複数の梁主筋13の周囲を取り囲む端部スターラップ18が配設され、コンクリートを打設されて形成される。
【選択図】図1

Description

本発明は、梁部材と鉛直部材との接合構造に関する。特に、繊維補強セメント系材料から形成されたプレキャスト部材からなる梁部材と鉛直部材とのコンクリート接合構造に関する。
建築物の構造設計では、大地震などで部材が破壊しても急激に耐力が低下しないように靭性を確保する必要がある。そこで、梁、柱などの構造部材を剪断降伏する前に曲げ降伏するように設計することにより、剪断破壊して急激に耐力が低下することを防止している。特にコンクリート構造物では、梁が剪断降伏する前に曲げ降伏するように梁成に対する梁長さの比を大きくすることが望ましく、梁長さが短い短スパン梁を避けている。
しかし、実際には、敷地形状や建築物の平面計画、耐震壁等の構造部材の配置計画などによる制約によって、コンクリート構造物に短スパン梁を設ける必要が生じる。
また、近年、高層建築物のコア部分にコア壁を設け、このコア壁によって地震力の大部分を負担させる構造が提案されている。このような構造の場合、小さな開口幅のコア壁を計画することが多く、開口上に設けられる梁は短スパン梁となる。
以上のように、短スパン梁は、大地震時などの高応力下で大きな変形を強いられるため、変形能力に優れ、大変形時での剪断耐力を大きなものとする必要がある。
そこで、梁部材などのコンクリート構造体を、短繊維をセメント系材料に混入して高靭性とした繊維補強繊維補強セメント系材料から形成することが想到される。例えば、特許文献1には、PVA(Polyvinyl Alcoholポリビニルアルコール:ビニロン)短繊維がセメント系材料に混入され、硬化体の引張試験で引張歪が1%以上を示す繊維補強セメント系材料が記載されている。
そして、特許文献2には、中央部分は繊維補強セメント系材料で、両端部は通常のコンクリート材料でそれぞれ形成したプレキャスト部材によって、短スパン梁を構築することが記載されている。
特開2000−7395号公報 特許第3942973号公報
しかしながら、本願発明者が、短スパン梁全体が繊維補強セメント系材料からなる試験体を作成し、この試験体からなるコンクリート構造物に対して正負交番繰り返し加力実験を行った結果、梁主筋が破断して、予期したよりも小さな変形で急激に剪断耐力が低下することが分かった。
本発明は、以上の点に鑑み、繊維補強セメント系材料からなる短スパン梁などの梁部材と耐震壁や柱などの鉛直部材との接続構造において、梁部材が大きく変形したときの靭性が優れた接合構造を提供することを目的とする。
上記実験で、梁主筋が破断して、予期したよりも小さな変形で急激に剪断耐力が低下した原因は、以下のように、梁主筋の挙動にあると考えられる。
梁部材と鉛直部材との接合面に肌分れが生じた場合、接合面の圧縮側端部を中心とした扇状に隙間が生じ、荷重が小さくなると、この扇が閉じて隙間が小さくなる。そして、引張荷重のとき、梁主筋は接合部の隙間から抜け出して伸びるが、圧縮荷重になっても梁主筋の一部は接合部内に戻りきれず、この戻りきれない部分が座屈して大きく曲げ変形する。その後、再び、引張荷重になると、座屈した部分が強制的に伸ばされる。このような繰り返しの結果、梁主筋は座屈が生じた範囲に疲労が蓄積して破断に至ると考えられる。
普通コンクリートからなる梁部材の場合、比較的小さな変形で梁部材の隅角部のコンクリートが大きくひび割れ、梁主筋の拘束がなくなる。このため、梁主筋の伸縮は主に梁部材に生じており、梁主筋に疲労が特定の箇所に蓄積しにくく、梁部材のスターラップで座屈が拘束される。
これに対して、繊維補強セメント系材料からなる梁部材の場合、大きく変形しても梁部材の隅角部に大きなひび割れや脱落が生じず、梁主筋の伸縮は主に鉛直部材の接合面から縦筋までの狭い範囲のみで発生する。そのため、梁主筋に疲労が蓄積しやすく、スターラップ等の拘束がないので、座屈が生じやすい。このようにして、予期したよりも小さな変形で急激に剪断耐力が低下すると考えられる。
本発明は、予め梁主筋とスターラップとが埋設され、セメントに短繊維を混入した繊維補強セメント系材料からなるプレキャスト部材であり、前記梁主筋が側端面から突出する梁部材と、縦筋と横筋とが直交して配筋され、コンクリートからなる鉛直部材との接合構造であって、前記梁主筋と前記縦筋とが直交して配筋されるとともに、前記鉛直部材の最も前記梁部材側の前記縦筋と前記梁部材の側端面との間に、前記突出した複数の梁主筋の周囲を取り囲む端部スターラップが配設され、コンクリートを打設されて形成されることを特徴とする。
上述したように、扇形の隙間が閉じる過程で梁主筋には扇形外向き方向の力が作用し、コアコンクリート(鉄筋かご内のコンクリート)が梁部材の中心方向への変形を妨げるので、梁主筋は梁部材断面の外周方向に座屈する。そこで、本発明では、鉛直部材の最も梁部材側の縦筋と梁部材の側端面との間に、梁部材から突出した複数の梁主筋の周囲を取り囲む端部スターラップを配設している。この端部スターラップの拘束力によって梁主筋の梁部材断面の外周方向に変形を抑制することができ、梁主筋が座屈することを防止することが可能となる。これにより、梁部材が大きく変形したときの靭性が優れたものとなる。
端部スターラップを設置するためには、梁部材の側端面と鉛直部材の最も梁部材側の縦筋との距離を大きく設定する必要があり、通常のコンクリートかぶり厚さだけでは収まらないことがある。鉛直部材側から梁部材の側端面まで梁型を突出させた場合、この突出部は通常のコンクリートによる梁端部と同じくかぶりコンクリートに大きなひび割れが生じやすく、梁部材が繊維補強セメント系材料からなる利点が乏しい。
そこで、本発明において、前記鉛直部材の前記梁部材側の側端面が前記梁部材の内側方向に前記梁部材の端面を超えるように、前記鉛直部材の側面にコンクリートが増し打ちされていることが好ましい。
これにより、繊維補強セメント系材料からなることによる梁部材の優れた性能を十分に発揮することができる。
さらに、本発明において、前記鉛直部材の最も前記梁部材側の前記縦筋よりも前記鉛直部材内側において、前記突出する梁主筋の周囲を取り囲む柱内端部スターラップが配設されることが好ましい。
この場合、柱内端部スターラップは、鉛直部材内で梁主筋が梁部材の外周方向に変形することを防止する機能を果たし、端部スターラップによる座屈抑制機能を補助することができる。
本発明の実施形態に係る短スパン梁部材とコア壁との接合構造を示す上面図。 短スパン梁部材とコア壁との接合構造を示す側面図。 短スパン梁部材の側面図。 短スパン梁部材の上面図。 コア壁の配筋構成を示す側面図。 コア壁の配筋に短スパン梁部材を建て込んだ状態を示す側面図。
本発明の実施形態に係る梁部材と鉛直部材との接合構造について図面を参照して説明する。ここでは、図1及び図2を参照して、梁部材である短スパン梁部材10と鉛直部材であるコア壁20との接合構造について説明する。なお、短スパン梁とは、スパン比が1.2〜1.5程度の梁をいう。
短スパン梁部材10は、繊維補強セメント系材料(又は繊維補強モルタル材料)からなるプレキャスト部材である。繊維補強セメント系材料は、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、PVA(ビニロン)繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、鋼繊維などの短繊維を補強材としてセメントマトリクス中に3次元方向にランダムに分散配合したものである。このような混入した繊維補強セメント系材料からなるプレキャスト部材は、高い変形能力を有し、靱性に優れている。
繊維補強セメント系材料は、一例として、直径0.04mm、長さ12mm、強度1600N/mmのPVA短繊維を1.0〜2.0%含み、増粘剤、高性能AE減水剤、収縮低減剤、膨張剤が混和され、材料強度Fcが30〜48N/m、水セメント比が35〜55%、スランプフローが50±7.5cm、空気量が8.0±1.5%のものを用いることができる。
実施形態では、図3及び図4を参照して、短スパン梁部材10は、短スパン梁を構成する梁本体11の上部に、板状の床スラブ体12を一体化してプレキャストで設けたプレキャスト合成梁である。
梁本体11には、予め複数の梁主筋13と梁主筋13を拘束する図示しない複数のスターラップ(剪断補強筋)とが埋設されている。そして、梁本体11の長手方向の両側端面から複数の梁主筋13が突出している。
床スラブ体12には、予め複数のスラブ筋14が埋設されている。そして、短手方向に延びる図示しない複数のスラブ筋の端面部分には、運搬を考慮してそれぞれ鉄筋継手(リレージョイント)15が連結されている。長手方向に延びる複数のスラブ筋14は両側端面から突出している。なお、短スパン梁部材10の配筋構成は、従来周知のものであればよく、特に限定されない。
さらに、突出した複数の梁主筋13には、フープラック16で仮固定されたフープ筋17が高さ方向に間隔を隔てて予め複数配設されている。また、突出した複数の梁主筋13には、これら梁主筋13を取り囲むスターラップ18,19が突出方向に間隔を隔てて予め複数配設されている。ここで、1つのスターラップ(端部スターラップ)18は、上面視で、梁本体11の側端面とフープ筋17との間に位置しており、他の1又は複数(図面では2)のスターラップ(柱内端部スターラップ)19は、上面視で、フープ筋17の内部に位置している。
以下、短スパン梁部材10の建方手順について説明する。
まず、図5を参照して、コア壁20(図1及び図2参照)の鉄筋を組み立てる。コア壁20の端部となる部分には、応力集中に備えて柱主筋(縦筋)21とフープ筋22とからなる柱型の鉄筋かご23を配設する。フープ筋22は、平面矩形状に配置された複数の柱主筋21を取り囲んで高さ方向に間隔を隔てて複数配設する。
コア壁20のその他の部分となる部分には、縦筋24と横筋25とを配設する。横筋25は、横方向に間隔を隔てて配置された複数の縦筋24と直交して高さ方向に間隔を隔てて複数配設する。コア壁20の交差する鉄筋21〜25は図示しない幅止め筋で固定する。フープ筋22及び横筋25の配設高さは、建て込まれる短スパン梁部材10の下端面未満とする。なお、コア壁20の配筋構成は、従来周知のものであればよく、特に限定されない。
そして、図6の左側を参照して、短スパン梁部材10の下端までコア壁用型枠26を組み立てる。
次に、フープ筋17及びスターラップ18,19を予め配設した短スパン梁部材10をコア壁20上方から、図示しない揚重機を使用して建て込む。このとき、梁本体11の側端面から突出した梁主筋13に仮固定されたフープ筋17を平面矩形状に配置された複数の柱主筋21を取り囲むように建て込み、梁主筋13及びフープ筋17と柱主筋21とを結束線等で結束する。
これにより、予め梁主筋13に連結された端部スターラップ18は、最も梁本体11側の柱主筋21aと梁本体11の側端面との間に位置し、柱内端部スターラップ19は、柱主筋21が形成する平面矩形状の内部に位置することになる。
次に、コア壁20の残りの横筋25を配筋して、これら横筋25を梁主筋13と連結する。そして、図6の右側を参照して、残りのコア壁用型枠27を建て込む。さらに、図示しないが、床スラブ体12の長手方向にスラブ筋14の差筋を行い、短手方向に鉄筋継手15にスラブ筋を連結して配筋を行い、スラブ天端まで図示しない床スラブ床用型枠を建て込む。
次に、図1及び図2を参照して、コンクリートを打設してコア壁20を形成する。コンクリート材料としては、普通コンクリートでも、高強度・超高強度コンクリートであってもよい。
その後、床スラブの型枠を脱型し、図示しないが、コア壁20以外について、配筋、型枠を組み、コンクリートを打設する。最後に、脱型する。これにより、短スパン梁部材10とコア壁20との接合構造が完成する。
以上のように、短スパン梁部材10とコア壁20との接合構造において、梁本体11は、繊維補強セメント系材料からなるプレキャスト部材であるので、微細なひび割れが部材全体に分散し部材全体が伸びるため、変形量が大きくなるまで急激に耐力が低下することがない。また、大きなひび割れが生じにくいため、地震で破損した場合でも、簡易な補修で建築物を使用することが可能となる。
そして、最も梁本体11側の柱主筋21aと梁本体11の側端面との間に、梁本体11から突出した複数の梁主筋13の周囲を取り囲む端部スターラップ18が配設されている。
端部スターラップ18は、梁主筋13が引張力によって抜け出した後、引張力が除荷されて圧縮力に転じる過程で、梁主筋13が梁本体11の外周方向に変形することを抑制する。これにより、端部スターラップ18は、梁主筋13の座屈を抑制する機能を果たすことになる。よって、梁本体11は大きく変形したときの靭性に優れたものとなる。
また、コア壁20の鉄筋かご23内に挿入した梁主筋13に、柱内端部スターラップ19が配設されている。柱内端部スターラップ19は、コア壁20で梁主筋13が梁本体11の外周方向に変形することを防止する機能を果たし、端部スターラップ18による座屈抑制機能を補助する。
ところで、端部スターラップ18を設置しているので、梁本体11の側端面とコア壁20の鉄筋かご23の間隔が大きくなり、通常のコンクリートかぶり厚さだけでは収まらない。コア壁20側から梁本体11の側端面まで梁型を突出させた場合、この突出部は普通コンクリートによる梁端部と同じくかぶり、コンクリートに大きなひび割れが生じやすく、梁本体11が繊維補強セメント系材料からなる利点が乏しい。
そこで、図1及び図2を参照して、梁本体11の側端面側にコア壁20の鉄筋かご23との間隔が長くなった分は、コア壁20の側面全体にコンクリートを増し打ちし、梁本体11の内側方向に梁本体11の側端面を超えるようにコア壁20を伸長させることが好ましい。この場合、鉄筋かご23の位置は変更せず、増し打ち部28が大きくなる場合には、コンクリートのひび割れ防止のために必要に応じてフカシ筋29を配筋すればよい。
なお、以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、梁部材である短スパン梁部材10であり、鉛直部材であるコア壁20である場合について説明したが、これに限定されない。例えば、梁部材は長スパン梁部材であってもよい。また、端部スターラップ18は、梁本体11の側端面と最も梁本体11側の柱主筋21aとの間であれば、複数配設してもよい。また、鉛直部材はコア壁以外の耐力壁や柱などであってもよい。
10…短スパン梁部材(梁部材)、 11…梁本体、 12…床スラブ体、 13…梁主筋、 14…スラブ筋、 15…鉄筋継手、 16…フープラック、 17…フープ筋、 18…端部スターラップ、 19…柱内端部スターラップ、 20…コア壁(鉛直部材)、 21…柱主筋(縦筋)、 21a…最も短スパン梁体側の柱主筋、 22…フープ筋、 23…鉄筋かご、 24…縦筋、 25…横筋、 26…コア壁用型枠、 27…残りのコア壁用型枠、 28…増し打ち部、 29…フカシ筋。

Claims (3)

  1. 予め梁主筋とスターラップとが埋設され、セメントに短繊維を混入した繊維補強セメント系材料からなるプレキャスト部材であり、前記梁主筋が側端面から突出する梁部材と、
    縦筋と横筋とが直交して配筋され、コンクリートからなる鉛直部材との接合構造であって、
    前記梁主筋と前記縦筋とが直交して配筋されるとともに、前記鉛直部材の最も前記梁部材側の前記縦筋と前記梁部材の側端面との間に、前記突出した複数の梁主筋の周囲を取り囲む端部スターラップが配設され、コンクリートを打設されて形成されることを特徴とする接合構造。
  2. 前記鉛直部材の前記梁部材側の側端面が前記梁部材の内側方向に前記梁部材の端面を超えるように、前記鉛直部材の側面にコンクリートが増し打ちされていることを特徴とする請求項1に記載の梁部材と鉛直部材との接合構造。
  3. 前記鉛直部材の最も前記梁部材側の前記縦筋よりも前記鉛直部材内側において、前記突出する梁主筋の周囲を取り囲む柱内端部スターラップが配設されることを特徴とする請求項1又は2に記載の梁部材と鉛直部材との接合構造。
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