JP2013008722A - ナノコンポジット熱電変換材料およびその製造方法 - Google Patents

ナノコンポジット熱電変換材料およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ゼーベック係数を高めることにより、フォノン散乱効果のみでは到達できなかった高い熱電特性を有するナノコンポジット熱電変換材料及びその製造方法を提供する。
【解決手段】熱電変換材料の複数の構成元素の塩を配合する際に、構成元素のうち半導体である1種の構成元素の塩を化学量論組成に対して過剰量に配合し、還元剤と混合して各構成元素のナノ粒子を含むスラリーとし、これを水熱合成して、化学両論組成の部分を合金化させて熱電変換材料のナノ粒子を形成するとともに、半導体である1種の構成元素のナノ粒子を作成し、得られたナノ粒子の混合粉末を焼結して、熱電変換材料からマトリクス中に半導体ナノ粒子が分散した前躯体を作成し、前躯体を熱間強加工することにより半導体ナノ粒子を塑性変形させて、熱電変換材料の電気伝導面内にかつ電気伝導方向に配向して配列した半導体ナノワイヤーを形成する、ナノコンポジット熱電変換材料の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、熱電変換材料のマトリクス中にナノサイズの粒子が分散したナノコンポジット熱電変換材料およびその製造方法に関する。
熱電変換材料は、2つの基本的な熱電効果であるゼーベック(Seebeck)効果及びペルチェ(Peltier)効果に基づき、熱エネルギと電気エネルギとの直接変換を行なうエネルギ材料である。
熱電変換材料を用いた熱電発電デバイスは、従来の発電技術に比べて、構造は簡単で、堅牢かつ耐久性が高く、可動部材は存在せず、マイクロ化が容易であり、メンテナンス不要で信頼性が高く、寿命が長く、騒音は発生せず、汚染も発生せず、低温の廃熱を利用可能であるといった多くの利点がある。
熱電変換材料を用いた熱電冷却デバイスも、従来の圧縮冷却技術に比べて、フロン不要で汚染は発生せず、小型化は容易で、可動部材は存在せず、騒音も発生しないなどの利点がある。
そのため、特に近年のエネルギ問題や環境問題の重大化に伴い、航空・宇宙、国防建設、地質及び気象観測、医療衛生、マイクロ電子などの領域や石油化工、冶金、電力工業における廃熱利用方面などの広範な用途への実用化が期待されている。
熱電変換材料の性能を評価する指数として、パワーファクターP=S2σおよび無次元性能指数ZT=(S2σ/κ)Tが用いられている。ここで、S:ゼーベック係数、σ:導電率、κ:熱伝導率、T:絶対温度である。すなわち、良好な熱電特性を得るには、ゼーベック係数Sおよび導電率σが高く、熱伝導率κが低いことが必要である。
特許文献1には、熱伝導率κを低減するためには、熱伝導の担い手の一つであるフォノンを散乱させることが有効であり、熱電変換材料マトリクス中にフォノン散乱用の粒子が分散したコンポジット熱電変換材料が提唱されている。
しかし、更に高い熱電特性を得るためには、フォノン散乱だけでは不十分であり、ゼーベック係数を高めたナノコンポジット熱電変換材料およびその製造方法が求められていた。
特開2011−3741号公報
本発明は、ゼーベック係数を高めることにより、従来のフォノン散乱効果のみでは到達できなかった高い熱電特性を有するナノコンポジット熱電変換材料およびその製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は下記〔1〕〔2〕〔3〕のナノコンポジット熱電変換材料の製造方法およびそれにより製造された下記〔4〕〔5〕のナノコンポジット熱電変換材料を提供する。
〔1〕熱電変換材料の複数の構成元素の塩を配合する際に、構成元素のうち半導体である1種の構成元素の塩を化学量論組成に対して過剰量に配合した第1溶液を作成する工程、
上記第1溶液を還元剤と混合して上記各構成元素のナノ粒子を含むスラリーを作成する工程、
上記スラリーを水熱合成して、上記化学両論組成の部分を合金化させて熱電変換材料のナノ粒子を形成するとともに、上記半導体である1種の構成元素のナノ粒子を作成する工程、
得られたナノ粒子の混合粉末を焼結して、熱電変換材料からマトリクス中に半導体ナノ粒子が分散した前躯体を作成する工程、および
上記前躯体を熱間強加工することにより上記半導体ナノ粒子を塑性変形させて、上記熱電変換材料の電気伝導面内にかつ電気伝導方向に配向して配列した半導体ナノワイヤーを形成する工程
を含むナノコンポジット熱電変換材料の製造方法。
〔2〕上記〔1〕において、上記水熱合成による合金化を不完全に行なうことにより、上記化学量論組成で合金化した熱電変換材料のナノ粒子と、上記半導体である1種の構成元素を含む未合金化の各構成元素のナノ粒子とを作成することを特徴とするナノコンポジット熱電変換材料の製造方法。
〔3〕熱電変換材料の複数の構成元素のうち半導体である1種の構成元素を化学量論組成に対して過剰量になる割合で含む薄膜積層構造を作成する工程、および
上記薄膜積層構造を真空中で熱処理することにより、上記半導体である1種の構成元素から成る半導体ナノワイヤーが上記熱電変換材料の電気伝導面内にかつ電気伝導方向に配向して配列した構造を形成する工程
を含むナノコンポジット熱電変換材料の製造方法。
〔4〕請求項1から3によって製造され、熱電変換材料マトリクス中に、半導体ナノワイヤーが電気伝導面内にかつ電気伝導方向に配向して配列していることを特徴とするナノコンポジット熱電変換材料。
〔5〕上記〔2〕によって製造され、一対の上記半導体ナノワイヤーが上記熱電変換材料のマトリクス相を挟んでユニットを形成していることを特徴とするナノコンポジット熱電変換材料。
本発明の方法によれば、半導体ナノワイヤーが熱電変換材料マトリクスの電気伝導面内にかつ電気伝導方向に配向して配列していることにより、ナノオーダーのワイヤー内への量子閉じ込め効果により電子密度が向上し、ゼーベック係数Sが高くなる。同時に、半導体ナノワイヤーはフォノン散乱効果をも発揮するので、従来と同様に熱伝導率κが低下する。これにより、従来のフォノン散乱効果のみによる熱電特性の向上を大きく超えて、ゼーベック係数向上による熱電特性が大幅に向上する。
更に、本発明の方法により、一対の半導体ナノワイヤー間に熱電変換材料を挟み込むことにより、挟み込まれた熱電変換材料においても量子閉じ込め効果が発現し、熱電特性が一層高まる。
本発明の方法〔1〕において熱間強加工により配向構造を形成する機構を模式的に示す。 本発明の方法〔2〕において熱間強加工により積層ユニットの配向構造を形成する機構を模式的に示す。 本発明の方法〔3〕により形成される薄膜積層構造を模式的に示す。 本発明の方法〔1〕による実施例1においてナノ粒子を合成する手順を示すチャートである。 実施例1で作成した本発明のナノコンポジット熱電変換材料のXRDチャートである。 実施例1で作成した本発明のナノコンポジット熱電変換材料のTEM写真である。 実施例2で作成した本発明のナノコンポジット熱電変換材料のXRDチャートである。 実施例2で作成した本発明のナノコンポジット熱電変換材料のTEM写真およびTEM−EELS写真である。 実施例3で作成した本発明のナノコンポジット熱電変換材料のXRDチャートである。 実施例4で作成した薄膜積層構造を模式的に示す。 実施例4で作成した薄膜積層構造を有する本発明のナノコンポジット熱電変換材料について、ゼーベック係数の温度依存性を示す。
<製造方法〔1〕の説明>
本発明の製造方法〔1〕は、熱電変換材料の構成元素の塩を還元して、各構成元素のナノ粒子を析出させ、これを水熱合成すると、化学量論組成に対応する構成元素部分は合金化して熱電変換材料マトリクスとなり、化学量論組成に対して過剰な半導体元素はナノ粒子となる。この混合粉末を焼結して熱電変換材料マトリクス中に半導体ナノ粒子が分散した前躯体とする。
次いで、これを熱間強加工すると、半導体ナノ粒子が塑性変形して熱電変換材料の電気伝導面内にかつ電気伝導方向に配向して配列した半導体ナノワイヤーとなる。熱間強加工の方法は特に限定する必要はなく、鍛造(プレス)、圧延など、一般に金属材料の熱間加工に用いられる方法であってよい。
典型的には、図1(1)〜(2)に示すように、マトリクスM中にナノ粒子Pが分散している焼結体に加工力Fを負荷して熱間強加工を施すとすべり面Sで結晶すべりが発生し、マトリクスMが回転R1すると共にナノ粒子Pも回転R2を起こし、結晶面Aが加圧面に対して垂直になるように配列する。最終的にはナノ粒子Pは、結晶成長によりナノワイヤーWの形状になって(3)に示すようにマトリクスMの電気伝導面内にかつ電気伝導方向に配向して配列する。すなわち(4)に示すように、熱電変換材料のマトリクスM内に半導体ナノワイヤーWが電気伝導面内にかつ電気伝導方向Dに配向して配列される。
ナノワイヤーは一般に、径が20nm以下、好ましくは10nm以下、より好ましくは5nm以下である。
ナノワイヤーは一般に、長さが10nm以上、好ましくは50nm以上である。
このようなナノサイズの半導体ワイヤー内では、量子閉じ込め効果が発現し、電子の状態密度が向上する。
本発明の特徴として、熱電変換特性を表す無次元性能指数はZT=(S2σ/κ)Tで表され、ゼーベック係数Sの2乗に比例するため、ゼーベック係数Sの向上により熱電変換特性が大幅に向上する。
更に、半導体ナノワイヤーは熱伝導方向(電気伝導方向)に対して垂直なフォノン散乱面があるため、従来と同様にフォノン散乱効果により熱伝導係数κが低下して、無次元性能指数が向上する。
ナノワイヤーの体積分率は一般に、1〜50vol%、より好ましくは5〜30vol%である。50vol%を超えるとナノコンポジットの作成が困難になる。
ナノワイヤーは、電気伝導方向に長辺が平行になるように配向することが好ましい。
ナノワイヤーは、結晶方位が長辺方向に配向しているか又は単結晶から成ることが好ましい。
ナノワイヤーの材料は、熱電特性の温度依存性がマトリクスに近いことが好ましい。
すなわち、ナノワイヤーおよびマトリクスの特性が最高になる温度域が近い材料を組み合わせる。
ナノワイヤーは、マトリクス以上のゼーベック係数を有する材料を選択する。
典型例を示せば、マトリクス材料としては、一般に高性能として知られている熱電変換材料で、(Bi,Sb)(Te,Se)系、CoSb系、PbTe系、SiGe系等から選択することができる。
また、ナノワイヤー材料としては、マトリクス材料と反応性がなく、同じ温度域で性能が最大となる材料であればよい。本発明の方法〔1〕〔2〕では、マトリクス材料の構成元素から選択した半導体元素を用いる。
<製造方法〔2〕の説明>
本発明の方法〔2〕は、本発明の方法〔1〕よりも更に高い熱電変換特性が得られる。
すなわち、本発明の方法〔2〕の特徴は、本発明の方法〔1〕の水熱合成工程で合金化を不完全に行なうことにより、化学量論組成で合金化した熱電変換材料のナノ粒子と、半導体である1種の構成元素を含む未合金化の各構成元素のナノ粒子とを作成する。
次いで、本発明の方法〔1〕と同様に、焼結してバルク化した後、熱間強加工を行なう。上記の水熱合成で合金化を不完全に行なったことにより、この熱間強加工では下記の反応が起きる。
すなわち図2(1)〜(2)に示すように、合金化したマトリクスM中に未合金化のナノ粒子P(半導体元素)およびQ(P以外の構成元素)が分散している焼結体に加工力Fを負荷して熱間強加工を施すとすべり面Sで結晶すべりが発生し、マトリクスMおよびナノ粒子P、Qがそれぞれ回転R1およびR2を起こし、結晶面Aが加圧面に対して垂直になるように配列する。
ここで、この方法〔2〕の特徴として、熱間強加工中に、未合金化状態の半導体ナノ粒子Pと未合金化状態のP以外の構成元素のナノ粒子Qとの更なる合金化も進行する。そして、過剰分のナノ粒子Pは結晶成長によりナノワイヤーWの形状になり、同時に、ナノワイヤーWの間の狭い領域に上記更なる合金化によって生成した熱電変換材料のマトリクスが挟まれて積層ユニットUが形成される。このユニットUのマトリクス領域の幅はナノワイヤーWと同等のナノサイズであり、量子閉じ込め効果を発現する。すなわち、ナノワイヤーによる量子閉じ込め効果とナノワイヤー間のマトリクス領域での量子閉じ込め効果とによって、方法〔1〕によるよりも更に大きなゼーベック係数の向上効果が得られ、それによって熱電変換特性が更に向上する。
<製造方法〔3〕の説明>
本発明の方法〔3〕は、本発明の方法〔1〕と同様の構造を薄膜積層構造として実現するものである。
すなわち、本発明の方法〔3〕の特徴は、熱電変換材料の複数の構成元素で薄膜積層構造を作成し、これを真空中で熱処理すると、化学量論組成に対応する構成元素部分は熱電変換材料マトリクス層となり、化学量論組成に対して過剰な半導体元素はナノワイヤー層となって熱電変換材料の電気伝導面内にかつ電気伝導方向に配向して配列する。
図3に、方法〔3〕による構造を模式的に示す。基板T上に例えばスパッタリング等により熱電変換材料の構成元素を堆積させた後に熱処理すると、熱電変換材料マトリクス層M中に半導体ナノワイヤー層Wが電気伝導(熱伝導)面内かつ電気伝導(熱伝導)方向Dに配向して生成する。
薄膜積層構造の作成は、半導体薄膜プロセスに用いられるCVDあるいはPVDによって行なうことができる。
<製造方法〔1〕〔2〕〔3〕による構造>
本発明のナノコンポジット熱電変換材料は、本発明の方法〔1〕〜〔3〕によって製造することができ、その特徴は、熱電変換材料マトリクス中に、半導体ナノワイヤーが電気伝導面内にかつ電気伝導方向に配向して配列している構造にある。
このようなナノサイズの半導体ワイヤー内では、量子閉じ込め効果が発現し、電子の状態密度が向上する。
本発明の特徴として、熱電変換特性を表す無次元性能指数はZT=(S2σ/κ)Tで表され、ゼーベック係数Sの2乗に比例するため、ゼーベック係数Sの向上により熱電変換特性が大幅に向上する。
更に、半導体ナノワイヤーは熱伝導方向(電気伝導方向)に対して垂直なフォノン散乱面があるため、従来と同様にフォノン散乱効果により熱伝導係数κが低下して、無次元性能指数が向上する。
<製造方法〔2〕による望ましい構造>
特に、本発明の方法〔2〕によって製造される本発明のナノコンポジット熱電変換材料の特徴は、一対の半導体ナノワイヤーが熱電変換材料のマトリクス相を挟んで積層したユニットを形成している構造にある。
このユニットUのマトリクス領域の幅はナノワイヤーWと同等のナノサイズであり、量子閉じ込め効果を発現する。すなわち、ナノワイヤーによる量子閉じ込め効果とナノワイヤー間のマトリクス領域での量子閉じ込め効果とによって、方法〔1〕によるよりも更に大きなゼーベック係数の向上効果が得られ、それによって熱電変換特性が更に向上する。
〔実施例1〕
本発明の製造方法〔1〕により、熱電変換材料(Bi,Sb)Teのマトリクス中に半導体ナノワイヤー(Te)が分散したナノコンポジット熱電変換材料を製造した。
<ナノ粒子の合成>
図4に示したように、塩化ビスマス(BiCl)0.4g、塩化テルル(TeCl)3.2g、塩化アンチモン(SbCl)1.1gをエタノール100mLに溶解した原料溶液に、還元剤(NaBH)2.4gをエタノール100mLに溶解した還元剤溶液を滴下して、熱電変換材料(Bi,Sb)Teの構成元素Bi,Sb,Teのナノ粒子を合成した。その際、最初の原料溶液において、Bi,Sbは化学量論組成(Bi,Sb)Teに対応する配合量とし、Teは化学量論組成(Bi,Sb)Teに対して過剰量を配合した。
得られたナノ粒子を含んだエタノールスラリーを、水1Lでろ過洗浄し、更にエタノール300mLでろ過洗浄した。
<合金化>
次いで、密閉したオートクレーブ中にて、240℃で48h保持する水熱合成を行なった。これにより、化学量論組成(Bi,Sb)Teで合金化した熱電変換材料のナノ粒子と、過剰に配合したTe単体のナノ粒子とが得られた。このTeナノ粒子は最終的にはTe半導体ナノワイヤーとなるものである。
ここで半導体ナノワイヤーの材料としてTeを選択したのは下記の理由による。
(1)Teは他の構成元素Bi、Sbに比べて酸化されにくいためである。半導体は酸化されると半導体特性を失い、量子閉じ込め効果を発現しなくなる。
(2)マトリクス相である(Bi,Sb)Teと分散相であるTeとは同じ六方晶であり、同じすべり面を有する。これは、本発明の熱間強加工において熱電変換材料マトリクスの電気伝導面内かつ熱伝導方向に配向してTeナノワイヤーが配列するために重要である。
その後、窒素(N)ガスフロー雰囲気中で乾燥し、混合粉末を回収した。約2.0gの粉末が回収された。
<焼結>
混合粉末を成形後、SPS焼結を行ない、ナノコンポジット熱電変換材料のバルク体を作成した。
<熱間強加工>
得られた焼結バルク体に表1の条件で熱間強加工を施した。
熱間強加工によりTeナノ粒子がすべり面ですべり変形しつつ回転してナノワイヤーとなり、加工後の徐冷中に電気伝導面内でかつ電気伝導方向に配向して成長かつ配列する。
得られた本発明のナノコンポジット熱電変換材料について、図5にXRDチャート、図6にTEM写真を示す。図5に示すように、(Bi,Sb)Teマトリクス相とTeナノワイヤー相の存在が確認された。また、図6に示すように、3視野(1)(2)(3)について、電気伝導面に平行にTeナノワイヤーが配列していることが確認された。
以上で得られたナノコンポジット熱電変換材料をサンプル1とする。
更に、サンプル2として、塩化テルル(TeCl)の配合量を3.4gに増加した以外は、サンプル1と同一の条件および手順で、本発明のナノコンポジット熱電変換材料を作成した。
表2に、実施例1のサンプル1、2で作成した本発明のナノコンポジット熱電変換材料についてゼーベック係数等を測定した結果を示す。比較例として、(Bi,Sb)Te熱電変換材料マトリクス中に、Sb球体ナノ粒子が分散しているナノコンポジット熱電変換材料についての測定結果も併せて示す。
**************<比較例の作成方法>****************
実施例1のプロセスにおいて、Teを過剰に仕込まず、配向処理(熱間強加工)を行なわず、逆にSbを過剰に仕込み、過剰分のSbを酸化させて球状のSb(絶縁体)ナノ粒子として、(Bi,Sb)Te熱電変換材料マトリクス中に分散させた。球状絶縁体ナノ粒子がフォノン散乱粒子として作用し、熱伝導率を低下させることで、熱電変換特性を向上させる。ゼーベック係数は変化しない。
****************************************
表2の結果から、本発明の実施例1は、比較例に比べてゼーベック係数が大きく向上しており、また熱伝導率は同等(サンプル1)か低下(サンプル2)であり、それに応じて無次元性能指数ZTが著しく向上している。
比抵抗を比較すると、半導体を分散させた本発明の実施例1は、絶縁体を分散させた比較例に比べて明らかに低くなっており、熱電変換材料として望ましい。
なお、上記の熱伝導率は格子熱伝導率であり、全体の熱伝導率からキャリア熱伝導率(Κel)を差し引いて算出した。Κel=LσT(L:ローレンツ数、σ:電気伝道率(=1/比抵抗)、T:絶対温度)。
〔実施例2〕
本発明の製造方法〔2〕により、熱電変換材料(Bi,Sb)Teのマトリクス中に半導体ナノワイヤー(Te)が分散し、対を成す半導体ナノワイヤーとそれらが挟むマトリクスとで積層ユニットを構成しているナノコンポジット熱電変換材料を製造した。
<ナノ粒子の合成>
実施例1(図4)と同様にして、熱電変換材料(Bi,Sb)Teの構成元素Bi,Sb,Teのナノ粒子を合成した。
得られたナノ粒子を含んだエタノールスラリーを実施例1と同様にろ過洗浄した。
<合金化>
次いで、密閉したオートクレーブ中にて、実施例1より低い240℃で短時間7h保持する水熱合成を行なった。この工程が方法〔2〕の特徴であり、不完全な合金化が行なわれ、化学量論組成(Bi,Sb)Teで合金化した熱電変換材料のナノ粒子と、過剰に配合したTe単体のナノ粒子と、加えて、未合金化のBi単体およびSb単体のナノ粒子とが得られた。これら未合金化のBiナノ粒子、Sbナノ粒子はTeナノ粒子の周囲に存在している。
その後、窒素(N)ガスフロー雰囲気中で乾燥し、混合粉末を回収した。約2.0gの粉末が回収された。
<焼結>
実施例1と同様に、混合粉末を成形後、SPS焼結を行ない、ナノコンポジット熱電変換材料のバルク体を作成した。
<熱間強加工>
得られた焼結バルク体に表3の条件で熱間強加工を施した。
実施例1と同じ条件であるが、冷却速度は更に遅くした。これにより、単体で残留していたBi、SbとTeの化学量論組成対応分とが合金化し、化学量論組成に対して過剰分のTeナノワイヤー同士の間に(Bi,Sb)Teマトリクス相が生成する。すなわち、一対のTeナノワイヤーとその間に挟まれた(Bi,Sb)Te熱電変換材料から成る積層ユニットが構成される。実施例1と同様に、Teナノワイヤーは(Bi,Sb)Teマトリクス相の電気伝導面内にかつ電気伝導方向に配向して配列されている。
得られた本発明のナノコンポジット熱電変換材料について、図7にXRDチャート、図8にTEM写真を示す。図7に示すように、(Bi,Sb)Teマトリクス相とTeナノワイヤー相の存在が確認された。また、図8に示すように、4視野(1)(2)(3)(4)について、対を成すTeナノワイヤーとそれらが挟むマトリックス相が積層ユニットを構成していることが確認された。ここで、(1)(B)は、(1)(A)の視野のTEM−EELSによるTeマッピング像である。また、(4)(B)は、(4)(A)の拡大像である。
以上で得られたナノコンポジット熱電変換材料をサンプル3とする。
更に、サンプル4として、塩化テルル(TeCl3)の配合量を2.8gに減少させた以外は、サンプル3と同一の条件および手順で、本発明のナノコンポジット熱電変換材料を作成した。
表4に、実施例2のサンプル3、4で作成した本発明のナノコンポジット熱電変換材料についてゼーベック係数等を測定した結果を示す。比較例は実施例1で示したものと同じものを示した。
表4の結果から、本発明の実施例2は、ゼーベック係数が比較例に比べて大きく向上しており、実施例1に比べても更に向上しており、また熱伝導率は低下(サンプル3)か同等(サンプル4)であり、それに応じて無次元性能指数ZTが更に著しく向上している。
比抵抗を比較は、実施例2と比較例とでほぼ同等である。
〔実施例3〕
本発明の製造方法〔3〕により、MgSi熱電変換材料マトリクス中にSi半導体ナノワイヤーが分散しているナノコンポジット熱電変換材料を製造した。
<薄膜合成>
モル比で13%のYを置換したZrO単結晶の(111)面に、表5に示す組成比となるようにMgとSiを室温にて同時にスパッタリングして膜厚3μmに堆積させた。比較例はMgSi化学量論組成とし、実施例3は化学量論組成に対してSi過剰なMgSi2.4とした。
<熱処理>
ランプ加熱炉(アルバック理工社 MILA-3000)にて、10−3Torr以下の真空中で、所定温度まで120℃/分で昇温し、10分間保持後、室温まで冷却した。
<評価>
得られた薄膜サンプルについて、XRDによる相同定(RIGAKU RINT-RAPID II)、熱電変換特性(ゼーベック係数)の測定(アルバック理工社ZEM-II)、SEMおよびTEMによる組織観察(SEM:Carl Zeiss Ultra55、TEM:JEOL JEM-2010)を行なった。
評価結果を図9、表5、表6に示す。
図9および表5に示すように、比較例はMgSi相のピークのみが認められたが、実施例3はMgSi相のピークに加えてSi相のピークが認められた。
実施例3は、表5に示すように、XRDによりナノサイズのSi粒径が確認された。SEMおよびTEMにより、Si粒子はMg2Siの電気伝導面に電気伝導方向に配向して配列していることが確認された。
表6に示すように、実施例3のゼーベック係数(絶対値)−678μV/Kは比較例の値−428μV/Kに比べて大幅に向上している。これはノンドープMg2.05Siについて知られている文献値(*1)−406μV/Kと比べても極めて高い値である。
(*1:Nolas et al., Transport properties of polycrystalline Mg2Si1-ySby (0≦y≦0.4), Physical Review B, 76, 23504 (2007). )
〔実施例4〕
本発明の製造方法〔3〕により、VFrSb熱電変換材料マトリクス中にVSbおよびFeSbの半導体ナノワイヤーが分散しているナノコンポジット熱電変換材料を製造した。
<薄膜合成>
図10に示すように、Al基板上にスパッタリングによりV、Fe、Sbを順次堆積させ、最後に酸化防止層としてMgOを堆積させた。V、Fe、Sbの堆積量は、化学量論組成VFeSbに対してSb過剰な組成V30.7Fe29.2Sb40.1となる比率で堆積させた。V層、Fe層、Sb層の1サイクル分の合計厚さは2nm、100サイクルで200nmとした。
比較のために比較例A(V31.2Fe33.1Sb35.7)、比較例B(V30.5Fe28.9Sb36.5)の組成についても、同様に薄膜合成した。
<熱処理>
合成した3種類の薄膜サンプルについて、真空熱処理炉にて、500℃×1hの熱処理を施した後、黒体化処理を行なった。
<評価>
SEMおよびTEMにより観察し、化学量論組成VFeSbのマトリクスの電気伝導面内に、電気伝導方向に配向して、VSbおよびFeSbの半導体ナノワイヤーが分散していることを確認した。
50℃から470℃の温度範囲で、ゼーベック係数を測定した。図11に測定結果を示す。図11には、参照用に文献値(*2)もプロットした。
(*2:L. Joldin et al., Phys. Rev. B70, 184207 (2004))
図11から、Sbの存在比の増加に伴い比較例A→比較例B→実施例4とゼーベック係数は増加した。特に、本発明によりSb過剰とした組成は、化学量論組成VFeSbに比較して、実験温度範囲内の全ての温度において高いゼーベック係数(絶対値)を示す。
本発明によれば、ゼーベック係数を高めることにより、従来のフォノン散乱効果のみでは到達できなかった高い熱電特性を有するナノコンポジット熱電変換材料およびその製造方法が提供される。

Claims (5)

  1. 熱電変換材料の複数の構成元素の塩を配合する際に、構成元素のうち半導体である1種の構成元素の塩を化学量論組成に対して過剰量に配合した溶液を作成する工程、
    上記溶液を還元剤と混合して上記各構成元素のナノ粒子を含むスラリーを作成する工程、
    上記スラリーを水熱合成して、上記化学両論組成の部分を合金化させて熱電変換材料のナノ粒子を形成するとともに、上記半導体である1種の構成元素のナノ粒子を作成する工程、
    得られたナノ粒子の混合粉末を焼結して、熱電変換材料からマトリクス中に半導体ナノ粒子が分散した前躯体を作成する工程、および
    上記前躯体を熱間強加工することにより上記半導体ナノ粒子を塑性変形させて、上記熱電変換材料の電気伝導面内にかつ電気伝導方向に配向して配列した半導体ナノワイヤーを形成する工程
    を含むナノコンポジット熱電変換材料の製造方法。
  2. 請求項1において、上記水熱合成による合金化を不完全に行なうことにより、上記化学量論組成で合金化した熱電変換材料のナノ粒子と、上記半導体である1種の構成元素を含む未合金化の各構成元素のナノ粒子とを作成することを特徴とするナノコンポジット熱電変換材料の製造方法。
  3. 熱電変換材料の複数の構成元素のうち半導体である1種の構成元素を化学量論組成に対して過剰量になる割合で含む薄膜積層構造を作成する工程、および
    上記薄膜積層構造を真空中で熱処理することにより、上記半導体である1種の構成元素から成る半導体ナノワイヤーが上記熱電変換材料の電気伝導面内にかつ電気伝導方向に配向して配列した構造を形成する工程
    を含むナノコンポジット熱電変換材料の製造方法。
  4. 請求項1から3によって製造され、熱電変換材料マトリクス中に、半導体ナノワイヤーが電気伝導面内にかつ電気伝導方向に配向して配列していることを特徴とするナノコンポジット熱電変換材料。
  5. 請求項2によって製造され、一対の上記半導体ナノワイヤーが上記熱電変換材料のマトリクス相を挟んでユニットを形成していることを特徴とするナノコンポジット熱電変換材料。
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