[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫の概略構成図(側面断面図)である。
図1に示すように、冷蔵庫1000は、複数の貯蔵室(冷蔵室100、切替室200、冷凍室300、野菜室400、切替室200、および製氷室)を備えている。
詳細に説明すると、冷蔵庫1000は、上から冷蔵室100、切替室200、冷凍室300、野菜室400、および切替室200と並行に設置された図示しない製氷室を備えている。また、野菜室400の内部には野菜室容器401が設置されている。
また、この冷蔵庫1000には、各貯蔵室へ供給する空気を冷却する冷凍サイクル回路と、この冷凍サイクル回路によって冷却された空気を各貯蔵室へ供給するための風路を備えている。
冷凍サイクル回路は、圧縮機1001、圧縮機1001から吐出された冷媒を凝縮させる凝縮器(図示せず)、凝縮器から流出した冷媒を膨張させる絞り装置(図示せず)、および、絞り装置で膨張した冷媒によって各貯蔵室へ供給する空気を冷却する冷却器1002等によって構成されている。圧縮機1001は、例えば、冷蔵庫1000の背面側の下部に配置されている。冷却器1002は、後述する冷却風路1010に設けられている。また、冷却風路1010には、冷却器1002で冷却された空気を各貯蔵室へ送るための(換言すると、冷蔵庫1000内で空気を循環させるための)空気搬送装置1003も設けられている。
この冷凍サイクル回路によって冷却された空気を各貯蔵室へ供給するための風路は、冷却風路1010、戻り風路1020、冷蔵室戻り風路110、および野菜室戻り風路410等から構成されている。冷却風路1010は、冷却器1002にて冷却された空気が、冷蔵室100および切替室200に搬送される通風路である。この冷却風路1010は、例えば冷蔵庫1000の背面部に形成されている。戻り風路1020は、各室を冷却した空気が、冷却器1002へ搬送される通風路である。冷蔵室戻り風路110は、冷蔵室100を冷却した空気が、野菜室400に搬送される通風路である。冷蔵室100を冷却した空気は、野菜室戻り風路410において野菜室戻り口411から流入する野菜室400を冷却した空気と混合され、冷蔵室・野菜室戻り口412から冷却器1002に搬送される。
図2は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫内に設置された野菜室容器の斜視図である。
図2において、野菜室容器401は第1の貯蔵容器1、第2の貯蔵容器2、および第3の貯蔵容器3に分割して構成される。いずれの貯蔵容器も六面体で形成されている。
第1の貯蔵容器1は、天面部が開口しており、この開口部は第1の貯蔵容器蓋部1aにより開閉可能な構成となっている。このため、第1の貯蔵容器1は、内部に食品を密閉状態、または半密閉状態で保存することが可能である。なお、第1の貯蔵容器1の開口部は上面に限定されるものではない。例えば、第1の貯蔵容器1の前面に開口部を形成し、この前面開口部を第1の貯蔵容器蓋部1aで開閉する構成にしてもよい。第2の貯蔵容器2は、例えば上面部が開口しており、第1の貯蔵容器1の側面に隣接して設けられている。第3の貯蔵容器3は、第2の貯蔵容器2の上(つまり開口部)に前後にスライド可能なように設置され、第3の貯蔵容器3が第2の貯蔵容器2の開口部の一部を塞ぐ構成となる。すなわち、第2の貯蔵容器2は第3の貯蔵容器3より密閉度が高くなっている。すなわち、野菜室容器401は3つの湿度帯の貯蔵容器を形成している。なお、第2の貯蔵容器2の開口部も上面に限定されるものではない。例えば、第2の貯蔵容器2の前面に開口部を形成し、この前面開口部を第3の貯蔵容器3で開閉する構成にしてもよい。
ここで、第1の貯蔵容器1が本発明における密閉容器に相当し、第2の貯蔵容器2が本発明における第1の容器に相当し、第3の貯蔵容器3が本発明における第2の容器に相当する。
第1の貯蔵容器1の内部には、第1の貯蔵容器1内の空気温度を検出するための空気温度検出装置4および空気湿度を検出するための空気湿度検出装置5が設置されている。第1の貯蔵容器蓋部1aの内面側(第1の貯蔵容器1の内部側)には、第1の貯蔵容器蓋部1aの表面温度(第1の貯蔵容器蓋部1aの内面の温度)を検出するための蓋温度検出装置6が設置されている。また、第1の貯蔵容器蓋部1aには、第1の貯蔵容器1内部の空気を排出するための蓋開孔部7、蓋開孔部7を複数段階で開閉するための蓋開孔部開閉シャッター8、および蓋開孔部開閉シャッター8を駆動させるための開閉シャッター駆動装置9が設置されている。開閉シャッター駆動装置9は、例えば、回転モータと、シャッターを案内するためのレールとで構成される。
図3は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫野菜室の概略構成図であり、第1の貯蔵容器1を側面から観た断面図である。
図3において、図1および図2と同一の箇所については説明を割愛する。湿度環境制御装置10は、空気温度検出装置4、空気湿度検出装置5、および蓋温度検出装置6に接続されている。この湿度環境制御装置10は、空気温度検出装置4、空気湿度検出装置5、および蓋温度検出装置6の検出値を入力信号として、開閉シャッター駆動装置9に制御信号を送る構成となっている。つまり、蓋開孔部開閉シャッター8及び開閉シャッター駆動装置9が本発明における開孔部開閉装置に相当する。また、本実施の形態1においては、湿度環境制御装置10が本発明における湿度制御装置に相当する。
なお、402は第1の貯蔵容器1に保管される、蒸散量の多い葉物野菜等の野菜室負荷である。
次に、図1から図3を用いて動作の一例について説明する。
図1において、冷蔵庫1000の内部では、一般的に冷却器1002で冷却された庫内空気が空気搬送装置1003によって冷却風路1010を経由して各貯蔵室へ搬送される。そして、各貯蔵室を冷却した後の戻り空気が戻り風路1020を経由して再度冷却器1002に戻る周回風路となっている。
野菜室400においては、冷蔵室100を冷却した後の空気(冷蔵室戻り空気)が、冷蔵室戻り風路110を経由して野菜室天面に配置された野菜室戻り風路410に搬送される。このとき、冷蔵室100(例えば1〜3℃)は野菜室400(例えば5〜7℃)より設定温度が低い。また、冷蔵室戻り風路110は、さらに低温の切替室200や冷凍室300の横を通過して冷却されるために、冷蔵室戻り空気が野菜室戻り風路410に流入する際に、野菜室400および野菜室容器401は、野菜室戻り風路410からの冷輻射により間接的に冷却される。
その後、冷蔵室戻り空気と野菜室戻り口411から野菜室戻り風路410に流入した野菜室戻り空気は混合され(図示しないが、野菜室戻り風路410において、野菜室戻り口411は冷蔵室戻り風路110との合流点より下流に配置)、冷蔵室・野菜室戻り口412から戻り風路1020に排出され、冷却器1002に搬送される。
通常の運転では、各貯蔵室を冷却した後の戻り空気は、冷却器1002にて冷却されると同時に除湿される。したがって、食品投入による食品からの水分蒸散の発生や、食品の出し入れの際の冷蔵庫1000の扉開閉により、庫内湿度は一時的に増加するが、徐々に除湿されて最終的には20〜30%RH程度まで低下する。このような低湿環境下に、常温状態に保管又は放置されていた食品を移動した場合、食品からの水分蒸散が発生する。特に、野菜の蒸散作用は、野菜表面の水蒸気圧(飽和水蒸気圧×0.98程度)が周囲環境の水蒸気圧より高いときに進行し、蒸散量はその水蒸気圧差に比例する。このため、常温状態に保管または放置されていた野菜を低湿環境下に移動した場合、周囲水蒸気圧が飽和水蒸気圧同等レベルに上昇するまで蒸散が持続して鮮度が低下する。
そこで図2のように、野菜室容器401を第1の貯蔵容器1、第2の貯蔵容器2、第3の貯蔵容器3に分割し、第1の貯蔵容器1として、第1の貯蔵容器蓋部1aにより密閉状態、あるいは半密閉状態を形成し、第2の貯蔵容器2は、前後にスライド可能な第3の貯蔵容器3によって開口部の一部を塞いで密閉度を高めることにより、同じ野菜を保管した場合、または同じ温度から冷却を開始した場合においても、密閉度の差により異なった湿度環境を形成することが可能となる。
図4は、実際に野菜室容器401内に保存された、野菜負荷(蒸散水分重量)の重量減少率(=蒸散水分重量/初期重量)の実測データの一例であり、(a)は第1の貯蔵容器1内(湿度90%RH以上)、(b)は第3の貯蔵容器3内(湿度20〜30%RH)に保存された野菜のデータである。なお、図4には野菜負荷としてホウレン草およびダイコンを示している。より詳しくは、11aないし11cは初期重量の異なるホウレン草で、11aが100g、11bが500g、11cが1000gの重量減少率である。12は1/2にカットされた大根の重量減少率である。13は1/4にカットされた白菜の重量減少率である。
図4(a)および図4(b)から、野菜の蒸散量は、葉物野菜であるホウレン草が最も多いことが示されているように、野菜の種類によって異なり、また同じ野菜においても重量が少ない、すなわち貯蔵容器に対する体積比が小さいほど多くなることが分かる。 また、第1の貯蔵容器1に保存した場合(図4(a))は、第3の貯蔵容器3に保存した場合(図4(b))と比較して、1/5〜1/10程度に蒸散量が抑制され、鮮度が維持されていることが分かる。これは、第3の貯蔵容器3よりも第1の貯蔵容器1のほうが高湿度であることに加え、第1の貯蔵容器1では略密閉状態が形成されているため、上部が開放されている第3の貯蔵容器3と比較して、貯蔵容器内の温度変動が小さくなり、野菜の呼吸が抑制されたことによる効果である。
このように、本実施の形態1に係る冷蔵庫1000は、野菜室戻り風路410からの冷輻射により間接的に冷却される野菜室容器401を複数の貯蔵容器に分割している。さらに、貯蔵容器の蓋や貯蔵容器同士の配置等による密閉度の差によって異なる湿度空間を形成し、そのうちの1つを略密閉容器としている。したがって、略密閉容器では高湿度が維持され、密閉によって温度変動が小さくなって野菜の呼吸が抑制されるから、葉物野菜等の蒸散量が多い野菜を保管した場合に、蒸散量を抑制し鮮度を維持することが可能になる。
一方で、高湿度を必要としない野菜、例えば高湿環境では表面が変質する可能性のある果物や、結露した水と表面についた泥が接触して不衛生となるジャガイモやゴボウなどの根菜類は、密閉度が低く低湿度となる貯蔵容器に保管したほうが良いため、湿度環境の異なる複数の貯蔵容器において、食品に合わせた最適湿度環境で保管することができ、また野菜の蒸散特性ごとに保管できるので整理性の向上も図ることができるという効果が得られる。
上述のように、第1の貯蔵容器蓋部1aにより密閉状態、または半密閉状態が形成された第1の貯蔵容器1では、高湿度が維持され、野菜の蒸散作用が抑制される。しかしながら、第1の貯蔵容器1は貯蔵容器内、特に野菜室戻り風路410からの冷輻射により冷却されている。したがって、最も低温となる第1の貯蔵容器蓋部1a(つまり、第1の貯蔵容器1の冷却風路と対向する壁面)の裏面に結露が発生する可能性がある。そして、結露が発生すると、結露水が落下して野菜負荷402を腐らせる、また、滞留した結露水によりカビが発生する等の問題が起こる可能性がある。
そこで、本実施の形態1では、図2および図3に示した蓋開孔部7より高湿空気を排気することにより、結露を抑制、または回避している。このとき、図4に示したように野菜負荷の種類や量によって蒸散量が異なるため、蓋開孔部開閉シャッター8により排気量、すなわち第1の貯蔵容器1内の湿度を制御する必要がある。
図5は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫野菜室(第1の貯蔵容器1)の湿度環境制御フローチャートである。なお、図5は、図3に示される、湿度環境制御装置10の制御内容を示すものであり、ユーザーが行うステップS1以外は、湿度環境制御装置10が行うステップである。
ユーザーによって第1の貯蔵容器蓋部1aが開閉されると(ステップS1)、ステップS2において空気温度検出装置4により第1の貯蔵容器1内の空気温度Ta を検出する。また、空気湿度検出装置5により第1の貯蔵容器1内の空気湿度Ha を検出する。なお、野菜負荷402の投入、および/または取り出しに関わらず、第1の貯蔵容器蓋部1aが開閉されるとステップS2は行われる。
ステップS3において、検出された空気温度Ta と空気湿度Ha を用いて、第1の貯蔵容器1内の露点温度Tdew を算出する。次に、ステップS4において、蓋温度検出装置6により第1の貯蔵容器蓋部1aの内面(下面)の蓋表面温度Tsur を検出し、ステップS5において蓋表面温度Tsur と露点温度Tdew の大小関係を比較する。このとき、蓋表面温度Tsur が露点温度Tdew 以下となっている場合、第1の貯蔵容器蓋部1aの内面に直ちに結露する、または既に結露している可能性がある。そこで、蓋表面温度Tsur が露点温度Tdew 以下であると判定された場合は、空気湿度Ha の値に依らず、ステップS8に進み蓋開孔部開閉シャッター8を1段階開くような制御信号を開閉シャッター駆動装置9に送信する。
一方、ステップS5において蓋表面温度Tsur が露点温度Tdew より大きいと判定した場合は、ステップS6に進み、空気湿度Ha と予め設定された空気湿度制御範囲上限湿度HaHの大小関係を比較する。このとき、空気湿度Ha が空気湿度制御範囲上限湿度HaHより大きいと判定した場合は、第1の貯蔵容器蓋部1aの内面に結露する可能性が高く、また野菜負荷402の蒸散量を抑制するうえでも過剰に高い湿度であると判断する。したがって、ステップS8に進み蓋開孔部開閉シャッター8を1段階開くような制御信号を開閉シャッター駆動装置9に送信する。
ステップS6において、空気湿度Ha が空気湿度制御範囲上限湿度HaH以下であると判定された場合は、ステップS7に進み、空気湿度Ha と予め設定された空気湿度制御範囲下限湿度HaLの大小関係を比較する。このとき、空気湿度Ha が空気湿度制御範囲下限湿度HaLより小さいと判定した場合は、野菜負荷402の蒸散量を抑制するには湿度が不足で、また第1の貯蔵容器蓋部1aの内面に結露する可能性が低いと判断する。したがって、ステップS9に進み蓋開孔部開閉シャッター8を1段階閉じるような制御信号を開閉シャッター駆動装置9に送信する。
ステップS7において、空気湿度Ha が空気湿度制御範囲下限湿度HaL以上であると判定した場合は、空気湿度Ha は空気湿度制御範囲上限湿度HaHと空気湿度制御範囲下限湿度HaLの間の、第1の貯蔵容器蓋部1aの内面に結露せず、且つ野菜負荷402の蒸散量を抑制できる最適な湿度範囲に含まれていると判断する。したがって、ステップS2に戻り、ステップS2〜S7を繰り返す。
ステップS8またはS9において、蓋開孔部開閉シャッター8を開閉した場合には、ステップS10において開孔率変更後の経過時間tpastをリセットした後に、ステップS11において経過時間tpastを計測する(リセット後の経過時間を算出する)。
次に、ステップS12において、経過時間tpastと予め設定された開孔率変更後待機時間twaitの大小関係を比較する。このとき、経過時間tpastが開孔率変更後待機時間twait以上であると判定した場合は、蓋開孔部開閉シャッター8の開閉によって、第1の貯蔵容器1内に湿度変化が発生するのに充分な時間が経過したと判断し、ステップS2に戻り、ステップS2〜S12を繰り返す。ステップS12において、経過時間tpastが開孔率変更後待機時間twaitより小さいと判定した場合は、蓋開孔部開閉シャッター8の開閉後の経過時間が不充分であると判断し、ステップS11に戻り、ステップS11〜S12を繰り返す。
図6は、図5に示した湿度環境制御フローチャートによって制御された際の、冷蔵庫野菜室(第1の貯蔵容器1)の温湿度実測データの一例であり、(a)は温度の時系列データ、(b)は湿度の時系列データである。
図6において、14は、空気温度検出装置4により検出された第1の貯蔵容器1の空気温度(Ta )である。15は、空気湿度検出装置5により検出された第1の貯蔵容器1の空気湿度(Ha )である。16は、第1の貯蔵容器1の空気温度と空気湿度により算出された第1の貯蔵容器1の露点温度(Tdew )である。17は、蓋温度検出装置6により検出された第1の貯蔵容器蓋部1aの内面(下面)の蓋表面温度(Tsur )である。18は、第1の貯蔵容器蓋部1aの内面に結露せず、且つ野菜負荷402の蒸散量を抑制できる最適な湿度範囲として予め設定された空気湿度制御範囲であり、18aは空気湿度制御範囲上限湿度(HaH)、18bは空気湿度制御範囲下限湿度(HaL)である。ここではHaH=95%RH、HaL=85%RHに設定している。19は、蓋開孔部開閉シャッター8の開閉によって第1の貯蔵容器1内に湿度変化が発生するのに充分な時間として予め設定された、開孔率変更後待機時間(twait)である。蓋開閉時の時刻をt0 として、twait経過ごとの時刻をt1 、t2 、・・・、t8 としている。20は、蓋開孔部開閉シャッター8が開状態にある期間、21は蓋開孔部開閉シャッター8が閉状態にある期間であり、いずれも最小単位は開孔率変更後待機時間19(twait)となる。
図5に示した湿度環境制御フローチャートに従って、図6の温湿度実測データを説明する。
時刻t0 において第1の貯蔵容器蓋部1aが開閉されたとき(ステップS1)、空気温度検出装置4が第1の貯蔵容器1内の空気温度14(Ta )を検出し、空気湿度検出装置5が第1の貯蔵容器1内の空気湿度15(Ha )を検出する(ステップS2)。そして、空気温度14(Ta )と空気湿度15(Ha )を用いて、第1の貯蔵容器1内の露点温度16(Tdew )を算出する(ステップS3)。また、蓋温度検出装置6により第1の貯蔵容器蓋部1aの内面(下面)の蓋表面温度17(Tsur )を検出する(ステップS4、以上は各時刻t1 、t2 、・・・、t8 到達ごとに実施)。蓋表面温度17(Tsur )は露点温度16(Tdew )より大きいが(ステップS5のNo)、空気湿度15(Ha )が空気湿度制御範囲上限湿度18a(HaH)より大きいから(ステップS6のYes)、蓋開孔部開閉シャッター8を1段階開き(ステップS8)、開孔率変更後経過時間(tpast)をリセット(ステップS10)した後に、経過時間(tpast)の計測を開始する(ステップS11)。
時刻t1 においては、空気湿度15(Ha )は低下傾向にあるが、蓋表面温度17(Tsur )は露点温度16(Tdew )より大きく、空気湿度15(Ha )が空気湿度制御範囲上限湿度18a(HaH)より大きいという状況は変わらないため、時刻t0 のときと同様の動作が繰り返される。
時刻t2 においても空気湿度15(Ha )は低下傾向にあるが、蓋表面温度17(Tsur )が露点温度16(Tdew )以下となっているため(ステップS5のYes)、蓋開孔部開閉シャッター8はさらに1段階開かれ(ステップS8)、その後は経過時間(tpast)が開孔率変更後待機時間(twait)に到達する時刻t3 まで待機する(ステップS10〜S12)。
時刻t3 においては、蓋表面温度17(Tsur )は露点温度16(Tdew )より大きく(ステップS5のNo)、空気湿度15(Ha )が空気湿度制御範囲上限湿度18a(HaH)以下であり(ステップS6のNo)、さらに空気湿度制御範囲下限湿度18b(HaL)より小さいため(ステップS7のYes)、蓋開孔部開閉シャッター8を1段階閉じ(ステップS9)、その後は同様に時刻t4 まで待機する(ステップS10〜S12)。
時刻t4 、t5 においては、蓋表面温度17(Tsur )は露点温度16(Tdew )より大きく(ステップS5のNo)、空気湿度15(Ha )が、時刻t4 では空気湿度制御範囲上限湿度18a(HaH)より大きい(ステップS6のYes)。そのため、蓋開孔部開閉シャッター8を1段階開き(ステップS8)、時刻t5 では空気湿度制御範囲下限湿度18b(HaL)より小さい(ステップS7のYes)ため、蓋開孔部開閉シャッター8を1段階閉じる(ステップS9)。
時刻t6 においては、蓋表面温度17(Tsur )は露点温度16(Tdew )より大きく(ステップS5のNo)、空気湿度15(Ha )が空気湿度制御範囲上限湿度18a(HaH)以下であり(ステップS6のNo)、且つ空気湿度制御範囲下限湿度18b(HaL)以上である(ステップS7のNo)。したがって、空気湿度制御範囲18に含まれているため、蓋開孔部開閉シャッター8の開孔率を変更することなく、空気温度14(Ta )、および空気湿度15(Ha )の検出(ステップS2)に戻る。
時刻t6 〜t7 においては、時刻t6 における温湿度の大小関係が変化しないため、蓋開孔部開閉シャッター8の開孔率は維持されたままである。
時刻t7 においては、空気湿度15(Ha )は空気湿度制御範囲18に含まれているが、蓋表面温度17(Tsur )が露点温度16(Tdew )以下となったため(ステップS5のYes)、蓋開孔部開閉シャッター8を1段階開く(ステップS8)。
その後は時刻t8 まで待機する(ステップS10〜S12)。
以上、本実施の形態1のように構成された冷蔵庫1000においては、略密閉容器である第1の貯蔵容器1に蓋開孔部7を設置し、第1の貯蔵容器1内の空気温度、空気湿度、および第1の貯蔵容器蓋部1aの内側表面温度を検出し、内側表面温度が空気温度と空気湿度から算出される露点温度より高くなるように、また空気湿度が所定の高湿度範囲に入るように、蓋開孔部開閉シャッター8を開閉し、蓋開孔部7からの排気量、すなわち第1の貯蔵容器1内の空気湿度を制御することにより、内部に保管される野菜負荷の種類や量によって異なる蒸散量に依らず、第1の貯蔵容器蓋部1aの内面に結露せず、且つ野菜負荷の蒸散作用を抑制することができるという効果が得られる。特に内側表面温度が露点温度以下の場合には、空気湿度に依らず蓋開孔部開閉シャッター8を開くことにより露点温度を下げることを優先しているので、第1の貯蔵容器蓋部1aの内面への結露を確実に回避し、結露水の落下による野菜負荷への影響や、滞留した結露水によるカビ発生などの問題を防ぐことが可能となる。
なお、図2では、野菜室容器401を第1の貯蔵容器1、第2の貯蔵容器2、第3の貯蔵容器3に分割し、第1の貯蔵容器1を第1の貯蔵容器蓋部1aにより略密閉状態に、第2の貯蔵容器2は前後にスライド可能な第3の貯蔵容器3によって開口部の一部を塞いで密閉度を高めることにより、3つの湿度帯の貯蔵容器を形成している。しかしながら、本実施の形態1に係る野菜室容器401の構成はこれに限定されるものではく、例えば、野菜室400の分割数(つまり、湿度帯の分割数)を少なくしてもよい。例えば、野菜室容器401を、略密閉空間となる第1の貯蔵容器1と開口部の一部が塞がれた第2の貯蔵容器2とで構成してもよい。このとき、第2の貯蔵容器2の開口部にスライド可能な蓋等を設け、第2の貯蔵容器の開口部の一部を塞げばよい。また例えば、野菜室容器401を、略密閉空間となる第1の貯蔵容器1と第3の貯蔵容器3とで構成してもよい。また例えば、第3の貯蔵容器3の湿度帯は野菜室400内と同じになるので、野菜室400内において野菜室容器401以外の空間に食物を保管できるスペースがあれば、野菜室容器401を第1の貯蔵容器1のみで構成しても、野菜室400内を複数の湿度帯に分割することができる。このように野菜室容器401(換言すると野菜室400)の分割数を少なくした場合には、各貯蔵容器の容積が大きくなるため、白菜やキャベツなどの大きな野菜を丸ごと収納することが可能となる。
また、野菜室400の分割数(つまり、湿度帯の分割数)を多くして、野菜室400内の湿度帯を増加しても勿論よい。このように野菜室容器401(換言すると野菜室400)の分割数を多くした場合には、図4に示したようにカット野菜に対しても蒸散作用を抑制できるので、野菜を小さくカットして種類ごとに保管し整理性の向上も図ることができるという効果が得られる。
また、図2では、略密閉容器である第1の貯蔵容器1と、第2の貯蔵容器2、および第3の貯蔵容器3を左右方向に分割しているが、分割方向は特に制約するものではなく、前後方向でも上下方向でも同様の効果が得られる。特に、本実施の形態1に係る冷蔵室100においては、野菜室容器401の天面部となる第1の貯蔵容器蓋部1aが冷却される構成となっているので(つまり、野菜室容器401の上方に冷却風路が形成されているので)、上下方向に分割し第1の貯蔵容器1を最下層に配置すれば、野菜室戻り風路410からの冷輻射による温度変動の影響が小さくなって野菜の呼吸が抑制されるので、蒸散量をさらに抑制し鮮度を維持することができるという効果が得られる。
また、図2および図3では、蓋開孔部7を複数のスリット形状の矩形孔とし、それぞれのスリットに設置された蓋開孔部開閉シャッター8をレールで案内して、回転モータにより開閉動作を行う構成となっているが、これらの形状および構成は特に制約するものではない。例えば、蓋開孔部7を1つの大きな孔や、格子状、あるいは千鳥配列の円形孔としてもよい。また例えば、蓋開孔部開閉シャッター8をスライド式、回転式などにして開閉動作を行ってもよい。蓋開孔部7から第1の貯蔵容器1内部の空気を排出し、蓋開孔部開閉シャッター8によってその排出量を調整することができれば、同様の効果が得られる。
また、図2、図3および図5では、空気温度検出装置4が検出する第1の貯蔵容器1の空気温度Ta、空気湿度検出装置5が検出する第1の貯蔵容器1の空気湿度Ha、空気温度Taと空気湿度Haを用いて算出される第1の貯蔵容器1内の露点温度Tdew 、蓋温度検出装置6が検出する第1の貯蔵容器蓋部1aの内面(下面)の蓋表面温度Tsur に基づいて、湿度環境制御装置10が蓋開孔部開閉シャッター8の開閉動作を行い、蓋開孔部7からの空気排出量を調節している。しかしながら、図6の実測データに示されているように、空気温度14(Ta )と蓋表面温度17(Tsur )は、第1の貯蔵容器蓋部1aが開閉された直後の時刻t0 〜t1 を除きほぼ同等の温度であるため、どちらかの温度検出装置を排除して、もう一方の温度検出装置の検出値で代用してもよい。また、検出装置は空気湿度検出装置5のみとし、空気湿度Ha の空気湿度制御範囲上限湿度HaHを低めに、空気湿度制御範囲下限湿度HaLを高めに設定して、より狭い空気湿度制御範囲で制御してもよい。検出装置を削減しているので検出精度は若干低下するが、低コスト化を図ることができるうえ、第1の貯蔵容器1の空気湿度Ha は、第1の貯蔵容器蓋部1aの内面への結露が発生しにくく、且つ野菜負荷の蒸散作用を抑制できる湿度範囲に制御できるので、ほぼ同等の効果が得られる。
また、図5では、ステップS8における蓋開孔部開閉シャッター8の開動作、ステップS9における蓋開孔部開閉シャッター8の閉動作は、それぞれ1段階ずつ開閉するように制御信号を開閉シャッター駆動装置9に送信しているが1段階に固定しなくてもよい。例えば、蓋表面温度Tsur が露点温度Tdew 以下であると判定された場合(ステップS5のYes)には、蓋開孔部開閉シャッター8を2段階以上開く、あるいは全開し、空気湿度Haが空気湿度制御範囲上限湿度HaH より大きいとき(ステップS6のYes)、および空気湿度制御範囲下限湿度HaLより小さいときに(ステップS7のYes)、空気湿度Ha と空気湿度制御範囲との差が大きいほど蓋開孔部開閉シャッター8の開閉動作の段階数を大きくすることにより、第1の貯蔵容器1の空気湿度Haの制御精度が向上し、より確実に第1の貯蔵容器蓋部1aの内面への結露を防止し、且つ野菜負荷の蒸散作用を抑制することができるという効果が得られる。
また、図2および図3では、野菜室400内部の野菜室容器401における構成を説明しているが、これらの構成を冷蔵室100等の他の貯蔵室の内部に適用して、食品の保管に用いてもよい。冷蔵室100では、生鮮食品やお惣菜などを第1の貯蔵容器1に保管すれば、ラップで包装する、タッパーに入れるなどの手間をかけることなく、水分蒸散を抑えて鮮度やおいしさを維持することができ、また冷凍室300においても、第1の貯蔵容器1内部にて結露を抑制できるので、例えば冷凍食品の表面に着霜させることなく保管できるという効果が得られる。
また、図1および図3では、野菜室容器401を間接冷却するための冷却風路が野菜室容器401の上方に設けられていたが、冷却風路の形成箇所は任意である。例えば、野菜室容器401の側方の壁面を冷却するように冷却風路を設けてもよい。このとき、蓋温度検出装置6、蓋開孔部7、蓋開孔部開閉シャッター8、および開閉シャッター駆動装置9は、冷却風路と対向する野菜室容器401の壁面に設ければよい。また例えば、野菜室容器401の複数の壁面を冷却するように冷却風路を設けても勿論よい。この場合、冷却される壁面のうちの少なくとも1つに蓋温度検出装置6、蓋開孔部7、蓋開孔部開閉シャッター8、および開閉シャッター駆動装置9を設けることにより、本発明を実施することができる。
[実施の形態2]
図7は、本発明の実施の形態2における冷蔵庫内に設置された野菜室容器の斜視図である。また、図8は、本発明の実施の形態2における冷蔵庫野菜室の概略構成図であり、第1の貯蔵容器1を側面から観た断面図である。
図7および図8において、実施の形態1と同一の箇所については説明を割愛するが、水分吸着装置22は空気中の水分を吸湿または放湿するものであり、第1の貯蔵容器蓋部1aの内面(下面)に、蓋開孔部7を塞ぐように設置されている。
水分吸着装置22は、通気性を有する不織布、または多孔質基材等に、吸着剤を塗布、表面処理、または含浸されたものを使用する。ここで、吸着材とは、例えばシリカゲル、または活性炭等の高湿空気に対してより多くの吸着特性を有するものである。水分吸着装置22に担持される吸着剤としては、特に80%RH以上の高湿空気に対してその吸着量が急激に増加する、すなわち吸着剤の細孔径が一定範囲内に比較的揃っているものが望ましい。
図9は、本発明の実施の形態2における、水分吸着装置に担持される各種吸着剤の等温吸着線の概念図である。なお、図9において、横軸は対象空気の相対湿度を示しており、縦軸は水分の平衡吸着量を示している。また、図9において、23は一般的なシリカゲルの等温吸着線、24は一般的な活性炭の等温吸着線、25は10〜20nm(ナノメートル)程度の細孔が多数設けられた、多孔質ケイ素材料である高湿吸着に特化した吸着剤の等温吸着線を示している。
一般的なシリカゲルは、等温吸着線23に示されているように、空気の相対湿度が第1の相対湿度26(Φ1 )以上の範囲における相対湿度に対する水分の平衡吸着量の変化率である傾斜が、第1の相対湿度26より小さい範囲における傾斜よりも大きくなる傾向がある。なお、第1の相対湿度26は一般的に60%RH程度である。
一般的な活性炭は、等温吸着線24に示されているように、空気の相対湿度が高くなると平衡吸着量も増加する傾向がある。
高湿吸着に特化した吸着剤は、等温吸着線25に示されているように、空気の相対湿度が第2の相対湿度27(Φ2 )から第3の相対湿度28(Φ3 )の範囲における相対湿度に対する水分の平衡吸着量の変化率である傾斜が、第2の相対湿度27未満または第3の相対湿度28を超える範囲における傾斜よりも大きい。細孔径を10〜20nm(ナノメートル)程度に揃えることにより、第2の相対湿度27は80%RH程度、第3の相対湿度28は90%RH程度となる。このとき、高湿吸着に特化した吸着剤の第2の相対湿度27(Φ2 )における平衡吸着量30(q2 )は、一般的なシリカゲルの第1の相対湿度26(Φ1 )における平衡吸着量29(q1 )より小さい。また、高湿吸着に特化した吸着剤の第3の相対湿度28(Φ3 )における平衡吸着量31(q3 )は、一般的な活性炭の相対湿度100%RHにおける最大平衡吸着量32(q4 )同等以上である。なお、q1 〜q4 の値は一般的に、q1 ≒0.1、q2 ≒0.05〜0.1、q3 ≒0.5〜0.6、q4 ≒0.5程度である。
次に、図7から図9を用いて動作の一例について説明する。動作についても、実施の形態1と同一の箇所については説明を割愛する。
実施の形態1と同様に、空気温度検出装置4が第1の貯蔵容器1内の空気温度Ta を検出し、空気湿度検出装置5が第1の貯蔵容器1内の空気湿度Ha を検出し、蓋温度検出装置6が第1の貯蔵容器蓋部1aの内面(下面)の蓋表面温度Tsur を検出する。そして、蓋表面温度Tsur が空気温度Ta と空気湿度Ha から算出される露点温度Tdew より高くなるように、また空気湿度が所定の高湿度範囲に入るように、湿度環境制御装置10は、蓋開孔部開閉シャッター8を開閉し、第1の貯蔵容器蓋部1aに設置された蓋開孔部7からの排気量、すなわち第1の貯蔵容器1内の空気湿度を制御する。
ここで、本実施の形態2では、第1の貯蔵容器蓋部1aの内面には、蓋開孔部7を塞ぐように水分吸着装置22が設置されている。このため、第1の貯蔵容器1内の高湿空気は、蓋開孔部7から排気される前に水分吸着装置22に水分を吸着される。
水分吸着装置22に担持された吸着剤は、空気湿度Ha において、図9の等温吸着線に示されるような平衡吸着量に到達するまでは第1の貯蔵容器1内の水分を吸着するが、平衡吸着量に到達した際には吸湿も放湿もできなくなる。その後、空気湿度Ha が低下した場合は、その低下した湿度における平衡吸着量に到達するまで放湿を行うため、空気湿度Ha は若干上昇して最終的には平衡状態となって吸放湿が停止する。
一方、平衡吸着量到達後に空気湿度Ha が上昇した場合は、それ以上吸着剤は吸湿できないため、空気湿度Ha は上昇を続けることになる。このとき、図7および図8のような構成において、蓋開孔部開閉シャッター8を開いておくことにより、野菜室400(第1の貯蔵容器1の外側)の湿度は第1の貯蔵容器1内の空気湿度Ha より低いため、水分吸着装置22で吸湿できなかった水分を蓋開孔部7から野菜室400へ放湿することができる。このとき、水分吸着装置22が保持する吸着水分量が低下するから、水分吸着装置22の吸着能力が回復する。
そこで、水分吸着装置22に担持する吸着剤として、図9に示した等温吸着線25の吸着特性を持つ高湿吸着に特化した吸着剤を用いる。そして、図5の湿度環境制御フローチャートにおいて説明した、空気湿度制御範囲の空気湿度制御範囲上限湿度HaHを第3の相対湿度28(Φ3 )程度(≒90%RH)、空気湿度制御範囲下限湿度HaLを第2の相対湿度27(Φ2 )程度(≒80%RH)に設定する。これにより、第3の相対湿度28より高い湿度範囲では、平衡吸着量31(q3 )以上の高い吸着能力を有しているため、第1の貯蔵容器1内の空気湿度Ha が、平衡吸着量が急激に低下する第3の相対湿度28より小さくなるまで吸湿(除湿)する。また、第2の相対湿度27より低い湿度範囲では、平衡吸着量30(q2 )以下の低い吸着能力を有しているため、第1の貯蔵容器1内の空気湿度Ha が、平衡吸着量が急激に上昇する第2の相対湿度27より大きくなるまで放湿(加湿)する。結果的に、水分吸着装置22により、第1の貯蔵容器1内の空気湿度Ha は、空気湿度制御範囲上限湿度HaHと空気湿度制御範囲下限湿度HaLの間の湿度範囲(つまり、第1の貯蔵容器蓋部1aの内面に結露せず、且つ野菜負荷402の蒸散量を抑制できる最適な湿度範囲)に制御されることが可能となる。
またこのとき、蓋開孔部開閉シャッター8を開くことにより、水分吸着装置22が保持している吸着水分が低湿度の野菜室400へ放湿され、水分吸着装置22の吸着能力が回復するため、実施の形態1における効果に加え、より短時間で空気湿度Ha が最適な湿度範囲に制御されて湿度変動が小さくなるので、野菜の呼吸が抑制されてさらに蒸散量を抑制することが可能となる。
また、特に空気湿度Ha が空気湿度制御範囲上限湿度HaHより大きくなることを抑制できるので、第1の貯蔵容器蓋部1aの内面への結露を確実に回避し、結露水の落下による野菜負荷への影響や、滞留した結露水によるカビ発生などの問題を防ぐことが可能となる。
なお、図7および図8では、水分吸着装置22に担持する吸着剤として図9に示した等温吸着線25の吸着特性を持つ高湿吸着に特化した吸着剤を用いたが、水分吸着装置22に担持する吸着剤として、図9に示した等温吸着線23の吸着特性を持つ一般的なシリカゲル、または等温吸着線24の吸着特性を持つ一般的な活性炭を用いた場合においても、蓋開孔部開閉シャッター8の開閉制御と組み合わせることにより、同様の効果が得られることは言うまでもない。
また、図7および図8では、水分吸着装置22を第1の貯蔵容器蓋部1aの内面(下面)に、蓋開孔部7を塞ぐように設置し、空気温度検出装置4が検出する第1の貯蔵容器1の空気温度Ta 、空気湿度検出装置5が検出する第1の貯蔵容器1の空気湿度Ha 、空気温度Ta と空気湿度Ha を用いて算出される第1の貯蔵容器1内の露点温度Tdew 、蓋温度検出装置6が検出する第1の貯蔵容器蓋部1aの内面の蓋表面温度Tsur を用いて、湿度環境制御装置10が蓋開孔部開閉シャッター8の開閉動作を行い、蓋開孔部7からの空気排出量を調節している。しかしながら、水分吸着装置22は一般的に空気湿度が高いほど平衡吸着量が多くなり(吸着能力が増加し)、また水分吸着時、すなわち第1の貯蔵容器1内の湿度が高いときは吸着熱により水分吸着装置22の温度が上昇して露点温度Tdew を下回る可能性は低くなる。したがって、露点温度Tdew を算出するための空気温度検出装置4、および露点温度Tdew と比較するための蓋温度検出装置6は排除し、空気湿度検出装置5のみで制御してもよい。
[実施の形態3]
図10は、本発明の実施の形態3における冷蔵庫内に設置された野菜室容器の斜視図である。また、図11は、本発明の実施の形態3における冷蔵庫野菜室の概略構成図であり、第1の貯蔵容器1を側面から観た断面図である。なお、図10および図11において、実施の形態1と同一の箇所については説明を割愛する。
貯蔵容器内蓋33(本発明における移動壁面に相当)は第1の貯蔵容器1の容積を変更するためのものであり、貯蔵容器内蓋駆動装置34は貯蔵容器内蓋33を昇降させるためのものである。貯蔵容器内蓋駆動装置34(本発明における移動装置に相当)は、例えば、回転モータと内蓋を案内するためのレールで構成される。つまり、本実施の形態3においては、湿度環境制御装置10は、空気温度検出装置4、空気湿度検出装置5、および蓋温度検出装置6の検出値に基づいて貯蔵容器内蓋駆動装置34を駆動し(換言すると、第1の貯蔵容器1内の容積を変更し)、第1の貯蔵容器1内を所望の湿度範囲(第1の貯蔵容器蓋部1aの内面に結露せず、且つ野菜負荷402の蒸散量を抑制できる最適な湿度範囲)に制御する。すなわち、本実施の形態3においては、湿度環境制御装置10および貯蔵容器内蓋駆動装置34が本発明における湿度制御装置に相当する。なお、本実施の形態3では、蓋温度検出装置6は、実施の形態1および2(第1の貯蔵容器蓋部1aの裏側に設置)とは異なり、貯蔵容器内蓋33(第1の貯蔵容器1の内部側)に設置されている。
次に、図10および図11を用いて動作の一例について説明する。動作についても、実施の形態1と同一の箇所については説明を割愛する。
第1の貯蔵容器1は、第1の貯蔵容器蓋部1aおよび貯蔵容器内蓋33により密閉状態、または半密閉状態が形成されているから、高湿度が維持されて野菜の蒸散作用が抑制される。しかしながら、第1の貯蔵容器1内の湿度が上がりすぎると、第1の貯蔵容器1内に結露が発生し、結露水により野菜負荷402を腐らせる、また滞留した結露水によりカビが発生する等の問題が起こる可能性がある。
ここで、図4(a)に示した実測データ(第1の貯蔵容器1内(湿度90%RH以上)に保存された、実際の野菜負荷の重量減少率の実測データ)より、蒸散作用の異なる野菜負荷の種類のみならず、同じ野菜負荷に対しても重量によって蒸散量が異なることがわかる。このため、蒸散作用の異なる野菜負荷の種類のみならず、同じ野菜負荷であっても重量が異なることにより、第1の貯蔵容器1内の湿度の上昇傾向、および結露の発生傾向が異なることが予測できる。ここで、野菜負荷の重量の差は、すなわち貯蔵容器に占める野菜負荷の体積比の差としても見ることができる。つまり、体積比が小さいほど、第1の貯蔵容器1全体の湿度上昇は鈍くなり、野菜負荷からの発生水分が拡散しやすくなるため、蒸散作用は促進されることとなる。したがって、図10および図11に示すように、貯蔵容器内蓋33を昇降して、第1の貯蔵容器1の容積を野菜負荷に適した容積に変更することにより、第1の貯蔵容器1内の湿度を制御することができる。
図12は、本発明の実施の形態3における冷蔵庫野菜室(第1の貯蔵容器1)の湿度環境制御フローチャートであり、図11に図示されている、湿度環境制御装置10の制御内容を示すものである。なお、ユーザーが行うステップS1以外のステップにおいて、動作を行う主体が明示されていないものについては、湿度環境制御装置10が行う。
まず、ステップS1において、第1の貯蔵容器蓋部1a、および貯蔵容器内蓋33が開閉されると、ステップS2において空気温度検出装置4が第1の貯蔵容器1内の空気温度Ta を検出する。また、空気湿度検出装置5が第1の貯蔵容器1内の空気湿度Ha を検出する。なお、ステップS1において、野菜負荷402の投入、および/または取り出しに関わらず、第1の貯蔵容器蓋部1a、および第1の貯蔵容器蓋部1aは開閉される。
ステップS3において、空気温度検出装置4が検出した空気温度Ta と空気湿度検出装置5が検出した空気湿度Ha を用いて、第1の貯蔵容器1内の露点温度Tdew を算出する。ステップS4において、蓋温度検出装置6が貯蔵容器内蓋33の内面(下面)の蓋表面温度Tsur を検出し、ステップS5において蓋表面温度Tsur と露点温度Tdew の大小関係を比較する。このとき、蓋表面温度Tsur が露点温度Tdew 以下であると判定した場合は、貯蔵容器内蓋33の内面に直ちに結露する、または既に結露している可能性がある。したがって、空気湿度Ha の値に依らず、ステップS13に進み貯蔵容器内蓋33を1段階上昇させるような制御信号を貯蔵容器内蓋駆動装置34に送信する。
ステップS5において、蓋表面温度Tsur が露点温度Tdew より大きいと判定した場合は、ステップS6に進み、空気湿度Haと予め設定された空気湿度制御範囲上限湿度HaH の大小関係を比較する。このとき、空気湿度Haが空気湿度制御範囲上限湿度HaH より大きいと判定した場合は、貯蔵容器内蓋33の内面に結露する可能性が高く、また野菜負荷402の蒸散量を抑制するうえでも過剰に高い湿度であると判断する。したがって、ステップS13に進み貯蔵容器内蓋33を1段階上昇させるような制御信号を貯蔵容器内蓋駆動装置34に送信する。
ステップS6において、空気湿度Ha が空気湿度制御範囲上限湿度HaH以下であると判定された場合は、ステップS7に進み、空気湿度Ha と予め設定された空気湿度制御範囲下限湿度HaLの大小関係を比較する。このとき、空気湿度Ha が空気湿度制御範囲下限湿度HaLより小さいと判定した場合は、野菜負荷402の蒸散量を抑制するには湿度が不足で、また、貯蔵容器内蓋33の内面に結露する可能性が低いと判断する。したがって、ステップS14に進み貯蔵容器内蓋33を1段階下降させるような制御信号を貯蔵容器内蓋駆動装置34に送信する。
ステップS7において、空気湿度Ha が空気湿度制御範囲下限湿度HaL以上であると判定された場合は、空気湿度Ha は空気湿度制御範囲上限湿度HaHと空気湿度制御範囲下限湿度HaLの間の、貯蔵容器内蓋33の内面に結露せず、且つ野菜負荷402の蒸散量を抑制できる最適な湿度範囲に含まれていると判断し、ステップS2に戻り、ステップS2〜S7を繰り返す。
ステップS13またはS14において、貯蔵容器内蓋33が昇降された場合には、ステップS15において貯蔵容器容積変更後の経過時間tpastをリセットした後に、ステップS16において経過時間tpastを計測する(リセット後の経過時間を算出する)。
次に、ステップS17において、経過時間tpastと予め設定された貯蔵容器容積変更後の開孔率変更後待機時間twaitの大小関係を比較する。
貯蔵容器容積変更後の経過時間tpastが貯蔵容器容積変更後の開孔率変更後待機時間twait以上であると判定した場合は、貯蔵容器内蓋33の昇降によって、第1の貯蔵容器1内に湿度変化が発生するのに充分な時間が経過したと判断し、ステップS2に戻り、ステップS2〜S17を繰り返す。
貯蔵容器容積変更後の経過時間tpastが貯蔵容器容積変更後の開孔率変更後待機時間twaitより小さいと判定した場合は、貯蔵容器内蓋33の昇降によって、第1の貯蔵容器1内に湿度変化が発生するのに充分な時間が経過していないと判断され、ステップS16に戻り、ステップS16〜S17を繰り返す。
以上、本実施の形態3のように構成された冷蔵庫1000においては、略密閉容器である第1の貯蔵容器1内に貯蔵容器内蓋33を設置し、第1の貯蔵容器1内の空気温度、空気湿度、および貯蔵容器内蓋33の内側表面温度を検出し、内側表面温度が空気温度と空気湿度から算出される露点温度より高くなるように、また空気湿度が所定の高湿度範囲に入るように、貯蔵容器内蓋33を昇降し、第1の貯蔵容器1の容積を野菜負荷に適した容積に変更して、第1の貯蔵容器1内の空気湿度を制御することにより、内部に保管される野菜負荷の種類や量によって異なる蒸散量に依らず、貯蔵容器内蓋33の内面に結露せず、且つ野菜負荷の蒸散作用を抑制することができるという効果が得られる。特に内側表面温度が露点温度以下の場合には、空気湿度に依らず貯蔵容器内蓋33を上昇することにより露点温度を下げることを優先しているので、貯蔵容器内蓋33の内面への結露を確実に回避し、結露水の落下による野菜負荷への影響や、滞留した結露水によるカビ発生などの問題を防ぐことが可能となる。また第1の貯蔵容器蓋部1aと貯蔵容器内蓋33の間も略密閉容器となり、これが断熱空気層の役割を果たすため、野菜室戻り風路410からの冷輻射による温度変動の影響が小さくなって野菜の呼吸が抑制されるので、蒸散量をさらに抑制し鮮度を維持することができるという効果が得られる。
なお、図10および図11では、貯蔵容器内蓋33の一部をレールで案内して、回転モータにより昇降動作を行う構成となっているが、この構成は特に制約されるものではない。例えば、貯蔵容器内蓋33を第1の貯蔵容器蓋部1a側からバネ等で押し込んだり、電磁石等で引き上げたりして昇降させてもよい。また、貯蔵容器内蓋33を垂直方向に立てて、前後または左右方向にスライドさせてもよい。貯蔵容器内蓋33により第1の貯蔵容器1の容積が変更されれば、第1の貯蔵容器1内の空気湿度を制御できるので、同様の効果が得られる。
また図10〜図12では、空気温度検出装置4により検出される第1の貯蔵容器1の空気温度Ta 、空気湿度検出装置5により検出される第1の貯蔵容器1の空気湿度Ha 、空気温度Ta と空気湿度Ha を用いて算出される第1の貯蔵容器1内の露点温度Tdew 、蓋温度検出装置6により検出される貯蔵容器内蓋33の内面(下面)の蓋表面温度Tsur を用いて、貯蔵容器内蓋33の昇降動作を行い、第1の貯蔵容器1の容積を調節しているが、貯蔵容器内蓋33の昇降動作時においても、蓋開孔部開閉シャッター8の開閉動作時と同様に、図6の実測データに示したように、空気温度14(Ta )と蓋表面温度17(Tsur )は、第1の貯蔵容器蓋部1a、および貯蔵容器内蓋33が開閉された直後を除きほぼ同等の温度であることが想定されるため、どちらかの温度検出装置を排除して、もう一方の温度検出装置の検出値で代用しても良く、また検出装置は空気湿度検出装置5のみとし、空気湿度Ha の上限湿度HaHを低めに、下限湿度HaLを高めに設定して、より狭い空気湿度制御範囲で制御しても良い。検出装置を削減しているので検出精度は若干低下するが、低コスト化を図ることができるうえ、第1の貯蔵容器1の空気湿度Ha は、貯蔵容器内蓋33の内面への結露が発生しにくく、且つ野菜負荷の蒸散作用を抑制できる湿度範囲に制御できるので、ほぼ同等の効果が得られる。
また、図12では、ステップS13における貯蔵容器内蓋33の上昇動作、ステップS14における貯蔵容器内蓋33の下降動作は、それぞれ1段階ずつ昇降するように湿度環境制御装置10が制御信号を貯蔵容器内蓋駆動装置34に送信しているが、1段階に固定しなくてもよい。例えば、蓋表面温度Tsur が露点温度Tdew 以下であると判定された場合(ステップS5のYes)には、貯蔵容器内蓋33を2段階以上上昇させる、または上限まで上昇させてもよい。また例えば、空気湿度Ha が空気湿度制御範囲上限湿度HaHより大きいとき(ステップS6のYes)、および空気湿度制御範囲下限湿度HaLより小さい場合に(ステップS7のYes)、空気湿度Ha と空気湿度制御範囲との差が大きいほど貯蔵容器内蓋33の昇降動作の段階数を大きくしてもよい。このようにして、第1の貯蔵容器1の空気湿度Ha の制御精度が向上し、より確実に貯蔵容器内蓋33の内面への結露を防止し、且つ野菜負荷の蒸散作用を抑制することができる。
また、本実施の形態3では、第1の貯蔵容器蓋部1aと貯蔵容器内蓋33とを設け、両者の間を断熱空気層としたが、本実施の形態3において第1の貯蔵容器蓋部1aは必須の構成ではない。第1の貯蔵容器蓋部1aがなくとも貯蔵容器内蓋33のみを設けた場合であっても、第1の貯蔵容器1内を所望の湿度範囲(第1の貯蔵容器蓋部1aの内面に結露せず、且つ野菜負荷402の蒸散量を抑制できる最適な湿度範囲)に制御するすることができる。
また、本実施の形態3では貯蔵容器内蓋33を移動させることにより第1の貯蔵容器1内の容積を変更したが、その他の壁面(例えば側面)を移動させても勿論よい。
[実施の形態4]
図13は、本発明の実施の形態4における冷蔵庫内に設置された野菜室容器の斜視図である。また、図14は、本発明の実施の形態4における冷蔵庫野菜室の概略構成図であり、第1の貯蔵容器1を側面から観た断面図である。
図13および図14において、実施の形態1〜3と同一の箇所については説明を割愛するが、22は実施の形態2で説明した水分吸着装置であり、貯蔵容器内蓋33の内面(下面)の一部に設置されている。
水分吸着装置22には、図9に示した等温吸着線23の吸着特性を持つ一般的なシリカゲル、等温吸着線24の吸着特性を持つ一般的な活性炭等の高湿空気に対してより多くの吸着特性を有する吸着剤が担持される。特に等温吸着線25の吸着特性を持つ、10〜20nm(ナノメートル)程度の細孔が多数設けられた多孔質ケイ素材料である高湿吸着に特化した吸着剤が望ましい。
次に、図13および図14を用いて動作の一例について説明する。動作についても、実施の形態1〜3と同一の箇所については説明を割愛する。
実施の形態3と同様に、略密閉容器である第1の貯蔵容器1内に貯蔵容器内蓋33を設置し、第1の貯蔵容器1内の空気温度、空気湿度、および貯蔵容器内蓋33の内側表面温度を検出する。そして、蓋表面温度Tsur が空気温度Ta と空気湿度Ha から算出される露点温度Tdew より高くなるように、また空気湿度が所定の高湿度範囲に入るように、貯蔵容器内蓋33を昇降し、第1の貯蔵容器1の容積を野菜負荷に適した容積に変更して、第1の貯蔵容器1内の空気湿度を制御する。
ここで、本実施の形態4では、貯蔵容器内蓋33の内面(下面)の一部に水分吸着装置22が設置されているため、高湿空気中の水分は同時に水分吸着装置22に吸着される。そして、水分吸着装置22に担持する吸着剤として、図9に示した等温吸着線25の吸着特性を持つ高湿吸着に特化した吸着剤を用いている。また、図12に示した、空気湿度制御範囲の空気湿度制御範囲上限湿度HaHを第3の相対湿度28(Φ3 )程度(≒90%RH)、空気湿度制御範囲下限湿度HaLを第2の相対湿度27(Φ2 )程度(≒80%RH)に設定している。
このため、第3の相対湿度28より高い湿度範囲では、平衡吸着量31(q3 )以上の高い吸着能力を有しているから、第1の貯蔵容器1内の空気湿度Ha が、平衡吸着量が急激に低下する第3の相対湿度28より小さくなるまで吸湿(除湿)する。また、第2の相対湿度27より低い湿度範囲では、平衡吸着量30(q2 )以下の低い吸着能力を有しているから、第1の貯蔵容器1内の空気湿度Ha が、平衡吸着量が急激に上昇する第2の相対湿度27より大きくなるまで放湿(加湿)する。つまり、水分吸着装置22により、第1の貯蔵容器1内の空気湿度Ha が空気湿度制御範囲上限湿度HaHと空気湿度制御範囲下限湿度HaLの間の湿度に保持される。したがって、貯蔵容器内蓋33の内面に結露せず、且つ野菜負荷402の蒸散量を抑制可能な、最適な湿度範囲に制御されることが可能となる。すなわち、特に空気湿度Ha が空気湿度制御範囲上限湿度HaHより大きくなることを抑制できるから、貯蔵容器内蓋33の内面への結露を確実に回避し、結露水の落下による野菜負荷への影響や、滞留した結露水によるカビ発生等の問題を防ぐことが可能となる。なお、水分吸着装置22に担持する吸着剤として、図9に示した等温吸着線23の吸着特性を持つ一般的なシリカゲル、または等温吸着線24の吸着特性を持つ一般的な活性炭を用いても勿論よい。貯蔵容器内蓋33の昇降制御と組み合わせることにより、同様の効果が得られることは言うまでもない。
また、図13および図14に示す構成では、第1の貯蔵容器蓋部1aと貯蔵容器内蓋33の間が略密閉容器となる。この略密閉容器は、断熱空気層の役割を果たすため、野菜室戻り風路410からの冷輻射による温度変動の影響が小さくなるうえ、水分吸着装置22が吸湿/放湿することによって湿度制御される。したがって、実施の形態3における効果に加え、より短時間で空気湿度Ha が最適な湿度範囲に制御されて湿度変動も小さくなるため、野菜の呼吸が抑制され、蒸散量をさらに抑制し鮮度を維持することができる。
なお、図13および図14では、水分吸着装置22は貯蔵容器内蓋33の内面(下面)の一部に設置されているが、貯蔵容器内蓋33の内面全体に、または第1の貯蔵容器1の側面、底面を含めた全内面に設置してもよい。表面温度が最も低温となり結露する可能性の高い、貯蔵容器内蓋33の内面の一部に水分吸着装置22を設置した場合には、低コストで結露を抑制するという目的を果たすことができる。なお、設置面積を大きくするほど、より確実に結露を回避することができる。
また、図13および図14では、水分吸着装置22を貯蔵容器内蓋33の内面(下面)の一部に設置したうえで、空気温度検出装置4により検出される第1の貯蔵容器1の空気温度Ta 、空気湿度検出装置5により検出される第1の貯蔵容器1の空気湿度Ha 、空気温度Ta と空気湿度Ha を用いて算出される第1の貯蔵容器1内の露点温度Tdew 、蓋温度検出装置6により検出される貯蔵容器内蓋33の内面の蓋表面温度Tsur を用いて、貯蔵容器内蓋33の昇降動作を行い、第1の貯蔵容器1の容積を野菜負荷に適した容積に変更して、第1の貯蔵容器1内の空気湿度を制御しているが、水分吸着装置22は一般的に空気湿度が高いほど平衡吸着量が多くなり(吸着能力が増加し)、また水分吸着時、すなわち第1の貯蔵容器1内の湿度が高いときは吸着熱により水分吸着装置22の温度が上昇して露点温度Tdew を下回る可能性は低くなるため、露点温度Tdew を算出するための空気温度検出装置4、および露点温度Tdew と比較するための蓋温度検出装置6は排除し、空気湿度検出装置5のみで制御してもよい。水分吸着装置22単体でも湿度調節は可能であり、特に空気湿度Ha が高湿度の場合における吸着能力高いため、低コスト化を図ったうえで同等の効果が得られる。
[実施の形態5]
図15は、本発明の実施の形態5における冷蔵庫野菜室の概略構成図であり、第1の貯蔵容器1を側面から観た断面図である。図15において、本発明の実施の形態5は、貯蔵容器内蓋33の内面(下面)に、実施の形態4で説明した水分吸着装置22を設置する代わりに、親水性コーティング35を施している。親水性コーティング35のコーティング剤としては、断熱性を有したものが望ましく(例えば熱伝導率0.04W/mK以下)、コーティング層はある程度の厚みがあるのが望ましい(例えば0.5mm以上)。その他については、実施の形態4と同一であるため説明を割愛する。
次に、図15を用いて動作の一例について説明する。動作についても、実施の形態4と同一の箇所については説明を割愛する。
図15において、第1の貯蔵容器蓋部1aと貯蔵容器内蓋33の間の略密閉容器が、断熱空気層の役割を果たすから、野菜室戻り風路410からの冷輻射による温度変動の影響は小さくなる。この場合において、貯蔵容器内蓋33の内面(下面)に親水性コーティング35を施すことにより、厚さ0.5mmでは約8%、厚さ1.0mmでは約15%熱通過率を低減することができる。ここで、親水性コーティング35には、例えば熱伝導率0.04W/mKのコーティング剤が用いられる。
したがって、親水性コーティング35の層も断熱層となって温度変動を抑制するから、実施の形態3における効果に加え、野菜の呼吸が抑制され、蒸散量をさらに抑制し鮮度を維持することができる。また、コーティング剤が親水性を有すことにより、仮に貯蔵容器内蓋33の内面に結露が発生した場合においても、結露水が内面全体に均一に広がって結露水の落下を抑制するから、野菜負荷への直接の影響や、滞留した結露水によるカビ発生等の問題を防ぐことが可能となる。
なお、本実施の形態5では、水分吸着装置22を設置する代わりに親水性コーティング35を施しているが、実施の形態4で示した第1の貯蔵容器1(つまり、第1の貯蔵容器1の内面に水分吸着装置22を設けたもの)の内面に親水性コーティング35を施してもよい。また、本実施の形態5では、内部容積を調節することにより内部湿度を制御する第1の貯蔵容器1に親水性コーティング35を施す例について説明したが、蓋開孔部7からの空気排出量を調節して内部湿度を制御する第1の貯蔵容器1(つまり、実施の形態1,2で示したもの)の内面に親水性コーティング35を施しても勿論よい。
[実施の形態6]
図16は、本発明の実施の形態6における冷蔵庫内に設置された野菜室容器の斜視図である。図16に示すように、第1の貯蔵容器1と第2の貯蔵容器2が横に並んで設置され、2つの容器が第1の貯蔵容器蓋部1aおよび貯蔵容器内蓋33を共有している。換言すると、第1の貯蔵容器1と第2の貯蔵容器2は、1つの壁面が連なって構成されている。なお、本実施の形態6における以下の説明において、実施の形態1〜3と同一の箇所については説明を割愛する。
第2の貯蔵容器開口部2aは、第2の貯蔵容器2内部の空気が野菜室400へ直接排気される部分であり、第2の貯蔵容器開口部2aが大きいほど第2の貯蔵容器2の密閉度は低下する。貯蔵容器蓋部1aと貯蔵容器内蓋33との間は側壁によって閉塞され、上面を第1の貯蔵容器蓋部1a、下面を貯蔵容器内蓋33で囲まれた領域を形成している。この領域は空気断熱層36となり、第1の貯蔵容器1および第2の貯蔵容器2の上部に配置されている。貯蔵容器内蓋33には、第1の貯蔵容器1内部の空気を排出するための(換言すると、第1の貯蔵容器1と空気断熱層36とを連通する)第1の貯蔵容器の蓋開孔部7a、第1の貯蔵容器の蓋開孔部7aを複数段階で開閉するための第1の貯蔵容器の蓋開孔部開閉シャッター8a、および、第1の貯蔵容器の蓋開孔部開閉シャッター8aを駆動させるための第1の貯蔵容器の開閉シャッター駆動装置9aが設置されている。また、貯蔵容器内蓋33には、第2の貯蔵容器2内部の空気を排出するための(換言すると、第2の貯蔵容器2と空気断熱層36とを連通する)第2の貯蔵容器の蓋開孔部7b、第2の貯蔵容器の蓋開孔部7bを複数段階で開閉するための第2の貯蔵容器の蓋開孔部開閉シャッター8b、および、第2の貯蔵容器の蓋開孔部開閉シャッター8bを駆動させるための第2の貯蔵容器の開閉シャッター駆動装置9bが設置されている。
第1の貯蔵容器の開閉シャッター駆動装置9aおよび第2の貯蔵容器の開閉シャッター駆動装置9bは、例えば、回転モータと、シャッターを案内するためのレールとで構成される。つまり、本実施の形態6においては、湿度環境制御装置10は、空気温度検出装置4、空気湿度検出装置5、および蓋温度検出装置6の検出値に基づいて、第1の貯蔵容器の開閉シャッター駆動装置9aおよび第2の貯蔵容器の開閉シャッター駆動装置9bを駆動する。そして、これにより第1の貯蔵容器1内を所望の湿度範囲(貯蔵容器内蓋33の内面に結露せず、且つ野菜負荷の蒸散量を抑制できる最適な湿度範囲)に制御する。
ここで、本実施の形態6においては、湿度環境制御装置10が本発明における湿度制御装置に相当する。第1の貯蔵容器の蓋開孔部開閉シャッター8a、および第1の貯蔵容器の開閉シャッター駆動装置9aが、本発明における開孔部開閉装置に相当する。第2の貯蔵容器の蓋開孔部開閉シャッター8b、および第2の貯蔵容器の開閉シャッター駆動装置9bが、本発明における第2の開孔部開閉装置に相当する。第2の貯蔵容器の蓋開孔部7bが、本発明における第2の開孔部に相当する。貯蔵容器内蓋33が、本発明における冷却壁面に相当する。また、第1の貯蔵容器蓋部1aが、本発明における第2の冷却壁面に相当する。
なお、本実施の形態6では、蓋温度検出装置6は、実施の形態1および2(第1の貯蔵容器蓋部1aの裏側に設置)とは異なり、貯蔵容器内蓋33(第1の貯蔵容器1の内部側)に設置されている。
次に、図16を用いて動作の一例について説明する。動作についても、実施の形態1〜3と同一の箇所については説明を割愛する。
第1の貯蔵容器1は、第1の貯蔵容器蓋部1aおよび貯蔵容器内蓋33により密閉状態、または半密閉状態が形成されているから、高湿度が維持されて野菜の蒸散作用が抑制される。しかしながら、第1の貯蔵容器1内の湿度が上がりすぎると、第1の貯蔵容器1内に結露が発生し、結露水により野菜負荷を腐らせる、また滞留した結露水によりカビが発生する等の問題が起こる可能性がある。
このとき、本実施の形態6では、貯蔵容器内蓋33の第1の貯蔵容器1と連通する位置に第1の貯蔵容器の蓋開孔部7aを設置し、実施の形態1と同様に、第1の貯蔵容器1内の空気温度、空気湿度、および貯蔵容器内蓋33の内側表面温度を検出する。そして、内側表面温度が空気温度と空気湿度から算出される露点温度より高くなるように、また空気湿度が所定の高湿度範囲に入るように、第1の貯蔵容器の蓋開孔部開閉シャッター8aを開閉し、第1の貯蔵容器の蓋開孔部7aからの排気量、すなわち第1の貯蔵容器1内の空気湿度を制御する。これにより、第1の貯蔵容器1内部に保管される野菜負荷の種類や量によって異なる蒸散量に依らず、貯蔵容器内蓋33の内面に結露せず、且つ野菜負荷の蒸散作用を抑制することができるという効果が得られる。
また本実施の形態6では、貯蔵容器内蓋33の第2の貯蔵容器2と連通する位置にも第2の貯蔵容器の蓋開孔部7bが設置されているので、第1の貯蔵容器の蓋開孔部7aから排出された第1の貯蔵容器1内の高湿空気が、空気断熱層36を経由して、第2の貯蔵容器の蓋開孔部7bから、第1の貯蔵容器1より密閉度および湿度が低い第2の貯蔵容器2内部に流入する、すなわち高湿空気をより湿度の低い容器内へ循環することが可能となり、第2の貯蔵容器2においても野菜の蒸散をある程度抑制できうる湿度を確保することができる。
このとき、野菜室400は、天面に配置されている野菜室戻り風路410からの冷輻射によって冷却されるため、第1の貯蔵容器1および第2の貯蔵容器2よりも上方に設置されている空気断熱層36が最も低温となるので、空気断熱層36に高湿空気が流入した場合には第1の貯蔵容器蓋部1aに結露する可能性が高い。しかしながら、仮に結露が発生しても、貯蔵容器内蓋33により結露水が貯蔵容器内に滴下することを防ぐことができ、第1の貯蔵容器蓋部1aを着脱可能とすれば取り外して洗うことができる。このため、空気断熱層36は、断熱層としての効果(野菜室戻り風路410からの冷輻射による温度変動の影響を低減し野菜の呼吸、すなわち蒸散量を抑制し鮮度を維持するという効果)に加え、結露水の落下による野菜負荷への影響や、滞留した結露水によるカビ発生などの問題を防ぐことも可能となる。
ここで、本実施の形態6では、第2の貯蔵容器の蓋開孔部7bの開孔率を制御する第2の貯蔵容器の蓋開孔部開閉シャッター8bおよび第2の貯蔵容器の開閉シャッター駆動装置9bが設けられている。この場合、第2の貯蔵容器の蓋開孔部開閉シャッター8bおよび第2の貯蔵容器の開閉シャッター駆動装置9bは、第1の貯蔵容器の蓋開孔部開閉シャッター8aおよび第1の貯蔵容器の開閉シャッター駆動装置9aと連動して制御するとよい。詳しくは、第1の貯蔵容器の蓋開孔部7aの開孔率が大きい場合、すなわち第1の貯蔵容器1内部の湿度が高く結露する可能性がある場合には、第2の貯蔵容器の蓋開孔部7bの開孔率も大きくなるように制御するとよい。これにより、第1の貯蔵容器1から第2の貯蔵容器2への高湿空気の循環量が増加するので、第1の貯蔵容器1内部における結露を抑制するだけでなく、第2の貯蔵容器2内部の空気湿度が上昇する。逆に、第1の貯蔵容器の蓋開孔部7aの開孔率が小さい場合、すなわち第1の貯蔵容器1内部の負荷が小さく湿度が低い場合には、第2の貯蔵容器の蓋開孔部7bの開孔率も小さくなるように制御するとよい。これにより、空気断熱層36から第2の貯蔵容器2への集中的な冷気の流入が抑制され、第2の貯蔵容器2内を中湿度帯に維持できるので、第1の貯蔵容器1だけでなく、第2の貯蔵容器2においても野菜の蒸散を抑制する湿度を確保することができる。
なお、図16に示した野菜室容器401はあくまでも一例であり、例えば図17に示すように野菜室容器401を構成してもよい。
図17は、本発明の実施の形態6における冷蔵庫野菜室の別の一例を示す概略構成図であり、第1の貯蔵容器1および第2の貯蔵容器2を側面から観た断面図である。
図17では、第2の貯蔵容器2の上(あるいは内部)に第1の貯蔵容器1が設置されている。そして、第2の貯蔵容器2の上部開口を覆う第1の貯蔵容器蓋部1aおよび貯蔵容器内蓋33を第1の貯蔵容器1が共有することにより、第1の貯蔵容器1と第2の貯蔵容器2の壁面が連なった構成となっている。また、図17では、第2の貯蔵容器開口部2aを第2の貯蔵容器2の後側の側壁に形成している。このように野菜室容器401を構成しても、図16に示した野菜室容器401と同様の効果を得ることができる。
また、図17では、第1の貯蔵容器の蓋開孔部開閉シャッター8aおよび第2の貯蔵容器の蓋開孔部開閉シャッター8bを1つの蓋開孔部開閉シャッター8として一体化し、第1の貯蔵容器の開閉シャッター駆動装置9aおよび第2の貯蔵容器の開閉シャッター駆動装置9bを1つの開閉シャッター駆動装置9として一体化している。そして、第1の貯蔵容器の蓋開孔部7aおよび第2の貯蔵容器の蓋開孔部7bの開孔率を、第1の貯蔵容器1内の空気温度、空気湿度、および貯蔵容器内蓋33の内側表面温度によって一括制御している。これにより、例えば、第1の貯蔵容器1内が結露する可能性がある場合には、第1の貯蔵容器の蓋開孔部7aおよび第2の貯蔵容器の蓋開孔部7bの開孔率を大きくすることができる。また例えば、第1の貯蔵容器1内の湿度が低い場合には、第1の貯蔵容器の蓋開孔部7aおよび第2の貯蔵容器の蓋開孔部7bの開孔率を小さくすることができる。したがって、第2の貯蔵容器の蓋開孔部7bの開孔率を調整する場合、第1の貯蔵容器の蓋開孔部開閉シャッター8aおよび第2の貯蔵容器の蓋開孔部開閉シャッター8bを1つの蓋開孔部開閉シャッター8として一体化し、第1の貯蔵容器の開閉シャッター駆動装置9aおよび第2の貯蔵容器の開閉シャッター駆動装置9bを1つの開閉シャッター駆動装置9として一体化することにより、部品点数を削減したうえで同様の効果が得られる。
また、図16および図17では、第1の貯蔵容器1内にのみ空気温度検出装置4、空気湿度検出装置5および蓋温度検出装置6を設置し、第1の貯蔵容器1内の空気温度、空気湿度、および貯蔵容器内蓋33の内側表面温度によって蓋開孔部7の開孔率を制御しているが、第2の貯蔵容器2内の空気温度、空気湿度、貯蔵容器内蓋33の内側表面温度を検出し、第2の貯蔵容器2と連通する第2の貯蔵容器の蓋開孔部7bの開孔率を第1の貯蔵容器1と同様に個別に制御してもよい。これにより、第2の貯蔵容器2内は、第1の貯蔵容器1内より湿度は低くなるが、第2の貯蔵容器開口部2aにより湿度制御精度は向上する。このため、例えば白菜やキャベツなど、葉物野菜ほどは蒸散量が多くないが長期間保存する野菜に適した貯蔵空間を第2の貯蔵容器2に形成することができる。
また、図16および図17に示した野菜室容器401(貯蔵容器内蓋33の第1の貯蔵容器1および第2の貯蔵容器2と連通する位置に第1の貯蔵容器の蓋開孔部7aおよび第2の貯蔵容器の蓋開孔部7bを設置し、第1の貯蔵容器の蓋開孔部7aから排出された第1の貯蔵容器1内の高湿空気を、空気断熱層36を経由して、第2の貯蔵容器の蓋開孔部7bから、第1の貯蔵容器1より密閉度および湿度が低い第2の貯蔵容器2内部に循環させるもの)に、図18に示すような構成を追加するとさらに良い。
図18は、本発明の実施の形態6における冷蔵庫野菜室のさらに別の一例を示す概略構成図である。
図18に示す野菜室容器401には、図17で示した野菜室容器401の構成に加えて、空気断熱層36の冷却面に相当する第1の貯蔵容器蓋部1aに、空気断熱層の蓋開孔部7c、空気断熱層の蓋開孔部7cを複数段階で開閉するための空気断熱層の蓋開孔部開閉シャッター8c、および空気断熱層の蓋開孔部開閉シャッター8cを駆動させるための空気断熱層の開閉シャッター駆動装置9cが設けられている。
上述のように、本実施の形態6では、第1の貯蔵容器1内部の湿度が高く結露する可能性がある場合、第1の貯蔵容器1および第2の貯蔵容器2と連通させる蓋開孔部(第1の貯蔵容器の蓋開孔部7a、第2の貯蔵容器の蓋開孔部7b)の開孔率が大きくなるように制御し、第1の貯蔵容器1から第2の貯蔵容器2への高湿空気の循環量を増加させている。しかしながら、第1の貯蔵容器1内が過負荷等で湿度が低下しない場合がある。このような場合、空気断熱層の蓋開孔部7cの開孔率を大きくし、野菜室400への排気量を増加させることにより、空気断熱層36および第1の貯蔵容器1内の湿度が低下するので、空気断熱層36および第1の貯蔵容器1内の結露を抑制することが可能となる。また、第1の貯蔵容器1内において最適湿度が維持されている場合は、空気断熱層の蓋開孔部7cの開孔率を小さく、あるいは閉塞することにより、第1の貯蔵容器1から第2の貯蔵容器2への高湿空気の循環量が増加するため、第2の貯蔵容器2においても野菜の蒸散を抑制する湿度を確保することができる。なお、空気断熱層の蓋開孔部7cに空気断熱層の蓋開孔部開閉シャッター8cおよび空気断熱層の開閉シャッター駆動装置9cを設ける必要は、必ずしもない。例えば、第1の貯蔵容器1内が過負荷等で湿度が低下しない場合等を想定し、空気断熱層の蓋開孔部7cの開孔率を予め設定しておけば、空気断熱層の蓋開孔部開閉シャッター8cおよび空気断熱層の開閉シャッター駆動装置9cを取り外すことも可能である。
ここで、空気断熱層の蓋開孔部7cが、本発明における第3の開孔部に相当する。また、空気断熱層の蓋開孔部開閉シャッター8cおよび空気断熱層の開閉シャッター駆動装置9cが、本発明における第3の開孔部開閉装置に相当する。
このように、貯蔵容器内蓋33の第1の貯蔵容器1および第2の貯蔵容器2と連通する位置に設置された第1の貯蔵容器の蓋開孔部7aおよび第2の貯蔵容器の蓋開孔部7bに加え、空気断熱層36の冷却面に相当する第1の貯蔵容器蓋部1aに空気断熱層の蓋開孔部7cを形成し、第1の貯蔵容器1内の空気温度、空気湿度、および貯蔵容器内蓋33の内側表面温度に応じて、第1の貯蔵容器の蓋開孔部7a、第2の貯蔵容器の蓋開孔部7bおよび空気断熱層の蓋開孔部7cの開孔率を組み合わせて制御することにより、第1の貯蔵容器1から第2の貯蔵容器2への高湿空気の循環量、および空気断熱層36から野菜室400への排気量を調整することができる。これにより、第1の貯蔵容器1、第2の貯蔵容器2および空気断熱層36内部の結露を抑制し、且つ第1の貯蔵容器1および第2の貯蔵容器2に保存された野菜の蒸散作用を抑制する湿度を確保することができるという効果が得られる。
図19は、本発明の実施の形態6に係る野菜室容器の各種仕様における野菜負荷の蒸散量(=蒸散水分重量/初期重量)および野菜室容器内の結露量を示す実測データの一例であり、(a)は野菜負荷の蒸散量、(b)は貯蔵容器の結露量のデータである。横軸に示されているA〜Dは野菜室容器401の仕様を示すものである。具体的には、Aは、図17に示した野菜室容器401から第1の貯蔵容器蓋部1aを取り外した一重蓋仕様のものである。このA仕様の野菜室容器401においては、貯蔵容器内蓋33に対する蓋開孔部の面積比は、第1の貯蔵容器の蓋開孔部7aが約1.2%、第2の貯蔵容器の蓋開孔部7bが約0.6%となっている。Bは、図17に示した二重蓋仕様の野菜室容器401である。このB仕様の野菜室容器401においては、貯蔵容器内蓋33に対する蓋開孔部の面積比は、A仕様のものと同様に、第1の貯蔵容器の蓋開孔部7aが約1.2%、第2の貯蔵容器の蓋開孔部7bが約0.6%となっている。Cは、図18に示した野菜室容器401ものである。つまり、Cは、二重蓋の上蓋となる第1の貯蔵容器蓋部1aに空気断熱層の蓋開孔部7cが形成されたものである。このC仕様の野菜室容器401においては、貯蔵容器内蓋33に対する蓋開孔部の面積比は、A仕様のものと同様に、第1の貯蔵容器の蓋開孔部7aが約1.2%、第2の貯蔵容器の蓋開孔部7bが約0.6%となっている。また、第1の貯蔵容器蓋部1aに形成された空気断熱層の蓋開孔部7cの貯蔵容器内蓋33に対する面積比は、約0.2%となっている。Dは、図18に示した野菜室容器401であり、C仕様の野菜室容器に対して蓋開孔部の面積を変更し、開口面積を最適化したものである。このD仕様の野菜室容器401においては、貯蔵容器内蓋33に対する蓋開孔部の面積比は、第1の貯蔵容器の蓋開孔部7aが約0.8%、第2の貯蔵容器の蓋開孔部7bが約0.2%となっている。また、第1の貯蔵容器蓋部1aに形成された空気断熱層の蓋開孔部7cの貯蔵容器内蓋33に対する面積比は、約0.2%となっている。
また、図19に示す野菜負荷の蒸散量は、野菜負荷として第1の貯蔵容器1または第2の貯蔵容器2に保存されたホウレン草の蒸散量を示している。詳しくは、37aは、第1の貯蔵容器1に高負荷量(300g)のホウレン草を保存したときの蒸散量である。37bは、第1の貯蔵容器1に低負荷量(100g)のホウレン草を保存したときの蒸散量である。37cは、第2の貯蔵容器2に高負荷量(800g)のホウレン草を保存したときの蒸散量である。37dは、第2の貯蔵容器2に低負荷量(200g)のホウレン草を保存したときの蒸散量である。第2の貯蔵容器2のほうが負荷量を多く保存しているのは、貯蔵容器の容量に合わせたためである。また、38aは第1の貯蔵容器1に高負荷量(300g)のホウレン草を保存したときの第1の貯蔵容器1内の結露量を示し、38bは第1の貯蔵容器1に低負荷量(100g)のホウレン草を保存したときの第1の貯蔵容器1内の結露量を示し、38cは第2の貯蔵容器2に高負荷量(800g)のホウレン草を保存したときの第2の貯蔵容器2内の結露量を示し、38dは第2の貯蔵容器2に低負荷量(200g)のホウレン草を保存したときの第2の貯蔵容器2内の結露量を示している。
図19から、一重蓋仕様(A)から二重蓋仕様(B)に変更することによって、空気断熱層36の効果により、野菜室戻り風路410からの冷輻射による温度変動の影響を低減して野菜の呼吸が抑制されるため、ホウレン草の蒸散量が抑制されることがわかる。特に、低負荷の野菜の蒸散量は抑制されている(37b,37d)。しかしながら、一重蓋仕様(A)から二重蓋仕様(B)に変更することにより、密閉度が高くなって排湿量が抑制されるため、すべての条件にて結露量が増加している。次に、二重蓋仕様(B)から上蓋開孔仕様(C)に変更することにより、過剰な湿分が野菜室400に放湿されるため、第1の貯蔵容器1の結露量は低下しているのがわかる(38a,38b)。しかしながら、野菜室400から第1の貯蔵容器1および第2の貯蔵容器2への冷気の流入が多くなるため、第2の貯蔵容器2の結露量は増加している(38c,38d)。さらに、上蓋開孔仕様(C)から開孔面積最適化仕様(D)に変更することにより、第2の貯蔵容器2の結露量も抑制されていることがわかる(38c,38d)。これは、上蓋開孔仕様(C)から開孔面積最適化仕様(D)に変更することにより、第1の貯蔵容器の蓋開孔部7aおよび第2の貯蔵容器の蓋開孔部7bの面積が小さくなるので、第1の貯蔵容器1からの排湿量が低減し、第2の貯蔵容器2への循環量が低減し、空気断熱層の蓋開孔部7cからの放湿量が増加するためである。
[実施の形態7]
図20は、本発明の実施の形態7における冷蔵庫野菜室の概略構成図であり、第1の貯蔵容器1および第2の貯蔵容器2を側面から観た断面図である。ここで図20は、図17と同様に、第2の貯蔵容器2の上(あるいは内部)に第1の貯蔵容器1が設置され、第1の貯蔵容器蓋部1aおよび貯蔵容器内蓋33を共有する構成となっている。なお図20において、実施の形態6と同一の箇所については説明を割愛する。
図20において、第1の貯蔵容器1の第2の貯蔵容器2との境界面には、第1の貯蔵容器1と第2の貯蔵容器2を貫通する貯蔵容器貫通口39(貫通穴)、貯蔵容器貫通口39を複数段階で開閉するための貯蔵容器貫通口開閉シャッター40、および貯蔵容器貫通口開閉シャッター40を駆動させるための貯蔵容器貫通口の開閉シャッター駆動装置9dが設けられている。貯蔵容器貫通口の開閉シャッター駆動装置9dは、例えば、回転モータと、シャッターを案内するためのレールとで構成される。つまり、本実施の形態7においては、湿度環境制御装置10は、空気温度検出装置4、空気湿度検出装置5、および蓋温度検出装置6の検出値に基づいて貯蔵容器貫通口の開閉シャッター駆動装置9dを駆動し、第1の貯蔵容器1内を所望の湿度範囲(貯蔵容器内蓋33の内面に結露せず、且つ野菜負荷の蒸散量を抑制できる最適な湿度範囲)に制御する。すなわち、本実施の形態7においては、湿度環境制御装置10が本発明における湿度制御装置に相当する。また、貯蔵容器貫通口の開閉シャッター駆動装置9dおよび貯蔵容器貫通口開閉シャッター40が本発明における開孔部開閉装置に相当する。また、貯蔵容器貫通口39が、本発明における第1の容器用貫通穴に相当する。なお、貯蔵容器貫通口開閉シャッター40、および貯蔵容器貫通口の開閉シャッター駆動装置9dは、図20においては第1の貯蔵容器1内の底面に設置されているが、第1の貯蔵容器1の第2の貯蔵容器2の境界面にあればよく、例えば第1の貯蔵容器1内の側面でも第1の貯蔵容器1の外側に設置されてもよい。
次に、図20を用いて動作の一例について説明する。動作についても、実施の形態6と同一の箇所については説明を割愛する。
第1の貯蔵容器1は、第1の貯蔵容器蓋部1aおよび貯蔵容器内蓋33により密閉状態、または半密閉状態が形成されているから、高湿度が維持されて野菜の蒸散作用が抑制される。しかしながら、第1の貯蔵容器1内の湿度が上がりすぎると、第1の貯蔵容器1内に結露が発生し、結露水により野菜負荷を腐らせる、また滞留した結露水によりカビが発生する等の問題が起こる可能性がある。
このとき、本実施の形態7に係る野菜室容器401は、図20に示すように、第1の貯蔵容器1の第2の貯蔵容器2との境界面に、第1の貯蔵容器1と第2の貯蔵容器2を貫通する貯蔵容器貫通口39が形成されているので、第1の貯蔵容器1より密閉度および湿度が低い第2の貯蔵容器2内部に高湿空気が流入する、すなわち高湿空気をより湿度の低い容器内へ循環することが可能となる。つまり、実施の形態1と同様に、第1の貯蔵容器1内の空気温度、空気湿度、および貯蔵容器内蓋33の内側表面温度を検出し、内側表面温度が空気温度と空気湿度から算出される露点温度より高くなるように、また空気湿度が所定の高湿度範囲に入るように、貯蔵容器貫通口開閉シャッター40を開閉し、貯蔵容器貫通口39から第2の貯蔵容器2への循環量、すなわち第1の貯蔵容器1内の空気湿度を制御することにより、内部に保管される野菜負荷の種類や量によって異なる蒸散量に依らず、貯蔵容器内蓋33の内面に結露せず、且つ野菜負荷の蒸散作用を抑制することができる。また、第1の貯蔵容器1内の高湿空気は直接第2の貯蔵容器2内に供給されるので、第2の貯蔵容器2においても野菜の蒸散をある程度抑制できうる湿度を確保することができる。
なお、図20では、第1の貯蔵容器1内にのみ空気温度検出装置4、空気湿度検出装置5、蓋温度検出装置6を設置し、第1の貯蔵容器1内の空気温度、空気湿度および貯蔵容器内蓋33の内側表面温度によって貯蔵容器貫通口39の開孔率を制御しているが、第2の貯蔵容器2内の空気温度、空気湿度、貯蔵容器内蓋33の内側表面温度を検出し、第2の貯蔵容器2内の状態も考慮して、貯蔵容器貫通口39の開孔率を制御してもよい。このとき、例えば第2の貯蔵容器2内のみが高負荷状態となった場合、貯蔵容器貫通口39の開孔率を大きくして第2の貯蔵容器2内の高湿空気を第1の貯蔵容器1内へ退避させ、第2の貯蔵容器2における結露を抑制するなどの制御も可能となる。また、最終的には第2の貯蔵容器2内の空気湿度を第1の貯蔵容器1内と同一となるまで上昇させることもできるため、第2の貯蔵容器2においても野菜の蒸散を抑制する湿度を確保することができる。
また、図20では、第2の貯蔵容器2の上(あるいは内部)に配置された第1の貯蔵容器1に貯蔵容器貫通口39、貯蔵容器貫通口開閉シャッター40、および貯蔵容器貫通口の開閉シャッター駆動装置9dを設けた例について説明したが、第1の貯蔵容器1と第2の貯蔵容器2の配置関係は図20の構成に限定されるものではない。例えば、第1の貯蔵容器1の側方に第2の貯蔵容器2を配置した野菜室容器401(例えば、実施の形態1〜5、実施の形態6の図16に示した構成)に、貯蔵容器貫通口39、貯蔵容器貫通口開閉シャッター40、および貯蔵容器貫通口の開閉シャッター駆動装置9dを設けてもよい。つまり、第1の貯蔵容器1および第2の貯蔵容器2の互いに対向する側壁を貫通するように、貯蔵容器貫通口39を形成すればよい。
また、図20では、貯蔵容器貫通口39の開孔率のみで第1の貯蔵容器1内の湿度を制御しているが、実施の形態6で述べたような空気断熱層36が形成されている場合、貯蔵容器内蓋33に第1の貯蔵容器の蓋開孔部7aおよび第2の貯蔵容器の蓋開孔部7bを設けたり、また第1の貯蔵容器蓋部1aに空気断熱層の蓋開孔部7cを設けたりして、これらの開孔率も組み合わせて制御してもよい。貯蔵容器貫通口39の開孔率のみでも、第1の貯蔵容器1内と第2の貯蔵容器2内の空気湿度のバランスにより制御できるが、どちらか一方が過負荷状態になった場合などは、第1の貯蔵容器の蓋開孔部7aおよび第2の貯蔵容器の蓋開孔部7bや空気断熱層の蓋開孔部7cを経由して、高湿空気を空気断熱層36内に循環させる、また野菜室400に排気することにより、第1の貯蔵容器蓋部1aの内面への結露を確実に回避することが可能となる。
また、本実施の形態7では、第1の貯蔵容器1の第2の貯蔵容器2との境界面に、第1の貯蔵容器1と第2の貯蔵容器2を貫通する貯蔵容器貫通口39を設置しているが、第1の貯蔵容器1と第3の貯蔵容器3の境界面に、第1の貯蔵容器1と第3の貯蔵容器3を貫通する貯蔵容器貫通口を設けてもよい。この場合、当該貯蔵容器貫通口が、本発明における第2の貯蔵容器用貫通穴に相当する。また、第2の貯蔵容器2と第3の貯蔵容器3の境界面に、第2の貯蔵容器2と第3の貯蔵容器3を貫通する貯蔵容器貫通口を設けてもよい。なお、この場合、当該貯蔵容器貫通口が、本発明における貫通穴に相当する。第2の貯蔵容器2と第3の貯蔵容器3を貫通する貯蔵容器貫通口を第2の貯蔵容器開口部2aとして形成する場合、貫通口開閉シャッターや貯蔵容器貫通口の開閉シャッター駆動装置を取り付ける必要は特にない。