JP2012530690A - 変異体タンパク質およびそれらを生産する方法 - Google Patents

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Abstract

親GPCRに対して増加した安定性を持つ変異体のGタンパク質共役受容体(GPCR)を生産する方法であって、該方法は親GPCRを定めるアミノ酸配列に一以上の変異を作ることを含み、(i)一以上の変異がiプラス又はマイナス5残基のウインドウ内に位置し、ここでiは親GPCRがクラス1GPCRである場合、親GPCRのアミノ酸残基2.46の位置であり、又は親GPCRがクラス2又は3GPCRである場合、iは親GPCRの等価なアミノ酸残基の位置であり、及び/又は(ii)一以上の変異が親GPCRの膜貫通ヘリックス7のアミノ酸配列内に位置し、該アミノ酸配列がiプラス又はマイナス5残基のウインドウと相互作用し、増加した安定性を持つ親GPCRの一以上の変異体を与えることを含む方法。

Description

本発明は、変異体7回膜貫通型受容体(7−TMR)、又はGタンパク質共役受容体(GPCR)及び増加した安定性を有するものを選ぶ方法に関する。特に、それは、それらの各々の親タンパク質と比較して、特定の条件下で増加した安定性を有する変異体GPCRの選択及び調製に関する。そのようなタンパク質は、親タンパク質よりも結晶化可能である可能性がより高く、そのため構造決定に適している。それらはまた薬剤の探索及び開発の研究に有用である。
過去20年間にわたり、膜タンパク質構造決定の速度は次第に向上してきたが、大部分の成功は真核生物由来よりむしろ細菌由来の膜タンパク質の結晶化におけるものであった[非特許文献1]。細菌の膜タンパク質は、真核生物膜タンパク質よりも大腸菌において標準的技術を使用して過剰発現させるのが容易であり[非特許文献2及び3]、細菌のタンパク質は、場合によっては界面活性剤中においてはるかに安定しており、界面活性剤の安定性は精製及び結晶化に本質的に必要な条件である。ゲノム塩基配列決定プロジェクトはまた、特定の輸送体又はイオン・チャネルの数多くのホモログのクローニング及び発現を可能とし、結晶化の成功率も大幅に向上させた。100以上の固有のポリトピック内在性膜タンパク質の構造が決定されたが(http://blanco.biomol.uci.edu/を参照)、これらの膜タンパク質の10%未満が哺乳類の起源であり、半数以上が天然源から精製され、界面活性剤の溶液中で安定している。真核生物の膜タンパク質を過剰発現させることの困難さは別として、それらはしばしば界面活性剤溶液中で乏しい安定性を有し、それらの急激に変性し又は沈殿することなしに探索され得る結晶化条件の範囲を厳しく制限する。理想的には、膜タンパク質は、任意の所定の界面活性剤溶液中において、何日間も安定していなければならないが、回折する品質の結晶を成長させることに最適な界面活性剤は、最も不安定な界面活性剤、すなわち短い脂肪族鎖と小さい若しくは荷電した頭部基を持つものである傾向がある。我々が解きたいのはヒトの膜タンパク質の構造であり、その理由はこれらは製薬企業による治療薬の開発を支援するために必要なためである;しばしば異なる哺乳類由来の受容体、チャネル及びトランスポーターの薬理学には実質的な相違がある一方で、酵母と細菌のゲノムは、任意の相同タンパク質を含んでいない可能性がある。従って、結晶化と構造決定のため、及び潜在的には薬のスクリーニング、バイオアッセイやバイオセンサーアプリケーションなどの他の目的ために、界面活性剤に安定な真核生物の内在性膜タンパク質の生産を可能にする一般的な戦略の開発が非常に必要とされている。
膜タンパク質は細胞生存能を保障するために膜において十分に安定であるように進化してきたが、しかし、それらは界面活性剤溶液中において、安定しているためには進化しておらず、膜タンパク質を人工的に進化させ、界面活性剤に安定な変異体を単離し得ることを示唆している[非特許文献4]。このことは、その後、2つの細菌のタンパク質、すなわちジアシルグリセロール・キナーゼ(DGK)[非特許文献5及び6]及びバクテリオ・ロドプシン[非特許文献7]において証明された。DGKのランダムな変異誘発は耐熱性を増す特定の点変異を識別し、組み合わせられた場合、最適な安定変異体が、天然型タンパク質が55℃で6分の半減期を有するのと比較して、80℃で35分の半減期を有したため、その効果は付加的であった[非特許文献6]。界面活性剤耐性DGK変異体の三量体がSDS中で安定になったことが示され、従って、オリゴマー状態の安定化が熱安定性において重要な役割を果たした可能性がある。変異誘発の目的は結晶化に適している膜タンパク質を生産することであったが、DGKの構造はまだ決定されておらず、かつ成功した結晶化の報告は無い。ヘリックスBに沿ってシステインスキャンニング変異誘発によるバクテリオロドプシンに対する更なる研究は、どのアミノ酸残基が突然変異により耐熱性を導くかを予測することが可能でなく、またその構造との関係で、なぜ熱安定性が生じるのか明らかではないことを示した[非特許文献7]。
GPCRは、数多くの生理プロセスを制御する非常に大きなタンパク質ファミリーを構成し、数多くの効果的な薬剤の標的である。したがって、それらは非常に薬理学的に重要である。GPCRの一覧は、Foord等(2005)Pharmacol Rev.57,279−288に挙げられており、本明細書において参照により取り込まれる。GPCRは単離されると一般的に不安定であり、本来の照らされてない状態において例外的に安定なウシロドプシンを除いて、最近まで如何なるものも結晶化可能でなかった。
GPCRにより、我々はGタンパク質に信号を送る受容体並びにGタンパク質に信号を送らない受容体を含む、GPCRスーパーファミリーの全ての7−TMRを含める。
GPCRは新薬の開発につながるようなターゲットであり、Overington等 (2006)Nature Rev.Drug Discovery 5,993−996を参照すると、現在の薬の4分の1以上がGPCRをターゲットとすることが示されている。このカテゴリの合計186の全体のターゲットの中から、経口的に利用できる薬に対する52のGPCRターゲットがある。GPCRは、例えばアゴニスト及びアンタゴニスト等の異なる薬理学的種類のリガンドと結合する多数の異なる立体構造で存在し、機能するためにこれらの立体構造の間を循環すると考えられる(Kenakin T.(1997)Ann N Y Acad Sci 812,116−125)。
GPCRは、広範囲にわたる異なるリガンドを認識するように進化した;しかしながら、受容体活性化のための基本的機構は受容体全体に保存され、その結果、異なるサブファミリーの中で大多数のGPCRに存在する良く知られた構造モチーフがある。これらのモチーフは、例えばGタンパク質等のエフェクターへの結合に関与すると考えられている領域である、クラス1GPCRの膜貫通ヘリックス7(TM7)にあるNPxxY(配列番号1)配列を含む(Ballesteros,Shi及びJavitch 2001 Mol Pharmacology 60,1−19)。膜貫通ヘリックス2(TM2)はGPCRのコア構造の一部であり、クラス1においては、生体アミン受容体に存在するSLACAD(配列番号3)(Baldwin,J.M.,Schertler,G.F.X.及び Unger,V.M.(1997)J.Mol.Biol.272,144−164)モチーフとしても知られた非常に保存された配列モチーフ(N/S)LAX(A/S)D(配列番号2)を含む。後述するバレステロス番号付け方式を用いて定められるように、このモチーフ内にあるロイシンはL2.46である。相互的変異誘発研究は、NPxxY(配列番号1)モチーフ及び(N/S)LAX(A/S)D(配列番号2)モチーフ(Bee及びHulme J Biol Chem.2007 Nov 2;282(44):32471−9、及びその参照文献)を含むTM2とTM7の間の連結を示唆した。これらの領域は、受容体の活性化、及びアゴニスト及びアンタゴニストのリガンドおいてお互いの親和性を変える活性化と不活性化状態の切り替えに関与している。これらの2つのモチーフ内の残基の変異誘発は受容体の立体構造を変えることが可能である。
クラス2GPCRにおいてはまた、TM2とTM7の間に機能的に重要な結合の証拠がある。TM7はクラス2GPCRの中で保存されるモチーフSFQを含み、これはTM2のARLモチーフに結合していることが示されている。例えば、副甲状腺受容体(PTHR1)では、TM2のArg233(Leu232に隣接している)及びTM7のGln451はアゴニストの結合及びシグナル伝達に影響を及ぼす(Gardella TJ,Luck MD,Fan MH,Lee C Biol Chem.1996 May 31;271(22):12820−5)。従って、PTHR1受容体のLeu232であるARLモチーフのロイシンは、上記のL2.46と等価な役割を有する。この位置にロイシンを有しないクラス2セクレチンファミリーの一員のみがカルシトニン受容体様受容体(CRLR)であることは特記すべきである。これは、単独ではシグナル伝達GPCRとして機能しないが、RAMPタンパク質と相互作用を必要とするこの群における唯一の受容体である(Foord及びMarshall,Trends Pharmacol Sci.1999 May、20(5):184−7)。
NPxxY(配列番号:1)モチーフはまたクラス3GPCR(xPKxY;配列番号4)(Pin,Galvez及びPrezeau,Pharmacology及びTherapeutics 98,325−354)に存在し、クラス1受容体のL2.46と同等な様式で、TM2の非常に保存されたロイシン残基(代謝型グルタミン酸受容体のLeu635)と結合し得る。この位置にロイシン又は関連アミノ酸を有しないクラス3GPCRのみがGABAB受容体のR1サブユニットであることは特記すべきである。この受容体はGタンパク質に直接シグナルは送らず、その代わりこの位置に密接に関係するイソロイシンを含む結合パートナーGABA R2(Duthey等,J Biol Chem.2002 Feb 1、277(5):3236−41)を介してシグナルを送る。
発明者は、以前、GPCRの安定性を向上し、加えて受容体を生物学的に重要な特定の立体構造に優先的に固定する変異を選択するための様々は方法論を開発した。そうした方法は国際公開第2008/114020号、及び国際公開第2009/071914号に記載され、参照により本明細書に組み込まれる。
発明者は、現在、親GPCRと比較して増加した安定性を有する変異体GPCRを生産する更なる方法を開発した。具体的には、本発明者らはアミノ酸残基2.46及び近傍の残基を変異することが特定の立体構造にて高い安定性を持つ変異体GPCRを与えることに使用可能であることを特定した。
従って、本発明の第一の態様は、親GPCRに比較して高い安定性を持つ変異体Gタンパク質共役受容体(GPCR)の生産方法を提供し、本方法は、親GPCRを定めるアミノ酸配列において、一以上の変異を作製することを含み、ここで(i)一以上の変異がi番目プラス又はマイナス5残基のウインドウ内に位置し、ここで親GPCRがクラス1のGPCRである場合、iは親GPCRのアミノ酸残基2.46の位置であり、又は親GPCRがクラス2又は3のGPCRである場合、iは親GPCRにおける等価なアミノ酸残基の位置であり、及び/又は(ii)一以上の変異が親GPCRの膜貫通ヘリックス7のアミノ酸配列に位置し、そのアミノ酸配列はi番目プラス又はマイナス5残基のウインドウと相互作用し、増加した安定性を有する親GPCRの一以上の変異体を与える。
従って、本発明は、親GPCRに比較して高い安定性を持つ変異体G−タンパク質共役受容体(GPCR)の生産方法を提供する、本方法は、親GPCRを定めるアミノ酸配列に一以上の変異を作製することを含み、(i)一以上の変異がiプラス又はマイナス4残基のウインドウ内に位置し、ここで親GPCRがクラス1のGPCRである場合、iは親GPCRのアミノ酸残基2.46の位置であり、又は親GPCRがクラス2又は3のGPCRである場合、iは親GPCRにおける等価なアミノ酸残基の位置であり、及び/又は(ii)一以上の変異が親GPCRの膜貫通ヘリックス7のアミノ酸配列に位置し、そのアミノ酸配列はiプラス又はマイナス4残基のウインドウと相互作用し、高い安定性を有する親GPCRの一以上の変異体を提供する。
本発明の実施に使用するために適したGPCRは、アデノシン受容体に限定しないが、特にアデノシンA2A受容体(遺伝子名:ADORA2A)、ムスカリン受容体、セロトニン受容体(例えば、5HT2C;遺伝子名HTR2C)、β−アドレナリン受容体(例えば、βAR−1;遺伝子名:ADRB1)、ニューロテンシン受容体(NTS;遺伝子名:NTSR1)、コルチコトロピン放出ホルモン受容体(例えばCRF;遺伝子名:CRHR1)、及びオレキシン受容体(例えば、OX;遺伝子名:HTR2Cを含む。更に、国際薬理学連合はGPCRの一覧を作成している(Foord等(2005)Pharmacol.Rev.57,279−288,参照により本明細書に援用され、この一覧は定期的にhttp://www.iuphar−db.org/GPCR/ReceptorFamiliesForwardにて更新される)。GPCRが原則的にアミノ酸配列類似性に基づいて異なるクラス、例えば原型がロドプシン、セクレチン受容体と代謝型グルタミン酸受容体1であるクラス1、2及び3に分けられることが注目されよう。クラス1、2及び3のGPCRの一覧は、図1a、1b及び1cに与えられる。クラス2GPCRは図14にもリストされている。GPCRはまた結合する天然のリガンドを参照することによりファミリーに分けられる。GPCRのスーパーファミリーの7−TMRを含む、全てのGPCRが本発明の範囲に含まれている。
多くのGPCRのアミノ酸配列(およびそれらをコードするcDNAの塩基配列)は、例えばジェンバンクを参照することにより、容易に入手可能である。特に上掲のFood等はEntrez Gene(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez)由来のヒトの遺伝子記号、及びヒト、マウス、及びラットの遺伝子番号を与えている。また留意すべきことは、ヒトのゲノム配列は実質的に完全なため、ヒトGPCRのアミノ酸配列は、そこから推測できることである。
親GPCRは任意のGPCRであり得るが、真核生物のGPCRである場合、つまりGPCRをコードするcDNA又は遺伝子が真核生物のcDNA又は遺伝子である場合が特に好ましい。例えば、親GPCRは、哺乳動物由来のGPCR等、脊椎動物のGPCRである場合が特に好ましい。親GPCRがラット、マウス、ウサギ又はイヌ又はヒト以外の霊長類又はヒト、又は鶏又は七面鳥由来である場合が特に好ましい。親GPCRを定めるアミノ酸配列は、天然に存在する蛋白質を定めるアミノ酸配列である必要はないことが理解される。都合の良いことに、それは細菌、酵母、昆虫細胞又は哺乳動物細胞のような適切な宿主生物で発現することができる人工的な型を定義し得る。親GPCRを定めるアミノ酸配列は天然に存在するタンパク質の(末端の一方か又は両端を切断した)切断型を定めるアミノ酸配列であるか、又は天然に存在するタンパク質か又はその断片への融合を定めるアミノ酸配列であるか、又は天然に存在するタンパク質と比較して変異を含むアミノ酸配列であり得る。あるいは若しくは追加として、親GPCRを定めるアミノ酸配列は、天然に存在するGPCRと比較して、例えば、溶解性又はタンパク分解安定性を(例えば、トランケーション、ループの削除、糖鎖付加部位の変異又はシステイン等の反応性アミノ酸側鎖の変異により)改善するために修飾され得る。いずれにせよ、親GPCRを定めるアミノ酸配列は、リガンドに結合することができるGPCRを定めるものであることが理解されるであろう。リガンドは、天然に存在するGPCR又はその変異体、又は天然に存在するGPCRの誘導体又はその変異体に結合し得る。「誘導体」とは、天然に存在するGPCRと比較して、例えば、任意の化学基が一以上のアミノ酸側鎖に付加することにより、又は任意の化学基がアミノ酸配列中に挿入されることにより化学的に修飾され、しかしその誘導体はリガンドに結合する能力を保持するGPCRを意味することを含む。
好都合なことに、親GPCRを定めるアミノ酸配列は、適切な配位子を添加して、一般的にGタンパク質の活性化によって影響を受けることが知られている下流の活動のいずれか一つ又は複数に、又は例えばアレスチンを含むようなGタンパク質とは無関係な他の経路に影響を与えることが可能なGPCRを定めるものである。例えば、親GPCRは、Gタンパク質(例えば、スムーズンド(Smoothened)、又はGタンパク質シグナル伝達能力を失ったが他の経路にシグナル伝達を保持する変異体GPCR)とは独立にシグナルを伝達できる7−TMRであり、そのアミノ酸配列は、適切なリガンドを添加して、Gタンパク質とは独立したシグナル伝達経路を活性化する親GPCRを定めるものであり得る。
「2.46アミノ酸残基」とは、バレステロス番号付け方式によって定められる位置2.46のアミノ酸残基を意味する(Ballesteros JA,Weinstein H. Integrated methods for the construction of three dimensional models及びcomputational probing of structure−function relations in G−protein coupled receptors,Methods Neurosci 1995;25:366−428)。これは、すべてのロドプシン様GPCR(クラス1GPCR)に適用される一般的な番号付け方式である。各々の残基が膜貫通ヘリックス(TM)番号(1〜7)により識別され、各々のTM内の最も保存された残基は番号「50」が割り当てられ、全ての他の残基の位置は、各TMセグメントで最も保存されたアミノ酸に相対的に番号付けされる。従って、アミノ酸残基2.46はTM2で最も保存された残基の4残基前のTM2の残基に対応する。各TMにおいてリファレンス残基(すなわち番号50)が割り当てられ、それらは以下のロドプシンの残基に対応する:TM1 N55、TM2 D83、TM3 R135、TM4 W161、TM5 P215、TM6 P267及びTM7 P303。バレステロス番号付け方式の目的は、ロドプシンのアラインメントを参考のために用いて異なるGPCR間の相同残基の同定を容易にするためである。
従って、親GPCRがクラス1GPCRである場合、iはTM2で最も保存された残基(すなわち番号50)である残基の位置を決めて前に4残基を数えることによって同定することができる2.46アミノ酸残基の位置である。2.46残基がすべてのロドプシン様GPCRの中に非常に良く保存されていることは注目に値する。一般的に2.46残基は、保存されたアスパラギン酸残基の一ヘリックスターン下の保存されたロイシン残基であり、そのヘリックスのほぼ中央に位置するTM7内の保存された配列のドメイン(NPxxY;配列番号1)と相互作用することが提唱されている。図1aは、クラス1GPCRのアラインメントを与え、各GPCRにおける2.46アミノ酸残基の位置を示している。
親GPCRがクラス2または3のGPCRである場合、iは2.46のアミノ酸残基に等価なアミノ酸残基の位置である。「2.46アミノ酸残基に等価なアミノ酸残基」とは、クラス1GPCRの2.46のアミノ酸残基に対応するクラス2又は3のGPCRのアミノ酸残基を意味する。例えば、MacVector及びCLUSTALWを使用してGPCRが比較され場合に、クラス2又は3のGPCRの等価なアミノ酸残基がクラス1GPCRの2.46のアミノ酸残基に対してアラインする残基とはなり得ないことが理解される(Thompson等(1994)Nucl. Acids Res.22,4673−4680)。むしろ、残基2.46がTM2に存在し、クラス1GPCRのTM7内の保存されたドメインと相互作用するのと同じように、そのアミノ酸残基がTM2に存在し、クラス2または3のGPCRのTM7内の保存されたドメインと相互作用するという意味で同等である。GPCRの膜貫通ヘリックスは、当技術分野で良く知られた疎水性分析を用いて定めることができる。
図1bおよび14は、クラス2GPCRアミノ酸配列のアラインメントを提供し、各GPCRに対して2.46アミノ酸残基に等価なアミノ酸残基の位置を示す。図に示すように、クラス2GPCRの2.46残基は、典型的には、高度に保存されたアルギニン残基に隣接する、TM2にある高度に保存されたロイシン残基である。例えば、副甲状腺ホルモン受容体の2.46アミノ酸残基(PTHR1は)のArg233に隣接するロイシン232である。更に、実施例3にて議論された通り、ヒトCRFのLeu164はクラス1GPCRの2.46アミノ酸残基に相当するものである。例えば、MacVector及びCLUSTALW(Thompson等(1994)Nucl.Acids Res.22,4673−4680)を使用してGPCRを比較した場合、任意の他のクラス2GPCRにおける等価なアミノ酸残基は、図1bまたは14(例えばCRF)にリストされたクラス2GPCRの一つにおける「等価なアミノ酸残基」にアラインするアミノ酸残基の位置を決めることにより同定することができると理解される。
図1cは、クラス3GPCRアミノ酸配列のアラインメントを与え、各GPCRに対して2.46のアミノ酸残基に相当するアミノ酸残基の位置を示す。図に示すように、クラス3GPCRの2.46残基は典型的にはTM2の高度に保存されたロイシン残基である。例えば、代謝型グルタミン酸受容体1(mGluR1)の2.46アミノ酸残基はLeu635である。例えばMacVectorとClustalW(Thompson等(1994)Nucl.Acids Res.22,4673−4680)を用いてGPCRを比較した場合、任意の他のクラス3GPCRにおける等価なアミノ酸残基は、図1cにリストされたクラス3GPCRの一つにおける「等価なアミノ酸残基」にアラインするアミノ酸残基の位置を決めることにより同定することができると理解される。
一般的に、2.46アミノ酸残基又は等価な残基はロイシンであるが、それがイソロイシン、メチオニン、バリン、グリシン又はスレオニン等の別のアミノ酸残基であり得ることが理解される。
限定しないが、Computational Molecular Biology(A.M.Lesk,ed.,Oxford University Press 1988);Biocomputing:Informatics and Genome Projects(D.W.Smith,ed.,Academic Press 1993);Computer Analysis of Sequence Data(第1章、A.M.Griffin及びH.G.Griffin,編集、Humana Press 1994);G.von Heinje,Sequence Analysis in Molecular Biology(Academic Press 1987);Sequence Analysis Primer(M.Gribskov及びJ.Devereux,eds.,M.Stockton Press 1991);及び Carillo等,SIAMJ.Applied Math.48:1073(1988)に記載されてものを含む、任意の適切な方法が2つのポリペプチド配列をアラインするために使用され得る。ポリペプチドをアラインするための好ましい方法は、試べられる配列の間に最大の一致を与えるように設計されている。同一性及び類似性を決定する方法は、公に入手可能なコンピュータプログラムにおいて体系化されている。
ポリペプチド配列をアラインし、2つの配列間の同一性と類似性を決定するための好ましいコンピュータープログラム法は、限定されないが、GAPを含むGCGプログラムパッケージを含む(Devereux等,Nuc.Acids Res.12:387(1984);Genetics Computer Group,University of Wisconsin,Madison,WI),BLASTP,BLASTN,及びFASTA(Atschul等,J.Mol.Biol.215:403−10(1990))。BLAST Xプログラムは全米バイオテクノロジー情報センター(NCBI)及び他の情報源から公に入手可能である(Altschul等,BLAST Manual(NCB NLM NIH,Bethesda,MD);Altschul等,1990,上記を参照)。よく知られたスミス-ウォーターマンアルゴリズムも同一性を決定するために使用される場合がある。
例として、コンピュータアルゴリズムのGAP(Genetics Computer Group)を使用して、百分率による配列同一性が決定されるべき2つのポリペプチドは、それぞれのアミノ酸の最適なマッチング(アルゴリズムにより決定した「一致した範囲」)に対してアラインされる。ギャップオープニングペナルティ(3×平均対角として計算される;「平均対角」とは用いる比較マトリックスの対角の平均である;「対角」はスコア、又は特定の比較マトリックスによって各々の完全なるアミノ酸の一致に割り当てられた数である)及びギャップ伸張ペナルティ(通常0.1×ギャップオープニングペナルティである)、並びにPAM250又はBLOSUM62等の比較マトリックスが本アルゴリズムと併せて使用される。標準的な比較マトリックス(PAM250比較マトリックスに対してはDayhoff等,5 Atlas of Protein Sequence and Structure(補遺3 1978)を参照;BLOSUM 62比較マトリックスに対してはHenikoff等,Proc.Natl.Acad.Sci USA 89:10915−19(1992)を参照)もまた本アルゴリズムによって用いられる。ポリペプチド配列比較のための好ましいパラメーターは次のとおりである。アルゴリズム:Needleman及びWunsch,J.Mol.Biol.48:443−53(1970)。比較マトリックス:BLOSUM 62 Henikoff等,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:10915−19(1992)、ギャップペナルティ:12、ギャップ長ペナルティ:4、類似度の閾値:0。GAPプログラムは、上記のパラメータの使用により有用である。前述のパラメーターは、GAPアルゴリズムを用いてポリペプチド比較するための(エンドギャップに対してペナルティなしと共に)デフォルトパラメーターである。
「iプラス又はマイナス5残基のウインドウ」とは、2.46アミノ酸残基又は場合によってはそれに等価なもの、及び、2.46アミノ酸残基又はそれに等価なものの前の5残基と後ろの5残基を含む。従って、iプラス又はマイナス5残基のウインドウ内において、i−5、i−4、i−3、i−2、i−1、i、i+1、i+2、i+3、i+4及びi+5アミノ酸残基の一以上が変異され得、例えば、i−5、i−4、i−3、i−2、i−1、i、i+1、i+2、i+3、i+4及びi+5アミノ酸残基のうち、任意の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は11全てが変異され得る。
一実施態様では、一つ以上の変異が、親GPCRを定めるアミノ酸配列において、iプラス又はマイナス4残基のウインドウ内でなされ、ここでiは親GPCRにおいてアミノ酸残基2.46の位置又は場合によってはそれと等価であり、増加した安定性を持つ一以上の親GPCRの変異体を与える。「iプラス又はマイナス4残基のウインドウ」とは、2.46アミノ酸残基又は場合によってはそれに等価なもの、及び、2.46アミノ酸残基又は場合によってはそれに等価なものの前の4残基と後ろの4残基を含む。従って、iプラス又はマイナス4残基のウインドウ内において、i−4、i−3、i−2、i−1、i、i+1、i+2、i+3、及びi+4アミノ酸残基の一以上が変異され得、例えば、i−4、i−3、i−2、i−1、i、i+1、i+2、i+3、及びi+4アミノ酸残基のうち、任意の1、2、3、4、5、6、7、8又は9つ全てが変異され得る。
一実施態様では、一つ以上の変異が、親GPCRを定めるアミノ酸配列において、iプラス又はマイナス3残基のウインドウ内でなされ、ここでiは親GPCRにおいてアミノ酸残基2.46の位置又は場合によってはそれと等価であり、増加した安定性を持つ一以上の親GPCRの変異体を与える。「iプラス又はマイナス3残基のウインドウ」とは、2.46アミノ酸残基又は場合によってはそれに等価なもの、及び、2.46アミノ酸残基又は場合によってはそれに等価なものの前の3残基と後ろの3残基を含む。従って、iプラス又はマイナス3残基のウインドウ内において、i−3、i−2、i−1、i、i+1、i+2、及びi+3アミノ酸残基の一以上が変異され得、例えば、i−3、i−2、i−1、i、i+1、i+2、及びi+3アミノ酸残基のうち、任意の1、2、3、4、5、6、又は7つ全てが変異され得る。
一実施態様では、一つ以上の変異が、親GPCRを定めるアミノ酸配列において、iプラス又はマイナス2残基のウインドウ内でなされ、ここでiは親GPCRにおいてアミノ酸残基2.46の位置又は場合によってはそれと等価であり、増加した安定性を持つ一以上の親GPCRの変異体を与える。「iプラス又はマイナス2残基のウインドウ」とは、2.46アミノ酸残基又は場合によってはそれに等価なもの、及び、2.46アミノ酸残基又は場合によってはそれに等価なものの前の2残基と後ろの2残基を含む。従って、iプラス又はマイナス2残基のウインドウ内において、i−2、i−1、i、i+1、及びi+2アミノ酸残基の一以上が変異され得、例えば、i−2、i−1、i、i+1、及びi+2アミノ酸残基のうち、任意の1、2、3、4、又は5つ全てが変異され得る。
その他の実施態様では、一つ以上の変異が、親GPCRを定めるアミノ酸配列において、iプラス又はマイナス1残基のウインドウ内でなされ、ここでiは親GPCRにおいてアミノ酸残基2.46の位置又は場合によってはそれと等価であり、増加した安定性を持つ一以上の親GPCRの変異体を与える。「iプラス又はマイナス1残基のウインドウ」とは、2.46アミノ酸残基又は場合によってはそれに等価なもの、及び、2.46アミノ酸残基又は場合によってはそれに等価なものの前の1残基と後ろの1残基を含む。従って、iプラス又はマイナス1残基のウインドウ内において、i−1、i、及びi+1アミノ酸残基の一以上が変異され得、例えば、i−1、i、及びi+1アミノ酸残基のうち、任意の1、2又は3つ全てが変異され得る。
実施例2に示すように、本発明者らは、アミノ酸配列がTM2内のiプラス又はマイナス5残基のウインドウ(例えば、iプラス又はマイナス4残基のウインドウ)と相互作用する、親GPCRのTM7のアミノ酸配列中に変異を作成することは、また、増加した安定性を持つ変異体GPCRを与えるために使用可能であることを実証した。
従って、本発明の第一態様の方法は、親GPCRを定めるアミノ酸配列に一以上の変異を作成し、一以上の変異が親GPCRのTM7のアミノ酸配列中に位置し、そのアミノ酸配列は上記の通りiプラス又はマイナス5残基のウインドウと(例えば、iプラス又はマイナス4残基のウインドウと)相互作用し、増加した安定性を持つ親GPCRの一以上の変異体を与えることを含み得る。そのような変異はiプラス又はマイナス5残基基のウインドウ(例えば、iプラス又はマイナス4残基のウインドウ)において一以上の変異を行うことに加えて、若しくはその代わりに作成され得ることが理解される。
所定のGPCR内のTM7のアミノ酸配列は、上記の疎水性分析を含む当該技術分野における任意の適切な技術を用いて同定されることが可能である。
「iプラス又はマイナス5残基のウインドウと相互作用する」とは、TM7中の一以上のアミノ酸が上記のiプラス又はマイナス5残基のウインドウ内の一以上のアミノ酸と3次元空間において接近していることを意味することを含む。「iプラス又はマイナス4残基のウインドウと相互作用する」とは、TM7中の一以上のアミノ酸が上記のiプラス又はマイナス4残基のウインドウ内の一以上のアミノ酸と3次元空間において接近していることを意味することを含む。アデノシンA2A受容体のLeu48(L2.46)のCα原子とTM7のNPxxY(配列番号1)モチーフのアミノ酸残基のCα原子との距離は実施例2及び図10に与えられる。その距離は、NPxxY(配列番号1)モチーフの各残基のCα原子はL2.46のCα原子と15オングストローム以内にあることを示している。従って、好ましい実施態様では、iプラス又はマイナス5残基のウインドウ(例えば、iプラス又はマイナス4残基のウインドウ)と相互作用するアミノ酸配列は、TM7中の一以上のアミノ酸に対応し、そのCα原子はiプラス又はマイナス5残基のウインドウ(例えば、iプラス又はマイナス4残基のウインドウ)内のアミノ酸の任意のCα原子と、15オングストローム以内、例えば14、13、12、11、10、9、8、7、6又は5オングストローム以内にある。
Cα原子間距離は3次元の座標に基づいて測られたものである。例えば、距離は典型的には2つの原子のX、Y、及びZ座標による標準的な幾何学(例えば、平方根((x1−x2)+(y1−y2)+(z1−z2)))により測られる。親GPCRの構造が知られており、タンパク質がその天然状態にフォールドしている場合に距離が測られることが理解される。さもなければ、距離は親GPCRの構造モデル内で測られ得る。構造モデルは当該技術分野で知られた任意の適切な方法を使用して発生させることが可能である。例えば、構造モデルに基づくか、若しくは相同性又は新たに構造予測法を使用して計算機で発生させたモデルであり得る(Qian等 Nature(2007)450:259−64)。
クラス1GPCRにおいて、iプラス又はマイナス5残基のウインドウ(例えば、iプラス又はマイナス4残基のウインドウ)と相互作用するTM7のアミノ酸配列は、好ましくはTM7のNPxxY(配列番号1)モチーフ、プラス又はマイナス3残基である。従って、一実施態様では、本発明の第一態様の方法は、一以上の変異がTM7のNPxxY(配列番号1)アミノ酸配列内に位置する、クラス1GPCRを定めるアミノ酸配列中に一以上の変異を作成することを含み、その一以上の変異はTM7のNPxxY(配列番号1)アミノ酸配列プラス又はマイナス3残基以内に位置し、増加した安定性を持つ親GPCRの一以上の変異体を与える。更なる実施態様では、一以上の変異はTM7のNPxxY(配列番号1)モチーフ、プラス又はマイナス2残基以内に、又はTM7のNPxxY(配列番号1)モチーフ、プラス又はマイナス1残基以内に位置する。「NPxxY(配列番号1)モチーフ、プラス又はマイナスX(例えば、1、2又は3)残基」とは、NPxxY(配列番号1)モチーフ、及びNPxxY(配列番号1)モチーフの前のx(すなわち1、2、又は3)アミノ酸、及び後ろのx(すなわち1、2又は3)アミノ酸を含む。
クラス2GPCRにて、iプラス又はマイナス5残基のウインドウ(例えば、iプラス又はマイナス4残基のウインドウ)と相互作用するTM7のアミノ酸配列は、好ましくはTM7のSFQモチーフ、プラス又はマイナス3残基である。従って、一実施態様では、本発明の第一態様の方法は、クラス2の親GPCRを定めるアミノ酸配列中に一以上の変異を作成し、そこでは一以上の変異がTM7のSFQアミノ酸配列プラス又はマイナス3残基内に位置し、増加した安定性を持つ親GPCRの一以上の変異体を与える。更なる実施態様では、一以上の変異がTM7のSFQアミノ酸配列プラス又はマイナス2残基以内、又はTM7のSFQアミノ酸配列プラス又はマイナス1残基以内、又はSFQアミノ酸配列内のみに位置する。「TM7のSFQモチーフプラス又はマイナスx(すなわち、1、2又は3)残基」とは、SFQモチーフ、及びSFQモチーフの前のx(すなわち、1、2又は3)アミノ酸、及び後ろのx(すなわち、1、2又は3)アミノ酸を含む。
クラス3GPCRにて、iプラス又はマイナス5残基のウインドウ(例えば、iプラス又はマイナス4残基のウインドウ)と相互作用するTM7のアミノ酸配列は、好ましくはTM7のxPKxY(配列番号4)モチーフプラス又はマイナス3残基である。従って、一実施態様では、本発明の第一態様は、クラス3の親GPCRを定めるアミノ酸配列中の一以上の変異を作成し、そこでは一以上の変異がTM7のxPKxY(配列番号4)アミノ酸配列プラス又はマイナス3残基以内に位置し、増加した安定性を持つ親GPCRの一以上の変異体を与えることを含む。更なる実施態様では、一以上の変異がTM7のxPKxY(配列番号4)アミノ酸配列プラス又はマイナス2残基以内、又はTM7のxPKxY(配列番号4)アミノ酸配列プラス又はマイナス1残基以内、又はxPKxY(配列番号4)アミノ酸配列以内のみに位置する。「TM7のxPKxY(配列番号4)モチーフプラス又はマイナスx(すなわち、1、2又は3)残基」とは、xPKxY(配列番号4)モチーフ、及びxPKxY(配列番号4)モチーフの前のx(すなわち、1、2、又は3)アミノ酸、及び後ろのx(すなわち、1、2、又は3)アミノ酸を含む。
実施例1に示すように、驚くべきことに、GPCR内の単一アミノ酸の変化は、親タンパク質と比較してタンパク質の安定性を増加させ得る。従って、安定性が増加した変異体GPCRを作成する方法の一実施態様にて、親タンパク質の単一アミノ酸残基が変異体タンパク質において変えられる。しかしながら、更なる安定性の増加が親タンパク質の一以上のアミノ酸を変えることにより得られる可能性があることが理解される。例えば、iプラス又はマイナス5残基のウインドウ(例えば、iプラス又はマイナス4残基のウインドウ)内の一以上のアミノ酸が親GPCRにて変えられる可能性があり、及び/又はアミノ酸配列がiプラス又はマイナス5残基のウインドウ(例えば、iプラス又はマイナス4残基のウインドウ)と相互作用する、親GPCR内のTM7を定めるアミノ酸配列内の一以上のアミノ酸が変えられる可能性がある。
典型的には、安定性が増加した変異体GPCRを生産する場合、変異体GPCRは親タンパク質と比較して、1から11個の変更されたアミノ酸、好ましくは1から8又は1から6、2から6、例えば、2、3、4、5、又は6等の変えられたアミノ酸を含む。しかし、増加した安定性を付与するために必要な変異の合計数はこれより多くの可能性があることが理解され、そして最終的には、親の受容体の固有の安定性等の様々な要因に依存し、受容体により異なる。
変異は、当該技術分野にて知られた任意の適切な技術を使用して、親GPCRを定めるアミノ酸配列中に作ることができる。例えば、特定のアミノ酸残基が独立して他のアミノ酸残基と置換されるように、通常の部位特異的変異誘発を用いても良く、又はポリメラーゼ連鎖反応応に基づいた手順を使用しても良い。DNAを変異させ、宿主細胞中でポリヌクレオチドからポリペプチドを発現させるための遺伝子とcDNAのクローニング及び操作のための分子生物学的方法は、“Molecular cloning,a laboratory manual”第3版、Sambrook,J.&Russell,D.W.(編集),Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NYに例示され当該技術分野で良く知られている。
典型的には、親GPCRを定めるアミノ酸配列において一以上の変異を作成することは、一以上のアミノ酸をAlaで置換すること(任意の他のアミノ酸により置換され得るが)を含む。例えば、親GPCRにおいてもしiプラス又はマイナス5残基のウインドウ(例えば、iプラス又はマイナス4残基のウインドウ)内の特定のアミノ酸が(ここでiは親GPCR内のアミノ酸残基2.46又は場合によってはその等価である)、Alaであれば、(L2.46の場合のように、既にその残基である場合を除いて)都合良くLeuにより置換され得る。あるいは、アミノ酸は例えばGlyにより置換されても良く、タンパク質を特定の立体構造に固定することが可能なように近接ヘリックスの密接したパッキングを可能にし得る。アミノ酸がGlyである場合、例えばAlaに都合良く置換され得る。
特定の位置の所定のアミノ酸を置換することに使用されるアミノ酸は、典型的には天然に存在するアミノ酸、典型的には「コード化可能な」アミノ酸であり、非天然アミノ酸であり得る(そのような場合、タンパク質は一般的には化学合成によるか、又は非天然アミノアシルtRNAの使用により作成される)。「コード化可能な」アミノ酸はmRNAの翻訳によりポリペプチドに組込まれるものである。また、非天然アミノ酸を作成したり、例えば蛋白質の翻訳後処理又は半合成による共有結合の化学修飾によって所定の位置に非ペプチド結合を導入することも可能である。これらの翻訳後修飾は、リン酸化、グリコシル化又はパルミトイル化、又は合成若しくは生合成として自然なことであり得る。場合によっては修飾が、例えば、塩橋、ジスルフィド結合又は金属イオンのキレート化部位の導入を通じて、膜貫通ヘリックス2と膜貫通ヘリックス7との間の相互作用を安定化させることができる。
発明者らは、残基2.46、及び近傍の残基を変異させることが特定の立体構造(例えば、アゴニスト型又はアンタゴニスト型)の安定性を増加させることを示した。従って、本発明の方法は、特定の立体構造の安定性を増加させるGPCRの変異体を生産する方法であると考えられ、例えば、それらは立体構造の熱安定性を増加させる可能性がある。本発明の方法は、従って、変異導入により安定で立体構造的に固定されたGPCRを作成するために使用され得る。図1に示すように、2.46残基、又は場合によってはその等価なものは、クラス1、クラス2及びクラス3GPCRにおいて高度に保存されており、本方法は全てのGPCRに対して適用され、安定で立体構造的に固定された受容体を創ることができる。変異体GPCRは、その大部分の割合が特定の立体構造状態を占めるという点で、事実上親分子の純粋な形である。一実施態様では、親GPCRの一以上の変異体は、アゴニスト型又はアンタゴニスト型の立体構造において増加した安定性を有している。本発明の方法はまた、結晶化に対してより扱い易い変異体GPCRを生産するための方法として考慮され得ると理解される。
好都合なことに、本発明の第一態様の方法が実施され、得られた一以上の変異体の安定性が評価される。GPCRの安定性を評価する方法は当該技術分野で知られており、例えば国際公開第2008/114020号、及び国際公開第2009/071914号に記載されている。好ましくは、特定の立体構造をとる得られた一以上の変異体が、リガンド(リガンドは親GPCRが特定の立体構造にある場合に親GPCRに結合するものである)に結合することに関して、そのリガンドに結合することに関して同一の立体構造をとる親GPCRの安定性と比較して、安定性を増加させるかどうかが決定される。一以上の変異体の安定性の比較は同一条件下において親分子を参照することで成されると理解される。
増加した安定性に関して一つのGPCRにおいて調べられ得る多数の変異体が潜在的に存在するため、安定性を付与するにおいて重要であると知られている特定の変異体に標的を絞ると都合が良い。従って、本発明の第一態様の方法は、増加した安定性を持つ変異体GPCRを選択する方法としても用いられ得る。特に、本発明の第一態様の方法を実施することは、特定のアミノ酸残基に対する変異(安定化させる変異はこのウインドウの外に位置するかも知れないことは理解されるものの、例えば、iプラス又はマイナス5残基のウインドウ内、又はiプラス又はマイナス4残基のウインドウ内(ここでiは親GPCRのアミノ酸残基2.46の位置であるか、又は場合によってはその等価なものである))を標的にすることに用いることが可能である。得られた一以上の変異体は次いで安定性の増加について試験され、増加した安定性を有するものが選択され得る。
本発明の第一態様の方法は繰り返されることができ、例えば、得られた一以上の変異体の安定性が評価されると、第一ラウンドで生みだされた一以上の変異体が、続くラウンドにおいて親GPCRになることが理解される。従って、本方法は反復方法にて用いられることが可能であり、例えば、増加した安定性を持つ単一変異を同定する方法を実施し、それらの変異を単一の変異体GPCRに組合わせ、次いで続くラウンドにて変異される親GPCRとなる。
例えば、本発明の第一態様の一実施態様にて、親GPCRを定めるアミノ酸配列に、徐々に増大するウインドウサイズ内で、一以上の変異が作成され得る。典型的には最初に小さなウインドウサイズが用いられ、その配列のサブセットから安定化させる変異が同定され、続いて望まれる数の変異が見つけられるまでウインドウサイズを増大させながら更に残基を走査する。従って第一ラウンドにて、一以上の変異が、親GPCRを定めるアミノ酸配列中、iプラス又はマイナス1残基のウインドウ内において(ここでiはアミノ酸残基2.46の位置であり、又は場合によっては親GPCRの等価なものである)、作成される可能性がある。得られた変異体の安定性は評価され、親GPCRと比較して増加した安定性を有するそれらの変異体が選択され得る。本方法は次いで、(第一ラウンドにて選択された変異体に対応する)親GPCRを定めるアミノ酸配列中に、一つのウインドウ又はiプラス又はマイナス2残基のウインドウ内等において、一以上の変異を作成することで反復され得る。
変異体GPCRは、任意の変性剤、若しくは熱、界面活性剤、カオトロピック剤又は極端なpHの一つか複数等の変性条件に対して安定性を増加させたものであり得る。
熱に対して増加した安定性(すなわち熱安定性)に関して、これは特定の温度で蛍光、CD又は光散乱等の分光学的方法を用いてリガンド結合を側定することで容易に決定することが可能である。典型的には、GPCRがリガンドに結合する場合、特定の温度でGPCRがそのリガンドへ結合する能力を、その変異体の熱安定性を決定することに用いることが可能である。「疑似Tm」すなわち50%の受容体が、所定の時間(例えば30分間)インキュベート後にある条件下で不活性化される温度を決定するのが便利である。高い熱安定性の変異体GPCRはその親に比較して増加した疑似Tmを有する。あるいは、熱安定性は所定の温度における安定性を時間の関数として測定することで評価することができる。例えば、所定の温度においてリガンド結合の水準が時間ゼロ時点でのリガンド結合の水準の50%に下がる時間が決定され得る(Shibata等、2009 J Mol Biol)。しかしながら何れにせよ、温度は変性剤であることが理解される。
変性剤又はカオトロープに対して増加した安定性に関して、典型的にはGPCRが定められた時間、試験界面活性剤又は試験カオトロピック剤の存在下でインキュベートされ、その安定性は、例えば、リガンド結合若しくは上記で議論された分光学的方法を用いて決定される。
極端なpHに関して、典型的な試験pHが選択され、例えば4.5から5.5の範囲(低pH)又は8.5から9.5の範囲(高pH)にて選択される。
比較的過酷な(harsh)界面活性剤が結晶化方法で使用されるため、変異体GPCRはそのような界面活性剤の存在において安定であることが好ましい。所定の界面活性剤の「過酷さ」の順番は、DDM、C11→C10→C→Cマルトシド又はグルコシド、ラウリルジメチルアミン酸化物(LDAO)及びSDSである。とりわけ好まれるのは、変異体GPCRがCマルトシド又はグルコシド、Cマルトシド又はグルコシド、LDAO及びSDSの何れかに対してより安定である場合であり、これらの界面活性剤が安定性試験に用いられる。
その決定の容易さのため、変異体GPCRは親タンパク質に比較して増加した熱安定性を有することが好ましい。熱は変性剤として作用することが理解され、これは試料を例えば氷上に置き冷却することで容易に取り除くことが可能である。熱安定性はまた他の変性剤又は変性条件に対する安定性に対する指標となり得る。従って、増加した熱安定性は変性界面活性剤、特にDDMより強く変性させる、例えば小さな頭部基と短いアルキル鎖、及び/又は荷電頭部基を持った界面活性剤等における安定性と言い換えられる可能性がある。我々は熱に安定なGPCRはまた過酷な界面活性剤に対してより安定であることを見いだした。
極端なpHが変性条件として用いられる場合、中和剤を添加することで迅速に取り除かれることが可能であると理解されるであろう。同様に、カオトロープが変性剤として用いられる場合、その変性効果はカオトロープがそのカオトロープ効果を発揮する濃度未満に試料を希釈することで取り除くことが可能である。
更なる本発明の第一態様の実施態様では、変異体GPCRがGタンパク質又はGPCRと相互作用すると知られたその他のタンパク質、例えばアレスチン又はGPCRキナーゼ等のシグナル伝達タンパク質と共役することが可能かどうか決定される。好ましくは、変異体GPCRが同じクラス(例えばアゴニスト又はアンタゴニスト)の複数のリガンドと親GPCRとしての親和性に匹敵する広がり及び/又は序列を持って、結合することが可能かどうかも決定される。
好ましくは、親GPCRはクラス1(すなわちロドプシン様GPCR)であり、アデノシン受容体、セロトニン受容体、β-アドレナリン受容体、ニューロテンシン受容体又はムスカリン受容体を含む図1aにリストされたものの何れかである。より好ましくは、親GPCRはアデノシンA2A受容体又はM4ムスカリン受容体又は5HT2C受容体又はNTSニューロテンシン受容体又はオレキシン受容体である。しかしながら、親GPCRは図1b、1c及び14、及び実施例3(例えばCRF)にリストされたクラス2及び3GPCR、及び上記の通り国際薬理学連合によりリストされたものの全てを含む任意のGPCRであっても良い。
変異体アデノシン受容体
アデノシン受容体は当該技術分野にて良く知られている。それらはお互いに配列相同性を共有し、アデノシンと結合する。
特に好ましい実施態様では、親GPCRに対して増加した安定性を持つ変異体GPCR
は、対応する親受容体と比較した場合、図2に示したヒトアデノシンA2A受容体の番号付けによるLeu48及びAsn284の一以上に対応する位置において異なるアミノ酸を有する変異体アデノシン受容体である。
変異体アデノシン受容体は、図2に示したヒトアデノシンA2A受容体の番号付けによるLeu48及びAsn284の一以上に対応する位置において変異を受けているという条件で任意のアデノシン受容体の変異体であり得る。
変異体GPCRは、MacVector及びCLUSTALW(Thompson等、(1994)Nucl.Acids Res.22,4673−4680)を使用して決定した通り、図2に配列が示された所定のヒトアデノシンA2A受容体と比較した場合、少なくとも20%のアミノ酸配列同一性を有するものであれば特に好ましい。より好ましくは、変異体GPCRは少なくとも30%又は少なくとも40%又は少なくとも50%、又は少なくとも60%のアミノ酸配列同一性を有する。一般的にアデノシン結合部位に高次の配列保存性がある。
下記実施例1に記載の通り、Leu48の単一置換は、アゴニストの5’-N-エチルカルボキサミドアデノシン(NECA)で測定した場合、熱安定性の増加をもたらす。同様に、実施例2に記載の通り、Asn284の単一置換は、アゴニストのNECAで測定した場合、熱安定性の増加をもたらす。
従って、変異体GPCRは親と比較した場合にLeu48及びAsn284の一以上がその他のアミノ酸残基により置換された、変異体ヒトアデノシンA2A受容体であり得る。変異体GPCRはまた、親受容体の一以上の対応するアミノ酸がその他のアミノ酸残基によって置換された、その他の種由来の変異体アデノシン受容体であり得る。誤解を避けるために、親は天然に存在する配列を有するアデノシン受容体であり得、又はそれは切断された型であり得、又はそれは天然に存在するタンパク質か又その断片に対する融合物であり得、又はそれはリガンド結合能を保持することを条件として、天然に存在する配列と比較して変異を含み得る。
「対応するアミノ酸残基」とは、ヒトアデノシンA2A受容体と他のアデノシン受容体をMacVectorとCLUSTALWを使用して比較した場合、ヒトアデノシンA2A受容体の所定のアミノ酸残基に対しアラインするその他のアデノシン受容体のアミノ酸残基を意味することを含む。
他のヒトアデノシン受容体はアデノシンA2b、A3及びA1受容体を含む。アデノシンA2b、A3及びA1受容体の各々におけるヒトアデノシンA2A受容体のLeu48に対応するアミノ酸残基はそれぞれLeu49、Leu54及びLeu51である。従って、変異体GPCRはLeu49がその他のアミノ酸により置換された変異体アデノシンA2b受容体であり得、又はそれはLeu54がその他のアミノ酸により置換された変異体アデノシンA3受容体であり得、又はそれはLeu51がその他のアミノ酸により置換された変異体アデノシンA1受容体であり得る。
変異体セロトニン受容体
セロトニン受容体は当該技術分野にて良く知られている。それらはお互いに配列相同性を共有し、セロトニンに結合する。
特に好ましい実施態様では、親GPCRと比較して増加した安定性を持つ変異体GPCRは、変異体セロトニン受容体であり、対応する親受容体と比較した場合、図3に示されたヒト5HT2C受容体の番号付けによるMet93、Ser94、Leu95、Ile363及びLeu366のうち一以上に対応する位置にて異なるアミノ酸を有する。
変異体セロトニン受容体は、図3に示されたヒト5HT2C受容体の番号付けによるLeu95、Ser94及びMet93、Ser94、Leu95、Ile363及びLeu366のうち一以上に対応する位置にて変異されていることを条件として、任意のセロトニン受容体の変異体であり得る。
MacVectorとCLUSTALW(Thompson等(1994)Nucl.Acids Res.22,4673−4680)を用いて決められた通り、もし変異体GPCRが、図3に配列が示された所定のヒト5HT2C受容体と比較した場合に、少なくとも20%のアミノ酸配列同一性を有するものであるならば特に望ましい。より好ましくは、変異体GPCRは少なくとも30%又は少なくとも40%又は少なくとも50%、又は少なくとも60%のアミノ酸配列同一性を有する。一般的にセロトニン結合部位により高次の配列保存性がある。
下記実施例1に記載の通り、5HT2C受容体配列(図3に示した通り)においてLeu95及びMet93の個々の置換は、アゴニストSCH23390により測定した場合に熱安定性の増加をもたらす。
5HT2C受容体配列(図3に示した通り)においてSer94の置換は、アンタゴニストのメスレルギンにより測定した場合に熱安定性の増加をもたらす。
実施例2に記載の通り、5HT2C受容体配列のIle363及びLeu366の個々の置換はアゴニストSCH23390により測定した場合に熱安定性の増加をもたらす。
従って、変異体GPCRは、親と比較してこれらのアミノ酸残基(すなわちMet93、Ser94、Leu95、Ile363及びLeu366)の一以上がその他のアミノ酸残基により置換された変異体ヒト5HT2C受容体であり得る。変異体GPCRはまた、親受容体の一以上の対応するアミノ酸がその他のアミノ酸残基によって置換された、その他の種由来の変異体セロトニン受容体であり得る。誤解を避けるために、親は天然に存在する配列を有するセロトニン受容体であり得、又はそれは切断された型であり得、又はそれは天然に存在するタンパク質か又その断片に対する融合物であり得、又はそれはリガンド結合能を保持することを条件とし、天然に存在する配列と比較して変異を含み得る。
「対応するアミノ酸残基」とは、5HT2C受容体と他のセロトニン受容体をMacVectorとCLUSTALWを使用して比較した場合、5HT2C受容体の所定のアミノ酸残基に対しアラインするその他のセロトニン受容体のアミノ酸残基を意味することを含む。
他のヒトセロトニン受容体は、5HT1A、5HT1B、5HT1D、5HT1E、5HT1F、5HT2A、5HT2B、5HT、5HT5A、5HT及び5HT受容体を含む。
5HT2C受容体のLeu95、Ser94及びMet93に対応するアミノ酸残基は5HT1A受容体ではそれぞれLeu78、Ser77、及びGly76であり、それゆえ変異体GPCRは、Leu78、Ser77及びGly76のうち一以上がその他のアミノ酸で置換された変異体5HT1A受容体であり得る。
5HT2C受容体のLeu95、Ser94及びMet93に対応するアミノ酸残基は5HT1B受容体ではそれぞれLeu91、Ser90、及びAla89であり、それゆえ変異体GPCRは、Leu91、Ser90及びAla89のうち一以上がその他のアミノ酸で置換された変異体5HT1B受容体であり得る。
5HT2C受容体のLeu95、Ser94及びMet93に対応するアミノ酸残基は5HT1A受容体ではそれぞれLeu116、Ser115及びMet114であり、それゆえ変異体GPCRは、Leu116、Ser115及びMet114のうち一以上がその他のアミノ酸で置換された変異体5HT1A受容体であり得る。
5HT2C受容体のLeu95、Ser94及びMet93に対応するアミノ酸残基は5HT受容体ではそれぞれLeu68、Ser67及びVal66であり、それゆえ変異体GPCRは、Leu68、Ser67及びVal66のうち一以上がその他のアミノ酸で置換された変異体5HT受容体であり得る。
5HT2C受容体のLeu95、Ser94及びMet93に対応するアミノ酸残基は5HT受容体ではそれぞれLeu123、Ser122及びVal121であり、それゆえ変異体GPCRは、Leu123、Ser122及びVal121のうち一以上がその他のアミノ酸で置換された変異体5HT受容体であり得る。
変異体ムスカリン受容体
ムスカリン受容体は当該技術分野にて良く知られている。それらはお互いに配列相同性を共有しムスカリンに結合する。
特に好ましい実施態様では、親GPCRと比較して増加した安定性を持つ変異体GPCRは、変異体ムスカリン受容体であり、対応する親受容体と比較した場合、図4に示されたヒトM4ムスカリン受容体の番号付けによるLeu71に対応する位置にて異なるアミノ酸を有する。
変異体ムスカリン受容体は、図4に示されたヒトM4受容体の番号付けによるLeu71に対応する位置にて変異されていることを条件とし、任意のセロトニン受容体の変異体であり得る。
変異体GPCRは、MacVector及びCLUSTALW(Thompson等、(1994)Nucl.Acids Res.22,4673−4680)を使用して決定した通り、図4に配列が示された所定のヒトM4ムスカリン受容体と比較した場合、少なくとも20%のアミノ酸配列同一性を有するものであることが特に好ましい。より好ましくは、変異体GPCRは少なくとも30%又は少なくとも40%又は少なくとも50%、又は少なくとも60%のアミノ酸配列同一性を有する。一般的にムスカリン結合部位に高次の配列保存性がある。
下記実施例1に記載の通り、M4ムスカリン受容体配列(図4に示した通り)のLeu71の単一置換は、アゴニストのNMSで測定した場合、熱安定性の増加をもたらす。
従って、変異体GPCRは親と比較した場合にLeu71がその他のアミノ酸残基により置換されたヒト変異体M4ムスカリン受容体であり得る。変異体GPCRはまた、親受容体の一以上の対応するアミノ酸がその他のアミノ酸残基によって置換された、その他の種由来の変異体ムスカリン受容体であり得る。誤解を避けるために、親は天然に存在する配列を有するムスカリン受容体であり得、又はそれは切断された型であり得、又はそれは天然に存在するタンパク質か又その断片に対する融合物であり得、又はそれはリガンド結合能を保持することを条件とし、天然に存在する配列と比較して変異を含み得る。
「対応するアミノ酸残基」とは、M4ムスカリン受容体と他のムスカリン受容体をMacVectorとCLUSTALWを使用して比較した場合、M4ムスカリン受容体の所定のアミノ酸残基に対しアラインするその他のムスカリン受容体のアミノ酸残基を意味することを含む。
他のヒトムスカリン受容体はM1、M2、M3、及びM5ムスカリン受容体を含む。M1、M2、M3、及びM5ムスカリン受容体の各々におけるヒトM4ムスカリン受容体のLeu71に対応するアミノ酸残基はそれぞれLeu64、Leu62、Leu107及びLeu69である。従って変異体GPCRはLeu64がその他のアミノ酸により置換された変異体M1ムスカリン受容体であり得、又はそれはLeu62がその他のアミノ酸により置換された変異体M2ムスカリン受容体であり得、又はそれはLeu107がその他のアミノ酸により置換された変異体M3ムスカリン受容体であり得、又はそれはLeu69がその他のアミノ酸により置換された変異体M5ムスカリン受容体であり得る。
変異体ニューロテンシン受容体
ニューロテンシン受容体は当該技術分野にて良く知られている。それらはお互いに配列相同性を共有しムスカリンに結合する。
特に好ましい実施態様では、親GPCRと比較して増加した安定性を持つ変異体GPCRは変異体ニューロテンシン受容体であり、対応する親受容体と比較した場合、図11に示されたラットニューロテンシン受容体の番号付けによるTyr369に対応する位置にて異なるアミノ酸を有する。
変異体ニューロテンシン受容体は、図11に示されたラットニューロテンシン受容体の番号付けによるTyr369に対応する位置にて変異されていることを条件とし、任意のニューロテンシン受容体の変異体であり得る。
変異体GPCRは、MacVector及びCLUSTALW(Thompson等、(1994)Nucl.Acids Res.22,4673−4680)を使用して決定した通り、図11に配列が示された所定のラットニューロテンシン受容体と比較した場合、少なくとも20%のアミノ酸配列同一性を有するものであることが特に好ましい。より好ましくは、変異体GPCRは少なくとも30%又は少なくとも40%又は少なくとも50%、又は少なくとも60%のアミノ酸配列同一性を有する。一般的にニューロテンシン結合部位に高次の配列保存性がある。
下記実施例2に記載の通り、ラットニューロテンシン受容体配列(図11に示した通り)のTyr369の単一置換は、アゴニストのニューロテンシンで測定した場合、熱安定性の増加をもたらす。
従って、変異体GPCRは、親と比較した場合にTyr369がその他のアミノ酸残基により置換された、ラットニューロテンシン受容体であり得る。変異体GPCRはまた、親受容体の一以上の対応するアミノ酸がその他のアミノ酸残基によって置換された、その他の種由来の変異体ニューロテンシン受容体であり得る。誤解を避けるために、親は天然に存在する配列を有するニューロテンシン受容体であり得、又はそれは切断された型であり得、又はそれは天然に存在するタンパク質か又その断片に対する融合物であり得、又はそれはリガンド結合能を保持することを条件とし、天然に存在する配列と比較して変異を含み得る。
「対応するアミノ酸残基」とは、ラットニューロテンシン受容体と他のニューロテンシン受容体をMacVectorとCLUSTALWを用いて比較した場合、ラットニューロテンシン受容体の所定のアミノ酸残基に対しアラインするその他のニューロテンシン受容体のアミノ酸残基を意味することを含む。
変異体コルチコトロピン放出ホルモン受容体
コルチコトロピン放出ホルモン受容体は当該技術分野にて良く知られている。それらはお互いに配列相同性を共有しコルチコトロピン放出ホルモンに結合する。
特に好ましい実施態様では、親GPCRと比較して増加した安定性を持つ変異体GPCRは、変異体コルチコトロピン放出ホルモン受容体であり、対応する親受容体と比較した場合、図12に示されたヒトコルチコトロピン放出ホルモン受容体1(CRF)の番号付けによるIle163に対応する位置にて異なるアミノ酸を有する。
変異体コルチコトロピン放出ホルモン受容体は、図12に示されたヒトCRFの番号付けによるIle163に対応する位置にて変異されていることを条件とし、任意のコルチコトロピン放出ホルモン受容体の変異体であり得る。
変異体GPCRは、MacVector及びCLUSTALW(Thompson等、(1994)Nucl.Acids Res.22,4673−4680)を用いて決定した通り、図12に配列が示された所定のヒトCRF受容体と比較した場合、少なくとも20%のアミノ酸配列同一性を有するものであることが特に好ましい。より好ましくは、変異体GPCRは少なくとも30%又は少なくとも40%又は少なくとも50%、又は少なくとも60%のアミノ酸配列同一性を有する。一般に、コルチコトロピン放出ホルモン結合部位に高次の配列保存性がある。
下記実施例3に記載の通り、ヒトCRF配列(図12に示した通り)のIle163の単一置換は、アゴニストのCP−376395で測定した場合、熱安定性の増加をもたらす。
従って、変異体GPCRは親と比較した場合にIle163がその他のアミノ酸残基により置換された、変異体CRFであり得る。変異体GPCRはまた、親受容体の一以上の対応するアミノ酸がその他のアミノ酸残基によって置換された、その他の種由来の変異体CRF受容体であり得る。誤解を避けるために、親は天然に存在する配列を有するコルチコトロピン放出ホルモン受容体であり得、又はそれは切断された型であり得、又はそれは天然に存在するタンパク質か又その断片に対する融合物であり得、又はそれはリガンド結合能を保持することを条件とし、天然に存在する配列と比較して変異を含み得る。
「対応するアミノ酸残基」とは、ヒトCRF受容体と他のコルチコトロピン放出ホルモン受容体をMacVectorとCLUSTALWを用いて比較した場合、ヒトCRF受容体の所定のアミノ酸残基に対しアラインするその他のコルチコトロピン放出ホルモン受容体のアミノ酸残基を意味することを含む。
変異体オレキシン受容体
オレキシン受容体は当該技術分野にて良く知られている。それらはお互いに配列相同性を共有しオレキシンに結合する。
特に好ましい実施態様では、親GPCRと比較して増加した安定性を持つ変異体GPCRは変異体オレキシン受容体であり、対応する親受容体と比較した場合、図13に示されたヒトオレキシン2受容体(OX)の番号付けによるTyr91に対応する位置にて異なるアミノ酸を有する。
変異体オレキシン受容体は、図13に示されたヒトOXの番号付けによるTyr91に対応する位置にて変異されていることを条件とし、任意のオレキシン受容体の変異体であり得る。
変異体GPCRは、MacVector及びCLUSTALW(Thompson等、(1994)Nucl.Acids Res.22,4673−4680)を使用して決定した通り、図13に配列が示された所定のヒトOXと比較した場合、少なくとも20%のアミノ酸配列同一性を有するものであることが特に好ましい。より好ましくは、変異体GPCRは少なくとも30%又は少なくとも40%又は少なくとも50%、又は少なくとも60%のアミノ酸配列同一性を有する。一般的にオレキシン結合部位に高次の配列保存性がある。
下記実施例4に記載の通り、ヒトOX配列(図13に示した通り)のTyr91の単一置換は、アゴニストのEMPAで測定した場合、熱安定性の増加をもたらす。
従って、変異体GPCRは、親と比較した場合にTyr91がその他のアミノ酸残基により置換されたヒトOX受容体であり得る。変異体GPCRはまた、親受容体の一以上の対応するアミノ酸がその他のアミノ酸残基によって置換された、その他の種由来の変異体オレキシン受容体であり得る。誤解を避けるために、親は天然に存在する配列を有するオレキシン受容体であり得、又はそれは切断された型であり得、又はそれは天然に存在するタンパク質か又その断片に対する融合物であり得、又はそれはリガンド結合能を保持することを条件とし、天然に存在する配列と比較して変異を含み得る。
「対応するアミノ酸残基」とは、ヒトOXと他のオレキシン受容体をMacVectorとCLUSTALWを用いて比較した場合、ヒトOXの所定のアミノ酸残基に対しアラインするその他のオレキシン受容体のアミノ酸残基を意味することを含む。
本発明の第二態様は本発明の第一態様の方法により作成された親GPCRと比較して増加した安定性を持つ変異体GPCRを提供する。
本発明者らは親のGPCRを定めるアミノ酸配列にiプラス又はマイナス5残基のウインドウ(例えば、iプラス又はマイナス4残基のウインドウ)内で変異を作成することは(ここでiは親GPCRの残基2.46の位置である)、増加した安定性を有する親GPCRの一以上の変異体を与えることができることを実証した。更に、本発明者らはアミノ酸配列がiプラス又はマイナス5残基のウインドウ(例えばiプラス又はマイナス4残基のウインドウ)と相互作用する、親GPCR内の膜貫通へリックス7のアミノ酸配列内において変異を作成することは、増加した安定性を有する親GPCRの一以上の変異体を与えることができることを実証した。従って、本発明の第二態様の変異体GPCRは不安定化条件下においてその親と比較して長寿命であろうことが理解される。
従って、本発明の第三態様は、親GPCRと比較した場合、親GPCRを定めるアミノ酸配列中に一以上の変異を有する変異体GPCRを与え、(i)一以上の変異がiプラス又はマイナス5残基以内に位置し(親GPCRがクラス1GPCRである場合、iは親GPCRの残基2.46の位置であり、又は親GPCRがクラス2又は3GPCRである場合iは親GPCRの等価なアミノ酸の位置である)、及び/又は(ii)一以上の変異が、親GPCRの膜貫通ヘリックス7のアミノ酸配列中に位置し、そのアミノ酸配列はiプラス又はマイナス5残基のウインドウと相互作用し、その変異体GPCRが不安定化条件に曝された場合、親GPCRと比較して増加した安定性を有する。
従って、本発明は、親GPCRと比較した場合に、親GPCRを定めるアミノ酸配列中に一以上の変異を有する変異体GPCRを与え、(i)一以上の変異がiプラス又はマイナス4残基以内に位置し(親GPCRがクラス1GPCRである場合、iは親GPCRの残基2.46の位置であり、又は親GPCRがクラス2又は3GPCRである場合iは親GPCRの等価なアミノ酸の位置である)、及び/又は(ii)一以上の変異が、親GPCRの膜貫通ヘリックス7のアミノ酸配列中に位置し、そのアミノ酸配列はiプラス又はマイナス4残基のウインドウと相互作用し、その変異体GPCRが不安定化条件に曝された場合、親GPCRと比較して増加した安定性を有する。
また、変異体GPCRを含む組成物の生産を可能にし、変異体GPCRが不安定化条件に曝されることを特徴とすると理解される。そのような組成物は、例えば、結晶化、薬物スクリーニング、生検及びバイオセンサーへの適用において様々な用途を有している。
従って、本発明の第四態様は、親GPCRと比較した場合、親GPCRを定めるアミノ酸配列中に一以上の変異を有する変異体GPCRを含む組成物を与え、(i)一以上の変異がiプラス又はマイナス5残基以内に位置し(親GPCRがクラス1GPCRである場合、iは親GPCRの残基2.46の位置であり、又は親GPCRがクラス2又は3GPCRである場合iは親GPCRの等価なアミノ酸の位置である)、及び/又は(ii)一以上の変異が親GPCRの膜貫通ヘリックス7のアミノ酸配列中に位置し、そのアミノ酸配列はiプラス又はマイナス5残基のウインドウと相互作用し、変異体GPCRが変異体GPCRよりも親GPCRを非常に不安定にするのに有効な不安定化条件に曝されることを特徴とする。
従って、本発明は、親GPCRと比較した場合、親GPCRを定めるアミノ酸配列中に一以上の変異を有する変異体GPCRを含む組成物を与え、(i)一以上の変異がiプラス又はマイナス4残基以内に位置し(親GPCRがクラス1GPCRである場合、iは親GPCRの残基2.46の位置であり、又は親GPCRがクラス2又は3GPCRである場合iは親GPCRの等価なアミノ酸の位置である)、及び/又は(ii)一以上の変異が親GPCRの膜貫通ヘリックス7のアミノ酸配列中に位置し、そのアミノ酸配列はiプラス又はマイナス4残基のウインドウと相互作用し、変異体GPCRが変異体GPCRよりも親GPCRを非常に不安定にするのに有効な不安定化条件に曝されることを特徴とする。
「不安定化条件」とは、膜内でフォールドした天然型状態からアンフォールドした状態にGPCRタンパク質の集団の平衡をシフトさせることのできる任意の条件を含む。このようにして、アンドールド状態で存在するGPCRタンパク質の割合が増加し、膜内でフォールドした天然型状態の割合が減少する。
「集団」とは、異なるGPCRの混合物とは対照的に、複数の同一の特定型のGPCRを含む。例えば、集団は少なくとも2、5、10、50、100、200、500、1000、5000、10000、100000、10、10、10、10、1010、1011、1012、1013又は1014のGPCR分子を含み得る。好ましくは、集団はGPCRが10及び1012のGPCR分子を含み得る。
膜内でフォールドした天然型状態にて、GPCRは生物学的活性、例えば結合活性又はシグナル伝達経路調節活性を示す。上記の通り不安定化条件に対する曝露が増加すると、更にアンフォールドした状態に向かって平衡がシフトし、アンフォールドした状態で存在するGPCRの占める割合が次第に高くなる。フォールド状態からアンフォールド状態への構造の変化はGPCR集団の構造において検出可能な変化をもたらす。また、この構造変化はGPCR集団の生物学的活性に検出可能な減少をもたらす。
それゆえ、一実施態様にて、不安定化条件は不安定化条件が存在しないときのGPCR集団の構造と比較して、GPCR集団の構造に有意な揺らぎ(perturbation)をもたらすのに有効なものである。
「GPCR集団の構造における有意な揺らぎ」とは、揺らぎを検出するために用いた測定の統計的変動に関して評価した場合、10回の測定に1回未満、より好ましくは20回の測定に1回未満、及び更により好ましくは50回の測定に1回又は100回の測定に1回、偶然起きるであろう揺らぎを意味する。
タンパク質の構造を精査する様々な方法が当該技術分野で知られており任意の適切な方法が用いられ得る。例えば、構造揺らぎは例えば共有結合した蛍光標識又はesrによるスピン標識等により直接的に立体構造を精査することによるか、若しくはタンパク質集団において天然型又は計画的に導入されたアミノ酸側鎖の接触性を測定することにより分析され得る(Hubbell,W.L.等,Adv.Protein.Chem 63,243−290(2003);Baneres,J.L.et.al.,J.Biol.Chem.280,20253−20260(2005);Kobilka,B.K.及びDeupi,X.Trends.Pharmacol.Sci.28,397−406(2007))。例えば、蛍光スペクトルの変化は、内在トリプトファン蛍光の使用によるか、又はタンパク質のアンフォールディングにより露出したシステイン残基と反応して蛍光性となるチオール固有の蛍光色素N−[4−(7−ジエチルアミノ−4−メチル−3−クマリニル)フェニル]マレイミド(cpm)の使用によるかにより、タンパク質のアンフォールディングの高感度指標となる可能性がある(Alexandrov等(2008)Structure 16:351−359)。タンパク質分解に関する安定性、質量分析又は核磁気共鳴スペクトルにより測定される重水素/水素交換、青色天然ゲル、キャピラリーゾーン電気泳動、円偏光二色性(CD)又は線二色性(LD)スペクトル及び光散乱はまた2次又は3次構造に関連するシグナルの消失により構造ゆらぎを測定するために用いられ得る。
その他の実施態様では、不安定化条件とは不安定化条件の非存在下における同じ活性の水準と比較して、GPCR集団の生物活性(例えば、結合活性又はシグナル伝達調節活性)に有意な減少をもたらすのに有効なものである。例えば、薬剤はGPCR集団の生物活性を、不安定化条件の非存在下において測定した場合の同じ活性レベルの90−10%、例えば70−30%又は60−40%に減少させるものであり得る。
生物活性に依存して、GPCR集団の生物活性が当該技術分野で知られた任意の適切な方法を使用して測定され得ると理解されるであろう。
「結合活性」とは、GPCRに結合することが知られた任意の結合パートナーへの結合を含む。例えば、結合パートナーは、リガンド、例えばGPCRを特定の立体構造において存在させるものであり得、又は抗体、例えば立体構造特異的抗体であり得る。結合活性は当該技術分野で知られた通例の結合実験を用いて評価可能である。都合良いことに、結合パートナーは検出可能なように標識され、例えば放射性標識又は蛍光標識される。あるいは、結合は、例えば抗体又は検出可能な成分に共有結合した高親和性結合パートナー、例えば比色分析に用いられ得る酵素(例えばアルカリフォスファターゼ又は西洋わさびペルオキシダーゼ)等、2次的検出システムを用いて、非結合の結合パートナーの量を測定することで評価可能である。パッチクランプ、蛍光相関分光法、蛍光共鳴エネルギー移動及び分析超遠心分離等の生物物理学的技術も使用され得る(New,R.C.,Liposomes:a practical approach.第1版;Oxford University Press:Oxford,1990,及びGraham,J.M.;Higgins,J.A.,Membrane Analysis.Springer−Verlag:New York,1997.に記載の通り)。
生物活性はシグナル伝達経路調節活性であり、活性は特定のシグナル伝達経路のアッセイのための任意の適したアッセイにより評価可能である。経路はGタンパク質活性化の下流であるか、又はGタンパク質活性化とは独立であり得る。Gタンパク質の活性化は放射標識されたGTP等のグアニンヌクレオチドがGタンパク質へ結合することにより直接測定可能である(Johnson等,Assay Drug Dev Technol.2008 Jun;6(3):327−37)。あるいは、受容体に対するGタンパク質又はアレスチン等のシグナル伝達タンパク質の結合は蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)(Lohse等,Adv Protein Chem.2007;74:167−88)又は生物発光共鳴エネルギー転移(BRET)(Gales等,Nat Methods 2005 Mar;2(3):177−84)等の関連のアッセイ、又は酵素相補アッセイ(Zhao等,J Biomol Screen.2008 Sep;13(8):737−47.Epub 2008)により測定され得る。これらのアッセイは、例えばPerkin Elmer又はCisBio又はDiscoverXからキットとして一般的入手される。活性は特定のシグナル伝達経路の活性を測定するレポーター遺伝子を用いて測定され得る。レポーター遺伝子とは、活性を容易にアッセイすることができるレポータータンパク質をコードする遺伝子、例えばβ−ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子、ルシフェラーゼ、又は緑蛍光タンパク質(例えばTan等,1996 EMBO J 15(17):4629−42を参照)を含む。本発明における使用に適しているであろうレポーター遺伝子の発現を検出し測定するために、当該技術分野にて複数の技術が入手可能である。これらの多くはインビトロ及びインビボにおける発現を決定するために両方のキットが入手できる。あるいは、シグナル伝達が下流のターゲットの分析によりアッセイされ得る。例えば、発現が特定のシグナル伝達経路のコントロール下にあることが知られている特定のタンパク質が定量化されるか、又は二次代謝が定量化され得る。A2Aアゴニスト刺激の結果として細胞内cAMPレベルの定量化が実施例1に説明されている。生物学試料中のタンパク質レベルは当該技術分野にて知られた任意の適した方法を使用して決定することが可能である。例えば、タンパク質濃度は、例えばELIZA、ウエスターンブロッット法、及びラジオイムノアッセイ等のイムノアッセイを含む抗体に基づく方法によるか、又はバイオセンサーの使用により調べることが可能である(Ponsioen等 EMBO Rep.2004 Dec;5(12):1176−80)。
一実施態様では、不安定化条件は、熱、界面活性剤、グアニジニウムチオシアネート等のカオトロピック剤、極端なpH、有機溶液、水溶液又は膜の無い環境のうちの何れかである。
例えば、不安定化条件は、例えば次の結晶化研究のために関心がある界面活性剤であり、例えばC8−グルコシド、C8−チオグルコシド、C9−グルコシド、C8−マルトシド、C8−チオマルトシド、C9マルトシド、C9チオマルトシド、Cymal 5、C8E5、又はラウリルジメチルアミンオキシド等の高CMCを持つ短鎖長界面活性剤を含む界面活性剤であり得る。短鎖長界面活性剤は3次元結晶格子の形成を可能にしやすく、低CMCを持つ長鎖長界面活性剤よりも、透析又は他の方法により受容体の調製液から除去することが容易である。
不安定化条件は任意の他の両親媒性分子であり得る。例えば、不安定化条件はアンフィポル(amphipols)、メリチン等の両親媒性ペプチド、アポリポタンパク質及びその誘導体等のタンパク質、トリフルオロエタノール、ジメチルホルムアミド(dimethylformide)、ジメチルスルホキシド等の有機溶媒、クロロホルム/メタノール混合物、尿素、シクロデキストリン、ポリエン系抗生物質、グアニジン塩化水素、プロカインやクロルプロマジン等の局所麻酔薬や薬剤、ブタンジオール、ヘプタントリオール等のポリオール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタンジオールおよびベンジルアルコール等の短鎖アルコールの何れかであり得る。
不安定化条件は任意の水溶液であり得ることも理解されよう。
不安定化条件は、下記に議論される通り変異体GPCRが膜の無い形態で存在するような、膜の無い環境であり得ると更に理解されるであろう。
とにかく、不安定化条件はGPCRタンパク質集団の平衡を膜の中でフォールドした天然型状態からアンフォールド状態へシフトすることが可能である条件である。
本発明の第三及び第四の態様の一実施態様にて、変異体GPCRは膜が無い。「膜の無い(membrane free)」とは、脂質二分子層又は脂質単分子層等の膜が実質的に無い変異体GPCRを意味することを含む。例えば、変異体GPCRが、天然型のフォールド状態で膜に存在する場合と異なり、膜内に存在しない形態であり得る。
親GPCRと比較して、親GPCRを定めるアミノ酸配列において、iプラス又はマイナス5残基のウインドウ(例えば、iプラス又はマイナス4残基のウインドウ)内に一以上の変異を有し、ここでiはアミノ酸残基2.46又は場合によっては親GPCRにおけるその等価であり、及び/又は親GPCRの膜貫通ヘリックス7のアミノ酸配列中に一以上の変異を有し、そのアミノ酸配列が、iプラス又はマイナス5残基のウインドウ(例えば、iプラス又はマイナス4残基のウインドウ)と相互作用する変異体GPCRの増加した安定性を考慮すると、不安定化条件は親GPCRを変異体GPCRよりもより大きく不安定にする、すなわち変異体GPCR集団の平衡を膜の中でフォールドした天然型状態からアンフォールド状態へシフトさせるよりも更に、親GPCRの集団の平衡をフォールドした天然型状態からアンフォールド状態へシフトさせるであろうことが理解される。
従って、親GPCRが、例えば不安定化条件に曝露された場合に生物活性の50%を示す場合、典型的には親タンパク質に比較して増加した安定性を持つ変異体GPCRは、不安定化条件に曝露された親タンパク質よりも、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%又は50%、より生物活性を有し、及びより好ましくは、少なくとも60%、70%、80%、90%又は100%、より活性を、及び更により好ましくは、少なくとも150%又は200%、より活性を有するであろう。
同様に、親GPCRに比較して増加した安定性を持つ変異体GPCRは、不安定化条件に曝された場合、親タンパク質の構造がフォールドした天然型状態に似ているよりも、よりフォールドした天然型状態に似ている構造を有するであろう。
このようにして、本発明は、不安定化条件に曝された場合、親GPCRに比較して増加した安定性を有する変異体GPCR、及び本発明の変異体GPCRを含む組成物を可能にし、変異体GPCRが、親GPCRを変異体GPCRよりも大きく不安定化するのに有効な、不安定化剤に曝されることを特徴とする。例えば、本発明は本発明による変異体GPCRの可溶化形態を可能にする。
変異体GPCRにおいて好ましいのは、本発明の第一態様に関して上記に定義された通りである。例えば、本発明の第三態様の変異体GPCRは、対応する親の受容体と比較した場合、図2に示したヒトアデノシンA2A受容体の番号付けによるLeu48及びAsn284の一以上に対応する位置に異なるアミノ酸を有する変異体アデノシン受容体であり得、又は本発明の第四態様の組成物は該変異体アデノシン受容体を含み得る。好ましくは、アデノシン受容体は、図2に配列が示されたヒトアデノシン受容体と少なくとも20%同一なアミノ酸配列を有する。
本発明の第三態様の変異体GPCRは、対応する親の受容体と比較した場合、図3に示した5HT2C受容体の番号付けによるMet93、Ser94、Leu95、Ile363、及びLeu366の一以上に対応する位置に異なるアミノ酸を有する変異体セロトニン受容体であり得、又は本発明の第四態様の組成物は該変異体セロトニン受容体を含み得る。好ましくは、セロトニン受容体は、図3に配列が示されたヒト5HT2C受容体と少なくとも20%同一なアミノ酸配列を有する。
本発明の第三態様の変異体GPCRは、対応する親の受容体と比較した場合、図4に示したM4ムスカリン受容体の番号付けによるLeu71に対応する位置に異なるアミノ酸を有するムスカリン受容体であり得、又は本発明の第四態様の組成物は該ムスカリン受容体を含み得る。好ましくは、変異体ムスカリン受容体は、図4に配列が示されたヒトM4ムスカリン受容体と少なくとも20%同一なアミノ酸配列を有する。
本発明の第三態様の変異体GPCRは、対応する親の受容体と比較した場合、図11に示したラットニューロテンシン受容体の番号付けによるTyr369に対応する位置に異なるアミノ酸を有するニューロテンシン受容体であり得、又は本発明の第四態様の組成物は該ニューロテンシン受容体を含み得る。好ましくは、変異体ニューロテンシン受容体は、図11に配列が示されたラットニューロテンシン受容体と少なくとも20%同一なアミノ酸配列を有する。
本発明の第三態様の変異体GPCRは、対応する親の受容体と比較した場合、図12に示したヒトCRF受容体の番号付けによるIle163に対応する位置に異なるアミノ酸を有するコルチコトロピン放出ホルモン受容体であり得、又は本発明の第四態様の組成物は該コルチコトロピン放出ホルモン受容体を含み得る。好ましくは、変異体コルチコトロピン放出ホルモン受容体は、図12に配列が示されたヒトCRF受容体と少なくとも20%同一なアミノ酸配列を有する。
本発明の第三態様の変異体GPCRは、対応する親の受容体と比較した場合、図13に示したヒトOX受容体の番号付けによるTyr91に対応する位置に異なるアミノ酸を有するオレキシン受容体であり得、又は本発明の第四態様の組成物は該オレキシン受容体を含み得る。好ましくは、変異体オレキシン受容体は、配列が図13に示されたヒトOX受容体と少なくとも20%同一なアミノ酸配列を有する。
本発明の第三及び第四の態様の実施態様では、変異体GPCRは、Madabushi等、2004 J Biol Chem 279(9):8126−8132(あらゆる免責事項を作る目的を含み、参照により本明細書に援用される)に記載された通り、位置79のロイシン残基がアラニン又はセリン残基に変化した変異体ウシロドプシン受容体では無い。
本発明の第二又は第三態様の変異体GPCR、又は本発明の第四態様の組成物中の変異体GPCRは、熱、界面活性剤、カオトロピック剤及び極端なpHの何れか一つに対して増加した安定性を有する。好ましくは変異体GPCRは、そのリガンドの存在下又は非存在下においてその親と比較して増加した安定性(例えば、熱安定性)を有する。典型的には、リガンドはオルソステリック又はアロステリックを問わず、アンタゴニスト、完全なるアゴニスト、部分的なアゴニスト又は逆アゴニストである。リガンドは抗体等のポリペプチドであり得る。
本発明の第二又は第三態様の変異体GPCR、又は本発明の第四態様の組成物中の変異体GPCRは、その親よりも少なくとも1℃又は2℃、より安定であり、好ましくはその親よりも少なくとも5℃、より安定であり、より好ましくは少なくとも8℃、より安定であり、更により好ましくは少なくとも10℃又は15℃又は20℃、より安定である。典型的には、親と変異体受容体の熱安定性は同一条件下で測定される。典型的には、熱安定性はGPCRが特定の立体構造にて存在する条件下でアッセイされる。典型的には、選択された条件はGPCRに結合するリガンドの存在である。
本発明の第二又は第三態様の変異体GPCR、又は本発明の第四態様の組成物中の変異体GPCRは、適切な界面活性剤に可溶化され精製された場合、ドデシルマルトシドで精製されたウシロドプシンと似た熱安定性を有する;しかしながら、安定性の任意の増加は結晶化研究等の適用に対して有用となるであろう。本発明の第二又は第三態様の変異体GPCR、又は本発明の第四態様の組成物中の変異体GPCRは、40℃で30分間加熱後にそのリガンド結合活性の少なくとも50%を保持することが特に好ましい。本発明の第二又は第三態様の変異体GPCR、又は本発明の第四態様の組成物中の変異体GPCRは、55℃で30分間加熱後にそのリガンド結合活性の少なくとも50%を保持することが更に好ましい。
本明細書で開示された変異体GPCR及び組成物は結晶化研究に有用で、創薬プログラムにおいて有用である。それらは、例えば、表面プラズモン又は蛍光に基づく技術による、受容体/リガンドの速度論的及び熱力学的パラメーターの生物物理学測定に使用され得る。それらはリガンド結合スクリーニングに用いられ、ハイスループットスクリーンにおける又はバイオセンサーチップとしての使用のため固体表面に結合され得る。変異体GPCR又は組成物を含むバイオセンサーチップは分子、とりわけ生物分子の検出のために用いられ得る。
本発明はまた本発明の第二又は第三態様の変異体GPCRをコードするポリヌクレオチドを含む。特に、ポリヌクレオチドは、本発明の変異体アデノシン受容体、変異体セロトニン受容体又は変異体ムスカリン受容体をコードするものが含まれる。ポリヌクレオチドはDNA又はRNAであり得る。典型的にはそれはベクター、例えば前記変異体GPCRを発現するために使用可能なベクターに含まれる。適切なベクターは、細菌又は哺乳動物又は昆虫の細胞において増殖するか、及び/又はその発現を可能とするものである。
本発明はまた変異体GPCRをコードするポリヌクレオチドを含む細菌性又は真核細胞等の宿主細胞を含む。適切な細胞は、大腸菌細胞、酵母細胞、哺乳動物細胞及び昆虫細胞を含む。
この明細書で明らかに先行公開された文書の一覧や議論は、必ずしも文書が最先端の一部であるか、または共通の一般的知識であるとの確認として解釈されるべきではない。
本発明は以下の図と実施例に関してより詳細に説明される。
GPCRのClustal Wによる解析。(A)クラス1GPCR(配列番号5−284);(B)クラス2GPCR(配列番号285−299);及び(C)クラス3GPCR(配列番号300−314)、各々のクラスにおいて、強調表示した領域は保存された2.46残基又は場合によってはそれと等価な残基を意味する。 ヒトアデノシンA2A受容体のアミノ酸配列(配列番号315)。 ヒト5HT2C受容体のアミノ酸配列(配列番号316)。 ヒトM4ムスカリン受容体のアミノ酸配列(配列番号317)。 2A−WT受容体(黒い円)及びDDMに可溶化したリガンド結合状態のA2A−L48A変異体(黒い四角)。(A)NECAアゴニスト結合状態、TmWT=28.7±0.5℃、TmL48A=42.5±1.0℃;(B)ZMアンタゴニスト結合状態、TmWT=33.0±0.7℃、TmL48A=n.a;結合検出されず。各々100nM及び400nMで、ZM及びNECAは10×K NECA刺激の効果を示す代表的なcAMPの用量応答曲線。(黒い円)A2A−WT;pEC50=7.3±0.2℃。(黒い三角)A2A−L48A;pEC50=8.1±0.4℃。 アゴニストに結合した5HT2C受容体の熱安定性。Tm5HT2c=43.35℃TmM93A=45.6℃及びTmL95A=48.8℃. (A)アンタゴニストに結合したM4受容体の熱安定性。TmM4=34.0℃及びTmL71A=36.0℃;(B)アンタゴニストに結合した5HT2C受容体の熱安定性。Tm5HT2C=37.1℃及びTmS94A=48.9℃. 5CH23390アゴニストに結合状態のL366A変異体5HT2C受容体の熱安定性。 L2.46(Leu48)と、L2.46に隣接した残基及びNPxxY(配列番号1)モチーフの残基の両方との間の距離を示すアデノシンA2A受容体の描写。 ラットニューロテンシン受容体のアミノ酸配列(配列番号318)。 ヒトCRFのアミノ酸配列(配列番号319)。 ヒトOXのアミノ酸配列(配列番号320)。 クラス2GPCRのTM2領域のアラインメント(配列番号321−362)。保存された残基2.59が強調表示される。残基2.50もまた参考のため強調表示される。 DDMで精製された、アンタゴニスト結合状態のCRF−WT(三角)及びCRF1 I163A変異体(円)。TmWT=26.8°C,TmI163A=30.7°C. アンタゴニストに結合したOX受容体の熱安定性。TmOX2 WT=28.47℃,TmOX2 Y91L=29.69℃。
実施例1;受容体の熱安定性に対するアミノ酸残基2.46及び周囲の残基を変異させることの影響
序論
クラス1のGPCRにおいて、2.46はTM2の最も保存された残基の一つである(およそLが96%、Mが2%、Iが1.5%及びV/Tが0.5%)。[非特許文献8及び9]。TM2の底に位置し、この残基の側鎖はヘリックスの束の方を向き、非常に良く保存された残基であるTM7のNPXXY(配列番号1)モチーフのN7.49、P7.50及びY7.53で構成される「マイクロスイッチ」に近接する。下記の通り、多くの異なる受容体についての我々の様々な研究は、この残基をアラニンに変異することがアゴニスト結合受容体の熱安定性を増加させることを明らかにした。意義深いことに、近傍の残基の幾つかを変異することはアゴニスト結合受容体の熱安定性を増加させる。従って、特にこの残基とその周囲の残基を変異させることは、異なるGPCRを安定化する一般的なアプローチの構成要素となる。残基によりアゴニスト型又はアンタゴニスト型の立体構造をとる受容体の熱安定性を増加させることが可能である。
結果
アゴニスト結合A2Aの熱安定性に対するL2.46Aの影響
アゴニスト結合型の立体構造を安定化するために、フルアゴニストのNECAに結合したA2A受容体を安定化させ得る変異を同定するために、系統的なアラニンスキャンが実施された。このA2Aアゴニスト結合実験において、L2.46(L48A)は最も安定化させる単一変異体である。NECAが可溶化受容体に結合した場合、(A2A−L48Aにおいて)L48側鎖を除くことでリガンド−受容体複合体の熱安定性を劇的に増加させ、結果として界面活性剤DDM中の野生型受容体に比して14℃の増加をもたらしている(図5a)。興味深いことに、この変異はアンタゴニストの結合を消滅させ(図5b)、この側鎖を取り除くことが立体構造変化を誘導し、部分的に又は完全に受容体を活性な立体構造に固定し得ることを示唆している。我々はA2A受容体のシグナル伝達の性質をCHO細胞中に受容体を過剰発現することで評価した。A2Aアゴニスト刺激は、Gs−三量体複合体を通じてシグナル伝達を引き起こし、細胞内cAMPレベルを増加させる。細胞内cAMPの増加は抗cAMP Mab抗体競合アッセイを用いることで検出及び定量化可能である。A2A−WT受容体の効力は、発表されたデータのpEC50=7.27±0.19と良く一致する。本変異体はより高い効力(pEC50=8.10±0.39)を示す。しかしながらシグナル伝達の有効性は30%に減少する(図6)。
アゴニスト結合5HT2Cの熱安定性に対するL2.46Aの影響
アゴニスト型の立体構造を安定化するために、アゴニストSCH23390の存在下で、アラニンスキャンが5HT2C受容体において実施された。A2Aに類似して、L2.46(5HT2CのL95)をアラニンに変異させることは、この受容体に有意な安定性を与え、受容体のTmを増加させる(図7)。L95に加えて近傍のM93(L2.46から2残基離れた)をアラニンに変異させることもまたアゴニスト結合受容体に安定性を与え、結果として2.9℃の増加をもたらすことは特記すべきである。
アゴニスト結合M4のL2.46領域の変異の影響及び5HT2Cの熱安定性
アンタゴニスト型の立体構造にあるM4ムスカリン受容体を安定化するために、ムスカリン性アンタゴニストのNMSに結合した受容体を安定化する変異を同定するために、系統的なアラニンスキャンが実施された。M4のL2.46残基をアラニンに変異させることはこの受容体の熱安定性を有意には変化させない(データ非開示)。しかしながら、L71A(L2.46の3残基N末端側)が安定化変異として同定された。この変異はこの受容体のTmを約2℃増加させる(図8a)。
同様に、5HT2C受容体のアンタゴニストアラニンスキャンはL2.46をアラニンに変異させることがアゴニスト結合5HT2Cに如何なる安定性をも与えないことを明らかにしたが(データ非開示)、しかし近傍のS94(L2.46から一残基離れた)をアラニンに変異させることはアンタゴニスト結合受容体のTmを11.76℃だけ有意に増加させた(図8b)。
結論
我々が共有する異なる受容体から得たデータは、L2.46及びその周囲の残基が受容体の異なる立体構造を安定化する重要な役割を果たしていることを明らかに示している。この領域の配列保存の高いレベルを考慮すると、この領域の残基の立体構造特異的な安定効果は異なるGPCRの一般的な特徴であるように見える。これらの変化がいかにして受容体の安定性を改良するのかは明らかでないが、これらの残基を変異させることはRとR*(活性及び不活性な状態)の間の平衡を変える可能性がある。受容体の基底状態を不安定化することは、アゴニスト結合受容体を安定化する方法の優れた第一工程であるかも知れない。逆に活性な立体構造の形成はR状態へ向けて平衡をシフトすることで、次々に基底状態を安定化する可能性がある。
材料と方法
受容体の発現
2AR−(2−316)の発現はpRG/III−hs−MBP大腸菌発現ベクター及びDH5α細胞を用いて行った。細胞は、アンピシリン(100μg/mL)及びグルコース(0.2%w/v)が補充された500mLの2×TY培地を含む2Lフラスコ中で、37℃で増殖させた。OD600がおよそ0.7にて、IPTGとテオフィリンを最終濃度をそれぞれ0.5mMと100μMとして添加し温度を20℃へ下げた。22から24時間後に細胞を14mLの分量にて集菌し、30分遠心分離し−20℃で保管した。5HT2CとM4受容体は一時的にHEK293T細胞にて、製造業者のガイドラインに従って使用したGeneJuiceトランスフェクション試薬を用いて発現した。
受容体の可溶化と精製及び熱安定性試験
野生型又は変異体A2AR−(2−316)を発現する大腸菌細胞の一定分量(14mL)が氷上で解凍され、細胞を500μLのバッファーA(完全EDTAフリープロテアーゼ阻害剤混合物(ロッシュ)が補充された、50mM Tris HCl mM/pH7.4;0.4MのNaCl、250μg/mLのリゾチーム(シグマ)、1mg/mLのDNAse I(シグマ))に再懸濁され、4℃で1時間インキュベートした。試料は次いで、カップ−ホーンソニケーターを使用して超音波処理された。受容体は1%DDMを添加することで可溶化され4℃で1時間インキュベートした。不溶性物質はチューブを5分間13000gで4℃にて遠心分離により除去した。可溶化した受容体は一部がNi−NTAアガロース(Qiagen)により精製された。事前にバッファーAにて平衡化された300μLのアガロースビーズを可溶化受容体700μLに添加した。界面活性剤の濃度を減らすために、50mM Tris HCl mM/pH7.4;0.4M NaClを最終体積が2mLとなるまで添加した。4℃で2時間インキュベート後に、試料を13000gで10秒間4℃で遠心分離し、バッファーB(Hepes 25mM/pH7.4 KOH,0.025% DDM)にて3回洗浄し、50mMのヒスチジンを補充したバッファーBにより4℃で30分間溶出した。上清を直接放射性リガンド結合実験に使用した。具体的には、可溶化した受容体108μLを4μM[H]−NECAを12μLと混合し(最終濃度が400nM)、又は1μM[H]−ZM241385を12μLと混合した(最終濃度が100nM)。試料を4℃で45分間、次いで特定温度で30分間、その後4℃で30分間インキュベートした。受容体結合及び遊離した放射性リガンドは96穴プレートゲル濾過アッセイを用いて分離した。
一時的に形質移入された哺乳動物細胞発現M4は形質移入後約40時間で回収され、受容体を50mM Tris pH7.5/250mM NaCl/1%DDM/EDTAフリープロテアーゼ阻害剤混合物に4℃で1時間回転して可溶化した。可溶化した溶解物は次いで4℃で15分間13000rpmで遠心分離により不要物が除去された。可溶化した受容体は次いでNi−NTAビーズ上で精製され100mMヒスチジンで溶出した。溶出した受容体を放射性リガンド結合実験に用いた。M4の熱安定性は、12nM[H]−NMSを95μL混合した(最終濃度10nM)精製受容体25μLを用いて測定した。試料を4℃で60分間、次いで特定温度で30分間、その後4℃で30分間インキュベートした。受容体結合及び遊離した放射性リガンドは96穴プレートゲル濾過アッセイを用いて分離した。
5HT2C受容体が、一時的に形質移入された哺乳動物細胞から50mM Hepes pH7.4,100mM KCl,0.5%DDM(0.1%CHS/0.6%CHAPSがSCH23390アゴニストアッセイのために細胞に添加された)に可溶化された。Tm分析を直接可溶化溶解物に対して行った。Tmは108μLの溶解物を、最終濃度17nMの[N−methyl−H]メスレルギン放射性リガンドとともに、又は9nM[H]SCH23390とともに4℃で1時間インキュベートすることで決定した。6つのリガンドのインキュベーションが次いで25℃から55℃の6つの異なる温度で30分間インキュベートされた。受容体に結合及び遊離の放射性リガンドが96穴プレートゲル濾過アッセイを用いて分離された。
cAMP機能アッセイ
このアッセイは、クリプテートで標識された抗−cAMP Mabの存在下で色素d2で標識されたcAMPを用いる均一時間分解蛍光(HTRF)をうまく利用する。本方法は細胞により生産されたcAMPと色素d2で標識されたcAMPの間の競合免疫測定法に基づく。CHO細胞をGlutamax HamのF12、透明な底と黒壁の96穴プレート(Costar)中の10%FBSを用いて増殖した。ウエルあたり12500細胞の密度で細胞が播種され、一晩増殖し、PBSで洗浄し、次いでウエルあたり0.3μLのGeneJuice(ノバジェン)でプレインキュベートした、100ngのpCDNA−3−A2A(2−316)で形質移入した。受容体発現の48時間後、培地を除去し、細胞をPBSで洗浄し、総量50μL中ロリプラム(50μM)とアデノシンデアミナーゼの存在下で30分間異なるNECAの濃度を用いることで刺激した。希釈は、血清無しで、製造元のプロトコールに従ってHamfのF12/cAMP−d2抱合体中で実現した。アゴニスト刺激の30分後、抱合体と溶解バッファーで希釈した50μLの抗−cAMP/クリプテートをウエルあたり添加した。プレートを室温で1時間インキュベートし、次いでPherastar96穴時分割蛍光プレートリーダー(Ex 340nm;Em 665/620nm)を用いて読み取った。
実施例2:受容体の安定性に対するアミノ酸残基2.46と相互作用するTM7中のアミノ酸を変異させることの影響
結果
アゴニスト結合A2Aの熱安定性に対するNpxxY(配列番号1)モチーフ中の残基を変異させることの影響
2Aアゴニスト結合研究において、アラニンスキャンによる変異の影響を二点熱安定性測定により最初に決定した。これらの実験において、野生型受容体と単一変異を含む受容体を界面活性剤DDMに可溶化し、4℃で保持されるNECAの量と、不安定化温度、例えば30℃、を決定した。不安定化温度で野生型受容体と比較した変異体受容体に対するアゴニスト結合の10%超の増加は、有意と見なされ、熱安定性の増加の指標となる。A2Aアゴニストスキャンにおいて、アスパラギン284残基(N284、N7.49)の変異は、不安定化温度において、野生型と比べて増加したアゴニスト結合により示唆された通り、増加した熱安定性をもたらした。
アゴニスト結合5HT2Cの熱安定性に対するNpxxY(配列番号1)モチーフ中の残基を変異させることの影響
アゴニスト型の立体構造を安定化するために、アゴニストSCH23390の存在下、5HT2C受容体においてアラニンスキャンを実施した。A2Aと同様に、NPxxY(配列番号1)モチーフ内とその周囲の残基を変異させることが熱安定性の増加をもたらした。二点の熱安定性試験において、残基7.48(I363)及び7.51(L366)のアラニンへの変異は、不安定化温度で野生型受容体と比較してアゴニスト結合の増加をもたらし、安定性の増加を示している。図9はL366(NPLVY(配列番号363)モチーフのL)をアラニンへ変異させることが安定性を付与し、受容体のTmを4℃だけ増加させることを示している。
アゴニスト結合ニューロテンシン受容体の熱安定性に対するNPxxY(配列番号1)モチーフ中の残基を変異させることの影響
アゴニスト型の立体構造を安定化するために、アゴニストのニューロテンシン存在下、ラットのニューロテンシン受容体NTSにおいてアラニンスキャンを実施した。2点の熱安定性試験において、NPxxY(配列番号1)のYを意味する残基7.53(Y369)のアラニンへの変異は、不安定化温度で野生型受容体と比較してアゴニスト結合の増加をもたらし、安定性の増加を示している。
アンタゴニスト結合アデノシンA2A及び5HT2C結合に対するNPxxY(配列番号1)領域の変異の影響
アラニンスキャンをアンタゴニストメスレルギンの存在下、5HT2C受容体とともにアデノシンA2A受容体において同様に実施した。双方のアラニンスキャンはアンタゴニスト型の立体構造を更に安定化するために実施した。双方のスキャンにおいて、NPxxY(配列番号1)モチーフ由来のアミノ酸をアラニンに変えた場合、アンタゴニスト結合が著しく減少するように見えたのは特記すべきことである(表1)。アデノシンA2AのモチーフはNPFIY(配列番号364)であり、5HT2CにおいてはNPLVY(配列番号363)である。従って、受容体のこの領域の変異はアゴニスト型の立体構造に特異的な変異を安定化することを含み、アンタゴニストの結合に悪影響を与える。
アミノ酸残基2.46のCα原子と残基2.46の両側の各々の4残基のCα原子との間、及びアミノ酸残基2.46のCα原子とNPxxY(配列番号1)モチーフの残基のCα原子との間の距離はアデノシンA2A受容体において以下の通りである。
材料と方法
5HT2C受容体は形質移入後約40時間後に、一時的に形質移入した哺乳動物細胞から50mM Hepes pH7.4/100mM KCl/0.5% DDM/(0.1%CHS/0.6%CHAPSがSCH23390アゴニストアッセイのために添加された)とプロテアーゼ阻害剤に可溶化された。細胞溶解物はローテータ上で4℃のままにし、次いで4℃で13200rpmにて20分間の遠心分離で除かれた。熱安定性分析が可溶性溶解物において直接実施された。Tmは108μLの溶解物を、最終濃度17nMの[N−methyl−H]メスレルギン放射性リガンドとともに、又は9nM[H]SCH23390とともに4℃で1時間インキュベートすることで決定した。6つのリガンドのインキュベーションが次いで25℃から55℃の6つの異なる温度で30分間インキュベートされた。受容体に結合及び遊離の放射性リガンドがG25セファデックススピンカラムを用いて分離された。
アデノシンA2A受容体は形質移入後約36時間後に、一時的に形質移入した哺乳動物細胞から50mM Tris pH7.4/400mM NaCl/0.5% DDMとプロテアーゼ阻害剤に可溶化された。細胞溶解物はローテータ上で4℃のままにし、次いで4℃で13200rpmで20分間の遠心分離で除かれた。可溶化した受容体を次いでNi−NTAビーズ上で精製し50mMのヒスチジンで溶出した。溶出した受容体を放射性リガンド結合実験に使用した。Tmは溶出液の108μlを最終濃度100nMのZm241385放射性リガンドとともに4℃で1時間インキュベートすることで決定した。6つのリガンドのインキュベーションが次いで20℃から50℃の6つの異なる温度で30分間インキュベートされた。受容体に結合及び遊離の放射性リガンドがG25セファデックススピンカラムを用いて分離された。
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実施例3:クラス2GPCRの受容体熱安定性に対するI2.58A変異の影響
序論
クラス2GPCRはクラス1に直接アラインメントしないがファミリーの範囲内においては構造の鍵となる役割を果たすであろう数多くの保存された残基がある。クラス2の残基L2.59はTM2においてクラス1のL2.46に相当する場所に位置する(図14)。この残基は最も保存された残基の一つである。
下記の通り、ヒトCRFの我々の研究は、この受容体のi−1の位置(I2.58)をアラニンに変異させるとアンタゴニスト結合受容体(CRF)の熱安定性を増加させることを明らかにした。従って、クラス1GPCRと同様に、受容体のこの領域の残基を変異させることはクラス2GPCRを安定化するための一般的なアプローチを構成するとして妥当である。
結果
アンタゴニスト結合CRFの熱安定性に対するI2.58Aの影響
アンタゴニスト型の立体構造のCRFを安定化するために、アンタゴニストのリガンドCP−376395に結合した受容体を安定化する変異を同定するために、系統的なアラニンスキャンが実施された。I2.58をアラニンに変異させることは(I163A)、CRFに有意な安定性を与え、熱安定性を3.9(±0.5)℃だけ増加させている(図15)。
材料と方法
受容体発現
CRF受容体は、GeneJuice形質移入試薬を製造元のガイドラインに従って使用し、一時的に10cmのプレート上のHEK293T細胞に発現させた。
受容体の可溶化、精製及び熱安定性試験
CRFを発現する細胞を形質移入後約40時間後にPBSにて収集し、950μlの再懸濁バッファー(50mM Tris−HCl,150mM NaCl,2×完全EDTA−フリープロテアーゼ阻害剤混合物(ロッシュ),pH7.5)に再懸濁した。細胞は5分間氷に移す前に、120nMのCP−376395及び30nM[H]−CP−376395により37℃で2時間インキュベートした。受容体は1%のDDMの添加により可溶化され、4℃で1時間、穏やかに攪拌してインキュベートした。不溶性物質は1600×gで4℃で10分間遠心分離して除去した。可溶化した受容体は、一部はNi−NTAアガロース(Qiagen)で精製した。Ni−NTA樹脂は平衡化バッファー(50mM Tris−HCl,150mM NaCl,2×完全EDTA−フリープロテアーゼ阻害剤混合物(ロッシュ),0.025% DDM,pH7.5)で平衡化し、400μlの50:50樹脂スラリーが個々の試料に添加された。樹脂スラリーは4℃で1時間30分穏やかな攪拌によりインキュベートし、受容体と結合させた。樹脂スラリーは次いでバッチカラムフィルタープレート(Chromabond)へ移し、1000×gで1分間遠心分離し、素通り画分は廃棄した。樹脂は1mlの洗浄バッファー(50mM Tris−HCl,150mM NaCl,2×完全EDTA−フリープロテアーゼ阻害剤混合物(ロッシュ),0.025% DDM,20mM Imidazole,pH7.5)で2回洗浄し、その後1mlの溶出バッファー(50mM Tris−HCl,150mM NaCl,2×完全EDTA−フリープロテアーゼ阻害剤混合物(ロッシュ),0.025% DDM,100mMヒスチジン,30nM[H]−CP−376395,120nM CP−376395,pH7.5)で4℃で30分間再懸濁して溶出した。溶出した試料を直接熱安定性試験に使用した。個々の試料の120μlを氷に直接移す前に30分間特定の温度でインキュベートした。受容体結合及び遊離の放射性リガンドを次いで96穴プレートゲル濾過アッセイを用いて分離した。
実施例4:アンタゴニスト結合OXの熱安定性に関するL2.46A変異の影響
オレキシン2(OX)は睡眠−覚醒サイクルとエネルギー恒常性の調節に関与するクラス1のGPCRである。
結果
アンタゴニスト結合ヒトOXの熱安定性に対するL2.46Aの影響
タンデムなアラニンとロイシンを系統的に変異導入する戦略が低分子アンタゴニストEMPAに結合したOXの熱安定性を増強する変異を同定するために用いられた。OXのL2.46(OXのL96)のアラニンへの置換は受容体の熱安定性にほとんど影響を及ぼさなかった。しかしながらTyr91(L2.46の5残基N末端側)の変異は増加した安定性を与えることが見いだされ、野生型OXと比較しTmを1℃だけ上昇させた(図16)。
材料と方法
熱安定性試験はM4において記載された通り以下の修正を伴って、部分的に精製された受容体において実施された。細胞溶解物は1×完全EDTAフリー阻害剤混合物(ロッシュ)を補填した50mM Tris pH7.4,150mM NaCl,1% DDMに可溶化した。放射性リガンド結合反応は、温度のポイントごとに20nmのH−EMPA(最終濃度)と混合し1/10量溶出した受容体を用いて設定された。

Claims (52)

  1. 親GPCRに対して増加した安定性を持つ変異体のGタンパク質共役受容体(GPCR)を生産する方法であって、該方法は親GPCRを定めるアミノ酸配列に一以上の変異を作ることを含み、(i)一以上の変異がiプラス又はマイナス5残基のウインドウ内に位置し、ここでiは親GPCRがクラス1GPCRである場合、親GPCRのアミノ酸残基2.46の位置であり、又は親GPCRがクラス2又は3GPCRである場合、iは親GPCRの等価なアミノ酸残基の位置であり、及び/又は(ii)一以上の変異が親GPCRの膜貫通ヘリックス7のアミノ酸配列内に位置し、該アミノ酸配列がiプラス又はマイナス5残基のウインドウと相互作用し、増加した安定性を持つ親GPCRの一以上の変異体を与えることを含む方法。
  2. 工程(i)における一以上の変異がiプラス又はマイナス4残基のウインドウ内に位置し、工程(ii)における一以上の変異が親GPCRの膜貫通ヘリックス7のアミノ酸配列内に位置し、該アミノ酸配列がiプラス又はマイナス4残基のウインドウと相互作用する、請求項1に記載の方法。
  3. 親GPCRの一以上の変異体が特定の立体構造の増加した安定性を有する、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 一以上の変異体がアゴニスト型又はアンタゴニスト型の立体構造において、増加した安定性を有する、請求項3に記載の方法。
  5. 親GPCRの一以上の変異体が、熱、界面活性剤、カオトロピック剤及び極端なpHの任意の一以上に対して増加した安定性を有する、請求項1から4の何れかに記載の方法。
  6. 一以上の変異体が増加した熱安定性を有する、請求項5に記載の方法。
  7. 親GPCRの一つ又は変異体がGタンパク質と共役することが可能であるかどうか決定される、請求項1から6の何れかに記載の方法。
  8. 親GPCRがクラス1GPCR又はクラス2GPCRである、請求項1から7の何れかに記載の方法。
  9. 親GPCRがアデノシン受容体、セロトニン受容体、βアドレナリン受容体、ニューロテンシン受容体、ムスカリン受容体、コルチコトロピン放出ホルモン受容体又はオレキシン受容体の何れかである、請求項8に記載の方法。
  10. 親GPCRの膜貫通ヘリックス7のアミノ酸配列が、該アミノ酸配列がiプラス又はマイナス5残基のウインドウと相互作用し、親GPCRがクラス1GPCRである場合、NPxxY(配列番号1)モチーフプラス又はマイナス3残基であり、又は親GPCRがクラス2GPCRである場合、SFQモチーフプラス又はマイナス3残基であり、又は親GPCRがクラス3GPCRである場合、xPKxY(配列番号4)モチーフプラスマイナス3残基である、請求項1から9の何れかに記載の方法。
  11. 親GPCRに対して増加した安定性を持つ変異体GPCRが、対応する親受容体と比較した場合、図2に示したヒトアデノシンA2A受容体の番号付けによるLeu48及びAsn284の何れか一以上に対応する位置に異なるアミノ酸を有する変異体アデノシン受容体である、請求項1から10の何れかに記載の方法。
  12. 変異体アデノシン受容体が、図2に配列が示されたヒトアデノシンA2A受容体のアミノ酸配列と少なくとも20%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項11に記載の方法。
  13. 親GPCRに対して増加した安定性を持つ変異体GPCRが、対応する親受容体と比較した場合、図3に示したヒト5HT2C受容体の番号付けによるMet93、Ser94、Leu95、Ile363及びLeu366の何れか一以上に対応する位置に異なるアミノ酸を持つ変異体セロトニン受容体である、請求項1から10の何れかに記載の方法。
  14. 変異体セロトニン受容体が、図3に配列が示されたヒト5HT2C受容体のアミノ酸配列と少なくとも20%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項13に記載の方法。
  15. 親GPCRに対して増加した安定性を持つ変異体GPCRが、対応する親受容体と比較した場合、図4に配列が示されたヒトM4ムスカリン受容体の番号付けによるLeu71に対応する位置に異なるアミノ酸を持つ変異体ムスカリン受容体である、請求項1から10の何れかに記載の方法。
  16. 変異体ムスカリン受容体が、図4に配列が示されたヒトM4ムスカリン受容体のアミノ酸配列と少なくとも20%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項15に記載の方法。
  17. 親GPCRに対して増加した安定性を持つ変異体GPCRが、対応する親受容体と比較した場合、図11に示されたラットニューロテンシン受容体の番号付けによるTyr369に対応する位置に異なるアミノ酸を持つ変異体ニューロテンシン受容体である、請求項1から10の何れかに記載の方法。
  18. 変異体ニューロテンシン受容体が、図11に配列が示されたラットニューロテンシン受容体と少なくとも20%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項17に記載の方法。
  19. 親GPCRに対して増加した安定性を持つ変異体GPCRが、対応する親受容体と比較した場合、図12に示されたヒトCRFの番号付けによるIle163に対応する位置に異なるアミノ酸を有する変異体コルチコトロピン放出ホルモン受容体である、請求項1から10の何れかに記載の方法。
  20. 変異体コルチコトロピン放出ホルモン受容体が、図12に配列が示されたヒトCRFと少なくとも20%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項19に記載の方法。
  21. 親GPCRに対して増加した安定性を持つ変異体GPCRが、対応する親受容体と比較した場合、図13に示されたヒトOXの番号付けによるTyr91に対応する位置に異なるアミノ酸を有する変異体オレキシン受容体である、請求項1から10に記載の方法。
  22. 変異体オレキシン受容体が、図13に配列が示されたヒトOXのアミノ酸配列と少なくとも20%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項21に記載の方法。
  23. 請求項1から22に記載の何れかの方法で生産された親GPCRに対して増加した安定性を持つ変異体GPCR。
  24. 親GPCRと比較した場合、親GPCRを定めるアミノ酸配列において一以上の変異を有する変異体GPCRであって、(i)一以上の変異がiプラス又はマイナス5残基のウインドウ内に位置し、ここでiは親GPCRがクラス1GPCRである場合、親GPCRのアミノ酸残基2.46の位置であり、又は親GPCRがクラス2又は2GPCRである場合、iは親GPCRの等価なアミノ酸残基の位置であり、及び/又は(ii)一以上の変異が、親GPCRの膜貫通ヘリックス7のアミノ酸配列内に位置し、該アミノ酸配列はiプラス又はマイナス5残基のウインドウと相互作用し、該変異体GPCRが不安定化条件に曝された場合、親GPCRと比較して増加した安定性を有する変異体GPCR。
  25. 親GPCRと比較した場合、親GPCRを定めるアミノ酸配列において一以上の変異を有し、ここで(i)一以上の変異がiプラス又はマイナス5残基のウインドウ内に位置し、ここでiは親GPCRがクラス1GPCRである場合、親GPCRのアミノ酸残基2.46の位置であり、又は親GPCRがクラス2又は3GPCRである場合、iは親GPCRの等価なアミノ酸残基の位置であり、及び/又は(ii)一以上の変異が、親GPCRの膜貫通ヘリックス7のアミノ酸配列内に位置し、該アミノ酸配列がiプラス又はマイナス5残基のウインドウと相互作用する変異体GPCRを含む組成物において、該変異体GPCRが、変異体GPCRよりも大きく親GPCRを不安定にするのに有効な不安定化条件に曝されることを特徴とする組成物。
  26. 変異体GPCRが変異体アデノシン受容体であって、対応する親受容体と比較した場合、図2に示されたヒトアデノシンA2A受容体の番号付けによるLeu48及びAsn284の何れか一以上に対応する位置に異なるアミノ酸を有する、請求項24に記載の変異体GPCR又は請求項25に記載の組成物。
  27. アデノシン受容体が図2に配列が示されたヒトアデノシンA2A受容体のアミノ酸配列と少なくとも20%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項26に記載の変異体GPCR又は組成物。
  28. 変異体GPCRが、対応する親受容体と比較した場合、図3に示されたヒト5HT2C受容体の番号付けによるMet93、Ser94、Leu95、Ile363及びLeu366の何れか一以上に対応する位置に異なるアミノ酸を有する変異体セロトニン受容体である、請求項24に記載の変異体GPCR又は請求項25に記載の組成物。
  29. 変異体セロトニン受容体が図3に配列が示されたヒト5HT2C受容体のアミノ酸配列にと少なくとも20%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項28に記載の変異体GPCR又は組成物。
  30. 変異体GPCRが、対応する親受容体と比較した場合、図4に示されたヒトM4ムスカリン受容体の番号付けによるLeu71に対応する位置に異なるアミノ酸を有するムスカリン受容体である、請求項24に記載の変異体GPCR又は請求項25に記載の組成物。
  31. 変異体ムスカリン受容体が、図4に配列が示されたヒトM4ムスカリン受容体のアミノ酸配列と少なくとも20%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項30に記載の変異体GPCR又は組成物。
  32. 変異体GPCRが、対応する親GPCRと比較した場合、図11に示されたラットニューロテンシン受容体の番号付けによるTyr369に対応する位置に異なるアミノ酸を有するニューロテンシン受容体である、請求項24に記載の変異体GPCR又は請求項25に記載の組成物。
  33. 変異体ニューロテンシン受容体が、図11に配列が示されたラットニューロテンシン受容体のアミノ酸配列と少なくとも20%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項32に記載の変異体GPCR又は組成物。
  34. 変異体GPCRが、対応する親受容体と比較した場合、図12に示されたヒトCRFの番号付けによるIle163に対応する位置に異なるアミノ酸を有するコルチコトロピン放出ホルモン受容体である、請求項24に記載の変異体GPCR又は請求項25に記載の組成物。
  35. 変異体コルチコトロピン放出ホルモン受容体が、図12に配列が示されたヒトCRFのアミノ酸配列と少なくとも20%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項34に記載の変異体GPCR又は組成物。
  36. 変異体GPCRが、対応する親受容体と比較した場合、図13に示されたヒトOXの番号付けによるTyr91に対応する位置に異なるアミノ酸を有するオレキシン受容体である、請求項24に記載の変異体GPCR又は請求項25に記載の組成物。
  37. 変異体オレキシン受容体が、図13に配列が示されたヒトOXのアミノ酸配列と少なくとも20%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項36に記載の変異体GPCR又は組成物。
  38. 変異体GPCRには膜が無い、請求項23、24、及び26から37の何れかに記載の変異体GPCR、又は請求項25から37の何れかに記載の組成物。
  39. 変異体GPCRがリガンドの欠損下で親GPCRと比べて増加した安定性を有する、請求項23、24及び26から38の何れかに記載の変異体GPCR、又は請求項25から38の何れかに記載の組成物。
  40. 変異体GPCRがリガンドの存在下で親GPCRと比べて増加した安定性を有する、請求項23、24及び25から39の何れかに記載の変異体GPCR、又は請求項25から39の何れかに記載の組成物。
  41. 不安定化条件が、熱、界面活性剤、カオトロピック剤、極端なpH、有機溶媒、水溶液又は膜の無い環境の何れかである、請求項23、24及び26から40の何れかに記載の変異体GPCR、又は請求項25から40の何れかに記載の組成物。
  42. 変異体GPCRが、熱、界面活性剤、カオトロピック剤及び極端なpHの何れか一に対して増加した安定性を有する、請求項23、24及び26から41の何れかに記載の変異体GPCR、又は請求項25から41の何れかに記載の組成物。
  43. 変異体GPCRが増加した安定性を有する、請求項23、24及び26から41の何れかに記載の変異体GPCR、又は請求項25から41の何れかに記載の組成物。
  44. 変異体GPCRがその親よりも少なくとも1℃、より安定である、請求項43に記載の変異体GPCR又は組成物。
  45. 変異体GPCRが可溶化形態にある、請求項23、24及び26から44の何れかに記載の変異体GPCR、又は請求項25から44の何れかに記載の組成物。
  46. 変異体GPCRには実質的に他のタンパク質が無い、請求項23、24及び26から45の何れかに記載の変異体GPCR、又は請求項25から45の何れかに記載の組成物。
  47. 固体支持体に固定された、請求項23、24及び26から46の何れかに記載の変異体GPCR、又は請求項25から46の何れかに記載の組成物。
  48. 請求項23、24及び26から46の何れかに記載の変異体GPCR、又は請求項25から46の何れかに記載の組成物が固定される固体支持体。
  49. 請求項23、24及び26から46の何れかに記載の変異体GPCR、又は請求項25から46の何れかに記載の組成物の結晶化のための使用。
  50. 請求項23,24及び26から46の何れかに記載の変異体GPCR、又は請求項25から46の何れかに記載の組成物の創薬における使用。
  51. 変異体GPCR又は組成物がリガンド結合スクリーニング又はアッセイの開発に使用される、請求項50に記載の使用。
  52. 請求項23、24及び26から46の何れかに記載の変異体GPCR、又は請求項25から46の何れかに記載の組成物のバイオセンサーとしての使用。
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