JP2012521188A - 微生物由来の改良型凝乳プロテアーゼ - Google Patents

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Abstract

本発明は、配列番号3に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列を含み、以下の(A)及び(B)から選択される少なくとも1つの変異を有し、凝乳活性を有する改良型プロテアーゼを提供する:
(A)配列番号3の265位のグルタミンに相当するグルタミンの酸性アミノ酸への置換、及び
(B)配列番号3の266位のグルタミンの酸性アミノ酸への置換。

Description

本発明は、微生物由来の凝乳活性が向上したプロテアーゼに関する。同プロテアーゼは、チーズ製造に好適に用いられる。
古くからチーズ製造に用いる凝乳酵素として、仔ウシレンネットが使用されている。仔ウシレンネットの凝乳活性の大部分は酸性プロテアーゼであるキモシンが占めており、乳中のカゼインに対する位置特異性が高いこと、すなわち、非特異的なプロテアーゼ活性(κ-カゼインのアミノ酸配列における105位のアミノ酸であるフェニルアラニンと106位のアミノ酸であるメチオニン間以外のペプチド結合を消化する活性)が低いという特徴を有している。この非特異的プロテアーゼ活性は、チーズ製造時の収量低下や熟成中の苦味ペプチド産生に影響するとされ、キモシンが優れた凝乳酵素である理由とされている。
しかし、仔ウシの屠畜数の減少、チーズ需要の増加に伴い、仔ウシレンネットの安定した供給が困難となり、現在ではリゾムコール・ミーハイ(Rhizomucor miehei)及びリゾムコール・プシルス(Rhizomucor pusillus)の生産する微生物由来の凝乳酵素や仔ウシキモシンの遺伝子をカビや酵母に導入し生産させた遺伝子組換えキモシンが凝乳酵素として多用されるようになっている。
上記微生物由来の凝乳酵素は、仔ウシキモシンや組換えキモシンに比べて非特異的なプロテアーゼ活性が高く、凝乳酵素の性質として重要なC/P比(タンパク質分解活性に対する凝乳活性の比)が低い点が問題とされているが、このような欠点を解決するために、リゾムコール・プシルスでは、遺伝子工学的手法により部位特異的変異を施した凝乳酵素の変異遺伝子を酵母で発現させて評価されている。その変異体では、凝乳酵素のアミノ酸配列における19位のアミノ酸をグルタミン酸からアラニンに置換させることによってC/P比が野生型よりも向上した(非特許文献1)。
しかし、このアミノ酸置換によって凝乳酵素の比活性が約4割も低下することから実用化は困難であり、C/P比が高く、かつ比活性が維持され又は向上している微生物由来の凝乳酵素が望まれている。
また、リゾムコール・プシルス及びリゾムコール・ミーハイの微生物由来の凝乳酵素をジカルボン酸無水物でアシル化し、C/P比を向上させること等が試みられているが(特許文献1)、この方法もある程度の成果は得られているが、未だ十分なものではない。
特公平2−18834号公報
J. Biochem. 129, 791-794, 2001
本発明は、κ-カゼインのアミノ酸配列における105位のアミノ酸であるフェニルアラニンと106位のアミノ酸であるメチオニン間以外のペプチド結合を消化する活性(以
下、「非特異的プロテアーゼ活性」ともいう)が低く、凝乳酵素の比活性が維持され、又は向上した、凝乳に適したプロテアーゼを提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、凝乳酵素生産菌の突然変異体の内から、非特異的プロテアーゼ活性が低下しているためにC/P比が向上した凝乳酵素を生産する変異株を見出し、該凝乳酵素の遺伝子を単離して塩基配列を決定し、該遺伝子を発現させて、その凝乳酵素の比活性及びC/P比を確認し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は、凝乳酵素の比活性が維持され、又は向上し、かつ、C/P比が向上した微生物由来の凝乳活性を有するプロテアーゼ、これをコードするDNA及び該DNAを含むベクター、該ベクターが導入された形質転換細胞を提供するものである。
本発明の一つの態様は、配列番号3に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列を含み、以下の(A)及び(B)から選択される少なくとも1つの変異を有し、凝乳活性を有する改良型プロテアーゼを提供することである。
(A)配列番号3の265位のグルタミンに相当するグルタミンの酸性アミノ酸への置換、及び
(B)配列番号3の266位のグルタミンの酸性アミノ酸への置換。
本発明の他の態様は、以下の(A)および(B)からなる群より選択される前記改良型プロテアーゼを提供することである。
(A)配列番号3または43のアミノ酸配列において、265位のグルタミン及び/又は266位のグルタミンが酸性アミノ酸に置換されたアミノ酸配列を含むタンパク質、
(B)配列番号3または43のアミノ酸配列において、265位のグルタミン及び/又は266位のグルタミンが酸性アミノ酸に置換され、かつ、265位及び266位以外の位置において10個以下(好ましくは5個以下、より好ましくは3個以下、さらに好ましくは2個以下)のアミノ酸が置換、欠失、挿入又は付加されたアミノ酸配列を含むタンパク質。
本発明の他の態様は、前記酸性アミノ酸が、グルタミン酸又はアスパラギン酸である、前記改良型プロテアーゼを提供することである。
本発明の他の態様は、配列番号3のアミノ酸配列において、19位のアミノ酸が、バリン、アラニン、イソロイシン又はロイシンに置換されている、前記改良型プロテアーゼを提供することである。
本発明の他の態様は、配列番号3のアミノ酸配列において、81位のアミノ酸がグルタミン又はアスパラギン酸に置換されている、前記改良型プロテアーゼを提供することである。
本発明の他の態様は、前記改良型プロテアーゼをコードするDNAを提供することである。
本発明の他の態様は、前記DNAを含む発現ベクターを提供することである。
本発明の他の態様は、前記発現ベクターが導入された形質転換細胞を提供することである。
本発明の他の態様は、前記形質転換細胞がサッカロマイセス・セレビシエである、前記形質転換細胞を提供することである。
本発明の他の態様は、前記形質転換細胞を培養し、該培養液中に凝乳活性を有するプロテアーゼを蓄積させる工程を含む、凝乳活性を有する改良型プロテアーゼの製造方法を提供することである。
本発明に係る改良型酵素は、凝乳酵素の比活性が維持され、又は向上し、かつ、C/P比が高いので、収量の高いチーズの製造が可能になる。また、C/P比が高いので、改良
型酵素により凝乳過程における苦味ペプチド等の生成が抑えられ、質の高いチーズの生産が可能になる。
図1は発現ベクターJS4の構造を示す図である。 図2は、リゾムコール・プシルス(RMPP)由来のプロテアーゼとリゾムコール・ミーハイ(RMMP)由来のプロテアーゼの配列アラインメントを示す図である。
以下に、本発明を詳細に説明する。
1.本発明に係る改良型プロテアーゼ(凝乳酵素)
本発明に係る改良型プロテアーゼは、配列番号3と少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、(A)配列番号3のアミノ酸配列における265位のグルタミンに対応するグルタミンの酸性アミノ酸への置換、及び(B)配列番号3のアミノ酸配列における266位のグルタミンの酸性アミノ酸への置換、からなる群より選ばれる少なくとも1つの変異を有し、凝乳活性を有している。
前記酸性アミノ酸としては、グルタミン酸又はアスパラギン酸が挙げられる。
本発明の改良型プロテアーゼは配列番号3の全体に対して好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の配列同一性を有する。
一態様において、本発明の改良型プロテアーゼはリゾムコール・ミーハイの野生型プロテアーゼ(配列番号3)に変異を導入することにより得られる。この態様では、本発明の改良型プロテアーゼは(A)配列番号3または43のアミノ酸配列において、265位のグルタミン及び/又は266位のグルタミンが酸性アミノ酸に置換されたアミノ酸配列を含むタンパク質、および(B)配列番号3または43のアミノ酸配列において、265位のグルタミン及び/又は266位のグルタミンが酸性アミノ酸に置換され、かつ、265位及び266位以外の位置において10個以下のアミノ酸が置換、欠失、挿入又は付加されたアミノ酸配列を含み、凝乳活性を有するタンパク質からなる群より選択される。
図2はリゾムコール・プシルス由来のプロテアーゼとリゾムコール・ミーハイ由来のプロテアーゼの配列アラインメントを示す。両配列において、265位と266位のアミノ酸は保存されている。したがって、本発明の改良型プロテアーゼはリゾムコール・プシルスの野生型プロテアーゼ(配列番号43)に変異を導入することによっても得られる。すなわち、別の態様では、本発明の改良型プロテアーゼは配列番号43において265位のグルタミンおよび/または266位のグルタミンが酸性アミノ酸に置換された配列を含む蛋白質であってもよい。さらに、改良型プロテアーゼは凝乳活性を有する限り、265位のグルタミンおよび/または266位のグルタミンの置換以外に、別の変異(10アミノ酸以下の置換、欠失、挿入または付加)を有してもよい。
また、本発明に係る改良型プロテアーゼは、さらに、配列番号3または43のアミノ酸配列における19位のグルタミン酸及び/又は81位のスレオニンが他のアミノ酸に置換されていてもよいが、19位のグルタミン酸については、バリン、アラニン、イソロイシン又はロイシンに置換されていることが好ましく、81位のスレオニンについては、グルタミン又はアスパラギン酸に置換されていることが好ましい。
本発明において、「265位」、「266位」、「19位」、及び「81位」とは、必ずしもプロテアーゼのN末端からの絶対的な位置を示すものではなく、配列番号3または43のアミノ酸配列における相対的な位置を示すものである。例えば、配列番号3または43に示すアミノ酸配列を有するプロテアーゼにおいて、265位よりN末端側の位置で
1アミノ酸欠失した場合、前記265位は264位となる。このような場合であっても、N末端から264番目のアミノ酸は、本発明における「265位」のアミノ酸である。アミノ酸の絶対的な位置は、対象のプロテアーゼのアミノ酸配列と配列番号3または43のアミノ酸配列とのアラインメントにより、決定することができる。「相当する」という用語によって示されるアミノ酸は配列番号3または43のアミノ酸配列と比較した相対的な位置のアミノ酸を意味する。
配列番号3および43は成熟型プロテアーゼのアミノ酸配列である。本発明に係る改良型プロテアーゼは、シグナルペプチドやプロペプチド等のアミノ酸配列を含んでいても良い。
本発明に係る改良型プロテアーゼは、本明細書の実施例に記載するような方法で、凝乳活性を有するがC/P比の比較的低い野生型プロテアーゼを生産する微生物から、C/P比が高い改良型プロテアーゼを生産する突然変異株を作製し、該突然変異株を培養することにより、該突然変異株の細胞内又は培養液中に得ることができる。C/P比の比較的低いプロテアーゼを生産する微生物としては、リゾムコール・ミーハイの野生株(ATCC16457)、リゾムコール・プシルス(ATCC16458)及びそれらの誘導株などが挙げられる。これらの株はアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC:P.O.Box 1549 Manassas, VA 20108 USA)から購入することができる。前記突然変異株から変異プロテアーゼをコードするDNAを単離し、該DNAを発現させることで本発明に係る改良型プロテアーゼを得ることもできる。
また、本発明に係る改良型プロテアーゼは、リゾムコール・ミーハイの野生株(ATCC16457)、リゾムコール・プシルス(ATCC16458)又はそれらの誘導株から配列番号3または43のアミノ酸配列をコードするDNAを単離し、該DNAに部位特異的変異(site−directed mutagenesis)を導入することで本発明に係るプロテアーゼをコードするように改変し、該改変DNAを発現させて得ることもできる。
前記DNAの発現は、前記DNAを含む発現ベクターを作製し、これを宿主細胞に導入することで行うことができる。宿主細胞は原核細胞であっても真核細胞であってもよいが、真核細胞であることが好ましい。真核細胞としては、酵母、カビ、植物細胞などが挙げられるが、酵母であることが好ましく、サッカロマイセス・セレビシエであることが特に好ましい。
また、前記DNAの発現は、無細胞系で行うこともできる。
本発明に係る改良型プロテアーゼのC/P比は対応する野生型プロテアーゼ(配列番号3または43)のC/P比はより高い。本発明に係る改良型プロテアーゼのC/P比は、野生型プロテアーゼ(配列番号3または43)のC/P比の1.2倍以上であることが好ましく、1.5倍以上であることがより好ましく、2.0倍以上であることがさらに好ましい。
ここで、C/P比とは、[凝乳活性(MCA)]/[タンパク質分解活性(PA)]を示し、PA及びMCAの測定は以下の方法で行うことができる。尚、MCAの測定は、国際標準法(ISO15174, IDF176;first edtion 2002−09−01、食品添加物自主規格に記載)が存在するが、本明細書におけるMCAの値は、以下の方法(便宜上、名糖法と呼ぶ)で算出したものである。
[1]PAの測定
0.05Mリン酸水素二ナトリウム溶液に乳製カゼイン(和光純薬工業株式会社製)を溶解させ、1mol/l 塩酸試液によりpH6.0に調製し、0.6%カゼイン基質溶
液を調製する。この基質溶液1mlに適時希釈した試験試料0.2mlを加えて37℃、10〜30分間反応後、反応停止液(0.11mol/lトリクロロ酢酸、0.21mol/l無水酢酸ナトリウム、0.33mol/l酢酸の混合溶液)を1ml加えて反応を停止させる。さらに遠心分離により得られた上澄み液0.4mlに0.55mol/l無水炭酸ナトリウム1mlを加えた後、2倍に希釈した和光純薬工業株式会社製フェノール試薬(フォーリン・チオカルトー試薬)を0.2ml加える。37℃、30分間反応させた後、660nmで吸光度(光路長:1cm)を測定する。別途、基質溶液1mlに反応停止液1mlを加えた後、試験試料0.2mlを加えて、以下同様の手順で調製したものをブランクとする。試験サンプルの吸光度からブランクにおける吸光度を差し引いた値を遊離チロシン量に換算し、PAの値を求める。PAの単位はUnit/mlで表す。この1Unitとは、上記操作法にて1分間にチロシン1μmolに相当するフェノール試薬呈色物質の増加をもたらす酵素量とする。また、チロシンとフェノール試薬呈色物質の相関式は下記のようにチロシン検量線を作成することにより求められる。
チロシン検量線
チロシン標準品(分子量181.2、和光純薬工業株式会社製)を105℃で3時間乾燥し、その0.050gを正確に量り、0.2mol/l塩酸試液に溶かし、正確に50mlとする。この液1、2、3及び4mlを正確に量り、それぞれに0.2mol/l塩酸試液を加え、正確に100mlとする。それぞれの液2mlを正確に量り、0.55mol/l炭酸ナトリウム試液5ml及び2倍希釈したフェノール試薬1mlをそれぞれ正確に加え、直ちに振り混ぜ、37±0.5℃で30分間放置した後、これらの液につき、0.2mol/l塩酸試液2mlを正確に量り、同様に操作して得た液を対照とし、波長660nmに於ける吸光度A1、A2、A3及びA4を測定する。縦軸に吸光度A1、A2、A3及びA4を、横軸にそれぞれの液2ml中のチロシン量(μmol)をとり、検量線を作成し、吸光度差1に対するチロシン量(μmol)を求める。
[2]MCAの測定法(名糖法)
0.01M塩化カルシウムに溶解した10%還元脱脂粉乳(pH6.0)、好ましくはCHR.HANSEN社製のものを基質として用い、この基質5mlに対して2〜5分間、好ましくは2分30秒でカードフラグメントを形成するような濃度に調製した試験試料溶液0.5mlを加え、35℃に保温する。時折、ガラス棒で攪拌しながらカードフラグメント形成を観察し、形成時間を測定する。同様に測定した、MCAが既知である標準品の値と比較して、単位量の試験試料が単位時間に何倍量の基質を凝固させることができるか計算することでMCAを求める。計算式は以下の通りである。
MCA(Mu/ml)=S×(TS×WS)/T×W
S:標準品の凝乳酵素の比活性(Mu/g)
S:標準品溶液の凝乳時間(秒)
S:標準品溶液1ml中の標準品の量(g)
T:試験試料溶液の凝乳時間(秒)
W:試験試料溶液1ml中の試験試料の量(ml)
尚、試験試料に含まれる総タンパク質量を定量することで、MCAを単位タンパク質量当たりで算出することもできる。後に記載する実施例13においては、MCAはタンパク質1mg当たり(Mu/mg protein)で算出されている。
上記の方法で算出したMCAの値は、国際標準規格(ISO15174, IDF176;first edtion 2002−09−01、食品添加物自主規格に記載)により算出したMCAの値と相関がある。当該相関関係は以下の式で表すことができる。
1国際標準単位(IMCU/ml)≒1名糖法単位(Mu/ml)/100
本発明に係るプロテアーゼは好ましくは、野生型プロテアーゼのMCAと同等又はそれ以上であることが望ましい。本発明に係るプロテアーゼと野生型プロテアーゼ(配列番号3または43)とを、同一の条件により調製してMCAを比較した場合、本発明に係る改良型プロテアーゼのMCAは、野生型プロテアーゼのMCAの0.8倍以上であることが好ましく、0.9倍以上であることがより好ましく、1.0倍以上であることがさらに好ましい。
本発明に係るプロテアーゼと、配列番号3のアミノ酸配列からなるプロテアーゼとを、同一の条件により調製する例としては、各プロテアーゼをコードするDNAを、それぞれ同一の遺伝子発現用ベクターに組み込み、該発現ベクターそれぞれを、同一株の細胞に同一の条件で導入し、該細胞を同一の培養条件で培養した培養液を各プロテアーゼ溶液とすることが挙げられる。該培養液は、同一の条件で濃縮して使用してもよいし、同一の条件で精製して使用してもよい。
2.本発明に係るプロテアーゼをコードするDNA
本発明のDNAは、本発明の改良型プロテアーゼをコードするDNAである。本発明のDNAとして具体的には、配列番号1の塩基番号208〜1290の塩基配列を含むDNA、又は、配列番号1の塩基番号208〜1290の塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズし得る配列を有し、かつ、上記性質を有する改良型プロテアーゼをコードするDNAが挙げられる。また、本発明のDNAとして具体的には、配列番号42の塩基配列を含むDNA、又は、配列番号42の塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズし得る配列を有し、かつ、上記性質を有する改良型プロテアーゼをコードするDNAが挙げられる。ストリンジェントな条件とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。この条件は、塩基配列やその長さによって異なるが、一例を示せば、相同性が高いDNA同士、例えば75%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の相同性を有するDNA同士がハイブリダイズし、それより相同性が低いDNA同士がハイブリダイズしない条件、あるいは通常のサザンハイブリダイゼーションの洗いの条件である60℃、1×SSC、0.1%SDS、好ましくは、0.1×SSC、0.1%SDSに相当する塩濃度でハイブリダイズする条件が挙げられる。
本発明に係るプロテアーゼをコードするDNAは、前記変異プロテアーゼを有する突然変異株から通常の遺伝子クローニング方法により単離することができる。例えば、配列番号1または42の塩基配列をもとに合成オリゴヌクレオチドプローブを作製し、ハイブリダイゼーションにより前記突然変異株の遺伝子ライブラリーから選択することで単離することができる。
また、既に知られている野生型のプロテアーゼ遺伝子のゲノムDNAやcDNAの塩基配列に基づきプライマーを設計し、該プライマーを用いて、前記突然変異体のゲノムDNAやcDNAライブラリーから増幅することで、本発明に係るプロテアーゼをコードするDNAを得ることもできる。
野生型DNAに部位特異的変異を導入することによって得られるDNAも本発明のプロテアーゼをコードするDNAに含まれる。
例えば、本発明の改良型プロテアーゼをコードするDNAは、リゾムコール・ミーハイの野生株(ATCC16457)又はその誘導株から、配列番号3のアミノ酸配列をコードするDNAを単離し、これに部位特異的変異を導入することで容易に得ることができる。本発明の改良型プロテアーゼをコードするDNAは、リゾムコール・プシルスの野生株(ATCC16458)又はその誘導株から、配列番号42のアミノ酸配列をコードする
DNAを単離し、これに部位特異的変異を導入することで容易に得ることもできる。
部位特異的変異の導入は当業者に周知の方法で行うことができる。例えば、両末端に制限酵素切断末端を持ち、変異点の両側を含む配列を合成し、未変異遺伝子の相当する部分と入れ換える事により、変異を導入することができる(カセット変異法)。
また、部位特異的変異導入法としては、例えばGapped duolex法、kunkel法が知られており、kunkel法は、未変異の遺伝子を1本鎖ファージにクローン化しておき、変異点にミスマッチを含む合成DNAをプライマーとしてこれの相補鎖を合成し、得られた変異を含む相補鎖だけを鋳型として、新しいファージ及び複製型DNAを作るという原理に則っている。部位特異的変異は市販のキットを使用して行うことができる。
3.本発明に係る発現ベクター
本発明に係る発現ベクターは、本発明に係る改良型プロテアーゼを発現させるために用いられる。本発明に係る改良型プロテアーゼをコードするDNAの上流に、該DNAの発現を制御するプロモーター配列を連結した構造にすることができる。さらに、該遺伝子の下流にターミネーターを連結させることもできる。
前記プロモーターとしては、宿主が大腸菌であれば、trp、lac、taq、λPL等を使用することができる。宿主が酵母であればGAL7、ADH、TPI、PHO5等のプロモーターが好ましく、これらの中では、GAL7(Nogi Y. et al. Nucl. Acids Res. 11,8555-8568 (1983)) が強力に遺伝子発現を誘導するので特に好ましい。
ターミネーターとしては、TPI、GAPDH、GAL10等を挙げることができる。上記プロモーター、本発明に係るプロテアーゼをコードするDNA、上記ターミネーターを、5’側上流から3’側下流に向けてこの順序で連結したものをベクターに挿入することによって、本発明に係る発現ベクターを作製することができる。
酵母中で複製可能なベクターとしては、いわゆるYIp、YRp、YEp、YCpのいずれのタイプのプラスミドも使用することができるが、コピー数及び安定性の面からYEpタイプが好ましい。これらのプラスミドは一般に不要な配列を含んでいるので、プラスミドの安定性を考慮し、あるいはプラスミドの改変を容易にするために、必要でない配列を削除して用いることが好ましい。
本発明に係る発現ベクターには、組換体を選抜するための選抜マーカー遺伝子や導入された遺伝子の発現を確認するためのレポーター遺伝子を挿入することもできる。選抜マーカー遺伝子としては、例えばハイグロマイシン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子等が挙げられ、レポーター遺伝子としては、例えばβ−グルクロニダーゼ(GUS)遺伝子、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子や、ルシフェラーゼ(LUC)遺伝子、GFP遺伝子等が挙げられる。また、本発明に係るプロテアーゼを分泌型として発現させたり、発現させたプロテアーゼの精製を容易にするために、本発明に係る発現ベクターには付加配列が含まれていてもよい。この場合には、本発明に係るプロテアーゼは、付加配列にコードされるタンパク質又はペプチドとの融合タンパク質として発現される。付加配列としては、シグナルペプチドやプロペプチドをコードする塩基配列や、His-tagやGST-tagをコードする塩基配列等が挙げられる。
4.本発明に係る形質転換細胞
本発明に係る形質転換細胞は、本発明に係る発現ベクターが導入された細胞であって、本発明に係るプロテアーゼを生産し得る細胞である。細胞は、原核細胞であっても真核細
胞であってもよいが、真核細胞であることが好ましい。
真核細胞としては、酵母、カビ、植物細胞などが挙げられるが、酵母であることが好ましく、サッカロマイセス・セレビシエであることが特に好ましい。
サッカロマイセス・セレビシエとしては、SHY3、D13−1A、MC16等の株を挙げることができる。
発現ベクターの宿主細胞への導入方法は宿主細胞の種類によって適宜選択することができ、このような方法は当業者に周知である。サッカロマイセス・セレビシエの形質転換体の場合は、例えば以下の方法で得ることができる。
YPD培地(1%イースト・エキストラクト(yeast extract)(ディフコ社製)、2%バクトペプトン(bactopeptone)(ディフコ社製)、2%グルコース)で1晩培養したサッカロマイセス・セレビシエを、新鮮なYPD培地に10%接種し、30℃で4時間培養する。培養液1.5mlを卓上遠心機で軽く遠心して集菌し、0.2M LiSCN(関東化学株式会社製)でリンスしたのち、0.02mlの1M LiSCNに懸濁する。
次いで、発現ベクターを含む溶液0.01ml(約1〜10μg)と0.03mlの70% PEG4000を加えてよく混合し、30℃で1時間保温する。これに0.14mlの滅菌水を加え、希釈した後2枚のSDahプレート(0.67% バクト・イースト・ナイトロジェンベースw/oアミノ酸(Bacto−yeast nitrogen base w/o amino acid)、2% グルコース、0.002%アデニン硫酸塩(adenine sulfate)、0.002%ヒスチジン塩酸塩(L−histidine−HCl)、2%寒天)にプレーティングする。30℃で2〜3日インキュベートすることで、形質転換体を得ることができる。
5.本発明に係る凝乳活性を有する改良型プロテアーゼの生産方法
本発明に係る形質転換細胞を培養することで、本発明に係る改良型プロテアーゼを生産することができ、本発明に係る改良型プロテアーゼを分泌のためのシグナルペプチドとの融合タンパク質として発現させることで、本発明に係るプロテアーゼを培養液中に蓄積させることができる。培養に際しては、誘導可能なプロモーターを使用した場合には、誘導を行うことが好ましい。形質転換細胞の培養方法は、細胞の種類によって異なるが、そのような方法は当業者によく知られた方法を用いることができる。
以下に、サッカロマイセス・セレビシエの形質転換体の培養方法の一例を説明する。
形質転換体を500ml容坂口フラスコに入れた50mlのYPD培地で30℃、2日間振盪培養し、菌体を増殖させる。培養液を1000×gで5分間遠心して集菌し、100mlのYPGal培地(1%イースト・エキストラクト,2%バクトペプトン,4%ガラクトース(和光純薬工業株式会社製))に再び懸濁し、500ml容坂口フラスコで30℃で3日間振盪培養する。
培養液中に生産された凝乳活性を有するプロテアーゼは、培養上清中に存在している状態でそのまま使用することもできるし、培養上清を濃縮して使用することもできる。培養液中に生産された凝乳活性を有するプロテアーゼは精製又は部分精製して使用してもよく、一般的なタンパク質の精製方法を用いて精製又は部分精製することができる。例えば、イオン交換、ゲル濾過等のクロマトグラフィー、硫安塩析、有機溶媒沈澱等の手法を用いることができる。
精製された酵素は、凍結乾燥、限外濾過膜、有機溶媒沈澱等により濃縮することもできる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。なお全体的な遺伝子操作は、Molecular Cloning(Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989))に記載されているように行うことができる。
[実施例1]
C/P比が向上したプロテアーゼを生産するリゾムコール・ミーハイ突然変異株の取得
プロテアーゼを生産するリゾムコール・ミーハイ元株(CBS182−67(ATCC16457の誘導株))に変異処理を施し、C/P比の向上したプロテアーゼを分泌する変異株を取得した。以下、詳細に説明する。
(1)変異処理リゾムコール・ミーハイ元株(親株)をマルトプレート(2%マルト・エキストラクト,2%グルコース,0.1%ペプトン,2%寒天)上に生育させ、37℃で3日から1週間保温することにより胞子を形成させた。この胞子をガラス製スプレダーを用いて滅菌水に懸濁させた。
この胞子懸濁液に、終濃度200μg/mlのニトロソグアニジン(N-methyl-N'-nitro- N-nitrosoguanidine,シグマ(SIGMA CHEMICAL CO.)社製)を加え、死滅率90%となるように室温で5〜20分処理した。これを、マルトプレートに適量蒔き、37℃で保温した。翌日生じた微小な菌糸をひと塊づつ、8mlのYPD培地(1%イースト・エキストラクト,2%ペプトン,2%グルコース)に植菌し、37℃で4日間振とう培養した培養上清をタンパク質分解活性(PA)及び凝乳活性(MCA)測定用の試料とした。また菌体は−80℃で保存した。
(2)変異株の検索
先に記載した方法により、MCA及びPAを測定した結果、元株と比べてPAが大きく下回りC/P比(MCA/PA)が4.6倍と大幅に増加した変異株が取得された。
[実施例2]
突然変異株からのプロテアーゼ遺伝子の単離
(1)変異株及び元株の染色体DNAの取得
実施例1で得た変異株と元株をマルトプレート上に生育させ、37℃で3日から1週間保温することにより胞子を形成させた。この胞子をガラス製スプレダーを用いて滅菌水に懸濁させた。この胞子懸濁液を200mlのYPD液体培地を入れた500ml容坂口フラスコに約108個となるように植えて、37℃で2日間培養した。菌体が0.5〜2mm程度の大きさのペレットを形成したところで、培養液を濾過し余分な水分を除いて、湿重量約5gの菌体を得た。
この菌体を液体窒素で凍結させた後冷やした乳鉢に移し、3gの海砂(850〜1400μm)を加えて液体窒素冷却下で乳棒を用いて細かく破砕し粉末化した。これを68℃に保温した15mlの0.05M EDTA pH8.5、0.2% SDS溶液に懸濁し、68℃で15分間保温した。その後、室温まで放置冷却し、遠心分離で白濁した上清を回収した。回収液に1/10倍量の3M酢酸ナトリウムを添加後穏やかに混合し、遠心分離で上清を回収した。次に回収した上清に15mlのイソプロパノールを添加し穏やかに混合するとゲノムDNAと蛋白質の塊が出現した。生じた析出物を70%エタノールリンスした後、減圧乾燥させて400μlのTEに溶解し、10μlのRNase溶液(10mg/ml)を添加、37℃で1時間保温した。RNase処理終了後、フェノール・クロロホルム処理、クロロホルム処理、エタノール沈殿を行いゲノムDNAを取得した。
(2)変異株及び元株染色体DNAからのプロテアーゼ遺伝子の単離
上記で得た変異株及び元株由来の染色体DNAを鋳型にしてPCR法によってプロテアーゼ遺伝子の単離を行った。遺伝子バンクに登録されているリゾムコール・ミーハイのプロテアーゼ(DDBJアクセス番号:E01264)の配列をもとに、配列番号5と配列番号6で示されるプライマーを作製した。PCR条件は(a)94℃で2分、(b)94℃で30秒、55℃で30秒、72℃で3分、を28サイクル、(c)72℃で5分であり、ポリメラーゼとしてはTaKaRa Ex Taq(タカラバイオ社製)を、サーマルサイクラーはTaKaRa PCR Thermal Cycler Dice Gradient(タカラバイオ社製)を用いた。PCRで得たDNA断片の塩基配列決定を行った結果、元株の染色体DNAを鋳型として増幅したDNAがコードするアミノ酸配列は配列番号3のアミノ酸配列を含み、変異株の染色体DNAを鋳型として増幅したDNAがコードするアミノ酸配列は、配列番号3のアミノ酸配列において、19位のアミノ酸がVal、266位のアミノ酸がGluに置換されている配列を含むことが判った。
以下、リゾムコール・ミーハイの元株由来のプロテアーゼを野生型RMMPと呼び、改良型プロテアーゼを「改良型RMMP」、改良型プロテアーゼをコードする遺伝子を「改良型RMMP遺伝子」と呼ぶ。
[実施例3]
出芽酵母(サッカロマイセス・セレビシエ)MC16を宿主として異種蛋白を発現するためのプラスミドベクターJS4の作製
該プラスミドベクターを構築するための出発材料としてJS5(特許第3012377号公報[0109]に記載)を用いた。
初めに、JS5を鋳型として、配列番号7及び8で示したプライマーDNAを用いてPCRを行い、GAL7プロモーター領域を含む鎖長0.55kbpのPCR産物を得た。PCRの条件は(1)94℃で2分(2)98℃で10秒、52℃で30秒、72℃で1分、を30サイクル、(3)72℃で5分であり、ポリメラーゼはTaKaRa Ex Taq(タカラバイオ社製)を、サーマルサイクラーはTaKaRa PCR Thermal Cycler Dice Gradient(タカラバイオ社製)を用いた。
次に、得られたPCR産物を制限酵素EcoRI及びBamHIで消化し、同じくEcoRI及びBamHIで消化したpUC18へ挿入した。これを大腸菌(E.coli)DH5αへ形質転換し、100μg/mlのアンピシリン、0.1mMのIPTG並びに0.04mg/mlのX−GALを含むLB寒天培地上で37℃にて16時間静置培養した。生育した白色のコロニーを100μg/mlのアンピシリンを含むLB液体培地で37℃にて14〜16時間振とう培養し、遠心して回収した形質転換体よりQIAprep
Miniprep kit(キアゲン社、以降のプラスミド抽出は全て本キットを用いて行った)を用いてプラスミドを抽出後、その挿入断片についてシーケンシングを行い望まない変異が導入されていないことを確認した。
続いて、その挿入断片を含むプラスミドをEcoRI及びBamHIで消化して0.55kbpのDNA断片を取得し、このDNA断片と、JS5をBamHIで消化しEcoRIで部分消化して得た約6kbpのDNA断片を連結して大腸菌DH5αに形質転換後、100μg/mlのアンピシリンを含むLB寒天培地上で37℃にて16時間培養した。生育したコロニーを同液体培地にて37℃で14〜16時間振とう培養後、遠心して回収した形質転換体についてプラスミドを抽出した。このプラスミドを制限酵素EcoRI、BamHI並びにPstIで消化した後にアガロース電気泳動分析にて泳動パターンを確認した。こうして発現ベクターJS4を作製した。
尚、該プラスミドベクターの構築のための出発材料として、JS5の他、例えば特許第3012377号公報[0112]に記載のJS52(受託番号FERM BP−3898)を用いてもJS4を得ることが出来る。
[実施例4]
野生型RMMP遺伝子及び変異型RMMP遺伝子を発現させるためのプラスミドベクターの作製
実施例2で得られた、野生型RMMP及びGlu19Val/Gln266Gluの変異を有する変異型RMMPをコードするDNAを含む塩基配列の両末端にBamHI部位が付加されるよう設計したプライマーDNA(配列番号9及び10)を用いてPCRを行い、そのPCR産物についてBamHIで消化後、同じくBamHIで消化し脱リン酸化したJS4に挿入し、大腸菌DH5αへ形質転換した。
GAL7プロモーターにアニールするフォワードプライマー及びRMMP遺伝子3’末端にアニールするリバースプライマー(配列番号11及10)を用いてコロニーダイレクトPCRを行い当該挿入遺伝子の方向が正しい向きであることを確認できたプラスミドベクターを保持する大腸菌の形質転換体を先述の様にして液体培養しプラスミドを抽出後、シーケンシングを行い、望まないエラーが導入されていないことを確認することで、野生型RMMP遺伝子及び改良型RMMP遺伝子を発現するためのプラスミドベクターを作製した。
[実施例5]
部位特異的変異を導入したRMMP遺伝子の発現ベクターの作製(I)
実施例4に記載の方法で得た、両末端にBamHI部位を付加したプレプロ配列を含む野生型RMMP遺伝子のPCR産物をBamHI消化し、同じくBamHI消化して脱リン酸化したpUC18へ挿入して大腸菌DH5αへ形質転換後、得られた形質転換体より先述のようにしてプラスミドを抽出し、塩基配列を確認することでpRMMP−wtを作製した。
次に、pRMMP−wtを鋳型として、配列番号12及び13、配列番号14及び15、配列番号16及び17、配列番号18及び19、配列番号20及び21、配列番号22及び23、配列番号24及び25で示したプライマーDNA、並びにPrimeSTAR
Mutagenesis Basal Kit(タカラバイオ社、以降はキットと略す)を用いて、PCR法により、配列番号3における19位のグルタミン酸又は266位のグルタミンの一ヶ所について別のアミノ酸に置換するよう変異を導入した。変異導入用プライマーの設計並びにPCR反応条件は、本キット付属のマニュアルを参考にして行った。以降の変異導入実験も本マニュアルに準拠して行った。
得られたPCR産物を大腸菌DH5αへ形質転換し、100μg/mlのアンピシリンを含むLB寒天培地に撒き37℃で16時間静置培養して形質転換体を取得した。この形質転換体より、先述と同じ方法でプラスミドを抽出してシーケンシングを行い、望まない変異が導入されていないことを確認した。
このような手順により、Glu19Val、Glu19Ala、Glu19Ile、Glu19Leu、Glu19Phe、Gln266Glu、Gln266Aspのアミノ酸置換を有する改良型RMMPをコードする遺伝子を作製した。これらの改良型RMMP遺伝子を含むプラスミドベクターを便宜上、それぞれpRMMP−E19V、pRMMP−E19A,pRMMP−E19I,pRMMP−E19L,pRMMP−E19F,pRMMP−Q266E,pRMMP−Q266Dとした。
さらに、pRMMP−Q266E又はpRMMP−Q266Dを鋳型にして、配列番号12及び13、配列番号14及び15、配列番号16及び17、配列番号18及び19に示したプライマーDNA、並びに上述のキットを用いてPCRを行って得たPCR産物を大腸菌DH5αへ形質転換後、得られた形質転換体より先述と同様にしてプラスミドを抽
出してシーケンシングを行うことにより、Glu19Val/Gln266Asp、Glu19Ala/Gln266Glu、Glu19Ala/Gln266Asp、Glu19Ile/Gln266Glu、Glu19Ile/Gln266Asp、Glu19Leu/Gln266Gluのアミノ酸置換を有する改良型RMMPをコードする遺伝子を作製した。これらの改良型RMMP遺伝子を含むプラスミドベクターを便宜上、pRMMP−E19VQ266D,pRMMP−E19AQ266E,pRMMP−E19AQ266D,pRMMP−E19IQ266E,pRMMP−E19IQ266D,pRMMP−E19LQ266Eとした。
このようにして得たプラスミドベクターをBamHI消化して得られる上記フラグメントを、先に述べた方法でJS4へ挿入することにより、上記の各改良型RMMP遺伝子の発現ベクターを作製した。
[実施例6]
部位特異的変異を導入した改良型RMMP遺伝子の発現ベクターの作製(II)
pRMMP−wtを鋳型にして、配列番号26及び27、配列番号28及び29、配列番号30及び31、配列番号32及び33、配列番号34及び35、配列番号36及び37に示したプライマーDNA、並びに上述のキットを用いてPCRを行って得たPCR産物を大腸菌DH5αへ形質転換し、得られた形質転換体より先述と同様にしてプラスミドを抽出してシーケンシングを行うことにより、Gln265Glu,Gln265Asp,Gln265Glu/Gln266Glu,Gln265Glu/Gln266Asp,Gln265Asp/Gln266Glu,Gln265Asp/Gln266Aspのアミノ酸置換を有する改良型RMMPをコードする遺伝子を作製した。これらの改良型RMMP遺伝子を含むプラスミドベクターを便宜上、pRMMP−Q265E,pRMMP−Q265D,pRMMP−Q265EQ266E,pRMMP−Q265EQ266D,pRMMP−Q265DQ266E,pRMMP−Q265DQ266Dとした。
このようにして得た、上記各改良型RMMP遺伝子を含むプラスミドベクターをBamHI消化して得られる上記改良型RMMP遺伝子を、先に述べた方法によりJS4へ挿入することで、上記の改良型RMMP遺伝子の発現ベクターを作製した。
[実施例7]
部位特異的変異を導入した改良型RMMP遺伝子の発現ベクターの作製(III)
pRMMP−E19V、pRMMP−E19A又はpRMMP−E19Iを鋳型にして、配列番号30及び31、配列番号32及び33、配列番号34及び35、配列番号36及び37に示したプライマーDNA、並びに上述のキットを用いてPCRを行って得たPCR産物を大腸菌DH5αへ形質転換し、得られた形質転換体より先述と同様にしてプラスミドを抽出してシーケンシングを行うことにより、Glu19Val/Gln265Glu/Gln266Glu,Glu19Val/Gln265Glu/Gln266Asp,Glu19Val/Gln265Asp/Gln266Glu,Glu19Val/Gln265Asp/Gln266Asp,Glu19Ala/Gln265Glu/Gln266Glu,Glu19Ala/Gln265Glu/Gln266Asp,Glu19Ala/Gln265Asp/Gln266Glu,Glu19Ala/Gln265Asp/Gln266Asp,Glu19Ile/Gln265Glu/Gln266Glu,Glu19Ile/Gln265Glu/Gln266Asp,Glu19Ile/Gln265Asp/Gln266Glu,Glu19Ile/Gln265Asp/Gln266Aspのアミノ酸置換を有する改良型RMMPをコードする遺伝子を作製した。これらの改良型RMMP遺伝子を含むプラスミドベクターを便宜上、pRMMP−E19VQ265EQ266E,pRMMP−E19VQ265EQ266D,pRMMP−E19VQ265DQ266E,pRMMP−E19VQ265DQ266D,p
RMMP−E19AQ265EQ266E,pRMMP−E19AQ265EQ266D,pRMMP−E19AQ265DQ266E,pRMMP−E19AQ265DQ266D,pRMMP−E19IQ265EQ266E,pRMMP−E19IQ265EQ266D,pRMMP−E19IQ265DQ266E,pRMMP−E19IQ265DQ266Dとした。
このようにして得た、上記改良型RMMP遺伝子を含むプラスミドベクターをBamHI消化して得られる上記改良型RMMP遺伝子について、先に述べた方法でJS4へ挿入することで、上記の改良型RMMP遺伝子の発現ベクターを作製した。
[実施例8]
野生型並びに変異型RMMP遺伝子を含む発現ベクターによる出芽酵母MC16の形質転換
上述のようにして作製した発現ベクターを、GietzとSchiestl(1995)の方法にて出芽酵母MC16株(MATα、leu2,his4,ade2)へ形質転換し、SDahプレートへ撒いて30℃で3日間、静置培養することにより形質転換体を得た。
[実施例9]
野生型並びに変異型RMMP遺伝子の分泌発現
上に記述した方法で得た形質転換体を、予め500mlのバッフル付き三角フラスコで調製した100mlのYPD液体培地にて30℃24時間200rpmで振とう培養を行った後、遠心して得た菌体を2倍量のYPGal液体培地に再懸濁し、滅菌済み同フラスコに移してさらに72〜96時間同様にして振とう培養を行い分泌発現させた。培養終了後、培養液を遠心することにより、当該RMMPを含む培養上清を得た。
[実施例10]
MCA及びPAの測定、ならびにC/P比の評価
上記のようにして得られた当該RMMPを含む培養上清について、MCA及びPAを測定し、C/P比を算出した。結果を表1に示す。
Figure 2012521188
リゾムコール・ミーハイ(変異株)に由来するGlu19Val/Gln266Gluの変異を有するRMMPのC/P比は野生型の3.8倍であった。
19位のアミノ酸残基のみ置換したところ、Glu19Val、Glu19Ala及びGlu19Ileの変異を有するRMMPのC/P比が高かった。尚、リゾムコール・プシルスにおいて、Glu19Alaの変異が既に知られている(J. Biochem. 129, 791-7
94, 2001)。
野生型のRMMPにおいては、配列番号3に示すように265位と266位のアミノ酸は共にグルタミンであるが、265位のアミノ酸のみ酸性アミノ酸に置換された、Gln265Glu及びGln265Aspの変異を有するRMMPのC/P比(表1中のmutant14及び15)が共に、野生型のそれと比較して高いことが確認でき、266位のアミノ酸のみ酸性アミノ酸に置換された、Gln266Glu及びGln266Aspの変異を有するRMMPのC/P比(表1中のmutant6及び7)についても同様に、野生型のそれと比較して高かった。
265位又は266位のアミノ酸を置換することでC/P比が高まることが本発明により初めて見出されたものである。
また、266位のアミノ酸の酸性アミノ酸への置換と、19位のアミノ酸の置換とを組み合わせた場合のC/P比(表1中のmutant8〜13)は、266位のアミノ酸を単独で置換した場合よりも高くなることも確認できた。
さらに、265位及び266位のアミノ酸残基が同時に酸性アミノ酸に置換された、Gln265Glu/Gln266Glu、Gln265Glu/Gln266Asp、Gln265Asp/Gln266Glu及びGln265Asp/Gln266Aspの変異を有するRMMPのC/P比(表1中のmutant16〜19)は、265位のアミノ酸のみ又は266位のアミノ酸のみが酸性アミノ酸に置換された変異を有するRMMPのそれよりも顕著に高く、265位及び266位のいずれか一方のみのアミノ酸が酸性アミノ酸に置換されたRMMPよりも顕著に高いことが認められた。
さらに、265位、266位及び19位のアミノ酸残基が同時に置換された、Glu19Val/Gln265Glu/Gln266Glu、Glu19Val/Gln265Glu/Gln266Asp、Glu19Val/Gln265Asp/Gln266Glu及びGlu19Val/Gln265Asp/Gln266Aspの変異を有するRMMPのC/P比(表1中のmutant20〜23)は、C/P比が野生型のRMMPと比べて5倍前後まで顕著に高まっており、極めて優れた凝乳酵素であることが確認できた。
[実施例11]
部位特異的変異を導入した改良型RMMP遺伝子の発現ベクターの作製(IV)
続いて、配列番号3のアミノ酸配列において、81位のアミノ酸であるスレオニンがグルタミン又はアスパラギン酸に置換された変異を有するRMMP遺伝子の発現ベクターを作製した。
pRMMP−wt又はpRMMP−Q265EQ266Eを鋳型にして、配列番号38及び39に示したプライマーDNA並びに上述のキットを用いPCRを行って得たPCR産物を大腸菌DH5αへ形質転換し、得られた形質転換体より先述と同様にしてプラスミドを抽出してシーケンシングを行うことにより,Thr81Gln、Thr81Gln/Gln265Glu/Gln266Gluのアミノ酸置換を有する改良型RMMPをコードする遺伝子を作製した。これらの改良型RMMP遺伝子を含むプラスミドベクターを便宜上、pRMMP−T81Q、pRMMP−T81QQ265EQ266Eとした。
続いて、pRMMP−Q265EQ266Dを鋳型にして、配列番号40及び41に示したプライマーDNA並びに上述のキットを用いPCRを行って得たPCR産物を大腸菌DH5αへ形質転換し、得られた形質転換体より先述と同様にしてプラスミドを抽出してシーケンシングを行うことにより,Thr81Asp/Gln265Glu/Gln26
6Aspのアミノ酸置換を有する改良型RMMPをコードする遺伝子を作製した。この改良型RMMP遺伝子を含むプラスミドベクターを便宜上、pRMMP−T81DQ265EQ266Dとした。
さらに、pRMMP−E19VQ265EQ266E,pRMMP−E19VQ265EQ266D,pRMMP−E19VQ265DQ266E,pRMMP−E19VQ265DQ266D,pRMMP−E19AQ265EQ266E,pRMMP−E19AQ265EQ266D,pRMMP−E19IQ265EQ266E,pRMMP−E19IQ265EQ266D,pRMMP−E19IQ265DQ266E,pRMMP−E19IQ265DQ266Dを鋳型にして、配列番号38及び39に示したプライマーDNA並びに上述のキットを用いPCRを行って得たPCR産物を大腸菌DH5αへ形質転換し、得られた形質転換体より先述と同様にしてプラスミドを抽出してシーケンシングを行うことにより,Glu19Val/Thr81Gln/Gln265Glu/Gln266Glu,Glu19Val/Thr81Gln/Gln265Glu/Gln266Asp,Glu19Val/Thr81Gln/Gln265Asp/Gln266Glu,Glu19Val/Thr81Gln/Gln265Asp/Gln266Asp,Glu19Ala/Thr81Gln/Gln265Glu/Gln266Glu,Glu19Ala/Thr81Gln/Gln265Glu/Gln266Asp,Glu19Ile/Thr81Gln/Gln265Glu/Gln266Glu,Glu19Ile/Thr81Gln/Gln265Glu/Gln266Asp,Glu19Ile/Thr81Gln/Gln265Asp/Gln266Glu,Glu19Ile/Thr81Gln/Gln265Asp/Gln266Aspのアミノ酸置換を有する改良型RMMPをコードする遺伝子を作製した。
これらの改良型RMMP遺伝子を含むプラスミドベクターを便宜上、pRMMP−E19VT81QQ265EQ266E,pRMMP−E19VT81QQ265EQ266D,pRMMP−E19VT81QQ265DQ266E,pRMMP−E19VT81QQ265DQ266D,pRMMP−E19AT81QQ265EQ266E,pRMMP−E19AT81QQ265EQ266D,pRMMP−E19IT81QQ265EQ266E,pRMMP−E19IT81QQ265EQ266D,pRMMP−E19IT81QQ265DQ266E,pRMMP−E19IT81QQ265DQ266Dとした。
このようにして得た、上記改良型RMMP遺伝子を含むプラスミドベクターをBamHI消化して得られる上記改良型RMMP遺伝子について、先に述べた方法でJS4へ挿入することで、上記の改良型RMMP遺伝子の発現ベクターを作製した。
[実施例12]
実施例8〜10に記載した方法に従って、実施例11で作製した発現ベクターで出芽酵母MC16を形質転換し、該形質転換体を液体培養して改良型RMMPを含む培養上清を取得した。この培養上清を用いてC/P比の評価を行った結果を表2に示す。
Figure 2012521188
表2に示すように、81位のアミノ酸であるスレオニンのグルタミン又はアスパラギン酸への置換と、265位及び266位のアミノ酸の酸性アミノ酸への置換とを組み合わせた変異を有するRMMPが、野生型のRMMPと比べて高いC/P比(表1中のmutant33〜34)を示すことが確認でき、特に、Thr81Asp/Gln265Glu/Gln266Aspの変異を有するRMMPにおいては、C/P比が野生型のRMMPに比べて4.4倍も上昇していた。
さらに19位のアミノ酸残基の置換と組み合わせた場合にも、野生型のRMMPと比べて高いC/P比(表1中のmutant35〜44)を示すことが確認でき、特に、Glu19Val/Thr81Gln/Gln265Asp/Gln266Gluの変異を有するRMMPにおいては、C/P比が野生型のRMMPに比べて4.8倍も上昇していることが確認できた。
以上のように、表1及び表2に示された結果は、配列番号3のアミノ酸配列における265位及び/又は266位のアミノ酸残基が酸性アミノ酸に置換されると、C/P比が、野生型のRMMPと比べて高くなることを示しており、さらに、19位及び/又は81位のアミノ酸残基の置換を組み合わせることによって、C/P比がさらに向上することを示している。
[実施例13]
野生型及び変異型RMMPの精製、ならびに精製標品の評価
野生型RMMP遺伝子、及び、Glu19Val/Gln266Glu,Glu19Val,Glu19Ala,Gln266Glu,Gln266Asp,Glu19Ala/Gln266Glu,Gln265Glu,Gln265Asp,Gln265Glu/Gln266Glu,Gln265Glu/Gln266Asp,Gln265Asp/Gln266Glu,Gln265Asp/Gln266Asp,Glu19Val/Gln265Glu/Gln266Asp並びにGlu19Val/Gln265Asp/Gln266Aspのアミノ酸置換を有する変異型RMMP遺伝子を含む発現ベクター
を保持する出芽酵母MC16を、先に述べた方法により培養し、該RMMPを分泌発現させた。遠心して得られた培養上清について、50mM 酢酸ナトリウムpH5.5の緩衝液で平衡化したHiTrap Q HP(GE ヘルスケア社製)を充填したカラムを通し、RMMPタンパクを吸着させた。同緩衝液でカラムを洗浄した後、0.3M NaClの緩衝液にて溶出した。RMMPを含む画分はスキムプレート(1%スキムミルク(ディフコ社製)、100mM 酢酸緩衝液 pH5.2、1%寒天)に2μlを乗せ、37℃で10分間インキュベートし、タービットハローの出現で検出した。
得られた活性画分を限外濾過膜にて濃縮後、Super SW3000(東ソー株式会社製)ゲル濾過カラムを用いた高速液体クロマトグラフィーにより精製を行った。活性画分をSDS−PAGEで解析したところ、単一のバンドとなった。
このようにして得られた精製RMMPについて、MCAを測定した結果を表3に示す。尚、タンパク質の定量はBCA Protein Assay Reagent(Pierce製)で行った。
Figure 2012521188
この結果から、19位のグルタミン酸の置換のみでは、MCAが低下するが、265位又は266位のグルタミンの置換では、MCAが上昇した。19位及び266位の2箇所の置換、並びに19位、265位及び266位の3箇所の置換でもMCAが増加した。
[実施例14]
乳清乾燥物重量測定試験
チーズの収量は、凝乳酵素を商業的に用いる際に重要な性質の一つである。ミルクを凝固させる際に流出される乳清中に含まれる乾燥物重量はチーズの収量を比較する上で有効で
あり、乾燥重量が少ないということは、チーズの収率が高いことを示している。
そこで、酵母にて発現させた野生型RMMPとE19V/Q266E RMMPを用いた乳性乾燥物重量測定試験を挙げる。
野生型RMMP遺伝子及びGlu19Val/Gln266Gluのアミノ酸置換を有する変異型RMMP遺伝子を含む発現ベクターを保持する出芽酵母MC16を、先に述べた方法により培養し、該RMMPを分泌発現させた。遠心して得られた培養上清について、限外濾過膜にて濃縮し、凝乳酵素として用いた。
(1)凝乳操作
市販の低温殺菌無調製牛乳(タカナシ乳業)500gをビーカーに入れ、32℃に保温する。保温した牛乳が32℃に達した所で、D‐(+)グルコノ‐1,5‐ラクトン(D‐グルコン酸δ‐ラクトン、和光純薬製)を0.4g添加、攪拌後、塩化カルシウム(和光純薬製)を終濃度1mMになるよう徐々に添加し、攪拌する。試薬を添加後、凝乳酵素を2,000Mu添加し、1分間攪拌し、保温する。凝乳酵素を添加してから30分後をRenneting timeとし、カードを1〜1.5cm角に切断し、10分間放置する。放置後、カードを緩やかに崩す。時折カードを穏やかに攪拌しながら、20分間保温する。保温後、ビーカーを37℃のインキュベーターへ移し、内部の温度を37℃まで上昇させる(1分間に0.5℃上昇)。カードが37℃に達した所で、時折緩やかに攪拌しながら更に30分間放置する。放置後、ガーゼにてカードと乳清を分離させる。回収したカードはガーゼに包み、チーズ作製用モールドに入れ、加圧(5 MPa、90分間)し、更に乳清を流出させ、回収する。回収した全ての乳清を混合し、定性濾紙No.1(ADVANTEC)により濾過したものを全乳清とする。
(2)乳性乾燥物重量測定
予めビーカーを乾熱機にて105℃で乾燥させておく。乾熱機から取り出したビーカーをデシケーターに入れ、30分以上経過した後に、重量を測定する。そのビーカーに上記で得た乳性約25gを入れ、乾熱機にて105℃, 12〜15時間以上乾燥させる。乾燥後、ビーカーをデシケーターに入れ、30分以上経過した後に、重量を測定する。予め測定したビーカー重量を差し引いた値を乾燥重量とする。尚、全て2連で行った。
このようにして得られた15ロットの乳性中の乾燥物含有量、及び全乾燥物重量を表4に示した。
Figure 2012521188
野生型RMMP、Glu19Val/Gln266GluRMMPの全乾燥重量はそれぞれ28.4810g、28.0511gであった。スチューデントのt検定(両側検定)を用いて有意差の有無を確認したところ、両者には有意差が認められた(p<0.01)。つまり、Glu19Val/Gln266Glu RMMPは野生型RMMPよりも高いチーズの収量を得ることができ、野生型MRSよりも約1.51%多くチーズを生産できる。これは100トンのミルクを用いてチーズを生産する際の85.97kgに相当する。

Claims (10)

  1. 配列番号3に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列を含み、以下の(A)及び(B)から選択される少なくとも1つの変異を有し、凝乳活性を有する改良型プロテアーゼ:
    (A)配列番号3の265位のグルタミンに相当するグルタミンの酸性アミノ酸への置換、及び
    (B)配列番号3の266位のグルタミンの酸性アミノ酸への置換。
  2. 以下の(A)および(B)からなる群より選択される請求項1に記載の改良型プロテアーゼ:
    (A)配列番号3または43のアミノ酸配列において、265位のグルタミン及び/又は266位のグルタミンが酸性アミノ酸に置換されたアミノ酸配列を含むタンパク質、
    (B)配列番号3または43のアミノ酸配列において、265位のグルタミン及び/又は266位のグルタミンが酸性アミノ酸に置換され、かつ、265位及び266位以外の位置において10個以下のアミノ酸が置換、欠失、挿入又は付加されたアミノ酸配列を含むタンパク質。
  3. 前記酸性アミノ酸が、グルタミン酸又はアスパラギン酸である、請求項1または2に記載の改良型プロテアーゼ。
  4. 配列番号3のアミノ酸配列において、19位のアミノ酸が、バリン、アラニン、イソロイシン又はロイシンに置換されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の改良型プロテアーゼ。
  5. 配列番号3のアミノ酸配列において、81位のアミノ酸がグルタミン又はアスパラギン酸に置換されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の改良型プロテアーゼ。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の改良型プロテアーゼをコードするDNA。
  7. 請求項6に記載のDNAを含む発現ベクター。
  8. 請求項7に記載の発現ベクターが導入された形質転換細胞。
  9. 前記形質転換細胞がサッカロマイセス・セレビシエである、請求項8に記載の形質転換細胞。
  10. 請求項8又は9に記載の形質転換細胞を培養し、該培養液中に凝乳活性を有するプロテアーゼを蓄積させる工程を含む、凝乳活性を有する改良型プロテアーゼの製造方法。
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