上述の導波路SHSの概念は、M.Florjanczyk, P.Cheben, S. Janz, A. Scott, B. Solheim, Dan-Xia Xu氏による「Planar waveguide spatial heterodyne spectrometer」SPIE, Vol.6796,pp. 67963J1-J10, 2007 の抄録で述べられているように、図1に示す導波路MZIアレイに一般化される。当該文献は本明細書に参照することによって包含されている。
空間的にコヒーレントな光に関して、独立した干渉構造からなる導波路構成が可能であり、独立した干渉構造の各々は、異なった位置において入力波面をサンプリングする。このことは、複数の入力開口部を同時に使用することを可能にする。このような構成の利点は、光学的スループットの向上である。非対称MZIの各々における経路長の差は、AWGと同様にΔL増加する。更に多くのMZIを用いて、更に精緻なスペクトル分解能が達成される。しかし、図1に示されている複数のMZIを単純に積層する単純なレイアウト方法は、限定されたウェハサイズにおけるMZIの数の増加を許容しない。
ここで開示されているのは、図2に示されている織り込み(interweaved)MZI構成を有する改良平面光波フーリエ変換分光計10である。この構成において、空間的にコヒーレントな入力光20は、MZ干渉計40に接続されている導波路30の各々を励起する。3−dBカプラ50は、例えば、MZI入力導波路42を介してMZIの2つの非対称ブランチ内へ向かう指向性カプラまたはマルチモード干渉(MMI)カプラからなっている。
MZI内の導波路アームは、導波路が互いに45°よりも大きい角度で交差するように、両側に意図的に傾けられていてもよい。導波路交差の過剰な損失は、T. Kominato, T. kitoh, K. Katoh, Y. Hibino, M. Yasu氏による「Loss characteristics of intersecting silica-based waveguides」Optoelectronics Conf. OEC 1992, Makuhari Japan, papa 16B4-1, pp138-139, 1992年7月、に記載されているように交差角度が、例えば45°よりも大きい場合に、0.02dB/交差に減少され得る。当該文献は、参照することによって本明細書に含まれる。
アーム長さの差は、1つの例において、一方のMZIから他方のMZIまでの離散値ΔLで増加してもよい。非対称MZIの各々の干渉信号は、MZI出力導波路44によって収集され、カプラ60によって検出器アレイ70に提供される。以下でさらに説明されるように、クロスポートp(k)及びスルーポートq(k)の両方の出力は、カプラの各々によってもたらされ得る。
開示されている導波路レイアウトは、同一のチップサイズにおいて、図1のレイアウト方法のほぼ4倍のMZIを許容する。開示されたレイアウトにおいて、及び本発明によって、ダミー交差導波路80がMZI入力導波路42及び出力導波路44と交差して配され得るので、導波路交差点の全数は全てのMZI導波路で同一となり得る。
開示された分光計の動作原理は、以下のように理解され得る。所定の単色入力に対して、MZIの各々の異なった伝送特性は、その出力において異なったパワー値をもたらす。通常は、単色入力は、異なった出力ポートP(xk)に亘ってパワーの周期的な(正弦関数の)空間分布をもたらす。これが、単色入力スペクトルのフーリエ変換である。空間的パワー分布P(xk)及び入力スペクトルがフーリエ変換のペアである故に、多色入力は、フーリエ変換を用いた入力スペクトルの計算に使用され得るパワー分布をもたらす。図3aに示すように、MZIアレイは、波数σn=1/λnの特定の単色入力に関して、一定の空間パワー分布が出力において取得されるようにデザインされてもよい。このことは、リトロー波数σ0=1/λ0に対応するゼロ空間波長のリトロー条件として示される。リトロー条件において、異なったMZIにおける位相遅れは、2π((2π/λ0)ncΔL=2mπ)の整数倍であるので、一定値P(xk)が得られる。単色入力σがリトロー値から変化するので、出力パワー分布は、(σ−σ0)で増加する空間波長を有する周期的なものになる。リトロー条件からσ0+δσ(ここで、δσは機器の分解能)に波数を変化させることは、図3bに示されている出力ポートに沿った1つの空間的フリンジをもたらす。
同様に、波数σn=σ0+nδσの光信号は、n個の空間的フリンジ(図3c)等を生成する。異なった波数を有する単色入力は、異なった周期的パターンをもたらす。多色信号が単色成分の重ね合わせによって表され得るので、対応するフリンジパターンは、図3dに示されている様に、周期的フリンジの各々の重ね合わせによって生成され得る。パラメータδσは、以下に説明するように、最大経路遅延ΔLN-1(=(N−1)ΔL)と反比例する。
リトロー値の上と下に等しく離間されている波数は、同一のフリンジパターンを生成する。この不明確さを回避するために、波数の2つの冗長セットの1つを遮断する必要がある。図3の例において、リトロー条件は、スペクトル領域の最小波数と一致しており、σ0未満の波数は、バンドパスフィルタによって遮断されたと仮定される。空間的フリンジは、単一端インターフェログラムと見なされ得、これから、パターンが原点(x=0)に対して対照的であることを仮定して入力スペクトルが得られる。このデバイスは、リトロー波数に関する空間的干渉パターンに周波数変換処理を施すので、空間的ヘテロダイン分光計(SHS)と称される。当該デバイスによるこの空間的周波数変換処理は、上述のバルク光学SHS機器の場合と同様の意味を有する。入力スペクトル及び出力空間分布は、フーリエ余弦変換である可逆線形変換を用いて関連付けられる。MZI内の信号分割、結合及び損失機構空間的に独立しているとして扱われる場合に、上述の原理が、配列された任意のMZIデバイス実装例に適用されてもよい。
非対称MZI内にて経路長差ΔLkで伝播する単色信号s(σ)に関して、ポートxkにおける出力パワーは以下の式によって与えられる。
ここで、α及びβは、振幅減衰係数及び導波路の伝播定数を示し、κは、指向性(すなわち、MMI)カプラの振幅結合係数を示している。50:50分割(κ2=1/2)の無損失事例(α=0)に関し、式(1)は以下のように変換される。
上記理想的な事例を考慮すれば、式(1)を以下のように書き換えるのが便利である。
ここで、Cdcは、以下の式によって定義される。
離散単色成分からなる光スペクトルに関し、出力パワーは、特定の単色入力に各々対応する寄与信号(contributing signal)の合計として表され得る。連続的なスペクトル分布を有する光源に関しては、σ0からσ0+Δσの狭い範囲の光波長内のパワーであるスペクトルパワーs(σ)dσを導入するのが便利である。重ね合わせ原理によって、式(3)に対応する出力パワーの干渉法による表現は、以下の積分式によって与えられる。
ここで、α及びCdcは、関心のあるスペクトル範囲において独立している波長である。上記式は以下のように書き換えられる。
ここでncは導波路の実効屈折率であり、
かつ
である。
式(6)は、以下のように干渉項F(xk)を導入することで更に単純化され得る。
マルチ開口部入力の均一照射に関して、入力モードパワー(input modal power)Pinは、全ての入力導波路で一定である。不均一照射に関して、Pin(xk)は、プローブ導波路を用いて直接測定され得るか、または、代替的にMZIの相補的な出力パワーが使用されてPin(xk)が計算され得る。不均一照射に関して、F(xk)は、F(xk)/Pin(xk)によって置換され、式(9)は以下のように書き換えられる。
干渉項F(xk)は、変更された空間インターフェログラムであり、これは、通常のデバイス動作において、測定されたパワーに基づいて信号処理ステップにおいて生成される。空間座標xkは、ΔLk単位で測定されるので、これは光学的経路差xk=ncΔLkと同一に設定され、変更された遅延と称される。結果として、物理的導波路レイアウトにおいて、MZI遅延増分が一定でありかつ出力ポート読み取り値が同一の増加の程度でデジタル処理される限り、個別の出力ポートは均一に分布している必要はない。
標準のフーリエ変換分光分析との類似性が形式的に示され得、非常に小さな遅延増分及び多数のMZIが想定され得るので、式において連続した極限(limit)に達する。式(5)−(10)によって、連続極限インターフェログラム及び入力スペクトルパワーS(σ)は、フーリエ余弦変換によって関連付けられる。
最後の式において、シフトした波数変数
が導入される。限定されたスペクトル範囲
が注目され、この範囲の外側ではスペクトルパワーが0になるので、最後の式の下方積分限界が無限大に拡張されてもよい。上述の式の両側に
を追加することによって、式(11)は以下のように書き換えられる。
ここで、式(10)及びxk=ncΔLkの関係が使用されている。式(12)に対する同一の表現が、パワースペクトルs(σ)で照射される可変経路遅延を有する理想的な2ビーム自由空間干渉計の出力において生成されるインターフェログラムに関して得られる。
実際の導波路デバイス実装において、空間的インターフェログラムIT(x)は、異なるMZIの出力に対応するN*の等間隔な遅延値xk(0≦xk≦Λ)によって離散化されており、ここで、N*=2Nである。実際の使用においては、高い波数σk(k=N〜N*−1)の空間的インターフェログラムはバイパスフィルタによって遮断されるが、高い波数σk(k=N〜N*−1)の仮想的なインターフェログラムが理論的な扱いにおいて考慮されるべきである。最大遅延は、
によって与えられる。分光計の波数分解能δσは、最大干渉遅延Λによって定義される。波数σ及びσ+δσを用いて2つの単色信号を分解するために、フリンジが1つ異なるインターフェログラムの各々、すなわち2πのインターフェログラム位相変化が必要とされる。
なので
である。
これは、幅λ0の中央波長近傍の波長分解能δλを使用して表されてもよく、ここでδλ≪λ0である。ΔLNの有用な表現は、回折格子分光デバイスにしばしば使用される分解能R=λ0/Δλに関して取得され得る。
よって、最大経路遅延は以下のようになる。
インターフェログラムにおける離散点の数、すなわちアレイ内のMZIの数は、フーリエサンプリング定理によって判定される。当該定理によれば、幅2Δσ内のみで0にならないスペクトルパワーに関し、スペクトルs(σ)は、(2Δσ)-1を超えないスペクトル間隔においてインターフェログラムをサンプリングすることによって完全に特定される。換言すれば、サンプリング点の最小数は、
になり得、ここでΔλは、分光計の波長スペクトルレンジである。例えば、0.06nmの分解能でΔλ=7.68nmの波長範囲に亘って動作するアレイ化MZI分光計は、128のMZIを必要とする。MZIの各々が別個の入力導波路に結合されている故に、この例において、光学的スループットは、単一の入力デバイスと比較して128倍に増加する。
式(14)−(17)を使用することによって、式(12)は、離散形式にて以下のように表される。
ここで、sn=s(nδσ),dn=Λ/nであり、
である。
離散フーリエ余弦変換に基づいて、入力スペクトルsnは、測定された出力パワーIT(x)から以下のように計算され得る。
ここで、式(8)及び式(12)から得られる関係
が使用される。式(20)は、離散形式で以下のように書き換えられる。
ここで、k=N〜N*−1の場合のIT(xk)は、余弦フーリエ変換定理に基づいて、IT(Λ−xk)であると仮定され、このことは、式(18)においてxkをΛ−xkで置換することによって確認される。
連続的フーリエ変換分光分析との類似性によって、式(22)における有限総和は、空間インターフェログラム分布内の階段状のカットオフ(トランケーション(truncation))に対応する。このようなトランケーションは、取得されるスペクトル内に振動的特性(リップル)を生起する。このリップルは、アポディゼーションによって減少させられ得る。この目的で、重み関数W(x)を使用してインターフェログラムがアポダイズされ、以下のスペクトル取得式が得られる。
ここで、重み関数の標準形は、W(xk)=[1−(k/N*)2M](M:整数)である。
最大遅延の基準の式(16)及びサンプリング点(干渉計)の数の式(17)を用いた離散フーリエ変換式の式(21)、(23)は、アレイ化されたマッハツェンダー分光計の閉モデルを構成する。干渉計によって物理的に行われることが必要な測定は、アレイの複数の出力における光学的パワー値の測定である。様々な導波路成分の機能の詳細は、結合及び損失係数内に含まれている。これらは独立的に測定され得、これらの値は一定なデバイスパラメータとして計算に導入される。理想的な設計からの偏差は、インターフェログラム内の定誤差(systematic error)として現れる。一度、導波路デバイスが形成されて特性付けられた後は、これらの誤差はキャリブレーション、例えば取得(検索)アルゴリズム内に包含される参照テーブルによって除去され得る。
導波路アレイのレイアウトは、マッハツェンダー構造の数N及び必要とされる最大遅延ΔLNによって制約され、これがそれらのサイズを決定する。
これらのパラメータは、実効屈折率の代表値を、シリカ導波路の実効屈折率nc=1.45485、シリコン溝付き(slotted)導波路の実効屈折率nc=1.732268、Si3N4溝付き導波路の実効屈折率nc=1.534457、シリコンサブμmワイヤ導波路の実効屈折率nc=2.501636、シリコンリブ導波路の実効屈折率nc=3.200292(図4a−bに示されている)と仮定して、波長範囲Δλ=4.1nmかつ分解能の選択値δλについて表1にリストアップされる。同一の分解能要求に関して比べると、ΔLNは、シリコンリブ導波路に関しては小さく、大きな実効屈折率nの故に少ないMZIを必要とする。
以下のシミュレーション結果は、シリカ導波路に関して示されている。任意の分光計の基本的な特性は、その分光計のスペクトルラインを分解する能力である。従って、テストスペクトルとして発光ダブレット(emission doublet)を用いるのが便利である。図5及び図6に示すように、入力ダブレット(破線)は、4.1nmのスペクトル範囲窓内で0.128nm離間している2つの鮮明な輝線(FWHM=0.03nm)からなる。波長範囲窓は、フーリエ演算定義域である。このスペクトルは、空間フーリエ変換(式(23))を用いて導波路出力パワーの離散フリンジの分布から計算される。図5は、分解能δλ=0.128nm(N=64、ΔLN=12.96mm)での、計算されたダブレットスペクトルを示す。ダブレットのスペクトル線は、分解能δλ=0.128nmが0.128nmのダブレット距離間隔を分解するのに十分ではない故に、良好に分解されていない。表1を参照すると、より良い分解能のためのデザインは、より多数のMZI及び増大させられた最大遅延ΔLN暗示している。これは図6において示されており、図6において、ダブレットスペクトルは、分解能δλ=0.064nm(N=128、ΔLN=25.92mm)の分光計を用いて取得される。ここで、当該ダブレットは、完全に分解される。
次に、一連の鮮明な吸収線からなる吸収スペクトルの一例が考慮される。通常は、吸収線は、明るい背景放射上に表される。シミュレーションにおいて、最上級のスーパーガウス分布(super-Gaussian)パスバンドフィルタが波長範囲Δλの外側の背景放射を減衰させることが仮定される。図7は、波長範囲Δλ=4.1nmにおいて分解能δλ=0.064nmである分光計を用いてシミュレーションされた吸収スペクトルが示されている。図8は、128個のMZIに関するMZI出力パワー(式(18))の分布である。吸収線の精緻な構造が明瞭に分解されていることが示されている。
適切な導波路が使用可能であると仮定すると、アレイ化されたMZIは、近赤外線及び可視光スペクトル領域を越えた分光分析及び検出のために使用可能である。SiO2及びSi3N4導波路は、可視光から紫外線領域において適切である。中赤外線領域において、導波路は、無効化干渉法のために形成されており、ここで、様々なタイプの導波路技術が、宇宙計画の6−20μmの範囲内の応用のために検討されていた。これらには、カルコゲニドガラス、ZnSe/ZnS、及び金属空洞導波路が含まれる。シリコン技術は、Siリブ膜、ゲルマニウムオンシリコン、及びSiベースの空洞コア導波路を使用して、1.55−100μmの長波長赤外線領域に拡張されてもよい。
三次元実施形態
本発明の改良された実施形態によって、図9は、織り込み(interweaved)MZI構成を使用した三次元平面光波フーリエ変換分光計100を示している。図2に関して上述されているようないくつかの平面光波回路(PLC)10′、10″は、互いの上に重ね合わせられて、三次元分光計が形成されている。接着性の薄い層がPLCの間に使用されてもよい。
図10は、図9の三次元平面光波フーリエ変換分光計の左側面(光入力側面)図を示している。PLCの基板は、元々の500〜1000μmの厚さから数十μmまで研磨によって薄くされてもよい。コア及びクラッドの厚さは、通常は、各々6μm及び20μmであってもよい。三次元平面光波フーリエ変換分光計の右側面(光出力側面)図は、その右側面図とかなり類似している。二次元検出器アレイは、出力導波路アレイ領域の端面に取り付けられていてもよい。開示されている三次元平面光波フーリエ変換分光計は、二次元光スペクトル分布の測定が可能である。
コリメートレンズ実施形態
通常は、非対称MZIの干渉信号は、出力導波路によって収集されて、検出器アレイに直接結合される。しかし、検出チップは、1つの実施例においてTO(トランジスタアウトライン)パッケージの前面ガラス窓の後方約3ミリメートルに配されていてもよい。マイクロレンズは、複数の出力ビームをコリメートするために使用され得る。しかし、マイクロレンズのアラインメント許容誤差は、焦点距離が非常に小さい故に、非常に厳しく(1μm未満)なる。本発明によれば、図11に示されているように、出力ビームをコリメートする導波路レンズアレイを有する改良された分光計200が本明細書に開示されている。この導波路レンズアレイは、同一の基板上に形成され得、他の導波路を形成するのに使用されるのと同一の処理が使用されるので、位置的正確性が非常に高くされ得る。
図12は、図10の単一導波路レンズアレイの詳細図であり、例示のパラメータが以下のように定義されている。Lstrは標準コア幅を有する直線導波路長を示し、Wtprは、傾斜導波路長及び幅を示し、Nwlは導波路レンズの数を示し、Ltdnはチップの端面におけるコアスラブ領域長さ(TOパッケージのガラス窓の厚さはLtdnに含まれる)を示し、かつLairは前面ガラス窓から検出チップまでの凹部距離を示している。Wlnsは、元々のレンズ幅を示し、Aprturはトランケートされたレンズの幅を示している。ns、n0、nairは、コア、クラッド及び空気中の屈折率を各々示している。Yunitは、レンズ間の数μmの空隙を含む単一のレンズの厚さである。従って、導波路レンズ全体の厚さは、NwlxYunitである。レンズの例示の曲率は、放射線関数によって以下のように表される。
ここで、fは、焦点距離を示し、局所座標ξ及びηはレンズの各々の下心(bottom-center)をもたらす。上述のパラメータが多数のシミュレーションによって最適化されて、数個のミリメータ長に亘ってビームがコリメートされ得る。
図13は、例示の最適化された導波路レンズパラメータを使用して結果として得られたコリメートビームの伝播を示している。使用されている例示のパラメータは、ns=1.457454、n0=1.444257、nair=1.0、Lstr=1mm、Ltdn=2mm、及びLair=3mmである。良好なビームコリメートをもたらす例示のパラメータは、各々以下のようになる:Ltpr=3mm、Wtpr=50μm、f=10.5mm、Nwl=10、Wlns=650μm、Aprtur=250μm、Yunit=383.6μm。
開示されている導波路は、水平方向においてビームをコリメートすることが可能である。従って、導波路レンズは、図2に示されているように、単一分光計構成に適用可能である。三次元分光計構成に関しては、円筒状のレンズが、チップの端面に取り付けられてもよい。
導波路位相補正実施形態
屈折率の変動は、分光計性能に劣化をもたらし得る。図14a−dは、この問題、及び本発明による開示されたΔL=162μmのスペクトロメータに関する解決法の結果(図14d)を示している。
図14aは、分光計に亘って測定された実効屈折率変動を示している。図14bは、追加の測定に使用される例示の入力波形を示す。図14cは、シミュレーションによって予測される入力波形(実線)及び測定された実効屈折率変動を考慮しないで式(23)を使用することによって測定されたデータ(破線)の両方を示している。通常は、より短い波長領域及びより長い波長領域における相違を除いて、良好な相互関連性が予測されたデータと測定されたデータとの間で示される。
本発明及び図15−16の参照すると、改良された分光計300が、これらの位相誤差を補正するためにMZI導波路に適用される加熱要素310または310′と共に提供され得る。図15aは、導波路と一体に形成されているスパッタヒータ310、または、例えば、導波路に別個に取り付けられているフィルムもしくはソリッド「ガラスパイプ」ヒータ310′の形式の、このようなヒータの2つの可能な実施形態を示している。
フィルムタイプヒータ及び基板ベースのヒータも使用可能である。外部基板ベースヒータ(基板上の薄いフィルムヒータ、または基板上に取り付けられているヒータ)は、別個の組立部品として形成され得、この組立部品全体がPLC表面に取り付けられ得る。入力及び出力取り出し領域を含む例示のチップサイズは、43×25mm2であり得る。
図16は、出力側カプラから2つの別個の検出器内への2つの導波路を有する実施異形態を示している。これらは、k番目(k=0〜N−1)のMZIにおけるクロスポート出力p(k)及びスルーポート出力q(k)の両方を表しており、これらは、入力光分布の空間的非一様性が補正され得るように処理されてもよい。k番目のMZIを通過する信号s(f)に関して、無視可能な導波路を仮定することによって、標準化されたクロスポート出力が以下のように与えられる。
ここで、βは伝播定数、FSRはΔL及び
によって定義される自由スペクトル範囲である。f0はリトロー周波数として示され、リトロー周波数において、異なったMZIにおける位相遅延は、2πの整数倍になる(β(f0)ΔL=2mπ)。MZI応答がFSRとともに周期的に繰り返される故に、バンドパスフィルタによって不必要なスペクトル範囲を遮断することが必要である。離散余弦フーリエ変換に基づいて、入力スペクトル
が測定された出力パワーP(k)から以下のように計算され得る。
ここで、Aは定数であり、かつ
に関するP(k)は、
であると仮定される。FSRの上半分内の信号
に対するMZI応答が、下半分内の信号に対するMZI応答と同一の空間フリンジを示すので、信号スペクトルの下半分のみが測定され得る。分光計の分解能は、
によって与えられる。ここでnc及びCは実効屈折率及び光速である。MZIアレイ内の実効屈折率変動によって生起する位相誤差は、式(26)によって取得される信号における正確性を悪化させる。k番目のMZIにおける位相誤差δφkは、δφk=(2π/λ0)δnc(k)Lkと表され、ここでδnc(k)及びLkは、実効屈折率変動及び図15aに示されているMZIアーム長さを示している。長さlのヒータは、MZIアームのいずれか1つ上のチップの外側から設けられて、δφkが測定され得る。熱光学効果下のスルーポート透過率q(k)は以下によって与えられる。
ここで、各々、Hは位相シフタに与えられるヒータパワーであり、αは単位ヒータパワー毎の熱光学屈折率変化の係数であり、λ0=1550.1である。図15bは、熱光学位相走査測定の一例を示す図である。H0で示されている第1の消光点は、位相誤差が補償される点に対応している。2つの隣り合う消光点の間のパワーHTは、λ0での光学経路長の変化に対応している。そして、δφkはδφk=2π・H0/HTによって与えられる。実効屈折率の変動は、δnc(k)=(δφk/Lk)λ0/2πとして得られる。MZIアレイにおいて測定されたδnc(k)は、図14aに示されている。
フーリエ変換分光法に基づいている導波路SHSの主たる利点は、実効屈折率変動故の干渉計不具合がデータ処理段階で補正され得ることである。例として、図14bに示されているように、入力信号スペクトルが導波路SHSに結合される。取得された信号スペクトルs(λn)(λn=c/fn)は、図14cに示されている。ハニング窓にP(k)乗じられるので、取得されたスペクトルにおける振動特性が減少させられる。波長に関するFSRは、λFSR=10.24nmである。λ=1539.9〜1545.04nmの範囲の信号は、図14cには示していない。なぜならば、それらの信号は、λ=1545.2〜1550.1nmのスペクトルの反射によるレプリカ(mirrored replica)である故である。元々のスペクトルからの測定スペクトルの逸脱は、主に位相誤差δφkの故である。なぜならば、これらは余弦FFT解析に直接含まれ得ないからである。測定されたMZI出力は、理想の位置kの代わりにk+δncLk/ncΔLに配されるべきである。この補正は、測定データ及びラグランジュ補間を用いて行われて、不規則な間隔のインターフェログラム点が一様な間隔のインターフェログラム点に置換され得る。その後、フーリエ変換アルゴリズムが、一様な間隔のインターフェログラム点に適用され得る。バルク光フーリエ変換分光分析におけるような大量のデータ点に関して、FFTベースの手法が必要である。しかし、少量のNに関しては、位相誤差を含む離散化された形式の式(25)
は、N×Nの連立方程式によって解くことが可能である。上述の手法を用いて補正された信号スペクトルは、図14dに示されている。スペクトルの主たる部分が正確に取得される。周辺スペクトル領域内のいくつかの振動特性のいくつかは、3−dBカプラの不完全性及び長い非対称MZIにおける減衰差によって発生してもよい。
交互MZIアレイを用いた新規な平面導波路分光計が本明細書において開示されている。1つの実施形態において、32−ch、20−GHz分光計がシリカPLC内に実装される。正確な信号スペクトルは、位相誤差値を用いてMZIを補正することによって適切に取得され得る。小型分光計は、そのコンパクトなサイズ及び潜在的な非常に低いコスト(使い捨て)の故に、日常の健康管理及び環境センシング用途に重要であるだろう。
上述において開示された全ての変形例は、本発明の一部であると考えられ、別個に又は任意の組み合わせで使用することが可能である。
本明細書において、好ましい実施形態が図示されて詳細に説明されてきたが、様々な変形例、追加例、置換例等が本発明の趣旨から逸脱することなく可能であり、これらが添付の特許請求の範囲において画定されている本発明の範囲内にあるとされることは、関連技術分野の当業者にとって明白である。