JP2012517906A - 固定砥粒ソーイングワイヤ - Google Patents
固定砥粒ソーイングワイヤ Download PDFInfo
- Publication number
- JP2012517906A JP2012517906A JP2011549578A JP2011549578A JP2012517906A JP 2012517906 A JP2012517906 A JP 2012517906A JP 2011549578 A JP2011549578 A JP 2011549578A JP 2011549578 A JP2011549578 A JP 2011549578A JP 2012517906 A JP2012517906 A JP 2012517906A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- wire
- coating
- sawing
- particles
- steel
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Withdrawn
Links
Images
Classifications
-
- B—PERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
- B23—MACHINE TOOLS; METAL-WORKING NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
- B23D—PLANING; SLOTTING; SHEARING; BROACHING; SAWING; FILING; SCRAPING; LIKE OPERATIONS FOR WORKING METAL BY REMOVING MATERIAL, NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
- B23D61/00—Tools for sawing machines or sawing devices; Clamping devices for these tools
- B23D61/18—Sawing tools of special type, e.g. wire saw strands, saw blades or saw wire equipped with diamonds or other abrasive particles in selected individual positions
- B23D61/185—Saw wires; Saw cables; Twisted saw strips
-
- B—PERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
- B23—MACHINE TOOLS; METAL-WORKING NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
- B23D—PLANING; SLOTTING; SHEARING; BROACHING; SAWING; FILING; SCRAPING; LIKE OPERATIONS FOR WORKING METAL BY REMOVING MATERIAL, NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
- B23D61/00—Tools for sawing machines or sawing devices; Clamping devices for these tools
- B23D61/18—Sawing tools of special type, e.g. wire saw strands, saw blades or saw wire equipped with diamonds or other abrasive particles in selected individual positions
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C23—COATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; CHEMICAL SURFACE TREATMENT; DIFFUSION TREATMENT OF METALLIC MATERIAL; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL; INHIBITING CORROSION OF METALLIC MATERIAL OR INCRUSTATION IN GENERAL
- C23C—COATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; SURFACE TREATMENT OF METALLIC MATERIAL BY DIFFUSION INTO THE SURFACE, BY CHEMICAL CONVERSION OR SUBSTITUTION; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL
- C23C10/00—Solid state diffusion of only metal elements or silicon into metallic material surfaces
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C23—COATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; CHEMICAL SURFACE TREATMENT; DIFFUSION TREATMENT OF METALLIC MATERIAL; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL; INHIBITING CORROSION OF METALLIC MATERIAL OR INCRUSTATION IN GENERAL
- C23C—COATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; SURFACE TREATMENT OF METALLIC MATERIAL BY DIFFUSION INTO THE SURFACE, BY CHEMICAL CONVERSION OR SUBSTITUTION; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL
- C23C26/00—Coating not provided for in groups C23C2/00 - C23C24/00
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C23—COATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; CHEMICAL SURFACE TREATMENT; DIFFUSION TREATMENT OF METALLIC MATERIAL; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL; INHIBITING CORROSION OF METALLIC MATERIAL OR INCRUSTATION IN GENERAL
- C23C—COATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; SURFACE TREATMENT OF METALLIC MATERIAL BY DIFFUSION INTO THE SURFACE, BY CHEMICAL CONVERSION OR SUBSTITUTION; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL
- C23C28/00—Coating for obtaining at least two superposed coatings either by methods not provided for in a single one of groups C23C2/00 - C23C26/00 or by combinations of methods provided for in subclasses C23C and C25C or C25D
Landscapes
- Chemical & Material Sciences (AREA)
- Engineering & Computer Science (AREA)
- Mechanical Engineering (AREA)
- Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
- Materials Engineering (AREA)
- Metallurgy (AREA)
- Organic Chemistry (AREA)
- Polishing Bodies And Polishing Tools (AREA)
- Finish Polishing, Edge Sharpening, And Grinding By Specific Grinding Devices (AREA)
- Mechanical Treatment Of Semiconductor (AREA)
Abstract
鋼製ワイヤおよびその上に固定された砥粒(42)を含む固定砥粒ソーイングワイヤ(40)が開示される。鋼製ワイヤは、高炭素鋼の高強度パーライトコア(14)および低炭素フェライト鋼皮膜(12)を有する。粒子は皮膜(12)に圧入され、バインダ層(18)によって所定の位置にさらに保持される。低炭素(またなお鉄)皮膜(12)の使用によると推測される、良好な鋸切断結果が得られた。固定砥粒ソーイングワイヤ(40)は、シリコンウェハ(ソーラーおよび半導体)または他の高コスト材料を切断するために、しかし砥粒スラリの必要なしに、既存のワイヤソーで便利に使用することができる。
Description
本発明は、ソーイングワイヤに関するものであり、さらに詳細には固定砥粒が炭素鋼ワイヤの外部皮膜に固着され、バインダ層によって該外部皮膜に固定されたソーイングワイヤに関するものである。ワイヤについて明確であるのは、低炭素含有鋼が高炭素含有鋼ワイヤコア上の皮膜として使用されることである。このようなワイヤは、硬質脆性材料、例えば水晶(例えば水晶発振子またはマスクブランクス用)、ケイ素(例えば集積回路ウェハまたは太陽電池用)、ガリウムヒ素(例えば高周波回路用)、炭化ケイ素またはサファイア(例えば青色LED基材用)、希土類磁性合金(例えば記録ヘッド用)または天然石もしくは人工石をも切断するために使用できる。
硬質脆性材料から成る大型および小型物体(以下ワークピースと呼ぶ)を鋸切断するためのワイヤは、何世紀にもわたって周知である。当分野では、ワークピースと実際に接触して鋸切断する部材を異なる名称を使用して呼んでいる:「ワイヤソー」(すなわちワイヤであるソー、しかしワイヤを使用するソー器具もワイヤソーによって表すことができる)、「ソーイングワイヤ」(鋸切断に使用されるワイヤ)および「ソーワイヤ」(ソーとして使用されるワイヤ)という用語がすべて出現する。以下では「ソーイングワイヤ」という用語に従う。
「ソーイングロープ」または「ソーイングケーブル」は、時には「ソーイングワイヤ」とも呼ばれる、研削ビーズが固定されている複数のフィラメントで作られているロープを含むロープであるが、これは本出願の範囲外となる。
基本的にソーイングワイヤは、切断される物体から材料を摩削する研削部材のキャリアとしての役割を果たす。これらの研削部材は:
キャリアから離れて、任意の手段によってワイヤと鋸切断される物体との間に導入することができる。該プロセスは、時には「第3体研削」(第3体は研削部材である)または「遊離砥粒切断」と呼ばれる。広く知られた例は、切断部にスラリを引き込む普通炭素鋼ワイヤによる、シリコンインゴットの切断である。スラリは、転動してワイヤとワークピースとの間に密着し、材料を局部的に破壊して、それにより切断部をさらに深める研削微粒子を含有する、または
(木工用のこぎりと同様に)ワイヤと同じ材料から作られた突出歯の形のキャリアワイヤに付着することができる、または
ワイヤとは別の材料の砥粒の形のキャリアワイヤに付着することができる。後者の場合、粒子は硬質でなければならず、キャリアワイヤに堅く付着しなければならない。
本出願の対象は、「固定砥粒ソーイングワイヤ」と呼ばれる最新の種類のワイヤにある。
キャリアから離れて、任意の手段によってワイヤと鋸切断される物体との間に導入することができる。該プロセスは、時には「第3体研削」(第3体は研削部材である)または「遊離砥粒切断」と呼ばれる。広く知られた例は、切断部にスラリを引き込む普通炭素鋼ワイヤによる、シリコンインゴットの切断である。スラリは、転動してワイヤとワークピースとの間に密着し、材料を局部的に破壊して、それにより切断部をさらに深める研削微粒子を含有する、または
(木工用のこぎりと同様に)ワイヤと同じ材料から作られた突出歯の形のキャリアワイヤに付着することができる、または
ワイヤとは別の材料の砥粒の形のキャリアワイヤに付着することができる。後者の場合、粒子は硬質でなければならず、キャリアワイヤに堅く付着しなければならない。
本出願の対象は、「固定砥粒ソーイングワイヤ」と呼ばれる最新の種類のワイヤにある。
固定砥粒ソーイングワイヤに期待されることは以下の通りである:
長さが短いと往復運動が必要となるため、ソーイングワイヤは十分に長い長さ(少なくとも数キロメートル)で供給されなければならない。交互運動は反復の加速および減速を、したがってエネルギーおよび時間のロスを示唆する。ワイヤが長ければ長いほど、必要な方向転換がより少なくなる。
さらに往復運動は砥粒を揺動させてワイヤから外し、粒子の損失によりワイヤの早期摩耗を引き起こす傾向がある。そのため砥粒をワイヤの中または表面に十分に固定することが必須である。十分な固定は、砥粒が所定の位置に残存しなければならないだけでなく、ワイヤに対する粒子の弾性動作が小さいままであることも意味する。
より細いワイヤがより良好である。より細いワイヤは、カーフロスがより少ないことを意味する。カーフロスとは、摩削されて失われるワークピースの量を意味する。より少ないカーフロスは、材料がより良好に使用されていることを示唆する。高価である材料(例えばシリコン、ガリウムヒ素または希土類磁石合金)の場合、カーフロスのわずかな削減によって、大幅な財務上の利益が生じる。基準は120μmゲージのワイヤが慣例である遊離砥粒切断で設定され、試験は80μmワイヤによって行われている。スラリキャリア中の砥粒もワイヤとワークピースとの間に多少のスペースを取るため、これにより130〜140μmおよび90〜100μmのカーフロスが生じる。
砥粒を物体中に押し付けるために鋸切断プロセスの間にワイヤに張力を印加しなければならないため、ワイヤはある張力を持続できなければならない。維持することができるより高い張力によって、砥粒に対するより大きい接触力が、そしてより高い鋸切断速度が生じる(しかしこの速度に対する制限はない)。張力は通例20N以上である。
高い張力を必要とする高い鋸切断速度と組合された低いカーフロス、すなわち細い幅の固定砥粒ソーイングワイヤに対する要望により、引張強度の高いワイヤの利用が不可欠である。ワイヤの引張強度は、ワイヤの断面積で割った破壊荷重、すなわちワイヤが破壊するときの力として定義され、N/mm2で表される。安全策を取るために、ワイヤの最小破壊荷重は、張力の少なくとも約2倍であるべきである。例えば200μmの固定砥粒ソーイングワイヤの場合、これにより最小引張強度は1300N/mm2となり、140μmの場合には2600N/mm2となる。
好ましくはソーイングワイヤは、ワークピースを汚染物質によって汚染すべきではない。例えばシリコンウェハの鋸切断で銅の排除が試みられるのは、シリコン中に拡散した銅が電子的に活性であるだけでなく、銅含有廃液の廃棄物処理がより困難であるためである。
長さが短いと往復運動が必要となるため、ソーイングワイヤは十分に長い長さ(少なくとも数キロメートル)で供給されなければならない。交互運動は反復の加速および減速を、したがってエネルギーおよび時間のロスを示唆する。ワイヤが長ければ長いほど、必要な方向転換がより少なくなる。
さらに往復運動は砥粒を揺動させてワイヤから外し、粒子の損失によりワイヤの早期摩耗を引き起こす傾向がある。そのため砥粒をワイヤの中または表面に十分に固定することが必須である。十分な固定は、砥粒が所定の位置に残存しなければならないだけでなく、ワイヤに対する粒子の弾性動作が小さいままであることも意味する。
より細いワイヤがより良好である。より細いワイヤは、カーフロスがより少ないことを意味する。カーフロスとは、摩削されて失われるワークピースの量を意味する。より少ないカーフロスは、材料がより良好に使用されていることを示唆する。高価である材料(例えばシリコン、ガリウムヒ素または希土類磁石合金)の場合、カーフロスのわずかな削減によって、大幅な財務上の利益が生じる。基準は120μmゲージのワイヤが慣例である遊離砥粒切断で設定され、試験は80μmワイヤによって行われている。スラリキャリア中の砥粒もワイヤとワークピースとの間に多少のスペースを取るため、これにより130〜140μmおよび90〜100μmのカーフロスが生じる。
砥粒を物体中に押し付けるために鋸切断プロセスの間にワイヤに張力を印加しなければならないため、ワイヤはある張力を持続できなければならない。維持することができるより高い張力によって、砥粒に対するより大きい接触力が、そしてより高い鋸切断速度が生じる(しかしこの速度に対する制限はない)。張力は通例20N以上である。
高い張力を必要とする高い鋸切断速度と組合された低いカーフロス、すなわち細い幅の固定砥粒ソーイングワイヤに対する要望により、引張強度の高いワイヤの利用が不可欠である。ワイヤの引張強度は、ワイヤの断面積で割った破壊荷重、すなわちワイヤが破壊するときの力として定義され、N/mm2で表される。安全策を取るために、ワイヤの最小破壊荷重は、張力の少なくとも約2倍であるべきである。例えば200μmの固定砥粒ソーイングワイヤの場合、これにより最小引張強度は1300N/mm2となり、140μmの場合には2600N/mm2となる。
好ましくはソーイングワイヤは、ワークピースを汚染物質によって汚染すべきではない。例えばシリコンウェハの鋸切断で銅の排除が試みられるのは、シリコン中に拡散した銅が電子的に活性であるだけでなく、銅含有廃液の廃棄物処理がより困難であるためである。
固定砥粒ソーイングワイヤは、各種の特許出願に記載され、本出願の目的で最も関連性のあるものは以下の通りである:
EP0243825は、鋼製ワイヤロッドおよび該ロッドを包囲して、該ロッドとの間にギャップを有するチューブから開始して、固定砥粒ソーイングワイヤを産生する方法について記載している。該ギャップは金属粉末および砥粒の混合物で充填されている。端部は密封され、該ロッドを反復ステップで熱処理および冷間伸線して、外側チューブをエッチングすることによって除去した後に固定砥粒ソーイングワイヤが得られる。欠点は、該方法によって相当の長さ(100メートル超)の固定砥粒ソーイングワイヤを産生できないことと、得られたワイヤの引張強度が比較的低い(例えば1800N/mm2)以下であることと、得られたワイヤが太すぎる(1mm)ことである。
EP0982094は、ステンレス鋼コアと、該コアワイヤの水素脆化を防止する中間層と、ダイヤモンド粒子が中に包含された結合層とを備えた固定砥粒ソーイングワイヤについて記載している。ダイヤモンドを中に有する結合層は、電気めっきまたは無電解蒸着によってダイヤモンドを含む浴から蒸着される。記載されている実施形態は、中間層だけでなく結合層の両方としてのニッケルについて記載している。
WO99/46077は、金属ワイヤ、およびロウ付けまたははんだ付け金属結合によってワイヤに取付けられた超砥粒を備えた固定砥粒ソーイングワイヤについて記載し、該砥粒は好ましくは、事前に選択された表面分布で表面上に配置される。本出願は、ロウ付けまたははんだ付けに必要な熱処理のために、鋼ワイヤが強度を失い得ることに触れている。このことは引張強度要件を満たすためには望ましくない。
EP0081697は、ワイヤにダイヤモンド粒子をはめ込む方法および装置について記載している。銅またはニッケル層でコーティングされたワイヤから開始されてから、硬化ホイールの間でホイールの片方または両方の繰返し軸運動によって、ワイヤをその軸を中心として転動させてダイヤモンド粒子をはめ込む。その後、ダイヤモンドを電解塗布されたオーバーコートによって所定の位置に固定する。
JP5016066A2の要約は、高炭素鋼ワイヤの制御脱炭による、高炭素鋼コアおよび低炭素鋼被膜を備えたソーイングワイヤの産生について記載している。しかし、ワイヤは遊離砥粒スラリプロセスでの使用を目的としている。したがって遊離砥粒スラリからの砥粒は、炭素被膜に固定されないが、連続的な方法で密着して再度遊離するようになる。さらに脱炭は常に炭素の損失を生じ、したがってワイヤ強度の損失を生じる。
本発明の主な目的は、改良特性を有する固定砥粒ソーイングワイヤを提供することである。本発明のさらなる目的は、砥粒が十分に固定されているだけではなく、鋸切断中により少ない弾性運動も示すワイヤを提供することである。別の目的は、高い鋸切断速度と組合せて、低いカーフロスを可能にするために十分に高い引張強度を有する固定砥粒ソーイングワイヤを提供することである。長さが例えば1キロメートルを超えるこのようなワイヤを作る方法が記載され、このことは本発明のさらなる目的である。
本発明の第1の態様により、固定砥粒ソーイングワイヤ(a fixed abrasive sawing wire)の形の生成物が開示される。該ソーイングワイヤは、鋼製の中央ワイヤを含む。鋼鉄は鉄および炭素および他の元素の合金であるため、常にある量の炭素を含む。このワイヤの外周は、該ワイヤの内部コアとは異なる組成を有する。以下では、この外周は皮膜と呼ばれる。皮膜中に砥粒(研磨粒子)(abrasive particles)が固定される。バインダ層が前記皮膜上に塗布されて、粒子を皮膜中に良好に保持する。
ワイヤの断面は任意の好適な形状を有する。形状は、鋸切断の方法によって決定される。例えばマルチワイヤソー(1本のワイヤが2個以上の誘導ロールの上を平行に反復して通され、該機構に与えられた名称はその結果、ワイヤが1本のみ使用されるかのように、多少誤解を招きやすい)において、断面は好ましくは円形である。実際にこのようなマルチワイヤソーにおいて、ワイヤはプーリーおよび誘導ロールの上の多くの湾曲により回転する傾向があり、したがって回転対称ワイヤ、すなわち円形ワイヤが最も適している。
このような円形固定砥粒ソーイングワイヤの全体の直径(すなわち砥粒を含む)は、ワイヤが使用される機構によって再度決定された、80ミクロンから300ミクロンまでであることが可能である。例えば特許CH692489に記載されているような、例えば(例えば1×1メートルの)ポリシリコンブロック1個から正方形ブロック(12.5×12.5cm2)を切断するのに適した鋸盤において、およそ250ミクロンのワイヤが適切なのは、1メートルもの長い長さを通じてワイヤを引きずるために大きな力が必要なためである。小さい力で小型試料を切断する実験用のこ盤の場合、80ミクロンワイヤは必要を満たし得る。半導体産業用のマルチワイヤソーでのスライスの場合、100〜200ミクロンのワイヤが最も適切であると思われ、ここでユーザはもちろん最も細いワイヤを好む。
または断面は、楕円形である、または長方形であることさえ可能である。例えばUS5438973で開示されているような涙滴形状は、フレームソー(フレームソーでは、個々のワイヤは、ワークピースの上を交互移動するフレーム内で相互に対して平行に張力印加されている)を使用するときに最も好ましい。涙滴形状によって、力に屈することなくカーフロスをさらに減少させることができる。長い方の辺で曲げたときの高い曲げ剛性によっても、切断部により高い鋸切断圧力(sawing pressure)を与える。
別の代案はそれ自体の軸を中心としてより合わされた扁平ワイヤを使用することである。星形断面でさえ、ある場合、例えば手動ソーでは有用なことがある。
固定砥粒鋼製ワイヤは、鋼製ワイヤのコアがパーライト金属組織構造を有するが、皮膜はフェライト金属組織構造を有する従来技術とは異なっている。鋼鉄の金属組織構造の決定は、標準化された技法である:ワイヤがエポキシブロック中に埋め込まれ、該ブロックがワイヤの軸に対して垂直に切断され、続いて研磨される。断面の光沢面を次に、約3体積%の硝酸(HNO3)およびアルコール、例えばエタノール(C2H5OH)の混合物であるナイタル(nital)溶液中でエッチングする。エッチングによって、鋼鉄の粒状構造は金属顕微鏡下にて約100〜500倍で目視できるようになる。
材料の組成がその構成要素に関して、その総重量の割合で与えられる場合は必ず、その割合は「重量%」で示され、別途明らかにされない限り、「重量パーセント」として読み取るべきである。
パーライト構造(または略して「パーライト」)は、顕微鏡下で褐色がかった灰色の真珠光沢外観(名称はこれに由来する)を示す。純粋なパーライト構造は、鋼鉄の適正な熱処理(723℃を超える温度におけるオーステナイト化(austinisation)と、それに続く徐冷)の後に形成される。パーライトは、88重量%のフェライト(炭素をほぼ含有しない鉄)および12重量%のセメンタイト(Fe3C)の混合物であり、炭素が0.80重量%の共晶濃度を生じる。鋼鉄の炭素含有率が0.80重量%未満、例えば0.40重量%であるとき、鋼鉄は亜共析と呼ばれ、形成パーライトはフェライトによって包囲された領域で目視できる。炭素含有率が0.80重量%より高い、例えば1.2重量%であるとき、鋼鉄は過共析と呼ばれ、パーライトおよびセメンタイト(「粒界セメンタイト」)を含む微細構造を有する。経験を積んだ分析者は、金属組織画像によって重量による炭素含有率を炭素約0.2重量%刻みで概算することができる。
炭素0.80重量%を正確に有する純粋なパーライト構造は架空であるため、主請求項は「実質的にパーライト金属組織構造」と述べている。本出願の目的では、0.40重量%を超える炭素含有率を有するこのような構造を得るために正しく処置された鋼鉄は、「実質的にパーライト金属組織構造」を示すと見なされる。
固定砥粒ソーイングワイヤの皮膜は、実質的にフェライト金属組織構造または略して「フェライト」を示す。フェライトが金属組織画像で明瞭に識別可能なのは、フェライトがはるかに明るく見えて、着色されていないためである。本出願の目的のために、フェライトは0.04重量%〜0.20重量%の炭素含有率の鋼鉄で形成される。
実際の鋼鉄組成物は、鉄および炭素を含むだけでなく、多くの他の合金および微量元素も含み、そのいくつかは強度、延性、成形性、耐食性などに関して鋼鉄の特性に対して重大な影響を有する。本出願に関して、強度は最重要であり、以下の元素組成は、鋼製ワイヤのコアに好ましい:
少なくとも0.70重量%の炭素、上限はワイヤを形成する他の合金元素に依存する(以下を参照)
0.30〜0.70重量%のマンガン含有率。マンガンは炭素と同様に、ワイヤのひずみ硬化を増大させ、鋼鉄の製造において脱酸素剤としても作用する。
0.15〜0.30重量%のシリコン含有率。シリコンは製造中に鋼鉄を脱酸素するために使用される。炭素と同様に、シリコンは鋼鉄のひずみ硬化を増大させるのを助ける。
アルミニウム、硫黄(0.03%未満)、リン(0.30%未満)などの元素の存在は、最小限に維持すべきである。
鋼鉄の残りは鉄および他の元素である。
少なくとも0.70重量%の炭素、上限はワイヤを形成する他の合金元素に依存する(以下を参照)
0.30〜0.70重量%のマンガン含有率。マンガンは炭素と同様に、ワイヤのひずみ硬化を増大させ、鋼鉄の製造において脱酸素剤としても作用する。
0.15〜0.30重量%のシリコン含有率。シリコンは製造中に鋼鉄を脱酸素するために使用される。炭素と同様に、シリコンは鋼鉄のひずみ硬化を増大させるのを助ける。
アルミニウム、硫黄(0.03%未満)、リン(0.30%未満)などの元素の存在は、最小限に維持すべきである。
鋼鉄の残りは鉄および他の元素である。
クロム(0.005〜0.30重量%)、バナジウム(0.005〜0.30重量%)、ニッケル(0.05〜0.30重量%)、モリブデン(0.05〜0.25重量%)および微量のホウ素の存在は、共析組成(0.80重量%のC)を超える炭素含有率では粒界セメンタイトの形成を低下させて、これによりワイヤの成形性を改善し得る。このような合金化によって0.90〜1.20重量%の炭素含有率が可能となり、伸線ワイヤにおいて4000MPaものより高い引張強度が生じる。このような鋼鉄はさらに好ましく、US 2005/0087270に記されている。以下で「高い炭素含有率」または「高炭素鋼」という場合、これは鋼製ワイヤのコアの炭素含有率として理解されるものとする。
ワイヤの皮膜の鋼鉄組成は、それが主にいくらかの炭素(0.04重量%〜0.20重量%の間)および他の微量元素を中に含む鉄であるため、あまり重要ではない。以下で「低い炭素含有率」または「低炭素鋼」という場合、これは鋼製ワイヤの皮膜の炭素含有率または鋼鉄として理解されるものとする。
主合金化構成要素が炭素であるとき、上の鋼鉄組成すべてが「普通炭素鋼」組成物の特徴である。そのためワイヤのコアがすべての力を支える必要があり、皮膜が低強度であり、低炭素鋼が砥粒の存在によって強度さえさらに低下させるので、高い強度を可能にする鋼鉄が最も好ましい。さらに、面積の大半が円の周囲にある円形断面のように、面積の多くが低炭素鋼であり、したがって固定砥粒ソーイングワイヤの破壊荷重全体に寄与しない。このことにより十分な強度の細径の固定砥粒ソーイングワイヤは明らかでない難問となっている。
本発明による固定砥粒ソーイングワイヤは通例、250μm未満の直径では2000N/mm2を超える、150μm未満の直径では2250N/mm2を超える、および120μm未満の直径では2500N/mm2を超える引張強度を有する。引張強度は、金属表面(砥粒が占有する面積を除く)で割った固定砥粒ソーイングワイヤの破壊荷重として定義される。金属表面は、金属組織構造の決定に使用されるようなワイヤの断面上で決定される。表面にはいずれの金属層も考慮される。
コアから皮膜まで半径方向に測定される局所炭素含有率は、減少関数を示す。これは図2aまたは2bに概略的に示され、ここで重量パーセントでの半径方向の局所炭素分布「Γ(r)」は、中心「r」からの距離の関数として示されている。鋼製ワイヤは半径「R」を、したがって直径2Rを有する。平均「C」炭素含有率は、Γ(r)を「0」から「R」まで積分することによって見出すことができる:
実験的に、例えばLECO CS230炭素および硫黄テスターによって決定するのが最も容易であるのはもちろん平均炭素含有率「C」である。炭素含有率は、粒子および固定層の干渉を有さないようにするために、粒子および固定相の除去後に決定されるべきである。平均炭素含有率は、少なくとも0.40重量パーセントであるべきである。平均炭素含有率が約0.55重量%超の炭素、またはなお0.60重量%超の炭素である場合に、さらに好ましい。
Γ(r)の測定は困難であるが、いくつかの方法で行うことができる:
金属組織概算の方法がある。前記のように、経験を積んだ分析者は、炭素約0.2重量%刻みでクラスの炭素含有率を概算することができる。多くの場合で、フェライトおよびパーライトの存在は、決定するための標準手順である。
最も正確な方法は、もちろんワイヤの半径に沿って炭素含有率の微量分析を局所的に得ることである。このような分析は現在、波長分散型分光器(SEM−WDS)を装備した走査型電子顕微鏡において可能である。これは究極の参考となる方法である。
金属組織概算の方法がある。前記のように、経験を積んだ分析者は、炭素約0.2重量%刻みでクラスの炭素含有率を概算することができる。多くの場合で、フェライトおよびパーライトの存在は、決定するための標準手順である。
最も正確な方法は、もちろんワイヤの半径に沿って炭素含有率の微量分析を局所的に得ることである。このような分析は現在、波長分散型分光器(SEM−WDS)を装備した走査型電子顕微鏡において可能である。これは究極の参考となる方法である。
相対炭素分布の間接測定値は、マイクロビッカース硬さ測定値によって得ることができる。この周知の方法(ISO 6507−3「Metallic Hardness Test:Vickers Test less than HV 0.2」を参照)では、面角が136°の正四角錐ダイヤモンドピラミッドを有するマイクロインデンタが規定の力(0.9807N、硬度記号HV0.1)で規定の時間(10秒)にわたって材料に押し込まれる。その後、へこみの形態を測定して、そこから局所微小硬度(N/mm2で表す)を計算することができる。方法の空間分解能を向上させるために、ワイヤをエポキシ樹脂で包み、ワイヤの軸に対するある角度で切断して研磨する。形成される楕円の主軸に沿った定点の硬度を測定して、ワイヤの軸に対する正しい半径方向位置を計算する。測定した硬度は鋼鉄金属組織、ワイヤに与えられたひずみ硬化の量(ワイヤの断面にわたって等しい)および炭素含有率の関数である。マイクロビッカース硬さの測定値が特に重要であるのは、皮膜に圧入できる容易さの尺度を与えるためである。
炭素含有率とほぼ同じような方法で、重量平均マイクロビッカース硬さ「HVavg」は、「Γ(r)」を半径方向距離「μ(r)」の関数としての局所マイクロビッカース硬さによって置き換えることによって計算することができる:
実験結果について、積分は、点の間の環状表面によって重み付けられた離散測定点の不足和および過剰和の平均を取ることによって便利に近似することができる。
好ましくはこの平均硬度は500N/mm2よりも高く、さらに好ましくは550〜650N/mm2である。平均硬度が低すぎると十分な強度が与えられず、平均硬度が高すぎると、粒子の適正な圧入(indentation)が与えられない。概略図については図2aおよび2bを参照。皮膜は、平均以下の硬度を有するワイヤの部分として定義することができ、コアは平均を超える硬度を有するワイヤの部分として定義することができる。皮膜およびコアは境界で接する。境界では、局所マイクロビッカース硬さが重量平均微小硬度と交差する。この境界は、おおよその半径「b」に位置する。皮膜の厚さ「Δ」は次に、境界とワイヤの外周との間の半径方向距離、すなわち「Δ=R−b」として便利に定義することができる。
皮膜は、砥粒の圧入による鋼製ワイヤのコアの微小亀裂損傷を防止する必要がある。実際に、鋼製ワイヤは引張強度の上昇によって、表面損傷に対してより脆弱となる。このことは疲労強度の損失(損傷は亀裂の開始であるため)および/強度の損失で表される。皮膜は粒子も所定の位置に保持しなければならない。したがって粒子の圧入深さ(dept)は、皮膜厚「Δ」よりも決して大きくないはずである。
第1の好ましい実施形態により、高炭素コアから低炭素皮膜への移行は、図2aに示すように急激(abrupt)であることができる。コアと皮膜の間でナノスコピックレベルでの炭素交換が存在するが、マイクロスコピックレベルでは金属組織混合相は識別不可能である。
第2の好ましい実施形態により、高炭素コアから低炭素皮膜への移行は平滑(smooth)であり、コアから皮膜を観察したときにフェライトの存在の増加およびパーライトの存在の減少を示す混合金属組織相を含む。移行は、後に説明される処理のために平滑になる。次に炭素含有率分布は、図2bに示す分布に似ている。移行の幅「δ」は、μ(r)が350N/mm2から650N/mm2まで変化する間の距離として定義することができる。値は、0.2重量%未満のCを有する低炭素鋼線および0.40重量%を超えるCを有する高炭素鋼線から予想できる値と一致する。移行は、砥粒が皮膜に押し込まれる際のワイヤのコアに到達するときの急激な変化ではなく、絶えず増大する圧入力を受けるという利点を有する。移行は、皮膜がコアに拡散接合されて、皮膜とコアとの間の接着の損失が実質的に不可能であるという利点も有する。移行層幅「δ」はその結果、優れた接合を有するために、少なくとも5ミクロンよりは広い、好ましくは10ミクロンよりも広いはずである。
それとは正反対に、厚すぎる移行領域は高強度コアの表面積の許容されない損失をもたらし、したがってワイヤは全体強度をあまりに多く緩める。ワイヤは必要な変更を加えて、あまりに硬質な外部皮膜をもたらす。移行の幅はその結果、40ミクロン未満に、さらに好ましくは30ミクロン未満に、なおさらに好ましい20ミクロン未満に維持されるべきである。
EP0081697に開示されているような、従来の銅クラッド型の固定砥粒ソーイングワイヤと比較すると、低炭素クラッディングの使用は、低炭素クラッディングがワイヤの全体の強度をなお増大させるという追加の利点を有する。これは低炭素が銅よりも高い冷間変形焼入れ性を有するためである。このようにして、従来のソーイングワイヤと同じ強度を有する、より細い固定砥粒ソーイングワイヤを作ることができる。これにより鋸切断中のカーフロスを減少させることができる。
砥粒は、超砥粒、例えばダイヤモンド(天然または人工、人工はそのコストおよびその粒破砕性のために、いくらかより好ましい)、立方晶窒化ホウ素またはその混合物を含む。要求のあまり厳しくない用途では、タングステンカーバイド(WC)、炭化ケイ素(SiC)、酸化アルミニウム(Al2O3)または窒化ケイ素(Si3N4)などの粒子を使用することができる:これらはより軟質であるが、ダイヤモンドよりかなり安価である。最も好ましいのはダイヤモンドである。
砥粒のサイズは、ワイヤの直径に合せていくらか調整する。粒子自体のサイズおよび形状の決定は、それ自体で技術分野である。本出願の目的では、粒子が球形状を有さない、および有するべきではないため、粒子の「直径」というよりも、粒子の「サイズ」と呼ばれる(直径は粒状形を示唆するため)。粒子のサイズは、当分野で公知の任意の測定方法によって決定される(マイクロメートルで表現される)長さの単位であり、常に、最も遠く離れた粒子表面上の2点を接続する線の長さと、互いに最も近接した粒子表面の2点を接続する線の長さとの間のどこかである。
固定砥粒ソーイングワイヤについて想定された粒子のサイズは、「マイクログリッド」のカテゴリに含まれる。マイクログリットのサイズは、マクログリットでは慣例である標準ふるい技法によってもはや決定できない。代わりにこれらは他の技法、例えばレーザ回折、直接鏡検法、電気抵抗または光沈降法によって決定しなければならない。規格ANSI B74.20−2004は、これらの方法についてさらに詳細に述べている。本出願の目的では、粒径について参照するときに、粒径は、レーザ回折法(またはこれが同じく呼ばれるように、「低角度レーザ光散乱」)によって決定されるような粒径を意味する。このような手順の出力は、中央値d50サイズ(すなわち粒子の半分はこのサイズより小さく、粒子の半分はこのサイズより大きい)を有する累積もしくは微分粒径分布または一般に「dp」であり、ここで粒子の「P」パーセントは、この「dp」より小さく、残りの部分(100−P)のパーセントはこの「dp」よりも大きい。
超砥粒(superabrasives)は通常、ふるい番号によってではなく、この規格によってサイズ範囲で同定される。例えば20〜30ミクロンクラスの粒子分布は、20マイクロメートル(すなわち「d5」)と30マイクロメートル(すなわち「d95」)との間のおよび1000個に1個未満が40ミクロンを超える90%の粒子を有するが、中央値サイズd50は25.0±2.5ミクロンの間でなければならない。
概略としては、中央値(すなわち半分の直径がより小さいサイズを有し、残りの半分がより大きいサイズを有する粒子のサイズ)は、粒子を皮膜に良好に収容するために、鋼製ワイヤの周囲の1/12未満であるべきであり、さらに好ましくは鋼製ワイヤの周囲の1/18未満であるべきである。それとは正反対に、次に材料移動速度(すなわち単位時間当りに摩削される材料の量)が小さくなりすぎるので、粒子は小さすぎてはいけない。
砥粒は、その中央値の半分を超えて皮膜中に圧入されるときに、最も良好に保持される。そのため圧入深さは少なくとも、粒子の中央値の半分より大きいはずである。皮膜厚は最大の圧入深さよりも厚いはずであるので、粒子を良好に保持するためには、皮膜厚は少なくとも、粒径中央値の半分より大きくなければならないということになる。
なおさらに好ましいのは、皮膜厚が「d90」(粒子の90%がd90よりも小さいサイズを有する)より厚いことである。したがってコアへの微小亀裂損傷の可能性は非常に小さくなり、これにより使用中の破損が回避される。実際に皮膜厚は、鋼製ワイヤの直径の約10%である必要があり、直径の少なくとも5%または少なくとも7%であるべきである。そのため80μm〜150μmの非常に細いワイヤでは8μm〜15μmであり、210μmワイヤでは約20μmである。直径皮膜厚が10%ならば、ワイヤ断面積の36%が低張力皮膜材料によってすでに占有されていることに注目すべきである。
粒子が適正に圧入されているか否かは、砥粒が除去されて、したがって皮膜に間隙が残存している断面上でただちに評価することができる。圧入時に、このような断面によって、ワイヤの外周に線で接続することができる2つの端点が明らかとなる。点から点までの距離は、圧入幅「Win」と呼ばれる。鋼製ワイヤに達する線に対して垂直に得た最大距離は、圧入深さ「Din」と呼ばれる。良好に固定するために、圧入深さの2倍が圧入幅よりも大きくなければならない。多くの間隙が測定されるとき、良好な圧入は1より大きい比(2×Din/Win)の平均を特徴とする。少なくとも20個の間隙を測定すべきである。
ソーイングワイヤの表面に存在しなければならない粒子の個数に関して、切断される材料の種類に多くが依存している。密度が高すぎると、誘起される粒子に対する粒子を研磨する力があまりに小さく、その切断能力の低下を生じる。他方では、密度が低すぎると、力が大きくなりすぎるので粒子が皮膜から引き裂かれることになるか、または単位時間当りに粒子が材料を通過する切断速度が低くなりすぎることになる。粒子の存在は、粒子によって占有された面積の、ワイヤの総周囲面積に対する比:「被覆比」によって定量することができる。これはSEMによって全体の画像から代表的な組成を有する粒子を選択して、総面積に対する粒子による占有面積を計算することによって行うことができる。ワイヤ画像の中心部のみを側面として使用することには、ワイヤ表面の反りのために、粒子表面が過大評価される傾向がある。例を図4に示す。
粒子の目標被覆比は、切断使用とする材料、達成したい切断速度または取得した表面仕上げによって変わる。発明者らは、材料の想定される最良鋸切断性能を有するための、総面積に対する粒子面積の比は1〜50%、または2〜20%またはなお2〜10%であるべきことを見出した。
バインダ層はワイヤ外面に適用され、粒子を皮膜に固定しておくのに、または言い換えれば粒子を皮膜に結合するのに役立つ。好ましくは、結合層は金属層である。特に好ましい金属はニッケルおよび銅である。代わりのしかしまた好ましい金属は、クロム、コバルト、モリブデン、タングステンおよび亜鉛ならびにその合金である。この層の厚さは好ましくは1〜5μmである。
上記より、本発明の固定砥粒ソーイングワイヤが実質的に銅を含まないことが明らかである。意図的でなく添加された銅がワイヤまたはコーティング中に存在する。したがって、伸線中の銅によるシリコンワークピースの汚染は回避される。シリコン中に拡散する銅原子は、シリコンのエネルギーギャップに電気活性欠陥を形成する。また流出流(例えば冷却剤、または完成ウェハのすすぎから生じる)からの銅の排除もこのようにして回避できる。
本発明の第2の態様により、ワイヤの産生方法が開示される。一般にこのような方法は、3つの主なステップを含む:
第1に、高炭素コアおよびより低炭素の皮膜を有する、十分に細い直径の鋼製ワイヤを提供する必要がある。
第2に、好ましいサイズおよび種類の砥粒を皮膜に圧入する。
第3のステップにおいて、砥粒は結合層によって固定される。
好ましくは第2および第3のステップは、ワイヤが1つのプロセスステップから次のプロセスステップに連続給送されるラインコンセプトで実施される。しかしこれらのステップの分離は、EP1375043に記載されているような第3ステップのためのバッチプロセスが可能であることによって除外されない。第1のステップの開始鋼製ワイヤを産生することができるいくつかの方法がある:
第1に、高炭素コアおよびより低炭素の皮膜を有する、十分に細い直径の鋼製ワイヤを提供する必要がある。
第2に、好ましいサイズおよび種類の砥粒を皮膜に圧入する。
第3のステップにおいて、砥粒は結合層によって固定される。
好ましくは第2および第3のステップは、ワイヤが1つのプロセスステップから次のプロセスステップに連続給送されるラインコンセプトで実施される。しかしこれらのステップの分離は、EP1375043に記載されているような第3ステップのためのバッチプロセスが可能であることによって除外されない。第1のステップの開始鋼製ワイヤを産生することができるいくつかの方法がある:
第1の方法ステップの第1の実施形態において、高炭素鋼ワイヤは電解質浴からの純鉄によってコーティングされる(例えばUS5014760を参照)。いくつかの代わりの手法が可能となる。
第1の代案は、最終直径鋼製ワイヤが鉄でコーティングされることである。鉄皮膜層と高炭素コアとの間の移行は急激であり、コアと皮膜との混合相は形成されない。次に、図2aに記載するような実施形態が得られる。この方法の利点は、合理的な層厚(鋼製ワイヤ直径の7%を超える層厚)を達成するために、ワイヤ上に配置しなければならない鉄は、比較的わずかであることである。
第2の代案は、さらなる湿式ワイヤ伸線の前に、鋼製ワイヤを鉄によって好適な中間直径でコーティングできることである。中間直径とは、ワイヤロッド直径とワイヤの最終直径との間の直径を意味する(中間直径は通例、2.70〜0.90mmになる)。伸線中に発生する熱は、炭素の鉄中への拡散のために、約5ミクロン以上の微小移行領域の形成を生じる。
第3の代わりのワイヤは、鉄によって中間直径レベルでコーティングされ、おそらく反復してパテンティング(patented)および伸線することができる。この場合、移行領域は皮膜の単回熱処理のためにより大きく、このことは鉄中へ炭素をより多く拡散させる。そして移行領域は5〜30ミクロンである。
第1の方法ステップの第2の好ましい実施形態により、高炭素鋼コアは、溶接によって閉じられ、皮膜を形成する低炭素鋼ストリップまたは鉄箔によって包囲される。再度、第1の好ましい実施形態と同様に、代案が可能である:
第1の代案において、直径2.40〜0.90mmの中間鋼製ワイヤがさらなる湿式ワイヤの前に鉄箔または低炭素ストリップによって包囲される。再度、伸線中に発生した熱が、鉄中への炭素の拡散のために約5ミクロンの微小移行領域の形成を生じる。
第2の代案において、高炭素鋼コアは低炭素または鉄ストリップまたは箔によって中間直径レベルで包囲・コーティングされ、次に最終直径まで、おそらく反復してパテンティングおよび伸線される。再度、移行領域は、皮膜中への炭素の拡散をさらに誘発する単回またはおそらく2、3回の熱処理のために、いくらかより広くなっている。そして移行領域は5〜30ミクロンである。移行領域はパテンティング(patenting)ステップの回数と共に増大する。
第1の方法ステップの第1および第2の好ましい実施形態は、連続的な低下を示すのでなく、皮膜表面上で消失する硬度プロファイルを生じる。
第1の方法ステップの第3の好ましい実施形態により、皮膜は高炭素鋼ワイヤの脱炭によって形成される。実際の脱炭の例はUS5014760に記載されている。鋼製ワイヤの外層は次に、その炭素の実質的な部分を失って低炭素皮膜を形成するが、コアは炭素の大半を保持する。脱炭は700℃〜1000℃の高温の酸化雰囲気炉にワイヤを通過させることが必要なため、最終直径ワイヤを脱炭することは、これが許容されない強度損失をもたらすために不可能である。
したがって脱炭は好ましくは、約0.90mmより大きい中間ワイヤ直径に対して行われる。脱炭ステップはロッド直径レベルで行うことが可能であり、1または2回の通常の(すなわち還元雰囲気下での)パテンティングステップと、その間またはその後のワイヤ伸線操作が続く。または脱炭ステップは、最終ワイヤ伸線前の最後の熱処置であることができる。次の通常のパテンティング(還元雰囲気下での)がワイヤ中での炭素の再分布を生じるため、後者がいくらかより好ましい。このような再分布によって、移行領域の広幅化が生じる。
一般に高炭素鋼ワイヤの脱炭は、炭素の損失、すなわち強度に対する要求の要件に対して作用する全体の強度の損失をもたらすことが避けられない。最終製品で必要な全体の強度を達成するために、高炭素開始ワイヤの炭素含有率は、著しく高くなければならない。さらに炭素の外向き拡散は、柔らかすぎる外層を生じ得る炭素プロファイルをもたらす。したがって硬度プロファイルは着実に低下して、皮膜上での消失を示す。皮膜厚は拡散則によって決定されるので、炭素プロファイルも制御するのが困難である。
第2の方法ステップの間に、ワイヤの皮膜は砥粒によって圧入される。これはロールによって砥粒を皮膜中へ転動させる前に、砥粒をワイヤに一時的に固定することによって便利に行うことができる。これが行われる例は、EP008169に開示されている。その分野の改良は例えば、粒子が固着して、後で(好ましくは水中で)洗い流すことができる粘性物質を適用することによって粒子を一時的に固定することである。さらなる改良は、転動が硬化ロールと、中にワイヤが誘導される適合する半円溝との間で行われることである。別の改良は、異なる角度の異なるロール対が次々に追従することである。
第3のプロセスステップにおいて、粒子は好ましくは本質的に金属である固定層によって固定される。固定層の適用は、ワイヤの引張強度の低下を回避するために、低温条件下(約200℃未満)で行うべきである。最も好ましい方法はその結果、金属塩電解質から金属イオンを、電解質に対して負の電位で保持されたワイヤに析出させる電解析出技法を使用することである。その場合にも、鋼鉄があまり良好でない導電体でなく、ワイヤが細いので、鋼製ワイヤの過剰な抵抗加熱がないように注意を払う必要がある。粒子が本質的に絶縁体であり、単純な転動接触が火花発生を生じるので、また粒子の存在によってワイヤへの電気接触を作ることが困難になる。したがって、例えばWO2007/147818に記載されているような、ワイヤとの接触が金属析出電解質浴から隔離された浴中の第2の電解質によって行われる非接触方法が好ましい。
本発明の実施例により、0.8247重量%の炭素含有率、0.53重量%のマンガン含有率、0.20重量%のシリコン含有率を有し、0.01重量%未満のAl、PおよびS含有率を有する高炭素ワイヤロッド(公称直径5.5mm)を当分野で公知の方法に従って化学的にスケール除去した。
続いてワイヤを、0.03重量%の炭素および0.60mmの厚さを有する低炭素ストリップで包囲した。合せ目を溶接した。包囲したワイヤの全直径はそのため約6.7mmであった。ストリップ厚は、ワイヤ全厚の8.96%であった。
本複合ワイヤを当分野で公知の方式で2.40mmの全直径(すなわちストリップラップを加えたコアワイヤ)まで乾式伸線した。該材料を2つの別個のバッチに分割した。
材料の第1のバッチ(実施例1と呼ぶ)を1.20mmの全直径までさらに乾式伸線した。低炭素ストリップの厚さはこれにより、105μm(すなわち全ワイヤ厚の8.75%)まで低減された。本材料を次に、通常の方式(鉛パテンティング)でパテンティングした。パテンティング後、低炭素ストリップの炭化の明らかな徴候がすでにあり、ストリップはコアに完全に融合されている。その後、全直径0.90mmまでの別の乾式伸線ステップを行う。続いて本ワイヤを210μmの全直径まで湿式ワイヤ伸線した。パテンティングによって低炭素ストリップは炭化され、コアから皮膜までの移行はもはや明瞭に識別できなかった。該試料にはパテンティング操作を1回のみ受けさせた。
材料の第2のバッチ(実施例2と呼ぶ)を最初に鉛中でパテンティングして、続いて直径0.90mmまで乾式伸線し、再度、鉛中でパテンティングした。その後、これを210μmまで再度、湿式ワイヤ伸線した。本試料にはパテンティング操作を2回受けさせた。
両方の試料の比較を表1に示す:
低炭素鋼ストリップの初期マイクロビッカース硬さは143N/mm2であった。これは以下のために、かなり上昇したと思われる:
より硬質の材料を生じることが公知である、伸線中の高度の冷間形成。
皮膜材料の炭化:より高い炭素含有率は、より硬質の材料を生じることが公知である。実施例1は、パテンティングステップが1回であるがより大きな低減を受けているのに対して、実施例2は、2回のパテンティングにもかかわらずより低い最終低減を得たため、炭化は皮膜の硬化により有力な役割を果たすと思われる。
より硬質の材料を生じることが公知である、伸線中の高度の冷間形成。
皮膜材料の炭化:より高い炭素含有率は、より硬質の材料を生じることが公知である。実施例1は、パテンティングステップが1回であるがより大きな低減を受けているのに対して、実施例2は、2回のパテンティングにもかかわらずより低い最終低減を得たため、炭化は皮膜の硬化により有力な役割を果たすと思われる。
実施例1のワイヤの硬度プロファイルを測定して、図3aに表す。それぞれの圧入部(「黒ひし形」で示す)が十分に離れるように、硬度を楕円断面で測定した。外側の点(「黒四角」)は、外側皮膜で測定した点である(表1を参照)。「HVavg」でマークした1点破線は、表面積で重み付けした平均マイクロ硬度を示し、この場合は597N/mm2に等しかった(不足和586、過剰和606)。皮膜厚「白三角」は、外周から硬度が平均マイクロビッカース硬さに等しい箇所までの距離である。この場合、皮膜とコアとの境界は半径80〜84μmであり、したがって皮膜厚「白三角」は約21〜25μmである。皮膜はそのため鋼製ワイヤ直径の約8.5〜12%である。移行領域「δ」の厚さは約17μmである。
実施例2のワイヤの硬度プロファイルを図2bに表す。異なる記号(「黒ひし形」および「黒三角」)は反復測定を表す。平均重量マイクロ硬度はそれぞれ577N/mm2(「黒三角」、1点破線で示す;不足和559、過剰和595)および589N/mm2(「黒ひし形」、2点破線で示す、不足和571、過剰和607)であった。皮膜厚「白三角」は約22μmであるが、移行領域「δ」はより広く、すなわち23μmである。
実施例1および2の硬度曲線の比較により、表面の硬度はそれほど違わないが、2倍のパテンティングがより硬質の全体的な皮膜硬度を生じることが明瞭に示されている。明らかに、炭素は高炭素コアから低炭素皮膜中へ進行した。
実施例2をさらなる処理のために選択した。実施例1の鋼製ワイヤには、中央値「d50」25.3μm(d10=15.1μm、d90=40.6μm)のダイヤモンド粒子が圧入された。これは水溶性接着剤(Aquabond(商標)より入手可能)によってワイヤを浸漬コーティングすることによって達成した。その直後に、粒子を有するワイヤを半径109μmの適合する半円溝を備えた2対のロールの間に誘導する。該2対は相互に垂直なその軸を有していた。
次の蒸着において、接着剤を湯で洗い流した後に、ワイヤをニッケル結合層でコーティングした。これはWO2007/147818に記載されているような装置で行った。層厚は約3ミクロンであった。
ワイヤの被覆度は約5〜8%であり、SEMの後方散乱電子検出モードで決定した。図4は、固定砥粒ソーイングワイヤ40の表面上のダイヤモンド粒子によって得られた画像を、そうでなければ灰色の背景44上の黒色範囲42として示す。光分析ソフトウェアによって、黒色および灰色範囲に対する黒色範囲の比すなわち被覆度をただちに評価することができる。
金属組織断面を、同じワイヤ10の、しかし異なる場所での断面である図1aおよび1bに示す。双眼顕微鏡で見ると、ワイヤ10のコア14が皮膜12とは異なる組織を示していることが明らかである。コア14は高炭素伸線パーライト金属組織構造を示すが、皮膜12は実質的にフェライトの、すなわち低炭素含有率を有する組織を示す。ワイヤの元の円形断面には、粒子が圧入されていて、続いて試料の研磨中に伸線を受ける。粒子は圧入痕16を残す。ダイヤモンドによって残された間隙の内部にはニッケル層が見えないので、圧入はニッケル結合層18によるコーティングの前に起きたことが明らかである。間隙は深さ約20ミクロン(ニッケル外面から測定)であり、コアに進入しない。
粒子の圧入がソーイングワイヤの強度に悪影響を及ぼさないことは、完成ワイヤの破壊荷重試験で確認された:鋼製ワイヤで得られた結果と比較して、破壊荷重の顕著な損失は見られなかった(表1)。したがって圧入は高強度鋼製コアを損傷しなかった。
間隙の幅をその深さと比較することによって、圧入の品質を概算することができる。図1「a」または「b」のように断面50が再現されている図5に、これを行う方法を示す。間隙52の外側の点「A」および「B」を接続するとき、幅「Win」を決定することができる。同様に深さ「Din」は、線ABに対して垂直である最大深さを測定することによって決定される。基準(2×Din/Win)は、断面が正確に得られている場合には独立である。
このために、図1に示したような(ただし縦断面が等しく良好に適している)ワイヤ軸に対して垂直の断面上で、圧入20個の幅および深さを測定した。最小比(2×Din/Win)は0.45であり、最大比は2.57であり、平均は1よりも大きい1.17であり、圧入が十分であることが示されている。
固定砥粒ソーイングワイヤの性能をDiamond Wire Technology CT800往復実験ソー装置で確認した。幅10cmおよび高さ5cmの単結晶シリコンセミスクエアの半分を本発明のワイヤによって数回切断した。装置を3°に設定された「コンスタント・ボー・モード」で操作して、ワイヤ張力を約15Nで一定に維持し、30メートルのワイヤを7秒間サイクルさせて(往復)、(2×30/7=)約8.6m/秒の平均速度を得た。添加剤を含む水を冷却剤として使用した。
表2に従来技術で開示された鋸切断速度(シリコン試料のみを考慮)と本発明の試料によって得た鋸切断速度との比較を示す:
別の一連の実験では、別の種類のクラッディング材料、例えば銅を使用する代わりに低炭素クラッドワイヤを使用することによる、強度の向上を評価した。0.80%炭素鋼から開始して、一方は低炭素クラッディングを有し、一方は電解質銅クラッディングを有する、2種類の0.30mmワイヤ試料を作った。得られたワイヤを表3のデータによって特徴づける:
低炭素クラッドワイヤにはさらにダイヤモンド粒子を圧入して、これらの粒子はニッケル層によって固定した。2つの異なる程度の被覆度:約0.60%の被覆度を有するものおよび約2%被覆度を有するものを作製した。上記(段落〔0083〕)と同じプロトコルに従って、しかし張力を変化させて、試料を1個の単結晶シリコンに対して試験した。2%の被覆比、18Nの張力では133mm2/分の鋸切断速度が得られ、27Nの張力ではこれが164mm2/分に上昇した。0.60%の被覆比の試料は、劣った切断結果を示した。
したがって、発明者らが非常に驚いたことに、固定砥粒ソーイングワイヤの皮膜での低炭素鋼の使用は、砥粒を保持するための非常に良好な選択であることが判明した。従来技術では他の金属が鋼鉄コア表面で皮膜(銅およびニッケルなど)として使用されるが、低炭素鋼の皮膜材料としての使用、皮膜材料に関連すると仮定される多くの利点を有することが判明した:
銅の弾性率124000MPaおよびニッケルの弾性率196000MPaと比較して、鉄の弾性率は220000MPaである。したがって砥粒が鋸切断プロセスで往復して揺り動かされるときに、鉄は例えば銅以外の粒子に対して、より強力な支持を与える。
皮膜材料はコア材料に非常に良好に付着する。低炭素鋼が高炭素鋼の上に置かれるとき、材料は適合性であり、したがって相互により良好に付着する。
さらに炭素の多少の拡散が高炭素コアと皮膜との間で発生可能な場合、皮膜およびコアは相互に溶接されているかのようである。
水素が発生する腐食性環境において、ワイヤが繰返し(曲げや張力印加によって)機械的に負荷が加えられるとき、ワイヤは永続的に破損し、これは水素誘発腐食割れとして公知である。該現象が発生するのは、水素が鋼鉄組織に進入して、鋼鉄を脆性にするためである(水素脆化)。例えば絶えず冷却液に絶えず浸漬されている固定砥粒ソーイングワイヤは、このような腐食を受けやすい。US5014760に説明されているように、閉じたフェライト層はワイヤの水素誘発腐食割れを減少させることが公知である。
粒子がダイヤモンド粒子である場合、ダイヤモンドの炭素が少なくともともかく鉄中に拡散して、これによりダイヤモンドが埋め込まれた圧入された低炭素鋼を硬化させることがさらに推測される。さらにこのような拡散は、皮膜中のダイヤモンドのより良好な接着をもたらし得る。
銅の弾性率124000MPaおよびニッケルの弾性率196000MPaと比較して、鉄の弾性率は220000MPaである。したがって砥粒が鋸切断プロセスで往復して揺り動かされるときに、鉄は例えば銅以外の粒子に対して、より強力な支持を与える。
皮膜材料はコア材料に非常に良好に付着する。低炭素鋼が高炭素鋼の上に置かれるとき、材料は適合性であり、したがって相互により良好に付着する。
さらに炭素の多少の拡散が高炭素コアと皮膜との間で発生可能な場合、皮膜およびコアは相互に溶接されているかのようである。
水素が発生する腐食性環境において、ワイヤが繰返し(曲げや張力印加によって)機械的に負荷が加えられるとき、ワイヤは永続的に破損し、これは水素誘発腐食割れとして公知である。該現象が発生するのは、水素が鋼鉄組織に進入して、鋼鉄を脆性にするためである(水素脆化)。例えば絶えず冷却液に絶えず浸漬されている固定砥粒ソーイングワイヤは、このような腐食を受けやすい。US5014760に説明されているように、閉じたフェライト層はワイヤの水素誘発腐食割れを減少させることが公知である。
粒子がダイヤモンド粒子である場合、ダイヤモンドの炭素が少なくともともかく鉄中に拡散して、これによりダイヤモンドが埋め込まれた圧入された低炭素鋼を硬化させることがさらに推測される。さらにこのような拡散は、皮膜中のダイヤモンドのより良好な接着をもたらし得る。
これらの仮定は、記載した試験の後にまとめられ、注目すべき結果を説明する試みであり、事実の後にまとめられた仮定であるので、本発明を明らかにするために使用されるべきでない。
Claims (15)
- 鋼製ワイヤを含むソーイングワイヤであって、前記鋼製ワイヤがコア、皮膜、前記皮膜に固定された砥粒、および前記粒子を前記皮膜中に結合するための前記皮膜上のバインダ層を有し、前記皮膜が前記粒子の圧入を可能にする実質的にフェライト金属組織構造を有し、さらに前記コアが前記ソーイングワイヤに強度を与えるための実質的にパーライト金属組織構造を有することを特徴とする、ソーイングワイヤ。
- 前記鋼製ワイヤが重量平均マイクロビッカース硬さを有し、前記皮膜が前記平均マイクロビッカース硬さよりも低い局所マイクロビッカース硬さを有し、前記コアが前記平均マイクロビッカース硬さより高い局所マイクロビッカース硬さを有し、前記コアおよび前記皮膜が境界にて接触する、請求項1に記載のソーイングワイヤ。
- 前記重量平均マイクロビッカース硬さが少なくとも500N/mm2である、請求項2に記載のソーイングワイヤ。
- 前記コアから前記皮膜への移行が前記境界において急激であり、混合相が金属組織的に識別不可能である、請求項1〜3のいずれかに記載のソーイングワイヤ。
- 前記境界における前記コアから前記皮膜への移行が平滑であり、フェライトおよびパーライトの混合金属組織相を含む、請求項1〜3のいずれかに記載のソーイングワイヤ。
- 前記移行の幅が5ミクロンより大きく、前記局所マイクロビッカース硬さが400〜650N/mm2で変化する半径方向距離として前記幅が定義される、請求項5に記載のソーイングワイヤ。
- 前記鋼製ワイヤが炭素重量で少なくとも0.40パーセントの平均炭素含有率を有する、請求項1〜6のいずれかに記載のソーイングワイヤ。
- 前記鋼製ワイヤの全体の引張強度が2000N/mm2より大きい、請求項7に記載のソーイングワイヤ。
- 前記皮膜が前記鋼製ワイヤの外周から前記境界に向かって測定される前記半径方向距離として定義された皮膜厚を有し、前記粒子が前記鋼製ワイヤの外周に対する圧入深さを有し、前記皮膜厚が前記コアに対する損傷を回避するために、少なくとも最大圧入深さである、請求項2〜8のいずれかに記載のソーイングワイヤ。
- 前記皮膜厚が、前記皮膜中での前記粒子の固着を改善するために少なくともd90であり、d90は粒子100個のうち90個がd90未満のサイズを有する粒子のサイズである、請求項9に記載のソーイングワイヤ。
- 前記皮膜厚が前記粒子の中央値の少なくとも半分である、請求項10に記載のソーイングワイヤ。
- 前記鋼製ワイヤが直径を有し、前記皮膜厚が前記直径の7%を超える、請求項9〜11のいずれかに記載のソーイングワイヤ。
- 全ワイヤ面積で割った粒子被覆面積の割合が1〜50パーセントである、請求項1〜12のいずれかに記載のソーイングワイヤ。
- 前記バインダ層が金属バインダ層であり、該金属が鉄、ニッケル、クロム、コバルト、モリブデン、タングステン、銅、亜鉛およびその合金を含む群のうち1つである、請求項1〜13のいずれかに記載のソーイングワイヤ。
- 前記砥粒がダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化ケイ素、タングステンカーバイドまたはその混合物を含む群から選択される、請求項1〜14のいずれかに記載のソーイングワイヤ。
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
EP09152849 | 2009-02-13 | ||
EP09152849.7 | 2009-02-13 | ||
PCT/EP2010/051792 WO2010092151A1 (en) | 2009-02-13 | 2010-02-12 | Fixed abrasive sawing wire |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2012517906A true JP2012517906A (ja) | 2012-08-09 |
Family
ID=40929593
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2011549578A Withdrawn JP2012517906A (ja) | 2009-02-13 | 2010-02-12 | 固定砥粒ソーイングワイヤ |
Country Status (7)
Country | Link |
---|---|
EP (1) | EP2396134A1 (ja) |
JP (1) | JP2012517906A (ja) |
KR (1) | KR20110119705A (ja) |
CN (1) | CN102292185A (ja) |
SG (1) | SG173579A1 (ja) |
TW (1) | TW201043367A (ja) |
WO (1) | WO2010092151A1 (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2016517808A (ja) * | 2013-05-14 | 2016-06-20 | コミッサリア ア レネルジ アトミック エ オー エネルジス アルテルナティヴスCommissariat A L‘Energie Atomique Et Aux Energies Alternatives | 研削鋸引きワイヤとその製造方法および利用 |
Families Citing this family (9)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2011138189A1 (en) | 2010-05-04 | 2011-11-10 | Nv Bekaert Sa | Sawing wire and a sawing wire coil with adhesive and a method to prevent clamped windings |
JP5588786B2 (ja) * | 2010-08-24 | 2014-09-10 | 出光興産株式会社 | シリコンウェハ加工液およびシリコンウェハ加工方法 |
WO2012055711A1 (en) * | 2010-10-28 | 2012-05-03 | Nv Bekaert Sa | A fixed abrasive sawing wire and a method to produce such wire |
WO2012055712A1 (en) * | 2010-10-29 | 2012-05-03 | Nv Bekaert Sa | A sawing wire with abrasive particles electrodeposited onto a substrate wire |
EP2564965A1 (en) | 2011-08-31 | 2013-03-06 | NV Bekaert SA | Hand-held power wire saw and wire holder |
TWI605113B (zh) | 2012-07-05 | 2017-11-11 | 江陰貝卡爾特合金材料有限公司 | 具有立方八面體鑽石粒子之固定磨料鋸線 |
FR3005592B1 (fr) | 2013-05-14 | 2015-04-24 | Commissariat Energie Atomique | Fil abrasif de sciage |
JP6277385B2 (ja) * | 2014-03-27 | 2018-02-14 | 福井県 | ソーワイヤの表面形状評価方法及び装置 |
WO2016146343A1 (en) * | 2015-03-13 | 2016-09-22 | Nv Bekaert Sa | Method to produce a fixed abrasive saw wire with a metal alloy fixation layer and the wire resulting therefrom |
Family Cites Families (12)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP0008169A1 (en) | 1978-08-08 | 1980-02-20 | Imperial Chemical Industries Plc | Hydrocarbon processing |
DE3147287C2 (de) * | 1981-11-28 | 1984-07-05 | Messner, Caspar O.H., Prof.Dr.sc.techn., Zürich | Verfahren zum Herstellen eines Schneiddrahtes |
GB8601986D0 (en) | 1986-01-28 | 1986-03-05 | Bekaert Sa Nv | Steel wire |
CA1305324C (en) | 1986-04-17 | 1992-07-21 | Sumitomo Electric Industries, Ltd. | Wire incrusted with abrasive grain and method for producing the same |
JP2956717B2 (ja) * | 1991-07-10 | 1999-10-04 | 住友電気工業株式会社 | ワイヤー・ ソー用ピアノ線とその製造方法 |
US5438973A (en) | 1993-10-08 | 1995-08-08 | Crystal Systems, Inc. | Shaped blades |
CH692489A5 (fr) | 1998-01-26 | 2002-07-15 | Hct Shaping Systems Sa | Dispositif de sciage par fil pour la découpe de prismes utilisant le croisement d'au moins deux nappes de fils superposées. |
TW431924B (en) * | 1998-03-11 | 2001-05-01 | Norton Co | Superabrasive wire saw and method for making the saw |
DE19839091A1 (de) | 1998-08-27 | 2000-03-09 | Kempten Elektroschmelz Gmbh | Sägedraht |
DE10228843A1 (de) | 2002-06-27 | 2004-01-22 | Wacker-Chemie Gmbh | Verfahren zur chargenweisen Beschichtung von Sägedraht |
JP3983218B2 (ja) | 2003-10-23 | 2007-09-26 | 株式会社神戸製鋼所 | 延性に優れた極細高炭素鋼線およびその製造方法 |
EP1870496A1 (en) | 2006-06-20 | 2007-12-26 | NV Bekaert SA | An apparatus and method for electroplating a substrate in a continuous way. |
-
2010
- 2010-02-05 TW TW099103535A patent/TW201043367A/zh unknown
- 2010-02-12 KR KR1020117018854A patent/KR20110119705A/ko not_active Application Discontinuation
- 2010-02-12 JP JP2011549578A patent/JP2012517906A/ja not_active Withdrawn
- 2010-02-12 WO PCT/EP2010/051792 patent/WO2010092151A1/en active Application Filing
- 2010-02-12 SG SG2011056793A patent/SG173579A1/en unknown
- 2010-02-12 EP EP10704355A patent/EP2396134A1/en not_active Withdrawn
- 2010-02-12 CN CN2010800052684A patent/CN102292185A/zh active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2016517808A (ja) * | 2013-05-14 | 2016-06-20 | コミッサリア ア レネルジ アトミック エ オー エネルジス アルテルナティヴスCommissariat A L‘Energie Atomique Et Aux Energies Alternatives | 研削鋸引きワイヤとその製造方法および利用 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
CN102292185A (zh) | 2011-12-21 |
EP2396134A1 (en) | 2011-12-21 |
SG173579A1 (en) | 2011-09-29 |
TW201043367A (en) | 2010-12-16 |
WO2010092151A1 (en) | 2010-08-19 |
KR20110119705A (ko) | 2011-11-02 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP2012517906A (ja) | 固定砥粒ソーイングワイヤ | |
US20120037140A1 (en) | Fixed abrasive sawing wire with a rough interface between core and outer sheath | |
US8720429B2 (en) | Sawing wire with abrasive particles partly embedded in a metal wire and partly held by an organic binder | |
US9211634B2 (en) | Abrasive articles including abrasive particles bonded to an elongated substrate body having a barrier layer, and methods of forming thereof | |
JP5833550B2 (ja) | 表面変性研磨材粒子を含む精密ワイヤ | |
JP4083177B2 (ja) | ワイヤソー | |
TWI664057B (zh) | 研磨物品及形成方法 | |
JP5548982B2 (ja) | ソーワイヤー及びその製造方法 | |
EP2986416A1 (en) | Abrasive article and method of forming | |
JP2015521957A (ja) | 立方八面体のダイヤモンド粒子を有する固定砥粒ソーイングワイヤ | |
JP2004261889A (ja) | 固定砥粒式ソーワイヤの製造方法 | |
KR20180031675A (ko) | 경질 재료의 잉곳으로부터 슬라이스를 절삭하기 위한 연마 와이어 | |
JP5721021B2 (ja) | ソーワイヤーの芯材用金属細線及びその製造方法 | |
EP2572818A1 (en) | A fixed abrasive sawing wire with improved abrasive particle retention | |
JP6119495B2 (ja) | ソーワイヤ及びコアワイヤ | |
TWI552820B (zh) | 固定磨料鋸線及彼之製造方法 | |
KR20120120344A (ko) | 수지 피복 쏘 와이어의 설계 방법 | |
JP2017008420A (ja) | エッチングカット用ワイヤーの製造方法及びこの方法で得られたエッチングカット用ワイヤーを用いた無機性脆性材料のカット方法 | |
TWI533960B (zh) | 固定磨料鋸線及此種鋸線的製造方法 | |
JPH11347910A (ja) | ワイヤソー用高強力ワイヤ | |
JP3447963B2 (ja) | ワイヤーソー用めっき鋼線 | |
JPH0839416A (ja) | ワイヤソー用ワイヤ | |
JP6000730B2 (ja) | 固定砥粒式ソーワイヤ用のコアワイヤ | |
JP2014070277A (ja) | エッチングカット用ワイヤー及びこれを用いた無機性脆性材料のカット方法 | |
JP2001225255A (ja) | ワイヤソー用ワイヤ |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A300 | Application deemed to be withdrawn because no request for examination was validly filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20130507 |