JP2012516135A - ヤロウィア属に属する酵母を用いてコハク酸を製造する方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、コハク酸デヒドロゲナーゼの活性が低減するように改変されたヤロウィア属に属する酵母を用いてコハク酸を製造する方法を提供する。
Description
本発明は、微生物利用産業に関係し、具体的には、コハク酸デヒドロゲナーゼの活性が低減されたヤロウィア属(Yarrowia)に属する酵母を用いてコハク酸を製造する方法である。
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)は、クエン酸、イソクエン酸等のトリカルボン酸回路中間体を初めとする種々の有機酸を生成し、培地中に分泌する能力を有する点で特徴的な酵母である。Y.lipolytica N 1は、連続培養中に培地中の鉄濃度に応じて、生育、及びクエン酸合成に必要な酸素の量が異なることが分かっている。酸素濃度、及び鉄濃度の組合せがY.lipolytica
N 1のミトコンドリア電子伝達系の機能に影響することが証明されている。連続培養の結果に基づき、Y.lipolytica N 1を用いたバッチ培養でのクエン酸を生成させる条件が提唱されている(非特許文献1)。
N 1のミトコンドリア電子伝達系の機能に影響することが証明されている。連続培養の結果に基づき、Y.lipolytica N 1を用いたバッチ培養でのクエン酸を生成させる条件が提唱されている(非特許文献1)。
コハク酸はC4ジカルボン酸ファミリーの一つであり、食品、医薬品、及び生分解性プラスチックの製造に広く用いられている。従来、コハク酸は再生不能な石油化学原料から化学合成により製造されており、これらの化学的プロセスは環境汚染を引き起こす。したがって、微生物等、効率的な自然界由来のコハク酸生産生物の利用に大きな注目が集めてられてきた。
産業的価値があり、特殊化学品であるコハク酸の生成を向上させる取り組みの多くは、大腸菌を嫌気条件下で、混合酸発酵で行って来た。好気条件で、大腸菌が効率的にコハク酸を生成、及び蓄積する為のコハク酸生産システムが戦略的に設計されており、このシステムは、好気的に働く中央代謝経路を新たに創出することにより、大腸菌での好気的コハク酸生成を促進する最初のプラットフォームを提供する(非特許文献2)。
好気条件下でコハク酸を生成するように設計された種々の大腸菌変異株がケモスタット(恒成分培養)を用いて解析されている。代謝産物プロフィール、酵素活性、及び遺伝子発現プロフィールが研究され、これらの変異株中で作動している代謝ネットワークの理解が深まった。最も効率的なコハク酸生成変異HL27659k株は以下の5つの変異を有する:sdhAB、(ackA−pta)、poxB、iclR、及びptsG。HL27659k株で操作されたコハク酸合成経路は非常に効率的であり、好気条件下でコハク酸を唯一の主要産物として生じることが示されている(非特許文献3)。
高レベルのコハク酸生成能を確認、及び実証するために、好気条件下でHL27659k(pKK313)株の流加培養反応実験が行われた。その結果、この設計されたHL27659k(pKK313)株を用いた好気的コハク酸生産システムは従来の嫌気的コハク酸生産システムよりも実用的であることが示された。これは工業規模でのコハク酸製造、及びプロセス最適化の大きな可能性を秘めている(非特許文献4)。
酸化還元の不均衡により嫌気下でグルコースからの発酵能が失われたNZN111のpflB ldhA二重変異体の2段階培養がコハク酸生産のために行われた。NZN111を酢酸で好気培養するとグルコースからの発酵能が回復し、その後の嫌気培養では、コハク酸を主要な産物として生成することが見出された。主要酵素の活性解析により、酢酸で増殖させた細胞中において、イソクエン酸リアーゼ、リンゴ酸脱水素酵素、リンゴ酸酵素、及びホスホエノールピルビン酸(PEP)カルボキシキナーゼの活性が大幅に上昇し
ており、ピルビン酸キナーゼ、及びPEPカルボキシラーゼの活性が低下していることが示された。これらの結果は、代謝改変された大腸菌株でコハク酸生産能を向上させるには、細胞制御機構の利用が有意義であることを示唆している(非特許文献5)。
ており、ピルビン酸キナーゼ、及びPEPカルボキシラーゼの活性が低下していることが示された。これらの結果は、代謝改変された大腸菌株でコハク酸生産能を向上させるには、細胞制御機構の利用が有意義であることを示唆している(非特許文献5)。
嫌気発酵での代謝を理解し、最終的には副生物を生成しない改変株を開発する為に、完全ゲノム配列を基にコハク酸生産能を有する好二酸化炭素性ルーメン細菌、マンヘイミア・サクシニシプロデュセンス(Mannheimia succiniciproducens)の遺伝子欠損株の解析が行われた。ホスホエノールピルビン酸(PEP)カルボキシキナーゼ、PEPカルボキシラーゼ、及びリンゴ酸酵素により触媒される3つの異なるCO2固定代謝反応のうち、M.succiniciproducensの嫌気下での増殖、及びコハク酸生成にはPEPカルボキシキナーゼが最も重要であった。PEPのカルボキシル化により形成されるオキサロ酢酸はリンゴ酸脱水素酵素、フマラーゼ、及びフマル酸還元酵素により触媒される3つの連続する反応でコハク酸に変換されることが分かっている。ldhA、pflB、pta、及びackA遺伝子を破壊することで副産物生成につながる主要な代謝経路を除去することに成功している。代謝改変されたLPK7株は酢酸、ギ酸、及び乳酸をほとんど、もしくは全く形成せずにグルコースからコハク酸を生成することが可能である(非特許文献6)。
アナエロビオスピリルム・サクシニシプロデュセンス(Anaerobiospirillum succiniciproducens)の生育、並びにグルコースからの乳酸生成量に対するコハク酸生成量は、利用可能な二酸化炭素レベル、及び培養pHにより制御された。グルコース1モル当たりのコハク酸、並びにATP収量はCO2−HCO3 -が過剰な生育環境下で有意に増加し、A.succiniciproducensのコハク酸生成の増加には、CO2閾値レベルが存在することが示唆された。プロピオン酸も形成する他のコハク酸生成能を有する嫌気性細菌とは異なり、A.succiniciproducensはpH6.2のCO2−HCO3 -過剰存在下で電子受容代謝を制御することにより急速に増殖することができ、最終的に高収量のコハク酸を形成できることが示された(非特許文献7)。
化学合成培地を使うことで非合成培地では不可能であった、種々の代謝解析が可能となる。コハク酸を生成するアクチノバチルス・サクシノゲネス(Actinobacillus succinogenes)の発酵代謝を解析する機会を増やすために合成培地、AM3、が作製された。AM3培地での発酵、及び富栄養培地での発酵におけるA.succinogenesの増殖傾向、及び最終産物分布が比較された。A.succinogenesはグルコースからα−ケトグルタル酸を合成できないことから、トリカルボン酸回路に関連する少なくとも2つの酵素の活性を有さないことが示唆されている(非特許文献8)。
adhE、ldhA、iclR、arcA、及び/又はack−pta遺伝子が破壊された大腸菌を用いて、嫌気条件下で多量のコハク酸を生成する方法が開示されている(特許文献1)。
ptsG、pflB、及びldhA遺伝子に変異を含む生物(大腸菌、クレブシエラ、エルウィニア、ラクトバチルス)を供給し、この生物にバイオマスを蓄積させて加水分解産物を代謝させることで工業グレードの加水分解産物からコハク酸を製造する方法が開示されている(特許文献2)。
コハク酸生産量の多くない株をセレクションし、通常の糖代謝制御を破壊し、嫌気条件中で変異株を選択された糖と組み合わせてコハク酸生成を促すことでコハク酸を生成する発酵プロセスが開示されている。また、ホスホトランスフェラーゼ系を有する株をセレク
ションし、ホスホトランスフェラーゼ系を改変させた株が異なる糖を同時に代謝できるようにすることで、低収量コハク酸生産菌を高収量コハク酸生産菌に変化させる方法も開示されている(特許文献3)。
ションし、ホスホトランスフェラーゼ系を改変させた株が異なる糖を同時に代謝できるようにすることで、低収量コハク酸生産菌を高収量コハク酸生産菌に変化させる方法も開示されている(特許文献3)。
サッカロミセス・セレビシエのコハク酸デヒドロゲナーゼ(SDH)はSDH1、SDH2、SDH3、及びSDH4遺伝子にコードされる4つのサブユニットを含む。SDH活性の完全な消失にはSDH1及びSDH2、又はSDH1b(SDH1ホモログ)遺伝子の二重破壊が必要であり、SDH1b遺伝子がSDH1遺伝子の機能を補償することが明らかにされている。sdh1 とsdh1b遺伝子を欠損した株では、振盪条件下で野生株に比べてリンゴ酸生成が低減されており、コハク酸生成は最大1.9倍だけ増加していた(非特許文献9)。
TCA回路に必要な酵素をコードする種々の遺伝子が破壊された一連のサッカロミセス・セレビシエ株を好気条件及び嫌気条件下において高濃度グルコース(15%)存在下で液体培養することでコハク酸が蓄積される経路を調べた。その結果、コハク酸が2つの経路、すなわちTCA回路を介したα−ケトグルタル酸酸化、及び嫌気条件下でのフマル酸還元により合成され得ることが示された(非特許文献10)。
リンゴ酸酵素B(maeB)、フマル酸ヒドラターゼC(fumC)、又はギ酸脱水素酵素D及びE(fdhD及びfdhE)をコードする遺伝子を含む組換えベクターで形質転換した微生物を用いたコハク酸生成法が開示されている(それぞれ特許文献4、5、及び6)。
コハク酸生成と微生物の増殖の共役に関わる代謝改変のセットには、以下の遺伝子の一つ、又は複数の破壊が含まれる:(a)adhE、ldhA;(b)adhE、ldhA、acka−pta;(c)pfl、ldhA;(d)pfl、ldhA、adhE;(e)acka−pta、pykF、atpF、sdhA;(f)acka−pta、pykF、ptsG、又は(g)acka−pta、pykF、ptsG、adhE、ldhA(特許文献7)。
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しかし、現在、コハク酸生成を目的としたヤロウィア属に属する酵母のコハク酸デヒドロゲナーゼ活性の低減に関する報告はされていない。
本発明の態様には、ヤロウィア属に属する酵母におけるコハク酸の生産性を向上させること、及びコハク酸を製造する方法を提供することが含まれる。
上記態様は、コハク酸デヒドロゲナーゼの活性を低減させることでコハク酸の生成を顕著に向上させることができるという発見により達成された。
本発明の一態様は、コハク酸を生成し且つコハク酸デヒドロゲナーゼの活性が低減されているヤロウィア属に属する酵母を提供することである。
本発明の別の態様は、SDH1(YALI0D11374g)、SDH2(YALI0D23397g)、SDH3(YALI0E29667g)、SDH4(YALI0A14784g)、及びその組合せからなる群から選択される遺伝子の発現が減弱されるように改変されている前記酵母を提供することである。
本発明の別の態様は、SDH1(YALI0D11374g)への温度感受性変異の導入により前記SDH1(YALI0D1l374g)の発現が減弱されている前記酵母を提供することである。
本発明の別の態様は、SDH2(YALI0D23397g)の不活化により前記SDH2(YALI0D23397g)の発現が減弱されている前記酵母を提供することである。
本発明の別の態様は、ヤロウィア・リポリティカである前記酵母を提供することである。
本発明の別の態様は、ヤロウィア・リポリティカVKPM Y−3314である前記酵母を提供することである。
本発明の別の態様は、前記酵母を培地中で培養する工程、及び培養培地からコハク酸を回収する工程を含む、コハク酸製造方法を提供することである。
本発明の別の態様は、前記培養の少なくとも一部がpH4未満で行われる前記方法を提供することである。
本発明の別の態様は、前記培養培地がグリセロールを含む前記方法を提供することである。
本発明の別の態様は、上記の方法によりコハク酸を生成する工程、及び得られたコハク酸を重合化する工程を含む、コハク酸含有ポリマーの製造方法を提供することである。
以下に本発明を詳細に記載する。
「コハク酸(succinic acid;succinate)」という用語は、pH及びイオン状態に応じて、遊離のコハク酸であってもよく、その塩であってもよい。コハク酸(succinic acid)および(succinate)という用語は、ここでは、どちらを使っても変わりはない。
1.酵母
本開示の酵母はヤロウィア属に属し、コハク酸を生成し、コハク酸デヒドロゲナーゼの活性が低減されている。
本開示の酵母はヤロウィア属に属し、コハク酸を生成し、コハク酸デヒドロゲナーゼの活性が低減されている。
「ヤロウィア属に属する酵母」という表現は、微生物学分野の当業者に公知の分類に従って酵母がヤロウィア属に分類されることを意味する。ヤロウィア属に属する酵母の例としては、ヤロウィア・リポリティカ(Y.lipolytica)が含まれる。「前記酵母がコハク酸を生成する」という表現は、培地中で培養した時に、酵母がコハク酸を生成し、培地に分泌する能力を有することを意味する。
「前記酵母がコハク酸を生成する」という表現はまた、酵母が、野生株、非改変株、又は親株よりも多くの量のコハク酸を生成、及び蓄積する能力を有することを意味し、好ましくは、酵母が1.0g/L以上、5.0g/L以上、又は10.0g/L以上の量のコハク酸を培地中に蓄積させることができることを意味する。
「(前記酵母)のコハク酸デヒドロゲナーゼ活性が低減されている」という表現は、細胞中のコハク酸デヒドロゲナーゼ活性が非改変株、野生株、又は親株よりも低減されるように酵母が改変されていることを意味する。
コハク酸デヒドロゲナーゼ(SDH)は、クレブス回路中でコハク酸のフマル酸への酸化を触媒しユビキノンプールに電子を供給する呼吸鎖複合体IIの成分である。進化の過程で高度に保存されてきたこの複合体は、ミトコンドリア内膜中にあり、2つの触媒サブユニット及び2つの構造的サブユニットを含み、これらは全て核遺伝子にコードされている。サッカロミセス・セレビシエでは、SDHをコードする4つの遺伝子(SDH1〜SDH4)が単離及び解析されている。コハク酸のフマル酸への酸化に関与するフラビンタンパク質サブユニットは2つのパラロガス遺伝子、SDH1及びSDH1bにコードされているが、炭素源で、呼吸を伴う生育に必要なのはSDH1だけである。SDH2は3つの異なる鉄−硫黄中心を含む鉄−タンパク質サブユニットをコードし、このサブユニットはタンパク質Sdh1pと共にSDH複合体の触媒コアを構成し、触媒コアは、共有結合されたSdh1pのフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)から電子を最初に鉄−硫黄中心に伝達し、次いでユビキノンに伝達する。SDH3及びSDH4は2つの小さな疎水性ペプチドをコードし、これらのペプチドはミトコンドリア内膜に複合体を固定する(Saliola M. et al., Eukaryot Cell; 3(3): 589-97(2004))。
Y.lipolytica CLIB122のゲノム配列が解析されており(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez)、YALI0D11374g、YALI0D233
97g、YALI0E29667g、及びYALI0A14784gのORFがそれぞれS.cerevisiaeのSDH1、SDH2、SDH3、及びSDH4遺伝子と相同であることが分かっている。これらのORFはそれぞれSDH1、SDH2、SDH3、及びSDH4と命名された。SDH1遺伝子のヌクレオチド配列、及びSDH1遺伝子にコードされるSDH1のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号1及び配列番号2に示す。SDH2遺伝子のヌクレオチド配列、及びSDH2遺伝子にコードされるSDH2のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号3及び配列番号4に示す。SDH3遺伝子のヌクレオチド配列及びSDH3遺伝子にコードされるSDH3のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号5、及び配列番号6に示す。SDH4遺伝子のヌクレオチド配列、及びSDH4遺伝子にコードされるSDH4のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号7、及び配列番号8に示す。
97g、YALI0E29667g、及びYALI0A14784gのORFがそれぞれS.cerevisiaeのSDH1、SDH2、SDH3、及びSDH4遺伝子と相同であることが分かっている。これらのORFはそれぞれSDH1、SDH2、SDH3、及びSDH4と命名された。SDH1遺伝子のヌクレオチド配列、及びSDH1遺伝子にコードされるSDH1のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号1及び配列番号2に示す。SDH2遺伝子のヌクレオチド配列、及びSDH2遺伝子にコードされるSDH2のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号3及び配列番号4に示す。SDH3遺伝子のヌクレオチド配列及びSDH3遺伝子にコードされるSDH3のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号5、及び配列番号6に示す。SDH4遺伝子のヌクレオチド配列、及びSDH4遺伝子にコードされるSDH4のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号7、及び配列番号8に示す。
ヤロウィア属の異なる株の間でDNA配列が幾分異なることがあり得るので、改変されるSDH1、SDH2、SDH3、及びSDH4遺伝子は配列番号1、配列番号3、配列番号5、及び配列番号7に限定されず、SDH1、SDH2、SDH3、及びSDH4タンパク質のバリアントタンパク質をそれぞれコードする配列番号1、配列番号3、配列番号5、及び配列番号7に相同な遺伝子も含まれ得る。「バリアントタンパク質」という用語は、配列中に変化を有するタンパク質を意味し、変化がアミノ酸の欠失、挿入、付加、又は置換のいずれであれ、SDH1/SDH2/SDH3/SDH4タンパク質としての産物の活性は維持されている。バリアントタンパク質中の変化の数はタンパク質の三次元構造中の位置又はアミノ酸残基の種類に応じて異なる。変化の数は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、及び配列番号8中の1〜30個、別の例では1〜15個、別の例では1〜5個であり得る。バリアント中のこれらの変化は、タンパク質の機能に必須ではないタンパク質領域に起こり得る。これは、いくつかのアミノ酸が互いに高い相同性を有しているためにそのような変化により三次元構造又は活性が影響されないことによる。したがって、SDH1、SDH2、SDH3、及びSDH4遺伝子にコードされるタンパク質バリアントは、改変前のSDH1、SDH2、SDH3、又はSDH4タンパク質の活性が維持されてさえいれば、配列番号2、配列番号4、配列番号6、及び配列番号8に示す全アミノ酸配列に対して例えば80%以上、別の例では90%以上、別の例では95%以上、別の例では98%以上の相同性を有するものであってよい。
2つのアミノ酸配列間の相同性は、周知の方法、例えばスコア、同一性、及び類似性の3つのパラメータを計算するコンピュータプログラムBLAST2.0を用いて決定することができる。
1つ、又は複数のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、又は付加は、活性が維持されるような保存的変異であり得る。代表的な保存的変異としては保存的置換を挙げることができる。保存的置換の例としては、AlaのSer又はThrへの置換、ArgのGln、His、又はLysへの置換、AsnのGlu、Gln、Lys、His、又はAspへの置換、AspのAsn、Glu、又はGlnへの置換、CysのSer又はAlaへの置換、GlnのAsn、Glu、Lys、His、Asp、又はArgへの置換、GluのAsn、Gln、Lys、又はAspへの置換、GIyのProへの置換、HisのAsn、Lys、Gln、Arg、又はTyrへの置換、IleのLeu、Met、Val、又はPheへの置換、LeuのIle、Met、Val、又はPheへの置換、LysのAsn、Glu、Gln、His又は、Argへの置換、MetのIle、Leu、Val、又はPheへの置換、PheのTrp、Tyr、Met、Ile、又はLeuへの置換、SerのThr又はAlaへの置換、ThrのSer又はAlaへの置換、TrpのPhe又はTyrへの置換、TyrのHis、Phe、又はTrpへの置換、及びValのMet、Ile、又はLeuへの置換が含まれる。
更に、SDH1、SDH2、SDH3、及びSDH4遺伝子は、不活化前の機能的タン
パク質をコードしてさえいれば、それぞれ配列番号1、配列番号3、配列番号5、及び配列番号7に示す配列に相補的なヌクレオチド配列又は該ヌクレオチド配列から調製され得るプローブとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするバリアントであってよい。「ストリンジェントな条件」には、特異的なハイブリッド、例えば、70%以上、別の例では80%以上、別の例では90%以上、別の例では95%以上、別の例では98%以上の相同性を有するハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッド、例えば上記より相同性の低いハイブリッドが形成されない条件が含まれる。例えば、ストリンジェントな条件の例としては、塩濃度1×SSC、0.1%SDS、別の例では0.1×SSC、0.1%SDSを用いて60℃で1回以上の洗浄、別の例では2回又は3回の洗浄が挙げられる。洗浄時間はブロッティングに用いるメンブレンの種類によって変わり、原則としてメーカーが推奨する通りであってよい。例えば、Hybond(商標) N+ナイロンメンブレン(アマシャム社製)のストリンジェントな条件下での推奨される洗浄時間は15分である。好ましくは、洗浄は2〜3回行われ得る。プローブの長さはハイブリダイゼーション条件に応じて好適に選択することができ、通常、100bp〜1kbpである。
パク質をコードしてさえいれば、それぞれ配列番号1、配列番号3、配列番号5、及び配列番号7に示す配列に相補的なヌクレオチド配列又は該ヌクレオチド配列から調製され得るプローブとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするバリアントであってよい。「ストリンジェントな条件」には、特異的なハイブリッド、例えば、70%以上、別の例では80%以上、別の例では90%以上、別の例では95%以上、別の例では98%以上の相同性を有するハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッド、例えば上記より相同性の低いハイブリッドが形成されない条件が含まれる。例えば、ストリンジェントな条件の例としては、塩濃度1×SSC、0.1%SDS、別の例では0.1×SSC、0.1%SDSを用いて60℃で1回以上の洗浄、別の例では2回又は3回の洗浄が挙げられる。洗浄時間はブロッティングに用いるメンブレンの種類によって変わり、原則としてメーカーが推奨する通りであってよい。例えば、Hybond(商標) N+ナイロンメンブレン(アマシャム社製)のストリンジェントな条件下での推奨される洗浄時間は15分である。好ましくは、洗浄は2〜3回行われ得る。プローブの長さはハイブリダイゼーション条件に応じて好適に選択することができ、通常、100bp〜1kbpである。
SDH1、SDH2、SDH3、及びSDH4遺伝子の1又は複数の発現を減弱させることで酵母のコハク酸デヒドロゲナーゼ活性を低減させることができる。遺伝子の発現を減弱させるために、酵母は、遺伝子にコードされるタンパク質の細胞中の量が非改変酵母に比べて少なくなるように、又は遺伝子にコードされるタンパク質を細胞が合成できないように、改変され得る。そのような酵母の改変は、プロモーター、シャイン・ダルガノ(AD)配列等の遺伝子発現調節配列を変化させることでなされ得る。更に、SDH1、SDH2、SDH3、又はSDH4遺伝子の発現は、遺伝子にコードされるタンパク質の細胞内活性が非改変株に比べて低減されるように染色体上の遺伝子に変異を導入することでも減弱され得る。そのような遺伝子上の変異は、薬剤耐性遺伝子の挿入又は遺伝子の一部、若しくは遺伝子全体の欠失であってよい(Qiu, Z. and Goodman, M.F., J. Biol. Chem., 272, 8611-8617 (1997);Kwon, D. H. et al, J. Antimicrob. Chemother., 46, 793-796 (2000))。遺伝子にコードされるタンパク質の活性は、遺伝子中の1又は複数の塩基を置換してタンパク質中のアミノ酸置換を生じさせること(ミスセンス変異)、終止コドンを導入すること(ナンセンス変異)、1又は2個の塩基を欠失させてフレームシフトを生じさせることでも低減され得る。
例えば、以下の方法を用いて遺伝子組み換えにより変異を導入することができる。活性が低減された変異タンパク質をコードする変異遺伝子を作製し、改変する酵母を変異遺伝子を含むDNA断片で形質転換し、染色体上の在来遺伝子が相同組換えにより変異遺伝子で置換された後、得られた(染色体上の在来遺伝子が変異遺伝子で置換された)株のセレクションが行われ得る。相同組換えを用いた遺伝子置換によるそのような部位特異的変異は既に確立されている。後述する実施例では、Y.lipolytica Polf(ATCC MYA−2613)の染色体上のSDH1遺伝子に温度感受性変異を導入している。この変異により、得られたPolf(SDH1−ts−0134)株及びPolf(SDH1−ts−2007)株では高温(32℃)でSDH1遺伝子の発現が減弱され且つコハク酸デヒドロゲナーゼ活性が低減されている。
SDH1、SDH2、SDH3、又はSDH4遺伝子の発現は遺伝子を不活化することでも減弱することができる。「遺伝子を不活化する」という表現は、改変遺伝子が完全に不活性なタンパク質をコードすることを意味し得る。遺伝子の一部又は全体の欠失、遺伝子の読み枠のシフト、ミスセンス/ナンセンス変異の導入、又は例えばプロモーター、エンハンサー、アテニュエーター、リボソーム結合部位等の遺伝子発現を調節する配列を含む遺伝子隣接領域の改変により、改変DNA領域が天然に遺伝子を発現できないこともあり得る。
前述の遺伝子置換は以下のように行うことができる。すなわち、変異遺伝子を含む組換えDNAで酵母を形質転換して変異遺伝子と対応する染色体遺伝子の間で組換えを生じさせる。そうすると、組換えDNAに挿入されているマーカー遺伝子により、宿主の栄養要求性等の特徴に基づき、操作が容易になる。更に、例えば制限酵素を用いた切断により、前述の組換えDNAを線状化し、更に酵母中で機能する複製制御領域を組換えDNAから除去することで、染色体に組換えDNAが組み込まれた株を効率的に生じさせることができる。後述する実施例では、Y.lipolytica Polf(ATCC MYA−2613)の染色体上のSDH2遺伝子を不活化させることで、コハク酸を生成し且つコハク酸デヒドロゲナーゼの活性が低減されているPolf(dSDH2)を得ている。Polf(dSDH2)の変異株の中から、コハク酸生成能力が高いY.lipolytica VKPM Y−3314を選択した。
紫外線照射、及びニトロソグアニジン(N−メチル−N'−ニトロ−N−ニトロソグアニジン)、又はメトキシルアミンを用いた突然変異誘発処理等の従来の方法を用いるか、遺伝子のコード領域にトランスポゾン又はIS因子を挿入する(米国特許第5,175,107号)ことでも、遺伝子発現を減弱させる、若しくは遺伝子を不活化することができる。
プラスミドDNAの調製、DNAの消化、及びライゲーション、形質転換、プライマーとしてのオリゴヌクレオチドの選択等の方法は当業者に周知の通常の方法であってよい。これらの方法は、例えばSambrook, J., Fritsch, E.F., and Maniatis, T., "Molecular Cloning A Laboratory Manual, Second Edition", Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)に記載されている。酵母の形質転換には、プロトプラスト法、エレクトロポレーション法等の酵母の形質転換に従来用いられている方法を使用することができる。
2.方法
本明細書に記載の酵母を培地中で培養してコハク酸を生成させて培地中に分泌させる工程及び培地からコハク酸を回収する工程を含むコハク酸製造方法を記載する。
本明細書に記載の酵母を培地中で培養してコハク酸を生成させて培地中に分泌させる工程及び培地からコハク酸を回収する工程を含むコハク酸製造方法を記載する。
培養、回収、及び培地からのコハク酸の精製等は、微生物を用いてコハク酸を製造する従来の発酵法と同様に行うことができる。
培養に用いる培地は、炭素源、窒素源、ミネラル、及び必要に応じて酵母の生育に必要な適切な量の栄養素を含む培地であれば、合成培地であっても天然培地であってもよい。炭素源としては、グルコース、スクロース等の種々の炭水化物及び種々の有機酸が含まれ得る。使用する微生物の同化様式に応じて、エタノール、グリセロール等のアルコールを用いてもよい。窒素源としては、アンモニア、硫酸アンモニウム等の種々のアンモニウム塩、アミン等のその他の窒素化合物、ペプトン、大豆加水分解産物、消化された発酵微生物等の天然窒素源を用いることができる。ミネラルとしては、モノリン酸カリウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、塩化カルシウム等を用いることができる。ビタミンとしては、チアミン、酵母エキス等を用いることができる。
培養は、20〜40℃、別の例では24〜32℃の温度で、振盪培養及び通気しながらの撹拌培養等の好気条件下で行われ得る。培養pHは通常2〜9であり、別の例では3〜7.5である。培養pHはアンモニア、炭酸カルシウム、種々の塩基、及びバッファーで調整され得る。あるいは、培地のpHを低下させ、主なコハク酸蓄積が起こる酸性条件を維持しながらpHを調整せずに培養を行ってもよい。培養の少なくとも一部は、より多くのコハク酸が生成されるようにpH4未満に維持され得る。通常、1〜7日間の培養で液体培地中にコハク酸が蓄積される。
培養後、細胞等の固形物は遠心分離又は膜濾過により液体培地から除去され、その後、イオン交換、濃縮、及び/又は結晶化法によりコハク酸を回収及び精製することができる。
更に、コハク酸生成後、得られたコハク酸を原材料として用いて重合化反応を行い、コハク酸含有ポリマーを生成してもよい。近年、環境に優しい工業製品の数が増加しており、植物起源の原材料を用いて製造されたポリマーが注目を集めている。生成されたコハク酸はその後、ポリエステル、ポリアミド等のポリマーに加工してもよい。コハク酸含有ポリマーの具体例としては、ブタンジオール又はエチレングリコール等のジオールとコハク酸との重合化により得られるコハク酸ポリエステル及びヘキサメチレンジアミン等のジアミンとコハク酸との重合化により得られるコハク酸ポリアミドが含まれる。更に、コハク酸又はコハク酸を含む組成物は食品添加物、医薬品、化粧品等に用いることができる。
以下に非限定的な実施例を用いて本発明をより具体的に説明する。
実施例1.SDH1遺伝子中に温度感受性(ts−)変異を有する株の構築
1.プラスミドpURA−ddSDH1の構築
まず、PCRでURA3遺伝子を含むDNA断片を得た。プライマーP1(配列番号9)及びP2(配列番号10)をPCRに使用した。Kaiser et al.(1994 Methods in Yeast Genetics. Cold Spring Harbor, NY: Cold Spring Harbor Laboratory)に記載の方法を用いて、Y.lipolytica W29(CLIB(フランス、78850、ティヴェルヴァル=グリニョンのCollection de Levures d’Interet Biotechnologique(Collection of Yeasts of Biotechnological Interest))アクセッション番号CLIB89)の全ゲノムDNAを単離し、PCR反応の鋳型として用いた。Y.lipolytica W29株はATCC(ATCC20460)からも入手可能である。
1.プラスミドpURA−ddSDH1の構築
まず、PCRでURA3遺伝子を含むDNA断片を得た。プライマーP1(配列番号9)及びP2(配列番号10)をPCRに使用した。Kaiser et al.(1994 Methods in Yeast Genetics. Cold Spring Harbor, NY: Cold Spring Harbor Laboratory)に記載の方法を用いて、Y.lipolytica W29(CLIB(フランス、78850、ティヴェルヴァル=グリニョンのCollection de Levures d’Interet Biotechnologique(Collection of Yeasts of Biotechnological Interest))アクセッション番号CLIB89)の全ゲノムDNAを単離し、PCR反応の鋳型として用いた。Y.lipolytica W29株はATCC(ATCC20460)からも入手可能である。
1972bpのPCR産物を得、1%アガロースゲル中で精製した。このPCR産物(0.5μg)を、Ecl36IIエンドヌクレアーゼで予め処理したpUC19(0.2μg)にライゲーションした。得られたプラスミドを、Sambrook et al.(Molecular Cloning, second edition, Cold Spring Harbor Laboratory, Plainview, N.Y.(1989))に記載されているように、大腸菌株XL−1(Blue)(ストラタジーン社製、カタログ番号200228)のエレクトロポレーションに用いた。100μg/mlのアンピシリンを含むL寒天培地にプレーティングし、β−ガラクトシダーゼ活性がないことを調べることで、標的のインサートを含むクローンをセレクションした。セレクションしたクローンからプラスミドDNAを単離し、制限分析により試験した。得られたプラスミド(4658bp)はY.lipolyticaのURA3遺伝子及びその調節領域を含んでいた。このプラスミドをpUC−URA3と命名した。
一部、欠損の入ったSDH1遺伝子を含むDNA断片を得るために、PCRを用いて2つのDNA断片を得た。PCR反応はY.lipolytica W29の全ゲノムDNAを鋳型とし、プライマーP3(配列番号11)及びP4(配列番号12)並びにP5(配列番号13)及びP6(配列番号14)を用いて行い、それぞれ1223bp及び1768bpのDNA断片が得られた。PCRにはPfuポリメラーゼを用いた。得られたPCR産物を1%アガロースゲル中で精製した後、DNA断片(それぞれ0.05μg)を、Pfuポリメラーゼ並びにプライマーP3及びP6を用いたPCRの鋳型として用いた。2968bpの産物が得られ、これを1%アガロースゲル中で精製した。PCR産物(0.5μg)をエンドヌクレアーゼXbaI及びHindIIIで処理し、その後、予めエ
ンドヌクレアーゼXbaI及びHindIIIで処理してアルカリホスファターゼCIAPで脱リン酸化したpUC−URA3にライゲーションした。得られたプラスミドを大腸菌株XL−1(Blue)のエレクトロポレーションに用いた。100μg/mlのアンピシリンを含むL寒天プレートにプレーティングして形質転換体のクローンを選択した。選択したクローンからプラスミドDNAを単離した。得られたプラスミド(7608bp)は、195bpの領域及び調節領域を欠失したY.lipolyticaのSDH1遺伝子を含んでいた。このプラスミドをpUC−URA3−dSDH1と命名した。
ンドヌクレアーゼXbaI及びHindIIIで処理してアルカリホスファターゼCIAPで脱リン酸化したpUC−URA3にライゲーションした。得られたプラスミドを大腸菌株XL−1(Blue)のエレクトロポレーションに用いた。100μg/mlのアンピシリンを含むL寒天プレートにプレーティングして形質転換体のクローンを選択した。選択したクローンからプラスミドDNAを単離した。得られたプラスミド(7608bp)は、195bpの領域及び調節領域を欠失したY.lipolyticaのSDH1遺伝子を含んでいた。このプラスミドをpUC−URA3−dSDH1と命名した。
プラスミドpUC−URA3−dSDH1(0.05μg)をエンドヌクレアーゼXbaI及びXmaJIで処理した。得られたDNA断片の大きい方を1%アガロースゲル中で精製した。リガーゼT4処理後に得られた6394bpのDNA断片を大腸菌株XL−1(Blue)のエレクトロポレーションに用いた。100μg/mlのアンピシリンを含むL寒天プレートにプレーティングして形質転換体のクローンを選択した。選択したクローンからプラスミドDNAを単離し、制限分析により試験した。得られたプラスミド(6394bp)はY.lipolyticaのSDH1遺伝子のORFの大部分及びターミネーターを含んでいた。このプラスミドをpURA−ddSDH1を命名した。
2.Polf/pURA−ddSDH−ts No.2007株及びPolf/pURA−ddSDH−ts No.0134株の構築
Kadonaga J.T and Knowles J.R., N.A.R.,13(5), 1733-45 (1985)に記載されているように、プラスミドpURA−ddSDH1(15μg)をインビトロでメトキシルアミン処理した。透析後の溶液から得られたDNAをエタノールで沈殿させ、洗浄し、大腸菌株XL−1(Blue)のエレクトロポレーションに用いた。100μg/mlのアンピシリンを含むL寒天プレートにプレーティングして形質転換体のクローンを選択した。
Kadonaga J.T and Knowles J.R., N.A.R.,13(5), 1733-45 (1985)に記載されているように、プラスミドpURA−ddSDH1(15μg)をインビトロでメトキシルアミン処理した。透析後の溶液から得られたDNAをエタノールで沈殿させ、洗浄し、大腸菌株XL−1(Blue)のエレクトロポレーションに用いた。100μg/mlのアンピシリンを含むL寒天プレートにプレーティングして形質転換体のクローンを選択した。
アンピシリン(100μg/ml)を添加した200mlのLB培地中で107個の形質転換体を一晩増殖させた。培養液はDNAの単離に用いた。得られた突然変異誘発プラスミドpURA−ddSDH1ライブラリーをエンドヌクレアーゼEco91Iで処理し、Current Genetic, 1989, vol 16, pp.253-260に記載されているようにY.lipolytica Polf(ATCC MYA−2613)の形質転換に用いた。このPolf株はアメリカンタイプカルチャーコレクション(米国、20108、バージニア州マナッサス、私書箱1549)から入手可能である。グルコース(2%)、ロイシン(0.01%)、及びカザミノ酸(0.2%)を添加したYNB最少寒天培地にプレーティングして形質転換体のクローンをセレクションした。グルコース(0.1%)、ロイシン(0.01%)、及びコハク酸ナトリウム(2%)を添加したYNB液体最少培地中で、20℃、pH6.8、1200rpmで通気しながら、3000個の形質転換体を3日間増殖させた。増殖したクローンを、ロイシン(0.01%)及びコハク酸ナトリウム(1%)を添加したYNB寒天(pH6.8)上に(各クローンを2つのプレートに)プレーティングした。2つの群のプレートを20℃及び32℃で3日間並行して培養した。32℃よりも20℃で有意に良く増殖したクローンを、温度感受性の確認と同様な方法で試験した。図1に示すように、プラスミドpURA−ddSDHが染色体に組み込まれた後、残ったSDH1遺伝子のコピーだけが発現可能である。この遺伝子コピーの一部(Eco91I部位の下流)は挿入されたプラスミドに固有のものなので、変異を含み得る。したがって、得られた形質転換体は変異SDH1遺伝子ライブラリーに相当する。
プラスミドpURA−ddSDHが染色体上の適切な遺伝子座に組み込まれていることを検証するために、Taqポリメラーゼを用いてPCRを行った。遺伝子座特異的プライマーP7(配列番号15)及びP8(配列番号16)並びにセレクションした形質転換体から単離した全ゲノムDNAをPCRに用いて検証した。これにより、2つの形質転換体、すなわち、SDH1遺伝子中にそれぞれSer675Phe及びGlu483Lysの
変異を有するPolf/pURA−ddSDH−ts No.0134及びPolf/pURA−ddSDH−ts No.2007が更なる実験に選択された。これらの株をそれぞれPolf(SDH1−ts−0134)及びPolf(SDH1−ts−2007)と命名した。
変異を有するPolf/pURA−ddSDH−ts No.0134及びPolf/pURA−ddSDH−ts No.2007が更なる実験に選択された。これらの株をそれぞれPolf(SDH1−ts−0134)及びPolf(SDH1−ts−2007)と命名した。
実施例2.不活性型SDH2遺伝子を有する菌株の構築
まず、Pfuポリメラーゼ、Y.lipolytica W29(ATCC 20460)の全ゲノムDNA、並びにプライマー対P9(配列番号17)及びP10(配列番号18)、P11(配列番号19)及びP12(配列番号20)、並びにP13(配列番号21)及びP14(配列番号22)を用いてPCRにより、それぞれSDH2遺伝子のプロモーター領域(1125bp)、URA3遺伝子(1229bp)、及びSDH2遺伝子のターミネーター領域(1018bp)を含む3つのDNA断片を得た。PCR産物を1%アガロースゲル中で精製した。SDH2遺伝子のプロモーター領域(1125bp)及びURA3遺伝子(1229bp)を含むPCR産物を、Pfuポリメラーゼ並びにプライマーP9及びP12を用いたPCRの鋳型として用いた。このPCR産物(2333bp)を1%アガロースゲル中で精製した。次いで、精製したPCR産物(2333bp)及びSDH2遺伝子のターミネーター領域(1018bp)を含むPCR産物を、Pfuポリメラーゼ並びにプライマーP9及びP14を用いたPCRの鋳型として用いた。このPCR産物(3330bp)を1%アガロースゲル中で精製した後、酢酸リチウムを用いた方法によるY.lipolytica Polfの形質転換にPCR産物1μgを用いた。グリセロール(5v/v%)、ロイシン(0.01%)、及びカザミノ酸(0.2%)を添加したYNB寒天最少培地上にプレーティングして形質転換体のクローンをセレクションした。次いで、セレクションした形質転換体のコハク酸を唯一の炭素源として含む培養培地中での増殖能について調べた。PCRによりSDH2遺伝子座への挿入を確認した。確認のためのPCRには、Taqポリメラーゼ、鋳型として、セクションした形質転換体から単離した全ゲノムDNA、並びに遺伝子座特異的プライマーP15(配列番号23)及びP16(配列番号24)を用いた。1つの形質転換体を選択し、Polf(dSDH2)と命名し、更なる実験に用いた。
まず、Pfuポリメラーゼ、Y.lipolytica W29(ATCC 20460)の全ゲノムDNA、並びにプライマー対P9(配列番号17)及びP10(配列番号18)、P11(配列番号19)及びP12(配列番号20)、並びにP13(配列番号21)及びP14(配列番号22)を用いてPCRにより、それぞれSDH2遺伝子のプロモーター領域(1125bp)、URA3遺伝子(1229bp)、及びSDH2遺伝子のターミネーター領域(1018bp)を含む3つのDNA断片を得た。PCR産物を1%アガロースゲル中で精製した。SDH2遺伝子のプロモーター領域(1125bp)及びURA3遺伝子(1229bp)を含むPCR産物を、Pfuポリメラーゼ並びにプライマーP9及びP12を用いたPCRの鋳型として用いた。このPCR産物(2333bp)を1%アガロースゲル中で精製した。次いで、精製したPCR産物(2333bp)及びSDH2遺伝子のターミネーター領域(1018bp)を含むPCR産物を、Pfuポリメラーゼ並びにプライマーP9及びP14を用いたPCRの鋳型として用いた。このPCR産物(3330bp)を1%アガロースゲル中で精製した後、酢酸リチウムを用いた方法によるY.lipolytica Polfの形質転換にPCR産物1μgを用いた。グリセロール(5v/v%)、ロイシン(0.01%)、及びカザミノ酸(0.2%)を添加したYNB寒天最少培地上にプレーティングして形質転換体のクローンをセレクションした。次いで、セレクションした形質転換体のコハク酸を唯一の炭素源として含む培養培地中での増殖能について調べた。PCRによりSDH2遺伝子座への挿入を確認した。確認のためのPCRには、Taqポリメラーゼ、鋳型として、セクションした形質転換体から単離した全ゲノムDNA、並びに遺伝子座特異的プライマーP15(配列番号23)及びP16(配列番号24)を用いた。1つの形質転換体を選択し、Polf(dSDH2)と命名し、更なる実験に用いた。
実施例3.Y.lipolyticaのPolf(SDH1−ts−0134)株、Polf(SDH1−ts−2007)株、及びPolf(dSDH2)株によるコハク酸の生成
コハク酸生成に対する遺伝子SDH1(YALI0D11374g)又はSDH2(YALI0D23397g)の発現減弱の影響を調べるために、Polf(SDH1−ts−0134)株、Polf(SDH1−ts−2007)株、Polf(dSDH2)株及びPolf株の生産性を比較した。
コハク酸生成に対する遺伝子SDH1(YALI0D11374g)又はSDH2(YALI0D23397g)の発現減弱の影響を調べるために、Polf(SDH1−ts−0134)株、Polf(SDH1−ts−2007)株、Polf(dSDH2)株及びPolf株の生産性を比較した。
Polf(SDH1−ts−0134)株、Polf(SDH1−ts−2007)株、及びPolf株(細胞の初発濃度は1〜5×105細胞/mlであった)のそれぞれを、50mlの試験管を用いて、グリセロール(5%(v/v))、ウラシル、及びロイシン(0.01%)を添加した5mlのYNB最少培地(ハイメディア社(Himedia)製;pH6.8;50mMリン酸バッファーで調整)中で24℃にて培養した。2日間インキュベートした後、2.5%のCaCO3を培地に添加してpHを調整した。細胞濃度が(0.8〜1)×107に達した時、試験管を32℃と24℃でそれぞれ培養した。5日間インキュベートした後、培地中に蓄積されたコハク酸、α−ケトグルタル酸、クエン酸、ピルビン酸、及び酢酸の量、並びに培養ブロス中のグリセロールの濃度をHPLCで測定した。2つの独立した試験管発酵の結果を表1に示す。表1に示すように、Polf(SDH1−ts−0134)及びPolf(SDH1−ts−2007)は培養温度が32℃の時により多量のコハク酸を生成した。Polfはこの温度では少量のコハク酸しか生成しなかった。
Polf(dSDH2)株及びPolf株(105細胞/ml)のそれぞれを、50mlの試験管を用いて、グリセロール(5%(v/v))、ロイシン(0.01%)、ウラシル(0.01%)(Polfのみ)を添加した10mlのYNB最少培地(ハイメディア社製;pH6.8;50mMリン酸バッファーで調整)中で30℃にて培養した。3日間インキュベートした後、2.5%のCaCO3を培地に添加してpHを調整した。培養7日後、培地中に蓄積されたコハク酸、α−ケトグルタル酸、クエン酸、ピルビン酸、及び酢酸の量、並びに培養ブロス中のグリセロールの濃度をHPCLにより測定した。試験管発酵の結果を表1に示す。表1に示すように、Polf(dSDH2)はPolfよりも多くの量のコハク酸を生成した。
Polf(dSDH2)株及びPolf株のそれぞれを、750mlのフラスコを用いて50mlのYPG培地(1%酵母エキス、2%ペプトン、5%(v/v)グリセロール)中で30℃にて培養した。2日間インキュベートした後、2.5%のCaCO3を培地に添加した。培養5日後、培地中に蓄積されたコハク酸、α−ケトグルタル酸、クエン酸、ピルビン酸、及び酢酸の量、並びに培養ブロス中のグリセロールの濃度をHPCLにより測定した。フラスコ発酵の結果を表2に示す。表2に示すように、Polf(dSDH2)はPolfよりも多くの量のコハク酸を生成した。
実施例4.Y.lipolytica VKPM Y−3314株の選択
Polf(dSDH2)株の増殖を向上させるために、以下のように突然変異誘発を行った。Polf(dSDH2)株の細胞を細胞の濃度が109細胞/mlに達するまでYPG培地(実施例3参照)中で増殖させ、その後、遠心分離により細胞を回収し、生理溶液で3回洗浄し、細胞の濃度が1〜3×108細胞/mlになるように50mMのリン酸カリウムバッファー(pH6.8)に再懸濁した。この懸濁液1mlをN−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(40μg/ml)を用いて30℃で2時間処理した。その後、細胞を生理溶液で3回洗浄し、ロイシン(0.1g/l)及びグリセロール(2v/v%)を含むYNB培地にプレーティングした(細胞の濃度は108又は109細胞/ml)。生存率は2.8%であった。5日間増殖させた後、通常のサイズのコロニーの中にいくつか大きなサイズのコロニーがあった(104個に1〜2個)。50個の大サイズコロニーを選び、同じ培地に再度プレーティングした。
Polf(dSDH2)株の増殖を向上させるために、以下のように突然変異誘発を行った。Polf(dSDH2)株の細胞を細胞の濃度が109細胞/mlに達するまでYPG培地(実施例3参照)中で増殖させ、その後、遠心分離により細胞を回収し、生理溶液で3回洗浄し、細胞の濃度が1〜3×108細胞/mlになるように50mMのリン酸カリウムバッファー(pH6.8)に再懸濁した。この懸濁液1mlをN−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(40μg/ml)を用いて30℃で2時間処理した。その後、細胞を生理溶液で3回洗浄し、ロイシン(0.1g/l)及びグリセロール(2v/v%)を含むYNB培地にプレーティングした(細胞の濃度は108又は109細胞/ml)。生存率は2.8%であった。5日間増殖させた後、通常のサイズのコロニーの中にいくつか大きなサイズのコロニーがあった(104個に1〜2個)。50個の大サイズコロニーを選び、同じ培地に再度プレーティングした。
選んだ50株全て並びに対照としてのPolf(dSDH2)株及びPolf株のそれぞれ5mlのYPG培地に接種し、細胞の濃度を約5×105細胞/mlにした。バッファーを用いず、CaCO3を添加せずに30℃で7日間培養した後、コハク酸、α−ケトグルタル酸、クエン酸、ピルビン酸、及び酢酸の量をHPLCで測定した。試験管発酵の結果を表3に示す。表3に示すように、ほとんどの変異体がPolf(dSDH2)株及びPolf株よりも多くの量のコハク酸を生成した。発酵3〜4日後に培養培地のpHが3.2〜3.5に達していることが観察された。最もコハク酸を生成する変異株No.18を以降の実験に選択した。この株をロシアン・ナショナル・コレクション・オブ・インダストリアル・マイクロオーガニズム(Russian National Collection of Industrial Microorganisus;ロシア、117545、モスクワ、1 Dorozhny proezd 1)にアクセッション番号VKPM Y−3314で2007年11月15日に寄託した。その後、この寄託をブダペスト条約の条項に基づき2009年12月23日に国際寄託に変更した。
実施例5.Y.lipolytica VKPM Y−3314株によるコハク酸の生成
Y.lipolytica VKPM Y−3314株を、50mlの試験管を用いて種々のメーカーのグリセロール(5v/v%)を含む5mlのYPG培地中で培養した。初発細胞濃度は約5×105細胞/mlであった。第1の実験群は、培養3日目にCaCO3(2.5%)を添加して行った。第2の実験群はCaCO3を添加せずに行った。培地のpH並びに有機酸及び残留グリセロールの濃度を、第1実験群は表4、第2実験群は表5に示す。表4及び5に示すように、Y.lipolytica VKPM Y−3314株は、種々のメーカーのグリセロールを用いた両実験群でコハク酸を生成した。
Y.lipolytica VKPM Y−3314株を、50mlの試験管を用いて種々のメーカーのグリセロール(5v/v%)を含む5mlのYPG培地中で培養した。初発細胞濃度は約5×105細胞/mlであった。第1の実験群は、培養3日目にCaCO3(2.5%)を添加して行った。第2の実験群はCaCO3を添加せずに行った。培地のpH並びに有機酸及び残留グリセロールの濃度を、第1実験群は表4、第2実験群は表5に示す。表4及び5に示すように、Y.lipolytica VKPM Y−3314株は、種々のメーカーのグリセロールを用いた両実験群でコハク酸を生成した。
また、Y.lipolytica VKPM Y−3314株を、750mlのフラスコを用いてグリセロール(5v/v%)を含む50mlのYPG培地中でも培養した。初発細胞濃度は、約2.5×105細胞/mlであった。発酵中、24時間毎に、サンプルを採り、サンプル中の細胞の濃度、培地のpH、及びコハク酸の濃度を測定した。結果を図2に示す。図2に示すように、Y.lipolytica VKPM Y−3314株の細胞はpH4未満の低pHでコハク酸を生成した。
本発明をその好ましい実施形態に関連付けて詳細に説明したが、当業者には、本発明の範囲から逸脱せずに種々の変更及び同等物の使用が可能であることが明らかである。本明細書に挙げた全ての参考文献を参照により本明細書に援用する。
Claims (10)
- ヤロウィア属に属する酵母であって、コハク酸を生成し、コハク酸デヒドロゲナーゼの活性が低減されている酵母。
- SDH1(YALI0D1l374g)、SDH2(YALI0D23397g)、SDH3(YALI0E29667g)、SDH4(YALI0A14784g)、及びこれらの組合せからなる群から選択される遺伝子の発現が減弱するように改変されている、請求項1に記載の酵母。
- SDH1(YALI0D11374g)への温度感受性変異の導入により前記SDH1(YALI0D11374g)の発現が減弱されている、請求項2に記載の酵母。
- SDH2(YALI0D23397g)の不活化により前記SDH2(YALI0D23397g)の発現が減弱されている、請求項2に記載の酵母。
- 前記酵母がヤロウィア・リポリティカである、請求項1に記載の酵母。
- 前記酵母がヤロウィア・リポリティカVKPM Y−3314である、請求項1に記載の酵母。
- コハク酸を製造する方法であって、請求項1〜6のいずれか一項に記載の酵母を培地中で培養する工程及び前記培養培地からコハク酸を回収する工程を含む、方法。
- 前記培養の少なくとも一部がpH4未満で行われる、請求項7に記載の方法。
- 前記培養培地がグリセロールを含む、請求項7に記載の方法。
- コハク酸含有ポリマーを製造する方法であって、請求項7に記載の方法によりコハク酸を生成する工程及び得られたコハク酸を重合化する工程を含む、方法。
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