JP2012505953A - 難燃性ポリ(トリメチレンテレフタレート)組成物 - Google Patents

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Abstract

改良された難燃性ポリトリメチレンテレフタレート組成物が、ビス(ジフェニルホスフェート)難燃添加剤を含めることによって得られる。

Description

本発明は、難燃添加剤としてある種のビス(ジフェニルホスフェート)化合物を含む難燃性ポリ(トリメチレンテレフタレート)組成物に関する。
ポリ(トリメチレンテレフタレート)(「PTT」)は、一般に1,3−プロパンジオールとテレフタル酸またはテレフタル酸エステルの重縮合反応によって調製される。ポリ(トリメチレンテレフタレート)ポリマーは、ポリ(エチレンテレフタレート)(「PET」、1,3−プロパンジオールとは対照的にエチレングリコールから作られる)またはポリ(ブチレンテレフタレート)(「PBT」、1,3−プロパンジオールとは対照的に1,4−ブタンジオールから作られる)と比較した場合、機械的特性、耐候性、耐熱老化性、および耐加水分解性が優れている。
ポリ(トリメチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンテレフタレート)、およびポリ(ブチレンテレフタレート)は、ある程度の難燃性を必要とする絨毯、家財道具、自動車部品、および電子部品などの様々な応用分野に使用される。ポリ(トリメチレンテレフタレート)は、ある種の環境下では難燃性が不十分な場合があり、これが幾つかの応用分野でその使用が制限される場合があることが知られている。
様々な難燃添加剤を加えることによるポリ(トリメチレンテレフタレート)組成物の難燃特性改良の幾つかの試みがあった。例えば、ハロゲン系難燃剤を含有するポリ(トリメチレンテレフタレート)組成物が広範囲にわたって検討された。例えば、英国特許第1473369号明細書は、ポリ(プロピレンテレフタレート)またはポリ(ブチレンテレフタレート)、デカブロモジフェニルエーテル、三酸化アンチモン、および石綿を含有するポリマー組成物を開示している。米国特許第4131594号明細書は、ポリ(トリメチレンテレフタレート)およびグラフトコポリマーハロゲン系難燃剤、例えばデカブロモビフェニルエーテルまたはテトラブロモビスフェノールAのポリカーボナートオリゴマーと、酸化アンチモンと、ガラス繊維とを含有するポリマー組成物を開示している。
特開2003−292574号明細書は、ポリ(トリメチレンテレフタレート)と、リン酸塩の誘導体、ホスファゼン、ホスフィン、および酸化ホスフィンから選択される難燃剤と、メラミン、シアヌル酸、イソシアヌル酸、およびアンモニアを含めた窒素含有誘導体を含有する耐火材料とを含有する難燃性組成物を開示している。
難燃性を改良したポリ(トリメチレンテレフタレート)組成物を提供する必要性が残っている。
本発明の一態様は、ポリ(トリメチレンテレフタレート)系組成物であり、(a)ポリ(トリメチレンテレフタレート)をポリマー成分の総重量を基準にして少なくとも約70重量%含むポリマー成分を、この組成物の総重量を基準にして約75から約99.9重量%、および(b)ビス(ジフェニルホスフェート)が窒素を含有しないという条件でビス(ジフェニルホスフェート)をこの組成物の総重量を基準にして約0.1から約15重量%含む添加剤パッケージを、この組成物の総重量を基準にして約0.1から約25重量%含む。
本発明の別の態様は、ポリ(トリメチレンテレフタレート)系組成物の調製方法であり、
a)(1)ビス(ジフェニルホスフェート)化合物(ただしこのビス(ジフェニルホスフェート)は窒素を含有しない)および(2)ポリトリメチレンテレフタレートを準備するステップと、
b)このポリトリメチレンテレフタレートおよびビス(ジフェニルホスフェート)化合物を混合して混合物を形成するステップと、
c)この混合物を撹拌しながら加熱し、ブレンドして組成物を形成するステップと
を含む。
本発明は、ポリ(トリメチレンテレフタレート)系組成物を提供し、この組成物は、(a)ポリ(トリメチレンテレフタレート)を少なくとも約70重量%(ポリマー成分の重量を基準にして)含むポリマー成分約75から約99.9重量%(組成物総重量を基準にして)と、(b)難燃添加剤としてビス(ジフェニルホスフェート)化合物を約0.1から約15重量%(組成物総重量を基準にして)含む添加剤パッケージ約0.1から約25重量%(組成物総重量を基準にして)とを含む。このビス(ジフェニルホスフェート)は窒素を含有しない。特に有用なビス(ジフェニルホスフェート)は、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)である。
好適なポリ(トリメチレンテレフタレート)は当業界でよく知られており、1,3−プロパンジオールとテレフタル酸またはテレフタル酸等価物の重縮合によって調製することができる。「テレフタル酸等価物」とは、関連技術の通常の熟練者が一般に認めるように、高分子グリコールおよび二価アルコールとの反応において実質的にテレフタル酸と同様に作用する化合物を意味する。テレフタル酸等価物には、例えばエステル(テレフタル酸ジメチルなど)と、酸ハロゲン化物(例えば酸塩化物)および酸無水物などのエステル形成性誘導体とが挙げられる。テレフタル酸およびテレフタル酸エステルが好ましく、そのジメチルエステルがより好ましい。ポリ(トリメチレンテレフタレート)の調製方法は、例えば米国特許第6277947号明細書、米国特許第6326456号明細書、米国特許第6657044号明細書、米国特許第6353062号明細書、米国特許第6538076号明細書、米国特許第2003/0220465A1号明細書、および本願の所有者が所有する米国特許出願第11/638919号明細書中に開示されている。幾つかの好ましい実施形態ではこのポリ(トリメチレンテレフタレート)の製造に使用される1,3−プロパンジオールは、好ましくは再生可能な資源から生物学的に誘導される(「生物学的に誘導される」1,3−プロパンジオール)。
1,3−プロパンジオールの特に好ましい供給源は、再生可能な生物学的資源を用いた発酵法によるものである。再生可能な資源由来の出発原料の実例としては、トウモロコシ原料などの生物学的かつ再生可能な資源から生産される原料を利用した1,3−プロパンジオール(PDO)への生化学的ルートが記述されている。例えば、グリセロールを1,3−プロパンジオールに変換することができる細菌株が、クレブシエラ属(Klebsiella)、シトロバクター属(Citrobacter)、クロストリジア属(Clostridium)、およびラクトバシラス属(Lactobacillus)の種の中に見出されている。この技術は、以前に援用した米国特許第5633362号明細書、米国特許第5686276号明細書、および米国特許第5821092号明細書を含めた幾つかの刊行物中に開示されている。とりわけ米国特許第5821092号明細書は、組換え生物を用いてグリセロールから1,3−プロパンジオールを生物学的に産生する方法を開示している。この方法は、1,2−プロパンジオールに対して特異性を有する異種pdu脱水酵素遺伝子を用いて形質転換した大腸菌(E.coli bacteria)を組み込む。この形質転換した大腸菌(E.coli)は、炭素源としてのグリセロールの存在下で増殖し、1,3−プロパンジオールがその増殖培地から単離される。細菌も酵母菌もグルコース(例えばコーンシュガー)または他の炭水化物をグリセロールに変換することができるので、このような方法は1,3−プロパンジオールモノマーの速やかな、安価な、かつ環境責任を果たす供給源を提供することができる。
上記で記述しまた参照した方法によって生産されるものなどの生物学的に誘導される1,3−プロパンジオールは、1,3−プロパンジオールの生産用原料を構成する植物によって取り込まれる大気二酸化炭素由来の炭素を含有する。幾つかの好ましい実施形態ではその生物学的に誘導される1,3−プロパンジオールは、再生可能な炭素のみを含有し、化石燃料系または石油系の炭素を含有しない。したがって、生物学的に誘導される1,3−プロパンジオールを利用したものから作られるポリトリメチレンテレフタレートは、使用される1,3−プロパンジオールが、減少しつつある化石燃料を枯渇させず、かつ分解時に炭素を放出して、再度植物によって使用されるように大気中に戻すので環境に対する影響をより少なくすることができる。
二重炭素同位体フィンガープリント法(dual carbon−isotopic finger printing)によって、生物学的に誘導される1,3−プロパンジオールおよびそれから作られるポリトリメチレンテレフタレートを、石油化学源から、または化石燃料炭素から生産された類似の化合物と区別することができる。この方法は、化学的にまったく同じ材料を役に立つように区別し、炭素材料をその生物圏(植物)成分の成長の起点(または、場合によっては歴年)によって振り分ける。同位体14Cおよび13Cは、この問題に相補的情報をもたらす。その核半減期が5730年である放射性炭素年代測定用同位体(14C)は、試験片炭素を化石(「死んでいる」)原料と生物圏(「生きている」)原料の間で明確に振り分けることを可能にする(Currie,L.A.“Source Apportionment of Atmospheric Particles”,Characterization of Environmental Particles,J.Buffle and H.P.van Leeuwen,Eds.,1 of Vol.I of the IUPAC Environmental Analytical Chemistry Series(Lewis Publishers,Inc)(1992)3〜74)。放射性炭素年代測定における基本的前提は、大気中の14C濃度の恒常性が生物中の14Cの恒常性をもたらすということである。単離された試料を扱う場合、試料の経年数は関係式
t=(−5730/0.693)ln(A/A0
によりおおよそ推定することができる。ただし、t=経年数であり、5730年は放射性炭素の半減期であり、AおよびA0は、それぞれ試料および現代の標準の14Cの比放射能である(Hsieh,Y.,Soil Sci.Soc.Am J.,56,460(1992))。しかしながら、1950年以降の大気圏核実験および1850年以降の化石燃料の燃焼のために14Cは第二の地球化学的時間特性を獲得した。大気中の、したがって現存する生物圏中のCO2濃度は、1960年代中盤の核実験のピーク時にはおおよそ2倍になった。以後、おおよそ7〜10年の緩和「半減期」で、定常状態の宇宙線起源の(大気中の)基線である約1.2×10-12の同位体比(14C/12C)に徐々に戻りつつある。この近頃の半減期は文字通りに解釈してはならず、むしろ核時代の幕開け以降の大気中および生物圏の14Cの変動を追跡するためには、詳細な大気中の核の投入/崩壊関数を使用しなければならない。最近の生物圏炭素の毎年の年代測定の裏付けを与えるのが、この近頃の生物圏14C時間特性である。14Cは、加速器質量分析(AMS)によって測定することができ、その結果は「現代炭素の分率」の単位(fM)で与えられる。fMは、National Institute of Standards and Technology(NIST)の標準物質(SRM)4990Bおよび4990Cによって規定され、それぞれシュウ酸標準HOxIおよびHOxIIとして知られる。この基本定義は、HOxI(AD1950を基準とした)の14C/12C同位体比の0.95倍と関係がある。これは、崩壊補正した産業革命前の木材に概略で相当する。最新の現存する生物圏(植物材料)の場合、fM≒1.1である。
安定な炭素同位体比(13C/12C)は、供給源の識別および振り分けに対する補完的ルートを提供する。所与の生物起源の材料中の13C/12C比は、大気二酸化炭素が固定された時点におけるその二酸化炭素中の13C/12C比の結果であり、その正確な代謝経路もまた反映している。地域的な変動もまた起こる。石油、C3植物(広葉タバコ)、C4植物(イネ科の草木)、および海成炭酸塩はすべて、13C/12Cおよびその対応するδ13Cの値の顕著な違いを示す。さらに、C3およびC4植物の脂質物質は、その代謝経路の結果として、その同一植物の炭水化物成分から得られる材料とは異なる分析結果を示す。13Cは、同位体分画の影響、具体的にはその光合成機構のせいでその測定精度の範囲内で大きな変動を示す。植物中の炭素同位体比の違いの主な原因は、それら植物中の光合成炭素代謝経路の違い、具体的には一次カルボキシル化、すなわち大気CO2の初期固定の間に起こる反応の違いと密接に関連している。植物成長の2つの大分類は、「C3」(すなわちカルビンーベンソン)光合成回路を組み込むもの、および「C4」(すなわちハッチ−スラック)光合成回路を組み込むものである。広葉樹および針葉樹などのC3植物は、温暖な気候の地帯が大勢を占める。C3植物では、その一次CO2固定化またはカルボキシル化反応は、リブロース−1,5−二リン酸カルボキシラーゼ酵素を伴い、その最初の安定な産物が炭素3個の化合物である。一方、C4植物には熱帯のイネ科の草木、トウモロコシ、およびサトウキビのような植物が含まれる。C4植物では、別の酵素であるホスホエノール−ピルビン酸カルボキシラーゼを伴う追加のカルボキシル化反応が、一次カルボキシル化反応である。その最初の安定な炭素化合物は炭素4個の酸であり、それは続いて脱カルボキシル化される。こうして放出されるCO2は、そのC3回路により再び固定される。
4およびC3植物は両方とも様々な13C/12C同位体比を示すが、典型的な値は1ミル当たり約−10から−14(C4)および1ミル当たり約−21から−26(C3)である(Weber等、J.Agric.Food Chem.,45,2942(1997))。石炭および石油は、一般にこの後者の範囲に入る。13C測定の尺度は、当初pee deeベレムナイト(PDB)石灰石をゼロに設定することによって定められ、その値は、この物質からの1000分の1偏差で与えられる。「δ13C」値は、単位1000分の1部(ミル当たり)であり、oooと略記され、
Figure 2012505953
に従って計算される。PDB基準物質(RM)を使い果たしてしまったために、IAEA、USGS、NIST、および他の選ばれた国際同位体研究機関の協力のもとに一連の代替RMが開発された。PDBからのミル当たり偏差の表記法はδ13Cである。測定は、質量44、45、および46の分子イオンに対する高精度安定同位体比質量分析(IRMS)によってCO2に関して行われる。
したがって、今までにない物質組成を示す、14C(fM)および二重炭素同位体フィンガープリント法に基づいて、生物学的に誘導される1,3−プロパンジオールおよび生物学的に誘導される1,3−プロパンジオールを含む組成物を、それらの石油化学的に誘導される対応物と完全に区別することができる。これらの製品を区別する能力は、商業目的のためにそれらの材料を追跡するのに有益である。例えば、「新しい」および「古い」炭素同位体プロフィールの両方を含む製品を、「古い」材料だけで作られた製品と区別することができる。したがって対象とする材料を、それらの独特のプロフィールに基づいて商業目的のために、また競争相手を明らかにする目的で、貯蔵寿命を決めるために、特に環境に与える影響を評価するために追跡調査することができる。
ポリ(トリメチレンテレフタレート)を製造する際に反応物として、または反応物の成分として使用される1,3−プロパンジオールは、好ましくは、ガスクロマトグラフ分析によって求められる約99重量%を超える、より好ましくは99.9重量%を超える純度を有する。米国特許第7038092号明細書、米国特許第7098368号明細書、米国特許第7084311号明細書、および米国特許第20050069997A1号明細書に開示されている精製1,3−プロパンジオールが特に好ましい。
精製された1,3−プロパンジオールは、好ましくは下記の特徴を有する。
(1)紫外吸収が、220nmにおいて約0.200未満、250nmにおいて約0.075未満、275nmにおいて約0.075未満であり、かつ/または
(2)組成物が、約0.15未満のCIELAB「b*」色値(ASTM D6290)、および270nmにおいて約0.075未満の吸光度を有し、かつ/または
(3)過酸化物組成物が約10ppm未満であり、かつ/または
(4)ガスクロマトグラフィーで測定した全有機不純物(1,3−プロパンジオール以外の有機化合物)の濃度が、約400ppm未満、より好ましくは約300ppm未満、さらに一層好ましくは約150ppm未満である。
本明細書中で開示される組成物および方法において有用なポリ(トリメチレンテレフタレート)は、単独のまたはブレンド物としてのポリ(トリメチレンテレフタレート)ホモポリマー(実質的に1,3−プロパンジオールと、テレフタル酸および/または等価物とから誘導される)、およびコポリマーであることができる。好ましいポリ(トリメチレンテレフタレート)は、1,3−プロパンジオールおよびテレフタル酸(および/またはテレフタル酸ジメチルなどのその等価物)から誘導される反復単位を約70モル%以上含有する。
ポリ(トリメチレンテレフタレート)は、他の二価アルコールまたは二酸から作られる反復単位を30モル%まで含有することができる。その他の二酸には、例えばイソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン二酸、およびこれらの誘導体、例えばこれらのジカルボン酸のジメチル、ジエチル、またはジプロピルエステルが挙げられる。その他の二価アルコールには、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−、1,3−、および1,4−シクロヘキサンジメタノール、および二価または多価アルコールとアルキレンオキシドの反応生成物によって作られる長鎖二価または多価アルコールが挙げられる。
このポリ(トリメチレンテレフタレート)ポリマーにはまた官能性モノマー、例えばカチオン染色性を付与するのに役立つスルホン酸化合物を約5モル%まで含むことができる。好ましいスルホン酸化合物の特定の例には、スルホイソフタル酸5−リチウム(5−lithium sulfoisophthalate)、スルホイソフタル酸5−ナトリウム、スルホイソフタル酸5−カリウム、スルホ−2,6−ナフタレンジカルボン酸4−ナトリウム、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラメチルホスホニウム、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸トリブチル−メチルホスホニウム、2,6−ジカルボキシナフタレン−4−スルホン酸テトラブチルホスホニウム、2,6−ジカルボキシナフタレン−4−スルホン酸テトラメチルホスホニウム、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸アンモニウム、およびこれらのメチル、ジメチルなどのエステル誘導体が挙げられる。
より好ましくはこのポリ(トリメチレンテレフタレート)は、1,3−プロパンジオールおよびテレフタル酸(または等価物)から誘導される反復単位を、少なくとも約80モル%、または少なくとも約90モル%、または少なくとも約95モル%、または少なくとも約99モル%含有する。最も好ましいポリマーは、ポリ(トリメチレンテレフタレート)ホモポリマー(実質上1,3−プロパンジオールおよびテレフタル酸(または等価物)のみのポリマー)である。
このポリマー成分は、ポリ(トリメチレンテレフタレート)とブレンドされた追加のポリマーまたはポリマー類、例えばポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)、ナイロン−6および/またはナイロン−6,6などのナイロンなどを含有することができ、好ましくはポリマー成分の重量を基準にしてポリ(トリメチレンテレフタレート)を、少なくとも約70重量%、または少なくとも約80重量%、または少なくとも約90重量%、または少なくとも約95重量%、または少なくとも約99重量%含有する。一つの好ましい実施形態ではポリ(トリメチレンテレフタレート)は、このような他のポリマーを含まずに使用される。
このポリ(トリメチレンテレフタレート)系組成物は、酸化防止剤などの添加剤、残留触媒、艶消し剤(TiO2、硫化亜鉛、または酸化亜鉛など)、着色剤(染料など)、安定剤、充填剤(炭酸カルシウムなど)、抗菌物質、帯電防止剤、蛍光増白剤、増量剤、加工助剤、および他の機能性添加剤を含有することができ、これらを以後「チップ添加剤」と呼ぶ。使用する場合、TiO2または類似の化合物(硫化亜鉛または酸化亜鉛など)は、顔料または艶消し剤として、ポリ(トリメチレンテレフタレート)組成物の製造に通常使用される量で、すなわち繊維の製造では約5重量%(全組成物重量を基準にして)またはそれ以上までの量で、また幾つかの他の最終用途ではより多量に使用される。繊維またはフィルム用ポリマーに使用する場合、TiO2は、好ましくは少なくとも約0.01重量%(全組成物重量を基準にして)、より好ましくは少なくとも約0.02重量%の量で、また好ましくは約5重量%まで、より好ましくは約3重量%まで、最も好ましくは約2重量%までの量が加えられる。
本明細書中で使用される用語「顔料」は、当業界で一般に顔料と呼ばれている物質を指す。これら顔料は、ポリマーまたは物品(例えばチップまたは繊維)に色を付与する、通常は乾燥粉末の形態の物質である。これら顔料は、有機でも無機でもよく、また天然でも合成でもよい。一般にこれら顔料は不活性であり(例えば電子的に中性であり、ポリマーと反応しない)、かつそれらが加えられる媒体、この場合はポリ(トリメチレンテレフタレート)組成物に不溶または比較的不溶である。場合によってはそれらは可溶性であることもできる。
開示した実施形態の組成物ではビス(ジフェニルホスフェート)難燃添加剤が使用される。一実施形態ではこのビス(ジフェニルホスフェート)化合物は、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)である。
これらのビス(ジフェニルホスフェート)化合物と他の難燃添加材料の混合物もまた、これら開示した実施形態に適していることがある。しかしながら本発明の実施形態の場合、窒素を含有するビス(ジフェニルホスフェート)化合物は除外される。他の難燃添加材料もまた、窒素を排除する。
また難燃性の改良されたポリ(トリメチレンテレフタレート)組成物の調製方法を提供し、この方法は、
a)(1)ビス(ジフェニルホスフェート)化合物(ただしこのビス(ジフェニルホスフェート)は窒素を含有しない)および(2)ポリトリメチレンテレフタレートを準備するステップと、
b)このポリトリメチレンテレフタレートおよびビス(ジフェニルホスフェート)化合物を混合して混合物を形成するステップと、
c)この混合物を撹拌しながら加熱し、ブレンドして組成物を形成するステップと
を含む。
このポリ(トリメチレンテレフタレート)系組成物は、当業者によく知られている通常のブレンディング技術、例えばポリマー押出機中でのコンパウンディング、溶融ブレンディング、または液体噴射などによって調製することができる。
ポリマー成分と難燃添加剤を溶融ブレンドする場合、それらを、溶融ブレンド物を形成するのに十分な温度で混合し加熱し、好ましくは連続したやり方で繊維に紡糸するか、または造形品に成形する。これら成分は、多くの様々な方法でブレンド組成物の形にすることができる。例えば、それらを(a)同時に加熱、混合するか、(b)加熱に先立って別の装置で予備混合するか、または(c)加熱し、次いで混合することができる。混合、加熱、および成形は、押出機、バンバリーミキサーなどのこの目的のために設計された通常の設備によって行うことができる。温度は、各成分の融点を超えるが、その最も低い分解温度未満であるべきであり、PTTおよび難燃添加剤の任意の特定の組成に対して調整することができる。その温度は、一般には約180℃から約270℃の範囲内にある。
難燃添加剤が液体である場合、液体噴射によりそれをポリマー成分に加えることができる。一般にはこれはシリンジポンプ(例えば、Isco Syringe Pump Model 1000D,Isco,Lincoln,NE)を使用することによって達成することができる。噴射に使用される圧力は、ポリマーへの添加剤の円滑な添加を助長するように選択される。
利用される難燃添加剤の量は、総組成物重量を基準にして好ましくは約0.1から約15重量%である。より好ましくはこの量は、総組成物重量を基準にして約0.5から約10重量%、さらに一層好ましくは約2から約6重量%である。
このポリ(トリメチレンテレフタレート)組成物は、難燃特性を改良した物品の製造に使用することができる。このポリ(トリメチレンテレフタレート)系組成物は、繊維、織物、フィルム、および他の有用な物品に、またそのような組成物および物品の製造方法に役立つ。それらは、例えば連続およびカット(例えばステープル)繊維、ヤーン、ならびに編物、織物、および不織布の生産用に使用することができる。これら繊維は単成分繊維であることも、また複合(例えばコンジュゲート)繊維であることもでき、また様々な形状および外観を有することができる。これらは織物および床張り材用に有用である。このポリ(トリメチレンテレフタレート)系組成物の特に好ましい最終用途は、米国特許第7013628号明細書に開示されているような絨毯用繊維の製造に関連するものである。
下記の実施例においてすべての部数、割合などは、別段の指定がない限り重量を基準とする。
成分
これら実施例中で使用されるポリ(トリメチレンテレフタレート)は、E.I.du Pont de Nemours and Company(Wilmington,Delaware)から入手できるSORONA(登録商標)「半光沢」ポリマーであった。
これら実施例中で利用される難燃添加剤を下記の表1に記載する。
Figure 2012505953
燃焼性の改良を実証するための手法は、(1)その難燃添加剤をポリ(トリメチレンテレフタレート)中に配合し、(2)その改質したポリ(トリメチレンテレフタレート)のフィルムを注型し、(3)そのフィルムの燃焼性を試験して難燃添加剤による燃焼性の改良を判定することであった。
難燃添加剤の配合
SORONA(登録商標)ポリマーを真空オーブン中で120℃において16時間乾燥し、難燃添加剤もまた真空オーブン中で80℃において16時間乾燥した。
第一ゾーンの190℃からスクリュー先端部および1孔ストランドダイ(4.76mm径)の250℃までの温度プロフィールを有するW&P 30A二軸スクリュー押出機(MJM#4、30mmスクリュー)のスロートに、乾燥ポリマーを20ポンド/時の量で供給した。全部で8ゾーンを有する押出機の第二ゾーンに、噴射ポンプを用いて液状難燃添加剤を、ポリマー中の指定された濃度を達成するのに必要な流量で、例えば10%負荷量をポリマー中に入れるために2ポンド/時の流量で供給した。作業の間、押出機のスロート部を乾燥窒素ガスでパージしてポリマーの劣化をできるだけ少なくした。各難燃添加剤の導入の前に、押出系を乾燥ポリマーで>3分間パージした。4.76mmダイからの改質していないポリマーまたは配合されたポリマーのストランドは、さらに加工してフィルムにするために切断してペレットにされた。
フィルムの調製
フィルムの調製に使用する前にすべての試料を120℃で16時間乾燥した。
改質していないSORONA(登録商標)ポリマーおよび配合されたSORONA(登録商標)ポリマーの試料を、W&P 28D二軸スクリュー押出機(MGW#3、28mmスクリュー)のスロートに供給した。作業の間、押出機のスロート部を乾燥窒素ガスでパージしてポリマーの劣化をできるだけ少なくした。ゾーン温度は、スクリュー速度100rpmの状態で第一ゾーンの200℃からスクリューの先端部の240℃までの範囲に及んだ。溶融ポリマーをフィルムダイ(幅254mm×高さ4mm)へ送り出して4mm厚フィルム(幅254mm、長さ約18mまで)を生成した。各配合試験品でフィルムを調製する前に、押出系を改質していないSORONA(登録商標)ポリマーで少なくとも5分間パージした。
試験試料の調製
各試験品について10個の試験片を、51mm×152mmダイを用いて4mm厚フィルムからプレス打抜きした。5個の試験片をフィルムの縦(押出)方向に切断し、また5個の試験片を横(押出に対して直角をなす)方向に切断した。試験の前に試験フィルム試験片を、105℃で30分超の間オーブン乾燥し、続いてデシケーター中で15分超の間冷却した。
フィルム燃焼試験
上記で得た51mm×152mm×4mmのフィルム試験片を、角度45度に保持した。長さ19mmのブタン炎をフィルムの下部の51mm幅の縁部に発火が起こるまで当てた。炎が自然に消火した後、燃焼または消失したフィルム試験片のパーセントを求め、消失パーセントとして記録した。消失パーセントが低いほど、その添加剤の難燃性は優れているということになる。
比較例A
難燃添加剤を含まないSorona(登録商標)ポリ(トリメチレンテレフタレート)フィルムを調製し、上記と同様に試験した。
表1は、フィルム燃焼性試験の結果を示す。各配合されたポリマー試験品および対照を縦方向および横方向で5回試験し、その平均を表1に示した。上記難燃剤含有品のすべてが、この試験において対照(Sorona(登録商標)ポリマー)に対して向上を示した。各試験についての発火時間は1秒であった。
Figure 2012505953

Claims (18)

  1. ポリ(トリメチレンテレフタレート)系組成物であって、(a)ポリ(トリメチレンテレフタレート)を少なくとも約70重量%(重量%はポリマー成分を基準とする)含むポリマー成分を約75から約99.9重量%(ポリマー成分の重量%は全組成物を基準とする)と、(b)ビス(ジフェニルホスフェート)が窒素を含有しないという条件で、ビス(ジフェニルホスフェート)を約0.1から約15重量%(重量%は全組成物を基準とする)含む添加剤パッケージを約0.1から約25重量%(重量%は全組成物重量を基準とする)と
    を含む、組成物。
  2. 前記添加剤パッケージが、ビス(ジフェニルホスフェート)化合物を約0.5から約10重量%含み、前記重量%が全組成物を基準とする、請求項1に記載のポリ(トリメチレンテレフタレート)系組成物。
  3. 前記添加剤パッケージが、ビス(ジフェニルホスフェート)化合物を約2から約6重量%含み、前記重量%が全組成物を基準とする、請求項1に記載のポリ(トリメチレンテレフタレート)系組成物。
  4. 前記ビス(ジフェニルホスフェート)化合物が、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)である、請求項1に記載のポリ(トリメチレンテレフタレート)系組成物。
  5. 前記ポリ(トリメチレンテレフタレート)が、テレフタル酸または酸等価物と1,3−プロパンジオールの重縮合によって製造される、請求項1に記載のポリ(トリメチレンテレフタレート)系組成物。
  6. 前記1,3−プロパンジオールが再生可能資源から誘導される、請求項5に記載のポリ(トリメチレンテレフタレート)系組成物。
  7. 前記ポリ(トリメチレンテレフタレート)が、ポリ(トリメチレンテレフタレート)ホモポリマーである、請求項1に記載のポリ(トリメチレンテレフタレート)系組成物。
  8. 前記ポリマー成分が、追加のポリマー成分をさらに含む、請求項1に記載のポリ(トリメチレンテレフタレート)系組成物。
  9. 前記ポリマー成分が、ポリ(エチレンテレフタレート)をさらに含む、請求項8に記載のポリ(トリメチレンテレフタレート)系組成物。
  10. 前記ポリマー成分が、ポリ(ブチレンテレフタレート)をさらに含む、請求項8に記載のポリ(トリメチレンテレフタレート)系組成物。
  11. 前記ポリマー成分が、ナイロンをさらに含む、請求項8に記載のポリ(トリメチレンテレフタレート)系組成物。
  12. 前記添加剤パッケージがTiO2を含む、請求項1に記載のポリ(トリメチレンテレフタレート)系組成物。
  13. 前記添加剤パッケージが、さらに1種類または複数種類の追加の難燃添加材料を、前記難燃材料が窒素を含有しないという条件で含む、請求項1に記載のポリ(トリメチレンテレフタレート)系組成物。
  14. ポリ(トリメチレンテレフタレート)系組成物の調製方法であって、
    a)(1)ビス(ジフェニルホスフェート)化合物(ただし前記ビス(ジフェニルホスフェート)は窒素を含有しない)および(2)ポリトリメチレンテレフタレートを準備するステップと、
    b)前記ポリトリメチレンテレフタレートおよび前記ビス(ジフェニルホスフェート)化合物を混合して混合物を形成するステップと、
    c)前記混合物を撹拌しながら加熱し、ブレンドして前記組成物を形成するステップと
    を含む、方法。
  15. 前記ビス(ジフェニルホスフェート)化合物が、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)である、請求項14に記載の方法。
  16. ステップ(c)が、約180℃から約270℃で行われる、請求項14に記載の方法。
  17. 請求項1に記載の前記ポリトリメチレンテレフタレート系組成物から製造される物品。
  18. 請求項1に記載の前記ポリトリメチレンテレフタレート系組成物が繊維の形態である、請求項17に記載の物品。
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