JP2012501152A - 前白色化を伴うlmsアルゴリズムによって適応させられる適応フィルタの更新済みフィルタ係数を決定する方法 - Google Patents

前白色化を伴うlmsアルゴリズムによって適応させられる適応フィルタの更新済みフィルタ係数を決定する方法 Download PDF

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Abstract

本出願は、LMSアルゴリズムによって適応させられる適応フィルタ(22)の少なくとも1つの更新済みフィルタ係数を決定する方法に関する。該方法では、第1白色化フィルタ(25')のフィルタ係数が、特にLPC白色化フィルタのフィルタ係数が、決定される。第1白色化フィルタ(25')はフィルタリング済み信号を生成する。第1白色化フィルタ(25')のフィルタ係数を決定する過程で得られた1つ以上の計算された値に基づいて正規化値が決定される。正規化値は、フィルタリング済み信号のエネルギーと関連する。フィルタリング済み信号および正規化値に依存して適応フィルタ(22)の少なくとも1つの更新済みフィルタ係数が決定される。好ましくは、適応フィルタ(22)の全フィルタ係数について更新済みフィルタ係数が決定される。
【選択図】図8

Description

関連出願との相互参照
この出願は、全体が参照によりここに組み込まれる、2008年8月25日に出願された米国特許仮出願第61/091,527号の優先権を主張する。
本特許出願は、システム同定に関し、特にLMSアルゴリズムによって適応させられる適応フィルタの更新済みフィルタ係数を決定する方法に関する。
システム同定は、測定されたデータからシステムまたはプロセスの動的挙動の数学的モデルを構築するアルゴリズムに基づく。システム同定への1つの普通のアプローチは、出力挙動とシステム入力との数学的関係を判定するためにシステム入力に応答する未知システムの出力挙動を測定することである。これは、しばしば、システム内で実際に起こっていることの詳細を良く調べること無く行われ得る。
未知の線形システムは、そのインパルス応答によって完全に特徴付けられ得る。しかし、大抵の実世界システムは無限インパルス応答(すなわち、無限の長さのインパルス応答)を有するので、無限インパルス応答の有限長さ近似を用いてそのようなシステムをモデル化するのが普通の実務である。そのような有限近似は無限インパルス応答を有するシステムを正確にモデル化することができないので、実世界システムとモデルとが同じ入力信号によって刺激されたときの実世界システムの出力挙動と有限近似のモデルの出力挙動とは通例異なる。図1は、システムモデル2による未知システム1のそのようなモデル化を示す。未知システム1およびシステムモデル2の両方が同じ入力信号により刺激される。実際の出力とモデル化された出力との間の誤差を判定するために、システムモデル2の出力応答は未知システム1の出力応答から差し引かれる。近似の精度が高まると、実際の出力とモデル化された出力との間の誤差が減少する。一般的に、実世界システムの無限インパルス応答のエネルギーは時間が経つに従って減少し、結局は無視し得るようになるので、この近似方法はうまく働く。
未知システムのインパルス応答を近似するための多くの方法が存在する。1つの種類の方法は、インパルス応答の直接測定である。この方法は、非常に効果的であり得るけれども、時間が経つにつれて未知システムの応答が変化する場合には魅力が乏しくなる。それは、未知システムの特性が変化すると新しい測定値が必要とされるという事実に起因する。未知システムの特性が頻繁に変化する場合には、どの変化についても新たな測定を行うことは実際的でなくなる。
直接測定の1つの代わりは自動測定である。自動測定アルゴリズムは、未知システムの特性が変化したときを検出して該変化に応答して新しい特性を判定することができるので、時間が経つにつれて変化するシステムを特徴付けるのに良く適する。
未知システムのインパルス応答を近似するためのポピュラーな1つの自動アルゴリズムは、適応フィルタに用いられるLMS(least mean squares(平均最小二乗))アルゴリズムである。LMSアルゴリズムは、初めは1960年にバーナード・ウィドロー(Bernard Widrow)およびテッド・ホフ(Ted Hoff)により提案され、例えば教科書「適応信号処理(Adaptive Signal Processing)」、B・ウィドロー(B. Widrow)、S・D・スターンズ(S.D.Stearns)、プレンティス−ホール(Prentice−Hall)、エングルウッド・クリフス(Englewood Cliffs)、NJ、1985年、および、ウィキペディアのウェブページ“http://en.wikipedia.org/wiki/Least_mean_squares_filter”に記載されている。LMSアルゴリズムのこれらの記述は、参照によりこれに組み込まれる。
発明の説明
図2は適応LMSフィルタシステムモデルを示す。図1および図2の、同じ参照符号により示されている図形要素は基本的に同じである。図2において、未知システム1と、未知システム1をモデル化する適応フィルタ2とは、入力信号x(n)によって刺激される。実際の出力とモデル化された出力との間の誤差e(n)を判定するために、フィルタ2の出力信号は未知システム1の出力信号から差し引かれる。適応フィルタ2のための更新済みフィルタ係数は、以下でより詳しく論じられるように誤差信号e(n)、入力信号x(n)および前のフィルタ係数に応じて更新ステージ3により生成される。
LMSアルゴリズムは、未知システム1と、フィルタ2により生成された近似との間の平均二乗誤差を最小にする有限インパルス応答(finite impulse response(FIR))フィルタ2の係数を特定する。
適応LMSフィルタは未知システム1の近似を決定するために確率的勾配降下アルゴリズムを用いる。標準的LMSアルゴリズムの場合、入力信号x(n)の各サンプリング間隔の間に、適応FIRフィルタ係数は、該フィルタ係数を平均二乗誤差E{|e(n)|}を最小にする方向に推し進める次の再帰的方程式を用いて更新される:
Figure 2012501152
方程式1において、項
Figure 2012501152
(i=0、1、・・・、N−1)は、全体でN個のフィルタ係数を有するフィルタ2の更新済みフィルタ係数を表す。項
Figure 2012501152
は実際の(すなわち、更新前の)フィルタ係数を表す。項μはステップサイズに対応する。複素数値入力信号x(n)を使用し、複素数値誤差信号を有する場合、方程式1中の項e(n)は、引用されたウェブページ“http://en.wikipedia.org/wiki/Least_mean_squares_filter”で示されているように共役複素項e(n)に改められなければならない。
適応LMSフィルタは、再帰的アルゴリズムを用いるので、未知システムの変化に即座に適応するのではなくて、有限の時間間隔の間に新しい未知システムの近似値に逐次収束する。適応LMSフィルタが未知システムについて最小二乗平均近似値に達するのに必要とされる時間の量は、一般に収束時間と称される。適応フィルタが未知システム1の変化に迅速に応答するためには、収束時間がなるべく短いことが望ましい。
適応LMSフィルタリングを使用し得る幾つかの一般的応用例は、移動電話および一般加入電話網のためのエコーキャンセレーション、フィードフォワードおよびフィードバックアクティブ雑音消去、およびチャネル等化である。図3は、適応チャネル等化応用例における適応LMSフィルタの使用を示す。ここでは、適応イコライザ12のフィルタ係数は、適応イコライザ12が未知チャネル11の逆数を形成するようにLMSフィルタ係数更新ステージ13によって適応的に更新される。
適応LMSフィルタアルゴリズムの主要な問題は、それが未知システムの最適近似に収束する能力と、その収束時間との両方が、未知システムへの入力信号x(n)の特性に依存することである。最適解に収束するためには、未知システムへの入力信号x(n)は理想的には平坦なスペクトルを有するべきである、すなわち、入力信号は白色雑音に対応するべきである。さらに、収束時間を最小にするために、入力信号のパワーはなるべく高くあるべきである。入力信号のパワーが減少すると、LMS適応フィルタの収束時間は増大する。
或るシステム同定応用例については、入力信号x(n)を完全に制御することが可能である。それらの応用例については、適応LMSフィルタが未知システムの最適近似に収束することを可能にする理想化された入力信号が選択される。あいにく、システム同定の大抵の実際的応用例では、入力信号の完全な制御は不可能である。それらの応用例については、適応LMSフィルタが未知システムの最適近似に収束することは保証され得ない。さらに、時間が経つにつれて変化する未知システムについては、適応LMSフィルタは、その未知システムの変化に充分迅速に応答し得ないかもしれない。
近似の入力信号x(n)への依存度を低くしようとする、標準的適応LMSフィルタアルゴリズムの多くの変化形が提案されている。1つの一般的変化形は適応正規化LMS(normalized LMS(NLMS))アルゴリズムである。NLMSアルゴリズムは、既に引用されたウィキペディアのウェブページ“http://en.wikipedia.org/wiki/Least_mean_squares_filter”にも記載されている。NLMSアルゴリズムについてのこの記述は、参照によりここに組み込まれる。
NLMSアルゴリズムは、入力信号パワーの正規化を適応係数更新ステージに加えることを除いて、標準的LMSアルゴリズムと同一である。NLMSアルゴリズムについては、適応フィルタ係数は次の式に従って更新される:
Figure 2012501152
複素数値信号x(n)を用いる場合、方程式2は、引用されたウェブページ“http://en.wikipedia.org/wiki/Least_mean_squares_filter”に示されているように改められなければならない(NLMSアルゴリズムを論じているセクションを参照されたい)。
方程式2において、入力信号エネルギーはt=n−N+1からt=nまでの期間にわたって判定される、すなわち、実際のサンプルx(n)までの最後のN−1個のサンプルのエネルギーが判定される。
NLMSアルゴリズムは、適応係数更新ステージに正規化を加えることで収束時間の入力信号パワーへの依存度を低下させるという利点を提供する。
あいにく、NLMSアルゴリズムには2つの主な欠点がある:
1. LMSアルゴリズムと同様に、第1の欠点は、入力信号が白色雑音でなければNLMSアルゴリズムが未知システムの最適近似に収束することが保証されないことである。この欠点は、未知システムへの入力信号が完全には制御されない応用例におけるNLMSアルゴリズムの有用性を低下させる。
2. 第2の欠点は、正規化を加えることによって、著しい計算の複雑さが該アルゴリズムに加わることである。フィルタ長さN(すなわち、N個のフィルタ係数を有する)の適応フィルタを考慮するとき、正規化項を決定するために、現在の入力サンプルのパワーと前のN−1個の入力サンプルのパワーとの和が計算されなければならず、次にその和が反転させられなければならない。このような正規化換算係数の強行的計算は、サンプル当たりにN個の積和(multiply−accumulate(MAC))演算(MAC演算は2つの数の積を計算し、その積をアキュムレータに加えるa+b・c→a)と、1つの反転演算(除算)とを必要とするであろう:
Figure 2012501152
しかし、実際には、更新済み換算係数を計算するために必要とされる演算の数は、サンプル当たりに2つのMACおよび1つの除算にまで減らされ得る:
Figure 2012501152
第1のMAC演算により、前の和が実際のサンプルx(n)のエネルギーに加えられる。第2のMAC演算により、前の和の中の最後のサンプルx(n−N)のエネルギーがこの結果から差し引かれる。正規化換算係数のこの最適化された計算の複雑さは適応フィルタ長さに依存しないということに留意するのは興味深いことである。
標準的LMSアルゴリズムおよびNLMSアルゴリズムの収束挙動を、該アルゴリズムが未知システムの最適近似に収束するように改善するために、入力信号の前白色化を用いることができる。入力信号のそのような前白色化はLPC(linear prediction coding(線形予測符号化))白色化フィルタによって実行され得る。LMSフィルタアルゴリズムの次の変化形をより詳しく論じる前に、線形予測に関する簡単な背景が以下で与えられる。
線形予測子は、前の入力サンプルおよび出力サンプルの加重和からシーケンスの次のサンプルx(n)を次の方程式に従って推定しようと試みる:
Figure 2012501152
該予測子の加重係数αおよびβは、それらが実際のサンプルx(n)と予測されたサンプル
Figure 2012501152
との間の誤差の測度、普通は平均二乗誤差、を最小にするように選ばれる。最適の加重係数αおよびβの決定は、非線形最適化問題を解くことを必要とし、従って概して非常に難しい。しかし、単に過去の入力サンプルに基づいて予測が行われるように全ての係数βが0にセットされるならば、平均二乗誤差を最小にする係数αは線形最小二乗問題を解くことによって決定されることができ、そのためには、次のセクションで論じられるように、簡単な方法が存在する。従って、全てのβを0にセットした方程式5に従うFIR線形予測子は、βを任意の値にセットした方程式5に従うIIR線形予測子より一般的である。
FIR線形予測子のために加重係数αを計算する多くの方法が知られており、幾つかの方法についてのディスカッションが教科書「音声信号のデジタル処理(Digital Processing of Speech Signals)」、L.R.ラビナー(L.R.Rabiner)およびR.W.シェーファー(R.W.Schafer)、プレンティス−ホール(Prentice−Hall)、エングルウッド・クリフス(Englewood Cliffs)、NJ、1978年、に見出され得る。信号を解析して加重係数αの固定されたセットを計算することは可能である。しかし、変化する入力信号条件に予測子が順応するためには、加重係数αを周期的に再計算するのが普通である。
図4は、M次のFIR線形予測子14に基づくLPC白色化フィルタを示す。該LPC白色化フィルタは、実際の入力サンプルx(n)と線形予測子14により生成される予測されたサンプル
Figure 2012501152
との差:
Figure 2012501152
を計算する。該LPC白色化フィルタの出力信号r(n)は、通例残差と称される。予測係数が入力信号に良く合わされている、良く設計された予測子では、残差サンプルr(n)のシーケンスは、入力信号x(n)より遥かに平坦な(すなわち、より白い)スペクトルを持つ傾向がある。あいにく、残差信号r(n)のパワーは入力信号のパワーより遥かに低い傾向がある。
上で論じられたように、標準的LMSアルゴリズムおよびNLMSアルゴリズムの両方の欠点は、該アルゴリズムが非白色入力信号について未知システムの最適近似に収束することが、これらのアルゴリズムについては保証されないことである。未知システムへの入力信号が完全には制御されない応用例については、両方のアルゴリズムの収束は、LPC白色化フィルタを用いて入力信号x(n)を前白色化することによって改善され得る。図5は、LPC白色化フィルタ25による入力信号x(n)の前白色化を伴う適応LMSフィルタを示す。図4に示されている実際のLPC白色化フィルタ動作のほかに、図5の信号処理ブロック25はLPC解析のためにも、すなわちLPC白色化フィルタのフィルタ係数を計算するためにも、使用される。図5において、LPC白色化フィルタ25により生成された残差r(n)は、未知システム21と、適応フィルタ22と、適応フィルタ22の更新済みフィルタ係数を決定するために使用されるフィルタ係数更新ステージ23とに供給される。このように、該適応LMSフィルタの適応化は、図3における信号x(n)の代わりに残差r(n)に基づく。図5におけるLMSアルゴリズムは、標準的LMSアルゴリズムまたはNLMSアルゴリズムであって良い。しかし、LPC白色化フィルタ25は、LMSアルゴリズムに入力される信号のパワーを下げる傾向を有するので、LPC白色化フィルタと標準的LMSフィルタアルゴリズムとを組み合わせると収束が遅くなるという問題が生じ得る。従って、最適の収束性能を得るためには、LPC白色化フィルタとNLMSアルゴリズムとの組み合わせを用いるのが好ましい。この場合、フィルタ係数は次の式に従って更新される:
Figure 2012501152
複素数値信号x(n)を用い、従って複素数値残差信号r(n)を持つ場合、方程式7は、方程式2と関連して論じられたように修正されなければならない。
入力信号の前白色化は、適応LMSフィルタの収束性能を改善し得るけれども、未知システムへの入力信号を変化させるという欠点を有する。或る応用例では、未知システムへの入力を変化させることは望ましくない。特にそれらの応用例では、LPC白色化フィルタを、それが未知システムおよび適応フィルタへの入力を変化させないように、主信号経路の外へ移動させることができる。そのようなアプローチは、文書「LMS結合適応予測およびシステム同定:統計モデルおよび過渡平均解析(LMS Coupled Adaptive Prediction and System Identification: A Statistical Model and Transient Mean Analysis)」、M・バウプ(M Mboup)他、信号処理に関するIEEE会報(IEEE Transactions on Signal Processing)、第42巻、第10号、1994年10月、に記載され、図6に示されている。ここで、LPC白色化フィルタ25は、LMSフィルタの更新経路内に、すなわち、適応フィルタ22と並列の更新ステージ27の経路に、移されている。図6においては適応フィルタ22および未知システム21の両方がLPC白色化フィルタ25の上流側から白色化されていない信号x(n)を受け取るのに対して、図5では適応フィルタ22および未知システム21の両方がフィルタリング済み信号r(n)を受け取る。そのような代替システムを働かせるためには、白色化後の残差誤差信号r(n)がLMS更新アルゴリズムのための誤差信号として用いられるように誤差信号e(n)に対してさらなるLPC白色化フィルタ26が使用されなければならない。LPC白色化フィルタ26は通例LPC白色化フィルタ25と同一である、すなわち両方のフィルタのフィルタ係数は同一である。従って、LPC白色化フィルタ25および26のフィルタ係数の決定は信号処理ブロック25においてのみ実行され(図6のブロック25を見ると“LPC解析”とあり、これはブロック26の中には無い)、LPC白色化フィルタ25の決定されたフィルタ係数はLPC白色化フィルタ26に伝えられる(LPCフィル係数の伝達は図6には示されていない)。
図5と関連して既に論じられたように、図6におけるLMSアルゴリズムは標準的LMSアルゴリズムまたはNLMSアルゴリズムであって良い。しかし、最適の収束性能を得るためにはLPC白色化フィルタとNLMSアルゴリズムとの組み合わせを用いるのが好ましい。
図5および6に示されている前白色化とNLMSアルゴリズムとの組み合わせは適応フィルタシステムの収束性能を改善する上で有効であるけれども、白色フィルタ係数の計算と適応NLMSフィルタ更新のための正規化換算係数の計算との両方に高度の計算上の複雑さが関連する。
従って、LMSアルゴリズムによって適応させられる適応フィルタの更新済みフィルタ係数を決定する方法を提供することが1つの目的であり、その方法は、好ましくは、LMSフィルタ更新に用いられる正規化を計算するための計算の複雑さを低下させることを可能にする。少なくとも本発明の方法は更新済みフィルタ係数を決定するための代案を提供するべきであり、LMSフィルタ更新に用いられる正規化は代わりの仕方で計算される。さらなる目的は、更新済みフィルタ係数を決定するための対応する装置を提供すること、そのような装置を含むフィルタシステムを提供すること、該方法を実行するためのソフトウェアを提供すること、および対応するフィルタ方法を提供することである。
これらの目的は、独立請求項に従う方法、装置、フィルタシステム、ソフトウェアおよびフィルタ方法により達成される。
本出願の第1の側面は、LMSアルゴリズムにより適応させられる適応フィルタの少なくとも1つの更新済みフィルタ係数を決定する方法に関する。該方法は、一般のLMSアルゴリズムにより適応させられる適応フィルタのフィルタ係数を決定するために使用され得る。
該方法に従って、第1白色化フィルタのフィルタ係数、特にLPC白色化フィルタのフィルタ係数、が決定される。該第1白色化フィルタはフィルタリング済み信号を生成する。該第1白色化フィルタのフィルタ係数を決定する過程で得られた1つ以上の計算された値に基づいて正規化値が決定される。該正規化値はフィルタリング済み信号のエネルギーと関連する、例えば該正規化値はエネルギー推定値あるいはエネルギー推定値の逆数であり得る。該適応フィルタの少なくとも1つの更新済みフィルタ係数は、該フィルタリング済み信号と該正規価値とに依存して決定される。好ましくは、該適応フィルタの全フィルタ係数について更新済みフィルタ係数が決定される。
正規化のために、正規化値は、掛算において掛算因子として使用され得る(例えば、エネルギー推定値の逆数を正規化値として用いる場合)。代わりに、正規化値は割算において除数として使用され得る(例えば、エネルギー推定値を逆数にしないで正規化値として用いる場合)。
上で論じられたように、標準的NLMSアルゴリズムが前白色化と組み合わされて使用される場合には、残差信号の(短時間)信号パワーを直接判定することによって正規化換算係数が計算される。
対照的に、該方法は、白色化フィルタのフィルタ係数を決定するためのアルゴリズムによって既に計算された1つ以上の値を使用する。白色化フィルタのフィルタ係数を決定するためのそのようなアルゴリズムは、しばしば、副作用として該白色化フィルタの出力信号についてエネルギー推定値を、あるいは少なくともエネルギー推定値の簡単な計算を可能にする値を、提供する。そのようなアルゴリズムの一例は、LPC白色化フィルタのフィルタ係数を決定するためのダービンのアルゴリズムと組み合わされた自己相関方法である。本出願の該第1の側面に従う方法は、そのような1つ以上の既に計算された値に基づいて正規化値を決定する。
該方法の好ましい実施態様は、後述されるように適応LMSフィルタ係数更新のための正規化換算係数の計算について複雑さを軽減する。
通例、第1白色化フィルタは、フィルタリング済み信号として残差信号を出力するLPC白色化フィルタである。LPC白色化フィルタは、通例、LPC解析から導出されたフィルタ係数を包含し、予測誤差信号、すなわち残差信号、を出力する。好ましくは、使用されるLPC白色化フィルタは、FIRフィルタ構造に基づく。さらなる例および実施態様においてはFIRフィルタ構造に基づくLPC白色化フィルタが好ましいけれども、LPC白色化フィルタのための他の構造が使用され得る。
先に論じられたIIRフィルタ構造、または格子型フィルタを使用するLPC白色化フィルタなどの、在来のFIRフィルタ構造を使用しないLPC白色化フィルタの可能な実施態様が幾つかある。例えば、格子型LPC解析方法は、格子型フィルタ構造に基づくLPC白色化フィルタを直ちにもたらす。これは、既に引用された教科書「音声信号のデジタル処理」、L.R.ラビナーおよびR.W.シェーファー、プレンティス−ホール、エングルウッド・クリフス、NJ、1978年、のセクション8.3.3および図8.3に記載されている。この記述は参照によりこれに組み込まれる。格子型フィルタは、LPC解析の自己相関および共分散方法と関連しても使用され得る。格子型フィルタは、前のステージにおいてフィルタ係数を修正せずに追加の格子セクションを格子型フィルタ構造に加えることによって予測次数を高めることができるという便利な特性を有する。在来のFIRフィルタと比べて、格子型構造は、FIRフィルタを表す1つの異なる方法である。在来のFIRフィルタおよび格子型構造に基づくフィルタは、所与の入力サンプルについて同じ出力サンプルを返すように設計され得る。
該方法がLPC白色化フィルタ以外の白色化フィルタにも関連するということに留意するべきである。該方法は、白色化フィルタとしてウィーナーフィルタを使用することができる。ウィーナーフィルタは、ウィーナーフィルタの形がFIR構造であるときの特別の場合としてLPCを含む。
1つの好ましい実施態様では、正規化値は、白色化フィルタのフィルタ係数の決定中に得られたフィルタリング済み信号のエネルギー推定値から導出される。従って、LPC白色化フィルタ係数の計算中に、残差信号のエネルギーの推定値を作ることができ、それは、その後に反転させられて、適応LMS係数更新において正規化係数として使用される。そのようなエネルギー推定値は、方程式7における分母に非常に良く似ていることがある(あるいは同一であることさえある)。
もし残差信号のエネルギーの推定値が残差信号の実際のエネルギーと同様であり(方程式7の分母を参照)、該推定値の計算のコストが残差信号の実際のエネルギーの計算のコストより低ければ、性能を著しく低下させること無く複雑さの低下が達成される。
従って、正規化値を決定するために、該方法は、好ましくは、第1白色化フィルタのフィルタ係数を決定する過程で得られたそのような1つ以上の計算された値に基づいてフィルタリング済み信号のエネルギー推定値を決定する。該エネルギー推定値は、そのような計算された値に直接対応し得、あるいは1つ以上の計算演算により決定され得る。その後、該エネルギー推定値は反転させられ得る。その反転させられたエネルギー推定値は、その後、掛算演算で掛算因子として使用され得る。代わりに、該エネルギー推定値は、割算演算において除数として使用され得る。
そのようなエネルギー推定値は、特に、該エネルギー推定値が入力信号のサンプリングレートより低い更新レートで更新されるという事実に起因して、実際のエネルギーとは異なり得る。
好ましくは、フィルタ係数更新方程式は次のとおりである:
Figure 2012501152
ここで、
Figure 2012501152
は更新されるフィルタ係数の番号であり、Nは適応フィルタのフィルタ係数の総数を示す。適応フィルタのN個のフィルタ係数の全てが更新される場合、方程式8はi=0、1、・・・、N−1について計算される。項
Figure 2012501152
は更新されたフィルタ係数を表し;項
Figure 2012501152
は対応する実際のフィルタ係数を表し、rはフィルタリング済み信号を表し、rは誤差信号を表し、
Figure 2012501152
はエネルギー推定値を表す。
方程式8は、正規化換算係数が残差信号のパワー和
Figure 2012501152
から残差信号のエネルギー推定値
Figure 2012501152
に変更されていることを除いて、LPC前白色化と組み合わされた標準的NLMSフィルタ係数更新の方程式7と同一である。
方程式2および方程式7と関連して既に論じられたように、信号x(n)は、従って残差信号r(n)は、実数値信号の代わりに複素数値信号でもあり得る。この場合、誤差信号の共役複素数r (n)が方程式8においてr(n)の代わりに使用されなければならない。
LPC白色化フィルタについては、例えば自己相関方法、共分散方法およびラティス法など、LPC白色化フィルタ係数を計算するための多くの方法が知られている。これらの方法のうちの幾つかは、残差信号エネルギーの推定値を決定するための計算的に効率の良い方法を含む。
好ましくは、LPC白色化フィルタのフィルタ係数を決定するために自己相関方法が使用される。LPC白色化フィルタにおけるFIR線形予測子のフィルタ係数を決定するための自己相関方法は、例えば、既に引用された教科書「音声信号のデジタル処理」、L.R.ラビナーおよびR.W.シェーファー、プレンティス−ホール、エングルウッド・クリフス、NJ、1978年、のセクション8.1.1に記載されている。この教科書のセクション8.1、ページ398−401における線形予測解析の基本原理についての記述と、この教科書のセクション8.1.1、ページ401−403における自己相関方法についての記述は、参照によりここに組み込まれる。自己相関方法は、LPC白色化フィルタにおけるM次FIR線形予測子のフィルタ係数を決定するための行列方程式をもたらす。
好ましくは、そのような行列方程式を解くために、ダービンのアルゴリズムが使用される。行列方程式を解くためのダービンのアルゴリズムは、例えば、既に引用された教科書「音声信号のデジタル処理」のセクション8.3.2、ページ411−413において記述されている。自己相関方程式のためのダービンの再帰的解についてのこの記述は、参照によりここに組み込まれる。自己相関方法、および自己相関方程式のためのダービンのアルゴリズムも、教科書「デジタル音声−低ビットレート通信システムのための符号化(Digital Speech−Coding for Low Bit Rate Communication Systems)」、A.M.コンドズ(A.M.Kondoz)、第2版、ジョン・ワイリー&サンズ(John Wiley & Sons)、2004年、のページ68−70において記述されている。この記述も、参照によりここに組み込まれる。
自己相関方程式を解くためのダービンのアルゴリズムは、LPC白色化フィルタにおけるM次FIR線形予測子のフィルタ係数を決定するために次の再帰的方程式を使用する:
Figure 2012501152
自己相関Rを決定するための方程式9において、項x(m)は長さLのウィンドウにおける入力信号の選択されたサンプルを表し、該サンプルはx(m)から始まってx(m+L−1)にまで及ぶ。該ウィンドウの外側では、入力信号はゼロであると見なされる。好ましくは、LPC係数の新しいセットが計算されるたびに、入力信号サンプルウィンドウはLPC係数更新レートに応じてシフトする(すなわち、該ウィンドウは、更新レートの逆数であるK入力サンプルだけシフトする。下の方程式17を参照)。複素数値入力信号の場合には、上の方程式9、13および14は修正されなければならない。方程式9において、項x(m+i)は共役複素数x(m+i)により取って代わられる。方程式13では、項
Figure 2012501152
は、共役複素数
Figure 2012501152
により取って代わられる。方程式14においては、項k は絶対値の二乗|kにより取って代わられ、これはk・k に等しい。
方程式10ないし方程式14は、反復i=1、2、・・・、Mについて解かれる。M次予測子のフィルタ係数αは次の方程式に従って決定される:
Figure 2012501152
反復iにおける項Eは、次数iの線形予測子についての二乗予測誤差に対応する。好ましくは、本出願の第1側面に従う方法は、エネルギー推定値
Figure 2012501152
を反復iの二乗予測誤差E(すなわち、次数iの線形予測子についての二乗予測誤差)として決定し、
Figure 2012501152
である。より好ましくは、決定されたエネルギー推定値
Figure 2012501152
は、ダービンのアルゴリズムの最後の反復の二乗予測誤差Eに対応する。エネルギー推定値として使用される二乗予測誤差Eは、この場合、ダービンのアルゴリズムの終わりから2番目の反復の二乗予測誤差EM−1に基づいて決定される。方程式14でi=Mのとき、二乗予測誤差Eは次の方程式に従って決定され得る:
=(1−k )・EM−1 (方程式16)
をエネルギー推定値として使用するとき、正規価値または正規化換算回数は1/Eに好ましく対応する。
好ましくは、エネルギー推定値は、2つの追加のMAC演算によって計算され得る。Eをエネルギー推定値として使用する場合、Eは通例方程式16で、(1−k )が決定される第1MAC演算により、そしてその第1MAC演算の結果にEM−1が掛けられる第2MAC演算により、計算される。第1MAC演算は掛算と累算との両方を包含するが、第2MAC演算は掛算だけを包含するということに留意するべきである。しかし、それぞれのための処理コストは通例同じであり、従って両方がMACと称される。フィルタ係数αを決定するためにEは計算されなくても良いということ、すなわち方程式14のEは、i=Mである最後の反復では通例計算されないということ、にさらに留意されたい。しかし、正規化のためにEをエネルギー推定値として使用する場合、Eを決定するための前記の2つの追加MAC演算が実行される。従って、上記の再帰的アルゴリズムまたはその修正バージョンを用いてLPC白色化フィルタ係数が決定されると、簡単な追加の計算(すなわち2つのMAC)により残差エネルギーの推定値がもたらされ、これは後に正規化係数を決定するために反転させられ得る(1つの割算)。これらの計算コスト(2つのMACおよび1つの割算)はNLMSアルゴリズムのために正規化換算係数を決定するための前述のコストと同等であるということに留意されたい。
正規化係数を決定するためにエネルギー推定値を反転させる代わりに、方程式8における積の1つ以上の因子を割るための除数としてエネルギー推定値を用いることもできる。
残差エネルギーについての推定値としてEの代わりにEM−1(または他の任意のE)を使用することもできるということに留意するべきである。この場合、EM−1はM次予測子のフィルタ係数αを決定するために既に計算されているので、2つの追加のMAC演算は通例不要である。
白色化フィルタのフィルタ係数を決定するために自己相関方法を用いる代わりに、フィルタ係数を決定するために別の方法を用い、それに基づいてエネルギー推定値を決定することができる。例えば、LPC解析のためにコレスキー分解解法と組み合わせて共分散方法を用いる場合、既に引用された教科書“音声信号のデジタル処理”のページ411の方程式8.65に基づいてフィルタリング済み信号のエネルギー推定値を決定することができる(エネルギー推定値として使用され得る平均二乗予測誤差Eを参照)。教科書“音声信号のデジタル処理”のセクション8.1.2、ページ403−404の共分散方法についての記述と、セクション8.3.1、ページ407−411のコレスキー分解解法についての記述とは、参照によりここに組み込まれる。
該方法の好ましい実施態様では、第1白色化フィルタのフィルタ係数は適応的に更新される。更新済み正規化値は、第1白色化フィルタのフィルタ係数が更新されるごとに決定され得る。第1白色化フィルタ(特に第1LPCフィルタ)のフィルタ係数は、サンプル当たりに1回よりも稀に更新され得る。従って、第1白色化フィルタのフィルタ係数および正規化値は、適応フィルタおよび第1白色化フィルタの上流側の入力信号のサンプリングレートより低い更新レートで更新され得る。例えば、正規化値は単位時間当たりに1/64回の更新という更新レートで更新され得るが、サンプリングレートは単位時間当たり1サンプルに対応する。
正規化値は好ましくは白色化フィルタ係数が更新されるときに更新されるだけであるので、正規化値を計算するためのコストは最早一定ではなくて、白色化フィルタ係数がどの程度の頻度で更新されるかによる。
しかし、サンプル当たりに1回よりも稀にフィルタ係数を更新する場合(例えば、128サンプルに1回)、エネルギーは更新期間中変化し得るので、フィルタリング済み信号のエネルギーを推定するための二乗予測誤差E(または他の任意の二乗予測誤差E)の精度は低下することがある。
第1白色化フィルタのフィルタ係数がKサンプルごとに1回更新されるシステムでは、好ましい正規化値または係数1/Eを計算するサンプル当たりの計算コストC(!)は次の関係によって定義される:
Figure 2012501152
方程式17におけるこの一般的関係から、Kが増えるにつれて正規化係数を計算するためのサンプル当たりのコストが減少し、標準的NLMSに関する複雑さを低下させるということが明らかである(正規化換算係数を計算するためのサンプル当たりのコストは2MAC+1割算である)。
好ましくは、第1白色化フィルタのフィルタ係数および正規化値を更新するための更新レート(すなわち、上の方程式17における1/K)は、入力信号の統計的特性が更新期間中本質的に不変であるように選択される。この場合、エネルギー推定値、従って正規化係数は、NLMSアルゴリズムにおける正規化係数に非常に良く類似するであろう。これは、性能に著しい影響を及ぼさずに複雑さを低下させることを可能にする。しかし、入力信号の統計が更新期間中高度に非不変であるならば、収束性能は犠牲になるけれども複雑さの低下はなお達成されるであろう。
しかし、第1白色化フィルタのフィルタ係数を幾度も更新する必要はない。白色化フィルタの係数および正規化値は、1回計算され、その後は固定されたままであって良い。そのような場合は、K=∞の更新期間に対応する。正規化換算係数を計算する(サンプル当たりの)コストは0であり、該アルゴリズムを実行する総コストはLPC白色化フィルタおよびLMSアルゴリズムのコストに等しい。
応用例によっては、特に入力信号の特性がアプリオリに分かっていて時間不変である応用例では、そのような固定された白色化フィルタ係数および固定された正規化値は非常に良く働く。そのような応用例では、固定された白色化フィルタ係数および正規化値は実際上時間不変であり、従ってそれらを周期的に更新しても性能は顕著には向上しないであろう。
K=1の場合、正規化値はサンプル当たりに1回計算される。この場合、方程式17により与えられる正規化値を計算するコストC(K=1)は、在来のNLMSアルゴリズムにおいて正規化を計算するためのコストと同じである。これは、通例最大更新レートを表すので、Kのどんな値についても、該方法の好ましい実施態様に従って正規化値を計算するコストはNLMSアルゴリズムのために正規化換算係数を計算するコストより常に少ないかあるいは同等であるということを示す。
本出願の第2の側面は、LMSアルゴリズムにより適応させられる適応フィルタの少なくとも1つの更新済みフィルタ係数を決定するための装置に関する。該装置に存する手段は、本出願の第1側面に従う方法の方法ステップに対応する。従って、該装置は、フィルタリング済み信号を出力する第1白色化フィルタの(例えばLPC白色化フィルタの)フィルタ係数を決定するとともに、該第1白色化フィルタの該フィルタ係数を決定する過程で得られた1つ以上の計算された値に基づいて正規化値を決定するための手段を含む。該装置は、該フィルタリング済み信号および該正規化値に依存して該適応フィルタの少なくとも1つの更新済みフィルタ係数を決定するための更新ステージをさらに含む。好ましくは、該第1白色化フィルタのフィルタ係数を決定するとともに正規化値を決定するための該手段は、共通信号処理ユニットを形成する。該共通ユニットは、その決定された正規化値を該更新ステージに伝える。
本出願の該第1側面に関する上記所見は、本出願の該第2側面にも当てはまる。
本出願の第3の側面は、LMSアルゴリズムによって適応させられる適応フィルタと第1白色化フィルタ(例えばLPC白色化フィルタ)とを含むフィルタシステムに関する。さらに、該フィルタシステムは、フィルタリング済み信号を出力する該第1白色化フィルタのフィルタ係数を決定するとともに、該第1白色化フィルタの該フィルタ係数を決定する過程で得られた1つ以上の計算された値に基づいて正規化値を決定するための手段を含む。さらに、該LMSアルゴリズムを実行するために、該フィルタシステムは、該フィルタリング済み信号および該正規化値に依存して該適応フィルタの少なくとも1つの更新済みフィルタ係数を決定するための更新ステージを含む。
該フィルタシステム全体またはその部分は、DSP(digital signal processor(デジタル信号処理装置))により実現され得る。
本出願の該第1側面および該第2側面に関する上記所見は、本出願の該第3側面にも当てはまる。
本出願の第4の側面は、例えばコンピュータまたはDSP上で実行されたときに本出願の該第1側面に従う該方法を実行するための命令を含むソフトウェアプログラムに関する。
本出願の該第1側面、該第2側面および該第3側面に関する上記所見は、本出願の該第4側面にも当てはまる。
本出願の第5の側面は、適応フィルタによって信号をフィルタリングするための方法に関し、該適応フィルタはLMSアルゴリズムによって適応させられる。該適応フィルタの少なくとも1つの更新済みフィルタ係数は、上で論じられた方法に従って決定される。本出願の他の側面に関する上記所見は、本出願の該第5側面にも当てはまる。
本発明は、以下で、添付図面を参照して例を挙げて説明される。
システムモデルによる未知システムのモデル化を示す。 適応LMSフィルタシステムモデルを示す。 適応チャネル等化のための適応LMSフィルタの使用を示す。 M次の線形予測子に基づくLPC白色化フィルタを示す。 LPC白色化フィルタによる入力信号の前白色化を伴う適応LMSフィルタを示す。 主信号経路の外側での前白色化を伴う適応LMSフィルタを示す。 正規化係数がLPC白色化フィルタから適応係数更新ステージに伝えられる第1実施態様を示す。 正規化係数がLPC白色化フィルタから適応係数更新ステージに伝えられ、前白色化が主信号経路の外側にある第2実施態様を示す。 第1応用例としての適応イコライザを示す。 第2応用例としての適応エコーキャンセラを示す。 第3応用例としてのフィードバック適応雑音制御システムを示す。 図11の第3応用例の第1の簡単化されたバージョンを示す。 図11の第3応用例の第2の簡単化されたバージョンを示す。
図1−6は既に上で論じられた。
図7は、本発明の第1実施態様を示す。該第1実施態様は、図5の構成に類似する。図5および図7の中の同じ参照符号により示されている図形要素は、基本的に同じである。さらに、図5についての所見は、基本的に図7にも当てはまる。
図7において、入力信号x(n)は、LPC白色化フィルタおよびLPC解析手段(すなわち、該LPC白色化フィルタのフィルタ係数を決定するための手段)を含むユニット25’に供給される。該LPC白色化フィルタは、好ましくは、FIR構造に基づくLPC白色化フィルタである。LPC白色化フィルタ25’により生成された残差信号r(n)は、未知システム21と、未知システム21をモデル化するために使用される適応フィルタ22と、適応フィルタ22の更新済みフィルタ係数を決定するためのLMSフィルタ係数更新ステージ23’とに供給される。誤差信号r(n)は、未知システム21の出力信号から適応フィルタ22の出力信号を差し引くことによって生成される。
さらに、フィルタ係数を決定するためのユニット25’は、該LPCフィルタのフィルタ係数を決定する過程で得られた計算された値に基づいて残差信号のr(n)のエネルギー推定値
Figure 2012501152
をも決定する。該エネルギー推定値は、その後反転させられ、正規化換算係数
Figure 2012501152
としてユニット25’から適応係数更新ステージ23’に伝えられる。
好ましくは、上で既に論じられたように、自己相関方程式を解くためのダービンのアルゴリズムの最後の反復の二乗予測誤差Eが決定されてエネルギー推定値
Figure 2012501152
として使用される。Eをエネルギー推定値
Figure 2012501152
として使用する場合、Eは、好ましくは、(1−k )が決定される第1MAC演算と、該第1MAC演算の結果にEM−1が掛けられる第2MAC演算とによって計算される(方程式16を参照)。
従って、LPC白色化フィルタ係数がダービンのアルゴリズムを用いて決定されると、簡単な追加の計算(すなわち、2つのMAC)によって残差エネルギーの推定値Eがもたらされ、それは、その後、正規化係数1/Eを決定するために反転させられる(1つの割算)。
をエネルギー推定値
Figure 2012501152
として用いる場合、適応フィルタ22のフィルタ係数は次の方程式:
Figure 2012501152
に従って更新される。
ここで、項1/Eは、ユニット25’から更新ステージ23’に伝えられる正規化換算係数に対応する。あるいは、正規化は、割算でEを(掛算において掛算因子として使用する代わりに)除数として使用することによって行われても良い。1/Eを伝える代わりに、1つの代替実施態様ではEが、あるいは他の1つの代替実施態様ではEM−1およびkが、ユニット25’から更新ステージ23’に伝えられる。方程式8に関連して既に論じられたように、信号x(n)、従って残差信号r(n)は、実数値の信号である代わりに複素数値の信号でもあり得る。この場合、r(n)の代わりに共役複素数r (n)が方程式18で使用されなければならない。
好ましくは、LPC白色化フィルタ25’のフィルタ係数および正規化値は入力信号x(n)のKサンプルごとに更新され、K>1であり、例えばK=8、16、32または64である。これは、既に上で論じられたように標準的NLMSアルゴリズムにおいて正規化換算係数を決定するための計算コストと比べて正規化換算係数を決定するための計算コストを減少させる。あるいは、K=1が使用され得る。
入力信号x(n)を前白色化することは、適応LMSフィルタの収束性能を向上させるけれども、未知システム21への入力信号を変化させるという欠点を有する。或る応用例では、未知システム21への入力を変化させることは望ましくない。特にそれらの応用例では、LPC白色化フィルタ25’を、これが未知システム21および適応フィルタ22への入力を変化させないように、主信号経路の外へ移すことができる。このアプローチは、既に図6に関連して論じられた。
図8は第2実施態様を示し、ここでは図7の第1実施態様とは対照的に、前白色化は図6に関連して既に論じられたように主信号経路の外側で行われる。同じ参照符号により示されている図6−8の中の図形要素は基本的に同じである。図7の第1実施態様とは対照的に、図8においてはLPC白色化フィルタ25’(好ましくはFIR構造に基づく)はLMSフィルタの更新経路の中に、すなわち適応フィルタ22と並列の更新ステージ27’の経路に、移されている。図8では、適応フィルタ22および未知システム21の両方がLPC白色化フィルタ25’の上流側から白色化されていない信号x(n)を受け取るが、図7では適応フィルタ22および未知システム21はフィルタリング済み信号r(n)を受け取る。そのような代替システムを働かせるために、白色化後の残差誤差信号r(n)がLMS更新アルゴリズムのために誤差信号として使用されるように、さらなるLPC白色化フィルタ26が誤差信号e(n)に対して用いられる。ブロック26内のLPC白色化フィルタはブロック25’内のLPC白色化フィルタと同一である、すなわち、両方のフィルタのフィルタ係数は同一である。従って、LPC白色化フィルタ25’および26のフィルタ係数の決定は信号処理ブロック25’においてのみ実行され(図8のブロック25’内の“LPC解析”を参照されたい。これはブロック26内には無い)、LPC白色化フィルタ25’の決定されたフィルタ係数がLPC白色化フィルタ26に送られる(送りは図8には示されていない)。
図8では正規化換算係数は図7の場合と同じ仕方で決定され、好ましくは、正規化換算係数は、図7に関連して既に論じられたように1/Eに対応する。この場合、簡単な追加の計算(すなわち2つのMAC)が残差エネルギーの推定値Eをもたらし、それは、その後、正規化係数1/Eを決定するために反転させられる(1つの割算)。好ましくは、LPC白色化フィルタ25’のフィルタ係数と正規化値とは入力信号x(n)のKサンプルごとに更新され、K>1である。
正規化換算係数をユニット25’から受け取るフィルタ更新ステージ27’は、方程式18に沿って適応フィルタ22のフィルタ係数を更新する。
上で既に論じられたように、第1白色化フィルタのフィルタ係数と正規化換算係数とがKサンプルごとに1回更新される図7および8のシステムについては、好ましい正規化換算係数1/Eを計算するためのサンプル当たりの計算コストCは、以下で繰り返されるように方程式17により定義される:
Figure 2012501152
Kが1から増大するにつれて、正規化係数を計算するためのサンプル当たりのコストは減少し、標準的NLMS(この場合、正規化換算係数を計算するためのサンプル当たりのコストは2MAC+1割算である)に関して複雑さを低下させる。好ましくは、LPC白色化フィルタ25’のフィルタ係数を更新しかつ正規化換算係数を更新するための更新レートは、入力信号の統計的特性が更新期間中本質的に不変であるように選択される。この場合、エネルギー推定値は、従って正規化係数は、NLMSアルゴリズムにおける正規化係数に非常に良く似るであろう。これは、性能に著しい影響を及ぼさずに複雑さの低下を可能にする。
正規化項の計算コストの減少を解析することは有益であるけれども、その減少が適応フィルタリングアルゴリズム全体の計算コストのどの程度の割合に相当するかを調べることも興味深い。
適応フィルタリングアルゴリズム全体の複雑さの低下を計算するために、下記の仮定が行われる:
1. 適応長さNのFIRフィルタ(すなわち適応フィルタ22あるいはLPC白色化フィルタにおける線形予測子)のフィルタ出力の計算にはサンプル当たりにN個のMACが必要である。
2. 長さNのLMSフィルタ係数更新を行うにはN個のMACが必要である。
3. LPC解析ウィンドウの長さ(すなわち、線形予測子のフィルタ係数を計算するために使用されるウィンドウの長さ)は、LMSフィルタ次数Nに等しくなるように選択される。
4. 長さNの解析ウィンドウでの長さMのLPCフィルタについてのLPC解析はN・(M+1)のMACを必要とする。
5. LPC解析更新期間(更新レートの逆数)は、LMSフィルタの長さの1/2に等しくなるように選択される。
6. 1つの割算は24個のMACを必要とする。
7. 図6および8に示されているように2つのLPC白色化フィルタが使用される。
サンプルごとに更新されるNLMSアルゴリズムを使用するためのコストX1は次のとおりである:
X1=A+B+C+D+E1+F1+G (方程式19)
ここで、X1は、前白色化を含むNLMS全体のために必要とされるサンプル当たりのMACの平均数を示す。項A(=N)は、適応FIRフィルタ(図6のフィルタ22を参照)のためのMACの数に対応する。項B(=N)は、LMS係数更新のためのMACの数を示す。項C(=M)は、第1LPC白色化フィルタ(図6のフィルタ25を参照)のためのMACの数に対応する。項D(=M)は、第2LPC白色化フィルタ(図6のフィルタ26を参照)のためのMACの数を示す。項E1(=2)は、正規化項、すなわちパワー和、を計算するために必要とされるMACの数を指す(パワー和はサンプル当たりに1回計算される)。項F1(=24)は、正規化項(割算)に基づいて正規化換算係数を計算するために必要とされるMACの数に対応し、それはサンプル当たりに1回行われる。項Gは、N/2の更新期間を仮定したときの、LPC解析を行うために必要とされるサンプル当たりのMACの平均数を示す。上記の仮定4を考慮すれば、項Gは(N・(M+1))/(N/2)=2・(M+1)に等しい。
一方、図8に示されている好ましい実施態様を実行するためのコストX2(すなわち、サンプル当たりのMACの平均数X2)は:
X2=A+B+C+D+E2+F2+G (方程式20)
である。
方程式20において、項A(=N)は、適応FIRフィルタ(図8のフィルタ22を参照)のためのMACの数を指す。項B(=N)は、LMS係数更新のためのMACの数を示す。項C(=M)は、第1LPC白色化フィルタ(図8のフィルタ25’を参照)のためのMACの数に対応する。項D(=M)は、第2LPC白色化フィルタ(図8のフィルタ26を参照)のためのMACの数を表す。項E2は、N/2の更新期間を仮定したときの、正規化項を計算するために必要とされるサンプル当たりのMACの平均数を指す。項E2は2/(N/2)=4/Nに等しい。項F2は、N/2の更新期間を仮定して、正規化項(割算)に基づいて正規化換算係数を計算するために必要とされるサンプル当たりのMACの平均数を示す。項F2は24/(N/2)=48/Nに等しい。項Gは、N/2の更新期間を仮定して、LPC解析を行うために必要とされるサンプル当たりのMACの平均数に対応する。上の仮定4を考慮すると、項Gは(N・(M+1))/(N/2)=2・(M+1)に等しい。
NLMSに関して開示された方法のMIPS節約S(パーセントでの)は次のように推定され得る:
S=100・(1−(X2/X1)) (方程式21)
後記の表は、いろいろな適応フィルタ長さNおよび予測子次数Mについて標準的NLMSと比べて、好ましい実施態様について方程式21に沿って推定された複雑さ低減Sを提示する。全項目について、NのLPC解析ウィンドウ長さ(上の仮定3を参照)およびK=N/2(上の仮定5を参照)の更新期間(更新期間の逆数)の両方が仮定されている。
Figure 2012501152
この表に見られるように、実効複雑さ低減Sは、適応フィルタ次数Nおよび−より低い程度で−予測子次数Mに、大体逆比例する。このような低減は、リチャージ間のより長いバッテリ寿命を提供しかつ/またはプロセッサのリソースを他のタスクに割当てることを可能にするので、バッテリ電力に依拠するポータブルデバイスに関して特に重要である。
本出願において開示される方法、装置およびフィルタシステムは、未知の入力信号に基づいて収束する適応LMSフィルタを包含する任意の製品において有益であろう。特に、本出願で開示される方法、装置およびフィルタシステムは、適応イコライザ、適応エコーキャンセラあるいはフィードバック適応雑音制御システムに使用され得る。図9−13に、そのような応用例が示されている。
図9の第1応用例は適応イコライザであり、そこでは信号は入力信号x(n)を望ましくない仕方で変化させる未知の周波数応答を有するチャネル30を通過する。信号経路の全体的周波数応答を所望の周波数応答に収束させるために、適応フィルタ31と、LPC前白色化フィルタブロック32および33と、更新経路におけるLPC解析に基づくフィルタブロック32における正規化換算係数の計算とを含むフィルタシステムが使用される。適応フィルタ31の係数はフィルタ係数更新ステージ34において更新される。このフィルタシステムは図8のフィルタシステムに類似する(代わりに、図7の構造を使用することもできる)。多くの場合に、所望の全体的周波数応答は平坦であり、所望の周波数応答を有するフィルタを表すボックス35は完全に除去される(この場合、ボックス35は貫通接続により取って代わられる)。
図10の第2応用例は適応エコーキャンセラであり、ここでは近端マイクロフォン(図10のマイクロフォン入力を参照)によりピックアップされた信号は、音声エンコーダ45およびトランスミッタ46を介して遠端スピーカ(図10には示されていない、遠端スピーカはチャネル40の一部である)に送られ、遠端マイクロフォン(図10には示されていない、遠端マイクロフォンはチャネル40の一部である)によりピックアップされ、レシーバ47および音声デコーダ48を介して望ましくなエコーとして近端スピーカ(図10のスピーカ出力を参照)に戻される。図10において、前白色化(白色化フィルタ42および43を参照)と更新経路におけるLPC解析に基づく正規化換算係数の計算とを伴う適応フィルタ(エコー経路モデルFIRフィルタ41を参照)が使用される。FIRフィルタ41の係数はフィルタ係数更新ステージ44において更新される。構造は、図8のフィルタシステムの構造に類似する(代わりに図7の構成を使用することもできる)。該適応フィルタは遠端エコー経路をモデル化して、近端スピーカに戻されるエコー信号の推定値y’(n)を生じさせる。該適応フィルタからのエコー推定値出力y’(n)は、望ましくないエコーを消すために、近端スピーカに戻される信号y(n)から差し引かれる。
図11−13の第3応用例はフィードバック適応雑音制御システムであり、ここでは、人の耳に音響的に結合されたラウドスピーカに出力される信号y(n)は、望ましくない環境雑音源n(n)の存在によって歪められる。該ラウドスピーカは、音響チャネルに対応する音響プラント50の一部である。スピーカの直ぐそばに位置するマイクロフォン(該マイクロフォンは音響プラント50の一部である)によりピックアップされた信号y(n)は、ラウドスピーカから出力された信号と干渉雑音n(n)との和を包含する。プラントモデルフィルタ51はラウドスピーカから出力された信号の推定値y’(n)を生成し、それは誤差信号e’(n)を生成するためにマイクロフォンによりピックアップされた信号から差し引かれる。誤差信号e’(n)はフィードバックアンチノイズ信号を生成するために制御フィルタ58を通過させられ、それは修正済み入力信号y(n)を生成するために所望のオーディオ入力信号x(n)に加えられる。該アンチノイズ信号は、ラウドスピーカを通して再生されるときには、望ましくない雑音源n(n)と比べて振幅は同等であるが位相が反対であり、知覚される雑音レベルの低下をもたらす。
図11は第3応用例の1つのバージョンであって、ここではプラントモデルフィルタおよび制御フィルタの両方が、前白色化(プラントモデルフィルタのためのLPC白色化フィルタ52および53と、制御フィルタのためのLPC白色化フィルタ54および55とを参照)および更新経路におけるLPC解析に基づく正規化換算係数の計算とを伴う適応フィルタ(プラントモデルFIRフィルタ51および制御FIRフィルタ58を参照)を含むフィルタシステムである。フィルタ係数は、フィルタ係数更新ステージ56および57において更新される。これらのフィルタシステムは、図8のフィルタシステムと類似する(代わりに図7の構造を使用することもできる)。
図12は、第3応用例の第2バージョンである。同じ参照符号により示されている図11および12の図形要素は類似しあるいは同じである。図12において、制御フィルタは、前白色化(LPC白色化フィルタ54および55を参照)および更新経路におけるLPC解析に基づく正規化換算係数の計算を伴う適応フィルタ(制御FIRフィルタ58を参照)を含むフィルタシステムである。フィルタ係数はフィルタ係数更新ステージ57において更新される。該フィルタシステムは図8のフィルタシステムに類似する(代わりに図7の構造を使用することもできる)。プラントモデルフィルタ51'は、第3応用例のこのバージョンでは適応させられない。
図13は第3応用例の第3バージョンである。同じ参照符号により示されている図11および13の図形要素は類似しあるいは同じである。図13において、プラントモデルフィルタは、前白色化(LPC白色化フィルタ52および53を参照)および更新経路におけるLPC解析に基づく正規化換算係数の計算を伴う適応フィルタ(FIRフィルタ51を参照)を含むフィルタシステムである。フィルタ係数はフィルタ係数更新ステージ56において更新される。該フィルタシステムは図8のフィルタシステムに類似する(代わりに図7の構造を使用することもできる)。制御フィルタ58'は、第3応用例のこのバージョンでは適応させられない。
本特許出願は、入力信号の前白色化を伴う適応フィルタリングのための新しい方法を提供する。特に、本出願は、LPC前白色化フィルタを利用する適応LMSフィルタリングアルゴリズムにおける複雑さを低減するための新しい方法を提供する。2つのMAC演算および1つの割算により正規化係数を計算するとき、NLMSアルゴリズムに関しての複雑さ低減は、LPC前白色化フィルタ係数が更新される頻度に反比例する。この場合、全てのLPC前白色化フィルタ係数更新レートについて、計算の複雑さは標準的NLMSアルゴリズムより低いかあるいは同等である。
図5と関連して既に論じられたように、図6におけるLMSアルゴリズムは標準的LMSアルゴリズムまたはNLMSアルゴリズムであって良い。しかし、最適の収束性能を得るためにはLPC白色化フィルタとNLMSアルゴリズムとの組み合わせを用いるのが好ましい。米国特許US6163608には、自己回帰モデルに基づくスペクトル整形フィルタを用いて快適雑音を生成する方法が記載されている。スコット・D・ドグラス(Scott D. Douglas)他による、「適応等化及び逆畳み込みのための自己白色化アルゴリズム(Self−Whitening Algorithms for Adaptive Equalization and Deconvolution)」、IEEE Transactions on Signal Processing、NY、US、Vol.47、No.4,1、1999年4月、に、前白色化処理およびチャンネル等化のために同じフィルタを用いることについて記載されている。

Claims (33)

  1. LMSアルゴリズムにより適応させる適応フィルタ(22)の少なくとも1つの更新済みフィルタ係数を決定する方法であって、
    フィルタリング済み信号を出力する第1白色化フィルタ(25')のフィルタ係数を決定するステップと、
    前記第1白色化フィルタ(25')の前記フィルタ係数を決定する過程で得られた1つ以上の計算された値に基づいて正規化値を決定するステップであって、前記正規化値は前記フィルタリング済み信号の前記エネルギーと関連することを特徴とする、前記正規化値を決定するステップと、
    前記フィルタリング済み信号および前記正規化値に依存して前記適応フィルタ(22)の少なくとも1つの更新済みフィルタ係数を決定するステップと、
    を具備する方法。
  2. 請求項1に記載の方法において、前記第1白色化フィルタは、前記フィルタリング済み信号として残差信号を出力するLPC白色化フィルタ(25')であることを特徴とする方法。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の方法において、前記正規化値を決定する前記ステップは、
    前記第1白色化フィルタ(25')の前記フィルタ係数を決定する過程で得られた前記1つ以上の計算された値に基づいて前記フィルタリング済み信号のエネルギー推定値を決定するステップ
    を含むことを特徴とする方法。
  4. 請求項3に記載の方法において、前記正規化値を決定する前記ステップは、
    前記エネルギー推定値を反転させるステップ
    をさらに含むことを特徴とする方法。
  5. 請求項3又は請求項4に記載の方法において、
    少なくとも1つのフィルタ係数は次のLMSフィルタ係数更新方程式、
    Figure 2012501152
  6. 請求項3乃至請求項5のいずれか1項に記載の方法において、前記第1白色化フィルタは前記フィルタリング済み信号として残差信号を出力するLPC白色化フィルタ(25')であり、前記LPC白色化フィルタ(25')の前記フィルタ係数は自己相関方程式を解くためのダービンのアルゴリズムと組み合わされた自己相関方法に本質的に対応する方法に基づいて決定されることを特徴とする方法。
  7. 請求項6に記載の方法において、前記エネルギー推定値はダービンのアルゴリズムの反復数jの二乗予測誤差Eに対応することを特徴とする方法。
  8. 請求項6又は請求項7に記載の方法において、前記エネルギー推定値はダービンのアルゴリズムの最後の反復の二乗予測誤差Eに対応することを特徴とする方法。
  9. 請求項8に記載の方法において、前記二乗予測誤差Eは、ダービンのアルゴリズムの終わりから2番目の反復の二乗予測誤差EM−1に基づいて決定されることを特徴とする方法。
  10. 請求項9に記載の方法において、前記エネルギー推定値は2つの積和演算により決定されることを特徴とする方法。
  11. 請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の方法において、前記第1白色化フィルタ(25')の前記フィルタ係数は適応的に更新されることを特徴とする方法。
  12. 請求項11に記載の方法において、前記第1白色化フィルタ(25')の前記フィルタ係数が更新されるごとに更新済み正規化値が決定されることを特徴とする方法。
  13. 請求項12に記載の方法において、前記第1白色化フィルタ(25')の前記フィルタ係数および前記正規化値は、前記適応フィルタ(22)および前記第1白色化フィルタ(25')の上流側での入力信号のサンプリングレートより低い更新レートで更新されることを特徴とする方法。
  14. 請求項13に記載の方法において、前記入力信号の統計的特性は前記正規化値の更新期間中本質的に不変であることを特徴とする方法。
  15. 請求項1乃至請求項12のいずれか1項に記載の方法において、正規化値を決定するステップおよび第1白色化フィルタ(25')の前記フィルタ係数を決定するステップは1回実行され、その後は前記正規化値および前記第1白色化フィルタ(25')の前記フィルタ係数は固定されたままであることを特徴とする方法。
  16. 請求項1乃至請求項15のいずれか1項に記載の方法において、前記適応フィルタ(22)は前記フィルタリング済み信号を受け取ることを特徴とする方法。
  17. 請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の方法において、
    前記適応フィルタ(22)は前記第1白色化フィルタ(25')の上流側から信号を受け取り、
    前記適応フィルタ(22)の前記少なくとも1つの更新済みフィルタ係数は、前記第1白色化フィルタ(25')と同じフィルタ係数を有する第2白色化フィルタ(26)によりフィルタリングされた誤差信号にさらに依存して決定される
    ことを特徴とする方法。
  18. 請求項1乃至請求項17のいずれか1項に記載の方法において、前記適応フィルタ(22)の全てのフィルタ係数について更新済みフィルタ係数が決定されることを特徴とする方法。
  19. 請求項3乃至請求項10のいずれか1項に記載の方法において、前記エネルギー推定値は前記第1白色化フィルタ(25')の前記フィルタ係数を決定する間に決定されることを特徴とする方法。
  20. LMSアルゴリズムにより適応させる適応フィルタ(22)の少なくとも1つの更新済みフィルタ係数を決定するための装置であって、
    フィルタリング済み信号を出力する第1白色化フィルタ(25')のフィルタ係数を決定するとともに、前記第1白色化フィルタ(25')の前記フィルタ係数を決定する過程で得られた1つ以上の計算された値に基づいて正規化値を決定するための手段であって、前記正規化値は前記フィルタリング済み信号の前記エネルギーと関連することを特徴とする、手段と、
    前記フィルタリング済み信号および前記正規化値に依存して前記適応フィルタ(22)の少なくとも1つの更新済みフィルタ係数を決定するための更新ステージ(27')と、
    を具備することを特徴とする装置。
  21. 請求項20に記載の装置において、フィルタ係数を決定するための前記手段(25')は、前記フィルタリング済み信号として残差信号を出力するLPC白色化フィルタ(25')のフィルタ係数を決定するように構成されていることを特徴とする装置。
  22. 請求項20又は請求項21に記載の装置において、前記正規化値を決定するための手段(25')は、前記第1白色化フィルタ(25')の前記フィルタ係数を決定する過程で得られた1つ以上の計算された値に基づいて前記フィルタリング済み信号のエネルギー推定値を決定するように構成されていることを特徴とする装置。
  23. 請求項22に記載の装置において、フィルタ係数を決定するための前記手段(25')は、前記フィルタリング済み信号として残差信号を出力するLPC白色化フィルタ(25')のフィルタ係数を決定するように構成され、前記LPC白色化フィルタの前記フィルタ係数を決定するための手段は、自己相関方程式を解くためのダービンのアルゴリズムと組み合わされた自己相関方法に本質的に対応する方法に基づいて前記フィルタ係数を決定するように構成されていることを特徴とする装置。
  24. 請求項23に記載の装置において、前記エネルギー推定値は、ダービンのアルゴリズムの最後の反復の前記二乗予測誤差Eに対応することを特徴とする装置。
  25. 請求項20乃至請求項24のいずれかに記載の装置において、正規化値を決定するための前記手段(25')は、前記第1白色化フィルタ(25')の前記フィルタ係数が更新されるごとに更新済み正規化値を決定するように構成されていることを特徴とする装置。
  26. 請求項25に記載の装置において、前記第1白色化フィルタ(25')の前記フィルタ係数と前記正規化値とは、前記適応フィルタ(22)および前記第1白色化フィルタ(25')の上流側の入力信号の前記サンプリングレートより低い更新レートで更新されることを特徴とする装置。
  27. LMSアルゴリズムにより適応させる適応フィルタ(22)と、
    フィルタリング済み信号を出力する第1白色化フィルタ(25’)と、
    前記第1白色化フィルタのフィルタ係数を決定するとともに、前記第1白色化フィルタの前記フィルタ係数を決定する過程で得られた1つ以上の計算された値に基づいて正規化値を決定するための手段(25’)であって、前記正規化値は前記フィルタリング済み信号の前記エネルギーと関連することを特徴とする、手段(25’)と、
    前記フィルタリング済み信号および前記正規化値に依存して前記適応フィルタの少なくとも1つの更新済みフィルタ係数を決定するための更新ステージ(27‘)と、
    を具備するフィルタシステム。
  28. 請求項27に記載のフィルタシステムにおいて、前記適応フィルタ(22)は前記フィルタリング済み信号を受け取ることを特徴とするフィルタシステム。
  29. 請求項27に記載のフィルタシステムにおいて、前記第1白色化フィルタ(25')と本質的に同じフィルタ係数を有する第2白色化フィルタ(26)をさらに具備し、前記更新ステージ(27)では前記第2白色化フィルタ(26)によりフィルタリングされた誤差信号を受け取ることを特徴とするフィルタシステム。
  30. 請求項27乃至請求項29のいずれか1項に記載のフィルタシステムにおいて、前記適応フィルタ(22)はFIRフィルタであることを特徴とするフィルタシステム。
  31. 請求項27乃至請求項30のいずれか1項に記載のフィルタシステムにおいて、前記第1白色化フィルタのフィルタ係数を決定するとともに正規化値を決定するための手段は共通ユニット(25’)を形成し、前記共通ユニットは、前記決定された正規化値を前記更新ステージに伝えることを特徴とするフィルタシステム。
  32. ソフトウェアプログラムであって、ソフトウェアが実行されたときに請求項1乃至請求項19のいずれか1項に記載の前記方法を実行するための命令を具備することを特徴とするソフトウェアプログラム。
  33. LMSアルゴリズムにより適応させられる適応フィルタ(22)によって信号をフィルタリングする方法において、前記適応フィルタ(22)の少なくとも1つの更新済みフィルタ係数は請求項1乃至請求項19のいずれか1項に記載の方法に従って決定されることを特徴とする方法。
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