JP2012254530A - ライニング材 - Google Patents
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Abstract
【課題】 地盤沈下等の発生時や地震等の災害時にも、管路がその機能を維持することのできるライニング材を提供する。
【解決手段】 一実施形態としてのライニング材1は、液状の硬化性樹脂を主剤とする母材樹脂を含浸する樹脂含浸層2と、強化繊維材料からなるシート状基材31を当該ライニング材1の軸方向に沿ってオーバーラップするように配設した強化繊維基材層3と、不透水性表面材で被覆された繊維布帛からなる被覆保護層4とを備える。被覆保護層4は、繊維布帛41の少なくとも片面に不透水性表面材を積層し、加熱融着することにより、繊維布帛の厚みTに対し不透水性表面材が1/2T以上の厚みを具備するように接合一体化されている。
【選択図】 図1
【解決手段】 一実施形態としてのライニング材1は、液状の硬化性樹脂を主剤とする母材樹脂を含浸する樹脂含浸層2と、強化繊維材料からなるシート状基材31を当該ライニング材1の軸方向に沿ってオーバーラップするように配設した強化繊維基材層3と、不透水性表面材で被覆された繊維布帛からなる被覆保護層4とを備える。被覆保護層4は、繊維布帛41の少なくとも片面に不透水性表面材を積層し、加熱融着することにより、繊維布帛の厚みTに対し不透水性表面材が1/2T以上の厚みを具備するように接合一体化されている。
【選択図】 図1
Description
本発明は、既設管の内面に施して更生するためのライニング材に関する。
地中に埋設された下水道管、上水道管、農水管などの既設管が老朽化した場合に、その管路を掘削することなく、管路の内面にライニングを施して管路を補修する既設管の更生工法が種々提案されており、広く実用化されている。
その更生工法の一つとして、管状のライニング材の内側に流体圧を作用させ、もしくは流体圧により加圧ホースを反転挿入することによって、ライニング材を管路の内周面に押圧し、硬化させて一体化することでライニング層を形成する方法がある。また、ライニング材そのものを反転させながら管路内に挿入し、流体圧により管路の内周面に押圧し、硬化させて一体化する方法もある。このようなライニング材による更生工法では、地面を掘削することなく埋設されている管路の補修作業を行うことができる。
この種の更生工法に用いるライニング材として、例えば、特許文献1には、外表面が樹脂フィルムで被覆された管状樹脂吸収基材に、液状の熱硬化性樹脂を含浸させた管状ライニング材を用いることが記載されている。管状ライニング材は、管路の内周面に押圧された状態で含浸樹脂を硬化させ、管路の内周面に固定される。
また、この工法では、管状ライニング材が平坦状に折り畳まれ、密閉容器内に積み重ねられた状態で配備されている。そして、密閉容器に接続された反転ノズルの開口端外周に、前記管状ライニング材を取り付け、密閉容器内に水圧を作用させて、管状ライニング材を管路内に反転挿入する構成とされている。これにより、拡径されたライニング材は、管路内で樹脂吸収基材が管路の内周面に密着し、管路をライニングするものとなる。
また、特許文献2には、たて糸とよこ糸とを筒状に織成してなる外側筒状織布の外面にゴム又は合成樹脂の気密層を形成した管路の内張り材が開示されている。この内張り材は、これを流体圧力により裏返しながら管路内に挿通し、内外面を反転した状態において管路に内張りされるものである。
例えば、既設管が鋳鉄管であると、ライニング材の熱硬化性樹脂にはエポキシ樹脂が好適に用いられる場合が多い。この種の熱硬化性樹脂は、既設管との接着強度が高く、良好なライニング性能を備えている。しかし、その一方で、地盤沈下や地震等の発生時に、既設管にひび割れを生じるような大きな外力が作用すると、既設管の内側を被覆しているライニング材にもその影響が及ぶ。すなわち、既設管のひび割れ部分で、いわゆるゼロスパンテンションと呼ばれる引張応力が生じ、ライニング材の被覆が破断してしまうおそれがある。また、既設管や管路の継手部分にひび割れ等の損傷が発生すると、これにライニング材が柔軟に追従することができず、ライニング材にもひび割れが発生するという問題点があった。
仮に、ライニング材が初期の引張応力に耐えてひび割れを生じなかったとしても、既設管にひび割れが発生した後は、その割れ目の両縁に密着しているライニング材に引張応力が作用し、ひび割れの近傍のライニング材に繰り返し微動が生じる。そうすると、ライニング材に疲労劣化が起こって、最終的にはひび割れの生じる可能性が高まる。
そのため、平常時はもとより、地盤沈下等の発生時や地震等の災害時にも、ライニングした既設管において一定の強度と流量を確保できるようにする必要があり、少なくともライニング材の内周面にひび割れが到達しないようにすることが要望された。
そこで本発明は、上記のような問題点にかんがみてなされたものであり、その目的とするところは、強化繊維を含有することで引張力や圧縮力に対する高い強度を確保したライニング材とするとともに、地盤沈下等の発生時や地震等の災害時にも、ひび割れの発生を防いで管路の機能を維持することのできるライニング材を提供することにある。
前記の目的を達成するための本発明の解決手段は、既設管の内径より小さい外径の筒状に形成され、既設管内に挿入及び拡径されて、既設管の内周面をライニングする複層構造のライニング材を対象とする。このライニング材に対し、液状の硬化性樹脂を主剤とする母材樹脂を含浸する樹脂含浸層と、強化繊維材料からなるシート状基材を当該ライニング材の軸方向に沿ってオーバーラップするように配設した強化繊維基材層と、不透水性表面材で被覆された繊維布帛からなる被覆保護層とを備えさせている。そして、前記被覆保護層を、繊維布帛の少なくとも片面に不透水性表面材を積層し、加熱融着することにより形成し、前記繊維布帛の厚みTに対し不透水性表面材が1/2T以上の厚みを具備するように接合一体化した構成としている。
この特定事項により、ライニング材の被覆保護層は、不透水性表面材によって安定的な遮水性及び耐圧性を確保している。加えて、被覆保護層は、不透水性表面材により被覆された部分と、繊維布帛の繊維材の部分との両方を具備した構成であるので、繊維布帛が隣接する他層等との接着性又は密着性を抑制し、既設管におけるひび割れ等の局所的変化の影響が少なくとも被覆保護層に及ぶのを抑えることができる。このため、既設管及びライニング材の樹脂含浸層等にひび割れ等が発生する事態となっても、被覆保護層ではライニング状態を安定して維持し、管路の機能を保持することが可能となる。
また、前記ライニング材において、前記被覆保護層の繊維布帛を、織物密度の高い織布とすることが好ましい。
これにより、被覆保護層の繊維布帛が、繊維表面に規則的で密な凹凸を有する構成とされることから、被覆保護層に良好な水密性を備えさせることができるとともに、その凹凸が、隣接する他層との接触点となって均一に分布する。これにより、被覆保護層と隣接する他層との相互の接着性又は密着性が弱まるので、既設管及びライニング材の樹脂含浸層等にひび割れが発生しても、被覆保護層ではひび割れを生じることが抑制され、内周面の流路機能を保持することが可能となる。
また、前記ライニング材において、前記被覆保護層と強化繊維基材層との層間に、織物密度の高い織布又は不織布からなる絶縁層を介装して構成してもよい。
このような構成であることにより、被覆保護層と隣接する他層とが物理的に絶縁され、相互の接着性又は密着性が弱まるので、既設管及びライニング材の樹脂含浸層等にひび割れが発生しても、被覆保護層にひび割れを生じず、内周面の流路機能を保持することが可能となる。
上述のような本発明のライニング材によれば、平常時はもとより、地盤沈下等の発生時や地震等の災害時にも、ライニングした既設管において一定の強度と流量を確保することを可能とし、強度、耐水性、耐圧性、耐久性、及び遮水性のいずれにも優れたライニング材とすることができる。
以下、本発明に係るライニング材の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、ライニング材の一例を示す断面図であり、図2は、既設管内に反転挿入されたライニング材を示す断面図であり、図3は、ライニング材が被覆された状態の既設管を示す断面図である。また、図4は、実施例に係るライニング材の部分断面図、図5は、図4のライニング材の引張試験後を示す部分断面図、図6は引張試験装置を一例を模式的に示す側面図である。
(ライニング材)
ライニング材1は、補修対象の既設管5の内周面にライニング層を形成するものであり、あらかじめ既設管5の内径より小さい外径の筒状に形成されている。実施形態に係るライニング材1は、図1に示す状態で内周側から順に、樹脂含浸層2、強化繊維基材層3、及び被覆保護層4とを備えた複層構造とされている。
ライニング材1は、補修対象の既設管5の内周面にライニング層を形成するものであり、あらかじめ既設管5の内径より小さい外径の筒状に形成されている。実施形態に係るライニング材1は、図1に示す状態で内周側から順に、樹脂含浸層2、強化繊維基材層3、及び被覆保護層4とを備えた複層構造とされている。
ライニング材1は、ライニング施工前の状態で、最も内周側に樹脂含浸層2が設けられている。図1では、樹脂含浸層2は、筒状に形成した樹脂不織布からなる。樹脂不織布は、液状の硬化性樹脂を主剤とする母材樹脂を含浸する基材であり、可撓性を有し樹脂含浸性に優れた材料からなる。
かかる樹脂不織布には、例えば、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、高性能ポリエチレン(HPPE)樹脂、ビニロン樹脂、アクリル樹脂、ナイロン樹脂、アクリロニトリル樹脂(炭素繊維前駆体)などの熱可塑性樹脂を原料として、これを溶融紡糸して得られたフィラメントのカットファイバーを、スパンボンド紡糸法あるいはメルトブローン紡糸法によって紡毛化したものをケミカルボンド法、ニードルパンチ法、スパンレース法、サーマルボンド法などのいずれかの方法により接着してプレスした高強度で高弾性材料からなる不織布が挙げられる。
また、樹脂不織布は、可撓性を有し多孔質の材料であれば、連続フィラメント又はステープルファイバーを含むフェルト、マット、スパンボンド、又はウェブなどから形成されてもよい。例えば、樹脂不織布をチョップドストランドマットにより形成する場合、ガラス繊維等のストランドを一定長さに切断し、マット状に分散させた後、熱可塑性樹脂等の粘接着剤を均一に付与して熱溶融し、ストランド同士を接着させてマットとしたものを用いることが好ましい。
樹脂含浸層2の外周側には強化繊維基材層3が設けられている。強化繊維基材層3は、強化繊維材料からなるシート状基材31をライニング材1の軸方向に沿ってオーバーラップするように配設して形成されている。強化繊維材料には、ガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維等を用いることができる。中でも、得られる繊維強化樹脂成形品の強度や価格などを考慮すると、ガラス繊維が好適である。また、強化繊維基材層3に用いる強化繊維材料は、母材樹脂との接着性を高めるため、シランカップリング剤で前処理してあることが好ましい。
例示の形態では、強化繊維基材層3は、2枚のシート状基材31、31により構成されている。シート状基材31には、幅寸法が既設管5の内周長よりも短いシート材が用いられている。そして、図1に示すように、各シート状基材31は幅方向の端部が、隣り合う他のシート状基材31の端部に一定幅だけ重ねられて、ライニング材1の周方向に互いにオーバーラップするように配設されている。これにより、強化繊維基材層3の周方向の2箇所に、オーバーラップ部Wが形成されている。
オーバーラップ部Wは、ライニング材1の周方向に均等に配置されるよう形成することが好ましい。図1に示すように、オーバーラップ部Wが、ライニング材1において均等に配置されているので、ライニング材1としてほぼ均一な厚みを確保することができる。オーバーラップ部Wは、熱可塑性樹脂を含む接合手段により接合されていてもよい。
樹脂含浸層2は、既設管5の更生工程においては、未硬化の状態の母材樹脂を含浸して、図2に示すように反転した状態で既設管5に挿入され、流体圧の作用により拡径される。その後、ライニング材1は、図3に示すように、既設管5内で硬化してライニング層を形成するものとなる。母材樹脂は、熱硬化性樹脂が主剤とされており、中でも、比較的粘度が低く、硬化後の物性に優れ、低コストであるエポキシ系樹脂を主剤するエポキシ系樹脂混合物が好ましい。また、母材樹脂の主剤としては、ビニルエステル樹脂、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂を用いてもよい。
なお、エポキシ系主剤としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、又はビスフェノールF型エポキシ樹脂などを好適に用いることができる。この種のエポキシ系主剤は非常に高粘度であり、通常、10℃以下の低温条件下において、20,000mPa・s以上の粘度を有する。そのため、エポキシ系主剤の低粘度化を、希釈剤を添加したり、低粘度の硬化剤を選択的に添加したりすることによって行うことが好ましい。希釈剤としては、エポキシ系主剤の粘度を低下し得るものであれば特に限定されるものではなく、反応性希釈剤であっても非反応性希釈剤であってもよい。また、両者を併用して用いてもよい。
反応性希釈剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、プロピルフェノール、p−第三ブチルフェノール、p−第三アミルフェノール、ヘキシルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール、オクタデシルフェノール及びテルペンフェノール等のモノグリシジルエーテルなどの、末端にグリシジルエーテル基を持つもの等を挙げることができる。また、非反応性希釈剤としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート及びベンジルアルコール等を挙げることができる。さらに、これらの希釈剤から選ばれた少なくとも一種以上を単独或いは併用して用いることができる。
低粘度の硬化剤としては、特に限定されるものではないが、エポキシ系主剤の粘度を低下させ、適度な硬化速度を確保でき、さらに硬化後に溶出しないものが好ましい。このような性質を具備する硬化剤としては、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、及び脂環族ポリアミシ等のアミン系硬化剤を挙げることができる。中でも、非常に低粘度で、硬化後の物性に優れ、しかも安価な脂肪族ポリアミンが好適に用いられる。この脂肪族ポリアミンの具体例としては、ポリオキシプロピレンジアミン、トリメチロールプロパンポリ(オキシプロピレン)トリアミン、メタキシレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン及びこれらの変性品等を挙げることができる。また、これらの硬化剤から選ばれた少なくとも一種以上を単独或いは併用して用いることもできる。
さらに、ライニング材1には、最も外周側に被覆保護層4が設けられている。被覆保護層4は、加圧流体の不透過性を有する不透水性表面材42で被覆された繊維布帛41からなる。
具体的には、被覆保護層4は、繊維布帛41の少なくとも片面に不透水性表面材42を積層し、繊維布帛41と不透水性表面材42とを加熱融着し、接合一体化して形成されている。
被覆保護層4に用いる繊維布帛41としては、経糸と緯糸によって製織された目合い空隙率が0〜50%の高密度の織布が好ましい。これにより、被覆保護層4の水密性及び気密性を高めることが可能となり、織布表面の規則的な凹凸が隣接する層との接触点となって分布し、相互の接着性及び密着性を弱める作用をなす。
織布を構成する経糸及び緯糸には、フィラメント糸条(マルチフィラメント糸条、モノフィラメント糸条)、短繊維紡績糸条、テープ糸条の何れか1種類以上を使用することができる。これらの糸条の繊度としては、9000〜455000dtex(100〜5000d)の範囲のもの、特に13600〜90000dtex(150〜1000d)の範囲の糸条から選択することが好ましい。繊度が9000dtex未満であると、得られる被覆保護層4の強度及び耐圧性が不十分になることがあり、また455000dtexを越えて大きいと、被覆保護層4の強度等は向上するが、被覆保護層4の厚さが増大し、施工時の取り扱い性が不良になることがある。
繊維布帛41には、特に平織物、及び綾織物等を使用することが、目合い空隙率の設計範囲の観点で好ましい。これらの繊維布帛41の目付量は、300〜2000g/m2 のものが適している。また、目合い空隙率は繊維布帛41の単位面積中に占める糸条の面積を百分率として求め、100から差し引いた値として求めることができ、繊維布帛41の目合い空隙率は0〜50%であることが好ましい。
かかる繊維布帛41の経糸及び緯糸を形成する繊維種としては、上記繊度を満足するポリエステル(PET,PBT,PEN)繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維などであり、これらの繊維は2種以上を混用してもよい。特に、樹脂含浸層2の母材樹脂と、被覆保護層4との接着性を低下させる観点から、ポリエステル繊維の使用が好ましい。
また、繊維布帛41を被覆する不透水性表面材42としては、エチレン系樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。また、不透水性表面材42は、フィルム又はシート状として上記の繊維布帛の少なくとも片面に積層され、接合一体化される。そのため、不透水性表面材42には、繊維布帛41(織布)との熱融着性に富む材料が好ましく、繊維布帛41と同種の樹脂材料であるか、又は相互に溶融しやすい材料であることが望ましい。接合前の不透水性表面材42の厚さは、0.3〜2.0mmであることが好ましく、特に0.5〜1.0mmであることが好ましい。この不透水性表面材42の厚さは、0.3mm未満であると得られる被覆保護層4の加圧流体の不透過性が不十分となり、厚さが2.0mmを超えると、得られる被覆保護層4が硬質となってライニング材としての柔軟性及び施工性が低下するおそれがあるためである。
ここで、図4に示すように、被覆保護層4は、上記の繊維布帛41の厚みTに対し不透水性表面材42が1/2T以上の厚みを具備するように形成される。これにより、被覆保護層4は、構成する繊維布帛41(高密度の織布)により隣接する強化繊維基材層3との接着性が弱められ、かつ、不透水性表面材42の被覆によって、ライニング材1としての遮水性及び耐圧性等を備えさせている。また、被覆保護層4の繊維布帛41と不透水性表面材42とは、加熱融着して接合されているので、被覆保護層4として強固な一体性を保持している。
ライニング材1は、上記構成とされることに加え、被覆保護層4と強化繊維基材層3との層間に、織物密度の高い織布又は不織布からなる図示しない絶縁層を介装して形成されてもよい。この場合、絶縁層は、織物密度の高い織布又は不織布からなるため、繊維間の隙間が極めて小さく、液状の硬化性樹脂の含浸が困難とされている。よって、絶縁層は、強化繊維基材層3と被覆保護層4との間で、樹脂含浸層2及び強化繊維基材層3に含浸した硬化性樹脂の流通を阻害し、強化繊維基材層3と被覆保護層4とが硬化性樹脂によって接着するのを防ぐ作用をなす。かかる絶縁層を構成する織布には、上記した被覆保護層4と同様の繊維密度の高い繊維布帛を用いることができる。また、絶縁層を不織布により形成する場合は、目付量が300〜2000g/m2 であることが好ましい。
なお、樹脂含浸層2は、上記のように単層構造とするほか、複層構造とすることもでき、樹脂不織布とガラス繊維などの繊維体とを積層した筒状に形成してもよい。また、被覆保護層4の繊維布帛41を被覆する不透水性表面材42として、熱可塑性樹脂溶液を繊維布帛41の表面にコーティングすることにより構成してもよい。
(既設管の更生工法)
次に、上述のごとく構成されるライニング材1を用いた既設管5の更生工法について、図2及び図3を参照しつつ概説する。
次に、上述のごとく構成されるライニング材1を用いた既設管5の更生工法について、図2及び図3を参照しつつ概説する。
既設管5の更生作業に先立ち、既設管5に下水等の流体がある場合には、既設管5内からいったん除去する水抜き作業、異物の除去、及び高圧水洗浄等を行う。ライニング材1には液状の硬化性樹脂(熱硬化性樹脂)を主剤とする母材樹脂を含浸させる。
具体的には、図1に示したライニング材1の被覆保護層4の内部を減圧して脱気しつつ、被覆保護層4の内部に未硬化の母材樹脂を注入する。これにより、母材樹脂を樹脂含浸層2及び強化繊維基材層3に含浸させることができる。樹脂含浸層2及び強化繊維基材層3の繊維間は、脱気経路として作用するとともに、未硬化の母材樹脂の流路としても作用する。
次いで、圧縮空気や加熱水などの流体圧をライニング材1の外周側(被覆保護層4側)から作用させ、ライニング材1を反転させつつ既設管5内へ挿入する。ライニング材1は、反転しながら既設管5の内部を進行する。これにより、図2に示すように、ライニング材1は被覆保護層4が内周側となって、既設管5内へ配置される。
なお、ライニング材1のオーバーラップ部Wは、図2に示したように、管路断面に対し左右の内側部に配置されることが好ましい。これにより、ライニング材1の上部側と下部側とに強化繊維材料が均等に配設され、既設管5に作用する垂直荷重に十分な耐力を発揮させることが可能となる。
次いで、反転したライニング材1は、既設管5内で流体圧の作用により拡径される。これにより、図3に示すように、樹脂含浸層2が既設管5の内壁に密着する。ライニング材1は、含浸した母材樹脂が硬化することで既設管5と一体化し、ライニング層を形成する。このライニング層は、被覆保護層4で覆われた状態となり、既設管5内に平滑な内周面を形成するとともに耐水性、耐圧性、及び耐薬品性の高い保護層となる。また、ライニング材1は、強化繊維基材層3がオーバーラップ部Wを有することにより、ライニング材1の外径を既設管5の内径よりも小径にて形成して、既設管5内への挿入作業を容易にするとともに、既設管5の内部で拡径することが可能となる。
なお、既設管5を更生するライニング材1としては、図1に例示した、外層に被覆保護層4を有し、内層に樹脂含浸層2を有する層構成のものに限定されない。例えば、ライニング材1は、初めから被覆保護層4が内層として形成され、この被覆保護層4の外側に樹脂含浸層2を備えた層構成であってもよい。つまり、この場合、ライニング材1は、図1とは内周側と外周側とが逆順の積層形態を有する。このようなライニング材1であれば、反転されることなく既設管5に挿入された後、拡径され、既設管5の内壁にライニング層を形成する手順が採用される。
以上のように構成されるライニング材1は、既設管5の内周面の形状に追従しうる弾性、可撓性、及び柔軟性を有する。さらに、ライニング材1の外径を既設管5の内径よりも小径にて形成することができるので、既設管5内への挿入を容易にする。また、ライニング材1は強化繊維基材層を含む構成であり、強度確保が可能であると共に、既設管5内で拡径させることができる。
加えて、ライニング材1の特徴部分である被覆保護層4は、ライニング施工後に既設管5の内周表面に位置する層となるが、十分な強度と遮水性とを備えるうえ、隣接する強化繊維基材層3等の他層との接着性又は密着性が弱いため、樹脂含浸層2及び強化繊維基材層3の動きに拘束されず、これらの層とは異なる挙動が可能である。つまり、既設管5にひび割れが発生し、ライニング材1の樹脂含浸層2又は強化繊維基材層3にひび割れが生じたとしても、被覆保護層4への応力の伝達が抑制される。そのため、被覆保護層4におけるひび割れの発生を防ぐことができ、既設管5内の流路を確保することが可能となる。よって、ライニング材1は、平常時はもとより、地盤沈下等の発生時や地震等の災害時にも、管路機能を維持することを可能にする。
以下、被覆保護層4の構成を変化させてライニング材1の試験体を作成し比較した試験結果について説明する。
図4は実施例に係るライニング材の部分断面図であり、図5は図4のライニング材の試験後の部分断面図である。なお、図4、5においては、簡単のため含浸する母材樹脂を省略し、ライニング材1の断面構造のみを模式的に図示している。
図4において、ライニング材1は、上から順に、樹脂含浸層2、強化繊維基材層3、被覆保護層4を備えて形成されている。
(実施例)
樹脂含浸層2は、目付量600g/m2のポリエステル不織布により構成した。
樹脂含浸層2は、目付量600g/m2のポリエステル不織布により構成した。
強化繊維基材層3は、経糸が繊度2400tex、目付量が500g/m2であり、緯糸が繊度2400tex、目付量が1000g/m2であるガラス繊維ロービングクロスにより構成した。
また、被覆保護層4は、ポリエステル糸条を経糸及び緯糸として製織した繊維布帛41に、不透水性表面材42を被覆して形成した。
繊維布帛41には、経糸が繊度9450dtex、目付量400g/m2、及び緯糸が繊度18450dtex、目付量800g/m2のポリエステル織布を用いた。また、不透水性表面材42には、厚さ約1mmのポリエチレン樹脂フィルムを用いた。
そして、ポリエステル織布の片面にポリエチレン樹脂フィルムを熱圧着法(繊維布帛の表面と熱可塑性樹脂とを溶融結着させる方法)により積層し、接合一体化させた。そして、最終的に、繊維布帛41の厚みTに対して、不透水性表面材42の厚みが1/2T以上となるように、上記ポリエチレン樹脂フィルムを複数枚積層して、被覆保護層4を構成するシート材を得た。図4に例示するライニング材1においては、繊維布帛41の厚みTに対して不透水性表面材42の厚みを2/3Tとするようにポリエチレン樹脂フィルムを熱圧着した。
また、これらの樹脂含浸層2、強化繊維基材層3、被覆保護層4を積層して筒状とし、実施例に係るライニング材1を形成した。強化繊維基材層3としては、複数枚のガラス繊維ロービングクロスを、互いにオーバーラップさせて筒状に配置した。
(比較例)
比較例として、上記構成にかえて、被覆保護層4を、目付量210のポリエステル不織布に厚さ約1mmのポリエチレン樹脂フィルムを熱圧着法により積層して形成した。この場合、繊維布帛41の厚みTに対して、ポリエチレン樹脂フィルムが1/3Tの厚みとなるよう接合一体化させた。
比較例として、上記構成にかえて、被覆保護層4を、目付量210のポリエステル不織布に厚さ約1mmのポリエチレン樹脂フィルムを熱圧着法により積層して形成した。この場合、繊維布帛41の厚みTに対して、ポリエチレン樹脂フィルムが1/3Tの厚みとなるよう接合一体化させた。
(引張試験)
実施例に係るライニング材1をライニングした試験体Aと、比較例に係るライニング材をライニングした試験体Bに対し、引張試験(ゼロスパン試験)を行った。試験は、図6に示す引張試験装置を用いて行った。
実施例に係るライニング材1をライニングした試験体Aと、比較例に係るライニング材をライニングした試験体Bに対し、引張試験(ゼロスパン試験)を行った。試験は、図6に示す引張試験装置を用いて行った。
試験体A、Bはともに、長さ4m、口径250mmの試験用鋳鉄管7に対して、反転挿入し、内周面をライニングして得た。試験用鋳鉄管7は、中央部に10mmの切れ目71(ひび割れに相当する)を有している。母材樹脂には、試験体A、Bともに、エポキシ樹脂を用いた。
引張試験装置6は、装置本体61の内部に各試験体を挿通可能であり、試験体の切れ目71を挟み一方側と他方側とをそれぞれ保持する。また、試験体の切れ目71を挟んで左右の装置本体61を図中左右方向に引っ張る油圧ジャッキ62を備える。
試験時には、引張試験装置6で保持した試験体の両端を栓で封止し、手動ポンプにて試験体内に水を注入し、内水圧を1MPaとした状態で用意した。そして、油圧ジャッキを作動し、試験体A又はBに対して、試験用鋳鉄管7の中央の切れ目71を挟んだ両側が離間する方向に引張応力を付与した。油圧ジャッキは、試験開始時よりその間隔が60mm伸張した状態で停止させた。油圧ジャッキを停止後、1分間経過の後、試験体の切れ目71の状態を目視により観察し、ひび割れや漏水の有無を確認した。
その結果、実施例に係る試験体Aでは、切れ目71からの漏水は全く無かった。また、試験体Aの切れ目71における外観も良好であり、ひび割れの発生も無かった。これに対し、比較例に係る試験体Bでは、油圧ジャッキを30mm伸張させた段階で、ライニング材が切れ目71で破断し、漏水が発生した。
このように比較例に係る試験体Bでは、切れ目71におけるひび割れの発生が顕著であり、作用した引張応力により被覆保護層も破断してしまったものである。しかしながら、実施例に係る試験体Aでは、引張応力によっても被覆保護層4が破断することがなく、試験用鋳鉄管7の内周面を被覆した状態を維持した。すなわち、図5に示すように、ライニング材1においては、樹脂含浸層2及び強化繊維基材層3にひび割れの生じる可能性がある。ところが、強化繊維基材層3と被覆保護層4との間の層間に一体的な接着性又は密着性が乏しいことから、引張応力の作用でこれらの層間に隙間が生じ、絶縁されている。このため、被覆保護層4においては、隣接する他層のひび割れに伴う応力を回避することができる。したがって、実施例に係るライニング材1では、既設管5にひび割れが発生したとしても、そのひび割れがライニング層の内周面に到達するのを防いで、流路を確保することを可能にする。
本発明は、老朽化したり補修が必要となったりした既設管の更生に用いるライニング材に好適に利用することができる。
1 ライニング材
2 樹脂含浸層
3 強化繊維基材層
31 シート状基材
4 被覆保護層
41 繊維布帛
42 不透水性表面材
5 既設管
6 引張試験装置
61 装置本体
62 油圧ジャッキ
7 試験用鋳鉄管
71 切れ目
W オーバーラップ部(強化繊維基材層)
2 樹脂含浸層
3 強化繊維基材層
31 シート状基材
4 被覆保護層
41 繊維布帛
42 不透水性表面材
5 既設管
6 引張試験装置
61 装置本体
62 油圧ジャッキ
7 試験用鋳鉄管
71 切れ目
W オーバーラップ部(強化繊維基材層)
Claims (3)
- 既設管の内径より小さい外径の筒状に形成され、既設管内に挿入及び拡径されて、既設管の内周面をライニングする複層構造のライニング材であって、
液状の硬化性樹脂を主剤とする母材樹脂を含浸する樹脂含浸層と、
強化繊維材料からなるシート状基材を当該ライニング材の軸方向に沿ってオーバーラップするように配設した強化繊維基材層と、
不透水性表面材で被覆された繊維布帛からなる被覆保護層とを備え、
この被覆保護層は、繊維布帛の少なくとも片面に不透水性表面材を積層し、加熱融着することにより、前記繊維布帛の厚みTに対し不透水性表面材が1/2T以上の厚みを具備するように接合一体化されていることを特徴とするライニング材。 - 請求項1に記載のライニング材において、
前記被覆保護層の繊維布帛は、織物密度の高い織布であることを特徴とするライニング材。 - 請求項1又は2に記載のライニング材において、
前記被覆保護層と強化繊維基材層との層間に、織物密度の高い織布又は不織布からなる絶縁層が介装されていることを特徴とするライニング材。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2011127320A JP2012254530A (ja) | 2011-06-07 | 2011-06-07 | ライニング材 |
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JP (1) | JP2012254530A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR101339748B1 (ko) | 2013-07-18 | 2013-12-10 | 주식회사 지성이엔지 | 상수관로 및 하수관거 보수보강용 강화 복합섬유 튜브 및 이의 제조방법 |
JP2016098924A (ja) * | 2014-11-25 | 2016-05-30 | 芦森工業株式会社 | 管路及びその内張り方法 |
-
2011
- 2011-06-07 JP JP2011127320A patent/JP2012254530A/ja not_active Withdrawn
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