〔第1実施形態〕
以下、第1実施形態に係る撮像装置1について添付図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る撮像装置1の外観を示す図であり、図1(A)は上面図、図1(B)は正面図、図1(C)は背面図である。図2は、本実施形態に係る撮像装置1の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、撮像装置1は、内部に撮像に用いられる各種電子機器が収納された筐体2を有する。筐体2の正面には、複数のレンズからなる撮像光学系3、及び、発光するストロボ4が設けられている。また、筐体2の背面には、LCD(Liquid Crystal Display)等を有する表示部5、ユーザ操作により設定指示が入力されるメニュー操作部6Aが設けられている。一方で、筐体2の上面部には、ユーザ操作により撮影指示等を入力するレリーズボタン6B、ユーザ操作により電源のオン/オフ状態の切替指示を入力する電源ボタン6C、ユーザ操作によりモード切替指示を入力するモード切替ボタン6D、及び、ユーザ操作によりズーム倍率を変更するズームボタン5Eが設けられている。以下、メニュー操作部6A、レリーズボタン6B、電源ボタン6C、モード切替ボタン6D、ズームボタン6Eをまとめて操作部6と言う。
表示部5には、静止画の撮像に先立って撮像される画素数の少ない画像がスルー画として表示され、これにより表示部5がファインダとして機能する。また、表示部5には、メモリカード等の記憶媒体(図示省略。)等に記憶された画像が表示されたり、ユーザによる操作部6の操作に応じた操作メニューや設定メニュー等が表示されたりする。
モード切替ボタン6Dにより切り替えられるモードは、通常の撮影を行う撮影モード、マクロモードで撮影を行うマクロ撮影モード、表示部5に既存の撮影画像を表示する再生モード、及び、各種設定を行う設定モード等である。マクロ撮影モードとは、被写体に接近して撮影するモードであり、被写界深度が撮像装置1に近接する位置にピントが合うように設定された状態で撮影を行うモードである。撮像装置1がマクロ撮影モードに設定されている場合、撮像装置1による撮影時の被写界深度が予め定められた範囲内に設定される。
図2に示すように、撮像装置1は、上述した撮像光学系3,撮像素子12,ブレ補正部13,角速度センサ14,加速度センサ15,AF(Automatic Focus)検出回路16,AE/AWB(Automatic Exposure/Automatic White Balance)検出回路17、AFE(Analog Front End)31、A/D変換器32、DSP(Digital Signal Processor)33、画像処理部34、メモリ35、及びCPU(Central Processing Unit)37を備えている。
撮像光学系3は、レンズ21、絞り22、及びブレ補正レンズ23等から構成される。レンズ21は、ズームや焦点調節時に光軸Lに沿って移動可能に設けられたレンズである。図2においては簡単のためにレンズ21を1つのみ図示しているが、レンズ21は、複数のレンズからなり、ズーム時に駆動されるズーミングレンズ、焦点調節時に駆動されるフォーカシングレンズ等を含んでいて、補正機構(図示せず。)によって各々のレンズが駆動制御される。絞り22は、光軸L上に複数の絞り羽根で形成する開口を有し、絞り羽根の位置を移動させ、開口の大きさを調節することにより、露光量を調節する。
ブレ補正レンズ23は、光軸Lに対して垂直な方向に移動可能に設けられ、撮像装置1に手振れ(角度ブレ及びシフトブレ)が発生したときに、手振れを打ち消す向きに移動される。ブレ補正レンズ23は、ボイスコイルモータ(VCM)やステッピングモータ等からなるアクチュエータ(後述するアクチュエータ57)によって駆動される。なお、ブレ補正レンズ23の移動方向や移動量は、ブレ補正部13によって制御される。
撮像素子12は、例えばCCD(Charge Coupled Device)型撮像素子であり、撮像光学系3に撮像面を向けて配置され、撮像光学系3を通して被写体を撮像する。撮像面には、複数の画素が所定の配列で設けられており、画素毎に被写体から入射した光を光電変換することにより、被写体の像を撮像する。撮像素子12が出力する撮像信号は、AFE31に入力され、相関二重サンプリングによってノイズが除去され、増幅される。こうしてAFE31でノイズが除去され、増幅された撮像信号はA/D変換器32によってデジタルの画像データに変換され、DSP33に入力される。
DSP33は、入力された画像データに階調補正処理やガンマ補正処理等の信号処理を施す画質補正処理回路や、画像データをJPEG等の所定形式で圧縮/伸張する圧縮伸張処理回路として機能する。また、画像処理部34には、DSP33で各種補正処理等が施された画像データが入力され、さらに輪郭強調処理等の画像処理を施す。画像処理部34によって画像処理が施された画像データは、メモリ35に記憶されたり、表示部5に表示されたりする。
AF検出回路16は、DSP33から出力される画像データに基づいて焦点距離を検出する回路であり、画像データ内の所定のAF検出領域から高周波成分を抽出し積算した評価値を出力する。そして、評価値に基づいて、AF検出領域内のコントラストが最大となるように、撮像光学系3のフォーカシングレンズ(レンズ21)をフォーカスモータ60(図7も参照)により光軸Lに沿って移動させることにより、自動的にフォーカシングを行う。
AE/AWB検出回路17は、DSP33から出力される画像データに基づいて、ホワイトバランスが撮影に適切か否かを検出するとともに、撮影に適切な露光量を検出する。そして、露光量が適切になるように、絞り22の開口の大きさや、撮像素子12の電子シャッタの速度等を調節する。
ブレ補正部13は、撮像装置1の回転によって生じる角速度ωを角速度センサ14の出力値から取得し、平行移動によって生じる並進加速度Acc1を加速度センサ15の出力値から取得し、加速度ω及び並進加速度Acc1に基づいて、撮像装置1に生じた手振れを算出して補正する。なお、ブレ補正部13が算出する手振れは、光軸Lが回転することによる角度ブレθと、光軸Lに垂直な面内での平行移動によるシフトブレYの2種類がある。ブレ補正部13は、角速度ω及び並進加速度Acc1に基づいて角度ブレθ及びシフトブレYを算出すると、これらに基づいて、ブレ量δを算出する。ブレ量δは、後述するアクチュエータ57に入力され、アクチュエータ57は入力されたブレ量δを打ち消すようにブレ補正レンズ23を駆動する。
CPU37は、操作部6を介したユーザ操作にしたがって上述の撮像装置1の各部を統括的に制御する。CPU37は例えば、レリーズボタン6Bが半押し操作されると、AF検出回路16によって自動焦点調節を行うとともに、AE/AWB検出回路17によって露光量を自動的に調節する。また、CPU37は、撮像装置1が撮影モードに設定されている際に、後述する補正量最適化処理プログラムを実行する。
以下、本実施形態に係る撮像装置1による手振れ補正の態様を説明する。撮像装置1は、前述したように、手振れによって発生する角度ブレθとシフトブレYをブレ補正部13によって算出する。
図3は、本実施形態に係る撮像装置1における角度ブレを説明するための概略図である。図3に示すように、角度ブレθは、回転中心Cを中心として光軸Lが回転するブレであり、回転半径Rは例えば回転中心Cから角速度センサ14までの長さである。角度ブレθは角速度ωを積分することにより算出され、回転半径Rは、後述するようにシフトブレYによって発生する並進加速度Acc1と角速度ωに基づいて算出される。
また、図4は、本実施形態に係る撮像装置1におけるシフトブレを説明するための概略図である。図4に示すように、シフトブレYは、光軸Lに垂直な面内での撮像装置1の平行移動によるブレであり、角度ブレθと回転半径Rによって、Y=R・θの関係により表される。回転半径Rは、シフトブレYによって発生する並進加速度Acc1を積分することによって得られる並進速度Vと、角速度ωとを用いて、R=V/ωの関係に基づいて算出される。
ここで、本実施形態に係る撮像装置1における手振れのブレ量δの算出方法について説明する。撮像光学系3の主点の位置におけるシフトブレYと撮像光学系3の角度ブレθ及び撮像光学系3の焦点距離fと撮影倍率βより撮像面に生ずる手振れのブレ量δは、以下の(1)式で求められる。
δ=(1+β)fθ+βY ………………(1)
角度ブレθは角速度信号の積分結果より求まり、シフトブレYは加速度信号の2階積分により求まる。
ここで、角度ブレθが入力されると、加速度センサ15はその傾きによる重力成分の変動も検出する。そして、角度ブレθが大きくない範囲では重力変動により出力される重力加速度(加速度センサ15による出力)は角度ブレθに比例する。撮像光学系3の主点位置におけるシフトブレYと角度ブレθと回転中心Cを定めた場合の回転半径R(回転中心Cから加速度センサ15までの距離)の関係は、以下の(2)式で表せる。
Y=Rθ ………………(2)
よって、本実施形態の撮像装置1では、(1)式に(2)式を代入して得られた(3)式を用いてブレ量δを算出し、このブレ量δに対して手振れ補正を行っている。
δ=(1+β)fθ+βRθ ………………(3)
すなわち、(3)式では、シフトブレを求める際に、加速度センサ15により直接求まるシフトブレYを用いるのではなく、一旦(2)式で求まる回転半径Rを求め、この回転半径Rと角速度信号の積分結果である角度ブレθと撮影倍率βを用いる。
図5は、本実施形態に係る撮像装置1のブレ補正処理に関連する要部の構成を示すブロック図である。図5に示すように、角速度センサ14の出力信号(以下、角速度信号と言う。)及び加速度センサ15の出力信号(以下、加速度信号と言う。)は、ブレ補正部13に入力される。角速度信号及び加速度信号を入力したブレ補正部13は、各々ブレ量を算出して、算出されたブレ量に基づいてブレ補正レンズ23の移動方向や移動量を制御する。
ブレ補正部13は、角速度の変化量を算出するために、バンドパスフィルタ(BPF)41、A/D変換器42、ハイパスフィルタ(HPF)43,46,位相補償回路44、積分回路45、及び敏感度算出部47を備えている。また、ブレ補正部13は、加速度の変化量を算出するために、ローパスフィルタ(LPF)49、A/D変換器50、HPF51、成分判定部52、位相補正回路53、及び積分回路54を備えている。さらに、ブレ補正部13は、角速度及び加速度の変化量からブレ量を算出して補正するために、回転半径算出部55、回転中心補正部56、ブレ量算出部57、補正量制限部58、及びアクチュエータ59を備えている。
ブレ補正部13は、角速度信号を入力すると、入力した角速度信号をBPF41に対して出力する。BPF41は、角速度センサ14の出力信号のうち、手振れ補正によって発生する角度ブレθの周波数帯(例えば1〜10Hz程度)の成分を、A/D変換器42に対して出力する。A/D変換器42は、入力された所定周波数帯の角速度信号を、デジタル信号に変換し、HPF43に入力する。
HPF43は、角速度信号のDC成分を除去し、DC成分が除去された角速度信号を、位相補償回路44に対して出力する。位相補償回路44は、角速度信号の位相を整えて角速度ωとした後、角速度ωを積分回路45と回転半径算出部55に対して出力する。
積分回路45は、位相補償回路44から入力される角速度ωを積分し、得られた値をHPF46に出力する。HPF46は角速度ωを積分して得られた値のDC成分を除去することによって角度ブレθを算出して、敏感度算出部47に角度ブレθを出力する。敏感度算出部47は、角度ブレθに対する敏感度fθを算出し、算出された敏感度fθをアクチュエータ57に出力する。
一方、加速度センサ15の加速度信号は、LPF49に入力される。LPF49は、加速度信号からノイズを除去してA/D変換器50に対して出力する。A/D変換器50は、入力した加速度信号をデジタル信号に変換し、HPF51に対して出力する。HPF51は、重力による加速度成分を除去するフィルタであり、そのカットオフ周波数fcは例えば約10m/s2である。HPF51は、重力加速度を除去した並進加速度Acc1を、成分判定部52に対して出力する。
成分判定部52は、撮像光学系3に接続されており、撮像光学系3からレンズ21の駆動状態を示す情報としてズーミングレンズの位置情報P1,フォーカシングレンズの位置情報P2を取得する。また、成分判定部52は、絞り22の駆動状態を示す情報(以下、絞り情報という)P3を取得する。成分判定部52は、取得した位置情報等P1,P2,P3から撮像光学系3の駆動状態に応じて撮像装置1の内部で発生する加速度(以下、内部加速度という)を算出し、HPF51から入力される並進加速度信号Acc1から内部加速度を除去することにより、シフトブレYにともなって発生する並進加速度Acc2を算出し、位相補償回路53に対して出力する。
位相補償回路53は、成分判定部52から入力される並進加速度Acc2の位相を整え、積分回路54に対して出力する。積分回路54は、入力した並進加速度Acc2を積分することにより、シフトブレYの並進速度Vを算出する。積分回路54は、算出したシフトブレYの並進速度Vを、回転半径算出部55に対して出力する。
回転半径算出部55は、位相補償回路44から入力される角速度ωと、積分回路54から入力される並進速度Vに基づいて、撮像装置1に生じた角度ブレθによる回転半径R’を算出する。具体的には、回転半径算出部55は、並進速度Vを角速度ωで割ることによって回転半径R’を算出する(R’=V/ω)。回転半径算出部54は、算出した回転半径R’を回転中心補正部56に対して出力する。
ここで算出される回転半径R’から回転中心C’が定まるが、回転半径R’から定まる回転中心C’は撮像光学系3等の撮像装置1の駆動状態を反映しておらず、必ずしも正確ではない。このため、回転中心補正部56は、CPU37から、加速度センサ15の位置情報、撮像光学系3の主点情報、被写体距離等の情報を取得し、これらに基づいて回転中心C’及び回転半径R’を補正することにより、撮像装置1の駆動状態を反映した正確な回転中心C及び回転半径Rを算出する。回転中心補正部56は、算出した回転半径Rをブレ量算出部57に対して出力する。
ブレ量算出部57は、HPF46から角度ブレθを、回転中心補正部56から回転半径Rを取得する。また、ブレ量算出部57は、撮像倍率β及び焦点距離fをCPU37から取得する。そして、ブレ量算出部57は、取得した角度ブレθ、回転半径R、撮像倍率β、焦点距離fから、ブレ量(δ=(1+β)fθ+βRθ)を算出する。このとき、ブレ量算出部57は、加速度センサ15の感度に基づいて回転半径Rとして、入力された回転半径Rの値をゲイン補正した値に補正する。ブレ量補正部57は、算出したブレ量δを補正量制限部58に対して出力する。なお、上記ブレ量の式における第1項の(1+β)fθは、角度ブレによるブレ量を示し、第2項のβRθはシフトブレによるブレ量を示し、ブレ量算出部57は、各々のブレ量を別個に補正量制限部58に対して出力する。
補正量制限部58は、ブレ量δを入力すると、被写体距離及び焦点距離を取得して、これらの被写体距離及び焦点距離から撮影倍率βを導出し、この撮影倍率βに基づいて角度ブレθの補正量及びシフトブレYの補正量を制御する。そして補正量制限部58は、角度ブレθの補正量及びシフトブレYの補正量をそれぞれ加味したブレ量δ’示す情報をアクチュエータ59に対して出力する。
アクチュエータ59は、補正量制限部58から入力されたブレ量δ’が打ち消されるように、ブレ補正レンズ23を駆動する。これにより、撮像装置1における手振れが補正される。
本実施形態に係る撮像装置1は、撮像光学系3の焦点距離、被写体距離から撮像倍率βを導出し、補正量制限部58によって角度ブレ補正量を調整する。これにより、シフトブレ補正量と角度ブレ補正量とを撮像光学系3における補正機構の補正用ストロークを大きくすることなく、安価で小型の撮像装置を実現できるのである。
本実施形態に係る撮像装置1は、上述したように補正量制御部58による処理をソフトウェアの処理により実行するものとされており、このため、撮像装置1では、撮影モードに設定されている間に補正量最適化処理プログラムを実行する。
次に、図6を参照して、補正量最適化処理プログラムを実行する際の撮像装置1の作用を説明する。なお、図6は、撮影モードに設定されている際に、CPU37により所定時間毎に実行される補正量最適化処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムはメモリ35に予め記憶されている。なお、補正量最適化処理プログラムは、メモリカード等の記録媒体に記憶されていて、当該記録媒体からメモリ35に記憶されることによりメモリ35にインストールされても良い。
始めに、ステップS101において、CPU37は、被写体距離及び焦点距離を取得する。
また、ステップS103において、CPU37は、ステップS101にて取得した被写体距離及び焦点距離から撮影倍率βを導出する。この際、CPU37は、撮影倍率β=焦点距離f/被写体距離rの式によって撮影距離βを導出する。ここで、撮影倍率βが大きくなることは、被写体距離rが小さくなる、すなわち被写体に近接して撮影を行うことを意味する。
ステップS105において、CPU37は、ステップS103にて導出した撮影倍率βがβ≦0.001であるか否かを判定する。なお、この撮影倍率β=0.001は、一般に風景領域を撮影する場合に適した撮影倍率とされている。
ステップS105において撮影倍率βがβ≦0.001であると判定された場合は、ステップS107において、CPU37は、角度ブレの補正量を、物理的に補正可能な範囲(以下、「補正可能範囲」と言う。)内において最大にし、シフトブレの補正量を補正可能範囲内で最小にする。なお、本実施形態に係る撮像装置1では補正可能範囲の最小値が0であるため、当該最小の値は0となる。
ステップS105において撮影倍率βがβ≦0.001でないと判定された場合は、ステップS109において、CPU37は、ステップS103にて導出された撮影倍率βがβ≦0.01であるか否かを判定する。なお、この撮影倍率β=0.01は、一般にポートレート領域を撮影する場合に適した撮影倍率とされている。
ステップS109において撮影倍率βがβ≦0.01であると判定された場合は、ステップS111において、CPU37は、角度ブレの補正量を大きくし、シフトブレの補正量を小さくする。すなわち、全体のブレ量の補正において、角度ブレの補正量の割合がシフトブレの補正量の割合より大きくなる。なお、「補正量を大きくする」とは、補正量に0乃至1の係数をかける際に大きい係数をかけることであり、「補正量を小さくする」とは、補正量に0乃至1の係数をかける際に大きい係数をかけることである。「補正量を大きくする」場合には、「補正量を小さくする」場合より大きい係数がかけられる。
ステップS109において撮影倍率βがβ≦0.01でないと判定された場合は、ステップS113において、CPU37は、ステップS103にて導出された撮影倍率βが1>β≧0.2であるか否かを判定する。なお、この撮影倍率β=0.01は、一般に非マクロ近接領域を撮影する場合に適した撮影倍率とされている。
ステップS113において撮影倍率βが1>β≧0.2であると判定された場合は、ステップS115において、CPU37は、角度ブレの補正量を小さくし、シフトブレの補正量を大きくする。すなわち、全体のブレ量の補正において、角度ブレの補正量の割合がシフトブレの補正量の割合より小さくなる。
ステップS113において撮影倍率βが1>β≧0,2でないと判定された場合は、ステップS117において、CPU37は、ステップS103にて導出された撮影倍率βがβ=1であるか否かを判定する。なお、この撮影倍率β=1は、一般にマクロ領域を撮影する場合に適した撮影倍率とされている。
ステップS117において撮影倍率βがβ=1であると判定された場合は、ステップS119において、CPU37は、角度ブレの補正量を補正可能範囲内で最小とし、シフトブレの補正量を補正可能範囲内で最大にして、補正量最適化処理プログラムを終了する。なお、本実施形態に係る撮像装置1では補正可能範囲の最小値が0であるため、当該最小の値は0となる。
このようにして本実施形態に係る撮像装置1において、検出手段である角速度センサ14及び加速度センサ15により、装置本体における角速度及び加速度がそれぞれ検出され、撮像手段による撮影倍率がβ導出される。
また、本実施形態に係る撮影装置1において、角速度センサ14及び加速度センサ15によって検出された角速度及び加速度に基づいて、撮像光学系3の光軸Lを回転させる角度ブレの補正量及び前記光軸を平行移動させるシフトブレの補正量が、導出された撮影倍率βが高くなるほど角度ブレの補正量に対するシフトブレの補正量の割合が高くなるように導出され、導出された補正量に基づいて手振れ補正が行われる。
また、本実施形態に係る撮影装置1において、撮像光学系3の撮影倍率βに応じて、角度ブレの補正量及びシフトブレの補正量が段階的または連続的に導出される。
これにより、大型化や高価格化を招くことなくシフトブレ補正量及び角度ブレ補正量を最適に制御することができる、という効果を奏する。
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態に係る撮像装置1について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、第2実施形態に係る撮像装置1は、第1実施形態に係る撮像装置1と同様に、図1、図2及び図5に示す構成を有しているため、当該構成に関して重複する説明を省略する。
図7は、本実施形態に係る撮像装置における撮影倍率と角度ブレ補正量ストローク及びシフトブレ補正量ストロークとの関係を示すグラフである。第2実施形態に係る撮像装置1は、メモリ35に、図7に示すような撮影倍率β毎の角度ブレの補正量を示す角度ブレ補正量ストローク、及び、撮影倍率β毎のシフトブレの補正量を示すシフトブレ補正量ストロークを記憶している。撮像装置1は、撮影モードにおいて撮影倍率βが決定されると、角度ブレ補正量ストロークに基づいて当該撮影倍率βに適した角度ブレの補正量を導出するとともに、シフトブレ補正量ストロークに基づいて当該撮影倍率βに適したシフトブレの補正量を導出する。
ここで、本実施形態に係る撮像装置1は、シフトブレ補正量及び角度ブレ補正量が飽和して撮像光学系3の補正機構により物理的に補正できない場合に、撮像倍率βに応じて補正ストロークの配分を変更する。この際、撮像倍率βは指数関数的に変化するので、シフトブレ補正用ストロークも指数関数的に増加させる。これにより、シフトブレまたは角度ブレの各々のブレが支配的になる領域においてより効果的に補正量を調整することができるのである。
本実施形態に係る撮像装置1は、上述したように補正量制御部58による処理をソフトウェアの処理により実行するものとされており、このため、撮像装置1では、撮影モードに設定されている間に補正量最適化処理プログラムを実行する。
次に、図8を参照して、補正量最適化処理プログラムを実行する際の撮像装置1の作用を説明する。なお、図8は、撮影モードに設定されている際に、CPU37により所定時間毎に実行される補正量最適化処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムはメモリ35に予め記憶されている。なお、補正量最適化処理プログラムは、メモリカード等の記録媒体に記憶されていて、当該記録媒体からメモリ35に記憶されることによりメモリ35にインストールされても良い。
始めに、ステップS201において、CPU37は、被写体距離及び焦点距離を取得する。
また、ステップS203において、CPU37は、ステップS101にて取得した被写体距離及び焦点距離から撮影倍率βを導出する。この際、CPU37は、撮影倍率β=焦点距離f/被写体距離Rの式によって撮影距離βを導出する。
ステップS205において、CPU37は、ステップS203にて導出された撮影倍率βがβ≦0.001以下であるか否かを判定する。なお、このβ≦0.001の撮影倍率においては、シフトブレ及び角度ブレの双方の補正量を加算した補正量が、光学撮像系3の補正機構における補正可能範囲の限界値に達してしまい、物理的に補正を行えなくなってしまうため、角度ブレ補正用ストローク及びシフトブレ補正用ストロークのそれぞれの配分を変更する必要がある。
ステップS205において撮影倍率βがβ≦0.001であると判定された場合は、ステップS207において、CPU37は、角度ブレの補正量を補正可能範囲内の最大にし、シフトブレの補正量を補正可能範囲内の最小(ここでは0)とする。
次に、ステップS209において、CPU37は、ステップS203にて導出された撮影倍率βがβ=1であるか否かを判定する。なお、このβ=1の撮影倍率においてもステップS205と同様に、シフトブレ及び角度ブレの双方の補正量を加算した補正量が、光学撮像系3の補正機構における補正可能範囲の限界値に達してしまい、物理的に補正を行えなくなってしまうため、角度ブレ補正用ストローク及びシフトブレ補正用ストロークのそれぞれの配分を変更する必要がある。
ステップS209において撮影倍率βがβ=1であると判定された場合は、ステップS211において、CPU37は、角度ブレの補正量を補正可能範囲内の最小(ここでは0)とし、シフトブレの補正量を補正可能範囲内の最大にする。
ステップS209において撮影倍率βがβ=1でないと判定された場合は、ステップS213において、CPU37は、メモリ35に記憶されている撮影倍率β毎の角度ブレ補正用ストローク及びシフトブレ補正用ストロークから角度ブレ及びシフトブレの最適な補正量を導出して、補正量最適化処理プログラムを終了する。
このようにして本実施形態に係る撮像装置1において、撮像光学系3の撮影倍率βの増加に応じてシフトブレの補正量が指数関数に応じて連続的に増加する。
これにより、撮影倍率βに対して最適な角度ブレの補正量及びシフトブレの補正量を連続的に与えることができ、大型化や高価格化を招くことなくシフトブレ補正量及び角度ブレ補正量を最適に制御することができる、という効果を奏する。
〔第3実施形態〕
以下、第3実施形態に係る撮像装置1について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、第3実施形態に係る撮像装置1は、ブレ補正部13の代わりにブレ補正部13Aを備えている点を除いて、第1実施形態及び第2実施形態に係る撮像装置1と同様に、図1、図2に示す構成を有しているため、当該構成に関して重複する説明を省略する。
図9は、本実施形態に係る撮像装置1のブレ補正処理に関連する要部の構成を示すブロック図である。図9に示すように、角速度信号及び加速度信号は、ブレ補正部13Aに入力される。角速度信号及び加速度信号を入力したブレ補正部13Aは、ブレ量を算出して、算出されたブレ量に基づいてブレ補正レンズ23の移動方向や移動量を制御する。
本実施形態に係る撮像装置1のブレ補正部13Aは、第1実施形態及び第2実施形態に係る撮像装置1のブレ補正部13に対して、積分回路54から出力された信号が、ハイパスフィルタ(HPF)61に入力した後に、回転半径算出部55に入力する点で異なっている。
HPF61は、並進加速度Acc1を積分して得られた値のDC成分を除去することによって並進速度Vを算出して、回転半径算出部55に対して並進速度Vを出力する。DC成分を除去する際の閾値(カットオフ周波数)は可変であり、当該カットオフ周波数は撮像光学系3の撮影倍率βの値によって決定される。
撮像装置1は、加速度の積分回路54の直下にHPF61を配置して、撮像倍率βが増加するにつれてHPF61のカットオフ周波数が低周波側になるように制御する。これにより、撮像倍率βが小さいときには、HPF61のカットオフ周波数を高周波側にすることで、撮像光学系3の補正機構のシフトブレの補正量の向心力を大きくでき、補正量を確保できる。また、撮像倍率βが大きいときには、HPF61のカットオフ周波数を低周波側にすることで、露光時間が長くなるにつれて増大する低周波成分まで補正することができ、補正性能を向上させることができる。さらに、撮像倍率βが小さい場合には、補正量が0付近になるため、急に撮像倍率βが大きくなった場合の撮影に対しても補正ストロークを効率的に使用することができる。
本実施形態に係る撮像装置1は、上述したように補正量制御部58による処理をソフトウェアの処理により実行するものとされており、このため、撮像装置1では、撮影モードに設定されている間に補正量最適化処理プログラムを実行する。
次に、図10を参照して、補正量最適化処理プログラムを実行する際の撮像装置1の作用を説明する。なお、図10は、撮影モードに設定されている際に、CPU37により所定時間毎に実行される補正量最適化処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムはメモリ35に予め記憶されている。なお、補正量最適化処理プログラムは、メモリカード等の記録媒体に記憶されていて、当該記録媒体からメモリ35に記憶されることによりメモリ35にインストールされても良い。
始めに、ステップS301において、CPU37は、被写体距離及び焦点距離を取得する。
また、ステップS303において、CPU37は、ステップS301にて取得した被写体距離及び焦点距離から撮影倍率βを導出する。この際、CPU37は、撮影倍率β=焦点距離f/被写体距離Rの式によって撮影距離βを導出する。
ステップS305において、CPU37は、ステップS303にて導出された撮影倍率βがβ≦0.001以下であるか否かを判定する。
ステップS305において撮影倍率βがβ≦0.001であると判定された場合は、ステップS307において、CPU37は、HPF61のカットオフ周波数を2Hzとする。
ステップS305において撮影倍率βがβ≦0.001でないと判定された場合は、ステップS309において、CPU37は、ステップS303にて導出された撮影倍率βがβ≦0.01であるか否かを判定する。
ステップS309において撮影倍率βがβ≦0.01であると判定された場合は、ステップS311において、CPU37は、HPF61のカットオフ周波数を1Hzとする。
ステップS309において撮影倍率βがβ≦0.01でないと判定された場合は、ステップS313において、CPU37は、ステップS303にて導出された撮影倍率βが1>β≧0.2であるか否かを判定する。
ステップS313において撮影倍率βが1>β≧0.2であると判定された場合は、ステップS315において、CPU37は、HPF61のカットオフ周波数を0.1Hzにする。
ステップS313において撮影倍率βが1>β≧0.2でないと判定された場合は、ステップS317において、CPU37は、ステップS303にて導出された撮影倍率βがβ=1であるか否かを判定する。
ステップS317において撮影倍率βがβ=1であると判定された場合は、ステップS319において、CPU37は、HPF61のカットオフ周波数を0.01Hzにして、補正量最適化処理プログラムを終了する。
図11は、上記補正量最適化処理プログラムにて用いられた、撮像光学系3の撮影倍率βに対して最適なHPF61のカットオフ周波数を示すグラフである。図11に示すように、最適なHPF61のカットオフ周波数は、撮影倍率βが大きくなるにつれて指数関数的に減少する。
このようにして本実施形態に係る撮像装置1において、加速度センサ14により検出される加速度の積分値における閾値以上の高周波数成分が通過するとともに、当該閾値が撮影倍率βが増加するのに応じて低周波数側に変更される。
これにより、大型化や高価格化を招くことなくシフトブレ補正量及び角度ブレ補正量を最適に制御することができる、という効果を奏する。
〔第4実施形態〕
以下、第4実施形態に係る撮像装置1について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、第4実施形態に係る撮像装置1は、ブレ補正部13Aの代わりにブレ補正部13Bを備えている点を除いて、第3実施形態に係る撮像装置1と同様に、図1、図2に示す構成を有しているため、当該構成に関して重複する説明を省略する。
図12は、本実施形態に係る撮像装置1のブレ補正処理に関連する要部の構成を示すブロック図である。図12に示すように、角速度信号及び加速度信号は、ブレ補正部13Bに入力される。角速度信号及び加速度信号を入力したブレ補正部13Bは、ブレ量を算出して、算出されたブレ量に基づいてブレ補正レンズ23の移動方向や移動量を制御する。
本実施形態に係る撮像装置1のブレ補正部13Bは、第3実施形態に係る撮像装置1のブレ補正部13Aに対して、積分回路54から出力された信号、及び、積分回路54から出力されハイパスフィルタ(HPF)61に入力した後に出力された信号が、切替部62に入力する点で異なっている。
HPF61は、並進加速度Acc1を積分して得られた値のDC成分を除去することによって並進速度Vを算出して、回転半径算出部55に対して並進速度Vを出力する。DC成分を除去する際の閾値は可変であり、当該閾値は撮像光学系3の撮影倍率βの値によって決定される。
切替部62は、通常、積分回路54から出力されハイパスフィルタ(HPF)61に入力した後に出力された信号を、並進速度Vとして回転半径算出部55に対して出力するが、撮像光学系3の撮影倍率βが所定条件を満たした場合には、積分回路54から出力された信号をそのまま並進速度Vとして回転半径算出部55に対して出力する。
撮像装置1は、加速度の積分回路54の下流にHPF61を配置し、撮像光学系3の撮影倍率が予め定められた閾値よりも大きくなると、HPF61をバイパスして低周波側の除去を行わない。これにより、撮像倍率βが小さいときには、HPF61のカットオフ周波数を高周波側にすることで、撮像光学系3の補正機構のシフトブレの補正量の向心力を大きくでき、補正量を確保できる。また、撮像倍率βが大きいときには、HPF61のカットオフ周波数を低周波側にすることで、露光時間が長くなるにつれて増大する低周波成分まで補正することができ、補正性能を向上させることができる。
本実施形態に係る撮像装置1は、上述したように補正量制御部58による処理をソフトウェアの処理により実行するものとされており、このため、撮像装置1では、撮影モードに設定されている間に補正量最適化処理プログラムを実行する。
次に、図13を参照して、補正量最適化処理プログラムを実行する際の撮像装置1の作用を説明する。なお、図13は、撮影モードに設定されている際に、CPU37により所定時間毎に実行される補正量最適化処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムはメモリ35に予め記憶されている。なお、補正量最適化処理プログラムは、メモリカード等の記録媒体に記憶されていて、当該記録媒体からメモリ35に記憶されることによりメモリ35にインストールされても良い。
始めに、ステップS401において、CPU37は、被写体距離及び焦点距離を取得する。
また、ステップS403において、CPU37は、ステップS401にて取得した被写体距離及び焦点距離から撮影倍率βを導出する。この際、CPU37は、撮影倍率β=焦点距離f/被写体距離Rの式によって撮影距離βを導出する。
ステップS405において、CPU37は、ステップS403にて導出された撮影倍率βがβ≦0.001以下であるか否かを判定する。
ステップS405において撮影倍率βがβ≦0.001であると判定された場合は、ステップS407において、CPU37は、HPF61のカットオフ周波数を2Hzとする。
ステップS405において撮影倍率βがβ≦0.001でないと判定された場合は、ステップS309において、CPU37は、ステップS303にて導出された撮影倍率βがβ≦0.01であるか否かを判定する。
ステップS409において撮影倍率βがβ≦0.01であると判定された場合は、ステップS411において、CPU37は、HPF61のカットオフ周波数を1Hzとする。
ステップS409において撮影倍率βがβ≦0.01でないと判定された場合は、ステップS413において、CPU37は、ステップS403にて導出された撮影倍率βが1>β≧0.2であるか否かを判定する。
ステップS413において撮影倍率βが1>β≧0.2であると判定された場合は、ステップS415において、CPU37は、HPF61のカットオフ周波数を0.1Hzにする。
ステップS413において撮影倍率βが1>β≧0.2でないと判定された場合は、ステップS417において、CPU37は、ステップS403にて導出された撮影倍率βがβ=1であるか否かを判定する。
ステップS417において撮影倍率βがβ=1であると判定された場合は、ステップS419において、CPU37は、撮像倍率βのβ=1の状態が所定時間以上継続しているか否かを判断する。撮像倍率β=1の状態が所定時間以上継続しているときには、補正量が撮像光学系3の補正機構の物理的な限界値に達していて補正機構が移動不可能な状態になっている可能性があるからである。
ステップS419において撮像倍率βのβ=1の状態が所定時間以上継続していると判定された場合は、ステップS421において、CPU37は、HPF61をバイパスさせ、補正機能が補正用ストロークの中心の位置に安定するまで所定時間待機させる。この待機により、撮像光学系3の補正機構が移動可能な状態になる。
ステップS419において撮像倍率βのβ=1の状態が所定時間以上継続していないと判定された場合は、ステップS423において、CPU37は、HPF61のカットオフ周波数を0.01Hzにして、補正量最適化処理プログラムを終了する。
このようにして本実施形態に係る撮像装置1において、撮像光学系3の撮影倍率βが所定時間以上、高倍率側の限界値(すなわちβ=1)であった場合に、HPF61の使用が禁止される。
これにより、シフトブレ補正量と角度ブレ補正量との補正機構の補正ストロークを大きくすることなく、大型化や高価格化を回避しつつ各々のブレ補正量を最適に制御することができる、という効果を奏する。
なお、本実施形態に係る撮像装置1は、撮像光学系3にブレ補正レンズ23を備え、ブレ補正レンズ23を光軸Lに垂直な面内で移動させることにより手振れの補正を行う例を説明したが、これに限らない。例えば、手振れの補正は、撮像光学系3の光軸Lに対して撮像素子12を移動させることによっても行うことができる。本実施形態に係る撮像装置1は、このように撮像素子12を移動させて手振れ補正を行う撮像装置にも好適である。
また、本実施形態では、撮像素子12がCCD型の撮像素子である例を説明したが、これに限らず、CMOS型の撮像素子を用いても良い。