JP2012250695A - 自動車用駆動装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】電気自動車として走行する場合に、2個のモーター・ジェネレーター(M/G)をフルに使った駆動を可能にして、より小さい容量のM/Gで済ませる。
【解決手段】それぞれ3つの回転要素で構成する2組の遊星歯車組20、30を備え、各回転要素を個別に、または各回転要素同士を連結し、または連結可能にして4つのメンバーを構成し、共通速度線図の横軸方向においてこれら4つのメンバーを並べた際に、一方の端から他方に向けて順番に、第1メンバーを第1M/G42と連結し、第2メンバーを出力軸12と連結し、第3メンバーを構成する互いに連結可能な一方の第2キャリア38を静止部46に固定可能とし、他方の第1リングギヤ24を入力軸10と連結可能とし、第4メンバーを第2M/Gと連結した。
【選択図】図1

Description

本発明は、内燃機関と電気モーターの2種類の動力源を有する、いわゆるハイブリッド自動車の駆動装置に関し、特にエンジンより入力される動力を、遊星歯車を介して出力軸へ伝達可能で、複数のモーターを備えた自動車用駆動装置に関するものである。
従来、この種の自動車用駆動装置としては、2組の遊星歯車組、2個のモーター・ジェネレーター(以下、M/Gと記す)および遊星歯車組の回転要素同士間の接続関係を切り替える2個の摩擦要素を備え、該摩擦要素を切り替えることにより低速モードと高速モードの2種類の駆動モードを得るようにした例が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
米国特許第6,478,705号公報
しかしながら、2組の遊星歯車組、2個のM/Gおよび2個の摩擦要素を備え、低速モードと高速モードの2種類の駆動モードを有する方式とした上記従来の自動車用駆動装置にあっては、バッテリーに蓄えた電力のみを動力源として、いわゆる電気自動車と同じような走行をする場合に、1個のM/Gでしか駆動することができず、せっかく2個のM/Gを備えているにもかかわらず、両M/Gを有効活用できず、これによる強力な駆動力を得ることができないという問題があった。
解決しようとする問題点は、バッテリーの電力のみを動力源として電気自動車と同じ走行をする場合に、1個のM/Gでしか駆動することができず、大きな駆動力を発揮するには大きな容量のM/Gが必要となる点である。
本発明の目的は、2個のM/Gを備えたハイブリッド自動車にあって、電気自動車として走行する場合に2個のM/Gを使った駆動を可能にし、より小さい容量のM/Gの適用で済ませることができるようにすることにある。
本発明の自動車用駆動装置は、エンジンからの動力を受け入れ可能な入力軸と、出力軸と、第1サンギヤ、第1リングギヤ、第1キャリアの、3つの回転要素で構成する第1遊星歯車組と、第2サンギヤ、第2リングギヤ、第2キャリアの、3つの回転要素で構成する第2遊星歯車組と、第1モーター・ジェネレーターと、第2モーター・ジェネレーターと、を備え、第1遊星歯車組の回転要素のうちの1つと、第2遊星歯車組の回転要素のうちの1つとを第1クラッチにより連結可能にした連結可能メンバーと、第1遊星歯車組の連結可能メンバー以外の1つの回転要素と、第2遊星歯車組の連結可能メンバー以外の1つの回転要素とを互いに常時連結した一体メンバーと、第1遊星歯車組と第2遊星歯車組の連結メンバーおよび一体メンバー以外の回転要素からなる2つの独立メンバーと、から4つのメンバーを構成し、これら4つのメンバーの回転速度を直線で表すことのできる共通速度線図上において横軸の一端から他端に向かって順番に、第1メンバー、第2メンバー、第3メンバー、第4メンバーを配置し、第1メンバーを独立メンバーの一方を構成する第1サンギヤとし、第2メンバーを一体メンバーとし、第3メンバーを連結可能メンバーとし、第4メンバーを独立メンバーの他方を構成する第2サンギヤとして、第1メンバーは第1モーター・ジェネレーターと連結し、第2メンバーは出力軸と連結し、第3メンバーはこれを構成する連結可能メンバーのうちの第1遊星歯車組の回転要素を入力軸と第2クラッチにより連結可能とするとともに、連結可能メンバーのうちの第2遊星歯車組の回転要素を静止部に固定可能とし、第4メンバーは第2モーター・ジェネレーターと連結したことを特徴とする。
本発明の自動車用駆動装置はエンジンで駆動する走行において2つの駆動モードを備えて、走行条件に応じて最適な駆動モードを選択して燃費の良い走行を行うことができるハイブリッド自動車(HV)でありながら、バッテリーのみを動力源とした電気自動車(EV)走行において2個のM/Gで駆動することができる。したがって、2個のM/Gの合計容量を小さくして、コスト・重量・大きさの面でメリットを出せるようにすることが可能となる。
本発明の実施例1に係る自動車用駆動装置の主要部を示したスケルトン図である。 実施例1の自動車用駆動装置における共通速度線図である。 実施例1の自動車用駆動装置における作動表を示す図である。 実施例1の自動車用駆動装置における他の共通速度線図である。 実施例1の自動車用駆動装置における他の共通速度線図である。 実施例1の自動車用駆動装置における他の共通速度線図である。 実施例1の自動車用駆動装置における他の共通速度線図である。 実施例1の自動車用駆動装置における他の共通速度線図である。 本発明の実施例2に係る自動車用駆動装置の主要部を示したスケルトン図である。 実施例2の自動車用駆動装置における作動表を示す図である。 実施例2の自動車用駆動装置における共通速度線図である。 実施例2の自動車用駆動装置における他の共通速度線図である。 実施例2の自動車用駆動装置における他の共通速度線図である。 本発明の実施例3に係る自動車用駆動装置の主要部を示したスケルトン図である。 本発明の実施例4に係る自動車用駆動装置の主要部を示したスケルトン図である。
以下、本発明の実施の形態に係る自動車用駆動装置を、各実施例に基づき図とともに説明する。
図1は、本発明の実施例1に係る自動車用駆動装置における主要部のスケルトン図である。
実施例1の自動車用駆動装置は、エンジン1から駆動される入力軸10と、該入力軸10と同軸心上に設けられて図示しない車輪側へ駆動力を出力する出力軸12を備えている。出力軸12は図示しない差動装置などを介して自動車の車輪を駆動する。
入力軸10と出力軸12との間には、第1遊星歯車組20、第2遊星歯車組30の2つの遊星歯車組が配置してある。第1遊星歯車組20および第2遊星歯車組30は一般的にシングルピニオン型と呼ばれるもので、それぞれが同様の構成になっている。
すなわち、第1遊星歯車組20は、第1サンギヤ22と、第1リングギヤ24と、第1サンギヤ22および第1リングギヤ24に噛み合った複数の第1ピニオン26を回転自在に軸支する第1キャリア28と、の3つの回転要素で構成されている。
また、第2遊星歯車組30は、第2サンギヤ32と、第2リングギヤ34と、第2サンギヤ32および第2リングギヤ34に噛み合った複数の第2ピニオン36を回転自在に軸支する第2キャリア38と、の3つの回転要素で構成されている。
次に、上記各回転要素の本発明におけるメンバー構成および連結関係を説明する。
第1リングギヤ24と第2キャリア38とは、第1クラッチ40によって連結可能であり、本発明の連結可能メンバーを構成する。
第1キャリア28と第2リングギヤ34は互いに常時連結されており、これらは本発明の一体メンバーを構成する。
第1サンギヤ22と第2サンギヤ32は、それぞれ独立した回転メンバーである。
図2は、各回転メンバーの回転速度の関係を直線で表すことができる共通速度線図であり、後述するE−F−1モードにおける状態を表している。
共通速度線図にあっては、図の縦軸方向が回転速度を表し、各回転メンバーに対応する縦線がそれぞれ横方向に、上記した各遊星歯車組のリングギヤの歯数に対するサンギヤの歯数の比をαとして、αに応じた間隔で割り振って描いてある。
ここで、α1は第1遊星歯車組20の、α2は第2遊星歯車組30の、歯数比をそれぞれ表す。
なお、同図中、速度線を太い線で描いてあり、これと各メンバーの縦線との交点(●印で表示)の縦軸方向の高さが、そのメンバーの回転速度を表す。
ここで、共通速度線図の縦線で表した各回転メンバーを横方向左端から順番に、第1メンバー、第2メンバー、第3メンバー、第4メンバーとする。図2の上方に書いた記号、M1、M2、M3、M4は、それぞれ第1、第2、第3、第4の各回転メンバーを表し、その上に書いた記号は回転要素としてサンギヤはS、リングギヤはR、キャリアはCで、それらの後の数字1、2はそれぞれが属する第1遊星歯車組20、第2遊星歯車組30を表し、例えばS1、R1、C1は、それぞれ第1遊星歯車組20の第1サンギヤ22、第1リングギヤ24、第1キャリア28を表すようになっている。
本発明では前述の連結可能メンバーが常に第3メンバーであるように、連結可能メンバーを定義する。
また、第1サンギヤ22が第1メンバーを構成し、連結された一体メンバーである第1キャリア28と第2リングギヤ34が第2メンバーを構成し、第2サンギヤ32が第4メンバーを構成する。
第1から第4の各回転メンバーの連結関係は次のようになっている。
第1メンバーを構成する第1サンギヤ22は第1M/G42と常時連結しており、第2メンバーを構成する第1キャリア28と第2リングギヤ34は出力軸12と常時連結している。第3メンバーを構成する連結可能メンバーのうち、第2遊星歯車組30側の第2キャリア38はワンウエイクラッチ44によりケース(静止部)46に固定可能であり、第1遊星歯車組20側の第1リングギヤ24は第2クラッチ41により入力軸10と連結可能である。
第4メンバーを構成する第2サンギヤ32は第2M/G48と常時連結している。
なお、ワンウエイクラッチ44は第2キャリア38をケース46に一方の回転方向にのみ固定可能であり、第2キャリア38がエンジン1の回転方向と逆の方向に回転するのを阻止するようになっているもので、本実施例では周知の機械式のものを用いるが、油圧多板式ブレーキで締結・開放制御するようにするものなどでもよい。
さらに入力軸10にはドッグ歯10aが形成されており、ケース46側の固定装置46aをドッグ歯10aに噛み合わせることにより入力軸10をケース46に固定することができるようになっている。
固定装置46aとドッグ歯10aの詳細の図示は省略するが、一般的な自動変速機におけるパーキングロック機構と同様のものでよい。
また、ドッグ歯10aは、入力軸10に限ることなく、エンジン1に一般的に設けられるフライホイールの外周に形成してもよい。
第1M/G42と第2M/G48は、入力軸10、出力軸12と同軸心上で、かつ、それぞれ第1遊星歯車組20の下流側、第2遊星歯車組30の上流側にそれぞれ配置してある。
本発明の連結可能メンバーを構成する第1リングギヤ24と第2キャリア38とは、前述のように第1クラッチ40で互いに連結可能であり、また第1リングギヤ24は第2クラッチ41によって入力軸10と連結可能であるので、第1クラッチ40、第2クラッチ41を締結して固定装置46aをドッグ歯10aに噛み合わせた場合には、第1リングギヤ24と第2キャリア38とを同時にケース46に固定することができる。
また、第1M/G42と第2M/G48とは、モーターとしての駆動とジェネレータとしての発電の、両方の作用ができるようになっている。
次に、図1に示した自動車用駆動装置の作動を、図2および図4乃至図8に示した共通速度線図と、図3に示した作動表を参考にしながら説明する。
図3の作動表において、縦方向にこれから説明する走行モードと各駆動モードを割り当て、横方向にはクラッチなどの締結要素とM/Gをそれぞれ割り当ててある。すなわち、固定装置46aを「L」、ワンウエイクラッチ44を「OWC」、第1クラッチ40を「C1」、第2クラッチ41を「C2」、第1M/G42を「M/G1」、第2M/G48を「M/G2」とした。
表中の○印はクラッチなどの締結要素にあっては締結・係合または噛み合いを表し、第1M/G42、第2M/G48にあっては駆動を表し、△印は第1M/G42、第2M/G48において発電を表している。第1M/G42、第2M/G48における−印は停止可能であることを表す。
また、括弧内は、締結しているが動力伝達の上で必須ではないことを表す。
なお、図示は省略するが図1に示した自動車用駆動装置は、これを作動させるため、必要に応じて油圧ポンプ、バッテリー、各種センサ、コントローラー、アクチュエーターなどを備えており、以下の作動はコントローラーの指示に基づいて行われる。
また、以下の説明ではエンジン1の回転方向と同じ方向の回転を「正回転」、その逆を「逆回転」と定義する。
始めに、バッテリーに蓄えた電力のみを動力源として、いわゆる電気自動車(EV)として走る、EV走行について説明する。
まず、第2M/G48のみが逆回転方向に回転駆動するE−F−1モードを説明する。
作動表に見るように、E−F−1モードは第1クラッチ40および第2クラッチ41は締結しない状態で駆動する。すなわち、第2キャリア38はワンウエイクラッチ44によって逆回転方向の回転を阻止されるので、第2M/G48が逆回転方向に回転することで第2リングギヤ34と一体の出力軸12は正回転方向(前進方向)に減速駆動される。
図2の共通速度線図にはE−F−1モードの速度線が描いてある。これは、第2M/G48が−1の回転速度で、第2キャリア38の回転速度がゼロの状態であり、実線で示した第2遊星歯車組30の速度線と第2メンバー(M2)の縦線との交点が第2メンバーの回転速度であり、第2リングギヤ34と一体の出力軸12が減速駆動されていることを表している。
このとき、破線で示した第1遊星歯車組20の速度線は、第1M/G42と連結した第1メンバー(M1)の回転速度がゼロで、これと上記の第2メンバーの交点とを結んだ線になる。したがって、第3メンバー(M3)のうち、第1リングギヤ24が第2メンバーより高い回転速度になっている。
E−F−1モードの減速比(第2M/G48の回転速度/出力軸12の回転速度)は、−1/α2である。
このE−F−1モードの特徴は、第2M/G48のみでの駆動であることである。つまり、第1M/G42の回転速度をゼロにすることができるので、これが連れ回りすることによるロスがない。
また、E−F−1モードは第2M/G48のみでの減速駆動であり、比較的低い速度での低負荷の走行に適している。
次に、E−F−1モードから第1M/G42および第2M/G48の両方で駆動を行うE−F−2モードへの切り替えは、図2の状態から正回転方向に第1M/G42の回転速度を上昇させて第1リングギヤ24の回転速度がゼロになるように制御する。そこで第1クラッチ40を締結するとE−F−2モードへ切り替わる。
その状態を表すのが図4の共通速度線図における実線であり、第1クラッチ40の締結により第1遊星歯車組20と第2遊星歯車組30の速度線は一直線になる。
なお、図4の破線は後述する後進時の速度線である。
第1クラッチ40によって連結された第1リングギヤ24と第2キャリア38は、E−F−1モードに引き続いてワンウエイクラッチ44によって逆回転方向の回転を阻止される。そのため、第2M/G48が逆回転方向に回転することでの駆動に加えて、第1M/G42が正回転方向に回転することで第1キャリア28と一体の出力軸12を減速駆動する。
E−F−2モードにおける減速比は、第1M/G42については(1+α1)/α1であり、第2M/G48についてはE−F−1モードと同様に−1/α2である。すなわち、第1M/G42と第2M/G48の両者によって減速駆動される。
したがって、E−F−2モードは比較的低い速度で、高負荷の走行に適している。
次に、E−F−2モードからより高速が可能な駆動を行うE−F−3モードへの切り替えは、第1M/G42と第2M/G48のいずれか一方、または両方の回転速度を上げることで行う。これにより、ワンウエイクラッチ44によって逆回転方向の回転を阻止されていた、第3メンバー(M3)である第1リングギヤ24と第2キャリア38は正回転方向に回転する。
したがって、E−F−3モードにあっては、E−F−2モードと同様、第1M/G42と第2M/G48の両者による駆動であるが、E−F−2モードまでのような減速駆動ではなくなる。
この場合、上記E−F−3モードにおいては、大きく分けて3種類の駆動を行うことができる。
つまり、第1の駆動では、第2M/G48の回転速度をゼロにして、第1M/G42が正回転駆動する場合であり、図5に破線で示したような速度線になる。減速比は{α1(1+α2)+α2}/α1(1+α2)である。この場合、第2サンギヤ32に作用する反力トルクに耐えるように第2M/G48に正回転方向のトルクを与えるために若干の通電を要する。
第2の駆動では、第1M/G42の回転速度をゼロにして、第2M/G48が正回転駆動する場合であり、図5に実線で示したような速度線になる。減速比は{α1(1+α2)+α2}/α2である。この場合、第1サンギヤ22に作用する反力トルクに耐えるように第1M/G42に正回転方向のトルクを与えるために若干の通電を要する。
次に第3の駆動では、第1M/G42と第2M/G48の両者で、第3メンバー(M3)の回転速度がゼロを上回るように駆動する。したがって、前述のように第1M/G42と第2M/G48は減速駆動ではなくなるので、出力軸12のトルクは第1M/G42と第2M/G48の出力トルクの単純な合計になる。
特にこの場合、第1M/G42と第2M/G48の両者を同じ回転速度で駆動すると、第1遊星歯車組20と第2遊星歯車組30の全体が一体になって回転する。
以上のようにE−F−3モードは多様な駆動が可能であるが、上記の3種類の駆動は主なポイントを説明したものであり、実際は第1M/G42と第2M/G48の回転速度を自由に制御して無段階に変化させることができる。
また、E−F−3モードは減速駆動でないので、比較的高速の走行に適する。
さらに、E−F−2モードとE−F−3モードとは、単に第1M/G42と第2M/G48の回転速度を制御するだけで無段階に切り替わるので、両モードは低速・低負荷の走行以外の走行に幅広く適用することができる。
なお、E−F−1モード乃至E−F−3モードのEV走行にあっては、固定装置46aの噛み合いは必要ない。そこで、後述のHV走行への切り替えを考慮すると噛み合いは解除しておいたほうが制御しやすい。
次に、後進の場合は、図3の作動表のE−Rで表したように、固定装置46aを噛み合わせて入力軸10を固定するとともに、第1クラッチ40と第2クラッチ41とを締結する点が前進走行と異なる。この場合もE−F−2モードの場合と同様に第1M/G42と第2M/G48の両者で駆動できるが、これらの回転方向はE−F−2モードの場合の逆になり、速度線は図4において破線で描いたようになる。
また、後述のEBモード(エンジン1を駆動していない場合の制動モード)では後進時の説明を省くので、ここで制動時の作用を説明する。前述のように第1クラッチ40と第2クラッチ41とを締結して、第1リングギヤ24と第2キャリア38がケース46に固定されている。そのため、制動時も駆動時と同様に第1M/G42と第2M/G48の両方で発電することで制動が可能であるが、作動表のE−R欄には発電の表記はしていない。
続いて、前進走行中においてエンジン1が停止した状態で、第1M/G42と第2M/G48のいずれも駆動せずに、惰行するか、あるいは発電して自動車を制動する作用について説明する。
これらの走行は作動表のEB欄に記載してある。
E−B−1モードは、E−F−3モードと同様の締結であり、第1クラッチ40を締結して、第1M/G42と第2M/G48の両者に発電させることができる。出力軸12の制動トルクは、第1M/G42と第2M/G48のそれぞれの発電トルクの合計である。
E−B−1モードは、固定装置46aが噛み合っていなくても制動ができるので、エンジン1と第1M/G42、第2M/G48の一方との駆動で走行する後述のHV走行からの急な移行に適している。その場合、エンジン1が完全に停止してから固定装置46aを噛み合わせて、後述のE−B−2モードまたはE−B−3モードに切り替えることができる。
また、自動車の走行速度が一定値以下の場合や、ドライバーのブレーキペダルの踏み込みを検知した場合に、自動的に固定装置46aを噛み合わせ、次のE−B−2モードまたはE−B−3モードに切り替えに備えるようにすることも可能である。
E−B−1モードにおいて固定装置46aを噛み合わせ、第1M/G42と第2M/G48の回転速度を、速度線が図4の実線と同様に第3メンバーの回転速度がゼロになるように制御した上で、第2クラッチ41を締結する。
そして、第1クラッチ40の締結を解除するとE−B−2モードに切り替わり、解除せずに第1クラッチ40と第2クラッチ41の両者を締結したままだとE−B−3モードに切り替わる。
E−B−2モードでは、速度線が図6に示したようになって、第1M/G42のみが発電して第2M/G48は停止可能である。このとき、第1M/G42は駆動時とは逆に出力軸12から増速駆動されて発電する。
E−B−3モードでは速度線が図4に示したE−F−2モードと同様になって、第1M/G42と第2M/G48の両者が、出力軸12から増速駆動されて発電する。
したがって、E−B−1モードは高速走行における制動に適しており、E−B−2モードは惰性で走行するような弱い制動力でありたい場合に適しており、E−B−3モードは比較的低速で強い制動力を得たい場合に適している。
これら、第1M/G42、第2M/G48の発電によって得られた電力はバッテリーに蓄えて、次の加速時に使うことで、いわゆるエネルギー回生を行って電力消費効率を高める。
次に、エンジン1を始動して第1M/G42と第2M/G48の両者を併用して走行するハイブリッド自動車(HV)として走る、HV走行について説明する。
HV走行は、バッテリーの充電量が少なくなった場合の一般走行や、EV走行では得られない大きな駆動力を要する加速または登坂、および高速走行において用いる。
始めに車両が停止しているか低速で動いている状態でのエンジン1の始動について説明する。
まず、HV走行では固定装置46aの噛み合いを解除しておく。
続いて第2クラッチ41を締結するとともに、第1M/G42に電力を供給して逆回転方向の駆動力を出させると、入力軸10を介して第1リングギヤ24と連結されたエンジン1が正回転方向に減速駆動されるので、燃料供給や点火動作などの一般的な方法でエンジン1が始動する。
この際、出力軸12と連結した第1キャリア28に反力として逆回転方向のトルクが作用するので、第2M/G48にも電力を供給して逆回転方向の駆動力を出させると、出力軸12と連結した第2リングギヤ34に正回転方向のトルクが作用して第1キャリア28に作用するトルクと相殺するので、車両が後進方向に駆動されることを防ぐことができる。
このとき、ワンウエイクラッチ44が自動的に第2キャリア38の逆回転方向の回転を阻止する。
むろん、第2M/G48による出力トルクが第1キャリア28に作用するトルクより大きくなるように制御すれば、車両を前進駆動しながらエンジン1を始動することができる。
エンジン1が始動した後は自動的にH−1モード(HV走行での低速モード)へ移行する。すなわち、H−1モードの駆動は、ワンウエイクラッチ44が第2キャリア38の逆回転方向への回転を阻止したままで行われる。
エンジン1が出力トルクTeで第1リングギヤ24を正回転方向に駆動すると、第1サンギヤ22は逆回転方向に回転して第1M/G42に発電させて、その反力で第1キャリア28が正回転方向のトルクを受けて出力軸12を駆動する。
一方、第1M/G42が発電した電力は第2M/G48に供給され、これに逆回転方向のトルクを第2サンギヤ32に出力させる。このとき、第2キャリア38が回転を阻止されているので、第2リングギヤ34には正回転方向のトルクが作用して出力軸12を駆動する。
このH−1モードにおける出力軸12のトルクは、上記したように第2M/G42が第2サンギヤ32を駆動するトルクをT2とすると、Te(1+α1)+T2/α2である。
むろん、第1M/G42の発電で得られた電力は、第2M/G48に供給されるだけでなく、一部をバッテリーの充電に振り向けることもできるし、逆に第1M/G42の発電電力にバッテリーの電力(しばらく充電した後など、余力があるときは)を加えて第2M/G48を駆動することもできる。
このようにして自動車の速度が上がっていくと、徐々に第1サンギヤ22の回転速度が下がってきて、やがてゼロになる。図7に示した共通速度線図がこの状態を表す。この図の実線が第1遊星歯車列組20の速度線であり、破線が第2遊星歯車組30の速度線である。
したがって、第1M/G42の発電電力はなくなるので、第2M/G48への電力供給をやめればエンジン1は機械的に第1キャリア28を駆動することになり、その時の出力軸12のトルクはTe(1+α1)の減速・増大になる。
この場合も、バッテリーから若干の電力を第1M/G42に供給して、第1サンギヤ22に作用する反力トルク−Te・α1に耐えて第1M/G42の停止を維持する必要がある。
このように第2M/G48が第2サンギヤ32を駆動しない状態において、より高速走行に適したH−2モードに切り替える。
H−2モードへの切り替えは、第2M/G48の回転速度を正回転方向へ上げて第2キャリア38が第1リングギヤ24と同じ回転速度になるように制御する。このとき、ワンウエイクラッチ44による第2キャリア38の固定は自動的に解除される。
そして、第1クラッチ40を締結すると、第2キャリア38、第1リングギヤ24、入力軸10が一体になり、エンジン1から駆動されるようになる。この状態がH−2モードである。図8に示した共通速度線図において実線がH−2モードに切り替わった状態を表す。
H−2モードにおいてはエンジン1が第2キャリア38を駆動し、そのトルクは第2リングギヤ34を介して出力軸12を駆動するトルクと、第2サンギヤ32を介して第2M/G48を駆動して発電させるトルクとに分割される。
第2M/G48の発電により得られた電力を第1M/G42に供給して第1サンギヤ22に正回転方向のトルクを与えると、第1キャリア28を正回転方向に減速駆動する。一方、その反力として第1リングギヤ24に逆回転方向のトルクが作用し、このトルクの分だけ入力軸10が第2キャリア38を駆動するトルクが減ることになる。
その減少トルクは第1M/G42の駆動トルクをT1とすると、T1/α1である。
このときの出力軸12のトルクは、第1M/G42が第1サンギヤ22を駆動するトルクをT1とすると、(Te−T1/α1)/(1+α2)+T1(1+α1)/α1である。
前述のように、第1M/G42が第1サンギヤ22から出力軸12を駆動する反力で入力軸10が第2キャリア38を駆動するトルクが減るということは、第2M/G48の発電量が減ることになり、それだけ電気的な動力伝達比率が低くなって機械的な伝達割合が高くなることを意味する。
このH−2モードにおいても、第2M/G48の発電によって得られる電力の全てを第1M/G42に供給せず一部をバッテリーの充電あててもいいし、逆に第2M/G48の発電によって得られる電力にバッテリーに蓄えた電力を加えて第1M/G42を駆動することもできる。
H−2モードの走行で自動車の速度が上昇すると、徐々に第2サンギヤ32の回転速度が下がって、やがてゼロになる。この状態の速度線が図8の破線である。
図8に見るように、第2サンギヤ32の回転速度がゼロになった場合には出力軸12の回転速度は入力軸10より高く、いわゆるオーバードライブになっている。この場合の変速比(入力軸10の回転速度/出力軸12の回転速度)は、1/(1+α2)である。
このときも、バッテリーから第2M/G48に若干の電力を供給して第2サンギヤ32に作用する反力トルクTe・α2に耐えて、第2M/G48の停止を維持する必要がある。
むろん、この場合もバッテリーから第1M/G42に電力を供給してエンジン1の駆動に加勢することもできる。
以上は、HV走行としてエンジン1と第1M/G42および第2M/G48の併用で出力軸12を駆動する場合の説明を行ったが、減速する場合や降坂する場合には、前述のEBモードでの走行で説明したようにエンジン1を止めて、第1M/G42と第2M/G48に発電させて制動することができる。
また、エンジン1を停止してのEBモードでの走行中に、再びエンジン1を始動させる場合は、固定装置46aの噛み合いを解除して、自動車の走行速度に応じて以下のように行う。
すなわち、自動車の速度が一定速度より高速の場合は、H−2モードと同じ締結のまま第1M/G42に発電させることで、その反力により第1リングギヤ24が正回転方向のトルクを得るので入力軸10を介してエンジン1を回転させて始動する。
また、自動車の走行速度が低い場合は、前述の車両停止状態と同様に、第1M/G42に電力を供給して始動する。
いずれの場合も、エンジン1を回転させる反力トルクで出力軸12のトルクが変動して違和感が生じないように、第2M/G48に電力を供給して必要なトルクを出させるように制御する。
以上説明したように、本実施例1の自動車用駆動装置は、EV走行において第1M/G42と第2M/G48との両方をフルに活用できることと、多様な駆動モードを有することが特徴である。
このため、バッテリーの電力のみを動力源とするEV走行においては、第1M/G42と第2M/G48の両者で駆動することができるのはむろんのこと、自動車の走行条件に応じて最適な駆動モードを選択することで、電力消費効率の高い走行を行うことができる。
一方、制動時などのエネルギー回生においても、第1M/G42と第2M/G48をフルに発電に用いることができるので、これを生かした効率の高い走行が期待できる。
さらに、エンジン1の動力を用いるHV走行においても、低速用のH−1モードと高速用のH−2モードを使い分けて燃料消費効率の高い走行を行うことができる。
同時に、HV走行の全般に電気的な駆動比率が低いので第1M/G42と第2M/G48の容量が小さくて済む。
このように、従来に比べて第1M/G42と第2M/G48の容量が小さくて済むので、一般的にコントローラーに含まれるインバーターも含めて製造コスト・重量・大きさを小さくできるメリットがある。したがって、たとえば短距離は主に電気自動車として走行して、バッテリーの電力が少なくなった場合にエンジン1の動力で走行する、いわゆるプラグインハイブリッド自動車と呼ばれる車両等の駆動装置として用いるのに適する。
このようなメリットを出すことができるのは、第3メンバーを構成する二つの連結可能な回転要素である、一方の第2キャリア38を静止部に固定可能とし、他方の第1リングギヤ24を入力軸と連結可能としたからである。
しかも、エンジン1が停止した状態で固定装置46aによって機械的に入力軸10を固定し、一方、第2キャリア38はワンウエイクラッチ44の作用で逆回転方向の回転が自動的に阻止(固定)されることと第1クラッチ40、第2クラッチ41の締結の組み合わせで、第2キャリア38を正回転方向にも固定できる。このため、これを固定するために従来例のように多板ブレーキといった手段を用いずに済むので、多板ブレーキを用いて第2キャリア38を固定する場合に比べて、高速走行において多板ブレーキで生ずる引きずり抵抗を減らす効果があるので、この面でも燃費のさらなる改善が期待できる。
さらに、第1クラッチ40および第2クラッチ41を用いることで、回転メンバー間の連結関係の種類を増やし、異なる走行モードを種々得ることが可能となる。
また、図1のように第1クラッチ40および第2クラッチ41をエンジン1と第2M/G48の間に配置したので、乾式クラッチにすることが容易であり、その場合はスプリングの張力で締結するクラッチの構成にし、図示しないアクチュエーターで解放可能にすることで、一般的に自動変速機等が有する油圧ポンプを用いなくても成り立つ。したがって、この面でも油圧ポンプの駆動に伴うエネルギーロスを低く抑えることが可能になる。
次に、本発明の実施例2の自動車用駆動装置につき説明する。
図9は、本発明の実施例2に係る自動車用駆動装置の主要部のスケルトン図である。
ここでは、実施例1と異なる部分を中心に説明し、実施例1と実質的に同じ部分については同じ符号を付し、それらの説明を省略する。
実施例2における実施例1との違いは、入力軸10と第2M/G48とを連結可能な第3クラッチ56を設けていることである。
続いて実施例2の作動を説明する。
図10に実施例2の作動表を示す。表の描き方は図3と同様であり、第3クラッチ56をC3としている。また、図中の※印は、後述するように運転状況に応じて作用が変化することを表している。
EV走行とEB走行については実施例1と同様であるので、それらの説明を省略し、以下、実施例1との主な相違点を説明する。
まず、エンジン1の始動は、実施例1と同様の方法も可能であるが、第3クラッチ56を締結して第2M/G48によってエンジン1を回転させて始動することができる。この場合、出力軸12のトルクに変動を与えないで始動することができる。
次に、HV走行のH−1モードは基本的に実施例1と同様であるが、H−2モードへの切り替えが若干異なる。すなわち、実施例1でH−1モードにおいて図7に示したように、車速が上がって第1M/G42の回転速度がゼロになったときに、エンジン1での駆動を続けながら第2M/G48の回転速度を上げるまでは同じである。
そして、第2M/G48の回転速度が入力軸10と同じになったところで、第3クラッチ56を締結して入力軸10と第2M/G48とを連結することでH−2モードに切り替わる。その状態における速度線を、図11に示した共通速度線図に、第1遊星歯車組20は実線で、第2遊星歯車組30は破線で、それぞれ示す。
H−2モードでは、第3クラッチ56が締結されるのでエンジン1は入力軸10を介して第2M/G48を直接駆動して発電し、その電力を第1M/G42に供給して第1サンギヤ22に正回転方向のトルクを与え、第1キャリア28を正回転方向に駆動する。一方、その反力として第1リングギヤ24に逆回転方向のトルクが作用し、このトルクの分だけ入力軸10が第2M/G48を駆動するトルクが減ることになる。
その減少トルクは第1M/G42の駆動トルクをT1とすると、T1/α1である。
図11の状態から第1M/G42の回転速度が上昇するとともに出力軸12の回転速度も上がり、やがて両者が入力軸10の回転速度と同じになると、第1遊星歯車組20と第2遊星歯車組30の全体が実質的に一体になって、両者の速度線は一直線になる。速度線は回転速度1の位置で水平になるだけであるので、図示は省略する。
この状態で第1クラッチ40と第3クラッチ56を締結すると第1遊星歯車組20と第2遊星歯車組30の全体が機械的に一体になり、H−3モードに切り替わる。
H−3モードは入力軸10と出力軸12とが直結するので、バッテリーに余裕がある場合に第1M/G42と第2M/G48の両者で駆動して、エンジン1のトルクと合わせて大きな駆動力を得ることができる。
むろん、片方のM/Gでの駆動も可能であるし、両者に発電させてバッテリーの充電にあてることもできる。
H−3モードにおける第1クラッチ40、第2クラッチ41、第3クラッチ56の3個のクラッチが締結された状態から、第3クラッチ56の締結を解除するとH−4モードに移行し、第2クラッチ41の締結を解除するとH−5モードに移行する。
H−4モードは、作動表から分かるように実施例1におけるH−2モードと同様であるので、説明を省略する。
H−5モードは、第3クラッチ56が締結されているのでエンジン1は入力軸10を介して第2M/G48を直接駆動して発電し、その電力を第1M/G42に供給して第1サンギヤ22に正回転方向のトルクを与える。一方、その反力として第1リングギヤ24に逆回転方向のトルクが作用し、このトルクの分だけ入力軸10が第2M/G48を駆動するトルクが減る。
その減少トルクは第1M/G42の駆動トルクをT1とすると、T1・α2/α1(1+α2)である。
H−5モードにおいて通常は第1M/G42の回転速度が1より高くなるので、出力軸12の回転速度が入力軸10のそれより高い、いわゆるオーバードライブになる。
ここで、H−4モードと速度線の比較をすると図12のようになる。
すなわち、H−4モードは第2M/G48の回転速度がゼロになった場合に、実施例1のH−2モードと同様に破線で示すようになる。一方、出力軸12の回転速度をそれに合わせてH−5モードの速度線を描くと実線のようになる。この図で分かるように、第1M/G42(M1)の回転速度は、H−5モードの方が低い。すなわち、第1M/G42の高速回転に伴うロスがその分低くなることを意味する。
H−4モードとH−5モードはオーバードライブの駆動に適するが、出力軸12の回転速度が入力軸10のそれより低い駆動も可能である。
また、H−2モード、H−4モード、H−5において、入力軸10が第2M/G48を駆動するトルクが、第1M/G42の駆動トルクの反力で減るということは、実施例1で説明したように、それだけ電気的な動力伝達比率が低くなって機械的な伝達割合が高くなることを意味する。
H−2モード乃至H−5モードは、上記説明の順序にこだわることなく、自動車の走行条件に応じて適切に選択して走行することで効率的な走行を行うことができる。
次に実施例1と違ってエンジン1の駆動で後進が可能なH−Rモードがあり、これの締結関係はH−5モードと同じである。すなわち、エンジン1が第2M/G48を駆動して発電させ、その電力を第1M/G42に供給して第1サンギヤ22に逆回転方向のトルクを与え、第1サンギヤ22を逆回転方向に駆動する。つまり、H−5モードとの違いは第1M/G42の回転方向と回転速度である。第1遊星歯車組20、第2遊星歯車組30の速度線は図13の実線に示すようになる。図13は第1M/G42の回転速度を−1として描いてあるが、ある程度自由に変えることができる。
H−Rモードは、EV走行におけるE−Rモードに比べて大きな駆動力は期待できないが、バッテリーの充電量が少ない状態での持続的な後進走行ができる。
このように、実施例2は実施例1に比べてHV走行における駆動モードの種類が多くなり、特にH−5モードは高速走行に適していると言える。
また、バッテリーの充電量が少ない状態でのHV走行の後進ができるので、プラグインハイブリッド自動車のみならず、一般的なハイブリッド自動車への適用も可能である。
次に、本発明の実施例3の自動車用駆動装置につき説明する。
図14は、本発明の実施例3に係る自動車用駆動装置の主要部のスケルトン図である。
ここでは、実施例1、実施例2と異なる部分を中心に説明し、それらと実質的に同じ部分については同じ符号を付し、その説明を省略する。
実施例3における実施例1との違いは、実施例2と同様に第3クラッチ56がある点と、第2M/G48とワンウエイクラッチ44の配置が異なる点と、出力部分が出力歯車12aになっている点と、固定装置46aが固定する相手が第1リングギヤ24と連結されたドッグ歯24aになっている点である。
出力歯車12aは図示しない相手歯車を介して車輪を駆動する。これにより、実施例3に係る自動車用駆動装置は、いわゆる横置きエンジン車に適用することができるようになる。
また、固定装置46aによりドッグ歯24aを固定することと第1クラッチ40の締結を組み合わせれば、第2キャリア38も固定できる。
第1遊星歯車組20と第2遊星歯車組30の各回転メンバーの連結関係は基本的に実施例2と同じである。
したがって、次に述べるHV走行の後進以外の作動は実施例2と同様であるので説明を省略する。
HV走行のH−Rモードは、実施例1および実施例2で説明したのと同様の駆動も可能であるが、次のようにすることができる。すなわち、固定装置46aでドッグ歯24aを固定し、第3クラッチ56を締結する。そして、エンジン1が第2M/G48を駆動して発電し、その電力を第1M/G42に供給して逆転方向に駆動する。第1リングギヤ24が固定されているので、第1キャリア28は逆転方向に減速駆動される。
出力歯車12aのトルクは、−T1(1+α1)/α1である。これにより、実施例2におけるHV走行の後進より大きな駆動トルクを得ることができる。
実施例3は実施例2と同様に、実施例1に比べてHV走行における駆動モードの種類が多くなり、特にH−5モードは高速走行に適していると言える。
また、バッテリーの充電量が少ない状態でのHV走行の後進ができるので、プラグインハイブリッド自動車のみならず、一般的なハイブリッド自動車への適用も可能である。
次に、本発明の実施例4の自動車用駆動装置につき説明する。
図15は、本発明の実施例4に係る自動車用駆動装置の主要部のスケルトン図である。
ここでは、実施例1乃至実施例3と異なる部分を中心に説明し、それらと実質的に同じ部分については同じ符号を付し、その説明を省略する。
実施例4における実施例1などとの違いは、出力軸12が入力軸10と平行に設けられており、第2遊星歯車組30と第2M/G48が入力軸10の同軸心上に、第1遊星歯車組20と第1M/G42が出力軸12の同軸心上に、それぞれ配置されている点である。また、第1M/G42と第2M/G48を共通のM/Gケース50に収めてある。
そして、第1遊星歯車組20と第2遊星歯車組30が離れて配置されているため、第1連結歯車対52と第2連結歯車対54が両者の間に介在して動力伝達を行うようにしている。
すなわち、入力軸10と第1リングギヤ24とは第1連結歯車対52を介して、第1キャリア28と第2リングギヤ34とは第2連結歯車対54を介して、それぞれ連結されているか、または連結可能である。
また、実施例2、実施例3と同様に第3クラッチ56があることと、実施例3と同様に固定装置46aが固定する相手が、第1リングギヤ24と連結された第1連結歯車対52に形成したドッグ歯24aになっていることである。
第1遊星歯車組20と第2遊星歯車組30の各回転メンバーの連結関係は基本的に実施例2、実施例3と同じである。
さらに、出力軸12は出力歯車12aが一体であるとともに、エンジン1側の端に油圧ポンプ2が設けられ、出力軸12がこれを駆動するようになっている。油圧ポンプ2はエンジン1の図示しない潤滑回路と吸入管2aと吐出管2bとで結ばれており、後述するようにエンジン1が回転していないEV走行において、予備的にエンジン1を潤滑する機能を有している。
実施例4の作動であるが、油圧ポンプ2を除いて作動上の実施例3との違いはないので、駆動関係の説明を省略する。
なお、出力軸12の駆動トルク等は、第1連結歯車対52と第2連結歯車対54が存在する分、実施例1乃至実施例3での説明と異なるが、基本的な相違はない。
ここで、油圧ポンプ2の役割について説明する。
実施例1の作動の部分で説明したように、EV走行においてはエンジン1が回転しておらず、HV走行になって初めて始動されて回転する。自動車の運転条件にもよるが、EV走行を長時間行った後にHV走行に切り替わり、急に高負荷の運転を余儀なくされる場合が考えられ、エンジン1にとって潤滑面で厳しい状態になる可能性がある。
そこで、EV走行をしている間に出力軸12で駆動する油圧ポンプ2でエンジン1の潤滑回路にエンジンオイルを循環させて、予備的に潤滑を行っておくことができるようになっている。
図示は省略したが、吐出管2b側に電磁バルブなどを設けて、時々油圧を発生させることも可能である。むろん、エンジン1自体にも図示しない潤滑ポンプを有しているので、油圧ポンプ2はあくまでも補助的な潤滑を行うものである。
また、油圧ポンプ2の駆動は出力軸12に限ることなく、他の回転メンバーで駆動してもよいし、専用の小型モーターで駆動してもよい。大事なことはEV走行をしている間にエンジン1を予備的に潤滑できるようにすることである。
また、実施例4は汎用型のM/Gを用いることができるのも特徴である。
すなわち、第1M/G42と第2M/G48は中空軸等を用いない、最も一般的な形状のM/Gであるので製造コストを安くすることができる。
さらに、第1M/G42と第2M/G48とは1個のM/Gケース50に収められているので、これらを冷却する水の循環路の形成を考慮すると、1個で済むので製造コストを安くすることができる。
実施例4は、実施例1などに比べて駆動装置の軸方向長さを短くすることができ、いわゆるエンジン横置きのフロント・エンジン・フロント・ドライブ車やリア・エンジン・リア・ドライブ車等への搭載性に優れる。
実施例4も、多様な駆動モードを駆使して、より効率の高い走行ができるのが特徴である。
また、エンジン1によるHV走行において後進も可能であるので、いわゆるプラグインハイブリッド車のみでなく、一般的なハイブリッド車への適用も可能である。
以上説明したように、本発明の各実施例に係る自動車用駆動装置は、第1M/G42と第2M/G48の合計容量が自動車の走行に必要とするパワーを満足すればよい。したがって、従来例のような大きな容量のM/Gを用いなくても十分な駆動力を得ることができる。
また、エンジン1で駆動するHV走行においても、多様な駆動モードを駆使して、燃料消費の少ない走行が可能である。
なお、各実施例の説明において摩擦要素として説明した第1クラッチ40、第2クラッチ41、第3クラッチ56は、ドッグクラッチや円錐クラッチに置き換えても上記各作用は成立する。
また、上記した各実施例は、いずれもシングルピニオン型と呼ばれる遊星歯車組を用いたが、これをダブルピニオン型に置き換えることも可能である。図示は省略したが、ダブルピニオン型の場合は、共通速度線図において第1メンバー乃至第4メンバーを配置する際に、シングルピニオン型に対してキャリアとリングギヤを入れ替えればよい。
さらに、実施例1および実施例2も、実施例4で示したように入力軸10と出力軸12が平行に配置されたレイアウトに対応可能であることは言うまでもない。
本発明の自動車用駆動装置は、当業者の一般的な知識に基づいて、自動車の走行条件に応じて最適な駆動モードを選択し、M/Gの最も効率の高いゾーンでの駆動を行うことや、GPS(全地球測位システム)、カーナビゲーションシステムなどの情報を基に、長い坂道の走行時や高速道路の入り口において、さらには気温が低くて自動車の暖房熱源が足りない場合などに、自動的にHV走行に切り替えるなどの制御面での工夫と合わせた態様で実施することができる。
本発明の自動車用駆動装置は、特に走行コストを重視し、環境負荷の低減を要求される小型乗用車などに適用することができるが、それらに限らず内燃機関および電気モーター・ジェネレーターを利用したさまざまな車両に適用することができる。
1 エンジン
2 油圧ポンプ
10 入力軸
12 出力軸
20 第1遊星歯車組
22 第1サンギヤ
24 第1リングギヤ
26 第1ピニオン
28 第1キャリア
30 第2遊星歯車組
32 第2サンギヤ
34 第2リングギヤ
36 第2ピニオン
38 第2キャリア
40 第1クラッチ
41 第2クラッチ
42 第1M/G
44 ワンウエイクラッチ
46 ケース
48 第2M/G
50 M/Gケース
52 第1連結歯車対
54 第2連結歯車対
56 第3クラッチ

Claims (7)

  1. エンジンからの動力を受け入れ可能な入力軸と、
    出力軸と、
    第1サンギヤ、第1リングギヤ、第1キャリアの、3つの回転要素で構成する第1遊星歯車組と、
    第2サンギヤ、第2リングギヤ、第2キャリアの、3つの回転要素で構成する第2遊星歯車組と、
    第1モーター・ジェネレーターと、
    第2モーター・ジェネレーターと、
    を備え、
    前記第1遊星歯車組の前記回転要素のうちの1つと、前記第2遊星歯車組の前記回転要素のうちの1つとを第1クラッチにより連結可能にした連結可能メンバーと、
    前記第1遊星歯車組の前記連結可能メンバー以外の1つの前記回転要素と、前記第2遊星歯車組の前記連結可能メンバー以外の1つの前記回転要素とを互いに常時連結した一体メンバーと、
    前記第1遊星歯車組と前記第2遊星歯車組の前記連結メンバーおよび前記一体メンバー以外の前記回転要素からなる2つの独立メンバーと、
    から4つのメンバーを構成し、
    これら4つのメンバーの回転速度を直線で表すことのできる共通速度線図上において横軸の一端から他端に向かって順番に、第1メンバー、第2メンバー、第3メンバー、第4メンバーを配置し、
    前記第1メンバーを前記独立メンバーの一方を構成する前記第1サンギヤとし、前記第2メンバーを前記一体メンバーとし、前記第3メンバーを前記連結可能メンバーとし、前記第4メンバーを前記独立メンバーの他方を構成する前記第2サンギヤとして、
    前記第1メンバーは前記第1モーター・ジェネレーターと連結し、前記第2メンバーは前記出力軸と連結し、前記第3メンバーはこれを構成する前記連結可能メンバーのうちの前記第1遊星歯車組の前記回転要素を前記入力軸と第2クラッチにより連結可能とするとともに、前記連結可能メンバーのうちの前記第2遊星歯車組の前記回転要素を静止部に固定可能とし、前記第4メンバーは前記第2モーター・ジェネレーターと連結したことを特徴とする自動車用駆動装置。
  2. 前記第3メンバーを構成する前記第2遊星歯車組の前記回転要素を、ワンウエイクラッチを介して静止部に固定可能とするとともに、前記入力軸または前記第3メンバーを構成する前記第1遊星歯車組の前記回転要素を、静止部に固定可能としたことを特徴とする請求項1に記載の自動車用駆動装置。
  3. 前記入力軸または前記第3メンバーを構成する前記第1遊星歯車組の前記回転要素はドッグ歯を有し、該ドッグ歯を機械的手段によって静止部に固定可能としたことを特徴とする請求項2に記載の自動車用駆動装置。
  4. 前記機械的手段は、自動車の走行速度が一定値以下の場合と、ブレーキペダルの踏み込みを検知した場合に、自動的に固定できるようにしたことを特徴とする請求項3に記載の自動車用駆動装置。
  5. 前記入力軸と前記第2モーター・ジェネレーターとを第3クラッチにより連結可能としたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の自動車用駆動装置。
  6. 前記連結メンバーは、前記第1リングギヤと前記第2キャリアであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の自動車用駆動装置。
  7. 前記出力軸を前記入力軸と平行に配置して、前記第1遊星歯車組と前記第2遊星歯車組の一方を前記入力軸と同心上に、前記第1遊星歯車組と前記第2遊星歯車組の他方を前記出力軸と同心上に配置したことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の自動車用駆動装置。
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