JP2012249806A - 治療用処置装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】発熱チップの温度が局部的に上昇しても故障を防止する。
【解決手段】発熱する部材である発熱チップ100には、配線パターン1131と高抵抗パターン1132とを有する抵抗パターン113が形成されている。複数の高抵抗パターン1132は、互いに平行に形成されており、その各々は、並列接続するように配線パターン1131に接続されている。高抵抗パターン1132は、全体として高抵抗パターン群1133を形成している。高抵抗パターン1132は、電気抵抗が高く、電流が流れたとき主に発熱する配線である。例えば空気層362の存在により、局部的な温度上昇が起こり、一部の高抵抗パターン1132が断線しても、電流は矢印で示すように他の高抵抗パターン1132を流れる。その結果、一部の高抵抗パターン1132が断線しても発熱チップ100全体は故障せず機能する。
【選択図】図10

Description

本発明は、治療用処置装置に関する。
一般に、高周波エネルギや熱エネルギを用いて生体組織を治療する治療用処置装置が知られている。例えば特許文献1には、次のような治療用処置装置が開示されている。すなわち、この治療用処置装置は、処置対象である生体組織を把持する開閉可能な保持部を有している。この保持部の生体組織と接する部分には、高周波の電圧を印加するための高周波電極と、その高周波電極を加熱するための発熱チップとが配設されている。また、保持部には、カッタが備えられている。このような治療用処置装置の使用においては、まず、生体組織を保持部で把持し、高周波の電圧を印加する。更に、保持部材で生体組織を加熱することで、生体組織を吻合する。また、保持部に備えられたカッタにより、生体組織端部を接合した状態で切除することも可能である。
特開2009−247893号公報
特許文献1に開示されているような治療用処置装置においては、小型の発熱チップが高周波電極に配置されている。この発熱チップで発生した熱を効率よく高周波電極に伝えるために、また、発熱チップを電気的に絶縁するために、発熱チップは、熱伝導率が低く絶縁性を有する封止剤による封止膜で覆われている。この封止膜の形成時に局部的な空気層が混入することがある。空気層の部分は他の部分と熱伝導率が異なる。このため空気層が混入すると、熱流に不規則性が生じ、特に発熱チップにおいて局部的に高温となる場所が発生する可能性がある。このような局部的な温度上昇により、発熱チップに形成された電熱線が断線することがある。その結果、当該治療用処置装置による加熱処置が行えなくなる可能性がある。
そこで本発明は、封止膜に空気層が生じて発熱チップの温度が局部的に上昇しても、加熱処置を行える治療用処置装置を提供することを目的とする。
前記目的を果たすため、本発明の治療用処置装置の一態様は、生体組織を目標温度で加熱して治療するための治療用処置装置であって、表裏をなす第1の主面と第2の主面とのうち該第1の主面において前記生体組織に接触して該生体組織に熱を伝える伝熱部と、前記第2の主面と接合し、高抵抗パターン群を形成する複数の高抵抗パターンと該高抵抗パターンを並列に接続させる配線パターンとから成る抵抗パターンを有し、該配線パターンを介して複数の該高抵抗パターンに電力を投入することで前記伝熱部を加熱する発熱チップと、を具備することを特徴とする。
本発明によれば、高抵抗パターンが並列に接続されているので、封止膜に空気層が生じて発熱チップの温度が局部的に上昇し高抵抗パターンの一部が断線しても加熱処置を行える治療用処置装置を提供できる。
本発明の各実施形態に係る治療用処置システムの構成例を示す概略図。 各実施形態に係るエネルギ処置具のシャフト及び保持部の構成例を示す断面の概略図であり、(A)は保持部が閉じた状態を示す図、(B)は保持部が開いた状態を示す図。 各実施形態に係る保持部の第1の保持部材の構成例を示す概略図であり、(A)は平面図、(B)は(A)に示す3B−3B線に沿う縦断面図、(C)は(A)に示す3C−3C線に沿う横断面図。 各実施形態に係る発熱チップの構成例の概略を示す上面図。 各実施形態に係る発熱チップの構成例の概略を示す図であって、図4Aに示す4B−4B線に沿う断面図。 各実施形態に係る中継チップの構成例の概略を示す上面図。 各実施形態に係る中継チップの構成例の概略を示す図であって、図5Aに示す5B−5B線に沿う断面図。 各実施形態に係る接続チップの構成例の概略を示す上面図。 各実施形態に係る第1の高周波電極、発熱チップ、中継チップ及び接続チップ、並びにそれらを接続する配線等の構成例を示す図。 発熱チップ周辺の構成例を示す断面図。 高抵抗パターン周辺の熱流を説明するための図。 高抵抗パターンの一部が断線した場合の様子を説明するための図。 第2の実施形態に係る動作の一例を示すフローチャート。 第2の実施形態において一部の発熱チップに異常が生じた場合の動作を説明するための図。
[第1の実施形態]
まず、本発明の第1の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態に係る治療用処置装置は、生体組織の治療に用いるための、生体組織に高周波エネルギと熱エネルギとを作用させる装置である。図1に示すように、治療用処置装置210は、エネルギ処置具212と、エネルギ源214と、フットスイッチ216とを備えている。
エネルギ処置具212は、例えば腹壁を貫通させて処置を行うためのリニアタイプの外科治療用処置具である。エネルギ処置具212は、ハンドル222と、ハンドル222に取り付けられたシャフト224と、シャフト224の先端に設けられた保持部226とを有する。保持部226は、開閉可能であり、処置対象の生体組織を保持して、凝固、切開等の処置を行う処置部である。以降説明のため、保持部226側を先端側と称し、ハンドル222側を基端側と称する。ハンドル222は、保持部226を操作するための複数の操作ノブ232を備えている。なお、ここで示したエネルギ処置具212の形状は、もちろん一例であり、同様の機能を有していれば、他の形状でもよい。例えば、鉗子のような形状をしていてもよいし、シャフトが湾曲していてもよい。
ハンドル222は、ケーブル228を介してエネルギ源214に接続されている。エネルギ源214には、フットスイッチ216が接続されている。足で操作するフットスイッチ216は、手で操作するスイッチやその他のスイッチに置き換えてもよい。フットスイッチ216のペダルを術者が操作することにより、エネルギ源214からエネルギ処置具212へのエネルギの供給のON/OFFが切り換えられる。
保持部226及びシャフト224の構造の一例を図2に示す。図2(A)は保持部226が閉じた状態を示し、図2(B)は保持部226が開いた状態を示す。シャフト224は、筒体242とシース244とを備えている。筒体242は、その基端部でハンドル222に固定されている。シース244は、筒体242の外周に筒体242の軸方向に沿って摺動可能に配設されている。
筒体242の先端部には、保持部226が配設されている。保持部226は、第1の保持部材260と、第2の保持部材270とを備えている。第1の保持部材260の基部は、シャフト224の筒体242の先端部に固定されている。一方、第2の保持部材270の基部は、シャフト224の筒体242の先端部に、支持ピン256によって回動可能に支持されている。したがって、第2の保持部材270は、支持ピン256の軸回りに回動し、第1の保持部材260に対して開いたり閉じたりする。
保持部226が閉じた状態では、第1の保持部材260の基部と、第2の保持部材270の基部とを合わせた断面形状は、円形となる。第2の保持部材270は、第1の保持部材260に対して開くように、例えば板バネなどの弾性部材258により付勢されている。シース244を、筒体242に対して先端側にスライドさせ、シース244によって第1の保持部材260の基部及び第2の保持部材270の基部を覆うと、図2(A)に示すように、弾性部材258の付勢力に抗して、第1の保持部材260及び第2の保持部材270は閉じる。一方、シース244を、筒体242の基端側にスライドさせると、図2(B)に示すように、弾性部材258の付勢力によって第1の保持部材260に対して第2の保持部材270は開く。
筒体242には、後述する第1の高周波電極266又は第2の高周波電極276に接続される高周波電極用通電ライン268と、発熱部材である発熱チップ100に接続される発熱チップ用通電ライン281,282とが挿通されている。
筒体242の内部には、その基端側で操作ノブ232の一つと接続した駆動ロッド252が、筒体242の軸方向に沿って移動可能に配設されている。駆動ロッド252の先端側には、先端側に刃が形成された薄板状のカッタ254が配設されている。操作ノブ232を操作すると、駆動ロッド252を介してカッタ254は、筒体242の軸方向に沿って移動させられる。カッタ254が先端側に移動するとき、カッタ254は、保持部226に形成された後述するカッタ案内溝264,274内に収まる。
第1の保持部材260は、第1の保持部材本体262を有し、第2の保持部材270は、第2の保持部材本体272を有する。図3に示すように、第1の保持部材本体262には、前記したカッタ254を案内するためのカッタ案内溝264が形成されている。第1の保持部材本体262には、凹部が設けられ、そこには例えば銅の薄板で形成された第1の高周波電極266が配設されている。第1の高周波電極266は、カッタ案内溝264を有するので、その平面形状は、図3(A)に示すように、略U字形状となっている。
また、後に詳述するように、第1の高周波電極266の第1の保持部材本体262側の面には、複数の発熱チップ100が接合されている。この発熱チップ100と、発熱チップ100への配線等と、第1の高周波電極266とを覆うように、例えばシリコーンからなる封止剤が塗布されて封止膜360が形成されている。
第1の高周波電極266には、図2に示すように、高周波電極用通電ライン268が電気的に接続している。第1の高周波電極266は、この高周波電極用通電ライン268を介して、ケーブル228に接続されている。
第2の保持部材270は、第1の保持部材260と対称をなす形状をしている。すなわち、第2の保持部材270には、カッタ案内溝264と対向する位置に、カッタ案内溝274が形成されている。また、第2の保持部材本体272には、第1の高周波電極266と対向する位置に、第2の高周波電極276が配設されている。第2の高周波電極276は、高周波電極用通電ライン268を介して、ケーブル228に接続されている。
閉じた状態の保持部226が生体組織を把持する際には、把持された生体組織は、第1の高周波電極266及び第2の高周波電極276と接触する。
第1の保持部材本体262及び第2の保持部材本体272は更に、第1の高周波電極266及び第2の高周波電極276に接した生体組織を焼灼するために、発熱のための機構を有する。第1の保持部材本体262に設けられた発熱機構と、第2の保持部材本体272に設けられた発熱機構とは、同様の形態を持つ。ここでは第1の保持部材本体262に形成された発熱機構を例に挙げて説明する。
まず、この発熱の機構を構成する、発熱チップ100、中継チップ320、及び接続チップ330について説明する。発熱チップ100について、後述する抵抗パターン113が形成されている面を表す平面図を図4Aに、発熱チップ100の図4Aに示す4B−4B線を通る断面を表す断面図を図4Bに示す。発熱チップ100は、図4A及び図4Bに示すように、アルミナ製の基板111を用いて形成されている。基板111の主面の一方である表面には、発熱用のPt薄膜である抵抗パターン113が形成されている。また、基板111の表面の長方形の2つの短辺近傍には、それぞれ矩形の電極115が形成されている。
図4Aに示すように、抵抗パターン113は、配線パターン1131と高抵抗パターン1132とを有する。配線パターン1131は、基板111の表面の長方形の2つの長辺近傍に、それぞれこの辺と平行に形成されている。2つの配線パターン1131の一端は、それぞれ異なる電極115と接続している。2本の配線パターン1131の間には、複数の高抵抗パターン1132が互いに平行に形成されている。高抵抗パターン1132の各々は、それらが並列接続するように配線パターン1131に接続している。このようにして並列の高抵抗パターン1132は、全体として高抵抗パターン群1133を形成している。高抵抗パターン1132は、電気抵抗が高く、電流が流れたとき主に発熱する配線である。一方、配線パターン1131は、電気抵抗が低く、各高抵抗パターン1132と電極115とを接続するための配線である。
なお、高抵抗パターン1132の本数は、図4Aでは4本で示されているが、2本以上であれば何本でもよい。また、ここに示した抵抗パターン113と電極115との配置は、一例であり、その他の配置を採用してもよい。例えば、高抵抗パターン1132は、長方形をした基板111の長辺と平行な向きに形成されてもよい。
電極115が形成されている部分を除き、抵抗パターン113上を含む基板111の表面には、例えばポリイミドで形成された絶縁膜117が形成されている。
基板111の裏面全面には、接合用金属層119が形成されている。電極115と接合用金属層119とは、例えばTiとCuとNiとAuとからなる多層の膜である。これら電極115と接合用金属層119とは、ワイヤーボンディングやハンダ付けに対して安定した強度を有している。接合用金属層119は、例えば第1の高周波電極266に発熱チップ100をハンダ付けする際に、接合が安定するように設けられている。
中継チップ320について、図5Aと図5Bとを参照して説明する。中継チップ320は、発熱チップ100と同様に、アルミナ製の基板323を用いて形成されている。基板323の表面には、電極325が形成されている。また、基板323の裏面全面には、接合用金属層327が形成されている。発熱チップ100の場合と同様に、電極325と接合用金属層327とは、例えばTiとCuとNiとAuとからなる多層の膜である。
接続チップ330も、中継チップ320と同様の構成を有している。図6に示すように、接続チップ330は、アルミナ製の基板333と、基板333の表面に形成された電極339と、基板333の裏面全面に形成されている接合用金属層とを有している。
発熱チップ100、中継チップ320、及び接続チップ330は、第1の高周波電極266及び第2の高周波電極276の生体組織と接する面(第1の主面)とは反対側の面(第2の主面)に配設されている。ここで、発熱チップ100、中継チップ320、及び接続チップ330はそれぞれ、接合用金属層の表面と第1の高周波電極266又は第2の高周波電極276の第2の主面とをハンダ付けすることにより固定されている。
第1の高周波電極266の場合を例に挙げて、図7を参照して説明する。第1の高周波電極266の基端部には、カッタ案内溝264を挟んで対称な位置に接続チップ330が配置されている。
第1の高周波電極266には、6個の発熱チップ100が、図7に示すように配置されている。すなわち、発熱チップ100は、基端側から先端側に向けてカッタ案内溝264を挟んで対称に2列に3個ずつ並べて配置されている。ここで、発熱チップ100は、それぞれ2つの電極115のうち一方を先端側に他方を基端側に向けて配置されている。第1の高周波電極266の先端部分には、中継チップ320が配置されている。
2つの接続チップ330には、それぞれ発熱チップ用通電ライン281,282がハンダ付けされている。発熱チップ用通電ライン281と発熱チップ用通電ライン282とは対をなしており、ケーブル228を介してエネルギ源214に接続されている。
接続チップ330の電極339の先端側と、それらと隣接する発熱チップ100の電極115とは、ワイヤーボンディングによって形成されたワイヤー351により接続されている。同様に、各接続チップの隣接する電極115同士は、それぞれワイヤーボンディングによって形成されたワイヤー351により接続されている。また、最も先端側に配置された2つの発熱チップ100の先端側の電極115は、それぞれ中継チップ320の電極325に、ワイヤーボンディングによって形成されたワイヤー351により接続されている。中継チップ320を介して接続するのは、第1の高周波電極266の長手方向に並ぶ発熱チップ100の間隔よりも、第1の高周波電極266の先端部において第1の高周波電極266の長手方向と直交する方向に配置された2つの発熱チップ100の間隔が大きく、ワイヤーボンディングによる接続が困難だからである。以上によって、発熱チップ用通電ライン281、6つの発熱チップ100の抵抗パターン113、及び発熱チップ用通電ライン282は、直列に接続される。
第1の高周波電極266上には、発熱チップ100、中継チップ320、並びに接続チップ330、及びそれらを接続するワイヤー351を覆うように、例えばシリコーンからなる封止剤が塗布されて、封止膜360が図3に示すように形成されている。
エネルギ源214から出力された電流は、6つの発熱チップ100のそれぞれの抵抗パターン113を流れる。その結果、各抵抗パターン113の特に高抵抗パターン1132は発熱する。高抵抗パターン1132が発熱すると、第1の高周波電極266にその熱が伝達される。この熱により、第1の高周波電極266に接した生体組織が焼灼される。
発熱チップ100で生じた熱を効率よく第1の高周波電極266へ伝えるために、封止膜360、及びその周囲の第1の保持部材本体262は、低い熱伝導率を有するように構成されることが好ましい。すなわち、封止膜360の熱伝導率は、第1の高周波電極266や基板111の熱伝導率よりも低いことが好ましい。封止膜360及び第1の保持部材本体262の熱伝導率が低いことで、損失の少ない熱伝導が実現される。
このように、例えば第1の高周波電極266又は第2の高周波電極276は、生体組織に熱を伝える伝熱部として機能し、例えば発熱チップ100は、伝熱部の第2の主面と接合し、当該伝熱部を加熱する発熱チップとして機能する。ここで、発熱チップは、高抵抗パターン群1133を形成する複数の高抵抗パターン1132と、当該高抵抗パターン1132を並列に接続させる配線パターン1131とから成る抵抗パターン113を有する。
次に本実施形態に係る治療用処置装置210の動作を説明する。術者は、予めエネルギ源214の入力部を操作して、治療用処置装置210の出力条件、例えば、高周波エネルギ出力の設定電力、熱エネルギ出力の目標温度、加熱時間等を設定しておく。それぞれの値を個別に設定するように構成してもよいし、術式に応じた設定値のセットを選択するように構成してもよい。
エネルギ処置具212の保持部226及びシャフト224は、例えば、腹壁を通して腹腔内に挿入される。術者は、操作ノブ232を操作して、保持部226を開閉させ、第1の保持部材260と第2の保持部材270とによって、処置対象の生体組織を把持する。このとき、第1の保持部材260に設けられた第1の高周波電極266と第2の保持部材270に設けられた第2の高周波電極276との両方の第1の主面に、処置対象の生体組織が接触している。
術者は、保持部226によって処置対象の生体組織を把持したら、フットスイッチ216を操作する。フットスイッチ216がONに切り換えられると、エネルギ源214から、ケーブル228を介して第1の高周波電極266及び第2の高周波電極276に、予め設定した設定電力の高周波電力が供給される。供給される電力は、例えば、20W〜80W程度である。その結果、生体組織は発熱し、組織が焼灼される。この焼灼により、当該組織は変性し凝固する。
次にエネルギ源214は、高周波エネルギの出力を停止した後、第1の高周波電極266の温度が目標温度になるように発熱チップ100に電力を供給する。ここで、目標温度は、例えば100℃〜300℃である。このとき電流は、エネルギ源214から、ケーブル228、発熱チップ用通電ライン281,282、接続チップ330、及びワイヤー351を介して、各発熱チップ100の抵抗パターン113を流れる。
前記のとおり、各発熱チップ100において電流は、一方の電極115から一方の配線パターン1131を介して高抵抗パターン群1133を構成する並列接続した各高抵抗パターン1132を流れ、他方の配線パターン1131を介して他方の電極115に達する。この電流によって、主に高抵抗パターン1132において熱が発生する。高抵抗パターン1132で発生した熱は、基板111及び接合用金属層119を介して、第1の高周波電極266に伝わる。その結果、第1の高周波電極266の温度は上昇する。同様に、第2の高周波電極276の温度も、第2の高周波電極276に配置された各発熱チップ100を流れる電流による発熱で上昇する。
その結果、第1の高周波電極266又は第2の高周波電極276の第1の主面と接触している生体組織は更に焼灼され、更に凝固する。加熱によって生体組織が凝固したら、熱エネルギの出力を停止する。最後に術者は、操作ノブ232を操作してカッタ254を移動させ、生体組織を切断する。以上によって生体組織の処置が完了する。
ここで、本実施形態の発熱チップ100が、複数の高抵抗パターン1132と配線パターン1131とを有することの効果を説明する。第1の高周波電極266、発熱チップ100、及び封止膜360部分の拡大断面図を図8に示す。第1の高周波電極266及び発熱チップ100等を覆う封止膜360には、製造過程で生じざるを得ないボイドなどに起因した局部的な空気層362が混入することがある。この空気層362の熱伝導率は、封止膜360のその他の部分の熱伝導率よりも非常に低い。
空気層362が発熱チップ100の絶縁膜117に接して存在する場合、熱流を模式的に表すと図9に示すようになる。図9において矢印は、封止膜360方向への熱流を模式的に示している。図9において左に示したように、発熱チップ100の高抵抗パターン1132−1で発生した熱は、絶縁膜117を介して、封止膜360へと流れる。これに対して、図9において右に示したように、高抵抗パターン1132−2で発生した熱は、空気層362に遮られて、絶縁膜117から封止膜360へ流れにくくなっている。そのため、空気層362がある高抵抗パターン1132−2の近傍(例えば図9において斜線を付した部分)は、他の場所に比べて局部的に高温となる。その結果、高温となる部分で高抵抗パターン1132−2が焼切れる可能性がある。
仮に、発熱チップ100が有する高抵抗パターン1132が1本であるか、又は複数の高抵抗パターン1132が直列に接続されている場合、上記のようにして高抵抗パターン1132の一部が焼切れると、発熱チップ100は故障して機能しなくなる。
これに対して本実施形態では、仮に複数ある高抵抗パターン1132のうち一部の高抵抗パターン1132が焼切れたとしても、他の高抵抗パターン1132は切れずに残る。その様子を図10に模式的に示す。なお、図10は高抵抗パターン1132が10本並列に接続されている発熱チップ100の例を示している。この図に示すように、空気層362が位置する部分の高抵抗パターン1132が断線しても、矢印で示すように電流は断線していない高抵抗パターン1132を流れる。その結果、電流が流れる高抵抗パターン1132で熱が発生する。このように、たとえ空気層362に起因する局部的な温度上昇により一部の高抵抗パターン1132が断線したとしても、発熱チップ100全体としては故障せずに機能する。以上によって保持部226は、発熱機能を維持することができる。
また、1つの発熱チップ上に並列に高抵抗パターン1132を形成することで、故障耐性が向上するだけでなく次のような効果も得られる。すなわち、1本の高抵抗パターンを有する発熱チップを並列に数多く配置しても上記と同様に故障に対する耐久性を有する構成が得られる。しかしながら本実施形態によれば、1本の高抵抗パターンを有する発熱チップを並列に複数配置するよりも少ないチップ数で同様の効果を得ることができる。したがって、チップ間の結線も容易となり、実装の容易さにおいて利益がある。すなわち、低コスト化が可能となる。
以上のように本実施形態によれば、発熱チップ100において、複数の高抵抗パターン1132を並べて作製し、それらを配線パターン1131で並列接続することにより、発熱チップ100の温度が局部的に上昇しても発熱チップ100全体が故障することを防止できるように構成されている。その結果、エネルギ処置具212の故障を防止することができる。以上のように、本実施形態によれば、封止膜に空気層が生じて発熱チップの温度が局部的に上昇し高抵抗パターンの一部が断線しても加熱処置を行える治療用処置装置を提供できる。
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。ここでは、第1の実施形態との相違点について説明し、同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
第1の実施形態では、例えば第1の高周波電極266上に配置した6個の発熱チップ100を、直列に接続している。これに対して本実施形態では、発熱チップ100の各々に接続する発熱チップ用通電ラインを用意し、発熱チップ100の各々をエネルギ源214に接続する。このように接続することで、エネルギ源214は、各発熱チップ100をそれぞれ独立に電圧を印加して駆動することができる。
また本実施形態では、エネルギ源214は、各発熱チップ100に印加する電圧とそのときに流れる電流とを取得できるように構成されている。エネルギ源214は、取得した電圧値及び電流値に基づいて、各発熱チップ100の電気的な抵抗値を取得することができる。発熱チップ100の抵抗値は、その温度に応じて変化する。したがって、発熱チップ100の温度と抵抗値との関係を予め求めておくことにより、エネルギ源214は、発熱チップ100の抵抗値に基づいて発熱チップ100の温度を取得することができる。
本実施形態では、エネルギ源214は、前記のようにして各発熱チップ100の温度を取得し、この温度と目標温度との差に基づいてフィードバック制御によって発熱チップ100に供給する電力を調整する。このようにして、エネルギ源214は、例えば第1の高周波電極266の温度を目標温度に設定するように制御する。
ここで、第1の実施形態の説明で述べたように、封止膜360に混入した空気層362等により、例えば図10に示すように、複数の高抵抗パターン1132のうち一部が断線した場合、断線していない高抵抗パターン1132を電流が流れるため発熱チップ100の機能は維持される。しかしながら、抵抗パターン113の全体の抵抗値は変化する。このため、上記したように、発熱チップ100の抵抗値に基づいて、発熱チップ100の温度を取得しても、このとき取得される温度には誤差が含まれる。その結果、エネルギ源214による温度制御には誤差が生じる。すなわち、エネルギ源214は、例えば第1の高周波電極266の温度を正しく制御できない。
そこで本実施形態では、エネルギ源214は、発熱チップ100の異常を監視し、異常が検出された場合には、異常が検出された発熱チップ100以外の温度に基づいて電力の供給を行う。本実施形態に係るエネルギ源214による制御の例を、図11に示すフローチャートを参照して説明する。本実施形態では、各発熱チップ100それぞれについて、図11に示すフローチャートのように温度制御を行う。
ステップS1においてエネルギ源214は、上記のように発熱チップ100の抵抗値に基づいて各発熱チップ100の温度を取得する。
ステップS2においてエネルギ源214は、ステップS1で取得した温度に基づいて、発熱チップ100に供給する電力を算出し、その電力を供給する。例えばエネルギ源214は、ステップS1で取得した温度と目標温度との差に所定のゲインを掛けて供給電力を算出する。エネルギ源214は、出力電圧を調整することで供給する電力を調整することができる。
ステップS3においてエネルギ源214は、発熱チップ100の抵抗値が初期値に比べて所定の閾値以上に大きく変化したか否かを判定する。この判定の結果、抵抗値が大きく変化していなければ、処理をステップS4に移す。
ステップS4においてエネルギ源214は、あらかじめ設定した加熱制御を終了する時間になったか否かを判定する。加熱制御を終了する時間であれば、エネルギ源214は、処理を終了する。加熱制御を終了する時間でなければ、エネルギ源214は処理をステップS1に戻し電力の供給を継続する。
一方、ステップS3において発熱チップ100の抵抗値が初期値に比べて所定の閾値以上に大きく変化していたら、処理をステップS5に移す。ここで、抵抗値が初期値から大きく変化している発熱チップ100は、高抵抗パターン1132において断線が生じている可能性がある。ステップS3で基準に用いる所定の閾値は、温度変化による抵抗値の変化よりも大きな値であり、断線によって生じる抵抗値の変化よりも小さな値であるように適宜設定する。
ステップS5においてエネルギ源214は、抵抗値が大きく変化している発熱チップ100、すなわち、一部故障している発熱チップ100について、他の発熱チップ100に供給する電力と同等の電力を供給する。ここで、第1の高周波電極266の場所に応じて温度差がある可能性を考慮すると、なるべく近くに配置されている他の発熱チップ100に供給する電力を供給することが好ましい。その後、エネルギ源214は、処理をステップS6に移す。
ステップS6においてエネルギ源214は、あらかじめ設定した加熱制御を終了する時間になったか否かを判定する。加熱制御を終了する時間であれば、エネルギ源214は、処理を終了する。加熱制御を終了する時間でなければ、エネルギ源214は、処理をステップS5に戻し、電力の供給を継続する。
このように、例えばエネルギ源214は、複数の発熱チップへの電力の投入を独立に制御する制御部として機能する。
上記のように制御することで、例えば図12に模式的に示すようになる。すなわち、第1の高周波電極266に配置されている6個の発熱チップ100を第1の発熱チップ100−1乃至第6の発熱チップ100−6と称することにする。各発熱チップ100に異常がない場合は、各発熱チップ100の温度に基づいて、第1の発熱チップ100−1には第1の電力P1[W]を供給し、第2の発熱チップ100−2には第2の電力P2[W]を供給し、第3の発熱チップ100−3には第3の電力P3[W]を供給し、第4の発熱チップ100−4には第4の電力P4[W]を供給し、第5の発熱チップ100−5には第5の電力P5[W]を供給し、第6の発熱チップ100−6には第6の電力P6[W]を供給する。
ここで、例えば空気層362に起因して、高抵抗パターン1132が断線するという異常が第6の発熱チップ100−6に生じたとする。このとき、図11にフローチャートを示す処理のステップS3においてエネルギ源214は、第6の発熱チップ100−6の異常を検知する。その結果、図12に示すように、ステップS5においてエネルギ源214は、第6の発熱チップ100−6に、その近くに配置されており異常が検知されていない第5の発熱チップ100−5に供給する電力、すなわち第5の電力P5[W]を供給する。第5の電力P5[W]を供給された第6の発熱チップ100−6は、断線していない高抵抗パターン1132を流れる電流によって発熱する。
上記のようにして、本実施形態に係る治療用処置装置210は、温度制御の誤差を最小限にすることができる。
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても、発明が解決しようとする課題の欄で述べられた課題が解決でき、かつ、発明の効果が得られる場合には、この構成要素が削除された構成も発明として抽出され得る。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
100…発熱チップ、111…基板、113…抵抗パターン、1131…配線パターン、1132…高抵抗パターン、1133…高抵抗パターン群、115…電極、117…絶縁膜、119…接合用金属層、210…治療用処置装置、212…エネルギ処置具、214…エネルギ源、216…フットスイッチ、222…ハンドル、224…シャフト、226…保持部、228…ケーブル、232…操作ノブ、242…筒体、244…シース、252…駆動ロッド、254…カッタ、256…支持ピン、258…弾性部材、260…第1の保持部材、262…第1の保持部材本体、264,274…カッタ案内溝、266…第1の高周波電極、268…高周波電極用通電ライン、270…第2の保持部材、272…第2の保持部材本体、276…第2の高周波電極、281,282…発熱チップ用通電ライン、320…中継チップ、323…基板、325…電極、327…接合用金属層、330…接続チップ、333…基板、339…電極、351…ワイヤー、360…封止膜、362…空気層。

Claims (4)

  1. 生体組織を目標温度で加熱して治療するための治療用処置装置であって、
    表裏をなす第1の主面と第2の主面とのうち該第1の主面において前記生体組織に接触して該生体組織に熱を伝える伝熱部と、
    前記第2の主面と接合し、高抵抗パターン群を形成する複数の高抵抗パターンと該高抵抗パターンを並列に接続させる配線パターンとから成る抵抗パターンを有し、該配線パターンを介して複数の該高抵抗パターンに電力を投入することで前記伝熱部を加熱する発熱チップと、
    を具備することを特徴とする治療用処置装置。
  2. 前記発熱チップを複数備え、
    複数の前記発熱チップへの前記電力の投入を独立に制御する制御部をさらに具備し、
    前記制御部は、前記発熱チップの各々の前記抵抗パターンの抵抗値を取得し、該抵抗値と該抵抗値の初期値との差に基づいて異常がある該発熱チップを検出する、
    ことを特徴とする請求項1に記載の治療用処置装置。
  3. 前記制御部は、何れかの前記発熱チップの前記異常を検出したとき、異常が検出された該発熱チップに投入する前記電力を、異常が検出されなかった該発熱チップに投入する前記電力と等しくするように決定することを特徴とする請求項2に記載の治療用処置装置。
  4. 前記制御部は、
    各々の前記抵抗パターンの抵抗値に基づいて、各々の該抵抗パターンの温度を取得し、
    各々の前記発熱チップに投入する前記電力を、各々の該発熱チップの前記抵抗パターンの温度に基づいて決定し、
    何れかの前記発熱チップの前記異常を検出したときは、異常が検出された該発熱チップに投入する前記電力を、異常が検出されなかった該発熱チップの前記抵抗パターンの温度に基づいて決定する、
    ことを特徴とする請求項2又は3に記載の治療用処置装置。
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