JP2012249355A - モータ制御装置、及び、それを利用したモータの起動方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】レシプロ式圧縮機のような負荷トルクの変動が大きい圧縮機においても、安定して差圧起動を実現するモータ制御装置及びそれを利用したモータの起動方法を提供する。
【解決手段】d軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*、更には、周波数指令値ω*に基づいてd軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*を出力することにより電力変換回路を制御し、ベクトル制御を用いたモータ制御装置における起動方法において、d軸検出電流Idc及びq軸検出電流Iqcと、d軸電圧指令値とq軸電圧指令値とから軸誤差Δθcを検出し、位置決め運転モードにより前記d軸電流指令値及びq軸電流指令値を出力し、同期運転モードにより、軸誤差検出手段により検出した軸誤差Δθcに基づいて、負荷トルク変動に適合したd軸電流指令値及びq軸電流指令値を出力し、位置フィードバック運転モードによりd軸電流指令値及びq軸電流指令値を出力する。
【選択図】図1
【解決手段】d軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*、更には、周波数指令値ω*に基づいてd軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*を出力することにより電力変換回路を制御し、ベクトル制御を用いたモータ制御装置における起動方法において、d軸検出電流Idc及びq軸検出電流Iqcと、d軸電圧指令値とq軸電圧指令値とから軸誤差Δθcを検出し、位置決め運転モードにより前記d軸電流指令値及びq軸電流指令値を出力し、同期運転モードにより、軸誤差検出手段により検出した軸誤差Δθcに基づいて、負荷トルク変動に適合したd軸電流指令値及びq軸電流指令値を出力し、位置フィードバック運転モードによりd軸電流指令値及びq軸電流指令値を出力する。
【選択図】図1
Description
本発明は、永久磁石モータを駆動するベクトル制御を用いたモータ制御装置に関し、特に、トルク変動の大きな負荷を起動するに適したモータ制御装置、更には、かかる制御装置によるモータの起動方法に関する。
例えば、家庭用冷蔵庫の圧縮機やポンプ等の駆動用モータには、一般的に、永久磁石モータ(以下、「モータ」とする)が用いられており、かかる永久磁石モータの駆動装置としては、一般的に、インバータ回路とデジタル制御器を用いたベクトル制御が制御方式として採用されている。
また、従来、空調機器や冷凍機器に使用される圧縮機としては、スクロール式圧縮機やレシプロ式圧縮機が用いられており、かかる圧縮機のON/OFFを操作する際のロスを低減する方法として、圧縮機の停止と同時に冷媒回路の高圧側と低圧側を遮断する電磁弁を、凝縮器出口側に設ける方法が知られている。上記電磁弁を用いた冷媒回路においては、電磁弁の遮断後、高圧と低圧に分離されたままの冷媒回路を再起動する時、圧縮機は吸入低圧と吐出高圧の差圧のついたままの起動(以下、「差圧起動」と言う)となる。
かかる差圧起動を行うための制御方式としては、以下の特許文献1によれば、モータ起動時にモータの誘起電圧に対して電流位相を進ませることによりモータの最大トルクを引き出し、モータ起動後安定な運転状態になるように電流位相を低減する方式が記載されている。
また、以下の特許文献2によれば、インバータ電圧Vdcと共に、永久磁石型電動機の2相の電流をIu、Ivを3相/2相変換して得られる実電流Id、Iqと電動機モデル演算により得られる電流値Imd、Imqとの差Δid、Δiqを基に電動機の脱調及び不安定領域を検出し、これらを演算することにより精度の高い現在位置及び速度を算出して制御を行い、もって、脱調の回避が可能な電動機の安定動作を得る制御装置も既に知られている。
更には、以下の特許文献3によれば、所定の回転で永久磁石同期電動機を回転させるオープン制御器と電動機の永久磁石の磁束方向を推定するd軸推定器を備え、切替器によってオープン制御からベクトル制御に切り替える際に、磁束ベクトルの位相を求めてd軸推定器の初期値とするd軸推定器のd軸初期値設定器を具備し、もって、停止からの加速が可能な制御装置が既に知られている。
しかしながら、上述したように、圧縮機等を永久磁石モータにより差圧起動を行う場合、特に、その起動時(低速時)においては負荷トルクの変動が大きく、具体的には、圧縮機の吸込み口側と吐出し口側の圧力差により、当該モータに加わる負荷トルクが大きくなり、そのため、モータトルク不足により圧縮機の起動ができない場合が生じる等の問題があった。
また、一般的にモータに加わる負荷トルクは、
・圧縮機の温度が高い程、大きくなる、
・圧縮機の吸込み口側と吐出し口側の圧力差が大きい程、大きくなる
という関係があり、圧縮機の吸込み口側と吐出し口側の圧力差は、圧縮機停止前の圧縮機運転回転数が高いほど大きくなる。
・圧縮機の温度が高い程、大きくなる、
・圧縮機の吸込み口側と吐出し口側の圧力差が大きい程、大きくなる
という関係があり、圧縮機の吸込み口側と吐出し口側の圧力差は、圧縮機停止前の圧縮機運転回転数が高いほど大きくなる。
また、モータに加わる負荷トルクは、冷媒の圧縮・膨張によりその負荷の大きさが変動する。特に、ピストンの往復運動により冷媒の圧縮・膨張を行うレシプロ式圧縮機は、この負荷変動が、スクロール式の圧縮機に比べて大きい。
なお、上述した特許文献1に記載の方式はスクロール式圧縮機に対しての方式であり、レシプロ式圧縮機に対しての具体的な記載はない。また、起動時(低速時)において大きく変化する負荷トルクによる問題点に関しては考慮されていなかった。また、その他の特許文献でも、起動時(低速時)において大きく変化する負荷トルクによる問題点に関しては考慮されていなかった。
即ち、特に、レシプロ式圧縮機を搭載した冷蔵庫で差圧起動を行おうとした場合、差圧による負荷トルクが大きい程、圧縮・膨張による負荷トルクの変動幅が大きくなる。また、負荷トルクは圧縮工程で大きくなり、膨張工程では小さくなる。
そのため特許文献1に記載の方式のようにモータを最大トルクで運転すると、負荷トルクが小さくなる膨張工程時に、モータの回転数が指令回転数に対してオーバーシュートし、制御が不安定となる場合があり、最悪はモータ停止に至る。
本発明の目的は、このような従来の課題を解決するものであり、レシプロ式圧縮機のような負荷トルクの変動が大きい圧縮機においても、安定して起動を実現することができるモータ制御装置を、更には、それを利用したモータの起動方法を提供することをその目的とするものである。
上述した目的を達成するため、本発明によれば、まず、起動時において負荷トルクの変動を示す負荷を回転駆動する永久磁石モータに対して供給される交流電力を制御するモータ制御装置であって、前記永久磁石モータに交流電流を供給する電力変換回路と、前記永久磁石モータに流れる交流電流を検出・変換して得られるd軸検出電流Idc及びq軸検出電流Iqcに基づいてd軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*を設定して出力する電流制御器と、前記電流制御器からのd軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*、更には、周波数指令値ω*に基づいてd軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*を出力することにより前記電力変換回路を制御する電圧指令値作成器とを備えたベクトル制御を用いたモータ制御装置であって、更に、前記d軸検出電流Idc及びq軸検出電流Iqcと、前記d軸電圧指令値Vd*とq軸電圧指令値Vq*とから軸誤差Δθcを検出するための手段を備えており、前記電流制御器は、永久磁石モータを起動する際、位置決め運転モードにより前記d軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*を出力し、同期運転モードにより、前記軸誤差検出手段により検出した軸誤差Δθcに基づいて、前記負荷の負荷トルク変動に適合した前記d軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*を出力し、その後、位置フィードバック運転モードにより前記d軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*を出力するモータ制御装置が提供される。
また、上述した目的を達成するため、本発明によれば、d軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*、更には、周波数指令値ω*に基づいてd軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*を出力することにより電力変換回路を制御し、もって、起動時にトルクの変動を示す負荷を回転駆動する永久磁石モータに対して交流電力を制御する、ベクトル制御を用いたモータ制御装置における起動方法であって、前記d軸検出電流Idc及びq軸検出電流Iqcと、前記d軸電圧指令値Vd*とq軸電圧指令値Vq*とから軸誤差Δθcを検出し、前記永久磁石モータを起動する際、位置決め運転モードにより前記d軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*を出力し、同期運転モードにより、前記軸誤差検出手段により検出した軸誤差Δθcに基づいて、前記負荷の負荷トルク変動に適合した前記d軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*を出力し、その後、位置フィードバック運転モードにより前記d軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*を出力するモータの起動方法が提供される。
更に、本発明によれば、上述したモータ制御装置又はモータの起動方法において、前記位置決め運転モードにおいては、前記d軸電流指令値Id*だけを出力すると共に、前記同期運転モードにおいては、前記軸誤差Δθcが発生した後には、当該軸誤差Δθcが0となるようにd軸電流指令値及びq軸電流指令値を設定することが好ましく、更には、前記位置決め運転モードの終了後において、当該位置決め運転モードにおいて出力した前記d軸電流指令値Id*を減少させると共に、前記q軸電流指令値Iq*を増大させ、もって、当該軸誤差Δθcが0となった以降、前記d軸電流指令値Id*及び前記q軸電流指令値Iq*を、
Id*=Idc×cosΔθc−Iqc×sinΔθc
Iq*=Idc×sinΔθc+Iqc×cosΔθc
に設定することが好ましい。
Id*=Idc×cosΔθc−Iqc×sinΔθc
Iq*=Idc×sinΔθc+Iqc×cosΔθc
に設定することが好ましい。
加えて、前記に記載したモータ制御装置又はモータの起動方法において、前記永久磁石モータの起動を開始した後、所定の時間を経過した後、又は、当該永久磁石モータの回転数が所定の値に達した後に、前記位置フィードバック運転モードに移行することが、更には、前記位置決め運転モードの終了後における前記d軸電流指令値Id*及び前記q軸電流指令値Iq*を、Icは、前記位置決め運転モードが終了する際の電流値、θIは電流位相として、
Id*=Ic×cosθI
Iq*=Iq×sinθI
に設定することが好ましい。そして、当該モータ制御装置又はモータの起動方法では、前記前記位置決め運転モードが終了する際の電流値Icを、前記負荷の周囲温度に応じて変更することが好ましい。
Id*=Ic×cosθI
Iq*=Iq×sinθI
に設定することが好ましい。そして、当該モータ制御装置又はモータの起動方法では、前記前記位置決め運転モードが終了する際の電流値Icを、前記負荷の周囲温度に応じて変更することが好ましい。
上述した本発明によれば、起動時において大きな負荷トルクの変動を示す、例えば、レシプロ式圧縮機の差圧起動時においても、当該変動する負荷トルクに適合し、安定して圧縮機を駆動することが可能なモータ制御装置と共に、そのための起動方法を提供することが可能であるという優れた効果を達成することが可能となる。
以下、本発明になる実施の形態について、添付の図面を参照しながら、詳細に説明する。
まず、本実施例(実施例1)におけるモータ制御装置は、主として、以下の3つの動作モードを行うものとする。
・位置決めモードとして、特定の相に電流を通電することにより回転子の位置決めを行う。
・次に、同期運転モードとして、永久磁石モータの回転角度位置の情報を用いずに同期モータを駆動して、インバータの出力周波数を徐々に高めて、上記位置決め状態からある回転数まで加速する。
・次に、上記回転数にて運転モードを位置フィードバック運転モードに移行し、磁極位置の推定値もしくは磁極位置センサ等による回転角度位置の情報を用いて運転する。
・位置決めモードとして、特定の相に電流を通電することにより回転子の位置決めを行う。
・次に、同期運転モードとして、永久磁石モータの回転角度位置の情報を用いずに同期モータを駆動して、インバータの出力周波数を徐々に高めて、上記位置決め状態からある回転数まで加速する。
・次に、上記回転数にて運転モードを位置フィードバック運転モードに移行し、磁極位置の推定値もしくは磁極位置センサ等による回転角度位置の情報を用いて運転する。
本実施例では、位置フィードバック運転モードの位置情報は、モータ電圧指令とモータ電流情報から得る位置センサレス制御を行うものとして、永久磁石モータの回転子の磁束方向の位置をd軸、それから回転方向に90度進んだq軸からなるd−q軸実回転座標系(モータ軸)に対して、制御上の仮想回転子位置dc軸と、それから回転方向に90度進んだ制御上の位置qc軸からなる制御上のdc−qc制御回転座標系での制御を基本としている。なお、これ以降dc−qc座標軸を単に制御軸と呼ぶ。
なお、以下の説明では、モータとしてd−q軸インダクタンスの差が小さい非突極型永久磁石モータを例に挙げ、リラクタンストルクの発生はないものとして説明するが、しかしながら、本発明は当該非突極型永久磁石モータのみに限られるものではない。
以下、本発明の第1の実施例(実施例1)について、添付の図を用いながら説明する。
図1は、本発明に係るモータ制御装置の制御構成図である。図において、図の符号1は、本発明になるモータ制御装置を示しており、また、符号3は、当該モータ制御装置により回転駆動される電動機であり、一例として永久磁石モータを示している。なお、モータ制御装置1は大きく分けて、電流検出部2と、制御部4と、そして、電力変換回路5とによって構成されている。
電流検出手段2は、モータに流れる3相の交流電流の内、U相及びW相に流れる電流IuとIwを検出するモータ電流検出器6a、6bから構成される。
モータ電流検出器6a、6bの一つの例として、シャント抵抗を用いて電流を電圧に変換する方法がある。この場合、例えば、シャント抵抗を2つ使用する、所謂、2シャント電流検出、或いは、インバータ20の直流側に付加したシャント抵抗を1つだけ使用する、所謂、1シャント電流検出の何れかの方法を用いても良い。
制御部4は、主に、軸誤差演算器8、PLL制御器10、速度制御器12、電流制御器15aおよび15b、電圧指令値作成器16、dq/3相変換器17、積分器18、3相/dq変換器7等から構成される。なお、本実施例では、これらの制御部4は、例えば、マイクロプロセッサー等の演算装置により構成されており、例えば、内蔵又は外付けされたメモリ装置内に格納されたソフトウェアにより、以下に述べる各部の動作を達成するために必要な所定の演算を実行する。
3相/dq変換器7は、モータ電流検出器6a、6bで検出したモータ電流を推定磁極位置θdcとして入力とし、3相軸から制御軸へと座標変換してd軸検出電流Idcおよびq軸検出電流Iqcを出力する。
軸誤差演算器8は、d軸検出電流Idcおよびq軸検出電流Iqcと、d軸およびq軸電圧指令値(Vd*およびVq*)と、インバータ周波数指令値ω1*または周波数指令値ω*を入力とし、永久磁石モータ3の回転子の実回転位置(実回転座標軸)と仮想回転位置(制御軸)との空間的位相差(以下、「軸誤差Δθc」と言う)を出力する。
PLL制御器10は、軸誤差Δθcと軸誤差指令値Δθ*(通常は零(0))との差を減算器9aで求め、これが零(0)になるようにインバータ周波数指令値ω1(ω1*)を出力する。
速度制御器12は、図4に示すように、周波数指令値ω*とインバータ周波数指令値ω1*を入力とし、これらの差を減算器9eで求め、差分が零(0)になるようにPI制御器によって、q軸電流指令値Iq*を出力する。なお、q軸電流指令値Iq*は次式によって求まる。
ここで、Kpsは比例ゲイン、Kisは積分ゲインである。
なお、Iq*が(式1)によって出力されるのは制御切替スイッチ11bがB側にあるときであり、他方、制御切替スイッチ11bがA側にあるときには、Iq*の値は、例えば、上位コントローラなど、他から与えられるq軸電流指令値Iq*0となる。
電流制御器15aおよび15bは、図3に示すように、d軸およびq軸電流指令値(Id*およびIq*)と、d軸検出電流Idcおよびq軸検出電流Iqcを入力とし、それぞれの差分を減算器9c、9dで求め、当該差分が零(0)になるように第2の電流指令値Id**およびIq**を出力する。なお、第2の電流指令値Id**およびIq**は次式によって求まる。
ここで、KpdおよびKpqは比例ゲイン、KidおよびKiqは積分ゲインである。
電圧指令値作成器16は、第2の電流指令値(Id**およびIq**)とインバータ周波数指令値ω1*を入力としてベクトル演算を行い、d軸電圧指令値Vd*およびq軸電圧指令値Vq*を出力する。なお、d軸電圧指令値Vd*およびq軸電圧指令値Vq*は次式によって求まる。
ここで、(式4)(式5)において、Rは永久磁石モータ3の一次巻線抵抗値、Ldはd軸のインダクタンス、Lqはq軸のインダクタンス、Keは誘起電圧定数である。
dq/3相変換器17は、d軸電圧指令値Vd*およびq軸電圧指令値Vq*を入力とし、制御軸から3相軸へ座標変換して永久磁石モータ3に印加する3相電圧指令値(Vu*,Vv*,Vw*)を出力する。
電力変換回路5は図2に示すように、インバータ20と直流電圧源21とドライバ回路22によって構成される。なお、前記インバータ20はIGBTやパワーMOSFET等のスイッチング素子で構成される。インバータ20はドライバ回路22から出力されるパルス信号(23a、23b、23c)に応じてスイッチング動作を行い、任意の周波数の交流電圧を永久磁石モータへ印加してモータを駆動する。
続いて、上記にその構成を説明したモータ制御装置によって永久磁石モータ3を起動する際の基本動作について説明する。なお、図5は、永久磁石モータ3を起動する際の各運転モードへの遷移を示すための各部の出力を示す波形図である。
これらの運転モードには、任意の相のモータ巻線に、徐々に直流電流を流して永久磁石モータ3の回転子をある位置に固定する「位置決めモード」と、d軸電流指令値Id*およびq軸電流指令値Iq*と周波数指令ω*に従って永久磁石モータ3に印加する電圧を決定する「同期運転モード」と、軸誤差Δθcが零(0)になるようにインバータ周波数指令値ω1*を調整する「位置フィードバック運転モード」、の3つのモードがある。
なお、これらの運転モードは、d軸電流指令値Id*、q軸電流指令値Iq*、インバータ周波数指令値ω1*のうち、いずれかを変更、或いは、制御部4a内の制御切替スイッチ(11aおよび11b)を切り替えることによってそれぞれの運転モードへ遷移する。なお、制御切替スイッチ(11aおよび11b)は、特に断りがない限り、2つが同時に切り替わるものとする。
特に、「同期運転モード」では、周波数指令ω*を徐々に増加させ、それに応じて永久磁石モータ3の速度も増加する。このときのd軸電流指令値Id*およびq軸電流指令値Iq*の大きさは位置決め運転モード終了時の直流電流Icを電流位相θIでcos成分とsin成分に分けた値とし、それぞれ次式によって求まる。
なお、「位置決めモード」後の位置フィードバック運転(「位置フィードバック運転モード」)が可能になる周波数になった時点において図1の制御切替スイッチ(11aおよび11b)をB側に倒すことにより、「位置フィードバック運転モード」へ遷移する。これにより、モータ制御装置1は、軸誤差Δθcと軸誤差指令値Δθ*(通常は零(0))との差が零(0)になるようにPLL制御器10がインバータ周波数指令値ω1*を調整すると共に、周波数指令値ω*とインバータ周波数指令値ω1*との差が零(0)になるように速度制御器12がq軸電流指令値Iq*を調整する。
この時、Iq*は、加速トルク分と負荷トルク分の和である必要トルク分に相当する値になり、これにより永久磁石モータ3は加速する。その後一定速になると、q軸電流指令値Iq*は必要トルク(=負荷トルク)分に相当する値で一定となる。また、d軸電流指令値Id*の値は、ここでは永久磁石モータが非突極型としているので、「位置フィードバック運転モード」中は零(0)に設定する。
ここで、圧縮機、特に、レシプロ式圧縮機において、差圧起動を行う場合に生じる問題について説明する。
レシプロ式圧縮機は、ピストンにより圧縮工程と膨張工程を圧縮機駆動用モータの回転周期に応じて繰り返している。このとき、モータの負荷トルクは、通常、膨張工程よりも圧縮工程のほうが大きくなる。つまり、負荷トルクは大小に交互にかつ周期的に変動する。
また、圧縮機には、圧縮機の入力と出力側の圧力差がほとんどない均圧状態や、圧力差がある差圧状態が存在する。即ち、レシプロ式圧縮機で当該差圧起動を行うと、図6に示すように、均圧状態とはならず、圧縮・膨張工程での負荷変動幅が大きくなる。ただし、ある時間が経過すれば(例えば、900rpm程度の回転数に達すると)、モータに対する当該負荷トルクの変動幅は小さくなり、所謂、定常状態となる。本実施例では、この負荷トルクの変動は、上述した「同期運転モード」中のみに発生するが、しかし、位置フィードバック運転(「位置フィードバック運転モード」)への移行時には、当該負荷トルクは定常状態になるものとして説明する。
ここで、「同期運転モード」中に負荷トルクが大小かつ交互に変動した場合について考える。図7に示すように、「同期運転モード」においては、負荷トルクに対してモータに流れる電流のq軸電流成分が小さい場合、軸誤差Δθcは正方向に増加し、逆に、負荷トルクに対してモータに流れる電流のq軸電流成分が大きい場合、軸誤差Δθcは負方向に増加する。また、この軸誤差Δθcは±90°が最大値であり、これを超えるとモータは脱調停止することとなる。
そこで、差圧起動によって負荷トルクが大きい場合に、モータトルクが最大となるようにq軸電流指令値Iq*を設定しても、レシプロ式圧縮機の負荷トルクは、その後の圧縮・膨張過程における変動が大きいことから(図7(A)を参照)、特に、負荷トルクが小さくなる膨張工程時においては、当該負荷トルクに対してモータに流れる電流のq軸電流成分が大きくなってしまう。その結果として、軸誤差Δθcが負方向に増加し(図7(B)を参照)、場合によっては、モータが脱調・停止する場合がある。
本発明は、上述したような課題、即ち、レシプロ式圧縮機のように負荷トルクの変動が大きい負荷を起動する際における問題点を解決するためになされたものであり、以下にその内容を示す。
本発明では、上述した本発明者らによる知見に基づき、上記課題を解決するため、モータトルクを変動する負荷トルクに合わせて発生させるようにしたものであり、より具体的には、負荷トルクが変動した場合に、軸誤差Δθcの値が零(0)となるようにモータに流れるq軸電流成分を調整するものである。即ち、上記課題を解決するには、負荷トルクが変動した場合に軸誤差Δθcの値が零(0)となるようにモータに流れるq軸電流成分を調整すればよい。
より具体的に説明すると、図8の(A)に示すように、「位置決め運転モード」では上記(式6)および(式7)にて電流位相θIの設定値を零(0)とすることによりd軸電流成分のみをモータに流し(ここでは、徐々に増大する)、これによって、モータ回転子の位置決めを行う。その後、「同期運転モード」にて、段階的に電流位相θIを増加させる。即ち、d軸電流成分を減少させながら、他方、q軸電流成分を増加する。
その結果、図8の(B)に示すように、負荷トルクがq軸電流成分によるモータトルクより大きい場合、軸誤差Δθcは正の値となる(図の「t1」を参照)。しかし、その後、電流位相θIによりq軸電流成分を増加させ、モータトルクが負荷トルクと同等になると、軸誤差Δθcはほぼ零(0)となる(図の「t2」を参照)。他方、負荷トルクがq軸電流成分によるモータトルクより小さい場合には、軸誤差Δθcは負の値となる。その後、電流位相θIによりq軸電流成分を減少させ、モータトルクが負荷トルクと同等になると、軸誤差Δθcはほぼゼロ(0)となり、以後、これを繰り返す。即ち、軸誤差Δθcにより負荷のトルク変動を検出することが可能となる。
そこで、図8の(C)に示すように、軸誤差Δθcが零(0)以下になった場合(図の「t2」を参照)、それ以降の同期運転モード中は、次に示す(式8)および(式9)にてd軸電流指令値Id*およびq軸電流指令値Iq*を求める。
その結果、図9(B)に示すように、q軸電流成分の過不足分を補正するように軸誤差Δθcが生じるため、その軸誤差Δθcにより補正されたd軸電流成分およびq軸電流成分をそれぞれd軸電流指令値Id*およびq軸電流指令値Iq*に設定することで、軸誤差Δθcをほぼ零(0)にすることができる。換言すれば、モータトルクを変動する負荷トルク合わせて発生することが可能となる。なお、図9(A)は、上記軸誤差Δθcを説明するための図であり、負荷トルクの変動に伴って変化するモータ回転子の実回転位置(実回転座標dc−qc軸)の仮想回転位置(制御d−q軸)に対する空間的位相差を示している。
よって、同期運転モード中に負荷トルクが変動して軸誤差Δθcが変動しても、それを零(0)にするようにd軸電流指令値Id*およびq軸電流指令値Iq*を適切な値に調整することによれば、同期運転モード中におけるモータの脱調や停止を防ぐことができる。なお、この同期運転モードの後には、上述したように、制御は位置フィードバック運転モードへ移行することとなるが、ここで、同期運転モードは、モータが起動(回転速度=0)した後、その回転速度が600rmp程度(最大回で900rpm程度)に達するまでの期間であり、モータの回転速度によって容易に検出することも可能であるが、通常、モータの起動を開始した後の所定の時間(例えば、時間T)内だけに存在するモードであることから、モータの起動から所定時間の経過によって同期運転モードから位置フィードバック運転モードへの移行を行うことも可能である。
更に、以下には、上述したモータ制御装置、特に、その起動方法を中心にして、添付の図10を参照しながら、より具体的に説明する。なお、図10は、本発明になる起動方法を実行するための制御工程を示すフローチャート図であり、この制御工程は、上述したように、例えば、マイクロプロセッサー等の演算装置により構成された制御部4により実行される。
まず、モータの起動(差圧起動)が始まると(ステップS10)、位置決めモードとなり、d軸電流成分のみをモータに流し(q軸電流成分=0)、これによって、モータ回転子の位置決めを行う(ステップS11)。続いて、d軸電流成分が所定の値、Icに達したか否かを判定し(ステップS12)、その結果、d軸電流成分が所定の値Icに達した場合(図の「YES」)、同期運転モードに移行する(ステップS13)。即ち、まず、d軸電流指令値Id*およびq軸電流指令値Iq*を、上述した式(6)と(7)で示したように、運転モード終了時の直流電流Icを電流位相θIでcos成分とsin成分に分けた値に設定する。
その後、上記した軸誤差演算器8によって検出される軸誤差Δθcを観察し、当該軸誤差Δθcが零(0)まで低下したことを判定する(ステップS14)。軸誤差Δθcが零(0)まで低下すると(図の「YES」)、上述したd軸電流指令値Id*およびq軸電流指令値Iq*を、上述した式(8)と(9)で示したように、軸誤差演算器8により検出したd軸検出電流Idcとq軸検出電流Iqcと共に、更に、軸誤差演算器8で演算された上記軸誤差Δθcを用いることにより設定して、変動する負荷トルク合わせてモータトルクを発生する。その後、所定の時間Tが経過したことを判定し(ステップS16)、その結果、当該所定の時価を経過した場合(図の「YES」)、上述した起動処理工程を終了し、モータ制御を位置フィードバック運転モードへ移行する(ステップS17)。
なお、上記のステップS13やS15においては、上述した式(6)と(7)や式(8)と(9)によりd軸電流指令値Id*およびq軸電流指令値Iq*を生成するものとして説明したが、本発明はこれに限定されることなく、例えば、これに代えて、変動する不可トルクに適合したd軸電流指令値Id*およびq軸電流指令値Iq*を予め実験やシミュレーション等により求めてこれをメモリ装置内に格納し(例えば、テーブル等)、これを利用することも可能である。又は、波形発生器(ファンクションジェネレータ)等によりこれらの信号を発生することも可能であろう。
続いて、本発明になる第2の実施例(実施例2)について説明する。なお、この第2の実施例(実施例2)は、上述した本発明になるモータ制御装置及びその起動方法を家庭用の冷蔵庫に適用したものであり、以下に、添付の図を用いて詳細に説明する。
冷蔵庫は、一般に、添付の図11にも示すように、熱交換器24、送風機25、圧縮機26、圧縮機駆動用モータ27、冷蔵庫制御装置28、圧縮機温度センサ36、電磁弁37により構成される。なお、圧縮機温度センサ36は、ここでは、例えば、熱電対やサーミスタなどで構成されており、そして、冷蔵庫制御装置28は、この圧縮機温度センサ36を用いて、圧縮機の温度を監視するものとする。
また、冷蔵庫制御装置28は、各種センサ情報により送風機や庫内灯などを制御する庫内制御装置29とモータ制御装置1から構成され、モータ制御装置1は制御部4aと電力変換回路5から構成される。また、冷蔵庫制御装置28は、圧縮機停止時に電磁弁37を動作させ圧縮機26の冷媒回路の高圧側と低圧側を遮断する。また、以下の説明でも、圧縮機26は、ピストン運動により冷媒を圧縮・膨張させるレシプロ式圧縮機として説明する。
なお、上述した構成を備える冷蔵庫において差圧起動を行う場合には、以下のような課題がある。
即ち、冷蔵庫が使用される温度環境は地域において異なっており、例えば、冷蔵庫や圧縮機の周囲温度が0℃以下の低温下で使用され、又は、40℃以上の高温状態で使用される場合があり、なお、一般的に、モータの負荷トルクは、圧縮機の温度が高いほど大きくなる。
また、冷蔵庫の周囲温度が高温の場合、庫内の温度を所望の値に保つためには、高い冷却性能が必要となる。そのため、圧縮機は高回転で運転され、圧縮機停止時の差圧が大きくなる。そのため、高温の温度環境下で、特に、差圧起動を行う場合には、モータの負荷トルクは、常温下で差圧起動を行う場合よりも大きくなり、そのため、モータは最大トルクで起動しなければならない。
これとは逆に、冷蔵庫の周囲温度が低温の場合、圧縮機は低回転で運転されるため、圧縮機停止時の差圧は小さい。そのため、低温環境下で差圧起動を行う場合には、常温で差圧起動を行うよりもモータの負荷トルクが小さくなり、そのため、最大トルクでモータを起動すると、モータの回転数が指令回転数に対してオーバーシュートしてしまい、制御が不安定となる場合があり、最悪の場合には、モータが停止に至ることもある。
そこで、本発明になるモータ制御装置及びその起動方法を冷蔵庫に適用する場合、圧縮機停止前の圧縮機運転回転数と圧縮機起動時の圧縮機の温度の状態とによって、位置決め運転モード終了時の直流電流Icの値を変更し、出力可能な最大トルクを調整すればよい。具体的には、添付の図12に示すように、圧縮機停止前の圧縮機運転回転数が高回転、かつ、圧縮機の温度が高い場合は、上述した「位置決め運転モード」の終了時における直流電流Icの値を大きくし、他方、圧縮機停止前の圧縮機運転回転数が低回転、かつ、圧縮機の温度が低い場合は、添付の図13に示すように、位置決め運転モード終了時の直流電流Icの値を小さくすればよい。
位置決め運転モード終了時の直流電流Icの設定値は、実験により実際にモータが起動する値を求めてもよいし、シミュレーションなどでモータ負荷トルクを推定し、それから値を求めてもよい。
なお、モータ負荷トルクを推定した場合、位置決め運転モード終了時の直流電流Icの設定値は、負荷トルクτLとモータを回すために必要なトルク電流Iqとの関係から、次式により求めることができる。
ここで、Pmはモータ極対数、Keは誘起電圧定数であり、いずれも定数であることから、負荷トルクτLを測定すればそれに対して必要なトルク電流Iq知ることができる。よって(式10)で求めたトルク電流Iqを位置決め運転モード終了時の直流電流Icの値に設定すればよい。また、上記の方法はその一例を示したものに過ぎず、トルク電流Iqを求める方法について、特に、その制限はない。
即ち、本実施例2によれば、圧縮機停止前の圧縮機運転回転数と圧縮機起動時の圧縮機の温度状態によって圧縮機のモータ負荷トルクの大きさが異なる場合であっても、位置決め運転モード終了時の直流電流Icの値を変えることにより、モータが出力可能な最大トルクを調節でき、もって、確実に差圧起動を実行することができる。
なお、上述した実施例1および実施例2の説明では、モータが発生するトルクを調整するための手段として、d軸電流指令値Id*およびq軸電流指令値Iq*についてのみ述べたが、しかいながら、制御器の構成を考えれば、本発明の制御を、例えば、電流制御器15からの第2のd軸電流指令値Id**および第2のq軸電流指令値Iq**に対しても適用することも可能であり、その結果、電流制御器に適用した場合も同様の効果を得ることができることは、当業者であれば容易に想像できるであろう。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるわけではない。また、ある実施例の一部を他の実施例の構成と置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現しても良い。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。
1…モータ制御装置、2…電流検出手段、3…永久磁石モータ、4…制御部、5…電力変換回路、6a,6b…電流検出手段、7…3相/dq変換器、8…軸誤差演算器、9…減算器、10…PLL制御器、11a,11b…制御切替スイッチ、12…速度制御器、15a,15b…電流制御器、16…電圧指令作成器、17…dq/3相変換器、18…積分器、20…インバータ、21…直流電圧源、22…ドライバ回路、24…熱交換器、25…送風機、26…圧縮機、27…圧縮機駆動用モータ、28…冷蔵庫制御装置、29…庫内制御装置、36…圧縮機温度センサ、37…電磁弁。
Claims (13)
- 起動時において負荷トルクの変動を示す負荷を回転駆動する永久磁石モータに対して供給される交流電力を制御するモータ制御装置であって、
前記永久磁石モータに交流電流を供給する電力変換回路と、
前記永久磁石モータに流れる交流電流を検出・変換して得られるd軸検出電流Idc及びq軸検出電流Iqcに基づいてd軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*を設定して出力する電流制御器と、
前記電流制御器からのd軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*、更には、周波数指令値ω*に基づいてd軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*を出力することにより前記電力変換回路を制御する電圧指令値作成器とを備えたベクトル制御を用いたモータ制御装置であって、
更に、
前記d軸検出電流Idc及びq軸検出電流Iqcと、前記d軸電圧指令値Vd*とq軸電圧指令値Vq*とから軸誤差Δθcを検出するための手段を備えており、
前記電流制御器は、永久磁石モータを起動する際、位置決め運転モードにより前記d軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*を出力し、同期運転モードにより、前記軸誤差検出手段により検出した軸誤差Δθcに基づいて、前記負荷の負荷トルク変動に適合した前記d軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*を出力し、その後、位置フィードバック運転モードにより前記d軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*を出力することを特徴とするモータ制御装置。 - 前記請求項1に記載したモータ制御装置において、前記電流制御器は、位置決め運転モードにおいては、前記d軸電流指令値Id*だけを出力すると共に、前記同期運転モードにおいては、前記軸誤差Δθcが発生した後には、当該軸誤差Δθcが0となるようにd軸電流指令値及びq軸電流指令値を設定することを特徴とするモータ制御装置。
- 前記請求項2に記載したモータ制御装置において、前記電流制御器は、前記位置決め運転モードの終了後において、当該位置決め運転モードにおいて出力した前記d軸電流指令値Id*を減少させると共に、前記q軸電流指令値Iq*を増大させ、もって、当該軸誤差Δθcが0となった以降、前記d軸電流指令値Id*及び前記q軸電流指令値Iq*を、
Id*=Idc×cosΔθc−Iqc×sinΔθc
Iq*=Idc×sinΔθc+Iqc×cosΔθc
に設定することを特徴とするモータ制御装置。 - 前記請求項3に記載したモータ制御装置において、前記電流制御器は、前記永久磁石モータの起動を開始した後、所定の時間を経過した後、又は、当該永久磁石モータの回転数が所定の値に達した後に、前記位置フィードバック運転モードに移行することを特徴とするモータ制御装置。
- 前記請求項4に記載したモータ制御装置において、前記電流制御器は、前記位置決め運転モードの終了後における前記d軸電流指令値Id*及び前記q軸電流指令値Iq*を、Icは、前記位置決め運転モードが終了する際の電流値、θIは電流位相として、
Id*=Ic×cosθI
Iq*=Iq×sinθI
に設定することを特徴とするモータ制御装置。 - 前記請求項5に記載したモータ制御装置において、前記前記位置決め運転モードが終了する際の電流値Icを、前記負荷の周囲温度に応じて変更することを特徴とするモータ制御装置。
- 前記請求項1〜6の何れか一に記載したモータ制御装置を採用した前記永久磁石モータを、レシプロ式圧縮機の駆動に使用したことを特徴とするモータ制御装置。
- d軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*、更には、周波数指令値ω*に基づいてd軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*を出力することにより電力変換回路を制御し、起動時にトルク変動を示す負荷を回転駆動する永久磁石モータに対して交流電力を制御する、ベクトル制御を用いたモータ制御装置における起動方法であって、
前記d軸検出電流Idc及びq軸検出電流Iqcと、前記d軸電圧指令値Vd*とq軸電圧指令値Vq*とから軸誤差Δθcを検出し、
前記永久磁石モータを起動する際、位置決め運転モードにより前記d軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*を出力し、同期運転モードにより、前記軸誤差検出手段により検出した軸誤差Δθcに基づいて、前記負荷の負荷トルク変動に適合した前記d軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*を出力し、その後、位置フィードバック運転モードにより前記d軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*を出力することを特徴とするモータの起動方法。 - 前記請求項8に記載した方法において、前記位置決め運転モードにおいては、前記d軸電流指令値Id*だけを出力すると共に、前記同期運転モードにおいては、前記軸誤差Δθcが発生した後には、当該軸誤差Δθcが0となるようにd軸電流指令値及びq軸電流指令値を設定することを特徴とするモータの起動方法。
- 前記請求項9に記載した方法において、前記位置決め運転モードの終了後において、当該位置決め運転モードにおいて出力した前記d軸電流指令値Id*を減少させると共に、前記q軸電流指令値Iq*を増大させ、もって、当該軸誤差Δθcが0となった以降、前記d軸電流指令値Id*及び前記q軸電流指令値Iq*を、
Id*=Idc×cosΔθc−Iqc×sinΔθc
Iq*=Idc×sinΔθc+Iqc×cosΔθc
に設定することを特徴とするモータの起動方法。 - 前記請求項10に記載した方法において、前記永久磁石モータの起動を開始した後、所定の時間を経過した後、又は、当該永久磁石モータの回転数が所定の値に達した後に、前記位置フィードバック運転モードに移行することを特徴とするモータの起動方法。
- 前記請求項11に記載した方法において、前記位置決め運転モードの終了後における前記d軸電流指令値Id*及び前記q軸電流指令値Iq*を、Icは、前記位置決め運転モードが終了する際の電流値、θIは電流位相として、
Id*=Ic×cosθI
Iq*=Iq×sinθI
に設定することを特徴とするモータの起動方法。 - 前記請求項12に記載した方法において、前記前記位置決め運転モードが終了する際の電流値Icを、前記負荷の周囲温度に応じて変更することを特徴とするモータの起動方法。
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