JP2012248447A - プラズマディスプレイパネルの製造方法 - Google Patents

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貞浩 後藤
Chiharu Koshio
千春 小塩
Kanako Okumura
加奈子 奥村
Kyohei Yoshino
恭平 吉野
Hideji Kawarasaki
秀司 河原崎
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Abstract

【課題】保護層における電子放出特性を向上させ、維持放電電圧を低減することが可能で、高精細画像でも高輝度で低電圧駆動が可能な表示特性に優れたプラズマディスプレイパネルを実現する。
【解決手段】電極、誘電体、および保護層を形成した前面板と、背面板とを、放電空間を形成して対向配置し、封着材にて封着し前記放電空間内のガスを排気する、封着排気工程を有するプラズマディスプレイパネルの製造方法において、前記封着排気工程では、前記前面板と前記背面板とを封着する期間、または封着した後に、前記放電空間内のガスを排気するステップと、前記放電空間に酸化性ガスを導入するステップと、前記酸化性ガスを排気するステップと、前記酸化性ガスを排気した後に、前記放電空間に還元性有機ガスを導入するステップと、前記還元性有機ガスを排気するステップと、前記放電空間に放電ガスを封入するステップと、を有する。
【選択図】図2

Description

ここに開示された技術は、表示デバイスなどに用いられるプラズマディスプレイパネルの製造方法に関する。
プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと称する)は、前面板と背面板とで構成される。前面板は、ガラス基板と、ガラス基板の一方の主面上に形成された表示電極と、表示電極を覆ってコンデンサとしての働きをする誘電体層と、誘電体層上に形成された酸化マグネシウム(MgO)からなる保護層とで構成されている。一方、背面板は、ガラス基板と、ガラス基板の一方の主面上に形成されたデータ電極と、データ電極を覆う下地誘電体層と、下地誘電体層上に形成された隔壁と、各隔壁間に形成された赤色、緑色および青色それぞれに発光する蛍光体層とで構成されている。
保護層には、主に2つの機能がある。1つ目は、放電によるイオン衝撃から誘電体層を保護することである。2つ目は、アドレス放電を発生させるための初期電子を放出することである。イオン衝撃から誘電体層が保護されることにより、放電電圧の上昇が抑制される。初期電子放出数が増加することにより、画像のちらつきの原因となるアドレス放電ミスが低減される。初期電子放出数を増加させるために、MgOに不純物を添加する技術や、MgO粒子をMgO膜上に形成する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2002−260535号公報
近年、テレビは高精細化が進んでおり、市場では低コスト・低消費電力・高輝度のフルHD(ハイ・ディフィニション)(1920×1080画素:プログレッシブ表示)PDPが要求されている。保護層からの電子放出特性はPDPの画質を決定するため、電子放出特性を制御することが非常に重要である。
このようにPDPの高精細化や低消費電力化を進めるにあたっては、放電電圧が高くならないようにすることと、さらに、点灯不良を低減して画質を向上させることを、同時に実現させなければならないという課題があった。
本発明はこのような課題に鑑みなされたもので、高輝度の表示性能を備え、かつ低電圧駆動が可能なPDPを実現することを目的としている。
上記課題を解決するため、本発明のPDPの製造方法は、電極、誘電体、および保護層を形成した前面板と、背面板とを、放電空間を形成して対向配置し、封着材にて封着し前記放電空間内のガスを排気する、封着排気工程を有するPDPの製造方法において、前記封着排気工程では、前記前面板と前記背面板とを封着する期間、または封着した後に、前記放電空間内のガスを排気するステップと、前記放電空間に酸化性ガスを導入するステップと、前記酸化性ガスを排気するステップと、前記酸化性ガスを排気した後に、前記放電空間に還元性有機ガスを導入するステップと、前記還元性有機ガスを排気するステップと、前記放電空間に放電ガスを封入するステップと、を有することを特徴とする。
本発明によれば、保護層における電子放出特性を向上させ、維持放電電圧を低減することが可能で、高精細画像でも高輝度で低電圧駆動が可能な表示特性に優れたPDPを実現することができる。
実施の形態に係るPDPの構造を示す斜視図 実施の形態に係るPDPの製造方法のフローチャート 第1のプロファイル例を示す図 第2のプロファイル例を示す図 第3のプロファイル例を示す図 第4のプロファイル例を示す図 第4のプロファイル例を示す図 第5のプロファイル例を示す図 第6のプロファイル例を示す図
[1.PDP1の構造]
PDPの基本構造は、一般的な交流面放電型PDPである。図1に示すように、PDP1は前面ガラス基板3などよりなる前面板2と、背面ガラス基板11などよりなる背面板10とが対向して配置されている。前面板2と背面板10とは、外周部がガラスフリットなどからなる封着材によって気密封着されている。封着されたPDP1内部の放電空間16には、ネオン(Ne)およびキセノン(Xe)などの放電ガスが53kPa〜80kPaの圧力で封入されている。
前面ガラス基板3上には、走査電極4および維持電極5よりなる一対の帯状の表示電極6とブラックストライプ7が互いに平行にそれぞれ複数列配置されている。前面ガラス基板3上には表示電極6とブラックストライプ7とを覆うようにコンデンサとしての働きをする誘電体層8が形成される。さらに誘電体層8の表面に酸化マグネシウム(MgO)などからなる保護層9が形成されている。なお、保護層9については、後に詳細に述べる。
走査電極4および維持電極5は、それぞれインジウム錫酸化物(ITO)、酸化錫(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)などの導電性金属酸化物からなる透明電極上にAgからなるバス電極が積層されている。
背面ガラス基板11上には、表示電極6と直交する方向に、銀(Ag)を主成分とする導電性材料からなる複数のデータ電極12が、互いに平行に配置されている。データ電極12は、下地誘電体層13に被覆されている。さらに、データ電極12間の下地誘電体層13上には放電空間16を区切る所定の高さの隔壁14が形成されている。隔壁14間の溝には、データ電極12毎に、紫外線によって赤色に発光する蛍光体層15、緑色に発光する蛍光体層15および青色に発光する蛍光体層15が順次塗布して形成されている。表示電極6とデータ電極12とが交差する位置に放電セルが形成されている。表示電極6方向に並んだ赤色、緑色、青色の蛍光体層15を有する放電セルがカラー表示のための画素になる。
なお、本実施の形態において、放電空間16に封入する放電ガスは、10体積%以上30体積%以下のXeを含む。
[2.PDP1の製造方法]
図2に示すように、本実施の形態に係るPDP1の製造方法は、前面板作製工程A1、背面板作製工程B1、フリット塗布工程B2、封着工程C1、還元性ガス導入工程C2、排気工程C3および放電ガス供給工程C4を有する。
[2−1.前面板作製工程A1]
前面板作製工程A1においては、フォトリソグラフィ法によって、前面ガラス基板3上に、走査電極4および維持電極5とブラックストライプ7とが形成される。走査電極4および維持電極5は、導電性を確保するための銀(Ag)を含む金属バス電極を有する。また、走査電極4および維持電極5は、透明電極を有する。金属バス電極は、透明電極に積層される。
透明電極の材料には、透明度と電気伝導度を確保するためインジウム錫酸化物(ITO)などが用いられる。まず、スパッタ法などによって、ITO薄膜が前面ガラス基板3上に形成される。次にリソグラフィ法によって所定のパターンの透明電極が形成される。
金属バス電極の材料には、銀(Ag)と銀を結着させるためのガラスフリットと感光性樹脂と溶剤などを含む電極ペーストが用いられる。まず、スクリーン印刷法などによって、電極ペーストが、前面ガラス基板3上に塗布される。次に、乾燥炉によって、電極ペースト中の溶剤が除去される。次に、所定のパターンのフォトマスクを介して、電極ペーストが露光される。
次に、電極ペーストが現像され、金属バス電極パターンが形成される。最後に、焼成炉によって、金属バス電極パターンが所定の温度で焼成される。つまり、金属バス電極パターン中の感光性樹脂が除去される。また、金属バス電極パターン中のガラスフリットが溶融する。溶融していたガラスフリットは、焼成後にガラス化する。以上の工程によって、金属バス電極が形成される。
ブラックストライプ7は、黒色顔料を含む材料により、形成される。次に、誘電体層8が形成される。誘電体層8の材料には、誘電体ガラスフリットと樹脂と溶剤などを含む誘電体ペーストが用いられる。まずダイコート法などによって、誘電体ペーストが所定の厚みで走査電極4、維持電極5およびブラックストライプ7を覆うように前面ガラス基板3上に塗布される。次に、乾燥炉によって、誘電体ペースト中の溶剤が除去される。最後に、焼成炉によって、誘電体ペーストが所定の温度で焼成される。つまり、誘電体ペースト中の樹脂が除去される。また、誘電体ガラスフリットが溶融する。溶融していた誘電体ガラスフリットは、焼成後にガラス化する。以上の工程によって、誘電体層8が形成される。ここで、誘電体ペーストをダイコートする方法以外にも、スクリーン印刷法、スピンコート法などを用いることができる。
誘電体層8の材料は、酸化ビスマス(Bi23)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化バリウム(BaO)から選ばれる少なくとも1種と、酸化モリブデン(MoO3)、酸化タングステン(WO3)、酸化セリウム(CeO2)、二酸化マンガン(MnO2)から選ばれる少なくとも1種とを含む。バインダ成分は、エチルセルロース、またはアクリル樹脂1重量%〜20重量%を含むターピネオール、またはブチルカルビトールアセテートである。また、ペースト中には、必要に応じて可塑剤としてフタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、リン酸トリフェニル、リン酸トリブチルを添加し、分散剤としてグリセロールモノオレート、ソルビタンセスキオレヘート、ホモゲノール(Kaoコーポレーション社製品名)、アルキルアリル基のリン酸エステルなどを添加してペーストとして印刷特性を向上させてもよい。
そして、保護層9は、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、及び酸化バリウム(BaO)から選ばれる少なくとも2つ以上の酸化物からなる金属酸化物により形成する。これらの金属酸化物は、保護層9のX線回折分析において、特定方位面の金属酸化物を構成する酸化物の単体より発生する最小回折角と最大回折角との間にピークが存在する。
本実施の形態では保護層9は電子ビーム蒸着法によって形成した。上述したように誘電体層8までを形成した前面ガラス基板3を、真空チャンバーに設置する。到達真空度は1.0×10-4Pa程度とし、前面ガラス基板3を180℃〜320℃程度まで加熱する。蒸着雰囲気は4.0×10-3Pa程度となるように、真空チャンバー内に流入する。
蒸着材料は上記の2つ以上の金属酸化物によって形成される。本実施の形態では、それぞれ金属酸化物を粉末にして混合し、これを高温・高圧によって直径約5mm、厚さ約2mmのタブレット形状に加工したものを使用した。これに限らず、それぞれの金属酸化物の結晶体を10mm〜15mm程度に粉砕し、これらを混合してもよい。そして、銅製あるいは炭素製であって冷却された容器(ハース)を真空チャンバー内に設置し、ここに蒸着材料を入れる。
電子ビームを発生する電子銃としてはピアス式電子銃を用い、発生した電子ビームを偏向コイルなどによって、上記ハースへ誘導し蒸着材料へ照射する。
保護層9の成膜レートは水晶振動子等によってモニターし、膜厚500nm〜1000nm程度とする。前面ガラス基板3は固定式であっても搬送式であってもよい。
なお、保護層9には上記膜上に、気相合成法などによって形成した酸化マグネシウム結晶粒子を付着させても良い。
以上の工程により前面ガラス基板3上に走査電極4、維持電極5、ブラックストライプ7、誘電体層8、保護層9が形成され、前面板2が完成する。
[2−2.背面板作製工程B1]
まず、フォトリソグラフィ法によって、背面ガラス基板11上に、データ電極12が形成される。データ電極12の材料には、導電性を確保するための銀(Ag)と銀を結着させるためのガラスフリットと感光性樹脂と溶剤などを含むデータ電極ペーストが用いられる。まず、スクリーン印刷法などによって、データ電極ペーストが所定の厚みで背面ガラス基板11上に塗布される。次に、乾燥炉によって、データ電極ペースト中の溶剤が除去される。次に、所定のパターンのフォトマスクを介して、データ電極ペーストが露光される。次に、データ電極ペーストが現像され、データ電極パターンが形成される。最後に、焼成炉によって、データ電極パターンが所定の温度で焼成される。つまり、データ電極パターン中の感光性樹脂が除去される。また、データ電極パターン中のガラスフリットが溶融する。溶融していたガラスフリットは、焼成後にガラス化する。以上の工程によって、データ電極12が形成される。ここで、データ電極ペーストをスクリーン印刷する方法以外にも、スパッタ法、蒸着法などを用いることができる。
次に、下地誘電体層13が形成される。下地誘電体層13の材料には、誘電体ガラスフリットと樹脂と溶剤などを含む下地誘電体ペーストが用いられる。まず、スクリーン印刷法などによって、下地誘電体ペーストが所定の厚みでデータ電極12が形成された背面ガラス基板11上にデータ電極12を覆うように塗布される。次に、乾燥炉によって、下地誘電体ペースト中の溶剤が除去される。最後に、焼成炉によって、下地誘電体ペーストが所定の温度で焼成される。つまり、下地誘電体ペースト中の樹脂が除去される。また、誘電体ガラスフリットが溶融する。溶融していた誘電体ガラスフリットは、焼成後にガラス化する。以上の工程によって、下地誘電体層13が形成される。ここで、下地誘電体ペーストをスクリーン印刷する方法以外にも、ダイコート法、スピンコート法などを用いることができる。
次に、フォトリソグラフィ法によって、隔壁14が形成される。隔壁14の材料には、フィラーと、フィラーを結着させるためのガラスフリットと、感光性樹脂と、溶剤などを含む隔壁ペーストが用いられる。まず、ダイコート法などによって、隔壁ペーストが所定の厚みで下地誘電体層13上に塗布される。次に、乾燥炉によって、隔壁ペースト中の溶剤が除去される。次に、所定のパターンのフォトマスクを介して、隔壁ペーストが露光される。次に、隔壁ペーストが現像され、隔壁パターンが形成される。最後に、焼成炉によって、隔壁パターンが所定の温度で焼成される。つまり、隔壁パターン中の感光性樹脂が除去される。また、隔壁パターン中のガラスフリットが溶融する。溶融していたガラスフリットは、焼成後にガラス化する。以上の工程によって、隔壁14が形成される。ここで、フォトリソグラフィ法以外にも、サンドブラスト法などを用いることができる。
次に、蛍光体層15が形成される。蛍光体層15の材料には、蛍光体粒子とバインダと溶剤などとを含む蛍光体ペーストが用いられる。まず、ディスペンス法などによって、蛍光体ペーストが所定の厚みで隣接する隔壁14間の下地誘電体層13上および隔壁14の側面に塗布される。次に、乾燥炉によって、蛍光体ペースト中の溶剤が除去される。最後に、焼成炉によって、蛍光体ペーストが所定の温度で焼成される。つまり、蛍光体ペースト中の樹脂が除去される。以上の工程によって、蛍光体層15が形成される。ここで、ディスペンス法以外にも、スクリーン印刷法などを用いることができる。
以上の工程により、背面ガラス基板11上に所定の構成部材を有する背面板10が完成する。
[2−3.フリット塗布工程B2]
次に、背面板作製工程B1により作製した背面板10の画像表示領域外に封着部材であるガラスフリットを塗布する。その後、ガラスフリットの樹脂成分等を除去するために350℃程度の温度で仮焼成するフリット塗布工程B2を行う。
ここで、封着部材としては、酸化ビスマスや酸化バナジウムを主成分としたフリットが望ましい。この酸化ビスマスを主成分とするフリットとしては、例えば、Bi23−B23−RO−MO系(ここでRは、Ba、Sr、Ca、Mgのいずれかであり、Mは、Cu、Sb、Feのいずれかである。)のガラス材料に、Al23、SiO2、コージライト等酸化物からなるフィラーを加えたものを用いることができる。また、酸化バナジウムを主成分とするフリットとしては、例えば、V25−BaO−TeO−WO系のガラス材料に、Al23、SiO2、コージライト等酸化物からなるフィラーを加えたものを用いることができる。
[2−4.封着工程C1から放電ガス供給工程C4まで]
次に、前面板2とフリット塗布工程B2を経た背面板10とが対向配置されて周辺部が封着部材により封着される。その後、放電空間内のガスが排気される。この後放電空間に放電ガスが封入される。上述したように本実施の形態では、前面板2と背面板10とを封着する期間、または封着した後に、放電空間内のガスを排気するステップと、放電空間に還元性有機ガスを曝すステップと、還元性有機ガスを排気するステップと、を有する。すなわち以下のような工程となる。
本実施の形態に係る封着工程C1、還元性ガス導入工程C2、排気工程C3および放電ガス供給工程C4は、同一の装置において、図3〜図7に示す温度・圧力プロファイルの処理を行う。各図(a)が温度プロファイルを示し、各図(b)がPDP1内圧力プロファイルを示す。そして本実施の形態では、封着工程C1完了後、あるいはその工程中においてPDP1の放電空間内のガスを排気する一次排気工程E1が実施される。
同図における封着温度とは、前面板2と背面板10とが封着部材であるフリットにより封着されるときの温度である。本実施の形態における封着温度は、例えば約490℃である。また、同図における排気温度とは、PDP1内に放電ガスを入れるためにPDP1内のガスを排気する時の温度である。本実施の形態における排気温度は、例えば約400℃である。
[2−4−1.第1のプロファイル例]
図3に本実施の形態における第1のプロファイル例を示す。同図に示すように、まず温度は、室温から封着温度まで上昇する。次に、温度は、期間a−bで封着温度に維持される。次に温度は時間bから、封着温度から排気温度に下降する。ここまでを封着工程C1とする。
そして時間eまでの期間排気温度に維持される。そして、時間fの期間まで降温される。
封着は、封着工程C1において温度が上昇すると共に上述した封着部材が軟化し、前面板2と背面板10とが封着部材で接着し、PDP1の内部が気密化され、内部と外部とで気体が通過しなくなった状態で完了すると考えられる。発明者等が検討した結果、これは封着部材の転移点T℃に対して、T+150℃程度で完了する。本実施の形態では、上述した封着部材を使用し、この温度は450℃〜500℃の範囲であった。
本実施の形態では、この封着が完了した温度から、一次排気工程E1を行う。これは背面板10に設けた排気管より放電空間16内を排気し真空状態にする。これによって後に行う還元性ガス導入工程C2において、還元性有機ガスがPDP1内部全域に均等に行き渡り、還元性ガスによる保護層9への効果がPDP1面内均一になる。
また、本実施の形態では保護層9として酸化マグネシウム単一成分ではなく、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、及び酸化バリウム(BaO)のうち複数成分を含んだ保護層としている。このような保護層は、周辺雰囲気の影響を受け変質しやすく、水酸化、炭酸化が容易に生じる。特に炭酸化が生じた場合には、PDP1として放電開始電圧が高くなってしまう課題が生じてしまう。そこで、本実施の形態のように還元性ガス導入工程C2の前に一次排気工程E1を行うことによって、保護層9の炭酸化を防止することができる。
この一次排気工程E1の処理時間は長い方が望ましいが、生産効率を考慮する必要があるため、到達真空度が1.0×10-4Paの状態で最短でも10min〜20min保持することが望ましい。なお、上記の到達真空度は排気装置側にて測定した数値であり、PDP1内の到達真空度は上記数値に対して一桁以上高くなる。
この一次排気工程E1が終了した後、還元性ガス導入工程C2を行う。この工程において、温度は、c−dの期間、排気温度に維持される。そして、c−dの期間に放電空間内に還元性有機ガスを含むガスが導入される。c−dの期間に保護層9は、還元性有機ガスを含むガスに曝される。還元性ガス導入工程C2においても、還元性有機ガスへの曝露時間はより長い方が好ましいが、生産効率を考慮し、20min〜60min程度としている。また、発明者等が検討した結果、この期間におけるPDP1内の還元性有機ガスの到達圧力が高い方が、より効果が高くなることが判明した。これは保護層9と接する還元性有機ガスの絶対量が多いことで、保護層9の反応絶対量が増加することに起因していると考えられる。同様に還元性有機ガスの濃度が高くても、より効果が高くなる。
本実施の形態において、導入するガスは、還元性有機ガス(ガス種は後述する)を1.5%〜6.5%含有し、当該還元性有機ガス以外のガス(ベースガス)としてNeなどを用い、全体の圧力を80kPa〜大気圧程度としている。ここでベースガスとしてNeを例に挙げたが、ベースガスをPDP1内に封入する放電ガスの一成分を用いることが望ましい。これによって、たとえ導入したガスが放電空間内に残留したとしてもPDPの放電特性に影響を与えないようにすることができる。
その後、排気工程C3(図3(b)ではE2で示す)において、温度は所定の期間、排気温度に維持される。その後、温度は、室温程度まで下降する。d−eの期間において、放電空間内が排気されることにより、還元性有機ガスを含むガスが排出される。
次に、放電ガス供給工程C4において、放電空間内に放電ガスが導入される。つまり、温度が室温程度に下がったe以降の期間に放電ガスが導入される。
なお、本実施の形態では、一次排気期間E1を期間a−b以前に開始しているが、これに限らず、温度保持期間であるa−bの途中で開始しても構わない。
また、本実施の形態では、還元性ガス導入工程C2を排気温度に降温した直後に開始しているが、これに限らず、排気温度保持期間d−eの途中で開始しても構わない。
[2−4−2.第2のプロファイル例]
第2のプロファイル例としては、図4に示すようになる。第2のプロファイル例において、第1のプロファイル例と異なる点は、還元性ガス導入工程C2(期間c−d)が、封着温度保持期間a−dに行われる点である。
これによって、還元性ガス導入工程C2がより高温で行われるため、還元性有機ガスによる放電電圧を低下させる効果がより大きくなる。還元性ガス導入工程C2の後に排気工程C3が行われる。その他の工程については第1のプロファイル例と同じ工程となる。
[2−4−3.第3のプロファイル例]
第3のプロファイル例を、図5に示す。第3のプロファイル例において、第1のプロファイル例と異なる点は、一次排気工程E1の開始時である。
第1のプロファイル例では、前面板2と背面板10との封着が完了した時点で、一次排気工程E1を開始していた。これに対し第3のプロファイル例においては、両者の封着が完了する前に一次排気工程E1を開始する。
第1のプロファイル例では、PDP1の温度が450℃〜490℃にて一次排気工程E1を開始していたが、この温度では少量ではあるが保護層9の炭酸化は開始している。そこで第3のプロファイル例では保護層9の炭酸化が全く生じていない温度から一次排気工程E1を開始するようにしている。本実施の形態では150℃〜400℃にて開始するようにした。これによって、保護層9の炭酸化を抑制する効果がより大きくなる。
なお、上述したように第3のプロファイル例においては、前面板2と背面板10との封着が完了していないため、一次排気工程E1開始時においてPDP1外の気体を排気することになるが、一次排気工程E1での到達真空度を第1のプロファイル例と同等にすることによって、PDP1面内を均一にする効果を奏することが可能である。
[2−4−4.第4のプロファイル例]
第4のプロファイル例を、図6に示す。第4のプロファイル例において、第1のプロファイル例と異なる点は、還元性有機ガスを導入する還元性ガス導入工程C2の圧力である。第4のプロファイル例では、還元性ガス導入工程C2の圧力を大気圧以上としている。
これによって、還元性ガス導入工程C2において、還元性ガスをPDP1の面内中央部まで確実に到達させることができる。結果としてPDP1の保護層9全域において、均一に還元性ガスを曝すことができ、放電電圧を低下させる効果がより均一になる。
本実施の形態においては、還元性ガス導入工程C2の圧力を110kPa〜120kPaとしている。
なお、第4のプロファイル例では還元性ガス導入工程C2の全期間において、PDP1内における還元性ガスの圧力を大気圧以上としているが、これに限らず図7に示すように、PDP1内の圧力を瞬間的に大気圧以上としてもよい。PDP1はその後、前面板2および背面板10の形状の回復によりPDP1内の圧力は大気圧程度となる。この方法においても第4のプロファイル例と同等の効果が得られ、さらに内部を大気圧以上とすることによってPDP1を破壊してしまうリスクを低減することができる。
[2−4−5.第5のプロファイル例]
第5のプロファイル例としては、図8に示すようになる。第5のプロファイル例において、第1のプロファイル例と異なる点は、還元性ガス導入工程C2において、還元性ガスが導入される時の温度である。
一般に前面板・背面板が封着されたPDP内にガスを導入する場合、排気管などからガスを導入する必要があるため、PDP内の全領域の保護層・蛍光体層は同時にガスに曝されるわけではなく、排気管に近い領域から順次ガスに曝されることになる。
このため、還元性ガスをPDP1内に導入する際においても、還元性ガスが保護層と反応する温度以上であった場合、還元性ガスが保護層に接した領域から順次反応が開始されてしまう。この結果、PDP面内において保護層と還元性ガスとの反応程度に依存したムラが生じ、同様にPDP面内で放電電圧が低下する効果の程度にも差が生じる。
そこで、第5のプロファイル例では、還元性ガス導入工程C2の還元性ガスが導入される際のPDP1の温度を、還元性ガスと保護層とが反応を開始する温度よりも低くしている。同図に示すようにこの還元性ガスが導入される際の温度をT1としている。これによって、PDP1内では曝された領域から還元性ガスと保護層とが反応する現象とならず、PDP1内全体に還元性ガスが行き渡るようになる。またこのように温度を下げることによって、還元性ガス導入前におけるPDP1内の真空度がさらに良化する。つまり、前述の第1のプロファイル例における還元性ガス導入前のPDP1内の真空度P1(Pa)に対し、本プロファイル例おける還元性ガス導入前のPDP1内の真空度P2(Pa)は、P2<P1となる。
そして、PDP1内全体に還元性ガスが行き渡る時間(42インチサイズPDPで10min程度)保持した後、再度PDP1の温度を、還元性ガスと保護層とが反応する温度以上まで昇温する。これによりPDP1の面内でほぼ同時に還元性ガスと保護層とが反応を開始すると共に、均一に反応が進行し、同様にPDP面内で均一に放電電圧が低下する効果が得られる。
ここで、第5のプロファイル例では、還元性ガスと保護層との反応が開始しない温度として温度T1としたが、これは使用する還元性ガス種によって異なる。後述する還元性有機ガス種の検討にて使用したガスでは、PDP1の温度を300℃以下とすることで、当該還元性ガスと保護層との反応を防止することができる。
また、第5のプロファイル例では、温度T1を低くすることによって、還元性ガスと保護層との反応を防止する効果は得られるが、一方で温度T1を低くしすぎることで弊害も発生することが判明した。温度T1が低い場合、表面積が大きい蛍光体層や隔壁などに還元性ガスが吸着してしまい、後に昇温したとしても、還元性ガスと保護層との反応が生じない領域が存在することが明らかとなった。発明者等の実験の結果、後述する還元性有機ガス種においては、温度T1の下限値を50℃〜100℃とすることによって、還元性ガスの蛍光体層への吸着を防止することができる。
このような結果から、第5のプロファイル例では、還元性ガス導入工程C2のガスを導入する際にPDP1の温度T1を300℃以下、100℃以上としている。これによって還元性ガスと保護層との反応をPDP面内均一に行うことができ、放電電圧のPDP1面内ムラを抑制する効果が得られる。
[2−4−6.第6のプロファイル例]
第6のプロファイル例を、図9に示す。第6のプロファイル例において、第1のプロファイル例と異なる点は、一次排気工程E1の後であって、還元性有機ガスを導入する還元性ガス導入工程C2の前に、PDP1内に酸化性ガスを導入する工程を有する点である。
このように還元性ガス導入工程C2の前に、PDP1内に酸化性ガスを導入し、酸素雰囲気に保護層9を曝すことによって次の効果が得られる。
還元性有機ガスを保護層9に曝すことによる電子放出特性が向上する機構としては、還元性有機ガスが金属酸化物からなる保護層9を還元することで、保護層結晶に酸素欠損が生成され、電子放出特性が向上するためと考えられる。
しかしながら、保護層9表面に有機物が残留していると、還元性有機ガスが保護層表面に到達することができず、所望の効果を得ることができない。そこで第6のプロファイル例に示すように、還元性ガス導入工程C2よりも前に酸化性ガスを導入することで、保護層9の表面に存在する有機物が燃焼され、上記還元性有機ガスの効果が表示領域前面にわたって均一に作用し、維持放電電圧を表示領域前面にわたって均一に低下させることができる。
酸化性ガス導入工程の時間、圧力などの諸条件は、還元性ガス導入工程の条件と同様で構わない。
酸化性ガスとしては、酸素ガスを希ガスや窒素ガスに混合して作製したガスや、アルコール類やエーテル類などの、酸素原子が分子構造に含まれる有機化合物を希ガスや窒素ガスに混合して作製したガスを用いることができる。
[2−4−7.還元性有機ガスの詳細]
表1に示すように、還元性有機ガスとしては、分子量が58以下の還元力の大きいCH系有機ガスが望ましい。種々の還元性有機ガスの中から選ばれる少なくとも一つが希ガスや窒素ガスなどに混合されることにより、還元性有機ガスを含むガスが製造される。
Figure 2012248447
表1において、Cの列は、有機ガスの一分子に含まれる炭素原子数を意味する。Hの列は、有機ガスの一分子に含まれる水素原子数を意味する。
表1に示すように、蒸気圧の列において、0℃での蒸気圧が100kPa以上のガスには、「A」が付されている。さらに、0℃での蒸気圧が100kPaより小さいガスには、「C」が付されている。沸点の列において、1気圧での沸点が0℃以下のガスには、「A」が付されている。さらに、1気圧での沸点が0℃より大きいガスには、「C」が付されている。分解しやすさの列において、分解しやすいガスには、「A」が付されている。分解しやすさが普通のガスには、「B」が付されている。還元力の列において、還元力が十分であるガスには、「A」が付されている。
表1において、「A」は良い特性であることを意味する。「B」は普通の特性であることを意味する。「C」は不十分な特性であることを意味する。
PDPの製造工程における有機ガスの取扱い易さの観点から考えると、ガスボンベに入れて供給できる還元性有機ガスが望ましい。また、PDPの製造工程における取扱い易さから考えると、0℃での蒸気圧が100kPa以上の還元性有機ガス、または沸点が0℃以下の還元性有機ガス、または分子量が小さい還元性有機ガスが望ましい。
さらに、排気工程C3の後にも還元性有機ガスを含むガスの一部が放電空間内に残留する可能性がある。よって、還元性有機ガスは、分解しやすい特性を有することが望ましい。
還元性有機ガスは、製造工程上での取扱い易さや、分解しやすい特性などの点を考慮して、アセチレン、エチレン、メチルアセチレン、プロパジエン、プロピレンおよびシクロプロパンの中から選ばれる酸素を含まない炭化水素系ガスが望ましい。これらの還元性有機ガスの中から選ばれる少なくとも一種を希ガスや窒素ガスに混合して用いればよい。
本発明者らが実験した結果では、例えば化学式でC36であるプロピレンガス、シクロプロパンガスを使用した場合は、維持電圧を約10V低下させることができた。また、化学式でC22であるアセチレンガスを使用した場合は、維持電圧を約20V低下させることができることが分かった。
なお、希ガスや窒素ガスと還元性有機ガスの混合比率は、使用する還元性有機ガスの燃焼割合に応じて下限が決定される。上限は、数体積%程度である。還元性有機ガスの混合比率が高すぎると、有機成分が重合して高分子となりやすい。この場合、高分子が放電空間に残留し、PDPの特性に影響を与えてしまう。よって、使用する還元性有機ガスの成分に応じて、混合比率を適宜調整することが好ましい。
[3.まとめ]
本実施の形態に開示されたPDP1の製造方法は、以下の工程を備える。還元性有機ガスを含むガスを放電空間に導入することにより、保護層9を還元性有機ガスに曝す。次に、還元性有機ガスを放電空間から排出する。次に、放電ガスを放電空間に封入する。
還元性有機ガスに曝された保護層9には、酸素欠損が生じる。酸素欠損が生じることにより、保護層の二次電子放出能力が向上すると考えられる。したがって、本実施の形態に係る製造方法で製造されたPDP1は、維持電圧を低減することができる。
さらに、還元性有機ガスは、酸素を含まない炭化水素系ガスであることが好ましい。酸素を含まないことによって、還元能力が高まるからである。
さらに、還元性有機ガスは、アセチレン、エチレン、メチルアセチレン、プロパジエン、プロピレン、シクロプロパン、プロパンおよびブタンの中から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。上記の還元性有機ガスは、製造工程上での取扱いが容易だからである。さらに、上記の還元性有機ガスは、分解が容易だからである。
なお、本実施の形態においては、放電空間を排気した後、還元性有機ガスを含むガスを放電空間に導入する製造方法が例示された。しかし、放電空間を排気することなく、放電空間に還元性有機ガスを含むガスを連続的に供給することによって、還元性有機ガスを含むガスを放電空間に導入することもできる。
なお、以上の説明では、下地層として、MgO膜を例に挙げた。しかし、下地層に要求される性能はあくまでイオン衝撃から誘電体を守るための高い耐スパッタ性能を有することである。すなわち、電荷保持能力や電子放出性能が高くなくてもよい。従来のPDPでは、一定以上の電子放出性能と耐スパッタ性能という二つを両立させるため、MgOを主成分とした保護層を形成する場合が非常に多かった。しかし、電子放出性能が金属酸化物の結晶粒子によって支配的に制御される構成を取る場合、下地層はMgOである必要は全くない。下地層に、Al23等の耐衝撃性に優れる他の材料を用いても全く構わない。
また、本実施の形態では、金属酸化物の結晶粒子としてMgOが例示された。しかし、この他の単結晶粒子でも、MgO同様に高い電子放出性能を持つSr、Ca、Ba、Alなどの金属酸化物による結晶粒子を用いても同様の効果を得ることができる。よって、金属酸化物の結晶粒子としてはMgOに限定されるものではない。
以上のように本実施の形態に開示された技術は、高画質の表示性能を備え、かつ低消費電力のPDPを実現する上で有用である。
1 PDP
2 前面板
3 前面ガラス基板
4 走査電極
5 維持電極
6 表示電極
7 ブラックストライプ
8 誘電体層
9 保護層
10 背面板
11 背面ガラス基板
12 データ電極
13 下地誘電体層
14 隔壁
15 蛍光体層
16 放電空間

Claims (1)

  1. 電極、誘電体、および保護層を形成した前面板と、背面板とを、放電空間を形成して対向配置し、封着材にて封着し前記放電空間内のガスを排気する、封着排気工程を有するプラズマディスプレイパネルの製造方法において、
    前記封着排気工程では、
    前記前面板と前記背面板とを封着する期間、または封着した後に、前記放電空間内のガスを排気するステップと、
    前記放電空間に酸化性ガスを導入するステップと、
    前記酸化性ガスを排気するステップと、
    前記酸化性ガスを排気した後に、前記放電空間に還元性有機ガスを導入するステップと、
    前記還元性有機ガスを排気するステップと、
    前記放電空間に放電ガスを封入するステップと、を有する、
    プラズマディスプレイパネルの製造方法。
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