JP2012246438A - 高分子錯体およびこれを用いたガス吸着材及びガス分離装置 - Google Patents

高分子錯体およびこれを用いたガス吸着材及びガス分離装置 Download PDF

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Abstract

【課題】ガス吸着圧力が低い環境であってもガスを吸着しうるガス吸着材を提供する。
【解決手段】式[X(Y,Y’)22nで表わされる単位構造を有した二次元平面格子積層型の基本構造を有する高分子金属錯体であって、Xは、コバルト、ニッケル、銅のいずれかの二価イオンであり、YはCF3BF3 -イオン、Y’はCF3SO3 -イオンであり、Lの有機配位子が4,4’―ビピリジンであることを特徴とする高分子金属錯体。これを用いたガス吸着材及びガス分離装置。
【選択図】図4

Description

本発明は高分子金属錯体及びこれを用いたガス吸着材及びガス分離装置に関するものである。
ガス吸着材を用いたガスの貯蔵は加圧貯蔵や液化貯蔵に比べて、低圧で大量のガスを貯蔵しうる特性を有することから、ガス吸着材を用いたガス貯蔵装置やガス分離装置の開発が行われている。
ガス吸着材とは、所定の圧力においてガスを吸着する材料であり、ガス吸着材のガス吸着量とガス吸着・放出の容易性が主要な開発要素となっている。
特許文献1ないし非特許文献1には、多孔性の高分子金属錯体にガスを吸蔵させる方法が提案されているが、ガス吸着量が不十分である。
非特許文献2では、細孔径を小さくし、細孔容量を上げてガス吸着量の増大を図る方法が開示されているが、単純に細孔径を小さくして細孔容量を上げた場合には、例えば相対圧0.1以下で吸着が生じるものの、当該圧力で吸着されたガスを放出することが困難となる。
非特許文献3、非特許文献4では、外部刺激による動的構造変化を生じる高分子金属錯体(以下、「動的構造変化金属錯体」という。)を開示している。内部に空孔を有する動的構造変化金属錯体をガス吸着材として使用した場合には、ある一定の圧力まではガスを吸着しないが、有る一定圧を越えるとガス吸着が始まるという特異な現象(以下、「ゲート現象」という。)が観測されている。同様に、ガスの放出に関しては、一定圧まではガスを放出しないが、一定圧以下になるとガスを急激に放出する現象も同時に観察されている。
非特許文献5、非特許文献6には、内部に空孔を有する動的構造変化金属錯体をガス吸着材として利用されることが開示されている。
二次元平面が積層された構造を有し、動的構造変化を生じる高分子金属錯体は、ガスの吸着、分離に使用する場合は、一定圧を越えるとガス吸着が始まる現象や、一定圧まではガスを脱着しないが一定圧以下になるとガスを急激に脱着する現象は、低い圧力でのガス保持や、比較的高いガス圧でのガス払い出しが可能になるなど、ガスの吸着、分離、貯蔵材料として好ましい。そこで、非特許文献7には、Cuを中心金属とし、ビピリジン及びCF3BF3を配位子とする金属錯体が開示され、特許文献2には、例えばCuを中心金属とし、4、4‘―ピピリジル及びCF3SO3を配位子とする金属錯体が開示されている。
特開2000-109493号公報 特開2005−232033号公報
北川進、集積型金属錯体、講談社サイエンティフィク、2001年214-218頁 Matzger,A.J. et al., Angew. Chem. Int. Ed., (2008), 47, 677 植村一広、北川進、未来材料(2002)12月号、44 松田亮太郎,北川進、Petrotec(2003)第26巻2号第97頁〜104頁 Kitagawa, S. et al., Angewandte Chem. Int. Ed. (2003)428 Seki, K. et al., Phys. Chem. Chem. Phys., (2002) 4, 1968 Hirofumi Kanoh et al.,Journal of Colloid and Science 334 (2009) p.1〜7
しかしながら、非特許文献7ないし特許文献2に開示された金属錯体を用いたガス吸着材のガス吸着量も十分ではないという問題がある。具体的には、特許文献2によりCF3SO3 -イオンを含む錯体有するガス吸着材も、ガス吸着圧力が0.2(相対圧)でないとガスを吸着しない。
本発明は、ガス吸着圧力が0.1(相対圧)以下であってもガス吸着を実行しうるガス吸着材を提供することにある。
本発明者らは、上記の問題点を解決すべく、鋭意研究を積み重ねた結果、二次元平面格子積層の基本骨格を有し、金属イオンがコバルト、ニッケル、銅のいずれかの二価イオンであり、有機配位子がビピリジンであり、二種類以上の対イオンがCF3BF3 -イオンとCF3SO3 -イオンの組み合わせである場合には、ガス吸着圧力が0.1(相対圧)以下であってもガスを吸着する現象を発見した。
本発明の要旨は以下のようになる。
(1)式[X(Y,Y’)22n
(式中、Xは、コバルト、ニッケル、銅のいずれかの二価イオンであり、
YはCF3BF3 -イオン、Y’はCF3SO3 -イオンであり、
Lは、4,4’―ビピリジンである。)
で表わされる単位構造を有した二次元平面格子積層型の基本構造を有する高分子金属錯体。
(2)(1)に記載された高分子金属錯体を含むことを特徴とするガス吸着材。
(3)(2)に記載のガス吸着材を用いてなる圧力スイング吸着方式ガス分離装置。
本発明の金属錯体を用いたガス吸着材を用いると、0.1(相対圧)以下の圧力であってもガスを吸着すると言う顕著な効果を奏する。
本発明の高分子金属錯体は、ガスの吸脱着に関する特殊な性質を活用して各種用途に適用することができる。例えば、圧力スイング吸着方式(以下「PSA方式」と略記)のガス分離装置における吸着材に適用した場合にあっては、本発明のガス吸着材の特性を活かして、非常に効率良いガス分離が可能であるという顕著な効果を奏する。
本発明の金属錯体を用いたガス吸着材をもちいると、圧力変化に要する時間を短縮でき、省エネルギーにも寄与するという顕著な効果を奏する。
さらに、金属錯体を用いたガス吸着材をもちいるとガス分離装置の小型化にも寄与しうるため、高純度ガスを製品として販売する際のコスト競争力を高めることができることは勿論、自社工場内部で高純度ガスを用いる場合であっても、高純度ガスを必要とする設備に要するコストを削減できるため、結局最終製品の製造コストを削減するという顕著な効果を奏する。
従来の高分子金属錯体の構造を示す模式図である。 高分子金属錯体の積層の様態(4格子分のみ抜き書きし、さらに一層分のみ抜き書き)を示す模式図であるが、(a)斜め上から見た図、(b)真上から見た図、(c)真横から見た図である。 高分子金属錯体の積層の様態(二層分)を示す模式図である。(a)斜め上から見た図、(b)真上から見た図、(c)真横から見た図である。 本発明の高分子金属錯体の構造を模式的に示す。 ガス吸着圧力と吸着量の関係を示す吸着等温線の例を示す。 (a)本発明の実施例のガス吸着材に於ける窒素ガス吸脱着曲線(77Kにて測定)、(b)従来のガス吸着材に於ける窒素ガス吸脱着曲線(77Kにて測定)である。 実施例1で製造された高分子金属錯体結晶のX線結晶構造解析により決定された結晶構造(A軸方向、B軸方向)を示す。 実施例1で製造された高分子金属錯体結晶のX線結晶構造解析により決定された結晶構造(C軸方向)を示す。
[第1の発明]
第1の発明は、式[X(Y,Y’)22nで表わされる単位構造を有した二次元平面格子積層型の基本構造を有する高分子金属錯体であって、式中、Xはコバルト、ニッケル、銅のいずれかの二価イオンであり、Y及びY’は、YがCF3BF3 -イオン、Y’がCF3SO3 -イオンの対イオンから構成され、Lは有機配位子であって4,4’―ビピリジンである、高分子金属錯体である。
CF3BF3 -イオン及びCF3SO3 -イオンのモル比は、好ましくは35:65〜65:35、より好ましくは41:59〜59:41、さらに好ましくは43:57〜57:43、特に47:53〜53:47である。基本的には1:1が好ましい。
この高分子金属錯体は、金属イオンを交点とし、細長い形状の両末端に配位点を有する配位子が金属に配位することで、いわゆる2Dスクエアグリッド状の単層を形成しており(Zawarotoko,M.J.,Crystal Engineering,2(1999),37)、さらにこの単層が、層間のファンデルワールス力、π−π相互作用、金属イオンに配位した対イオン同士の相互作用等を仲立ちにして積層することで、3次元的な広がりを有する高分子金属錯体を形成している。
本発明の高分子金属錯体は多孔体であるため、水やアルコールやエーテルなどの有機分子にふれると孔内に水や有機溶媒を含有し、あるいは場合によっては金属イオンと配位子の間に水や有機溶媒の挿入を受け、たとえば[XY22mn(ただし、式中は対イオン、Lは有機配位子を示す。Zは水、アルコール、エーテルなどの有機分子を示し、mは0.5以上)であるような複合錯体に変化する場合がある。
しかしこれらの複合錯体中の水やアルコール、エーテルなどの有機分子は、高分子金属錯体に弱く結合しているだけであり、ガス吸着材として利用する際の減圧乾燥などの前処理によって除かれ、元の[X(Y,Y’)22nで表される錯体に戻る。そのため、[X(Y,Y’)22mnで表されるような錯体であっても、本質的には本発明の高分子金属錯体と同一物と見なすことができる。
本発明の高分子金属錯体の対イオンは、二次元積層構造の層と層の間に存在し、層間をつなぎ止める働きをしていると考えられるが、対イオンが単一の場合に比べ、2種類の対イオンが混合して存在するので、イオンの大きさが異なることから、結晶格子に歪みが生じる等して、層間相互作用が低下していると考えられる。
図1に、従来の高分子金属錯体の構造を模式的に示す。金属イオン1、1’が配位した二価の金属イオン2に4,4’―ビピリジンからなる二価の有機配位子3が配位して層状の平面構造を形成している。金属イオン1、1’は平面構造に対してある角度で配向している。
図2を参照して高分子金属錯体の積層の様態について述べる。図2の(a)は斜め上から見た図、(b)は真上から見た図、(c)は真横から見た図である。実際は無限に連鎖する格子が積層した物質であるが、4格子分のみ抜き書きし、さらに一層分のみ抜き書きしている。球で示された金属イオン1つに対し、棒で示された配位子4個が連結されている。さらに金属イオンには円錐で示された対イオンが2個連結されている。
図3に、図2に示した高分子金属錯体の積層の二層分の態様を示す。図3の(a)は斜め上から見た図、(b)は真上から見た図、(c)は真横から見た図である。このように、図3は二層ではあるが、平面構造が積層した構造を示している。
図4に、本発明の高分子金属錯体の構造を模式的に示す。本発明の高分子金属錯体の場合には、1つの高分子金属錯体に二種類の金属イオン1、1’を含むので、二価の金属イオン2に4,4’―ビピリジンからなる二価の有機配位子3が配位して層状の平面構造において、その二価の金属イオン2に二種類の金属イオン1、1’が配位している。そのため、金属イオン1、1’が二種類混在して、層同士の重なりが粗となり、層同士の相互作用が弱く、結果として低圧でガスが吸着されやすいと推定される。
これに対して、図1に示した従来材料の構造では、金属イオンに連結される対イオンが同一であり、層の重なりが緻密であり、層同士の相互作用が強いと考えられる。
(ガス吸着効果)
上記のように、本発明の高分子金属錯体の対イオンは、2種類であってイオンの大きさが異なることから、結晶格子に歪みが生じる等して、層間相互作用が低下しているために、ガスの吸収圧力が低下すると考えられる。
図5を参照すると、ガス吸着圧力と吸着量は、吸着等温線と呼ばれるグラフにて表示される。横軸はガス圧力(相対値)、縦軸は吸着材mg当たりのガス吸着量である。図5の例では、矢印の点から高圧部でガス吸着量が増加している(ガスが吸着されている)。ここで、ガス圧力の相対値とは、その温度におけるガスの飽和蒸気圧に対する実圧力の比であり、P0で表される。たとえば、あるガスの0度における飽和蒸気圧が1気圧の時、容器内のそのガスの圧力が0度で0.7気圧であれば、相対圧P0=0.7と表記される。
図6に、(a)本発明の実施例1で製造したガス吸着材に於ける窒素ガス吸脱着曲線(77Kにて測定)を示す。横軸は相対圧力、縦軸はガス吸着量(吸着材(g)当たりのガス吸着量(mL))であり、相対圧0.02(矢印)で顕著なガス吸着が生じる。(b)従来のガス吸着材(比較例3で製造したガス吸着材)に於ける窒素ガス吸脱着曲線(77Kにて測定)を示すが、横軸は相対圧力、縦軸はガス吸着量(吸着材(g)当たりのガス吸着量(mL))であり、相対圧0.2(矢印)でガス吸着が生じている。
(製造方法)
[X(Y,Y’)22nで表される化合物は、例えば、XおよびY、Y’を含有する塩と有機配位子を溶媒に溶かして溶液状態で混合することで製造できる。
Xを含有する塩としては、限定されないが、ほうふっ化銅、ほうふっ化コバルト、ほうふっ化ニッケル、トリフルオロメタンスルホン酸銅、トリフルオロメタンスルホン酸コバルト、トリフルオロメタンスルホン酸ニッケルなどを用いることができる。Xを含有する塩としては、Xを含む金属塩を用いることが好ましい。
Y、Y’を含有する塩としては、ほうふっ化ナトリウム、ほうふっ化カリウム、ほうふっ化リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム、トリフルオロメタンスルホン酸カリウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウムなどを用いることができる。Y、Y’を含有する塩としては、Y、Y’を含む金属塩を用いることが好ましい。
有機配位子は本発明では4,4’−ビピリジンである。
(金属)塩を溶かす溶媒としては、水やアルコールなどのプロトン系溶媒を利用すると良好な結果が得られる。水やアルコールなどのプロトン系溶媒は金属塩をよく溶解し、さらに金属イオンや対イオンに配位結合や水素結合することで金属塩を安定化し、配位子との急速な反応を抑制することで、副反応を抑制する。アルコールの例としてはメタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2ブタノールなどの脂肪族系1価アルコール及びエチレングリコールなどの脂肪族系2価アルコール類を例示できる。安価でかつニッケル塩の溶解性が高いという点でメタノール、エタノール、1プロパノール、2-プロパノール、エチレングリコールが好ましい。またこれらのアルコールは単独で用いてもよいし、複数を混合使用してもよい。
溶媒として水と前記のアルコール類を混合して使用することも好ましい。混合比率は1:100〜100:0(体積比)で任意である。アルコール類の混合比率を30%以上にすることが、配位子の溶解性を向上させる観点から好ましい。
また、水またはアルコールまたは水−アルコールの混合溶媒にさらにアルコール以外の有機溶媒を混合して使用することも可能である。混合する有機溶媒としては、水と混和する溶媒であり、例えば、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、アセトン、1,4-ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどである。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。これらの中では、アセトン、1,4-ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドおよびアセトニトリルがよい結果を与える。有機溶媒の混合比は50モル%以下、好ましくは30モル%以下である。
一方、有機配位子を溶かす溶媒としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、エチレングリコールなどのアルコール系溶媒、エーテル、テトラヒドロフランなどの非環状、環状の脂肪族エーテル、アセトンなどのケトン類、酢酸エチルなどのエステル類、アセトニトリル等の脂肪族ニトリル類、ジクロロメタンなどのハロゲン系溶媒、ベンゼン、トルエンなどの芳香族溶媒、ジメチルホルムアミドなどのホルムアミド類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類を広く例示することができる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。コスト的かつ溶解度的に、メタノール、エタノール、2-プロパノール、アセトニトリル、アセトンなどが好ましい。
(金属)塩の溶液および有機配位子の溶液の混合方法は、(金属)塩溶液に配位子溶液を添加しても、その逆でもよい。また、混合に際しては必ずしも溶液で行う必要はなく、例えば、(金属)塩溶液に固体の配位子を投入し、同時に溶媒を入れる方法や、反応容器に(金属)塩を装填した後に、配位子の固体または溶液を注入し、さらに(金属)塩を溶かすための溶液を注入するなど、最終的に反応が実質的に溶媒中で起こる方法であれば、種々の方法が可能である。ただし、(金属)塩の溶液と配位子の溶液を滴下混合する方法が、工業的には最も操作が簡便であり、好ましい。
溶液の濃度は、(金属)塩溶液は40mmol/L〜4mol/L、好ましくは80mmol/L〜2mol/Lであり、配位子の有機溶液は40mmol/L〜3mol/L、好ましくは80mmol/L〜1.8mol/Lである。これより低い濃度で反応を行っても目的物は得られるが、製造効率が低下するため好ましくない。また、これより高い濃度では、吸着能が低下するため好ましくない。
反応温度は-20〜120℃、好ましくは25〜90℃である。これ以下の低温で行うと、原料の溶解度が下がるため好ましくない。オートクレーブなどを用いて、より高温で反応を行うことも可能であるが、加熱などのエネルギーコストの割には、収率は向上しないため実質的な意味はない。
本発明の反応で用いられる(金属)塩と有機配位子の混合比率は、3:1〜1:5のモル比、好ましくは1.5:1〜1:3のモル比の範囲内である。これ以外の範囲では、目的物の収率が低下し、また、未反応の原料が残留して、目的物の取り出しが困難となる。
反応は通常のガラスライニングのSUS製の反応容器および機械式攪拌機を使用して行うことができる。反応終了後は濾過、乾燥を行うことで目的物質と原料の分離を行い、純度の高い目的物質を製造することが可能である。
[第2の発明]
第2の発明は、第1の発明の金属錯体を含むガス吸着材である。
本発明のガス吸着材として使用する材料は、貯蔵させるガスや吸着時に必要となる圧力に応じて選択すればよい。第1の発明の金属錯体を含めば特に制限されるものではないが、具体例としては、[Cu(CF3BF3)(CF3SO3)(bpy)2n(式中、bpyは4、4’-ビピリジンを表す。)が例示できる。
本発明のガス吸着材(以下吸着材(A))は単独で吸着材として使用してもよいし、他の吸着材と複合化して使用してもよい。
複合化して使用する場合には、他の吸着材として吸着等温線と脱着等温線とが一致する挙動を示す吸着材(B)と併用することで非常に優れた吸着特性を有するガス吸着材とすることができる。
ここで吸着材(B)とは、既知の活性炭やゼオライト等のガスの吸着性を有する多孔性材料であって、物理的吸着材、化学的吸着材、およびこれらが組み合わされてなる物理化学的吸着材を特に限定されず用いることができる。
物理的吸着材とは、分子と分子との相互作用のような弱い力を用いて、被吸着分子を吸着する吸着材をいう。物理的吸着材としては、活性炭、シリカゲル、活性アルミナ、ゼオライト、クレー、超吸着性繊維、金属錯体が挙げられる。化学的吸着材とは、化学的な強固な結合によって、被吸着分子を吸着する吸着材をいう。化学的吸着材としては、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、過マンガン酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、燐酸ナトリウム、活性化された金属が挙げられる。物理化学的吸着材とは、物理的吸着材および化学的吸着材の双方の吸着機構を備える吸着材をいう。これらの2種以上を組み合わせて用いてもよい。ただし、本発明の技術的範囲がこれらの具体例に限定されるものではない。吸着材(B)の形状は特に限定されないが、一般的には、平均粒径500〜5000μmの粉末状のものを用いる。
吸着材(B)としては、製造コストやガス吸着性能を考慮すると活性炭が好ましい。活性炭は比較的安価である上、質量当たりのガス吸着量が多い。また、活性炭はガスの吸脱着に関するサイクル特性が悪く、吸脱着を繰り返すとガス吸着量が著しく減少する傾向がある。このため、従来においては、質量当たりのガス吸着量が多いにも拘わらず、ガス貯蔵装置やガス分離装置に用いることは困難であった。この点、本発明の吸着材(B)として用いた場合においては、活性炭の優れたガス吸着性能を充分に引き出すことができる。また、活性炭は比表面積が大きいほど吸着量が増加する傾向を有するため、活性炭の比表面積は1000m2/g以上であることが好ましい。
また、使用する吸着材(B)は、吸着させるガスに応じて適宜構造を制御されることが好ましい。例えば、活性炭に含まれる細孔は、細孔の大きさによって、スーパーミクロポア(〜0.8nm)、ミクロポア(0.8〜2nm)、メソポア(2〜50nm)、マクロポア(50nm〜)に分類できる。細孔の大きさによって吸着しやすいガスが異なり、多くのガスはミクロポアに吸着しやすい。従って、ガスを吸着の為には、ミクロポアの割合が大きくなるように活性炭の細孔分布を制御するとよい。
本発明の吸着材(A)と吸着材(B)を複合化する場合は、吸着材(A)は、吸着材(B)を被覆するが、好ましくはクラックや不完全な被覆がなく、吸着材(B)が外気に触れないように完全に被覆することが好ましい。しかしながら、多少のクラック等が存在していても、吸着材(B)の自由なガス吸着を阻害し、吸着材(A)によって被覆されている吸着材(B)が低圧でガスを吸着するのであれば、本発明の技術的範囲に包含されるものである。好ましくは、吸着材(B)に対して5〜50体積%の吸着材(A)で吸着材(B)を被覆する。また、吸着材(B)を被覆する吸着材(A)の厚みは吸着材(A)の種類に応じて決定する必要があるが、吸着材(A)が薄すぎると吸着材(B)へのガス吸着特性を充分に制御できない恐れがある。一方、吸着材(A)が厚すぎると、吸着材(B)へのガス吸着が生じにくくなり、全体としてのガス吸着量が減少する恐れがある。これらを考慮すると、吸着材(A)の平均厚みが10〜100μmであることが好ましい。吸着材(A)の厚みは、吸着材(A)の使用量の調節によって制御できる。なお、吸着材(A)の厚みは電子顕微鏡を用いて撮影された断面写真から算出することができる。
吸着材(A)と(B)の複合化の方法としては、(1)吸着材(A)が溶解している溶液中に、該溶液に溶解しない吸着材(B)を添加し、その後、吸着材(A)を結晶成長させることによって、吸着材(B)表面に吸着材(A)を付着させる方法、 (2)吸着材(A)を含むスラリーを準備し、スラリーを吸着材(B)表面にコーティング・乾燥させることによって、吸着材(B)表面に吸着材(A)を付着させる方法、などを用いることができる。
本発明のガス吸着材は、圧力スイング吸着方式(以下「PSA方式」と略記)のガス分離装置における吸着材として用いることができる。PSA方式のガス分離は、吸着材に対するガス圧力とガス吸着量との違いを利用することを原理とする。
本発明のガス吸着材(A)では、ガスの選択性が高いという現象がみられる。このため酸素と窒素の混合ガスをガス吸着材一定圧以上で暴露して酸素と窒素の両方を吸着させ、ついで酸素を放出しないが窒素を放出するガス圧にガス圧を制御することで酸素ガスを放出することなく、窒素ガスのみを分離することが可能になる。すなわちガス分離性能は飛躍的に向上し、1回のPSA操作でコンタミネーションのない極めて高純度のガスを得ることも可能である。ただし、2サイクル以上のPSA操作を行うことを排除するものではない。
本発明のガス分離装置は、上述のように圧力のスイング幅が小さくてすむため、ガス分離装置の大幅な小型化にも寄与する。また、圧力スイング幅が小さいため圧力変化に要する時間が短縮され、省エネルギーで、さらに高純度ガスの製造ランニングコストおよび設備の固定費を低減することができる。高純度ガスを製品として販売する際のコスト競争力を高めることができることは勿論、自社工場内部で高純度ガスを用いる場合であっても、高純度ガスを必要とする設備に要するコストを削減できるため、結局最終製品の製造コストを削減する効果を有する。
(実施例1)
トリフルオロメタンスルホン酸銅(II)水溶液(80mmol/L、6.25mL)にCF3BF3K塩(3mmol)を添加し、4、4’-ビピリジンのアセトン溶液(80mmol/L、12.5mL)をゆっくりと添加し、密栓をして30日間静置した。析出した青色固体を減圧濾過し、減圧乾燥し、青色の高分子金属錯体の結晶を得た。
得られた結晶の組成および立体構造は、X線結晶構造解析により決定した。その結果、
結晶データは以下であり、図6〜7に示される構造を有していることが判明した。
結晶データ:C2/c, a 14.3979(16) b 15.1241(16) c 16.3512(18), a 90.00 b 108.4020(10) g 90.00
得られたガス吸着材の77Kでのガス吸着特性を調査した。測定には、BET自動吸着装置(日本ベル株式会社製ベルソープ36及び同ベルミニII)を用いた。測定に先立って試料を383Kで3時間真空乾燥して、微量残存している可能性がある溶媒分子などを除去した。
結果を表1に示す。また、このガス吸着材の77Kでの吸着等温泉を図6(a)に示す。図8(a)横軸は相対圧力、縦軸はガス吸着量(吸着材(g)当たりのガス吸着量(ml))を示し、相対圧力0.02(矢印)で顕著なガス吸着が起きる。
(比較例1〜3)
比較例1として、トリフルオロメタンスルホン酸銅(II)水溶液(80mmol/L、6.25mL)に換えてトリフルオロトリフルオロほう酸銅を用い、CF3BF3K塩(3mmol)を添加しないこと以外は、実施例1と同様にして、高分子金属錯体の結晶を得た。
また、比較例2として、トリフルオロメタンスルホン酸銅(II)水溶液(80mmol/L、6.25mL)に換えてほうふっ化銅を用い、CF3BF3K塩(3mmol)を添加しないこと以外は、実施例1と同様にして、高分子金属錯体の結晶を得た。
さらに、比較例3として、CF3BF3K塩(3mmol)を添加しないこと以外は、実施例1と同様にして、高分子金属錯体の結晶を得た。
得られた結晶の組成および立体構造は、実施例1と同様にX線結晶構造解析により決定した。その結果を以下に示す。
比較例1の結晶データ:P 2/c 、a) 40.060(12) b) 15.014(5) c) 16.459(5)、a 90 b 93.916(4) g 90
比較例2の結晶データ: A12/n1、 a ) 18.731, b ) 11.072, c ) 13.701 A
比較例3の結晶データ:Pbcn、 a ) 15.319(3), b ) 16.158(3), c ) 13.688(3) A
高分子金属錯体の窒素及び酸素の吸着圧力を、実施例と同じ方法で測定した。
結果を表1に示す。また、比較例3のガス吸着材の77Kでの吸着等温泉を図6(b)に示す。図6(b)横軸は相対圧力、縦軸はガス吸着量(吸着材(g)当たりのガス吸着量(ml))を示し、相対圧力0.2(矢印)で顕著なガス吸着が起きる。
本発明の高分子金属錯体は、配位子の整列によって形成される多数の微細孔が物質内部に存在する。この多孔性を生かして様々な物質の吸着、除去に利用できる。たとえば、空気中の有毒物質の除去、水中の無機、有機物などの不要物の除去による水の浄化、あるいは空気や水中の有用な物質を吸着して、これを取り出すことで有用物質の空気や水からの回収が可能となる。
1 対イオン
1’ 1とは異なる種類の対イオン
2 金属イオン
3 配位子

Claims (3)

  1. 式〔X[Y,Y’]22n
    (式中、Xは、コバルト、ニッケル、銅のいずれかの二価イオンであり、
    YはCF3BF3 -イオン、Y’はCF3SO3 -イオンであり、
    Lは、4,4’―ビピリジンである。)
    で表わされる単位構造を有した二次元平面格子積層型の基本構造を有する高分子金属錯体。
  2. 請求項1に記載された高分子金属錯体を含むことを特徴とするガス吸着材。
  3. 請求項2に記載のガス吸着材を用いてなる圧力スイング吸着方式ガス分離装置。
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