JP2012245664A - 熱伝導性シート - Google Patents

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Abstract

【課題】 網目状補強材を備えた取扱い性の良い熱伝導性シートについて、熱伝導性組成物が網目状補強材を確実に貫通するようにした熱伝導性シートを提供する。
【解決手段】 熱伝導性シート11は、発熱体と放熱体との間に介在して用いられ、熱伝導性組成物から成形される熱伝導層12と、該熱伝導層12中に埋設されたメッシュシート13とを備える。メッシュシート13にはメッシュシート13の開口より大きい孔部14が形成され、該孔部14に熱伝導層12が貫通している。メッシュシート13に孔部14を形成したため、該孔部14に熱伝導性組成物が容易に貫通し、熱伝導層12が当該孔部14を通じてメッシュシート13を確実に貫通して形成される。したがって、当該孔部14を設けない通常のメッシュシートを用いた場合に比べて、熱伝導性能を向上させることができるともに、補強効果を有し、熱伝導性シートの取扱い性を良好にする。
【選択図】図2

Description

本発明は、電子機器、各種ディスプレイ、電池、その他の機器・装置等に備わる電子部品の放熱や冷却といった熱対策に用いられる熱伝導性シートに関する。
電子機器に実装されるCPU等の電子部品は発熱体であり、その冷却のためにヒートシンク等の放熱体が装着されている。そして、発熱体と放熱体との間には、発熱体から放熱体への熱伝導を促進するため熱伝導性シートが介装されている。この熱伝導性シートの利用により、発熱体と放熱体との間の伝熱面積を増大させて、発熱体から放熱体へと熱を効率良く逃がすことができる。
熱伝導性シートにおいて、熱の伝わり難さを示す指標である熱抵抗値を下げるには、発熱体や放熱体に対する追従性や密着性が良いことが求められる。この観点からは柔軟な熱伝導性シートを用いることが好ましい。ところが、熱伝導性シートの柔軟性が高くなるとその粘着性も高くなり、発熱体への取付作業が困難になることがある。また、出荷前に複数のシートを重ねて保管するとシート同士がくっついて離しにくくなることがある。
また、熱伝導性シートの形状が薄いほど熱伝導性が向上する。この観点からは、より薄い熱伝導性シートを用いることが好ましい。ところが、薄すぎると取付作業時に伸びや、破れ、しわの発生等の不都合が生じるおそれがあり、その取扱い性が低下する。
取扱い性への対策としては、例えば、特開平7−266356号公報(特許文献1)に、樹脂組成物と熱伝導性フィラーとを含む熱伝導性組成物から成形される、軟らかいゴムまたはゲル状の熱伝導性シートの中やその表面にガラス製や金属製、樹脂製の織物といった網目状補強材を設けることが開示されている。こうした熱伝導性シートによれば、シートの厚み方向ではゴムまたはゲル層によって柔らかく追随性や密着性に優れており、シートの面方向では網目状補強材によって強度を有することから、実装作業時の取扱い性が良いことに加えて、熱を伝え易いというメリットがある。
特開平7−266356号公報
上記従来技術では、網目状補強材に網目が形成されていることにより、熱伝導性を有するゴムやゲル層が、その開口を通じて網目状補強材を貫通させて熱伝導性を良好にしようという意図を有している。そして、単に貫通孔が形成されているフィルム状やシート状物と比較して、網目状補強材で繊維が織り込まれた構成をとっていることから補強効果が発揮され、熱伝導性能の向上のために更に薄く形成しても、好適に用いられるものと考えられる。
しかしながら、上記従来技術における網目状補強材を用いた熱伝導性シートは、熱伝導性組成物の粘度が高い場合に、網目状補強材の開口を貫通しないおそれがある。そのため、高粘度の熱伝導性組成物を用いた場合、熱伝導性を有するゴムやゲル層が網目状補強材の開口を貫通せず、熱伝導性組成物の本来有する熱伝導性能が発揮され難くなる。また、網目状補強材の開口を貫通させるために低粘度、すなわち、低分子量の材料や可塑剤を多量に配合した熱伝導性組成物を用いた場合、成形後の熱伝導性シートの物性が著しく低下するおそれがある。
上記のような課題を解決するためになされたのが本発明であり、その目的は、網目状補強材を備えて取扱い性を良好にした熱伝導性シートについて、熱伝導層を形成する熱伝導性組成物が網目状補強材を確実に貫通し、熱伝導層が本来有する熱伝導性能を発揮し易い熱伝導性シートを提供することにある。
上記目的を達成するために本発明は以下の構成を提供する。
樹脂組成物と熱伝導性フィラーとを含む熱伝導性組成物が、メッシュシートの両面を被覆して熱伝導層を形成する熱伝導性シートについて、メッシュシートにメッシュシートの開口よりも大きい孔部を備え、該孔部に前記熱伝導層が貫通している熱伝導性シートである。熱伝導性組成物がメッシュシートの両面を被覆して熱伝導層を形成する熱伝導性シートについて、前記メッシュシートにメッシュシートの開口よりも大きい孔部を形成したため、該孔部に前記熱伝導性組成物が容易に貫通し、熱伝導層が孔部を通じてメッシュシートを確実に貫通して形成される。よって、開口よりも大きい孔部を設けない通常のメッシュシートを用いた場合に比べて、熱伝導層が確実にメッシュシートを貫通して、メッシュシートの両面に形成されることから、熱伝導性能を向上させることができる。
前記孔部については、前記メッシュシートにおける交点の複数分を貫いて形成することができる。したがって、既存・市販のメッシュシートを孔設することで簡易に孔部を形成することができる。
さらに本発明は、前記孔部を複数備える熱伝導性シートである。前記孔部を複数備えるため、前記熱伝導層が複数の孔部に貫通して形成される熱伝導性シートを得ることができる。そのため、メッシュシートによる熱伝導性シートの補強効果を発揮して取扱い性を高めつつ、熱伝導性能を高めることができる。
前記孔部については、前記メッシュシートの面内を貫通する貫通孔として形成することができる。前記孔部が、前記メッシュシートの面内を貫通する貫通孔として形成されるため、メッシュシートの少なくとも外縁はフレーム状に残る構成となる。よって、メッシュシートによる補強効果が高まり、熱伝導性シートの取扱い性をさらに高めることができる。
また、前記孔部については、前記メッシュシートの外縁から面内にかけて切り欠きとして形成することもできる。前記孔部が、前記メッシュシートの外縁から面内にかけて切り欠きとして形成されるため、使用時において熱伝導性シートが圧縮された際に、切り欠きとして形成された孔部から熱伝導層が逃げるように変形する部位を有する構成となる。よって、より圧縮され易い熱伝導性シートとすることができるため、発熱部品や放熱部品との密着性が高まり、低い熱抵抗値を実現することができる。
さらに本発明は、前記メッシュシートが熱可塑性樹脂製であり、前記孔部の口縁にメッシュシートの溶融部を備える熱伝導性シートである。前記メッシュシートが熱可塑性樹脂製であり、孔部の口縁にメッシュシートの溶融部を備えるため、溶融部によりメッシュシートを構成する経糸と緯糸が目止めされ、メッシュシートが孔部からほつれることを防止することができる。
本発明の熱伝導性シートは、メッシュシートの開口よりも大きい孔部を設けない通常のメッシュシートを用いた場合に比べて、取扱い性を維持しつつ、熱伝導性能を高めることができる。通常のメッシュシートを用いた場合では、メッシュシートの開口のみでは、熱伝導性組成物がその開口に貫通しないおそれがあったが、メッシュシートの開口よりも大きい孔部を設けたため、熱伝導性組成物が容易に貫通し、孔部に貫通した熱伝導層を容易に形成することができる。
第1実施形態の熱伝導性シートを示す平面図。 図1のSA−SA線断面図。 第1実施形態で用いたメッシュシートの平面図の部分拡大図。 熱伝導性シートの製造方法の一例であって、フィルムシートの上方にメッシュシートを配置する際の説明図。 熱伝導性シートの製造方法の一例であって、フィルムシートの上方にメッシュシートが浸るように熱伝導性組成物を塗工する際の説明図。 第2実施形態の熱伝導性シートを示す平面図。 図6のSB−SB線断面図。 第3実施形態の熱伝導性シートを示す平面図。 図8のSC−SC線断面図。 第3実施形態の熱伝導性シートにおける製造方法の説明図。 実施形態の変更例を説明するメッシュシートの図3相当の平面図。 熱伝導性シートについて熱抵抗を測定する装置の説明図。
本発明について以下に示す実施形態に基づきさらに詳細に説明する。なお、各実施形態で共通する構成については、同一の符号を付して重複説明を省略する。また、共通する材質、作用、効果等についても重複説明を省略する。
〔第1実施形態(図1〜5)〕
図1には熱伝導性シート11の平面図を示す。熱伝導性シート11は、ICやCPUなどの発熱体や、ヒートシンクやヒートパイプなどの放熱体と良好な密着性を有する電子機器用部品であり、図2の断面図に示すように、シート状の熱伝導層12の内部にメッシュシート13が埋設されている。図3は、本実施形態で用いたメッシュシート13の平面図における部分拡大図を表す。図3に示すように、メッシュシート13にはその開口13dよりも大きい孔部14が複数形成されており、その孔部14内にも熱伝導層12が貫通して形成されている。
熱伝導層12は、熱を伝導しやすいように、樹脂組成物からなる基材中に熱伝導性フィラーが分散された熱伝導性組成物で形成されている。
熱伝導層12を形成する材料となる樹脂組成物には、混合後に硬化してゴム状またはゲル状の高分子基材となる、主剤と硬化剤のような混合系から生じるものとすることができる。例えば、未架橋ゴムと架橋剤であったり、架橋剤を含む未架橋ゴムと架橋促進剤であったりすることができ、また、その硬化反応も常温硬化であっても熱硬化であっても良い。シリコーンゴムであればシリコーンゴム主剤と硬化剤であってビニル基含有シリコーン生ゴムと過酸化物などが例示できる。また、ポリエステル系熱可塑性エラストマーであれば、ジオールとジカルボン酸とすることができ、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーであれば、ポリオールとポリイソシアネートとすることができる。なお、ここでは混合前の少なくとも2成分の一方を主剤とし他方を硬化剤と呼ぶものであって、どちらを主剤と定義しても硬化剤と定義しても良いものとする。従って、例えば、混合割合の少ない方、粘度の低い方を主剤としても良い。
更に、前記高分子基材は、こうした主剤と硬化剤のうち、硬化剤を含まない主剤だけであっても良い。したがって、本発明において、樹脂組成物または高分子基材といっても、一般的に樹脂や高分子と称される程度の高分子量であることを必ずしも要しない。
これらの高分子基材、あるいは主剤と硬化剤には、熱伝導性シート11の生産性、耐候性、耐熱性など種々の性質を高める目的で種々の添加材を含んだものを用いることができる。そうした添加材を例示すれば、可塑剤、補強材、着色剤、耐熱向上剤、カップリング剤、難燃剤、粘着剤、触媒、硬化遅延剤、劣化防止剤など、種々の機能性向上剤が挙げられる。
熱伝導性フィラーには、例えば、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属水酸化物などの球状、鱗片状等の粉末、炭素繊維などが挙げられる。金属酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、石英などが挙げられ、金属窒化物としては、窒化ホウ素、及び窒化アルミニウムなどが挙げられる。また、金属炭化物としては、炭化ケイ素が挙げられ、金属水酸化物としては、水酸化アルミニウムが挙げられる。さらに炭素繊維としては、ピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維、樹脂繊維を炭化処理した繊維、樹脂繊維を黒鉛化処理した繊維などが挙げられる。こうした熱伝導性フィラーは、熱伝導層12に対して一定方向に配向させることもでき、配向させた場合、配向方向に熱伝導性が高まる点で好ましい。配向手段としては、例えば、磁場を用いることができる。
熱伝導層12の硬度は、日本工業規格であるJIS K 6253のタイプEの硬度計によって測定される値(以下「E硬度」という。)で60以下が好ましい。熱伝導層12のE硬度が60を超える場合、発熱体や放熱体の形状への追従性が十分に得られず、発熱体や放熱体と熱伝導層12との密着性が低下して熱伝導性シート11の熱伝導性が低下するおそれがあるからである。熱伝導層12のE硬度が60以下の場合には、発熱体や放熱体の表面が凹凸形状を有する場合にも、発熱体や放熱体の形状に沿って熱伝導層12が良好に追従し、発熱体や放熱体と熱伝導性シート11との密着性を十分に確保することができる。更に、60以下のE硬度を有する熱伝導層12によって熱伝導性シート11の柔軟性が確保される。そのため、例えば熱伝導性シート11が取り付けられた発熱体に加わる衝撃を熱伝導性シート11が吸収することにより、発熱体を好適に保護することができる。
熱伝導層12の厚さは、メッシュシート13の厚さと同等以上であり、0.1mm〜5mm程度が好ましい。5mmを超えると熱伝導性能が低下する(熱抵抗が高まる)おそれがあり、また、0.1mm未満であると、メッシュシート13を用いても取扱い難いものとなるためである。
上記のように熱伝導層12は柔らかい程、また、厚さが薄い程、良好な熱伝導性能、すなわち、低い熱抵抗を実現することができるが、その一方、取扱い性が低下する。こうした熱伝導層12の取扱い性を改善するための部材が、熱伝導層12に埋設したメッシュシート13である。
メッシュシート13は、メッシュを構成する線材を平織、綾織、畳織、紋畳等によって織ってシート状に形成した網目状物である。網目の形状は限定せず、網目はメッシュシート13の表側から裏側に至るものであれば良いが、網目となる開口13dがメッシュシート13の面直方向に沿って形成されたものが好ましく、その点で畳織よりは平織が好ましい。
メッシュシート13の線材の材質には、ガラスや、鉄、銅、黄銅、ステンレス、アルミニウム、ニッケル等の金属、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)等の熱可塑性樹脂等を挙げることができる。メッシュシート13の交点を熱融着する場合や圧着する場合は、熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
メッシュシート13の大きさは、熱伝導層12の熱伝導性能の維持及び、熱伝導層12と一体となった際における熱伝導性シート11の取扱い性の観点から、その厚さは10μm〜500μm程度、開口は200μm〜1200μm、開口率は40〜90%、線径は20μm〜300μm程度のものを用いることが好ましい。
メッシュシート13には複数(図1では9個)の正方形状の孔部14が等間隔に形成されている。孔部14が等間隔に形成されているため、熱伝導性シート11における熱伝導性能を均一にすることができる。
孔部14はメッシュシート13の面内を貫通する貫通孔として形成されている。この孔部14は、メッシュシート13の開口13dよりも大きく、メッシュシート13の交点13c(メッシュを構成する経糸13aと緯糸13bとが交差する点)を複数分貫いた程度の大きさで形成される。なお、孔部14の形状は、長方形状や円形状、楕円形状など他の形状であっても良い。
メッシュシート13の交点13cは、溶融や加熱圧着による目止め処理されている場合、その交点13cが目止め処理されていない通常のメッシュシートに比べて、交点部分が扁平化するとともに、交点13c部分での隙間がほとんどなくなる。そのため、熱伝導性シート11の製造時に交点13cで気泡が発生し難くなり、空気の混入を抑制することができる。
一方、交点13cが目止め処理されていない場合、交点13cで経糸13a及び緯糸13bが拘束されないことから、メッシュが動き易く、製造過程において、孔部14との相乗効果から熱伝導性組成物がメッシュシート13を貫通し易くすることができる。
次に熱伝導性シート11の製造方法の例を説明する。
(製造方法A)
まず樹脂組成物と熱伝導性フィラーを攪拌機で混合して熱伝導性組成物15を用意する。また、市販のメッシュシートを用意し、穴開け機により、メッシュシート13に複数の孔部14を形成する。
次に図4で示すように、コンベアー1に載置するフィルムシート2の上方に僅かに浮いた状態で孔部14を形成したメッシュシート13を配置する。そして図5で示すように、そのメッシュシート13が浸るように、熱伝導性組成物15をフィルムシート2上にブレード3を介して均一厚さとなるように塗布してシーティングする。
こうした過程において、熱伝導性組成物15の粘度を厳密に調整したり、適当な開口率を有するメッシュシート13を厳密に選択したりすることなく、熱伝導性組成物15がメッシュシート13の孔部14に確実に挿通される。
その後、熱伝導性組成物15を硬化させて成形することで、熱伝導性組成物15からなる熱伝導層12中にメッシュシート13が埋設し、メッシュシート13の孔部14内に熱伝導層12が貫通した熱伝導性シート11を得ることができる。
なお、熱伝導性組成物15に熱伝導性フィラーとして炭素繊維を含む場合、熱伝導性組成物15を硬化させる前に、磁場を垂直方向に印加することが好ましい。磁場を垂直方向にかけることで炭素繊維が厚さ方向に配向し、厚さ方向の熱伝導性に優れた熱伝導性シートを得ることができる。磁場を印加する手段としては、永久磁石や電磁石、超伝導磁石を用いることができる。
(製造方法B)
別の製造方法としては、金型を用いて成形する方法(図示せず)が挙げられる。
調整した熱伝導性組成物を金型のキャビティに充填し、その中に孔部が形成されたメッシュシートを埋設し、プレス成形により熱と圧力をかけて熱伝導性組成物を硬化させ、熱伝導性シートを成形する。なお、メッシュシートを予め金型のキャビティに配置した後、当該キャビティに熱伝導性組成物を充填する方法を用いても良い。また、こうした製造方法Bにおいても、熱伝導性組成物に炭素繊維を含む場合、熱伝導性組成物を硬化させる前に、磁場を印加することが好ましい。
製造方法A及びBにおいて、磁場により炭素繊維等の熱伝導性フィラーを厚さ方向に配向させる際、本発明ではメッシュシート13にその開口13dよりも大きい孔部14を有するため、炭素繊維がその孔部14を通じて配向し易い。孔部14を備えていない通常のメッシュシートを用いた場合には、炭素繊維がメッシュシートにひっかかり、配向され難いが、孔部14を備えたメッシュシート13を用いれば、炭素繊維を立ち上がり易くすることができる。
最後に第1実施形態の熱伝導性シート11が有する作用、効果について説明する。
熱伝導性組成物15がメッシュシート13の両面を被覆して熱伝導層12を形成する熱伝導性シート11について、メッシュシート13にメッシュシート13の開口よりも大きい孔部14を形成したため、熱伝導性組成物15が孔部14内に容易に挿通され、熱伝導層12がメッシュシート13の孔部14に貫通して形成される。そのため、開口13dよりも大きい孔部14を設けない通常のメッシュシートを用いた場合に比べて、熱伝導性能を向上させることができる。
また、孔部14がメッシュシート13の面内を貫通する貫通孔として形成されているため、メッシュシート13の少なくとも外縁はフレーム状に残る構成となる。よって、メッシュシート13による補強効果が高まり、熱伝導性シートの取扱い性を高めることができる。
さらに既存・市販のメッシュシートにおける交点13cの複数分を貫いて孔部14を形成することができるため、容易に熱伝導性シート11を製造することができる。
メッシュシート13には孔部14を複数備えるため、熱伝導層12が複数の孔部14に貫通して形成される熱伝導性シート11を得ることができる。そのため、メッシュシート13による熱伝導性シート11の補強効果を発揮して取扱い性を高めつつ、熱伝導性能を高めることができる。
〔第2実施形態(図6,図7)〕
第1実施形態の熱伝導性シート11では、メッシュシート13に複数の孔部14を形成した例を示したが、本実施形態の熱伝導性シート21では、図6及び図7に示すように、一つの孔部24を備えたメッシュシート23を用いた。図6は熱伝導性シート21の平面図であり、図6における破線部はメッシュシート23の孔部24の位置を表す。図7は図6のSB−SB線断面図である。図6に示すように、熱伝導性シート21に含まれるメッシュシート23は、その面内に貫通孔として形成される一つの正方形状の孔部24を備えている。換言すれば、このメッシュシート23はフレーム形状をなしている。
本実施形態の熱伝導性シート21によれば、熱伝導性組成物15がメッシュシート23の両面を被覆して熱伝導層12を形成する熱伝導性シート21について、メッシュシート23にメッシュシート23の開口よりも大きい孔部24を形成したため、熱伝導性組成物15が孔部24内に容易に挿通され、熱伝導層12がメッシュシート23の孔部24に貫通して形成される。そのため、開口よりも大きい孔部24を設けない通常のメッシュシートを用いた場合に比べて、熱伝導性能を向上させることができる。なおかつ、メッシュシート23の補強効果により、熱伝導性シート21の取扱い性を良好にすることができる。
さらに既存・市販のメッシュシートにおける交点の複数分を貫いて孔部24を形成することができるため、容易に熱伝導性シート21を製造することができる。
熱伝導性シート21に含まれるメッシュシート23は、一つの正方形状の孔部24を有するフレーム形状をなしているため、熱伝導性シート21の中央部はメッシュシート23が存在せず、熱伝導層12のみで構成されることから、さらに熱伝導性能を高めることができる。ICやCPUなどの発熱電子部品は中央部分で特に熱が発生し易いが、本実施形態の熱伝導性シート21は、その中央部を熱伝導層12のみで構成しているため、熱伝導層12が有する熱伝導性能を発揮し易い。また、メッシュシート23はフレーム形状をなしているため、熱伝導性シート21の外周縁部分で補強効果が高まり、取扱い性を高めることができる。
〔第3実施形態(図8〜図10)〕
図8に第3実施形態の熱伝導性シート31の平面図を示す。図9は図8のSC−SC線断面である。図8及び図9に示すように、熱伝導性シート31には、メッシュシート33が埋設され、そのメッシュシート33には、外縁から面内にかけて切り欠きとして形成された孔部34を備えている。換言すれば、メッシュシート33は、十字状に形成されている。
熱伝導性シート31によれば、上記実施形態と同様、メッシュシート33に孔部34を備えるため、熱伝導性シート31の製造時において熱伝導性組成物が容易にメッシュシート33を貫通する。そのため、熱伝導層12がメッシュシート33を確実に貫通した熱伝導性シート31とすることができる。
また、熱伝導性シート31によれば、メッシュシート33に切り欠きとして形成された孔部34を有するため、使用時において熱伝導性シート31が圧縮された際に、切り欠きとして形成された孔部34から熱伝導層12が逃げるように変形する部位を有する構成となる。よって、熱伝導性シート11,21よりも圧縮され易い熱伝導性シート31とすることができる。そのため、発熱部品や放熱部品との密着性が高まり、低い熱抵抗値を実現することができる。
次に本実施形態の熱伝導性シート31の製造方法を説明する。
まず、図10で示すように、大判の熱伝導性シート311を製造する。図10は熱伝導性シート311の図1相当の平面図である。この大判の熱伝導性シート311は、第1実施形態で説明したのと同様の製造方法(A,B)により製造される。大判の熱伝導性シート311に埋設されたメッシュシートには、貫通孔として形成された孔部341が多数形成されている。
次に、この大判の熱伝導性シート311を図10で示す領域Rで裁断し、熱伝導性シート31を得る。なお、図10においては一つの領域Rを示しているが、大判の熱伝導性シート311から複数の熱伝導性シート31を得ることができる。裁断後の熱伝導性シート31における一つの孔部34が、裁断前の大判の熱伝導性シート311における孔部341の1/4の大きさとなるように裁断すれば、大判の熱伝導性シート311から無駄を少なくして熱伝導性シート31を得ることができる。
〔各実施形態に共通の変更例(図11)〕
上記実施形態の熱伝導性シート11,21,31(311)について、次のように構成することができる。
すなわち、メッシュシート43を熱可塑性樹脂製とし、図11に示すように、そのメッシュシート43に形成した孔部44の口縁にメッシュシート43の溶融部43eを備えて構成することができる。図11は、このメッシュシート43の平面図を模式的に表した図3相当の図である。溶融部43eは、孔部44に隣接し、孔部44に最も近接するメッシュシート43の交点43cまでが溶融された部分であり、当該交点43cが溶融されたことで目止めされる。溶融部43eは、孔部44の口縁を加熱溶融した後、冷却して形成されたものである。したがって、この溶融部43eは、孔部44の口縁が溶融後に冷え固まった後の部分を意味する。
メッシュシート43が熱可塑性樹脂製であり、孔部44の口縁にメッシュシート43の溶融部43eを備えるため、溶融部43eによりメッシュシート43を構成する経糸43aと緯糸43bが目止めされ、メッシュシート43が孔部44からほつれることを防止することができる。
さらに上記実施形態については以下のように変更することができる。
・第1実施形態では、メッシュシート13に正方形状の孔部14を9個形成した例を示したが、孔部14の数は特に限定されず、それ以外の個数形成しても良い。第3実施形態では、メッシュシート33の4つの角に切り欠きとして形成された孔部34を形成した例を示したが、この孔部34の数も限定されない。
・熱伝導層12を2層以上の積層構造とすることができる。例えば、ゲル状の熱伝導層と、ゴム状の熱伝導層とを積層し、ゲル状の熱伝導層により熱伝導性能を高めつつ、ゴム状の熱伝導層により、メッシュシートに加えて取扱い性を高めることができる。この場合において、ゲル状の熱伝導層は例えば、E硬度0〜5として形成し、ゴム状の熱伝導層は例えば、E硬度20〜60として形成することができる。メッシュシートは取扱い性を高めるためにゲル状の熱伝導層側に埋設することが好ましい。また、例えば、粘着性を有する熱伝導層(粘着性熱伝導層)と、粘着性を殆ど有しない熱伝導層(非粘着性熱伝導層)とを積層することもできる。
実施例及び参考例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。
〔実施例1〜4〕
図8及び図9に示す、第3実施形態で説明した熱伝導性シート31を以下の工程に従って製造した。
まず、表1記載の線径、厚さ、開口及び開口率を有する各ポリエステル製メッシュシートを用意した。そして、穴開け機を用いて、各メッシュシートに10mm四方の孔部341を5mmの等間隔で多数個開けた(図10参照)。なお、表1において、実施例1〜4の開口率は孔部34を形成した後の値を示す。
メッシュシートの準備とは別途、樹脂組成物としての液状のシリコーンポリマー100質量部に、熱伝導性フィラーとしての酸化アルミニウム粒子(平均粒径3μm)450質量部と炭素繊維(平均繊維径10μm、平均繊維長100μm)80質量部とを混合し、プラネタリーミキサーによって脱泡を行いつつ30分間混練し、熱伝導性組成物15を調製した。
次に、第1実施形態で説明した製造方法B及び第3実施形態で説明した製造方法と同様に、図10に示す大判の熱伝導性シート311を製造した。そして、大判の熱伝導性シート311を図10で示す領域Rでカッターにより切断した。こうして、4つの角が切り欠きとして形成された孔部34(2.5mm四方)を備えるメッシュシート33が埋設された10mm四方の熱伝導性シート31を製造した。なお、熱伝導性組成物15は、超伝導磁石にて垂直方向に磁束密度8Tの磁場を10分間印加した後、硬化炉で120℃、30分間熱処理を行って、硬化させた。
〔参考例1〜4〕
参考例1〜4の熱伝導性シートは、それぞれ実施例1〜4で用いたメッシュシートをそのまま用いた。すなわち、メッシュシートに孔部を形成せず、実施例と同様の製造方法にて熱伝導性シートを製造した。なお、実施例と参考例とは、各例の番号同士を比較できるようにしている。
〔比較例1〕
メッシュシートを用いず、熱伝導層のみからなる熱伝導性シートを作製した。
各実施例、参考例及び比較例について、以下の項目について評価した。結果を表1に示す。
Figure 2012245664
〔圧縮率〕
各例の熱伝導性シートについて、初期の厚さと、一定荷重(40N)を加えた際の厚さとを測定し、圧縮率を算出した。圧縮率が高いほど、熱伝導性シートが圧縮され易いことを表し、発熱体や放熱体に対して優れた密着性を有することを意味する。
〔熱抵抗〕
各例の熱伝導性シートについて熱抵抗を測定した。図12で示すように、基板4上の発熱体7と放熱体6の間に各例の熱伝導性シートの試験片5を置き、放熱体6上に重り8を載置して一定荷重(40N)を加えた。そして、発熱体7が発熱した状態で10分間放置した後、試験片5における発熱体7側の外面の温度T1と放熱体6側の外面の温度T2とを測定機9で測定した。そして、下記式(1)により試験片5の熱抵抗値を算出した。発熱体7は通常、CPUに代表される電子部品であるが、シートの性能評価の簡素化および迅速化のため、本試験では発熱体7として発熱量が25Wであるヒータを用いた。
熱抵抗値(℃/W)=(T1(℃)−T2(℃))/発熱量(W)…(1)
〔取扱い性〕
取扱い性は、作業者による取扱い易さの観点から評価し、“○”は熱伝導性シートをPETフィルム2から剥離する際に熱伝導性シートが伸びたり、千切れたりすることが無かったことを意味し、“×”は熱伝導性シートをPETフィルム2から剥離する際に伸びたり、千切れたりしたことを意味する。
各番号の実施例と参考例とを比較すると、各実施例の熱伝導性シート11は、それぞれ比較対象となる各参考例の熱伝導性シートに比べて圧縮率が高くなり、低い熱抵抗値を示した。したがって、メッシュシート13に孔部14を設けたことにより、取扱い性は維持したまま、圧縮され易くなり、熱伝導性能を高めることができた。比較例1の熱伝導性シートは、熱伝導層中にメッシュシートが埋設されていないため、取扱い性が悪く、熱伝導性シートの製造時において、PETフィルムから剥離する際に、熱伝導性シートが伸びたり、千切れたりする問題が生じた。一方、各実施例の熱伝導性シートは、そうした問題が起きず、取扱い性に優れていた。
1 コンベアー
2 フィルムシート
3 ブレード
4 基板
5 試験片
6 放熱体
7 発熱体
8 重り
9 測定機
11,21,31 熱伝導性シート
12 熱伝導層
13,23,33,43 メッシュシート
13a,43a 経糸
13b,43b 緯糸
13c,43c 交点
13d,43d 開口
43e 溶融部
14,24,34,44 孔部
15 熱伝導性組成物

Claims (6)

  1. 樹脂組成物と熱伝導性フィラーとを含む熱伝導性組成物が、メッシュシートの両面を被覆して熱伝導層を形成する熱伝導性シートにおいて、
    メッシュシートにメッシュシートの開口よりも大きい孔部を備え、該孔部に前記熱伝導層が貫通している熱伝導性シート。
  2. 前記孔部は、前記メッシュシートにおける交点の複数分を貫いて形成される請求項1に記載の熱伝導性シート。
  3. 前記孔部を複数備える請求項1又は請求項2に記載の熱伝導性シート。
  4. 前記孔部が、前記メッシュシートの面内を貫通する貫通孔として形成される請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の熱伝導性シート。
  5. 前記孔部が、前記メッシュシートの外縁から面内にかけて切り欠きとして形成される請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の熱伝導性シート。
  6. 前記メッシュシートが熱可塑性樹脂製であり、前記孔部の口縁にメッシュシートの溶融部を備える請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の熱伝導性シート。
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