JP2012240013A - 塗工装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】定着ベルト基材のような比較的柔軟な円筒状被塗工物の外側面に対して均一な塗膜をより高い塗工速度で形成することができる塗工装置を提供する。
【解決手段】塗工桶が上部部材と下部部材とにより構成され、下部部材には下部部材と円筒状被塗工物との間を水密に保つシール部材が設けられ、塗工液供給部が上部部材と下部部材との間に形成され、塗装時に円筒状被塗工物の外側面及びシール部材とともに塗工液を保持しながら円筒状被塗工物の外側面に塗工液を塗布する塗工液接触面が上部部材の貫通孔の内側面に円筒状被塗工物と離間して設けられ、上部部材を円筒状被塗工物と同軸に回転可能に保持する滑り部材が上部部材と下部部材との間に設けられ、かつ、上部部材を回転駆動させる上部部材回転駆動手段を有する塗工装置。
【選択図】図1

Description

本発明は、複写機、プリンタ等に用いられる定着ベルトなどの無端ベルト等の円筒体や、円柱体の側面への塗工に用いることができる塗工装置に関する。
本発明は、複写機、プリンタ等に用いられる定着ベルトは図24に示すように、一般に、厚さが50〜120μmの樹脂(一般的にポリイミド)からなる無端状ベルト形状の基材2の外側面に、通常100〜300μmの厚さで弾性層として耐熱性に優れたシリコーンゴム層3、及び、通常10〜30μmの厚さで離型層として耐熱性及び離型性に優れたフッ素樹脂(一般的にテトラフルオロエチレン・パー フルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA))が、順次積層されて構成されている(これら層間には必要に応じてプライマ処理、コロナ放電処理が施されている)。
従来、この離型層を形成するための工法としてはスプレーコーティング塗装が考えられ、一般的に用いられてきた。しかし、スプレーは塗着効率が20〜30%と低く70〜80%の塗料を捨てていることとなり、塗料の利用効率が非常に低い。またフッ素樹脂は塗工も難しく、一度に15〜30μmの塗膜を形成すると塗料がはじかれ、表面欠陥が生じてしまうために、薄い層を何層も重ねて塗装する必要があり時間もかかった。
一方、これらの欠点を補う工法として浸漬塗工が考えられる。これは液槽に被塗工物を浸し引き上げることで塗料を被塗工物に付着して塗膜を形成する方式であるために塗着効率は90%以上と非常によく塗工時の塗料の無駄が少ない。さらにスプレー塗装に比べて高粘度の塗料を用いることが可能となり、一度の浸し引き上げ動作で塗膜を形成して塗工を完了させることができるため、時間も比較的短くてすむ。この方式では塗膜の厚さは粘度と塗工速度(被塗工物を引き上げる速度)によって決定され、粘度を高くあるいは塗工速度を速くすると塗膜が厚くなり、その逆では塗膜は薄くなることが一般的に知られている。塗工時間短縮のためには出来る限り粘度を低くすることが望ましいが、粘度を下げすぎると被塗工物上に形成された塗膜が塗料自体の自重によってダレ落ちてしまう不良が発生するため、ある一定以上(所望する膜厚と塗料によって決定される)粘度を低下させることはできず、それゆえある一定以上塗工速度を上昇させることはできない。
ここで、定着ベルトの例では処方にもよるが20μm程度の膜厚を得るためにフッ素樹脂塗料を浸漬塗工で塗工する場合には、粘度300cPの塗料では塗膜がダレ落ちて不良となる。安定した品質を得るためには400cP程度の粘度の塗料が最適であり、このときの塗工速度は4mm/s程度となり、生産性が低い。
ここで、特開2007−252976号公報(特許文献1)では次のような塗膜形成装置が提案された。この塗膜形成装置は、軸芯が鉛直方向と平行な状態に前述した基体としての被塗装物を位置付けて、該被塗装物を円環状の塗布ヘッドの内側に通すとともに、塗布ヘッドの内周に設けられたシール部材を被塗装物の外周面に当接させることで該塗布ヘッドを密閉して、この塗布ヘッドを被塗装物の軸芯に沿って移動させながら、塗布ヘッドの内周から塗料を被塗装物の外周面に塗布することで、塗膜を形成する。
このような塗膜形成装置は、塗布ヘッドを密閉して被塗装物と相対的に動かすことにより、少ない塗料での浸漬塗装を実現している。
しかし、この塗膜形成装置を用いて、被塗装物を塗装した場合、該被塗装物の外周面に形成される塗膜の厚みは、塗料の粘度と塗布速度(塗布ヘッドの移動速度)とによって決定され、塗料の粘度を高く又は塗布速度を速くすると塗膜が厚くなり、塗料の粘度を低く又は塗布速度を遅くすると塗膜が薄くなることから、塗装時間の短縮のため塗布速度を速くするには、塗料の粘度を低くする必要がある。
しかしながら、塗料の粘度を低くしすぎると、上述の従来技術同様に被塗装物の外周面に形成された塗膜に塗料の自重による液ダレが生じて塗装不良が発生するため、塗料が液ダレの生じない粘度で且つ所望の膜厚を得ることができる塗布速度よりも速くすることができず、塗布速度を速められる速度に限界があり、塗装時間を短縮することが困難であった。
このため、被塗装物の外周面への塗料の塗布速度を速くすることを可能にして、生産性の向上を図ることができる塗膜形成装置として、特開2011−5436公報(特許文献2)では、塗布ヘッドとして、前記塗料を収容し且つ前記被塗装物を通過させる開口部が設けられたヘッド本体と、前記ヘッド本体の上面に取り付けられたカバー部と、前記開口部の全周に亘って設けられて前記ヘッド本体と前記被塗装物との間を水密に保つシール部材と、を備え、前記カバー部が、円環状の本体部と、前記本体部の内周部から前記ヘッド本体に向かって突出し且つ該本体部から離れた端部が前記ヘッド本体内の前記塗料に侵入した円筒状の内周壁と、を備えているとともに、前記内周壁の内周面と前記被塗装物の外周面との間に所定の間隔が設けられている塗膜形成装置を用いる技術が提案されている。
この技術によれば、カバー部の内周壁の内周面と被塗装物の外周面との間に所定の間隔が設けられているので、塗布ヘッドが被塗装物の軸芯に沿って移動して該被塗装物の外周面に塗料を塗布する際に、内周壁の内周面と被塗装物の外周面とが相対的に移動することで、内周壁と被塗装物との間の塗料にせん断力が作用して、該塗料の粘度を一時的に低下させることができる。このため、被塗装物の外周面への塗料の塗布速度を速くすることができ、塗装時間を短縮することができ、延いては、生産性の向上を図ることができる。
しかしながら、塗工速度のさらなる高速化を目指すために、被塗工物と内周壁の内周面との隙間を狭くする場合、この隙間がある一定以上狭くなると毛細管現象により塗工液の液面が上昇し、塗工桶の上部に液溜まりを形成し、このときには粘度低下効果が得られない塗料が塗工されるために高速化の効果が得られなくなること、及び、被塗工物と内壁との隙間に要求される精度がより高くなるが、このような高い精度に応じることがきわめて困難であり、このように特許文献2で提案された工法において膜厚を均一に維持したまま、塗工速度をさらに高速化するには限界がある。
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、定着ベルト基材のような比較的柔軟な円筒状被塗工物の外側面に対して均一な塗膜をより高い塗工速度で形成することができる塗工装置を提供することを目的とする。
本発明の塗工装置は上記課題を解決するために、請求項1に記載の通り、円筒状被塗工物を該円筒状被塗工物の軸を鉛直に保持する被塗工物保持部と、前記円筒状被塗工物の外側面の全周に対して塗工液を供給する塗工液供給部を内側面に備えた貫通孔を有する塗工桶と、前記塗工桶を保持するステージと、前記ステージを前記円筒状被塗工物に対して相対的に上下に移動させるステージ上下動駆動手段と、を有する塗工装置であって、イ)前記塗工桶が上部部材と下部部材とにより構成され、ロ)前記下部部材には該下部部材と前記円筒状被塗工物との間を水密に保つシール部材が設けられ、ハ)前記塗工液供給部が該上部部材と該下部部材との間に形成され、ニ)塗装時に前記ステージ上下動駆動手段により相対的に上昇する該円筒状被塗工物の外側面及び前記シール部材とともに前記塗工液供給部より供給される塗工液を保持しながら該円筒状被塗工物の外側面に該塗工液を塗布する塗工液接触面が前記上部部材の前記貫通孔の内側面に前記円筒状被塗工物と離間して設けられ、ホ)前記上部部材を前記円筒状被塗工物と同軸に回転可能に保持する滑り部材が該上部部材と該下部部材との間に設けられ、かつ、ヘ)前記上部部材を回転駆動させる上部部材回転駆動手段を有している
ことを特徴とする塗工装置である。
さらに本発明の塗工装置は、請求項2に記載の通り、請求項1記載の塗工装置において、前記上部部材の回転速度を計測する回転計測手段と、該回転計測手段からの信号を受けて前記回転駆動手段による該上部部材の回転駆動の回転速度を調整する回転安定制御手段と、を有していることを特徴とする。
さらに本発明の塗工装置は、請求項3に記載の通り、請求項1または請求項2に記載の塗工装置において、前記円筒状被塗工物の外側面と前記塗工液接触面との距離を計測する間隙距離計測手段と、該間隙距離計測手段からの信号を受けて前記回転駆動手段による該上部部材の回転駆動の回転速度を調整する距離検出回転制御手段と、を有していることを特徴とする。
さらに本発明の塗工装置は、請求項4に記載の通り、請求項1ないし請求項3のいずれか1項記載の塗工装置において、前記塗工桶内に前記塗工液を保持する液槽部が設けられ、かつ、前記上部部材に該液槽部内の塗工液を攪拌する攪拌羽根が設けられていることを特徴とする。
本発明の塗工装置によれば、塗工液供給部が上部部材と下部部材との間に形成され、塗装時にステージ上下動駆動手段により相対的に上昇する円筒状被塗工物の外側面とともに塗工液供給部より供給される塗工液を保持しながら円筒状被塗工物の外側面に塗工液を塗布する塗工液接触面が上部部材の貫通孔の内側面に円筒状被塗工物と離間して設けられ、上部部材を前記円筒状被塗工物と同軸に回転可能に保持する滑り部材が上部部材と下部部材との間に設けられ、かつ、上部部材を回転駆動させる上部部材回転駆動手段を有していることにより、上部部材を回転させながら塗工液を塗布することにより、円筒状被塗工物の外側面と塗工液接触面との間で塗工液に対してせん断力を加えることが可能となり、その結果、塗工液の粘度を低下させて高速に、かつ、均一に塗布することができる。
また、請求項2に記載の塗工装置によれば、上部部材の回転速度を計測する回転計測手段と、回転計測手段からの信号を受けて回転駆動手段による上部部材の回転の回転速度を調整する回転安定制御手段と、を有しているので、塗工液の粘度を常に安定させることができ、その結果、より均一な塗膜を形成することができる。
また、請求項3に記載の塗工装置によれば、円筒状被塗工物の外側面と貫通孔部の内側面との距離を計測する間隙距離計測手段と、間隙距離計測手段からの信号を受けて上部部材の回転速度を調整する距離検出回転制御手段と、を有していることにより、塗工速度を高速化した場合に生じやすい塗膜の厚さむらを効果的に防止することができる。
また、請求項4に記載の塗工装置によれば、塗工桶内に塗工液を保持する液槽部が設けられ、かつ、上部部材に液槽部内の塗工液を攪拌する攪拌羽根が設けられていることにより塗工液供給部から供給される塗工液の粘度を均一に保つことができ、延いては形成される塗膜の厚さむらを効果的に防止することができる。
本発明に係る塗工装置の例29の断面をモデル的に示した図である。 図2(a)塗工桶6付近のモデル拡大図である。図2(b)塗工桶6のモデル上面図である。 回転駆動源22と回転ローラ22aとが回動することを示すモデル図である。 塗工装置29への円筒状被塗工物1のセット方法を示すモデル図である(上側マスク91仮セット前の状態を示す図である)。 塗工装置29への円筒状被塗工物1のセット方法を示すモデル図である(上側マスク91仮セット後の状態を示す図である)。 塗工装置29への円筒状被塗工物1のセット方法を示すモデル図である(上側マスク91を引き上げた状態を示す図である)。 マンドレル10に円筒状被塗工物1をセットした状態を示すモデル図である。 塗工装置29へ下側マスク92、マンドレル10、及び、円筒状被塗工物1をセットした状態を示すモデル図である。 塗工装置29へ円筒状被塗工物1が保持された状態を示すモデル図である。 塗工桶6が塗工開始位置に移動された状態を示すモデル図である。 図11(a)超音波センサ17付近の拡大モデル図である。図11(b)回転駆動されている上部部材を示す上面図である。 塗装中の塗工装置29を示すモデル図である。 図13(a)塗工桶6が塗装終了高さに達したときの塗工装置29を示すモデル図である。図13(b)塗工桶6から塗工液30が回収されている状態を示すモデル図である。 最下位置へ塗工桶6が移動された状態を示すモデル図である。 上チャック軸12が上方に引き上げられた状態を示すモデル図である。 塗工装置29から取り外されたマンドレルから塗工品を取り外す状態を示すモデル図である。 図17(a)塗工中の円筒状被塗工物1の外側面、塗工液接触面6a1、及び、シール部材20との間の塗工液30に生じる流れを説明するモデル図である。図17(b)上記流れによって生じるせん断力速度Aを示すモデル図である。 上部部材6aの回転駆動によって生じるせん断速度Bを示すモデル図である。 せん断速度Aとせん断速度Bとから合成されたせん断速度Cを示すモデル図である。 本発明の塗工装置29の制御装置28の塗工時動作のフローチャートを示す図である。 上部部材6aに液槽部6b1内の塗工液30を攪拌する攪拌羽根36を設けた、本発明に係る塗工装置の例を示すモデル図である。 本発明の塗工装置のブロック図である。 上部部材6aの回転速度と平均膜厚が18μm一定となる塗工速度との関係を示すグラフである。 塗工速度15mm/秒で塗工を行ったときに平均膜厚を18μmとするための、円筒状被塗工物の外側面と塗工液接触面との距離とを変化させたときの上部部材の回転数の関係を調べた結果を示すグラフである。 本発明の塗工装置による塗工により離型層が構成される定着ベルトの構成の一例を示すモデル図である。
本発明に係る塗工装置を、図面を参照して説明する。
図1に本発明に係る塗工装置の例29の断面をモデル的に、図2(a)にはその塗工桶6付近のモデル的に拡大した図、図2(b)には塗工桶6の上面図をそれぞれ示す。
この例では台部27の上に塗工装置29が設置されている。
すなわち、この塗工装置29は、例えば定着ベルトの基材である厚さが50〜120μmのポリイミドから構成された柔軟な円筒状被塗工物1をその内側からその軸を鉛直にかつ円筒状に保持する、芯軸とその両端付近に芯軸に垂直に設けられた円盤材とから構成されたマンドレル10、定着ベルトの端面から塗料が漏洩することを防止するための上側マスク91及び下側マスク92と、これら上側マスク91及び下側マスク92をそれぞれ上下から支持するための上チャック軸12(連結部32を介して図示しない支持部によって支持されているチャックシリンダ31に接続されている)及び下チャック軸11と、から構成された被塗工物保持部、円筒状被塗工物1の外側面の全周に対して塗工液30を供給する塗工液供給部6cを内側面に備えた貫通孔33を有する塗工桶6と、塗工桶6を保持するステージ7と、ステージ7を円筒状被塗工物1に対して相対的に上下に移動させるステージ上下動駆動手段(この例では図示しないステッピングモーターとボールねじとリニアガイドとから構成されている)8と、を有する塗工装置であって、塗工桶6が上部部材6aと下部部材6bとにより構成され、下部部材6bの貫通孔33側には下部部材6bと円筒状被塗工物1との間を水密に保つシール部材20(この例ではフッ素ゴムシートから構成される)が設けられ、塗工液供給部6cが上部部材6aと下部部材6bとの間に形成され、塗装時にステージ上下動駆動手段8により相対的に上昇する円筒状被塗工物1の外側面及びシール部材20とともに塗工液供給部6cより供給される塗工液30を保持しながら円筒状被塗工物1の外側面に塗工液30を塗布する塗工液接触面6a1が上部部材6aの貫通孔33の内側面に円筒状被塗工物1と離間して設けられ、上部部材6aを円筒状被塗工物1と同軸に回転可能に保持する滑り部材21(この例ではスラスト玉軸受けであるが、その他鋼球やコロなどが使用できる)が上部部材6aと下部部材6bとの間に設けられ、かつ、上部部材6aを回転駆動させる上部部材回転駆動手段として上部部材6aの上面に接触する回転ローラ22aと回転ローラ22aへ回転運動を伝達する回転駆動源22(具体的にはモータ)が設けられている。
下部部材6bには塗工液30を保持する液槽部6b1が設けられているが、ここで図21に示すように、上部部材6aに液槽部6b1内の塗工液30を攪拌する攪拌羽根36が設けられていてもよい。攪拌羽根36が設けられていると上部部材6aが回転駆動されるときには攪拌羽根36が連動して液槽部6b1内の塗工液30を効率的に攪拌するために、成分の分離や塗工液30の頻繁な交換などの問題が未然に防止されるとともに、液槽部6b1内の塗工液30の粘度も低下するために、円筒状被塗工物1の外側面と塗工液接触面6a1との間の塗工液30の粘度との差が小さく保たれ、塗工液30全体の粘度むらが小さくなり、このため,塗工むらなどの障害が未然に防止される。
回転駆動手段である上記の回転駆動源22にはその回転速度を計測する回転計測手段である回転計測器34が付属しており、この例では一体となっている。また、円筒状被塗工物1までの距離を計測する光学式の変位計35が、ステージ7の底面に設置されている。
なお、図3にモデル的に示すように、回転駆動源22は回転駆動源22を支持する支持台24の軸24aによって上方に回動可能に軸止され、かつ、上部部材6aを回転駆動させるときにはクランプ25によって固定されているが、クランプ25を開放することにより上方に回動し、このとき回転駆動源22は後方支持部材26によって支持される。このように回転駆動源回避手段を設けることにより、回転ローラ22aを上部部材6aの上面から取り外し、塗工桶6のメンテナンス作業をすることができる。
図1における制御装置28は、周知のRAM、ROM、CPUなどから構成されたコンピュータである。制御装置28は、塗工液30を塗工桶6に供給するポンプ15、ポンプ15により供給される塗工液30の液面高さを測定するための超音波センサ17、下側マスク92をその周囲から挟み込んで保持するためのマスククランプ13と、上部部材6aを回転駆動する回転駆動源22と、ステージ上下動駆動手段8と、連結部32を介して接続されている上チャック軸12を上側に引き上げ可能に保持するチャックシリンダ31と、回転駆動源22の回転速度を計測する回転計測器34と、及び、円筒状被塗工物1までの距離を計測する変位計35とに接続されており、これらを制御して塗工装置29全体を制御する。
このような塗工装置29による円筒状被塗工物1側面への塗工液の塗布動作を、図4〜図16を用いて説明する。
塗工装置29への円筒状被塗工物1のセット方法について説明する。
セット時には、図4に示すように、チャックシリンダ31により連結部32を介して接続されている上チャック軸12が上方に引き上げられており、かつ、塗工桶6は最下位置に位置している。
まず、図5に示すように、オペレータは塗工桶6の貫通孔33を通して、上側マスク91を、下チャック軸11の上にセットしたのち、制御装置28のパネルを操作して、マスククランプ13で上側マスク91を周囲から保持させる。
次に、図6に示すようにステージ上下動駆動手段8よりに塗工桶6を最も高い位置へ移動させる。このとき、上側マスク91はマスククランプ13により保持されているために、塗工桶6とともに上昇し、その貫通孔に上チャック軸(下チャック軸11と同軸に支持されている)が嵌入される。この状態で円筒状被塗工物1をセットする。
具体的には図7に示すように、円筒状被塗工物1をマンドレル10にセットする。中空マンドレル10はその2つの円盤材により円筒状被塗工物1の両端付近を内側から、この例では円筒状被塗工物1を真円度φ0.02mm以下の円筒形に保持する。このとき、この例では円盤材の少なくとも一方はその外径を円筒状被塗工物1の内径よりも若干大きくなっており、円筒状被塗工物1がその自重で落下ないしずれないように保持する。さらに、マンドレル10下方の軸が下側マスク92の貫通孔に嵌入されてマンドレル10と下側マスク92とが同軸に接続される。
このように定着ベルト1、マンドレル10、円筒状被塗工物1、及び、下側マスク92を一体とし、次いで図8の白抜き矢印で示すように、下側マスクの貫通孔に下チャック軸11へ嵌入させて円筒状被塗工物1を塗工装置29へセットする。
この装置では、以降、塗工終了までの工程は、制御装置28により自動化されており、オペレータは制御装置28の図示しないパネルの塗工開始ボタンを押すことにより、以下のように進行する。
制御装置28は図9に示すように、チャックシリンダ31により連結部32を下方へ伸長させ(フローチャート図20中、ステップS1。以下同じ)、連結部32に接続された上チャック軸12の貫通孔にマンドレル10の上側の軸を挿入させ、次いで、マスククランプ13による上側マスク91の保持を解除させる(ステップS2)。このとき、円筒状被塗工物1は、マンドレル10を介して塗工装置29に上下から固定されるとともに、円筒状被塗工物1の軸は、マンドレル10、上側マスク91、下側マスク92、及び、塗工桶6の貫通孔の中心軸Pと同軸に保持される。
次いで、制御装置28は図10に示すようにステージ上下動駆動手段8により塗工桶6を塗工開始位置まで図中白抜き矢印に示すように降下させる(ステップS33)。
次いで制御装置28はポンプ15により、図11(a)中の白抜き矢印で示すように、超音波センサ17で測定される配管14における塗工液30の液面高さに関する信号が所定値に達するまで、すなわち、塗工桶6中の塗工液30が、所定の量(1回の塗布に必要な量)に達するまで、タンク16中の塗工液30を送液させる(ステップS4、S5、S6)。
さらに上記の送液が終了すると、制御装置28は回転駆動源22を制御して、塗工桶6の上部部材6aを貫通孔の軸と同軸に回転駆動させる(図11(b)中の大きい白抜き矢印参照)(ステップS7)。このとき、塗工液接触面6a1、円筒状被塗工物1の外側面、及び、シール部材20によって水密に保持される塗工液30は回転する上部部材6aの塗工液接触面6a1により円周方向(図11(b)中の小さい白抜き矢印参照)に流れ始め、円筒状被塗工物1の外側面と、この例ではこの外側面と平行な塗工液接触面6a1と、の間の塗工液30にはせん断力が働き、その粘度が低下する。
上部部材6a回転駆動開始の、所定時間(上記せん断力による塗工液30の粘度低下効果が十分に得られることがあらかじめ確認された時間(通常5秒前後))(ステップS9)後、制御装置28はステージ上下動駆動手段8により塗工桶6を塗装終了位置まで所定の速度(一定速度)で下降させる(図12白抜き矢印参照)(ステップS10)。このとき、円筒状被塗工物1の外側面に塗工液30が所定の厚さで塗布され、塗膜層4が形成される。
塗工桶6が塗装終了高さに達し、制御装置28が塗工桶6の下降(ステップS11)と、上部部材6aの回転駆動(ステップS12)とを停止させた状態を図13(a)に示す。このとき、シール部材20は円筒状被塗工物1を介してマンドレル10の円盤材に接する位置となり、このためにシール部材と円筒状被塗工物1との間からの塗工液30の漏れは未然に防止される。
次いで制御装置28は、塗工桶6中の塗工液30の回収を行う。すなわち、ポンプ15を動かして、超音波センサ17で測定される配管14における塗工液30の液面高さに関する信号をチェックしながら、円筒状被塗工物1への塗工液30の接触がなくなる高さ、すなわち、回収終了高さに達するまで、塗工桶6中の塗工液30を図示しないタンク16へ回収させる(図13(b)参照)(ステップS13、S14)。
その後、制御装置28は次に図14中、白抜き矢印で示すように、ステージ上下動駆動手段8により塗工桶6を最下位置へ移動させ(ステップS15)、次いで図15に示したようにチャックシリンダ31により連結部32を介して接続されている上チャック軸12を上方に引き上げさせて(ステップS16)、上側マスク91、マンドレル10、塗工膜4が形成された円筒状被塗工物1、及び、下側マスク92を塗工装置29から着脱可能としたのち、その動作を停止する。
次いでオペレータは上側マスク91、マンドレル10、塗工膜4が形成された円筒状被塗工物1、及び、下側マスク92を塗工装置29から外し、上側マスク91及び下側マスク92をマンドレル10から外した後、図16に白抜き矢印で示すようにマンドレル10から塗工膜4が形成された円筒状被塗工物1を取り外して、後工程(塗工膜4を加熱して離型層とする)へと送る。
以降、オペレータは以下、図1〜図16にそれぞれ示された動作を繰り返す。
この塗工装置29では、図12に示された塗工中に、図17(a)に白抜き矢印で示すように円筒状被塗工物1の外側面が上部部材6aの塗工液接触面6a1に対して相対的に上方に移動することで、円筒状被塗工物1の外側面、塗工液接触面6a1、及び、シール部材20との間の塗工液30に矢印で示すように上昇流Uと下降流Dとが発生して、図17(b)に示すように、円筒状被塗工物1と塗工液接触面6a1との間の塗工液30に鉛直方向のせん断速度Aが発生する。
さらに、塗工装置29では図18中、白抜き矢印で示されるように塗工中に上部部材6aが回転駆動されるために、円筒状被塗工物1と上部部材6aの塗工液接触面6a1との間の塗工液30に図18中矢印で示されるような円周方向の流れRが発生し、この流れRが均一でなく、塗工液接触面6a1に近いほど速いのでその結果、図18でモデル的に示すように円周方向のせん断速度Bが発生する。
塗工装置29では、円筒状被塗工物1と上部部材6aの塗工液接触面6a1との間の塗工液30には、上記の鉛直方向のせん断速度Aだけではなく、せん断速度Aと円周方向のせん断速度Bとが合成された、図19にモデル的に示す合成されたせん断速度Cが加わるので、塗工時の円筒状被塗工物1に対する塗工桶6の相対速度が小さい場合であっても、塗工時の塗工液30の粘度を十分に低下させることが可能となり、塗工膜4の膜厚を厚くすることなく塗工速度を高速化することが可能となる。このとき、好ましいせん断速度(せん断速度C)としては5.5sec-1以上6sec-1以下である。この範囲よりも低いと本発明の効果が十分には得られず、高すぎても塗工液中の粒子の凝集が進行し、塗工膜の外観に影響を及ぼし、定着ベルトとした場合に画像異常の原因となるおそれがある。
ここで、回転計測器34は、塗工中に、回転駆動源22の回転速度を計測し、その情報を制御装置28へ信号として伝達する。制御装置28はその回転速度の情報を基に、回転駆動源22へ供給する電力を調整し、回転駆動源22の回転速度を適切な値に保つ。すなわち、所定の速度より遅ければ供給電力を大きくし、(ステップS20、S21)、所定の速度より速ければ供給電力を小さくする(ステップS22、S23)。このように回転計測器34は本発明の塗工装置のブロック図である図22において、上部部材の回転速度を計測する回転計測手段であり、回転安定制御手段は制御装置28であることが理解される。
このように、回転駆動源22は本発明の塗工装置のブロック図である図22において回転駆動手段に、回転計測器34は回転計測手段に、そして、制御装置28は回転計測手段からの信号を受けて回転駆動手段による上部部材の回転駆動の回転速度を調整する回転安定制御手段に、それぞれ該当することが理解される。
このように回転駆動源22の回転が適切な速度に保たれることで、回転ローラ21を介して駆動される上部部材6aの回転も適切な速度に保たれる。なお、塗工装置29の制御装置28の図示しないパネルでは塗工時にステップS20〜23をスキップさせる上部部材回転駆動制御スキップスイッチが付属している。
また、ステージ7の下面側に設置されている、円筒状被塗工物1までの距離を計測する変位計35は制御装置28と接続されている。この変位計35は塗工中に変位計35から円筒状被塗工物1の外側面までの距離を計測し、その情報を制御装置28へ信号として伝達する。このような信号を元に制御装置28は円筒状被塗工物1と塗工液接触面6a1との距離(塗工距離)を算出し、この距離(塗工距離)が大きいときには、あらかじめ調べたこの距離と適正粘度との関係、及び、その適正粘度を得るための回転速度の条件に従って、回転駆動源22の回転速度を上げて上部部材の回転速度を上げることにより塗工液の粘度を下げ(ステップS30、S31)、逆に距離(塗工距離)が短くなれば回転駆動源22の回転速度を下げて上部部材の回転速度を下げることにより塗工液の粘度を上げる(ステップS32、S33)ことにより、塗工される塗工液30の粘度を調整し、常に適正な塗膜厚さが得られるよう調整する。上記記載より、変位計35は本発明の塗工装置のブロック図である図22において間隙距離計測手段に、そして、制御装置28は間隙距離計測手段からの信号を受け記回転駆動手段による上部部材の回転駆動の回転速度を調整する距離検出回転制御手段に、それぞれ該当することが理解される。
本発明は、上記のように塗工液のチキソトロピー性を利用する塗工装置である。ここで、目的とする塗工膜の厚さ、塗料の凝集しやすさなどによっても多少の増減はあるが、このような塗工装置で用いる塗工液の粘度としては300cP以上1000cP以下であれば本発明の効果が十分に得られ、好適に用いることができる。
すなわち、粘度が高くなると塗工速度を上げるのに必要なせん断速度が大きくなるが、塗工液に付加されるせん断速度が大きくなりすぎると塗工液中の粒子の凝集が進行し、塗工膜の外観に影響を及ぼし、定着ベルトとした場合に画像異常の原因となる。また、低粘度であると塗工後に液だれが生じ、厚さむらが生じ、やはり画像異常の原因となる。
<実施例1>
上記塗工装置29を用いて定着ベルト用基材の離型層形成用塗工液の塗工を実施した結果の詳細について述べる。
円筒状被塗工物となる定着ベルト基材としては、材質がポリイミド(以下「PI」)からなり、形状が外径60mm、長さ370mm、厚さ70μmの円筒状ベルトの外側面にシリコーンゴム層を約150μm形成し、さらにその上にプライマを塗布したものを用いた。円筒状被塗工物としては内径の偏差が長手方向で0.03mm以内のものを用いた。塗工液30はPFAディスパージョン(水分散系)で、粘度が300cP、360cPあるいは1000cPの塗工液をそれぞれ用いた。
本実施例において塗工を行う製品の定着ベルトに要求されるPFA膜厚(塗工品を加熱処理して得た定着ベルトの離型層の厚さ)は18±1.5μmの範囲であり、この値は定着ベルトに要求される良好な画像品質を得るために必要なものである。
塗工桶19を構成する上部部材6aはアルミニウム製で、その貫通孔の内径は65.3mm(円筒状被塗工物外側面と塗工液接触面との間の距離が約2.65mm。)のものを用いた。ポンプ15としてはチューブポンプ(蠕動ポンプ)を使用した。
上部部材6aを回転駆動させる回転駆動手段である回転駆動源22にはACスピードコントロールモータを使用し、上部部材6aの回転速度が0、1、2、あるいは、3rpmとなる条件でそれぞれ塗工を行った(このときは回転安定制御手段及び距離検出回転制御手段を用いずに、すなわち、図20のフローチャートにおいてステップS20〜S23、ステップ30〜S33はともにスキップさせた)。それぞれの条件において塗工速度(塗工桶の下降速度)が5、10、あるいは、15mm/sで塗工した塗工品の平均膜厚を評価し、加熱処理後に得られるPFA膜の平均膜厚(以下、「平均膜厚」と云う)が18μmとなる塗工速度を算出した。その結果から回転速度と、平均膜厚が18μm一定となる塗工速度との関係を調べた。結果を図23に示す。
図中、従来技術1は上部部材6aの回転速度を0rpm(回転駆動せず)とした条件である。また、従来技術2は特開2011−5436公報(特許文献2)の実施例1に記載された方法で行った結果である。すなわち、塗工中に上部部材6aは回転させず(回転速度は0rpm)、かつ、塗工桶6内の塗工液30がその液面が0.2mm/秒の一定速度で低下するようにポンプ15を運転させて、塗工桶6からタンク16へ塗工液30を回収させて行った結果である。
図22より、従来技術1、2と比較し、本発明によれば、上部部材6aの回転速度を上昇させることにより、塗工液の粘度が300cP以上1000cp以下の範囲で、従来技術に比べ塗工速度を2〜3倍に向上させることができることが確認された。
<実施例2>
上記では、回転安定制御手段及び距離検出回転制御手段をともに用いなかったが、この例では距離検出回転制御手段を用い、すなわち回転駆動手段である回転駆動源22および回転計測手段である回転計測器34にはACサーボモータと付属のエンコーダとを用い、図20のフローチャートにおけるステップS30〜S33のみをスキップして実施例2の塗工品を得た。このとき回転速度のばらつきは±0.5%以下であった(実施例1では±2%)。
ここで、あらかじめ行った検証(上部部材6aの上面に放射状の縞模様を設け、この縞模様と光学センサとにより測定された上部部材6a回転速度と回転計測器34により測定された回転駆動源22の回転速度から算出された上部部材6a回転速度とが精度良く一致しているとの検証)により、回転計測器34によって上部部材6aの回転速度の検出を行えることは確認されている。
実施例2の塗工品では上記と同様に、ただし、塗工速度15mm/sとし、図22を用いて求めた上部部材6aの回転速度を平均膜厚が18μmとなる条件で上部部材6aを回転駆動させながら、円筒状被塗工物への塗工を、図20のフローチャートにおけるステップS30〜S33のみをスキップして行った。
ここで、実施例1として評価を行った塗工品は実施例2の塗工品と同様に、ただし図20のフローチャートにおけるステップS20〜S23もスキップさせて一定の電力で塗工速度15mm/秒で平均膜厚18μmが得られる回転速度で上部部材6aを回転駆動させて塗工させたものである。
また、従来技術1に係る塗工品としては粘度が360cPの塗工液を用い、上部部材6aの回転を行わず、塗工速度15mm/秒で平均膜厚18μmが得られるように円筒状被塗工物1と塗工液接触面6a1との隙間を設定した。
従来技術2に係る塗工品は上記で特願2009−152467の実施例1の方法に従い、粘度が360cPの塗工液を用い、上部部材6aの回転を行わず、塗工速度15mm/sで平均膜厚18μmが得られるように、塗工桶6内の塗工液30の液面低下速度を設定して得たものである。
これら、得られた塗工品(それぞれ10本ずつ)について軸方向の膜厚の均一性を調べたところ、実施例1に係る塗工品では粘度が300cP、360cP及び1000cPの塗工液膜厚のばらつきが±8%以下であったのに対し、実施例2に係る塗工品ではこれらいずれの塗工液であっても膜厚のばらつきが±4%以下ときわめて良好であった。従来技術1及び2に係る塗工品ではばらつきはともに±8%を越えるものであり、十分なものではなかった。
<実施例3>
円筒状被塗工物として、定着ベルト基材に弾性層が設けられさらにプライマ処理が施された定着ベルト中間材の内、基本的には上記で用いた円筒状被塗工物と同じものでありながら軸方向の内径の偏差が長手方向で0.1mm程度と比較的大きいものを使用し、粘度が300cP、360cPあるいは1000cPの塗工液を用いて、塗工速度15mm/sで、間隙距離計測手段と距離検出回転制御手段とを用い(図20に示したフローチャートのすべてのステップを行って)塗工試験を行い、その長手方向の膜厚の偏差を評価した。
なお、円筒状被塗工物は上述のようにマンドレルによって真円度が高い(φ0.02mm以下)円筒形状に、保持されているために、上述のように一箇所からの測定で十分に精度高い補正が可能となる。
このとき、実施例3に係る塗工品ではこれらいずれの塗工液であっても膜厚のばらつきが±4%以下ときわめて良好であった。
同様に、ただし、間隙距離計測手段と距離検出回転制御手段とを用いずに(図20に示したフローチャートのステップS30〜33を行わずに)塗工試験を行い、その長手方向の膜厚の偏差を評価したところ、軸方向の内径の偏差の影響を防ぎきれず、膜厚のばらつきが大きくなり、±8%以下となった。
ここで、あらかじめ調べた、粘度が360cPの塗工液を用いたときの円筒状被塗工物の表面と塗工液接触面との間の距離と、平均膜厚が18μmとなる塗工膜が得られる上部部材の回転速度との関係を図23に示す。粘度が300cP及び1000cPの塗工液を用いたときの同様の関係とともに制御装置28のROM内にあらかじめ入力されており、制御装置28は距離検出回転制御手段として間隙距離計測手段からの信号を元に上部部材の回転駆動速度を制御する。なお、円筒状被塗工物の表面と塗工液接触面との間の距離としては2.5mm以上2.8mm以下であることが好ましい。この範囲未満であると隙間の塗料に毛細管現象が発生して塗装面が制御不能となりやすく、この範囲を超えるとせん断力による粘度低下の効果が小さくなりやすい。
<実施例4>
ここでは、図21に示されるように上部部材6aに塗工液を保持する塗工桶6の液槽部6b1内の塗工液30を攪拌する攪拌羽根36が設けられている塗工装置を用い、粘度が300cP、360cPあるいは1000cPの塗工液を用いて、塗工速度は15mm/sで、平均膜厚が18μmとなる塗工膜が得られる条件で上部部材6aを回転駆動させ、内径の偏差が長手方向で0.03mm以内の円筒状被塗工物60本に対してそれぞれ連続的に塗工試験を図20のフローチャートのステップをすべて行って60本目に塗工した塗工品の塗工膜の長手方向の膜厚の偏差を評価した。
このとき、塗工膜の厚さむらは±4%以下であった。
同様に、ただし、攪拌羽根36なしの塗工装置を用いて塗工した塗工品では塗工膜の厚さむら、また、攪拌羽根36なしの塗工装置を用いかつ図20のフローチャートにおけるステップS30〜33を省いて塗工した塗工品では塗工膜の厚さむら、及び、攪拌羽根36なしの塗工装置を用いかつ図20のフローチャートにおけるステップS30〜33及びステップS20〜23を省いて塗工した塗工品では塗工膜の厚さむらは、すべて4%を越え、±8%以下だった。これは連続塗工60回目では塗料の成分の分離が進行したために塗工厚にむらが生じたためである。
1 円筒状被塗工物
4 塗工膜
6a 上部部材
6a1 塗工液接触面
6b 下部部材
6b1 液槽部
6c 塗工液供給部
7 ステージ
8 ステージ上下動駆動手段
10 マンドレル
11 下チャック軸
12 上チャック軸
20 シール部材
22 回転駆動源
22a 回転ローラ
24 支持台
24a 軸
25 クランプ
26 後方支持部材
27 台部
28 制御装置
29 本発明に係る塗工装置
30 塗工液
31 チャックシリンダ
32 連結部
33 貫通孔
34 回転計測器
35 変位計
91 上側マスク
92 下側マスク
特開2007−252976号公報 特開2011−5436公報

Claims (4)

  1. 円筒状被塗工物を該円筒状被塗工物の軸を鉛直に保持する被塗工物保持部と、前記円筒状被塗工物の外側面の全周に対して塗工液を供給する塗工液供給部を内側面に備えた貫通孔を有する塗工桶と、前記塗工桶を保持するステージと、前記ステージを前記円筒状被塗工物に対して相対的に上下に移動させるステージ上下動駆動手段と、を有する塗工装置であって、
    イ)前記塗工桶が上部部材と下部部材とにより構成され、
    ロ)前記下部部材には該下部部材と前記円筒状被塗工物との間を水密に保つシール部材が設けられ、
    ハ)前記塗工液供給部が該上部部材と該下部部材との間に形成され、
    ニ)塗装時に前記ステージ上下動駆動手段により相対的に上昇する該円筒状被塗工物の外側面及び前記シール部材とともに前記塗工液供給部より供給される塗工液を保持しながら該円筒状被塗工物の外側面に該塗工液を塗布する塗工液接触面が前記上部部材の前記貫通孔の内側面に前記円筒状被塗工物と離間して設けられ、
    ホ)前記上部部材を前記円筒状被塗工物と同軸に回転可能に保持する滑り部材が該上部部材と該下部部材との間に設けられ、かつ、
    ヘ)前記上部部材を回転駆動させる上部部材回転駆動手段を有している
    ことを特徴とする塗工装置。
  2. 前記上部部材の回転速度を計測する回転計測手段と、該回転計測手段からの信号を受けて前記回転駆動手段による該上部部材の回転駆動の回転速度を調整する回転安定制御手段と、を有していることを特徴とする請求項1記載の塗工装置。
  3. 前記円筒状被塗工物の外側面と前記塗工液接触面との距離を計測する間隙距離計測手段と、該間隙距離計測手段からの信号を受けて前記回転駆動手段による該上部部材の回転駆動の回転速度を調整する距離検出回転制御手段と、を有していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の塗工装置。
  4. 前記塗工桶内に前記塗工液を保持する液槽部が設けられ、かつ、前記上部部材に該液槽部内の塗工液を攪拌する攪拌羽根が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項記載の塗工装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015006651A (ja) * 2013-06-26 2015-01-15 株式会社リコー 塗装装置、塗装方法、及びローラ

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