JP2012239943A - 固体触媒の充填状況の確認方法および固体触媒の充填方法と抜き取り方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】反応管12の一方の端部側に配置された蛍光灯22などの照明により、一方の端部の照度を50ルクス以上に維持しながら、他方の端部側から反応管12内を視認し、反応管12内の固体触媒の充填状況を確認する。この方法により、圧力損失が許容範囲外となる反応管、すなわち、触媒交換時において使用済み触媒の抜き取り忘れや、新しい触媒の充填忘れが発生している反応管を見つけることができる。
【選択図】図2
Description
このような反応器で反応を行う際には、各反応管内に固体触媒を充填して反応を行い、触媒の交換時期になると、各反応管から使用済みの固体触媒を抜き取って、新しい固体触媒を充填することが繰り返される。固体触媒の充填作業終了時や抜取り作業終了時には、各反応管において充填忘れや抜き取り忘れがないように、注意が払われる。
また、特許文献2には、触媒充填後の各反応管開口部から、高いガス線速度の気体を30秒以上吹き込み処理することにより、反応器ごとの圧力損失のばらつきを均質化する方法が提案されている。
また、特許文献2に記載の方法は、多大な処理時間と労力を要した。
上記(1)のエラーが生じた反応管では、使用済み触媒が残存している状態で新品の触媒が充填されることとなり、触媒充填長が長くなる結果、圧力損失が過度に上昇する。この場合には、圧力損失が上昇するだけでなく、触媒の局所的な発熱を招く可能性もある。
一方、上記(2)のエラーが生じた反応管では、触媒が無いため、圧力損失が過度に低下する。この場合には、反応器全体としては触媒充填量が低下することになり、充分な反応を行えない。
本発明の固体触媒の充填方法は、固定床多管式反応器を構成する複数本の反応管に、固体触媒を充填する方法であって、前記反応管に固体触媒を充填する作業を行った後、前記反応管の一方の端部側に配置された照明により、前記一方の端部の照度を50ルクス以上に維持しながら、他方の端部側から前記反応管内を視認し、前記反応管内の固体触媒の充填状況を確認することを特徴とする。
本発明の固体触媒の抜き取り方法は、固定床多管式反応器を構成する複数本の反応管から、固体触媒を抜き取る方法であって、前記反応管から固体触媒を抜き取る作業を行った後、前記反応管の一方の端部側に配置された照明により、前記一方の端部の照度を50ルクス以上に維持しながら、他方の端部側から前記反応管内を視認し、前記反応管内の固体触媒の抜き取り状況を確認することを特徴とする。
図1は、本発明で用いられる固定床多管式反応器の一例を概略的に示す図、図2は、図1の固定床多管式反応器の要部を示す図である。
この固定床多管式反応器(以下、単に反応器という場合がある。)10は、固体触媒存在下での接触気相反応などに使用されるものであって、鉛直方向に配置された横断面円形の直管からなり、固体触媒が充填された複数本の反応管12と、これら反応管12を収容する円筒状のシェル部10aと、溶接によりシェル部10aの上端および下端に接合された上部カバー部10bおよび下部カバー部10cとを備えた一体型のシェルアンドチューブ型固定床多管式反応器である。
ここで複数本の反応管12は、通常、内径が約15〜50mmの範囲から選ばれる実質的に同一形状の金属管である。ここで「実質的に同一形状」とは、反応管の外径、肉厚および長さが設計誤差の範囲にあることを意味する。なお、設計誤差は通常±2.5%以内、好ましくは±0.5%以内が許容される。
また、シェル部10aには、反応管12を加熱または除熱する熱媒体がシェル部10a内に導入される熱媒体入口15と、熱媒体がシェル部10c内から排出される熱媒体出口16とが形成されている。
具体的な充填方法としては、作業者がマンホール18aから上部カバー部10b内に入り、固体触媒を反応管12の上端から下端に向けて落下させる落下充填法などが挙げられるが、公知の方法を採用でき特に制限はない。
一方、蛍光灯22を点灯し、反応管12の下端における照度が50ルクス以上となるようにする。そして、このように照度を50ルクス以上に維持しながら、作業者は、上部カバー部10b内から各反応管12内を覗き込んで視認して、固体触媒の充填状況を確認する。
なお、図示例のようにプレート20の下面に照度計21を設置し、この照度計21により測定された照度が50ルクス以上である場合には、反応管12の下端や、蛍光灯22よりも200mm上方部分の照度が50ルクス以上となることが確認されている。
具体的な抜き取り方法としては、反応管12内に直接吸引ラインを挿入して固体触媒を吸い上げる方法、反応管12の下部に設けられているプレート20とワイヤーメッシュ板19とを取り除き、反応管12の下端から落下させて抜き取る方法などが挙げられるが、公知の方法を採用でき特に制限はない。
ついで、蛍光灯22を点灯し、反応管12の下端における照度が50ルクス以上となるように維持しながら、作業者は上部カバー部10b内から各反応管12内を覗き込んで視認して、固体触媒の抜き取り状況を確認する。
特に、照度を50ルクス以上とすることにより、視認の精度が向上し、充填状況の確認をミスなく行うことができる。
また、反応管12の配置形態としては、いわゆる縦型である垂直配置を例示したが、場合によっては、水平配置(横型)であってもよい。その場合には、反応管の左右の端部のうち、一方側に照明を配置し、他方側から視認すればよい。
また、照明としては、所定の照度が得られるものであれば、蛍光灯22に限定されず白熱灯であってもよいし、その設置個数、設置場所にも制限はない。
例えば、行われる反応が、プロピレン、イソブチレン、tert−ブタノールの気相接触酸化反応などである場合には、モリブデン、ビスマス、及び鉄を含む複合金属酸化物触媒などが好適に使用され、例えばメタクロレインの気相接触酸化反応が行われる場合には、モリブデン及びリンを含むヘテロポリ酸(塩)触媒などが好適に使用される。
[固体触媒Aの製造]
触媒原料を含むスラリーを乾燥し、平均粒径25μmの粉末触媒Bを調製した。この触媒の組成は以下のとおりである。
P1.0Mo12.0V0.8Cu0.1K0.6Cs0.5Bi0.3Sb0.3As0.2Oz
(zは各成分の原子比を満足するのに必要な酸素の原子比)
該粉末触媒Bの22500kgとグラファイト粉末700kgとをよく混合した後、外径5mm、高さ5mmの円柱状に打錠成型し、メタクロレインの気相接触酸化反応に利用可能な固体触媒A:23200kgを得た。
固体触媒A1500gを充填密度1.30kg/Lのシリカアルミナボール1500gと均一に混合し、混合物を得た。以下これを触媒Aという。
内径27mm、長さ6mの炭素鋼製チューブ(反応管)を14000本備えている図1の構成の反応器10の各反応管12それぞれに、触媒Aを落下充填した。
なお、ここで、58本の反応管12については、触媒Aを敢えて充填しなかった。
その結果、表1に示すように、下部カバー部10c内の光が見える反応管12は58本とカウントされた。また、このような確認作業には、1.2時間を要した。
黒色の布製カバーにより各蛍光灯22を部分的に覆い、反応管12の下端における照度を表1に示す値に調整した。
その他の点は実施例1と同様にして、10名の作業員により、上部カバー部10b内から反応管12内を覗き込んで視認し、各反応管12を通じて下部カバー部10c内の蛍光灯22による光が見えるかどうかを確認した。
結果を表1に示す。
各反応管12を通じて下部カバー部10c内の蛍光灯22による光が見えるかどうかを確認する代わりに、全ての反応管12それぞれについて、その上端から充填した触媒Aまでの空間長をメジャーにより測定した。具体的には、長尺なメジャーを上端から差し込んでいき、触媒にメジャーの先端が当接した際の目盛から空間長を測定した。ここで触媒を充填していない場合には、メジャーの先端が触媒に当たることはないため、それにより、触媒充填をしていない反応管を検知できる。その結果、触媒Aを充填していない反応管12の本数は58本であると確認された。また、確認作業には、11.9時間を要した。
各反応管12を通じて下部カバー部10c内の蛍光灯22による光が見えるかどうかを確認する代わりに、各反応管12について圧力損失を測定し、その値により触媒Aを充填していない反応管12の本数を確認したところ、58本であった。圧力損失は、ピストル型のエアガンの先端にゴム栓と圧力計を装着し、2000L/hの流量で反応管12内にエアを吹き込みながら測定した。また、確認作業には、9.7時間を要した。
これに対し、反応管12の下端における照度を40ルクスにした比較例1では、視認性が低下することで確認ミスが増加し、照度を10ルクスにした比較例2では、照明が暗いため、確認不能であった。
また、比較例3、4では、確認ミスなく正確に、触媒Aが充填されていない反応管12を見つけることができたが、労力が大きく、確認作業にも長時間を要した。
実施例1の反応器10を構成する各反応管12から、固体触媒を抜き取った。抜き取り作業は、反応管12内に直接吸引ラインを挿入して固体触媒を吸い上げる方法により行った。
なお、ここで、46本の反応管12については、敢えて触媒Aの少なくも一部が管内に残存するようにした。
ついで、10名の作業員により、上部カバー部10b内から反応管12内を覗き込んで視認し、各反応管12を通じて下部カバー部10c内の蛍光灯22による光が見えるかどうかを確認した。
その結果、表1に示すように、下部カバー部10c内の光が見えない反応管12、すなわち、触媒Aが抜き取られていない、あるいは、触媒Aが完全には抜き取られておらず、一部が残存している反応管12は46本とカウントされた。また、このような確認作業には、1.3時間を要した。
黒色の布製カバーにより各蛍光灯22を部分的に覆い、反応管12の下端における照度を表2に示す値に調整した。
その他の点は実施例1と同様にして、10名の作業員により、上部カバー部10b内から反応管12内を覗き込んで視認し、各反応管12を通じて下部カバー部10c内の蛍光灯22による光が見えるかどうかを確認した。
結果を表2に示す。
各反応管12を通じて下部カバー部10c内の蛍光灯22による光が見えるかどうかを確認する代わりに、全反応管12について、その上端から充填した触媒Aまでの空間長をメジャーにより測定した。その結果、メジャーの先端が触媒Aに当たり、触媒Aが少なくとも一部残存している反応管12の本数は46本であると確認された。また、確認作業には、19.4時間を要した。
各反応管12を通じて下部カバー部10c内の蛍光灯22による光が見えるかどうかを確認する代わりに、各反応管12について圧力損失を測定し、その値により触媒Aが少なくとも一部残存している反応管12の本数を確認したところ、46本であった。圧力損失は、比較例4と同様にして測定した。また、確認作業には、9.5時間を要した。
これに対し、反応管12の下端における照度を40ルクスにした比較例5では、視認性が低下することで確認ミスが増加し、照度を10ルクスにした比較例6では、照明が暗いため、確認不能であった。
また、比較例7、8では、確認ミスなく正確に、触媒Aが少なくとも一部残存している反応管12を見つけることができたが、労力が大きく、確認作業にも長時間を要した。
10a:シェル部
10b:上部カバー部
10c:下部カバー部
12:反応管
13ガス入口
14ガス出口
15:熱媒体入口
16:熱媒体出口
17a:上部管板
17b:下部管板
18a,18b:マンホール
Claims (3)
- 固定床多管式反応器を構成する複数本の反応管における固体触媒の充填状況を確認する方法であって、
前記反応管の一方の端部側に配置された照明により、前記一方の端部の照度を50ルクス以上に維持しながら、他方の端部側から前記反応管内を視認し、前記反応管内の固体触媒の充填状況を確認する、固体触媒の充填状況の確認方法。 - 固定床多管式反応器を構成する複数本の反応管に、固体触媒を充填する方法であって、
前記反応管に固体触媒を充填する作業を行った後、
前記反応管の一方の端部側に配置された照明により、前記一方の端部の照度を50ルクス以上に維持しながら、他方の端部側から前記反応管内を視認し、前記反応管内の固体触媒の充填状況を確認する、固体触媒の充填方法。 - 固定床多管式反応器を構成する複数本の反応管から、固体触媒を抜き取る方法であって、
前記反応管から固体触媒を抜き取る作業を行った後、
前記反応管の一方の端部側に配置された照明により、前記一方の端部の照度を50ルクス以上に維持しながら、他方の端部側から前記反応管内を視認し、前記反応管内の固体触媒の抜き取り状況を確認する、固体触媒の抜き取り方法。
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