JP2012239438A - バルトネラ・ヘンセラエ抗原の調製方法、および該方法により得られるバルトネラ・ヘンセラエ調製抗原 - Google Patents

バルトネラ・ヘンセラエ抗原の調製方法、および該方法により得られるバルトネラ・ヘンセラエ調製抗原 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の目的は、バルトネラ・ヘンセラエの検出測定に用いることができ、さらにはワクチン製造に用いることができる、特異的抗原性が高い、バルトネラ・ヘンセラエの調製抗原を提供することである。
【解決手段】血清培地で培養したバルトネラ・ヘンセラエ菌体を特定の工程で処理することにより、有用なバルトネラ・ヘンセラエ調製抗原を提供できる。本発明の調製バルトネラ・ヘンセラエ抗原を用いた酵素免疫法は、患者からの試料(血清)を用いた診断において、CSD陽性を特異的に高感度で判定できる。また、本発明のバルトネラ・ヘンセラエ調製抗原はワクチン製造に用いることができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、酵素免疫法によるバルトネラ・ヘンセラエの感染測定に用いることができる新たな方法により調整されたバルトネラ・ヘンセラエ抗原に関する。本発明はまた、該調製抗原を用いた、バルトネラ・ヘンセラエ測定法に関する。本発明はさらには、該調製抗原を用いてワクチンを製造する方法に関する。
猫ひっかき病(cat scratch disease:CSD)は人獣共通感染症であり、局所リンパ節腫脹を主訴とする定形型と、不明熱、バリノー眼腺症候群、肝脾肉芽腫、急性脳症を呈する合併症の複合型を呈する非定形型が存在する。
CSDの原因菌バルトネラ・ヘンセラエ(Bartonella henselae)は、やや湾曲した0.6〜1ミクロンの大きさの小桿菌であり、鞭毛は有しないが運動性はある。発育にはヘミンを要求し、チョコレート寒天培地、血液寒天培地で34〜37℃、CO5〜10%で培養する。自発凝集性を示し、オキシターゼ、カタラーゼ陰性で炭水化物を分解しないという性質を有する。患者からの血液培養では、溶血・遠心分離法が推奨されている。ただし通常の血液培養法では菌が増殖しても混濁は起こらない。
CSDは、病態としては感染後、血管新生を起こし、小血管壁内皮細胞を増殖させることが知られている。本感染症は再興感染症であり、未だ本菌に関する研究は不十分で、不明な点が多い。赤血球内に寄生増殖する特異的な生態や培養日数に時間を要すること、特異的抗原の調製方法が未開発であること、および人畜感染に関する周知の認識不足などの背景により現在までワクチン製造が行われていない。
また、バルトネラ・ヘンセラエは、患者試料からの分離・培養が困難なために、感染の診断には、患者抗バルトネラ血清抗体測定、またはPCR法によるバルトネラ特異DNA検出が行われている。バルトネラ16SrRNA遺伝子にはI型とII型があり、日本では猫由来分離株が主であることはよく知られている。日本でのCSD患者からの試料と猫由来バルトネラ菌を用いて、Multilocus sequence typing(MLST法)による分子系解析が行われている(非特許文献1)。
対象は全国から集められたCSD患者各種臨床材料由来バルトネラDNAと山口県の飼い猫290例中31例の血液から分離したバルトネラ菌31株である。MLST法はArvanらの方法に準じて8種類の遺伝子(16SrRNA,batR,ftsZ,gltA,groEL,nlpD,ribC,rpoB)の約320〜500bpの塩基配列からSequence Type(ST)を決定した。結果はCSD患者13例すべてがST−1(I型)であった、猫由来株のST−1は90.3%,ST−6は6.5%,ST−15が3.2%であった。ST−1とST−15の16SrRNA遺伝子はすべてI型であったがST−6はII型であった。MLST型別解析によりST−1が日本のCSDの主な菌主であることが示唆された。
また、実際に日本人の患者から単離されたバルトネラ・ヘンセラエが、I型であることが報告されている。(非特許文献2)
患者抗バルトネラ血清抗体測定は、バルトネラ感染症診断に最も広く利用されている方法であり、間接蛍光抗体(indirect fluorescence antibody:IFA)法や酵素抗体(enzyme immunoassay:ELISA)法が開発されている。なかでも、間接蛍光抗体(IFA)法が標準的な診断法である。通常の診断では、IgG抗体価が、1:64倍以上、IgM抗体価が1:20倍以上で陽性と見なされるが、健常人でもIgG抗体価陽性者が約6%見られる。そのため、CSDの確定診断は、単一血清で、IgG抗体価が1:256倍以上、ペア血清で4倍以上のIgG抗体価の上昇、IgM抗体価が20倍以上のいずれかを認めれば可能である。米国では、B.quintanaおよびB.henselaeの血清IgG・IgM抗体価測定が可能な診断キット、Bartolella IFA IgG(Focus Diagnostics)が普及している。
しかしながら、B.quintanaとB.henselaeの両菌種間ではDNA塩基配列および抗原性が類似しているため交差反応が認められることが知られており、その程度は、約80%である(非特許文献3)。従って、B.henselaeの確定診断をするためには、血清学的に両菌種を区別して同定することが必要であるが容易ではない。
患者抗バルトネラ血清抗体測定を用いたバルトネラ・ヘンセラエの感染症診断のためには、感染患者の抗バルトネラ血清抗体が、特異的に高感度で反応するバルトネラ・ヘンセラエ抗原が必要となる。バルトネラ・ヘンセラエは、従来、固体培地で培養されているが、チョコレート寒天固形培地(ベロ細胞培養由来)のバルトネラ・ヘンセラエACTT49882の全菌体成分を用いた測定では、特異度が低いという問題がある。一方、菌体の単離成分のみでは感度が低いという問題がある。よって、固体培地で培養したバルトネラ・ヘンセラエを用いて調製した従来の抗原は、抗バルトネラ血清抗体測定のための抗原としては満足のいくものではなかった。また、そのような従来の調製抗原は、ワクチン製造のための抗原としても満足のいくものではなく、現在までワクチン製造は行われていない。
さらに、バルトネラ・ヘンセラエの確定診断にはIFA法が主として用いられているが、上記診断キット、Bartolella IFA IgGにおいては、抗原として、全菌体成分を用い、かつバルトネラ菌感染ベロ細胞を用いなければならないという問題がある。
Yanagiharaら、FEMS Immunol. Med. Microbiolo., 60 (2010), pp.44-48. Tsunekokaら、Diagnostic Microbiology and Infectious Disease 68 (2010) 174-176. 常岡ら、感染症学雑誌 72: 801-807, 1998
本発明の目的は、患者抗バルトネラ血清抗体測定法を用いた、より簡便で安価な診断方法を提供することである。
本発明の他の目的は、バルトネラ・ヘンセラエの診断測定に用いることができる、特異的抗原性が高い、バルトネラ・ヘンセラエの調製抗原を提供することである。
本発明のさらなる目的は、バルトネラ・ヘンセラエのワクチン抗原に用いることができる、特異的抗原性が高い、バルトネラ・ヘンセラエの調製抗原を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、バルトネラ・ヘンセラエ菌体を特定の工程で処理することにより、有用なバルトネラ・ヘンセラエ調製抗原を提供できることを見いだし、本発明を完成した。本発明の調製バルトネラ・ヘンセラエ抗原は、患者からの試料(血液)を用いた診断において、CSD陽性を特異的に高感度で測定できる。また、本発明の調製バルトネラ・ヘンセラエ抗原はワクチン製造に用いることができる。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
(1)バルトネラ・ヘンセラエ抗原を調製するための方法であって、
(a) 寒天培地(例えば、チョコレート寒天培地)で培養したバルトネラ・ヘンセラエ菌を更に牛血清またはウサギ血液を含有する液体培地(例えば、MEM培地やハートインフュージョンブイヨン培地)で培養する工程、
(b) 培養したバルトネラ・ヘンセラエ菌を回収した後、菌体を界面活性剤で処理する工程、および
(c) 界面活性剤で処理した菌体を、遠心分離し、上清を調製抗原として回収する工程
を含む方法。
(2)さらに、(d) 得られた遠心上清を透析した後、不純物を除去する工程を含む、上記(1)に記載の方法。
(3)牛血清が、牛胎児血清である上記(1)または(2)に記載の方法。
(4)界面活性剤が、N―ラウリルサルコシンである上記(1)から(3)のいずれかに記載の方法。
(5)不純物を除去する工程が、培養大腸菌の菌体浮遊液を超音波処理し遠心分離した沈査物である吸収用菌体を用いる、上記(2)から(4)のいずれかに記載の方法。
(6)バルトネラ・ヘンセラエ菌が、I型に属する菌株である、上記(1)から(5)のいずれかに記載の方法。
(7)上記(1)から(6)のいずれかに記載の方法により調製されたバルトネラ・ヘンセラエ調製抗原。
(8)抗原が、10〜200キロダルトンの分子量を有する、上記(7)に記載のバルトネラ・ヘンセラエ調製抗原。
(9)哺乳類動物からの試料中に、バルトネラ・ヘンセラエが存在するか否かを判断する方法であって、上記(7)または(8)に記載のバルトネラ・ヘンセラエ調製抗原を用いた酵素免疫法により、試料中の抗バルトネラ・ヘンセラエ抗体を検出する方法。
(10)哺乳類動物からの試料が血清である上記(9)に記載の方法。
(11)哺乳類動物が、ネコ、イヌまたはヒトである上記(9)または(10)に記載の方法。
(12)上記(9)から(11)のいずれかに記載の方法を用いることにより、ネコまたはイヌが、バルトネラ・ヘンセラエ菌に感染しているか否かを診断する方法。
(13)上記(7)または(8)に記載のバルトネラ・ヘンセラエ調製抗原を用いてワクチンを製造する方法。
本発明により提供されるバルトネラ・ヘンセラエ調製抗原は、CSDの患者の血清中に存在する抗バルトネラ・ヘンセラエ抗体と特異的に結合できるので、高感度でかつ特異度が高い測定診断方法、例えば酵素免疫法を提供できるとともに、ワクチンを作成する場合に、非常に有用な抗原となる。
図1は、本発明の工程に基づいて調整したバルトネラ・ヘンセラエ抗原を用いて、患者血清を測定した結果である。左側の「沈査」は、従来の方法を用いて調整した抗原を用いて測定した結果である。中央の「上清」は、本発明の調整工程を用いて調整した抗原を用いて測定した結果である。右側の「上清精製液」は、さらに工程を加えた本発明のもう一つの調整工程を用いて調整した抗原を用いて測定した結果である。 図2は、本発明の方法に基づいて調整した抗原を用いて、患者血清のウェスタンブロットを行った結果である。
バルトネラ・ヘンセラエ菌は、今まで、固体培地で培養した菌で使用していたが、本発明者らは、(特定の)液体培地に接種することにより、抗原性が一層高まることを新たに見いだし、本発明を完成した。
本発明は、新たなバルトネラ・ヘンセラエの抗原の調製方法および調製された抗原を提供する。
本発明は、バルトネラ・ヘンセラエ抗原を調製するための方法であって、
(a)バルトネラ・ヘンセラエ菌をチョコレート寒天培地で培養し、ついで牛血清中またはウサギ血清を含有する液体培地、例えば、MEM培地で培養する工程、(b)培養したバルトネラ・ヘンセラエ菌を回収した後、菌体を界面活性剤で処理する工程、および(c)界面活性剤で処理した菌体を、遠心分離し、上清を調製抗原として回収する工程、さらに、任意に、(d)得られた遠心上清を透析した後、吸収用菌体を用いて非特異的物質をキレートして除去する工程、を含む方法である。
バルトネラ・ヘンセラエ菌は、ATCC49882株など、バルトネラ・ヘンセラエであればいずれの菌株を用いることもできるが、日本人を対象とした診断測定やワクチン製造のための抗原の調製のためには、I型に属する菌株が好ましく、さらには、遺伝子解析の明らかな日本人からの分離株、例えば、ST−1を代表するバルトネラ・ヘンセラエYH−01株が特に好ましい。
本発明で用いる液体培地は、バルトネラ・ヘンセラエ菌が培養でき菌の増殖が行えるものであれば良く、MEM培地等一般に用いられている培地を用いることができるが、本発明の目的には、ハート(イン)フュージョンブイヨン培地が好ましい。培養は、通常の培養条件を用いることができるが、例えば、35〜37℃で、3〜5日培養することにより、良好な抗原性を示す十分な菌を得ることができる。
本発明で用いる、バルトネラ・ヘンセラエ菌培養のための血清は、牛血清、牛胎児血清、ウサギ血清などをあげることができる。液体培養したバルトネラ・ヘンセラエ菌を、血清中で培養することにより、菌数は実質的に増えないが、バルトネラ菌の特異抗原度が上昇する。ここで、菌数が実質的に増えないとは、数日間培養しても、菌数が指数関数的に増えないことを意味する。例えば、これに限定されないが、3〜5日間の培養を得ても、菌数が10倍以下、好ましくは4倍以下、さらに好ましくは2倍以下の場合が該当する。これにより、特異性が高い抗原を調製できるとともに、高感度な測定系を提供できる。
本発明で用いる界面活性剤は、例えば、1%N―ラウリルサルコシンを使用する。チョコレート寒天培地に発育させたバルトネラ・ヘンセラエ菌をPBSに浮遊させ、PBSで洗浄し、これを氷中で超音波破砕機により、菌体を破砕処理する。この菌液に1%の割合にN−ラウロイル−サルコシンを加え1時間氷中で反応後、60000rpm,4℃,120分間で遠心し、その上清液を回収して、バルトネラ・ヘンセラエ菌調製抗原を含む抗原液を得る。
本発明の他の実施態様において、上記のようにして得られた遠心上清を、透析膜(ディスキングチューブ・セルロース膜)とPBS緩衝液(NaCl・137mmol/L,KCl・2,7mmol/L,NaHPO・10mmmol/L、KHPO・1,76mmol/L、pH・7,4)を使用して、低温下で一夜、透析を行い、サルコシンを除去する。
さらに任意に、例えば、吸収用菌体を用いて不純物を除去することができる。吸収用菌体は、常法に従い調整できるが、例えば、培養した菌(例えば、大腸菌)の菌体浮遊液を、超音波処理し、さらに遠心分離した後、その沈査物を回収することにより調整できる。
さらに任意に、10〜200キロダルトンの分子量を有する抗原のみを精製・回収する。前記分子量を有する抗原の精製は、通常用いられる方法、例えばゲル濾過カラムクロマトグラフィーを用いて行うことができる。
本発明の他の実施態様において、本発明のバルトネラ・ヘンセラエ調製抗原を用いた、診断測定法が提供される。本発明の診断測定方法において、哺乳類動物から分離された試料中の、抗バルトネラ・ヘンセラエ抗体が検出される。
哺乳類動物としては、ヒト、ネコ、イヌ等、いずれの哺乳類動物も可能であるが、ヒトに加えて、CSDの感染源であるネコやイヌが好ましい。哺乳類動物から分離された試料は、血液、血清、組織片など、抗バルトネラ・ヘンセラエ抗体を含んでいるものであれば特に制限されないが、迅速な測定を提供し、かつ被検体に負担をかけない血清が好ましい。
本発明の診断測定法は、例えば以下の工程を含む。
(1)本発明のバルトネラ・ヘンセラエ調製抗原を、例えば96マイクロタイタープレートに固定し、次いでブロッキングを行う、
(2)プレートの洗浄を行ったのち、任意の濃度に希釈した試料を各ウェルに添加し、反応を行う、
(3)プレートの洗浄を行ったのち、標識抗IgG抗体を反応させ、試料中の抗バルトネラ・ヘンセラエ抗体量を測定する。
上記酵素免疫法は、常法に従って行うことができる。
本発明の方法を用いることにより、試料中の抗バルトネラ・ヘンセラエ抗体を、特異的に高感度で、簡便に測定できる、また、それにより、バルトネラ・ヘンセラエ感染の診断が可能となる。
本発明の一つの実施態様において、本発明のバルトネラ・ヘンセラエ調製抗原、特には、10〜200キロダルトンの画分を用いて、不活性化ワクチンの製造方法に従い、そして任意に至適なアジュバンドとの併用により、不活化ワクチンが提供される。
不活化ワクチンの製造方法は、常法に従って行うことができる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)バルトネラ・ヘンセラエ抗原の調製
バルトネラ・ヘンセラエ株(以下バルトネラ菌という場合がある)をハートヒュージョンブイヨン培地にヘモグロビン液5%を加え、最初に35〜37℃で3〜5日培養し、増殖を行った。次いで、ハートヒュージョンブイヨン培地内で析出増殖したバルトネラ菌をかき集め、バルトネラ菌が好む赤血球電化質に拮抗する塩類、とりわけNaCl成分を除したウシ胎児血清で再度、培養を行った
この条件では、菌数は10〜20%程度しか増殖しなかったが、バルトネラ菌の特異抗原度は、上昇した。
ウシ胎児血清中で培養したバルトネラ菌を界面活性剤(サルコシン)にて処理した後、遠心分離を行い、上澄み液を回収した。これを「上清抗原」とした。
次いで、上澄み液をヴィスキングチューブに封入し、界面活性剤除去の目的と未反応域低分子を除去するために、低温下で一夜透析液処理を行った。さらに臨床材料大腸菌を普通寒天培地に接種し35〜37℃で24時間培養を行い、その菌体浮遊液を超音波処理し遠心分離した沈査物を吸収用菌体とし、血清中のバルトネラ菌以外の非特異的物質をキレートした。再度、遠心分離を行いキレートされた上精精製液を回収した。これを、「上清精製液抗原」とした。
比較例として、従来用いられてきたチョコレート寒天培地由来の処理抗原を従来法に従って調製し、「沈査抗原」とした。
(実施例2)調製抗原を用いた患者血清の測定
上記の(材料および方法)に従い、以下のヒト患者および健常人からの血清を用いて、バルトネラ・ヘンセラエ感染の測定を、以下に示す酵素免疫法により行った。抗原は、実施例1の「上清抗原」および「上清精製抗原」、および比較例の「沈査抗原」を用いた。
酵素免疫法
炭酸緩衝液(pH9.6)で希釈した各抗原液100μlを96穴マイクロプレートに分注し、4℃下で一夜固相化を行う。Phosphate buffered saline(PBS:pH7.4)で洗浄後、0.2%ウシアルブミン添加PBSでブロッキングし、0.1%Tween20添加PBSで洗浄する。次いで100倍希釈した患者からの血清を加えて37℃で、1時間反応を行う。再び洗浄を行い、HRP標識抗ヒトIgG抗体を加え37℃で1時間反応させる。洗浄後にO−Phenyldiamine含有50nMリン酸クエン酸緩衝液(pH5.0)を加え室温で16〜20℃前後で30分〜1時間発色させ405nmで吸光度を測定する。
結果を表1および図1に示す。
Figure 2012239438
従来用いられてきた間接蛍光抗体法(IFA法)で使用されるチョコレート寒天培地由来の処理抗原(沈査抗原)では特異度は高いものの、感度が低く、また他のグラム陰性桿菌類似菌による交差反応が見られ擬陽性判別となること少なくなかった。しかし、液体培地で培養した菌の精製を行った上精抗原では感度、特異性ともに改善し、上精抗原をさらに精製処理した上精精製抗原では明確なカットオフ域が存在し特異的抗原域の選別が可能となり、確定判断が可能となった。
上記の結果より、抗原の調製に液体培地を使用し、さらに菌体を界面活性剤で処理後その上澄み液を精製することにより特異度、感度が改善され、とりわけ牛由来のウシ胎児血清にて培養を行うと特異度が高く、感度が改善した抗原を調製できた。また、このようにして調製した抗原を用いた酵素免疫法で、患者血清中の抗バルトネラ・ヘンセラエ抗体を、特異的に高感度で測定できることが示された。
このことは、本発明の調製抗原が、ワクチン製造のための抗原としても、非常に有用であることを示している。
(実施例3)上清精製抗原を用いたCSD患者血清のウェスタンブロット法
実施例1に従って調製したバルトネラ・ヘンセラエの上清精製抗原を用いて、CSD患者からの血清による、電気泳動ウェスタブロット法解析を行った。
血清を120V,3時間の条件でSDS−ポリアクリルアミドゲルで電気泳動し分離する。分離した血清抗体をゲルからニトロセルロース幕に移す。緩衝液中で転写する方法として湿式法を選択。4℃、90分で電場をかけ膜転写を行う。HRP酵素で処理したACTT株を指標とする。
血清は、ヒト由来CSD患者血清CSD定型例(レーンA):CSD非定型例(心内膜炎感染者)(レーンB):CSD非定型例(肝・脾肉芽腫患者)(レーンC):健常人血清(レーンN)を用いた。
結果を図2に示す。
その結果、CSD患者血清の定型例(単純感染)、非定型(複合感染)の抗原分類では10〜200キロダルトン域で多種の抗原が存在し病態の状態により抗体の反応が異なることが証明された。従って、バルトネラ・ヘンセラエ調製抗原として、上清精製抗原のうち分子量が10〜200キロダルトンの抗原を用いることにより、測定法においてさらなる特異性および高感度の抗原が期待できる。
さらには、この分画を用いて、至適なアジュバンドとの併用により不活化ワクチン接種を行うことも可能となる。

Claims (13)

  1. バルトネラ・ヘンセラエ抗原を調製するための方法であって、
    (a) 寒天培地で培養したバルトネラ・ヘンセラエ菌を更に牛血清またはウサギ血液を含有する液体培地で培養する工程、
    (b) 培養したバルトネラ・ヘンセラエ菌を回収した後、菌体を界面活性剤で処理する工程、および
    (c) 界面活性剤で処理した菌体を、遠心分離し、上清を調製抗原として回収する工程
    を含む方法。
  2. さらに、(d) 得られた遠心上清を透析した後、吸収用菌体を用いて非特異的物質をキレートして除去する工程、を含む、請求項1に記載の方法。
  3. 液体培地が、牛胎児血清を含有するMEM培地またはハートインフュージョンブイヨン培地である請求項1または2に記載の方法。
  4. 界面活性剤が、サルコシンである請求項1から3のいずれかに記載の方法。
  5. 不純物を除去する工程が、培養大腸菌の菌体浮遊液を超音波処理し遠心分離した沈査物である吸収用菌体を用いる、請求項2から4のいずれかに記載の方法。
  6. バルトネラ・ヘンセラエ菌が、I型に属する菌株である請求項1から5のいずれかに記載の方法。
  7. 請求項1から6のいずれかに記載の方法により調製されたバルトネラ・ヘンセラエ調製抗原。
  8. 抗原が、10〜200キロダルトンの分子量を有する、請求項7に記載のバルトネラ・ヘンセラエ調製抗原。
  9. 哺乳類動物からの試料中に、バルトネラ・ヘンセラエが存在するか否かを判断する方法であって、請求項7または8に記載のバルトネラ・ヘンセラエ調製抗原を用いた酵素免疫法により、試料中の抗バルトネラ・ヘンセラエ抗体を検出する方法。
  10. 哺乳類動物からの試料が血清である請求項9に記載の方法。
  11. 哺乳類動物が、ネコ、イヌまたはヒトである請求項9または10に記載の方法。
  12. 請求項9から11のいずれかに記載の方法を用いることにより、ネコまたはイヌが、バルトネラ・ヘンセラエ菌に感染しているか否かを診断する方法。
  13. 請求項7または8に記載のバルトネラ・ヘンセラエ調製抗原を用いてワクチンを製造する方法。
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