JP2016216413A - バルトネラ科に属する菌体由来の抗原を調製するための方法 - Google Patents

バルトネラ科に属する菌体由来の抗原を調製するための方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の目的は、バルトネラ科に属する菌体の、酵素免疫法による感染測定に用いるのに好適な、該菌体の調製抗原を提供することである。本発明はまた、該調製抗原を用いた、試料中に存在する、該菌体に対する抗体を検出する方法及び、同じく該調製抗原を用いた、試料中に存在する、該菌体に対する抗体を検出するための診断キット、さらには、該調製抗原を用いてワクチンを製造する方法を提供することも目的とする。
【解決手段】本発明は、(a)バルトネラ科に属する菌体を集める工程、(b)(a)で集めた菌体を低濃度界面活性剤で処理した後、遠心分離し、沈渣を回収する工程、(c)(b)で回収した沈渣を、高濃度界面活性剤で再度処理した後、遠心分離し、上清を回収する工程、(d)(c)で回収した上清を、イオン交換カラムクロマトグラフィーにより精製する工程、を含む、バルトネラ科に属する菌体由来の抗原を調製するための方法であって、これにより、感度及び特異性が大幅に向上した調製抗原を提供することが可能である。
【選択図】なし

Description

本発明は、酵素免疫法によるバルトネラ科に属する菌体、特にバルトネラ・ヘンセラエの感染測定に用いるのに好適な、感度及び特異性が大幅に向上した、該菌体の調製抗原及びその調製方法に関する。本発明はまた、該調製抗原を用いた、試料中に存在する、該菌体に対する抗体を検出する方法及び、同じく該調製抗原を用いた、試料中に存在する、該菌体に対する抗体を検出するための診断キットに関する。さらに本発明は、該調製抗原を用いてワクチンを製造する方法に関する。
猫ひっかき病(Cat scratch disease:CSD)はバルトネラ・ヘンセラエ(Bartonella henselae)によって引き起こされる、リンパ節の炎症を主体とした感染症である。人獣共通感染症の一つであるため、ネコからヒトに感染する。本症は局所リンパ節腫脹を主訴とする定型例から、リンパ節腫大を認めない不明熱、バリノー眼腺症候群、視神経網膜炎、急性脳症、肝脾肉芽種、心内膜炎など全身性の重症な非定型例まで、その臨床像は多彩である。
CSDの病原菌であるバルトネラ・ヘンセラエは、全長およそ1ミクロン程度の小桿菌であり、自発凝集性を示し、オキシダーゼ、カタラーゼ陰性で炭水化物を分解しないという性質を有していることが知られている。
本菌は、チョコレート寒天培地、血液寒天培地等を培地として用い、所定の方法により培養可能であるが、患者からの血液培養では、溶血・遠心分離法が推奨されている。ただし通常の血液培養法では菌が増殖しても混濁は起こらない。
バルトネラ・ヘンセラエは、患者試料からの分離が極めて困難なために、CSD感染の診断法としては、該感染症患者血清中に存在する抗バルトネラ・ヘンセラエ抗体の測定、またはPCR法によるバルトネラ・ヘンセラエ特異DNA検出が行われている。この内、特に前者の患者血清中の抗バルトネラ・ヘンセラエ抗体測定が、バルトネラ・ヘンセラエ感染症診断に最も広く利用されている方法であり、具体的には、間接蛍光抗体(indirect fluorescence antibody:IFA)法や酵素抗体(enzyme immunoassay:ELISA)法等が知られている。なかでも、IFA法が世界的標準法となっており、既に血清IgG・IgM抗体価測定が可能な診断キット(Bartolella IFA IgG(Focus Diagnostics)等)が存在している。
しかしながら、上記のIFA法は、特異性が高いものの、感度が低いために偽陰性例が多く、CSD感染の診断法として必ずしも十分ではない。これに対して、ELISA法は、IFA法に対して、安定した測定結果が得られるという特徴があり、すでに欧米で、CSD感染に対するELISA法の報告はあるものの(非特許文献1)、現行の方法では、感度・特異性共にIFA法より低く、未だ実用化には至っていない。この為、より良いCSD感染の診断法を確立する上で、高感度なELISA法を確立することが急務である。
CSD感染患者血清中の抗バルトネラ抗体価を測定することに基づく、より高感度な該感染症診断法を確立する上で重要となるのが、該抗体と特異的かつ高感度に反応するバルトネラ・ヘンセラエ抗原の調製である。従来、該菌体の抗原としては、1)バルトネラ・ヘンセラエ菌体そのもの、2)該菌体をソニケートしたもの、3)2)にて得られたものをN−ラウロイル-サルコシン(サルコシン)抽出後、超遠心した沈渣、4)分子生物学的手法により産生したバルトネラ・ヘンセラエ由来の17KDa蛋白、などを使用することが多いが、該手法により調製されたバルトネラ・ヘンセラエ抗原では、高感度ELISA法を確立する上で、必ずしも満足な抗原とはなり得なかった。その最大の原因としては、菌体より調製された抗原成分は一種類ではなく、多数の成分より構成されているのが常であり、従来方法によって調製されたバルトネラ・ヘンセラエ抗原成分の構成が、抗バルトネラ・ヘンセラエ抗体との抗原抗体反応において必ずしも最適な構成となっていないことに起因すると考えられる。
近年、上記の調製方法以外に、バルトネラ・ヘンセラエ菌体を、界面活性剤の一種であるサルコシンにより抽出した後、これを遠心分離し、得られた上清成分を該菌体の抗原として用いる事例が報告されている(非特許文献2、特許文献1、2)。この様に、ELISA法の抗原として、界面活性剤による処理(以下「可溶化」ということもある)後の遠心分離上清が注目されつつあるが、必ずしも十分な特異性・感度を備えた抗原の調製には至っていない。また、斯様な従来の調製抗原では、ワクチン製造のための抗原としても満足のいくものではなく、現在までワクチン製造は実施されていない。
特表2005−530998 特開2012−239438
Vermeulen,MJ et al. 2007、Clinical Microbiology and infection Vol.13, pp.623−634 Tsuruoka et al. 2012、Diagnostic Microbiology and Infectious Disease Vol.74, pp.230−235
本発明は、酵素免疫法によるバルトネラ科に属する菌体、特にバルトネラ・ヘンセラエの感染測定に用いるのに好適な、感度及び特異性が大幅に向上した、該菌体の調製抗原及びその調製方法を提供する。本発明はまた、該調製抗原を用いた、血清中に存在する、該菌体に対する抗体を検出する方法及び、同じく該調製抗原を用いた、血清中に存在する、該菌体に対する抗体を検出するための診断キットを提供する。さらに本発明は、該調製抗原を用いてワクチンを製造する方法を提供する。
本発明者らは、非特許文献2にある様に、かねてより高感度かつ特異性の高いELISA法を実現する為の抗原として、界面活性剤による可溶化後の遠心分離上清に注目し、更に鋭意研究を重ねた結果、酵素免疫法によるバルトネラ科に属する菌体、特にバルトネラ・ヘンセラエの感染測定に用いるのに好適な、従来よりも著しく感度及び特異性の向上した、該菌体の調製抗原及びその調製方法を見出し、本発明を完成した。本発明に係るバルトネラ・ヘンセラエ菌体の調製抗原は、患者からの試料(血液)を用いた診断において、CSD陽性を特異的に高感度で測定でき、これに加えて、本発明に係る該抗原は、ワクチン製造に用いることができる。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
(1)バルトネラ科に属する菌体由来の抗原を調製するための方法であって、
(a)バルトネラ科に属する菌体を集める工程、
(b)(a)で集めた菌体を低濃度界面活性剤で処理した後、遠心分離し、沈渣を回収する工程、
(c)(b)で回収した沈渣を、高濃度界面活性剤で再度処理した後、遠心分離し、上清を回収する工程、
(d)(c)で回収した上清を、イオン交換カラムクロマトグラフィーにより精製する工程
を含む方法。
(2)前記バルトネラ科に属する菌体が、バルトネラ・ヘンセラエである(1)に記載の方法。
(3)前記界面活性剤が、陰イオン界面活性剤である(1)または(2)に記載の方法。
(4)前記陰イオン界面活性剤が、N−ラウロイル−サルコシンである(3)に記載の方法。
(5)前記低濃度N−ラウロイル−サルコシンが0.01〜1%であり、前記高濃度N−ラウロイル−サルコシンが0.2〜4%であり、前者濃度が後者濃度と同等又はそれ以下であることを特徴とする(4)に記載の方法。
(6)前記イオン交換カラムクロマトグラフィーが、陰イオン交換カラムクロマトグラフィーである(1)乃至(5)のいずれかに記載の方法。
(7)(1)乃至(6)のいずれかに記載の方法により調製された、バルトネラ科に属する菌体由来の調製抗原。
(8)前記バルトネラ科に属する菌体が、バルトネラ・ヘンセラエである(7)に記載の調製抗原。
(9)前記調製抗原に10〜60キロダルトンの分子量の抗原を含む、(7)または(8)に記載の調製抗原。
(10)哺乳類動物由来の試料中に存在する、バルトネラ科に属する菌に対する抗体を検出する方法であって、(7)乃至(9)に記載の調製抗原を用いた酵素免疫法により、前記試料中の前記抗体を検出する方法。
(11)
前記バルトネラ科に属する菌体が、バルトネラ・ヘンセラエである(10)に記載の方法。
(12)前記哺乳類動物が、イヌ科、ネコ科、げっ歯類またはヒトである(10)または(11)に記載の方法。
(13)試料中の、バルトネラ科に属する菌に対する抗体を検出するための診断キットであって、(7)乃至(9)のいずれかに記載の調製抗原で被覆されたプレート又は固体担体を含む診断キット。
(14)(7)乃至(9)のいずれかに記載の、バルトネラ科に属する菌体由来の調製抗原を用いてワクチンを製造する方法。
本発明により提供されるバルトネラ科に属する菌体、特にバルトネラ・ヘンセラエの調製抗原は、CSDの患者の試料中に存在する抗バルトネラ・ヘンセラエ抗体と、従来のものに比べ、より強固かつ特異的に結合する為、高感度かつ特異性の高い測定診断方法及び診断キットを提供することが出来、更に、CSDに対するワクチンを作成する上で非常に有用な抗原となりうる。
サルコシン抽出後の沈渣と上清液における健常人(陰性)及びCSD患者(陽性)血清の抗原抗体反応比較。 サルコシン抽出上清液の健常人及びCSD患者血清によるウエスタンブロット。 バルトネラ・ヘンセラエ菌液(超音波なし)及びその超音波処理液(超音波あり)由来のサルコシン抽出上清液における健常人及びCSD患者血清の抗原抗体反応比較。 DEAE Sephadexを用いたイオン交換クロマトグラフィーにより分画されたバルトネラ・ヘンセラエ菌体成分の精製液の蛋白画分と健常人及びCSD患者血清に対する抗原抗体反応性との関係。 サルコシン抽出回数による健常人及びCSD患者血清に対する抗原抗体反応性の相違。 2−4回目サルコシン抽出上清液の1)SDS−PAGEによる蛋白解析、及び2)健常人及びCSD患者血清によるウエスタンブロット。 1)1回目サルコシン抽出上清液(0.05−0.2%サルコシンにて抽出)及び2)2回目サルコシン抽出上清液(1回目サルコシン各濃度抽出後の沈渣から0.2%サルコシンにて抽出)での健常人及びCSD患者血清に対する抗原抗体反応性の相違。 バルトネラ・ヘンセラエ菌体からの抗原調製方法。
本発明の第1の態様は、バルトネラ科に属する菌体由来の抗原を調製するための方法であって、
(a)バルトネラ科に属する菌体を集める工程、
(b)(a)で集めた菌体を低濃度界面活性剤で処理した後、遠心分離し、沈渣を回収する工程、
(c)(b)で回収した沈渣を、高濃度界面活性剤で再度処理した後、遠心分離し、上清を回収する工程、
(d)(c)で回収した上清を、イオン交換カラムクロマトグラフィーにより精製する工程
を含む方法である。
本発明において「バルトネラ科に属する菌」とは、ロシャリメア属(Rochalimaea)に属するグラム陰性菌に含まれる、偏性好気性桿菌の一種であり、特に限定はしないが、例えば、バルトネラ・ヘンセラエ(Bartonella henselae)、バルトネラ・クインタナ(Bartonella quintana)、バルトネラ・バチリホルミス(Bartonella bacilliformis)、バルトネラ・ビンソニイ(Bartonella vinsonii)、バルトネラ・クラリジイ(Bartonella claridgeiae)等があり、好ましくは、猫ひっかき病(cat scratch disease: CSD)の病原菌であるバルトネラ・ヘンセラエ、Carrion病の病原菌であるバルトネラ・バチリホルミス、塹壕熱(trench fever)の病原菌であるバルトネラ・クインタナなどであり、特に好ましくはバルトネラ・ヘンセラエである。
また、本発明における「菌体」とは、微生物である細菌そのもののことであり、具体的には該細菌の単細胞及び/または細胞集団を示す。
更に、「抗原」とは一般的には、免疫細胞上の抗原レセプターに結合し、免疫反応を引き起こさせる物質の総称であり、本発明においては、血液中に含まれる所定の抗体に対して、いわゆる抗原抗体反応に基づいて特異的に結合する生体成分のことであり、具体的には、バルトネラ科に属する菌体に対する抗体に対して特異的な生体成分である。ここで「高感度の抗原」とは、微量であっても血液中の所定の抗体と強く抗原抗体反応を生じる抗原のことであり、「特異的な抗原」とは、所定の抗体とは結合しない他の生体成分の中にあっても特異的に該抗体と抗原抗体反応により結合する抗原のことである。そして、抗原を「調製」するとは、特に限定はしないが、菌体等の生体物に一定の処理を加えることにより、所定の抗体と抗原抗体反応を生じる一群の生体成分を、抗原として獲得することであり、様々な実施態様において、細菌由来の抗原を、細菌の菌体から抽出することができる。該菌体から抗原を調製するために知られている方法は極めて多様である。
本発明における、菌体を集める工程とは、細菌を様々な供給源から収集することであり、特に限定はしないが、バルトネラ科に属する菌における1つの実施態様においては、細胞培養等の人工的な環境で成長させた上で、これを回収することが出来る。ここで、人工的な環境とは、該細菌の周りの雰囲気の構成要素の一部またはすべての濃度を変化させることによって、例えば、温度および/ またはその他を変化させることによって得ることができる。具体的には、チョコレート寒天培地や血液寒天培地、その他一般に用いられている培地(MEM培地、DMEM培地、F12培地等)等を培地として用い、これに血清(例えばウシ血清、ウシ胎児血清、ウサギ血清、ウマ血清等)や緩衝剤(HEPES,MES等)、添加物等を加えてもよく、34〜37℃、CO濃度5〜10%で培養することが多いが、該菌体を健康な状態で増殖させることが出来る環境であれば、特にこれらに限定されるものではない。
成長・増殖させたバルトネラ科に属する菌は、細胞培養の分野で一般的な任意の方法により、例えば、スパチュラを用いてかき取る等によって収集することが可能である。また、別の実施態様として、菌体をガラスビーズとともに回収してもよく、特に限定されるものではない。
本発明で用いられる「界面活性剤」とは、分子内に水になじみやすい部分(親水基)と、油になじみやすい部分(親油基・疎水基)を持つ物質の総称であり、生体物質の可溶化などに用いられる。界面活性剤は、親水性部分がイオン性(陽イオン性・陰イオン性・両性)のものと非イオン性(ノニオン性)のものに大別され、対象や目的・用途により適宜使い分けられる。本発明においては、陰イオン界面活性剤(水中で解離したとき陰イオンとなる界面活性剤)が好ましいが、特に限定はしない。陰イオン界面活性剤の親水基として、カルボン酸、スルホン酸、あるいはリン酸構造を持つものが多く、好ましくは、カルボン酸系としては脂肪酸塩(脂肪酸ナトリウム)、コール酸塩やN−ラウロイル−サルコシン(サルコシン)、スルホン酸系としてはモノアルキル硫酸塩、アルキルポリオキシエチレン硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、モノアルキルリン酸塩などがあり、特に好ましくはN−ラウロイル−サルコシン(サルコシン)である。
菌体由来の抗原を調製するための従来の方法としては、菌体そのもの、菌体をソニケートしたもの、これらを界面活性剤にて処理後、遠心分離した上清や沈渣を抗原としているのに対し、本発明において、発明者らは、集めた菌体を低濃度界面活性剤で処理した後、遠心分離し、沈渣を回収し、該沈渣を、更に高濃度界面活性剤で再度処理した後、遠心分離し、上清を回収している。これは、界面活性剤処理により得られた上清が沈渣よりも抗原として優れており(図1)、少なくとも1回界面活性剤にて処理して得られた沈渣を、再度界面活性剤にて処理し、遠心分離後に得られる上清に、患者抗血清により強くかつ特異的に反応する抗原が含まれている(図5、図7)という知見から新たに創作された方法であり、従来技術に対して予想を大きく上回る成果をもたらすものである。
界面活性剤が「低濃度」及び「高濃度」であることは相対的な程度を表し、それぞれが絶対値としてどの程度であるかについては、処理する細菌の種類や量等、また用いる界面活性剤の種類や濃度等により適宜検討する必要がある。両者の相対的な関係としては、前者の濃度が後者の濃度と同等又はそれ以下であることを特徴とする。例えば、界面活性剤がN−ラウロイル−サルコシンである場合、特に限定はしないが、低濃度N−ラウロイル−サルコシンは0.01〜1%であり、高濃度N−ラウロイル−サルコシンが0.2〜4%であり、前者濃度が後者濃度と同等又はそれ以下であってもよく、好ましくは前者が0.05〜0.5%、後者が0.1〜1%であり、更に好ましくは前者が0.05〜0.2%、後者が0.1〜0.3%であってもよい(但し、いずれの場合も、前者の濃度が後者の濃度と同等又はそれ以下であることを特徴とする)。
本発明におけるイオン交換クロマトグラフィーとは、イオンや極性分子のような電荷をもつ分子を分離するクロマトグラフィーであり、クロマトグラフィーの担体であるイオン交換樹脂が、接触している電解質溶液に含まれるイオンを取り込み、代わりに自らの持つ別種のイオンを放出することで、イオン種の入れ換えを行う機能を有する。イオン基の性質により、陽イオン交換クロマトグラフィーと陰イオン交換クロマトグラフィーに大別され、前者は、担体表面に酸性基を持つため陽イオンと結合する性質をもつものであり、後者は、塩基性基をもつため,陰イオンと結合する性質をもつものである。本発明に係るイオン交換クロマトグラフィーとしては、特に限定はしないが、陰イオン交換クロマトグラフィーが望ましく、具体的にはDEAE(ジエチルエタノールアミン)、QAE、MonoQ等が挙げられる。DEAEを表面に付加したクロマトグラフィー担体としては、特に限定はしないが、セルロース、セファロース、セファデックスなどがある。
本発明の第2の態様は、上記第1の態様に記載の方法により調製された、バルトネラ科に属する菌体由来の調製抗原である。
本発明に係る調製抗原は、血液中に含まれる、バルトネラ科に属する菌体に対する抗体に対して、いわゆる抗原抗体反応に基づいて特異的に結合する生体成分のことであり、特に限定されるものではない。発明者らは、健常人及びCSD患者血清を用いたウエスタンブロットを行い(図2及び図6)、調製してきた抗原は、患者血清と反応する多くの構成成分を含んでおり、このうち、分子量10〜60キロダルトンの構成成分が強く患者血清とのみ反応し、特に、1回サルコシン処理(以下「サルコシン抽出」ともいう)を行った後の残渣から複数回サルコシン抽出を行うことで回収した上清においては、分子量11〜52キロダルトンの構成成分に極めて強い抗原抗体反応を確認した。以上のことから、特に限定はしないが、本発明に係る調製抗原は、好ましくは10〜60キロダルトンの分子量の抗原を含むものであり、更に好ましくは11〜52キロダルトンの分子量の抗原を含むものであってもよい。
本発明の第3の態様は、哺乳類動物由来の血清中に存在する、バルトネラ科に属する菌に対する抗体を検出する方法であって、上記第2の態様に記載の調製抗原を用いた酵素免疫法により、前記血清中の前記抗体を検出する方法である。
本態様における酵素免疫法とは、抗体を検出する方法として通常使用されるものであればいずれでもよく、特に限定はしないが、好ましい実施態様としては、バルトネラ科に属する菌体に由来する抗原に対する液性免疫(抗体)応答を測定するための酵素結合免疫吸着法(ELISA)である。
ELISAでは、これに限定はされないが、一般には、抗原(または抗体)を結合させるためのプレート、試薬、サンプル(例えば、調製抗原や血清サンプルなど)、酵素標識が連結しており、かつ、上記サンプルに含まれる抗体に結合可能な二次抗体、連結している酵素に対する基質、および分光光度測定読み取り装置等が要求される。しかしながら、ELISAは多様であり、より多くの、又は少ない構成物を用いる様々なELISAが、本発明の実施態様には含まれる。
本態様に係る検出方法は、例えば以下の工程を含む;
(1)本発明の第2の態様に係る調製抗原を、例えば96マイクロプレートに固定した後、ブロッキングを行う、
(2)ブロッキングを除去し、プレートの洗浄を実施後、任意の濃度に希釈した試料を各ウェルに添加し、抗原抗体反応を開始させる、
(3)一定時間後、プレート洗浄を行い、資料に含有される抗体(例えばIgG)を認識する、酵素標識二次抗体を反応させる、
(4)標識として結合する酵素に対する基質を加えた後、一定時間酵素反応を進めることで、試料中の抗体量を測定する。
上記酵素免疫法は、常法に従って行うことができる。
本発明の方法を用いることにより、試料中に含まれる、バルトネラ科に属する菌(例えばバルトネラ・ヘンセラエ)に対する抗体を、高感度、特異的かつ簡便に検出することが出来、それにより、該細菌に対する感染の診断が容易に可能となる。
本発明の哺乳類動物としては、いずれの哺乳類動物も可能であるが、本発明に係る病原菌及び感染症として、バルトネラ・ヘンセラエ(猫ひっかき病)、バルトネラ・バチリホルミス(Carrion病)、バルトネラ・クインタナ(塹壕熱)などが想定されるため、ヒトに加えて、イヌ科、ネコ科、げっ歯類等のCSDの感染源となるものが好ましく、特に好ましくはヒト、ネコ科、イヌ科である。
哺乳類動物から分離された試料としては、血液、血清、組織片など、バルトネラ科に属する菌(例えばバルトネラ・ヘンセラエ)に対する抗体を含んでいるものであれば、特に制限されないが、迅速な測定を提供し、かつ被検体に負担をかけない血清が好ましい。
本発明の第4の態様は、試料中の、バルトネラ科に属する菌に対する抗体を検出するための診断キットであって、上記第2の態様に記載の調製抗原で被覆されたプレート又は固体担体を含む診断キットである。
本発明における「調製抗原で被覆されたプレート又は固体担体」とは、本発明の第2の態様に係る調製抗原にて所望のプレート又は固体担体を被覆したものであり、抗原を被覆した領域に対して、例えば、ブロッキングや該抗原に対する抗体との抗原抗体反応、該抗体に対する酵素標識二次抗体の反応、そして該酵素と基質間の酵素反応等を実施することで、該プレート又は固体担体上に添加した試料中の抗体を検出し、これにより感染の診断を可能とするものである。
ここでのプレート又は固体担体は、上に例示したような試料中の抗体検出の為の操作が可能であれば、特に限定はしないが、例えば、マイクロプレートなどが好ましく、具体的には、6、24、96、384穴のものなどが挙げられる。
本発明に係る診断キットには、上記プレート又は固体担体に加え、
1)陽性コントロールとして使用される、所望のバルトネラ科に属する菌体を実験的に接種することで得られる血清等の生体サンプル、
2)陰性コントロールとして使用される、所望のバルトネラ科に属する抗体を含まないことが確認されている血清等の生体サンプル、
3)該調製抗原に結合した抗体に結合する酵素標識されたコンジュゲート、
4)検出可能に標識されたコンジュゲートの可視化を可能にする基質
の少なくともいずれか1つを含んでいてもよい。
本発明のキットとともに含まれ得る他の付属物として、スパチュラ、バイアル、脱イオン水、事前に混合された緩衝液、および/ またはブロッキング剤などが含まれていてもよい。また、これら以外の試験キット設計であったとしても、該設計が当業者にとって明らかである場合、そのようなキットのすべては本発明に包含されるものである。
本発明の第5の態様は、上記第2の態様に記載の、バルトネラ科に属する菌体由来の調製抗原を用いてワクチンを製造する方法である。
本発明のバルトネラ科に属する菌体由来の調製抗原、特に限定はしないが、好ましくは分子量10〜60キロダルトンの抗原画分を用いて、不活性化ワクチンの製造方法に従い、更に、免疫原性を高める補助剤として、任意に至適なアジュバンドと併用することにより、不活化ワクチンを提供することが可能である。
アジュバントとしては,鉱物油,植物油,ミョウバン,リン酸アルミニウム,ベントナイト,シリカ,ムラミルジペプチド誘導体,サイモシン,インターロイキン等を利用できるが、特に限定はされない。
不活化ワクチンの製造方法は、常法に従って行うことができ、例えば、該調製抗原に、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、ミネラルオイル及びノンミネラルオイル等の免疫賦活剤、ポリソルベート80 、アミノ酸及びラクトースやスクロース等の糖等の安定剤及びホルマリン、チメロサール、2−フェノキシエタノール、ベンジルアルコール、塩化ベンゼトニウム及び塩化ベンザルコニウム等の保存剤を適宜選択して添加することにより製剤化を行ってもよく、また、賦形剤としての効果を有するラクトース、スクロース等の糖を添加した場合、凍結乾燥製剤として製剤化することも可能であるが、これらの方法に特に限定されるものではない。
以下に実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
〔材料と試薬〕
B. henselae ATCC4988株はチョコレート寒天培地(極東製薬)で培養を行い、菌液の洗浄にはHIMAC centrifuge(HITACHI)遠心器を使用した。菌液のソニケートはUltrasonic Disruptor UD−200(TOMY)を使用し、サルコシン抽出後の超遠心はhimac CS 100EX(HITACHI)機器を使用した。DEAEイオン交換クロマトグラフィー法による抗原精製にはDEAE sepharose Fast Flow(GE Healthcare)を用い、該クロマトグラフィー法に係る精製液の回収はBio Frac Fraction collector (BIO−RAD)によって行った。蛋白測定は分光光度計U−2001spectrophotometer(HITACHI)を使用し、ELISAにおける試薬は、HRD標識抗ヒトIgGウサギ血清(Dako)およびo−phenylenediamine(SIGMA)含有リン酸クエン酸緩衝液(pH5.0)にて行い、発色後の吸光度はプレートリーダーMULTISKAN FC(Thermo scientific)にて測定した。
〔使用菌体の調製〕
使用菌株として、バルトネラ・ヘンセラエ(B. henselae )ATCC49882株を使用し、該菌体をチョコレート寒天培地により、5%CO 、37℃の環境下にて3−4日間培養した。培養後の菌体を5mM HEPES緩衝液(pH7.4)に浮遊させた菌液を5000rpm、20分間にて遠心分離して菌体を回収し、該菌体を再び該緩衝液にて浮遊させた後、遠心分離する操作を5〜6回繰り返すことで、菌液を洗浄した。
〔ソニケート菌液の調製〕
超音波破壊器(Ultrasonic Disruptor UD−200)を用いて低温下でバルトネラ・ヘンセラエ菌液を10分間ソニケートし、ソニケート菌液を調製した。
〔N−ラウロイル−サルコシン(サルコシン)による抽出〕
サルコシンを、最終濃度0.1−0.4%になるべくバルトネラ・ヘンセラエ菌液及びそのソニケート菌液に添加し、両者を30分間激しく振盪することで抽出液を調製した。その後、超遠心分離機(himac CS 100EX)にて10000−50000rpm、0.5−1時間遠心することで上清液と沈渣に分画した。
〔DEAE陰イオン交換クロマトグラフィーによる精製液の調製〕
バルトネラ・ヘンセラエ菌体成分とその抗原性の関係をみるため、 DEAE−Sephadex(Pharmacia)を充填したカラム内にサンプル(ソニケート菌液)をチャージし、0〜1000mMの塩(NaCl)濃度勾配を作ったTris−HCl緩衝液(pH8.3)にて溶出した(グラディエーション法)。次いでカラムからの溶出液をバルトネラ・ヘンセラエの菌体成分の精製液として1mlずつフラクションコレクターにて採取し、分光光度計(吸光度280nm)で蛋白濃度を測定した。また、該溶出液を抗原としたELISA法でCSD患者および健常人血清中のバルトネラ・ヘンセラエIgG抗体価を測定して、溶出液中の菌体蛋白成分とバルトネラ・ヘンセラエIgG抗体価との突合を行った。更には該当する塩濃度範囲にて溶出する溶液を、ステップワイズ法にて精製液として採取し、グラディエーション法による精製液と同様に、その蛋白成分と抗体価との関係を確認した
〔抽出液および精製液の抗原性〕
各抽出液(上清液)、沈渣および精製液は、適宜、透析や濃縮を行ない、抗原液として、CSD患者5名および健常人5名の各血清(パネル血清)を対象に血清バルトネラ・ヘンセラエIgG抗体価をELISA法で測定し、その抗原性を検討した。
〔ELISA法〕
96穴マイクロプレートに炭酸緩衝液(pH9.2)で希釈した抗原液を100μl/ウェルずつ加え、一晩固相化させた。翌日、5%スキムミルクでブロッキングし、0.05%Tween20添加PBS(PBS−T)にて洗浄した。次いで1%スキムミルクPBS−Tで100倍希釈した血清を100μl/ウェルずつ加えて抗原抗体反応を開始させた。反応終了後、洗浄し、HRP標識抗ヒトIgG抗体(Dako)を100μl/ウェルずつ添加後、37℃、1時間反応させた。洗浄後、o−Phenylenediamine(SIGMA)含有50mMリン酸クエン酸緩衝液(pH5.0)を100μl/ウェルずつ添加し、30分間発色した後、4N硫酸で反応を停止させ、プレートリーダー(MULTISKAN FC)を用いて吸光度(波長;492nm)を測定した。
〔検討項目1.バルトネラ・ヘンセラエ菌体のサルコシン抽出後の沈渣と上清液との抗原性比較〕
バルトネラ・ヘンセラエ菌体のソニケート菌液を0.2%サルコシン液で抽出後、50000rpm、1時間遠心分離し、沈渣と上清液を分取した。次いで、該沈渣及び上清液を透析後、両者の抗原性を、パネル血清を用いたELISA法にて比較し、併せて該血清によるウエスタンブロットを実施した。
〔検討結果〕
サルコシン抽出後の沈渣と上清液との抗原性をELISA法で比較した結果、上清液の方が沈渣よりも、患者血清と健常人血清との間に明確な差異が認められた(図1)。このことより、サルコシン抽出後、上清液として回収する方が抗原として優れていることが判明した。
また、CSD患者血清3例および健常人血清1例を用いた、該上清液のウエスタンブロットでは、患者血清によるものには多くのバンドが検出されることから、該血清中には多種類の抗体が存在していること、そして、症例(病態)の異なる患者血清ごとに抗体の反応性が異なることが示唆された(図2)。
〔検討2.バルトネラ・ヘンセラエ菌体への超音波処理有無による抗原性比較〕
バルトネラ・ヘンセラエ菌液及びそのソニケート液を0.4%サルコシンで抽出後、各上清液を回収し、パネル血清を用いたELISA法によりその抗原性を比較した。
〔検討結果〕
超音波処理を施さず、バルトネラ・ヘンセラエ菌体が浮遊する菌液を直接サルコシン処理した方が健常人血清での反応性が低く、かつ、バラつきが小さい為、結果として、CSD患者血清による反応との解離が大きいことが明らかとなった(図3)。
このことより、菌体への界面活性剤処理は、超音波処理を行わず、菌体に直接行うこととした。
〔検討3.DEAE陰イオンクロマトグラフィーによるバルトネラ・ヘンセラエ精製液での蛋白成分分布と各血清に対する抗原性との関係〕
上述したDEAE陰イオンクロマトグラフィーのグラディエーション法により、バルトネラ・ヘンセラエ菌体成分を精製後、該精製液の蛋白成分の分布と抗原性の関係について、吸光度(波長280nm)及びパネル血清を用いたELISA法にて検討した。
〔検討結果〕
バルトネラ・ヘンセラエ菌体成分(前記上清液)を0〜1000mMの塩(NaCl)濃度勾配を伴うTris−HCl 緩衝液(pH8.3)にて精製・分画したところ、100mM及び400mM前後の画分に2つのピークが認められた(図4)。一方、これら精製画分ごとの抗原性を測定すると、健常人血清とCSD患者血清とで一部反応性の重複は認められるものの、245〜295mMにて溶出される画分において、患者血清とのみ強く反応する成分が存在することが判明した(図4)。
このことから、CSD患者血清と抗原抗体反応をおこす、バルトネラ・ヘンセラエ菌体由来の抗原の主要な成分は、健常人血清と反応する抗原成分とは異なるものであり、これはバルトネラ・ヘンセラエ菌体を構成する蛋白成分のごく一部であることが示唆された。
〔検討4.サルコシン抽出回数による、各血清に対する抗原性の相異〕
0.4%サルコシン液にてバルトネラ・ヘンセラエ菌液を抽出後、10000rpm、30分間遠心分離し上清液(1回目)及び沈渣を採取した。該沈渣に再度0.4%サルコシン液を添加・抽出後、遠心分離を行い、上清液(2回目)及び沈渣を得た。該操作を計5回繰り返すことで、最終的には上清液(1〜5回目)を採取した。これら各上清液(1〜5回目)をDEAE陰イオンクロマトグラフィーにチャージし、食塩濃度245〜295mMにて順次溶出し(グラディエーション法)、各上清液より3ml/本ずつ10本の画分として精製分取した。該画分それぞれの蛋白濃度を吸光度(波長280nm)により測定し、更に各画分を抗原としたELISA法にてパネル血清に対する抗体価を比較した。また、2〜4回目上清液の245〜295mMでの溶出画分を混合し、SDS−PAGEにて該混合画分中の蛋白成分を解析すると共に、CSD患者血清2例および健常人血清1例を用いたウエスタンブロットも実施した。
〔検討結果〕
サルコシン抽出1回目(1回目抽出上清液)では245mM NaClで健常人血清と反応する抗原成分が溶出したが,CSD患者血清と反応する抗原成分は245mM〜295mM NaClのいずれにも溶出しなかった(図5−1))。2〜4回目上清液ではCSD患者血清と反応する成分が溶出し、健常人血清と反応する成分は溶出しなかった(図5−2)、3)、4))。抽出5回目では、健常人及び患者血清と反応する成分はいずれの画分にも溶出されなかった(図5−5))。2〜4回目抽出上清液のSDS−PAGE解析では11kDa付近で分離不能な蛋白成分が認められたが,他では30〜65kDa付近で数本のバンドが認められた(図6−2))。ウエスタンブロットでは健常人血清については明らかなバンドが認められなかったが,CSD患者血清では、分離が不十分な11kDa付近〜52kDaの間に数本の明らかなバンドが確認され,患者血清によりそのパターンは異なった(図6−1))。
これらの結果より、1)サルコシンの様な界面活性剤によって1回抽出を行った後の沈渣から再び界面活性剤により抽出された上清液中に、患者血清と特異的に反応する抗原成分が含まれており、2)該抗原成分は、分子量11kDa付近〜52kDaの数種類の蛋白成分である可能性が高いことが示唆された。
こうした知見は、従来知られている、バルトネラ科に属する菌体由来の調製抗原においては何ら報告されておらず、本発明により見出された、従来の予想を大きく上回る成果であると共に、本発明の実施態様の1つである調製抗原が、従来のそれとは、抗体反応性においても、実質的な構成成分においても、明らかに異なるものであることを強く示唆している。
〔検討5.抽出サルコシン濃度及びサルコシン抽出回数と抗原性の関係〕
0.005〜0.2%の各濃度サルコシン液を用いて、バルトネラ・ヘンセラエ菌液から抽出を行い、10000rpm、30分間遠心分離することにより、それぞれの1回目上清液を採取した。次いで、各サルコシン濃度での1回目上清液調製時に併せて分取された沈渣に対して、同様に0.2%サルコシン液を添加抽出し、それぞれの沈渣から2回目上清液を採取した。サルコシン各濃度での1回目上清液と2回目上清液の、パネル血清に対する抗原性をELISA法にて定量比較した。
〔検討結果〕
サルコシン各濃度での1回目上清液での健常人及びCSD患者血清に対する抗原性を測定したところ、0.005〜0.1%の濃度範囲においては患者血清と反応する抗原成分は抽出されず、0.15%及び0.2%において該抗原成分の抽出が、特定の患者血清に限り、ある程度認められた(図7−1))。
一方で、サルコシン各濃度での2回目上清液(サルコシン濃度は一律0.2%)においては、1回目のサルコシン抽出濃度が0.05〜0.1%である場合、全ての患者血清と高い反応を示す抗原成分が著しく抽出されることを確認した(図7−2))。
以上より、CSD患者血清に対して、高感度かつ特異性の高い抗原を調製する方法としては、バルトネラ・ヘンセラエ菌液を濃度0.1%以下のサルコシン液にて1回抽出し、これを遠心分離して得られる残渣を、濃度0.2%のサルコシン液にて再度抽出して上清液(2回目上清液)を取得すればよいことが示唆された。
今回の知見より見出された、CSD患者血清に反応性の高い、バルトネラ・ヘンセラエ菌体由来の抗原の調製方法を図8にまとめた。なお本抗原は、ゲルろ過法を用いることにより一層の精製度向上が期待される。
本発明は、酵素免疫法によるバルトネラ科に属する菌体、特にCSD感染菌であるバルトネラ・ヘンセラエの感染測定に用いるのに好適な、感度及び特異性が大幅に向上した、該菌体の調製抗原及びその調製方法を提供する。該調製抗原は、CSD患者の試料中に存在する抗バルトネラ・ヘンセラエ抗体と、従来のものに比べ、より強固かつ特異的に結合する為、高感度かつ特異性の高い測定診断方法及び診断キットを提供することが出来、更に、CSDに対するワクチンを作成する上で非常に有用な抗原となりうるという点で極めて有用であり、該医療分野の発展に大きく貢献するものである。

Claims (14)

  1. バルトネラ科に属する菌体由来の抗原を調製するための方法であって、
    (a)バルトネラ科に属する菌体を集める工程、
    (b)(a)で集めた菌体を低濃度界面活性剤で処理した後、遠心分離し、沈渣を回収する工程、
    (c)(b)で回収した沈渣を、高濃度界面活性剤で再度処理した後、遠心分離し、上清を回収する工程、
    (d)(c)で回収した上清を、イオン交換カラムクロマトグラフィーにより精製する工程
    を含む方法。
  2. 前記バルトネラ科に属する菌体が、バルトネラ・ヘンセラエである請求項1に記載の方法。
  3. 前記界面活性剤が、陰イオン界面活性剤である請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記陰イオン界面活性剤が、N−ラウロイル−サルコシンである請求項3に記載の方法。
  5. 前記低濃度N−ラウロイル−サルコシンが0.01〜1%であり、前記高濃度N−ラウロイル−サルコシンが0.2〜4%であり、前者濃度が後者濃度と同等又はそれ以下であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
  6. 前記イオン交換カラムクロマトグラフィーが、陰イオン交換カラムクロマトグラフィーである請求項1乃至5のいずれかに記載の方法。
  7. 請求項1乃至6のいずれかに記載の方法により調製された、バルトネラ科に属する菌体由来の調製抗原。
  8. 前記バルトネラ科に属する菌体が、バルトネラ・ヘンセラエである請求項7に記載の調製抗原。
  9. 前記調製抗原に10〜60キロダルトンの分子量の抗原を含む、請求項7または8に記載の調製抗原。
  10. 哺乳類動物由来の試料中に存在する、バルトネラ科に属する菌に対する抗体を検出する方法であって、請求項7乃至9に記載の調製抗原を用いた酵素免疫法により、前記試料中の前記抗体を検出する方法。
  11. 前記バルトネラ科に属する菌体が、バルトネラ・ヘンセラエである請求項10に記載の方法。
  12. 前記哺乳類動物が、イヌ科、ネコ科、げっ歯類またはヒトである請求項10または11に記載の方法。
  13. 試料中の、バルトネラ科に属する菌に対する抗体を検出するための診断キットであって、請求項7乃至9のいずれかに記載の調製抗原で被覆されたプレート又は固体担体を含む診断キット。
  14. 請求項7乃至9のいずれかに記載の、バルトネラ科に属する菌体由来の調製抗原を用いてワクチンを製造する方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JPS57158725A (en) * 1981-03-03 1982-09-30 Univ California Cladimea trachoma strain specific antigen and manufacture
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