JP2012233566A - 手動変速機の同期噛合機構 - Google Patents

Abstract

【課題】ブロッキングキーの摩耗を防止した手動変速機の同期噛合機構を提供することを目的とする。
【解決手段】回転軸に結合されるクラッチハブと、クラッチハブの外周側に設けられ回転軸方向への移動が可能にクラッチハブに結合されるスリーブと、クラッチハブとスリーブとの間に設けられるブロッキングキーと、クラッチハブの両側に配置されブロッキングキーに係止されてクラッチハブと連結されるブロッカーリングと、スリーブの両側に設けられるクラッチギヤと、を含む手動変速機の同期噛合機構において、スリーブの内周面にクラッチハブと連結する一般ギヤとグルーブギヤとが設けられ、グルーブギヤは、中央部の幅が一般ギヤの幅より大きく形成され、グルーブギヤの中央部にキー支持部が形成され、キー支持部にブロッキングキーが挿入されるロッキング溝が刻設されることを特徴とする。
【選択図】図７

Description

本発明は、自動車用手動変速機の同期噛合機構に係り、より詳しくは、ブロッキングキーが摩耗するのを防止した手動変速機の同期噛合機構に関する。

変速機は、動力伝達装置の構成要素の一つであって、クラッチと駆動軸の間に配置され、自動車の走行条件に応じてエンジン出力の回転数／回転力の比を増大させたり減少させたりする。また、変速機は自動車を後進させるための後進装置を備えている。
変速機の中で、手動操作でギヤの組合わせを変更して変速を行う手動変速機は、通常、同期噛合機構を備えている。手動変速機の同期噛合機構は、駆動側ギヤと受動側ギヤとの噛合い時に、二つのギヤの回転速度を同期させた後に噛合うようにして、スムーズなギヤの連結により変速衝撃を防止する役割を果たす（例えば非特許文献１を参照）。
手動変速機は大トルク容量の変速機に好適で、種々の改良が行われている（例えば、特許文献２を参照）。

図１は、従来技術による一般的な同期噛合機構の部分断面斜視図である。
図１に示すように、従来技術による一般的な同期噛合機構は、クラッチハブ２、スリーブ４、ブロッキングキー（Ｂｌｏｃｋｉｎｇ Ｋｅｙ）６、ブロッカーリング（Ｂｌｏｃｋｅｒ Ｒｉｎｇ）８、及びクラッチギヤ１０を含んで構成される。
クラッチハブ２は回転軸（図示せず）にスプライン結合され、外周面に、回転軸に平行で円周方向に等間隔な複数のスプライン溝が形成される。

スリーブ４は、クラッチハブ２の外周面にスプライン結合され、軸方向の移動が可能に形成され、外周面に円周方向に沿って形成されたスライディング溝１２に挿入されたシフトフォーク（図示せず）によって軸方向に移動される。

ブロッキングキー６は、クラッチハブ２の外周面に設けられた複数の溝に配置され、ブロッキングキー６とクラッチハブ２の間にスプリング１４が挿入される。ブロッキングキー６は、スプリング１４に押圧されてスリーブ４の内周面に形成されたロッキング溝１６に挿入される。

ブロッカーリング８は、シンクロナイザリングとも呼ばれ、クラッチハブ２の両側に配置されてブロッキングキー６を両側から保持すると同時にブロッキングキー６に係止されてクラッチハブ２と同期回転する。ブロッカーリング８は、スリーブ４が軸方向に移動した時、スリーブ４によって押されながらクラッチギヤ１０のコーン部１８と接触してスリーブ４とクラッチギヤ１０とを回転させ、摩擦同期（ｆｒｉｃｔｉｏｎａｌｌｙ ｓｙｎｃｈｒｏｎｉｚｅｄ）させる。
クラッチギヤ１０はスピードギヤ（図示せず）と一体に形成される。

同期噛合機構を更に詳細に説明すると、変速のためにスリーブ４を軸方向に（図１で左側又は右側に）移動させると、スリーブ４がブロッキングキー６と共に移動しながらブロッカーリング８をクラッチギヤ１０側に押しつける。

このことにより、ブロッカーリング８の内周面がクラッチギヤ１０のコーン部１８に接触し、摩擦によってクラッチギヤ１０とブロッカーリング８が回転し、相互の回転速度が同期される。このような状態でスリーブ４が更に移動することによって、スリーブ４とクラッチギヤ１０とが互いに噛合いながら連結され、動力の伝達が行われる。

図２は、従来技術によるスリーブの内周面の部分斜視図である。
図２に示すように、スリーブ４の内周面にスプラインを形成する一般ギヤ２４と、一部の一般ギヤ２４に代えてグルーブギヤ２２と、が設けられる。グルーブギヤ２２の中央部にグルーブギヤ２２と直角に、ロッキングキー６が挿入されるロッキング溝２０が刻設される。

従来技術ではグルーブギヤ２２は、一般ギヤ２４と同じサイズに形成された。
しかし、グルーブギヤ２２が一般ギヤ２４と同じサイズに形成されたため、ブロッキングキー６を挿入するために設けたロッキング溝２０の幅も小さくなった。

図３は、従来技術によるブロッキングキーが組立てられた状態の部分側面図である。
図３に示すように、グルーブギヤ２２のロッキング溝２０の幅が小さいので、ブロッキングキー６とロッキング溝２０との接触面積も小さくなる。したがって、変速の際に生じる高い圧力が狭い面積にかかり、表面硬度が許容する以上の面圧が作用してロッキングキー６の摩耗が発生するという問題点があった。

特開２０１０−２５５７０３号公報

同期噛み合い式変速機：新編自動車工学ハンドブック ５−１３ （社）自動車技術会編 図書出版社 １９７０年６月１５日発行

本発明は、クラッチハブ、スリーブ、ブロッキングキー、ブロッカーリング、及びクラッチギヤを含んで構成される手動変速機の同期噛合機構において、ブロッキングキーの摩耗を防止した手動変速機の同期噛合機構を提供することを目的とする。

かかる課題を解決するためになされた本発明の手動変速機の同期噛合機構は、回転軸にスプライン結合されるクラッチハブと、クラッチハブの外周側に設けられ回転軸の軸方向へ移動可能に結合されるスリーブと、クラッチハブとスリーブとの間に介在して設けられるブロッキングキーと、ブロッキングキーを保持すると同時に、ブロッキングキーに係止されてクラッチハブと連結されるブロッカーリングと、コーン部を備え、回転軸と回転干渉なしに配置されるクラッチギヤと、を含み、クラッチギヤがコーン部とブロッカーリングとの摩擦力によって結合される手動変速機の同期噛合機構において、
スリーブの内周面にクラッチハブと結合する一般ギヤと、グルーブギヤと、が設けられ、グルーブギヤは、中央部の幅が一般ギヤの幅より大きく形成され、グルーブギヤの中央部に、キー支持部が形成され、キー支持部にブロッキングキーが挿入されるロッキング溝が刻設されることを特徴とする。

また本発明のブロッキングキーは、ロッキング溝に接触する溝接触部を更に含み、キー支持部の幅は、溝接触部のスリーブの円周方向の長さより短く形成される。

更に本発明のブロッカーリングは、クラッチハブの両側に配置されてブロッキングキーを保持し、スリーブの軸方向への移動時にスリーブによって軸方向に押されながらクラッチギヤのコーン部に接触し、摩擦力によってクラッチギヤとブロッカーリングとを摩擦同期させる。

また本発明のブロッカーリングは、キー係止部を更に有し、キー係止部は、ブロッキングキーを保持する空間と、空間の両側から軸方向に突出する一対の支持突起と、クラッチハブに形成された溝に干渉しないで挿入できる形状に形成され、支持突起の間のブロッカーリングの外周面から突出する突出部と、を含む。

また本発明は、支持突起の、ブロッキングキーを保持する空間に面する側面に傾斜面が形成され、傾斜面にブロッキングキーが係止される。
また本発明の傾斜面は、ブロッキングキーを保持する空間の幅がブロッカーリングの半径外側に行くほど広くなるように形成される。

本発明の実施例によれば、キー支持部の幅を広く形成することによって、ブロッキングキーが挿入されるロッキング溝の長さを長く形成することができ、ブロッキングキーとロッキング溝との接触面積を大きくすることができる。接触面積が大きくなると、単位面積当たりの圧力を小さくできる。
これによって、従来法ではブロッキングキーの表面硬度が許容する圧力以上の面圧が作用しブロッキングキーが摩耗するほどの強い圧力が加えられても、本発明の方法では、単位面積当たりの圧力がブロッキングキーの表面硬度が許容する範囲内に低下し、ブロッキングキーの摩耗を防止し、変速機全体に対する耐久性を高めることができる。

従来技術による一般的な同期噛合機構の部分断面斜視図である。 従来技術によるスリーブの内周面の部分斜視図である。 従来技術によるブロッキングキーが組立てられた状態の部分側面図である。 本発明の１実施例による同期噛合機構の分解斜視図である。 本発明の１実施例によるブロッカーリングの要部斜視図である。 本発明の１実施例による同期噛合機構の組立断面図である。 本発明の１実施例によるスリーブの内周面の部分斜視図である。 本発明の１実施例による同期噛合機構の、スリーブとブロッキングキーが結止された状態での部分側面図である。

以下に、添付図面を参照して、本発明の１実施例について詳細に説明する。但し、本発明の実施例を明確に説明するために、説明上不必要な部分の説明は省略する。
図４は、本発明の１実施例による同期噛合機構の分解斜視図である。
図４に示すように、本発明の１実施例による同期噛合機構は、クラッチハブ５０、スリーブ６０、ブロッキングキー７０、ブロッカーリング８０、及びクラッチギヤ９０を含んで構成される。

クラッチハブ５０は、回転軸（Ｓ）上にスプライン結合され、常時回転軸（Ｓ）と共に回転する。
クラッチハブ５０は、外周面にスプラインが形成され、回転軸に平行で円周方向に等間隔な複数の溝５２が刻設される。

スリーブ６０は、クラッチハブ５０の外周面にスプライン結合されて軸方向への移動が可能であり、外周面に円周方向に沿ってスライディング溝６２が形成される。スライディング溝６２にシフトフォーク（図示せず）が挿入され、スリーブ６０はシフトフォークにより軸方向に移動される。

ブロッキングキー７０は、クラッチハブ５０の外周面に形成された複数の溝５２に配置され、ブロッキングキー７０とクラッチハブ５０との間にスプリング７２が挿入される。
ブロッキングキー７０は、スプリング７２に押圧されてスリーブ６０の内周面に形成されたロッキング溝６４に挿入される。
ブロッキングキー７０は、クラッチハブ５０の外周面に形成された溝５２に沿って移動可能であり、クラッチハブ５０の円周方向の移動は禁止されている。

ブロッカーリング８０はシンクロナイザリングとも呼ばれ、クラッチハブ５０の両側に配置され、キー係止部８１が形成され、両側からブロッキングキー７０を支持すると同時にブロッキングキー７０に係止されてクラッチハブ５０と同期回転する。
クラッチギヤ９０はブロッカーリング８０の内周面と摺動可能に形成されたコーン部を有し、スピードギヤ（図示せず）と一体に形成され、回転軸と回転干渉なしにスリーブ６０の両側に配置される。

ブロッカーリング８０は、スリーブ６０が軸方向へ移動した時に、スリーブ６０によって軸方向に押されながら、クラッチギヤ９０のコーン部９２に接触し、クラッチギヤ９０を回転させ、スリーブ６０とクラッチギヤ９０とを摩擦力を利用して同期回転（摩擦同期）させる。

このようなブロッカーリング８０にはキー係止部８１が形成される。
図５は、本発明の実施例によるブロッカーリングの要部斜視図である。
図５に示すように、キー係止部８１は、ブロッキングキー７０を保持する空間８２、支持突起８３、８４、及び突出部８５を有する。支持突起８３、８４は空間８２の両側から軸方向に突出する。空間８２の幅はブロッキングキー７０の円周方向の厚さを収容できるように形成される。

また、支持突起８３、８４の間のブロッカーリング８０の外周面に、突出部８５が、クラッチハブ５０の溝５２に干渉しないで挿入できるような形状に形成される。
また、支持突起８３、８４は、空間８２に面する側面に傾斜面８６、８７が形成されており、この傾斜面８６、８７にブロッキングキー７０が係止される。傾斜面８６、８７は半径外側に向かうほど空間８２の幅が広くなるように形成される。
突出部８５は、ブロッカーリング８０の組立位置を示すと同時に、ブロッカーリング８０が組立てられた状態を安定に保持し、ブロッキングキー７０が軸方向に移動する時に接触面積を大きくする。

図６は、本発明の１実施例による同期噛合機構の組立断面図である。
図６に示すように、本発明の１実施例による同期噛合機構において、変速比を変換するために、スリーブ６０を軸方向（図６で左側又は右側）に移動させると、スリーブ６０とブロッキングキー７０とが共に移動しながらブロッカーリング８０をクラッチギヤ９０に向かって移動させる。
これにより、ブロッカーリング８０の内周面がクラッチギヤ９０のコーン部９２に接触し、摺動摩擦しながらクラッチギヤ９０を回転させる。
これにより、ブロッカーリング８０とクラッチギヤ９０との間の回転が同期される。

このような状態で、スリーブ６０が更に軸方向に移動すると、スリーブ６０とクラッチギヤ９０が同期されて噛合い、回転軸（Ｓ）の回転動力がクラッチギヤ９０と一体に形成されたスピードギヤ（図示せず）に伝達される。

図７は、本発明の１実施例によるスリーブの内周面の部分斜視図である。
図７に示すように、スリーブ６０の内周面にスプラインを形成する一般ギヤ６４４が設けられる。一部の一般ギヤ６４４の代わりにグルーブギヤ６４０が設けられ、グルーブギヤ６４０の中央部にキー支持部６４２が形成され、キー支持部６４２の中央にロッキング溝６４が凹状に刻設される。ロッキング溝６４は、スリーブ６０の円周方向（グルーブギヤ６４０と直角）にキー支持部６４２の幅全体に設けられることが好ましい。

グルーブギヤ６４０の両端部は、隣接する一般ギヤ６４４の両端部と同じサイズに形成され、ロッキング溝６４が形成されるキー支持部６４２は、一般ギヤ６４４より幅が広く形成される。
また、ロッキング溝６４の幅はキー支持部６４２の幅（Ｂ）と同一に形成される。

図８は、本発明の１実施例による同期噛合機構のスリーブとブロッキングキーが結止された状態での部分側面図である。
図８に示すように、キー支持部６４２の幅（Ｂ）は、ロッキング溝６４と接触するブロッキングキー７０の溝接触部７４のスリーブ６０の円周方向の長さ（Ｌ）よりは小さく形成される。即ち、溝接触部７４のスリーブ６０の円周方向の長さ（Ｌ）は、キー支持部６４２の幅（Ｂ）より大きく形成される。
キー支持部６４２の幅（Ｂ）と溝接触部７４の前記スリーブの円周方向の長さ（Ｌ）との差は、ブロッキングキー７０の円周方向への移動量を十分に収容できるように設定される。

グルーブギヤ６４０の両端部のサイズを、一般ギヤ６４４の両端部と同じサイズに形成するのは、スリーブ６０とクラッチギヤ９０が同期した以降にクラッチギヤ９０との干渉が発生しないようにするためである。

ロッキング溝６４のスリーブ６０の円周方向の寸法と、キー支持部６４２の幅（Ｂ）と、を大きくすることによって、ブロッキングキー７０とロッキング溝６４との接触面積が大きくなり、単位面積当たりの圧力が低くなる。
そのために、従来例ではブロッキングキー７０の表面硬度が許容する圧力以上の面圧が作用したとしても、本発明の方法では、単位面積当たりの圧力がブロッキングキーの表面硬度が許容する範囲内に低下し、ブロッキングキー７０の摩耗を防止して、変速機全体に対する耐久性を高めることができる。

以上、本発明に関する好ましい実施形態を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の属する技術範囲を逸脱しない範囲での全ての変更が含まれる。

５０ クラッチハブ
５２ 溝
６０ スリーブ
６２ スライディング溝
６４ ロッキング溝
７０ ブロッキングキー
７２ スプリング
７４ 溝接触部
８０ ブロッカーリング
８１ キー係止部
８２ 空間
８３、８４ 支持突起
８５ 突出部
８６、８７ 傾斜面
９０ クラッチギヤ
９２ コーン部
６４０ グルーブギヤ
６４２ キー支持部
６４４ 一般ギヤ

Claims (6)

1. 回転軸にスプライン結合されるクラッチハブと、前記クラッチハブの外周側に設けられ前記回転軸の軸方向へ移動可能に結合されるスリーブと、前記クラッチハブと前記スリーブとの間に介在して設けられるブロッキングキーと、前記ブロッキングキーを保持すると同時に、前記ブロッキングキーに係止されて前記クラッチハブと連結されるブロッカーリングと、コーン部を備え、前記回転軸と回転干渉なしに配置されるクラッチギヤと、を含み、前記クラッチギヤが前記コーン部と前記ブロッカーリングとの摩擦力によって結合される手動変速機の同期噛合機構において、
   前記スリーブの内周面に前記クラッチハブと結合する一般ギヤと、グルーブギヤと、が設けられ、
   前記グルーブギヤは、中央部の幅が前記一般ギヤの幅より大きく形成され、
   前記グルーブギヤの中央部に、キー支持部が形成され、
   前記キー支持部に前記ブロッキングキーが挿入されるロッキング溝が形成されることを特徴とする手動変速機の同期噛合機構。
2. 前記ブロッキングキーは、前記ロッキング溝に接触する溝接触部を更に含み、前記キー支持部の幅は、前記溝接触部の前記スリーブの円周方向の長さより短く形成されることを特徴とする請求項１に記載の手動変速機の同期噛合機構。
3. 前記ブロッカーリングは、前記クラッチハブの両側に配置されて前記ブロッキングキーを保持し、前記スリーブの軸方向への移動時に前記スリーブによって軸方向に押されながら前記クラッチギヤの前記コーン部に接触し、前記クラッチギヤと前記ブロッカーリングとを摩擦同期（ｆｒｉｃｔｉｏｎａｌｌｙ ｓｙｎｃｈｒｏｎｉｚｅｄ）させることを特徴とする請求項１に記載の手動変速機の同期噛合機構。
4. 前記ブロッカーリングは、キー係止部を更に有し、
   前記キー係止部は、前記ブロッキングキーを保持する空間と、前記空間の両側から軸方向に突出する一対の支持突起と、クラッチハブに形成された溝に干渉しないで挿入できる形状に形成され、支持突起の間のブロッカーリングの外周面から突出する突出部と、を含むことを特徴とする請求項３に記載の手動変速機の同期噛合機構。
5. 前記支持突起の、ブロッキングキーを保持する空間に面する側面に傾斜面が形成され、前記傾斜面に前記ブロッキングキーが係止されることを特徴とする請求項４に記載の手動変速機の同期噛合機構。
6. 前記傾斜面は、前記空間の幅が前記ブロッカーリングの半径外側に行くほど広くなるように形成されることを特徴とする請求項５に記載の手動変速機の同期噛合機構。

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