JP2012233518A - 車両の湿式トルクリミッタ装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】車両の湿式トルクリミッタ装置において、トルクリミッタ装置の摩擦材に潤滑油が供給されない場合であっても、摩擦材を潤滑することができる湿式トルクリミッタ装置を提供する。
【解決手段】トルクリミッタ装置24に潤滑油が供給されない状態が続いても、摩擦材102に形成されている窪み104に封入された潤滑油が摩擦面を濡らすため、摩擦材102の摩擦係数μの変化を抑制して摩擦係数μを安定させることができる。また、従来の構成から摩擦面の形状を変化させるだけで済むため、部品等を追加することなく容易に構成することができる。
【選択図】図4
【解決手段】トルクリミッタ装置24に潤滑油が供給されない状態が続いても、摩擦材102に形成されている窪み104に封入された潤滑油が摩擦面を濡らすため、摩擦材102の摩擦係数μの変化を抑制して摩擦係数μを安定させることができる。また、従来の構成から摩擦面の形状を変化させるだけで済むため、部品等を追加することなく容易に構成することができる。
【選択図】図4
Description
本発明は、車両に備えられる湿式トルクリミッタ装置に係り、特に、トルクリミッタ装置に用いられる摩擦材の形状に関するものである。
車両において、予め設定されているリミットトルクを越えるトルクが入力されると、滑りを発生させてそのリミットトルクを越えるトルクの伝達を防止する湿式トルクリミッタ装置を備えたものが知られている。例えば特許文献1のトルクリミッタ機構56がその一例である。特許文献1の図4等には、入力されるトルクが小さくなる位置にトルクリミッタ機構56を設けることで、そのトルクリミッタ機構56を小型化する技術が開示されている。
ところで、特許文献1をはじめとする湿式トルクリミッタ装置において、車両が停止した状態で維持されると、トルクリミッタ機構の摩擦材に付着した潤滑油が流れ落ちて潤滑油が減少する。また、プラグインHV車両においては、エンジンを停止した状態で走行すると、エンジンによって駆動されるオイルポンプが駆動しないため、潤滑油がトルクリミッタ装置に供給されず、トルクリミッタ装置の摩擦材に付着した潤滑油が徐々に減少する。これより、摩擦材が潤滑油切れ状態となって、その摩擦材の摩擦係数が安定せず、所望のリミットトルクが得られない可能性があった。これに対して、特許文献2の図5に記載のトルクリミッタ機構を備えたダンパ装置3では、ダンパ装置3を覆う一対のプレート28、29の内周端部をハブ部材27のハブ部27aまで延設し、プレート28、29の内周端とハブ部27aとの間にシール34、35を介在させて潤滑油を密封する技術が開示されている。しかしながら、ダンパ装置3は、プレート28、29をハブ部27aまで延設し、シール34、35を設けるなど装置が複雑になる問題があった。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、車両の湿式トルクリミッタ装置において、トルクリミッタ装置の摩擦材に潤滑油が供給されない場合であっても、摩擦材を潤滑することができる湿式トルクリミッタ装置を提供することにある。
上記目的を達成するための、請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a)軸心まわりに回転可能な第1回転プレートと、その第1回転プレートに隣接した状態で軸心まわりに相対回転可能に設けられている第2回転プレートと、その第1回転プレートおよびその第2回転プレートの一方に固定されて他方の回転プレートと隣接する摩擦材と、予荷重状態でその第1回転プレートに当接した状態で設けられ、その第1回転プレートをその第2回転プレートに向かって軸方向に押圧する皿バネとを、含む車両の湿式トルクリミッタ装置であって、(b)前記摩擦材の摩擦面には、その摩擦材の外周および内周と隣接しない窪みが形成されていることを特徴とする。
このようにすれば、トルクリミッタ装置に潤滑油が供給されない状態が続いても、摩擦材に形成されている窪みに封入された潤滑油が摩擦材の摩擦面を濡らすため、摩擦材の摩擦係数の変化を抑制することができる。また、従来の構成から摩擦材の摩擦面の形状を変化させるだけで済むため、部品等を追加することなく容易に構成することができる。
また、好適には、前記摩擦材の面圧の高い摩擦面は、その面圧が低い摩擦面に比較して、前記窪みが形成される面積が大きい。このようにすれば、面圧の高い摩擦面は、窪みに封入される潤滑油の量が多くなる。したがって、特に摩擦係数の変化の影響が大きい、面圧の高い摩擦面の潤滑油切れが防止されるため、面圧の高い摩擦面の摩擦係数が安定し、所望のリミットトルクを得ることができる。
また、好適には、前記摩擦材が固定されていない側のプレートには、その摩擦材と接触する接触面内にその摩擦材の内周および外周と隣接しない穴が形成されている。このようにすれば、プレートの穴内にも潤滑油を封入することができるため、トルクリミッタ装置内に保持される潤滑油量がさらに増加する。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、本発明が適用される車両用動力伝達装置10(以下、「動力伝達装置10」という)を説明するための骨子図である。図2は、動力伝達装置10の要部、すなわち、トルクリミッタ装置24を含む図1のII部(一点鎖線)に相当する範囲を表した断面図である。図1において、動力伝達装置10は、例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関であるエンジン14と駆動輪40との間に介装されており、そのエンジン14からの駆動力を駆動輪40に伝達するトランスアクスルである。そして、動力伝達装置10は、車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスアクスル(T/A)ケース12(以下、「ケース12」という)を有し、そのケース12内において、第1軸心RC1上にエンジン14側から順番に、そのエンジン14の出力軸(例えばクランク軸)に作動的に連結されたダンパー16、そのダンパー16を介してエンジン14に連結されておりエンジン14によって回転駆動させられる入力軸(インプットシャフト)18、その入力軸18の外周側において入力軸18に対し相対回転可能に支持された出力回転部材としての第1ドライブギヤ20、動力分配機構として機能する遊星歯車装置22、トルクリミッタ装置24(本発明の湿式トルクリミッタ装置に対応する)、および、第1電動機M1を備えている。更に、動力伝達装置10は、ケース12内において、上記第1ドライブギヤ20に噛み合う第1ドリブンギヤ26、第1カウンタギヤ装置28、第1ドリブンギヤ26に第1カウンタギヤ装置28を介して連結された第2ドライブギヤ(デフドライブギヤ)30、第2カウンタギヤ装置32、および、第2ドライブギヤ30に第2カウンタギヤ装置32を介して連結された第2電動機M2を第1軸心RC1と平行な第2軸心RC2上に備えており、第2ドライブギヤ30に噛み合う第2ドリブンギヤ(デフドリブンギヤ)34を有する差動歯車装置(終減速機)36を備えている。
この動力伝達装置10は、例えば前輪駆動すなわちFF(フロントエンジン・フロントドライブ)型の車両6の前方に横置きされ、駆動輪40を駆動するために好適に用いられるものである。動力伝達装置10では、エンジン14の動力が、ダンパー16、入力軸18、遊星歯車装置22、第1ドライブギヤ20、第1ドリブンギヤ26、第1カウンタギヤ装置28、第2ドライブギヤ30、差動歯車装置36、および一対の車軸38等を順次介して一対の駆動輪40へ伝達される。
ダンパー16は、一般的な車両に用いられるダンパーであり、エンジン14と入力軸18との間に介装されており、そのエンジン14及び入力軸18の一方から他方へのトルク伝達を行うと共にエンジン14からのトルク変動等による脈動を吸収する。
第1カウンタギヤ装置28は、第2軸心RC2と平行な第1副軸42と、第1ドリブンギヤ26にそれと同軸上で連結された第1歯車44と、その第1歯車44と噛み合い第1副軸42に連結された第2歯車46と、第1副軸42に連結されており第2歯車46と一体回転する第3歯車48と、その第3歯車48と噛み合い第2ドライブギヤ30にそれと同軸上で連結された第4歯車50とを備えている。このように構成された第1カウンタギヤ装置28は、第1ドリブンギヤ26からの回転を減速して第2ドライブギヤ30に伝達する。
第2カウンタギヤ装置32は、第2軸心RC2と平行な第2副軸52と、第2電動機M2にそれと同軸上で連結された第5歯車54と、その第5歯車54と噛み合い第2副軸52に連結された第6歯車56と、第2副軸52に連結されており第6歯車56と一体回転する第7歯車58と、その第7歯車58と噛み合い第2ドライブギヤ30にそれと同軸上で連結された第8歯車60とを備えている。このように構成された第2カウンタギヤ装置32は、第2電動機M2からの回転を減速して第2ドライブギヤ30に伝達する。
図1および図2に示すように、第1ドライブギヤ20は、円筒状の軸部64を備えており、ケース12によってボールベアリング(ラジアル軸受)66を介して第1軸心RC1まわりに回転可能に支持されており、軸方向への移動不能に支持されている。上記軸部64の遊星歯車装置22側には、円盤状の伝達部材67が一体的に嵌め着けられている。
入力軸18は、第1ドライブギヤ20の軸部64内に挿通され、且つ、ケース12に対して第1軸心RC1まわりに回転可能であり且つ軸方向への移動不能に支持されている。入力軸18は、その一端がダンパー16を介してエンジン14に連結されることでエンジン14により回転駆動させられる。また、入力軸18は、その他端に外周方向へ突設したフランジ部68を有し、そのフランジ部68の外周部で遊星歯車装置22のキャリヤCA1が一体回転するように連結されている。このような構成から、入力軸18はエンジン14からの動力をそのキャリヤCA1に伝達する。
第1電動機M1は、図2に示すように、ケース12の内側にボルト止め等により固定された電動機ステータ72と、その電動機ステータ72の内周側に設けられており電動機ステータ72に対して第1軸心RC1まわりに回転可能な電動機出力軸74と、電動機ステータ72の内周側に設けられて電動機出力軸74の外周部に固定された電動機ロータ76とを、備えている。電動機出力軸74は、ケース12の内周面から内周側に突設された円板状の隔壁78によってボールベアリング(ラジアル軸受)80を介して第1軸心RC1まわりに回転可能に支持されており、軸方向に移動不能とされている。電動機出力軸74は中空構造を有しており、電動機出力軸74の内周側には円管状のオイルパイプ82が設けられ、そのオイルパイプ82の一端は入力軸18に連結され他端はオイルポンプに連結されており、このような構成により、そのオイルポンプからの潤滑油がオイルパイプ82と入力軸18の油孔84とを通じてケース12内の各潤滑部位に供給されるようになっている。
本実施例の第1電動機M1及び第2電動機M2は何れも、発電機能をも有する所謂モータジェネレータであるが、第1電動機M1は反力を発生させるためのジェネレータ(発電)機能を少なくとも備え、第2電動機M2は車両6の駆動力を出力するためのモータ(電動機)機能を少なくとも備える。更に、第1電動機M1と第2電動機M2とは相互に電力授受可能に構成されており、第1電動機M1と第2電動機M2とのそれぞれに対し電力授受可能な蓄電装置が車両6に設けられている。
遊星歯車装置22は、エンジン14と駆動輪40との間の動力伝達経路の一部を構成し差動機構として機能するシングルピニオン型の遊星歯車装置である。具体的に、遊星歯車装置22は、サンギヤS1、リングギヤR1、サンギヤS1とリングギヤR1との間に介装されサンギヤS1及びリングギヤR1のそれぞれと噛み合うピニオンギヤP1、および、そのピニオンギヤP1を自転および公転可能に支持するキャリヤCA1を回転要素(要素)として備えている。そして、サンギヤS1、キャリヤCA1、およびリングギヤR1はそれぞれ軸方向への移動不能で且つ第1軸心RC1まわりに回転可能に支持されている。第1回転要素としてのキャリヤCA1は入力軸18に連結されており入力軸18と一体的に回転し、ピニオンギヤP1にそれと同一の軸心を有して挿通されたピニオンシャフト86を有しておりそのピニオンシャフト86でピニオンギヤP1を自転可能に支持する。第2回転要素としてのサンギヤS1はトルクリミッタ装置24を介して第1電動機M1の電動機出力軸74に連結されておりトルクリミッタ装置24がスリップしない限り電動機出力軸74と一体的に回転する。第3回転要素としてのリングギヤR1は伝達部材67の外周部に連結されており、伝達部材67および第1ドライブギヤ20と一体的に回転する。すなわち、リングギヤR1は伝達部材67および第1ドライブギヤ20等を介して作動的に駆動輪40に連結されている。遊星歯車装置22のギヤ比ρは、サンギヤS1の歯数をZS1としリングギヤR1の歯数をZR1とすれば、「ρ=ZS1/ZR1」で算出される。
上記のように構成された遊星歯車装置22は、入力軸18に伝達されたエンジン14の出力を機械的に分配する動力分配機構であって、そのエンジン14の出力を第1電動機M1および第1ドライブギヤ20に分配する。つまり、エンジン14の出力が第1電動機M1および第1ドライブギヤ20に分配されると共に、第1電動機M1に分配されたエンジン14の出力で第1電動機M1が発電され、その発電された電気エネルギが蓄電されたりその電気エネルギで第2電動機M2が回転駆動されるので、動力伝達装置10は、例えば無段変速状態(電気的CVT状態)とされて、遊星歯車装置22の差動状態が第1電動機M1により制御されることにより、エンジン14の所定回転に拘わらず第1ドライブギヤ20の回転が連続的に変化させられる電気的な無段変速機として機能する。このように第1電動機M1により遊星歯車装置22の差動状態が制御される際には、第1電動機M1は、エンジン14からの出力(駆動力)を第1ドライブギヤ20すなわちその第1ドライブギヤ20に連結された駆動輪40へ伝達するためにエンジントルクTeに対抗する反力トルクTRを発生する。そして、遊星歯車装置22の差動作用により、例えばその反力トルクTRすなわちサンギヤS1に掛かるトルク(負荷)が零または略零になればエンジン14から駆動輪40へのトルク伝達が遮断される。すなわち、サンギヤS1に掛かる負荷を調節することにより、エンジン14から駆動輪40へ伝達されるトルクを調節することができる。
図2において、トルクリミッタ装置24は、円環板状の摩擦板であるディスク92と、ディスク92に対し第1電動機M1側に位置する円環板状の壁部94aと壁部94aの外周端から摩擦プレート部材92側に向けて突設された円筒部94bとを有する回転ドラム94と、円筒部94bの内側で且つディスク92の外周部の両側にそれぞれ第1軸心RC1に沿って配設された円環板状のフランジ96aおよびプレート96bと、壁部94a側のフランジ96と壁部94aとの間に配設され一端を壁部94aに当接させ他端をその壁部94a側のフランジ96に当接させた状態で予荷重状態で配置される皿バネ98と、皿バネ98とはプレート96bを挟んで軸方向の反対側に配設され回転ドラム94に対して第1軸心RC1方向に移動不能なスナップリング100とを、第1軸心RC1上に備えている。そして、トルクリミッタ装置24は、遊星歯車装置22が収容されている筐体であるケース12内に設けられている。そのため、トルクリミッタ装置24例えばそのトルクリミッタ装置24が備えるディスク92、フランジ96a、プレート96b等は、オイルパイプ82を通じて供給され遊星歯車装置22を潤渇する潤滑油で潤滑される。すなわち、トルクリミッタ装置24は上記潤滑油で潤滑される湿式のトルクリミッタである。なお、フランジ96aおよびプレート96bが本発明の第1回転プレートに対応し、ディスク92が本発明の第2回転プレートに対応している。
トルクリミッタ装置24に供給される潤滑油は、エンジン14によって駆動される図示しないオイルポンプによって汲み出され、オイルパイプ82を経由して供給される。具体的にはオイルパイプ82には、そのオイルパイプ82の内周壁と外周壁とを連通する連通孔82aが形成され、電動機出力軸74には、その電動機出力軸74の内周壁と外周壁とを連通する連通孔74aが形成されている。そして、オイルパイプ82の潤滑油は、連通孔82aを通って連通孔74aから遠心力によって外周方向に放出されることで、トルクリミッタ装置24の摩擦材まで到達する。
ディスク92は、その内周部が円板状の連結部材93の外周端にスプライン嵌合されている。また、連結部材93の内周端は、サンギヤS1の第1電動機M1側の外周端部に第1軸心RC1まわりに相対回転不能に例えば溶接によって固着されている。ディスク92とフランジ96aおよびプレート96bとは互いに摩擦接触をするので、少なくとも一方の接触部分には所定の摩擦係数μを有する公知である摩擦材102を備えている。なお、摩擦材102の形状については後述する。
回転ドラム94は、壁部94aの内周部が電動機出力軸74の外周部に第1軸心RC1まわりに相対回転不能にスプライン嵌合されており、フランジ96aおよびプレート96bはそれぞれ、回転ドラム94に対し第1軸心RC1まわりに相対回転不能に円筒部94bの内側にスプライン嵌合されている。フランジ96aおよびプレート96bは軸方向においてディスク92を挟んでおり、皿バネ98とスナップリング100とに挟まれている。そして、フランジ96aおよびプレート96bは、遊星歯車装置22の軸心すなわち第1軸心RC1を基準としてピニオンギヤP1よりも径方向外側に配設されており、遊星歯車装置22側のプレート96bは、遊星歯車装置22との干渉を避けつつ、ピニオンギヤP1から軸方向に突き出たキャリヤCA1の一部と径方向で重複して配置されている。
また、スナップリング100は、皿バネ98とは反対側に位置するプレート96bが皿バネ98から軸方向に離れる側に移動することを阻止するように円筒部94bの内側に軸方向の移動不能に嵌め着けられている。そして、皿バネ98は、フランジ96a、プレート96bおよびディスク92の外周部とをスナップリング100側に向かって軸方向に押圧する。すなわち、回転ドラム94、皿バネ98、およびスナップリング100は、皿バネ98の付勢力によってフランジ96aおよびプレート96bをディスク92に押圧する機能を有する。
上述したような構成からトルクリミッタ装置24は、ディスク92とフランジ96aおよびプレート96bとが互いに相対回転する(スリップする)ことによって、ディスク92とフランジ96aおよびプレート96bとの間で伝達される伝達トルクTを予め定められたリミッタトルクTlm以下に抑制する。なお、上記リミッタトルクTlmと皿バネ98の付勢力(ばね力)との関係が例えば実験的に求められており、皿バネ98の付勢力(予荷重)は、そのリミッタトルクTlmと皿バネ98の付勢力との関係から、設定すべきリミッタトルクTlmに応じて設定される。
トルクリミッタ装置24の作動について具体的に説明する。エンジントルクTeは、入力軸18から遊星歯車装置22を介してトルクリミッタ装置24に入力される。このとき、サンギヤS1からトルクリミッタ装置24に入力されるトルクは、入力軸18に入力されるエンジントルクTeよりも遊星歯車装置22のギヤ比ρに応じて小さくなる。そして、そのサンギヤS1からトルクリミッタ装置24に入力されるトルクがリミッタトルクTlmを超えるとディスク92とフランジ96aおよびプレート96bとが互いにスリップし、伝達トルクTが抑制される。そのスリップにより伝達トルクTが抑制されると、その抑制された伝達トルクTに合わせて遊星歯車装置22の差動作用により、リングギヤR1から駆動輪40に向けて伝達されるトルクと入力軸18に入力されるエンジントルクTeとが抑制される。
前述したようにトルクリミッタ装置24は、摩擦材が潤滑油によって潤滑された状態を前提としており、その摩擦材が潤滑した状態の摩擦係数μに基づいてリミッタトルクTlmが設定されている。しかしながら、車両6が停車させられた場合や、エンジン14を停止させて第2電動機M2によるモータ走行を実施した場合には、オイルポンプが停止してトルクリミッタ機構24に潤滑油が供給されないため、摩擦材の潤滑油切れが生じることとなる。したがって、摩擦材の摩擦係数μが変化してしまい、設定されたリミッタトルクTlmが得られなくなる問題があった。これに対して、本実施例では、トルクリミッタ装置24の摩擦材の摩擦面を後述する形状とすることで、潤滑油切れを抑制して摩擦係数μを安定させる。
図3は、図2のディスク92を軸方向から見た平面視図である。摩擦材92は、円環板状に形成されており内周端部には、連結部材93の外周歯とスプライン嵌合するための内周歯が形成されている。そして、ディスク92には、円弧状の摩擦材102が、周方向に等角度間隔で複数枚貼り着けされている(本実施例では20枚)。この摩擦材102の摩擦面には、さらに断面が円形の窪み104がそれぞれ形成されている。ここで、図3に示すように、窪み104は、摩擦材102の摩擦面の内周(内周面)、外周(外周面)、および周方向の両端の何れにも隣接しない位置に形成されている。すなわち、摩擦材102の摩擦面には、摩擦材の内周面および外周面と連通しない窪み104が形成されている。これより、窪み104は、摩擦材102の摩擦面の内部側であって、摩擦材102の周縁といずれも隣接しない状態となる。なお、窪み104は、必ずしも全ての摩擦材102に形成する必要はなく、これらの摩擦材102のうち複数枚に形成されるものであっても構わない。
図4は、図2に示すトルクリミッタ装置24において、ディスク92とフランジ96aおよびプレート96bとの接触部位を拡大して簡略的に描いた拡大断面図である。なお、図4においては、摩擦材102の形状を説明するために摩擦材102の軸方向の厚みが実際の寸法と比べて大きく描かれているなど、図2のトルクリミッタ装置24とは寸法や縮尺が異なっている。
図4に示すように、軸方向において第1電動機M1側に位置するフランジ96aの外周部が皿バネ98によって押圧されると、摩擦材102がフランジ96aおよびプレート96bと隣接した状態となる。このように、摩擦材102とフランジ96aおよびプレート96bとが隣接されると、窪み104において空間106が形成される。なお、窪み104の深さは、例えば摩擦材102の厚みの半分程度とされている。
このような空間106が形成されると、トルクリミッタ装置24に潤滑油が供給された際、その空間106にも潤滑油が供給される。そして、例えばエンジン14が停止してオイルポンプによる潤滑油供給が停止されると、その空間106内には潤滑油が封入された状態となる。そして、皿バネ98は予め設定されている予荷重で軸方向にフランジ96aをディスク92(摩擦材102)側に向かって軸方向に付勢しているため、摩擦材102とフランジ96aおよびプレート96bとの接触面は常時密着した状態となる。従って、エンジン14が停止して潤滑油の供給が停止しても、空間106の潤滑油は直ぐに空間106から排出されることはなく、徐々に空間106から漏洩して摩擦材102を潤滑する。これにより、エンジン14が停止してトルクリミッタ装置24に潤滑油が供給されない状態が継続した場合であっても、窪み104に封入された潤滑油によって摩擦材102が潤滑され、摩擦係数μの変化が抑制される。従って、摩擦係数μが安定し、所望のリミットトルクTlmを得ることができる。
上述のように、本実施例によれば、トルクリミッタ装置24に潤滑油が供給されない状態が続いても、摩擦材102に形成されている窪み104に封入された潤滑油が摩擦材102の摩擦面を濡らすため、摩擦材102の摩擦係数μの変化を抑制して摩擦係数μを安定させることができる。また、従来の構成から摩擦材102の摩擦面の形状を変化させるだけで済むため、部品等を追加することなく容易に構成することができる。
また、各窪み104に潤滑油が封入されることに付随して、ハウジングケース12内に貯留される油のオイルレベルが低下する。従って、油に浸漬されるギヤの面積が減少し、ギヤの攪拌抵抗を抑制することができる。
つぎに、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において前述の実施例と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
図5は、本発明の他の実施例であるトルクリミッタ装置118を構成する第2回転プレートに対応するディスク120に貼り着けられる摩擦材122の形状を1つだけ取り出して示したものであり、図3の各摩擦材に対応している。なお、前述した実施例の図3と同様に、摩擦材122がディスク120に等角度間隔で複数枚貼り着けられる。図5に示すように、摩擦材122の摩擦面には、断面が三角形状である窪み124が形成されている。具体的には、窪み124は、軸心RC1を基準として摩擦材122の外周側が底辺となり内周側が頂点となる三角形状に形成されている。また、前述の実施例と同様に、窪み124は、摩擦材122の内周、外周および周方向の両端面とは隣接しないように形成されている。また、窪み124の深さは、例えば摩擦材122の厚みの半分程度とされている。
このように摩擦材122に三角形状の窪み124が形成される場合であっても、前述の実施例と同様に、エンジン駆動時において潤滑油が窪み124とフランジ96aおよびプレート96bによって囲まれる空間に潤滑油が封入される。そして、エンジン14が停止してもその空間内に潤滑油が保持される。ここで、摩擦材122が貼り着けられるディスク120、フランジ96a、プレート96b、皿バネ98等は、前述の実施例と同様に、図2に示すように配置されている。従って、フランジ96aの外周側が皿バネ98と当接しているため、皿バネ98が摩擦材122を押圧する際の面圧は、摩擦材122の外周側の方が摩擦材122の内周側と比べて大きくなる。言い換えれば、同じ摩擦材122であっても外周側に位置する摩擦材122の摩擦係数μの変化によるリミットトルクTlmの影響が内周側に比べて大きくなる。また、摩擦材122の外周側は回転半径が大きいことからも摩擦係数μの変化によるリミットトルクTlmの影響が大きくなる。
そこで、本実施例では、摩擦材122に形成される窪み124が上述した構成とすることより、摩擦材122にかかる面圧の高い部位である外周側は、かかる面圧が低い部位である内周側に比較して、窪み124の断面積が大きく形成されている。これより、面圧の高い側に封入される潤滑油が面圧の低い側に比べて多くなる。従って、摩擦材122の外周側の摩擦面を潤滑する潤滑油量が内周側に比べて多くなるので、摩擦材122の摩擦係数μがさらに安定する。
上述のように、本実施例によれば、前述の実施例と同様に、摩擦材120に形成されている窪みに封入された潤滑油が摩擦材120の摩擦面を濡らすため、摩擦材120の摩擦係数μの変化を抑制することができる。また、摩擦材120の面圧の高い摩擦面は、その面圧が低い摩擦面に比較して、窪み124が形成される面積が大きいため、面圧の高い摩擦面は、窪み124に封入される潤滑油の量が多くなる。したがって、特に摩擦係数μの変化の影響が大きい、面圧の高い摩擦面の潤滑油切れが防止されるため、面圧の高い摩擦面の摩擦係数μが安定し、所望のリミットトルクTlmを得ることができる。
図6は、本発明のさらに他の実施例であるトルクリミッタ装置128を構成する第2回転プレートに対応するディスク130に貼り着けられている摩擦材132の形状を説明するための平面視図であって、前述の実施例の図3に対応している。図3に示すように、ディスク130には、円弧状の摩擦材132が周方向に等角度間隔に区画された状態で複数枚(本実施例では20枚)貼り着けられている。また、各摩擦材132の摩擦面には、それぞれ窪み134が形成されている。なお、窪み134の深さは、例えば摩擦材132の厚みの半分程度に設定され、各窪み134とも摩擦材120の内周面、外周面、および周方向の両端面とは隣接しないように形成されている。
本実施例の窪み134は、摩擦材132において径方向において外周側に位置する窪み134a、径方向において中間位置に位置する窪み134b、および径方向において内周側に位置する窪み134cの3種類存在する。すなわち、径方向において異なる位置に窪み134が配置される。そして、周方向に隣り合う摩擦材120に形成される窪み134は、いずれも異なるものとなるように、各窪み134が周方向において周期的に変化するように形成されている。これより、各窪み(134a、134b、134c)がそれぞれ分散して配置され、その個数も略等しくなる。
このように、摩擦材132に形成される窪み134が配置されると、フランジ96aおよびプレート96bと摩擦材132の窪み134とで形成される空間に潤滑油が封入された状態でエンジン14が停止すると、各空間から潤滑油が徐々に漏洩して摩擦材132を潤滑する。ここで、窪み134は、径方向の異なる位置に分散して配置されているので、潤滑油が摩擦材132の摩擦面全体に行き渡ることとなり、摩擦材132の摩擦係数μがさらに安定することとなる。
上述のように本実施例によれば、前述の実施例と同様に、摩擦材132に形成されている窪み134に封入された潤滑油が摩擦材132の摩擦面を濡らすため、摩擦材132の摩擦係数μの変化を抑制することができる。また、フランジ96aおよびプレート96bと接触する接触面の径方向の全域に窪み134が形成されるので、摩擦材132が均一に潤滑され摩擦係数μがさらに安定する。
図7は、本発明のさらに他の実施例であるトルクリミッタ装置138を構成する第2回転プレートに対応するディスク140に貼り着けられている摩擦材142の形状を説明するための平面視図であって、前述の実施例の図3等に対応している。図7に示すように、ディスク140には、円環板状の摩擦材142が貼り着けられている。また、その摩擦材142には、摩擦材142の径方向の異なる位置に、窪み144a、144b、144cが周方向に等角度間隔で配置されている。具体的には、窪み144aが摩擦材142の径方向の外周側に配置され、窪み144bが径方向の中央部に配置され、窪み144cが径方向の内周側に配置されている。そして、周方向に隣り合う窪み144の径方向の位置が何れも異なるように、各窪み144が周方向において周期的に変化するように配置されている。これより、各窪み(144a、144b、144c)がそれぞれ分散して配置され、それぞれの窪み144の個数が略等しくなる。なお、各窪み144は、摩擦材142の摩擦面の内周(内周面)および外周(外周面)には隣接しないように形成されている。
このように、摩擦材142の窪み144が形成されると、エンジン駆動時においてトルクリミッタ装置138に供給される潤滑油は、必ず摩擦材142とフランジ96aおよびプレート96bとの接触面を通って外周側に抜けるため、各窪み144内に潤滑油が封入され易くなる。従って、各窪み144とフランジ96aおよびプレート96bとによって囲まれることで形成される空間に封入される潤滑油量が増加し、エンジンが停止しても摩擦材142が効果的に潤滑され、摩擦係数μがさらに安定する。
上述のように、本実施例によれば、前述の実施例と同様に、摩擦材142に形成されている窪み144に封入された潤滑油が摩擦材142の摩擦面を濡らすため、摩擦材142の摩擦係数μの変化を抑制することができる。また、摩擦材142が円環板状に形成されるので、トルクリミッタ装置138に供給される潤滑油が摩擦材142とフランジ96aおよびプレート96bとの間を通って外周側に抜けるため、窪み144に封入される潤滑油量が増加し、摩擦係数μがさらに安定する。
図8は、本発明のさらに他の実施例であるトルクリミッタ装置148を構成する第2回転プレートに対応するディスク150に貼り着けられている摩擦材152の形状を説明するための平面視図であって、前述の実施例の図3等に対応している。図8に示すように、ディスク150の摩擦材152は、前述した図7に示す摩擦材142と同様に、円環板状の摩擦材152に径方向の位置が異なる窪み154(154a、154b、154c)が形成されている。具体的には、窪み154aが径方向の外周側に配置され、窪み154bが径方向の中央部に配置され、窪み154cが径方向の内周側に配置されている。そして、周方向において隣り合う窪み154の径方向の位置が何れも異なるように、各窪み(154a、154b、154c)が周方向において周期的に変化するように配置されている。これより、各窪み(154a、154b、154c)がそれぞれ分散して配置され、それぞれの窪み154の個数が略等しくなる。なお、各窪み154は、いずれも摩擦材154の摩擦面の内周および外周には隣接せず、その深さは、例えば摩擦材152の厚みの半分程度とされている。
さらに、本実施例の摩擦材152には、各窪み(154a、154b、154c)を連通する円還状の溝156が形成されている。このように溝156が形成されると、その溝156によって形成される空間にも潤滑油が封入されるので、摩擦材156を潤滑する潤滑油封入量が増大する。また、各窪み154が溝156によって連通されるため、潤滑油が各窪み154に略均一に供給され、摩擦材152を潤滑する潤滑油の不均衡が抑制されるので、摩擦材152が略均一に潤滑される。従って、摩擦材152の摩擦係数μがさらに安定する。
上述のように、本実施例によれば、前述の実施例と同様に、摩擦材152に形成されている窪み154に封入された潤滑油が摩擦材152の摩擦面を濡らすため、摩擦材152の摩擦係数μの変化を抑制することができる。また、溝156が形成されるため、その溝156によって形成される空間にも潤滑油が封入されるので、潤滑油量が増加する。さらに、溝156は各窪み154を連通しているので、潤滑油が略均一に供給され、摩擦材152を潤滑する潤滑油の不均衡が抑制される。
図9は、本発明のさらに他の実施例であるトルクリミッタ装置160のディスク162とフランジ164aおよびプレート164bとの接触部位を拡大して簡略的に描いた図であって、前述した実施例の図4に対応している。本実施例のトルクリミッタ装置160は、ディスク162が複数枚(本実施例では2枚)配置され、フランジ164aおよびプレート164bとディスク162とが交互に配置されている。ディスク162の軸方向の両側には、摩擦材166が貼り着けられており、その摩擦材166の摩擦面には、摩擦材166の外周および内周と隣接しない窪み168がそれぞれ形成されている。なお、窪み168の断面形状は、前述した実施例のように例えば円形形状或いは三角形状に形成されており、その深さは、例えば摩擦材166の厚みの半分程度とされている。また、摩擦材166は、例えば前述したような円弧状や円環板状に形成されている。なお、フランジ164aおよびプレート164bが本発明の第1回転プレートに対応し、ディスク162が本発明の第2回転プレートに対応している。
本実施例のトルクリミッタ装置160においては、一対のディスク162に挟まれているプレート164bには、軸方向の両端を貫通して、窪み188同士を連通する貫通穴170(本発明の穴に対応)が形成されている。このように、プレート164bに貫通穴170が形成されると、エンジン駆動時において潤滑油がその貫通穴170によって形成される空間172にも供給される。従って、エンジン停止時において空間172内にも潤滑油が封入された状態となることから、トルクリミッタ装置160によって保持される潤滑油量がさらに増加する。これより、摩擦材166がさらに効果的に潤滑されるため、摩擦係数μがさらに安定することとなる。
上述のように、本実施例によれば、前述の実施例と同様に、摩擦材166に形成されている窪み168に封入された潤滑油が摩擦材166の摩擦面を濡らすため、摩擦材166の摩擦係数μの変化を抑制することができる。また、プレート164bに形成されている貫通孔170内にも潤滑油が封入されるので、潤滑油量がさらに増加する。
図10は、本発明のさらに他の実施例であるトルクリミッタ装置180のディスク182とフランジ184aおよびプレート184bとの接触部位を拡大して簡略的に描いた図であって、前述した実施例の図4、図9に対応している。本実施例のトルクリミッタ装置180は、前述した図9に示すトルクリミッタ装置160と同様に、ディスク182が複数枚配置され、ディスク182とフランジ184aおよびプレート164bとが交互に配置されている。ディスク182の軸方向の両端には、摩擦材186が貼り着けられており、その摩擦材186には、摩擦材186の内周面および外周面と隣接しない窪み188が形成されている。なお、窪み188の断面形状は、前述した実施例のように例えば円形形状或いは三角形状に形成されており、その深さは、例えば摩擦材186の厚みの半分程度とされている。また、摩擦材186は、例えば前述したような円弧状や円環板状に形成されている。なお、フランジ184aおよびプレート184bが本発明の第1回転プレートに対応し、ディスク182が本発明の第2回転プレートに対応している。
また、本実施例においても、一対のディスク182に挟まれているプレート184bには、軸方向の両端を貫通する貫通穴190(本発明の穴に対応)が形成されている。従って、前述の実施例と同様に、貫通穴190によって形成される空間内に潤滑油が封入され、トルクリミッタ装置180によって保持される潤滑油量が増加する。
本実施例では、さらに皿バネ98と当接するフランジ184aの摩擦材186との接触面にも窪み194が径方向において窪み188と等しい位置に形成されており、この窪み194にも潤滑油が封入されることとなる。従って、トルクリミッタ装置180によって保持される潤滑油量がさらに増加し、摩擦材166が効果的に潤滑されるので、摩擦係数μがさらに安定することとなる。
上述のように、本実施例によれば、前述の実施例と同様に、摩擦材186に形成されている窪み188に封入された潤滑油が摩擦材186の摩擦面を濡らすため、摩擦材186の摩擦係数μの変化を抑制することができる。また、フランジ184aにも窪み194が形成されるので、窪み194によって形成される空間内にも潤滑油が封入されるので、潤滑油量がさらに増加する。
図11は、本発明のさらに他の実施例であるトルクリミッタ装置200のディスク202とフランジ204aおよびプレート204bとの接触部位を簡略的に描いた拡大図であって、前述した実施例の図4、図9、図10に対応している。本実施例のトルクリミッタ装置200は、前述した図10に示すトルクリミッタ装置200と同様に、ディスク202が複数枚配置され、ディスク202とフランジ204aおよびプレート204bとが相互に配置されている。また、ディスク202の軸方向の両端には、摩擦材206が貼り着けられており、その摩擦材206には、摩擦材206の内周(内周面)および外周(外周面)と隣接しない窪み208が形成されている。
また、両端が摩擦材206と隣接するプレート204bには、軸方向の両端を貫通する貫通穴210(本発明の穴に対応する)が形成されている。従って、貫通穴210に形成される空間内にも潤滑油が封入されることとなり、トルクリミッタ装置200によって保持される潤滑油量が増大し、摩擦材206が効果的に潤滑される。また、皿バネ98と当接するフランジ204aにも窪み214が形成されており、この窪み214にも潤滑油が封入されることとなる。従って、トルクリミッタ装置200によって保持される潤滑油量がさらに増大し、摩擦材206が効果的に潤滑される。
本実施例では、摩擦材206に形成される窪み208とフランジ204aおよびプレート204bに形成されている貫通穴210および窪み214とが径方向に重複しない位置に設定されている。具体的には、窪み208は、径方向内側に位置する窪み208aおよび径方向外側に位置する窪み208bの2種類の窪みから成っている。そして、窪み208aの径方向外側の端部が、窪み214の径方向内側の端部よりも径方向内側に配置されている。また、窪み208bの径方向内側の端部が、貫通穴210の径方向外側の端部よりも径方向外側に配置されている。このように、摩擦材206の窪み208とフランジ204の窪み214および貫通穴210とが径方向にずれた位置に配置されることで、摩擦材206とフランジ204との接触面積が径方向で略均一になり、摩擦面で面圧が不均一となることが低減される。
上述のように、本実施例によれば、前述の実施例と同様に、摩擦材206に形成されている窪み208に封入された潤滑油が摩擦材206の摩擦面を濡らすため、摩擦材206の摩擦係数μの変化を抑制することができる。また、摩擦材206の窪み208とフランジ204の窪み214および貫通穴210とが径方向にずれた位置に配置されることで、摩擦材206とフランジ204との接触面積が径方向で略均一になる。
図12は、本発明のさらに他の実施例であるトルクリミッタ装置220を構成する第2回転プレートに対応するディスク222に貼り着けられている摩擦材224の形状を説明するための平面視図であって、前述の実施例の図3に対応している。図12に示すように、ディスク222には、円弧状の摩擦材224が周方向に等角度間隔で複数枚貼り着けられている。また、各摩擦材224には、それぞれ後述する窪み226が形成されている。
本実施例の窪み226は、径方向外側に形成されている断面円形の窪み226aおよび径方向内側に形成されている断面円形の窪み226bの2種類の窪みから成り、それぞれ摩擦材224の内周面および外周面、並びに回転方向の両端面とは隣接しない位置に形成されている。ここで、摩擦材224の外周側に位置する窪み226aの直径d1は、内周側に位置する窪み226bの直径d2よりも大きくされている。従って、窪み226aの断面積は、窪み226bの断面積よりも大きくなる。
ここで、トルクリミッタ装置220においても、フランジ204aの外周側が皿バネ98と当接する構成となっており、摩擦材224において、径方向外側の面圧が径方向内側の面圧に比べて高くなる。これに対して、面圧が高くなる径方向外側に断面積の大きい窪み226aが形成されているので、径方向外側に保持される潤滑油量が径方向内側に比べて多くなる構成となっている。従って、面圧の高い摩擦材224の外周側が効果的に潤滑されるので、摩擦材224の摩擦係数μがさらに安定する。
上述のように、本実施例によれば、前述の実施例と同様に、摩擦材224に形成されている窪み226に封入された潤滑油が摩擦材224の摩擦面を濡らすため、摩擦材224の摩擦係数μの変化を抑制することができる。また、摩擦材224の面圧の高い摩擦面に形成される窪み226aの面積は、面圧の低い摩擦面に形成される窪み226bの面積に比べて大きいので、窪み226aに封入される潤滑油量が相対的に多くなる。したがって、特に摩擦係数μの変化の影響が大きい、面圧の高い摩擦面の潤滑油切れが防止されるため、面圧の高い摩擦面の摩擦係数μが安定し、所望のリミットトルクTlmを得ることができる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の本実施例において、例えば窪み104の断面形状は円形とされているが、楕円形状、三角形状など摩擦材の摩擦面の内周(内周面)および外周(外周面)と隣接しない限りにおいて特に限定されない。また、窪み104は、必ずしも全ての摩擦材102に形成されなくとも構わない。
また、前述の各実施例は、必ずしも単独で実施する必要はなく、矛盾のない範囲において適宜組み合わせて実施しても構わない。例えば図12の摩擦材224を図7の摩擦材142のように円環形状に変化するなど、適宜変更することができる。
また、前述の実施例では、面圧の高くなる側の潤滑油量が多くなるように、図5に示すように、窪み124を三角形状としたが、必ずしも三角形状に限定されない。たとえば、T字状など面圧が高くなる部位の窪みの面積が大きくなる形状であれば、矛盾のない範囲で自由に変更することができる。
また、前述の実施例において、貫通穴170、190、210を必ずしも貫通させる必要はなく、所定の深さを有する穴に変更しても構わない。
また、前述の実施例では、ディスクの枚数は1枚もしくは2枚となっているが、ディスクの枚数は3枚以上であっても構わない。また、プレートの枚数もディスクの枚数に応じて適宜変更しても構わない。
また、前述の実施例では、ディスク側に摩擦材が貼り着けられているが、フランジ側に貼り着けられる構成であっても構わない。
また、前述の実施例では、フランジの外周側に皿バネ98が当接した構成となっているが、フランジの内周側に皿バネ98が当接した構成であっても構わない。このような場合、フランジの内周側の面圧が外周側に比べて高くなるため、内周側に形成される窪みの面積が大きくなるなど、適宜変更される。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
24、118、128、138、148、160、180、200、220:トルクリミッタ装置
92、120、130、140、150、162、182、202、222:ディスク(第2回転プレート)
96a、164a、184a、204a:フランジ(第1回転プレート)
96b、164b、184b、204b:プレート(第1回転プレート)
98:皿バネ
102、122、132、142、152、166、186、206、224:摩擦材
104、124、134、144、154、168、188、208、226:窪み
170、190、210:貫通穴(穴)
92、120、130、140、150、162、182、202、222:ディスク(第2回転プレート)
96a、164a、184a、204a:フランジ(第1回転プレート)
96b、164b、184b、204b:プレート(第1回転プレート)
98:皿バネ
102、122、132、142、152、166、186、206、224:摩擦材
104、124、134、144、154、168、188、208、226:窪み
170、190、210:貫通穴(穴)
Claims (3)
- 軸心まわりに回転可能な第1回転プレートと、該第1回転プレートに隣接した状態で軸心まわりに相対回転可能に設けられている第2回転プレートと、該第1回転プレートおよび該第2回転プレートの一方に固定されて他方の回転プレートと隣接する摩擦材と、予荷重状態で該第1回転プレートに当接した状態で設けられ、該第1回転プレートを該第2回転プレートに向かって軸方向に押圧する皿バネとを、含む車両の湿式トルクリミッタ装置であって、
前記摩擦材の摩擦面には、該摩擦材の外周および内周と隣接しない窪みが形成されていることを特徴とする車両の湿式トルクリミッタ装置。 - 前記摩擦材の面圧の高い摩擦面は、該面圧が低い摩擦面に比較して、前記窪みが形成される面積が大きいことを特徴とする請求項1の車両の湿式トルクリミッタ装置。
- 前記摩擦材が固定されていない側のプレートには、該摩擦材と接触する接触面内に該摩擦材の内周および外周と隣接しない穴が形成されていることを特徴とする請求項1または2の車両の湿式トルクリミッタ装置。
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JP2019110882A (ja) * | 2017-12-26 | 2019-07-11 | 株式会社クボタ | 作業機 |
-
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- 2011-04-28 JP JP2011101590A patent/JP2012233518A/ja not_active Withdrawn
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