JP2012232569A - 木質化粧板 - Google Patents

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直彦 前田
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伸一 鈴木
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Abstract

【課題】木質板に含有する窒素化合物の分解により発生するアンモニアに起因する化粧単板の変色を抑制することができる木質化粧板を提供する。
【解決手段】アンモニアを発生させる窒素化合物を含有する木質板2の表面に化粧単板4を貼着し着色剤5で塗装した木質化粧板1において、着色剤5は、弱酸性のキレート剤および抗菌剤から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴としている。
【選択図】図1

Description

本発明は、床、壁、扉等の住宅用建材等に用いられる木質化粧板に関し、さらに詳しくは、窒素化合物を含有する木質板の表面に化粧単板を貼着し着色剤で塗装した木質化粧板に関する。
従来、床、壁、扉等の住宅用建材の基材として、合板の他にパーティクルボード、MDF(中密度繊維板)等の木質板が一般に広く用いられている。
パーティクルボード、MDF等の木質板は、木質エレメントと接着剤とを混合してマット状にフォーミングした後、熱圧成形して製造される。接着剤としては、ユリア樹脂接着剤、メラミン樹脂接着剤、フェノール樹脂接着剤等のホルムアルデヒドで硬化させるタイプが用いられている。
そして木質板の表面に化粧単板を貼着し、化粧単板の表面に着色剤を塗装することで住宅用建材等に用いられる木質化粧板が製造される。
近年では、室内環境の問題が顕在化し、特に上記の接着剤から放散される未反応のホルムアルデヒドの放散量を抑制することが求められている。そのため、木質板中にホルムアルデヒドのキャッチャー剤として、尿素、あるいはコハク酸ジヒドラジドやアジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジン系化合物等の窒素化合物を添加することが行われている。中でも尿素は安価で、かつホルムアルデヒドとの反応が緩やかなため、木質板の接着強度の低下が小さい等の点から広く用いられている(特許文献1〜3参照)。
また、木質板はキャッチャー剤以外にも窒素化合物を含有している。例えば、ユリア樹脂接着剤やメラミン樹脂接着剤等の接着剤は窒素化合物を含有している。また、木質板に耐水性を付与するためのワックスとして、窒素化合物である脂肪酸アミドが用いられる場合もある。さらに木質板の原料である木材には、微量ながら窒素化合物としてタンパク質を含有している。
従って、多くの木質化粧板は木質板中に窒素化合物を含有している。
特開2001−79806号公報 特開2001−164235号公報 特開2005−179474号公報
しかしながら、木質板に窒素化合物を含有していると、木質化粧板が高温多湿な環境に曝された場合に窒素化合物の加水分解が起こり、アンモニアが発生する。高温多湿な環境ではカビや細菌といった微生物も繁殖しやすく、これらの微生物が窒素化合物を分解するため、発生するアンモニア量は加速度的に増加する。特に尿素は、その構造が単純なことから加水分解や微生物による分解を受けやすい。
そして発生したアンモニアは塩基性であるため、木質化粧板表面の化粧単板と接触すると化粧単板中のタンニン成分と反応して黒く変色する。
さらにパーティクルボードやMDFは合板に比べると木質エレメントが小さいため接着剤量が多い。従ってキャッチャー剤の窒素化合物の量も多くなる。また、合板の場合は積層した単板間に接着剤が塗布されるため、表面の化粧単板の下にある合板フェイス層が緩衝層となって化粧単板の変色を緩和すると考えられるが、パーティクルボードやMDFはこのような緩衝層が存在しないため化粧単板の変色が発生しやすくなる。
特に、化粧単板がタンニン成分を多く含む木材である場合には、このような変色は顕著となる。
また、キャッチャー剤としての窒素化合物を含有しない場合であっても、上記したように、接着剤やワックスに窒素化合物を含有する場合や、木質板の原料となる木材にタンパク質を含有する場合がある。このような場合は、これらの窒素化合物が微生物により分解されてアンモニアが発生し、キャッチャー剤としての窒素化合物を含有する場合と同様に化粧単板が黒く変色する場合がある。
本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、木質板に含有する窒素化合物の分解により発生するアンモニアに起因する化粧単板の変色を抑制することができる木質化粧板を提供することを課題としている。
上記の課題を解決するために、本発明の木質化粧板は、アンモニアを発生させる窒素化合物を含有する木質板の表面に化粧単板を貼着し着色剤で塗装した木質化粧板において、着色剤は、弱酸性のキレート剤および抗菌剤から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴としている。
この木質化粧板においては、着色剤は、弱酸性のキレート剤としてエチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウムを含有することが好ましい。
この木質化粧板においては、木質板は、窒素化合物としてキャッチャー剤の尿素を含有することが好ましい。
この木質化粧板においては、化粧単板は、オーク、ナラ、クルミ、ウォールナット、ビーチ、およびバーチから選ばれるいずれかの木材の単板であることが好ましい。
本発明の木質化粧板によれば、木質板に含有する窒素化合物の分解により発生するアンモニアに起因する化粧単板の変色を抑制することができる。
実施例1の木質化粧板の縦断面図である。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の木質化粧板は、その分解によりアンモニアを発生する窒素化合物を木質板に含有しており、その表面に化粧単板を貼着し着色剤で塗装したものである。そして着色剤が弱酸性のキレート剤および抗菌剤から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴としている。
弱酸性のキレート剤および抗菌剤から選ばれる少なくとも1種を含有することで、窒素化合物の分解によりアンモニアを発生する細菌の繁殖を抑制することができる。従ってアンモニアによる化粧単板の変色を抑制することができる。
キレート剤はカビや細菌等の発育を抑制する働きがある。具体的には、細菌の細胞壁構成成分であるリポ多糖体に結合している二価の金属イオンをキレート作用で取り除いて外膜に損傷を与えたり、酵素を不活性化したりすると言われている。また、抗菌剤もこれらの微生物の繁殖を抑制する。一方、防カビ剤は一定の細菌抑制作用はあるものの、カビの種類により防カビ剤を選択する必要があり、キレート剤や抗菌剤ほどには細菌抑制作用は期待できない。
本発明の木質化粧板においては、キレート剤として弱酸性のものを用いることが必要である。キレート剤として強酸性のものを用いた場合、化粧単板をいわゆる「酸やけ現象」で変色させる場合や、塗装設備に錆びを発生させる場合がある。またキレート剤が酸性であればアンモニアを中和することができるが、キレート剤として塩基性のものを用いた場合、化粧単板がその塩基により変色する場合がある。
着色剤による化粧単板の木地着色はその意匠性を向上させるために一般に行われているが、着色剤に含有された弱酸性のキレート剤や抗菌剤が化粧単板や木質板表層に浸透していくことで細菌の繁殖を抑制し、これにより化粧単板の変色を抑制する。
化粧単板の表面には一般に目地加工が施されることが多いが、目地加工があれば着色剤に含有された弱酸性のキレート剤や抗菌剤が木質板表層により浸透しやすくなる。また弱酸性のキレート剤や抗菌剤を着色剤に添加することで、これらを別途単独に塗布する工程を省くことができる。
化粧単板の変色は、化粧単板に含有されるタンニン成分と木質板から発生するアンモニアとによりアルカリ汚染が生じることが原因であると考えられる。そのため、化粧単板がオーク、ナラ、クルミ、ウォールナット、ビーチ、バーチ等のタンニン成分を多く含有する木材の単板である場合には着色剤に含有された弱酸性のキレート剤や抗菌剤による変色抑制はより顕著となる。
本発明において木質板としては、例えば、植物系のパーティクルまたは植物繊維と、接着剤とを含有するボードを用いることができる。
植物系のパーティクルと接着剤とを含有する木質板としては、例えば、パーティクルボードを用いることができる。
パーティクルボードは、植物系のパーティクルとして、例えば、マツ、スギ、ヒノキ等の針葉樹、またはラワン、カポール、ポプラ等の広葉樹、ケナフの芯部等を原料として微小片(木粉状のチップ)や粗大片(木片状のチップ)としたものを用いることができる。
パーティクルボードとしては、単層ボード、3層ボード、多層ボードを挙げることができる。これらのうち3層ボードは、植物系のパーティクルとして微小片を含有する両面の表層と、植物系のパーティクルとして粗大片を含有する内層とを備えている。このような構成にすることで、表層は緻密になり、内層は粗になる。そのため表面の平滑性を高めることができ、さらに全体の密度を低くし、かつ曲げ強さを高めることができる。
パーティクルボードは、例えば、従来公知の方法により製造することができる。例えば、製造ラインによるパーティクルボードの製造は、原料の小片化、小片乾燥、接着剤等の添加、マット成形(フォーミング)、熱圧成形、仕上げ工程を経て行われる。
原料の小片化は、例えば、原料が丸太の場合はドラムフレーカー、原料が廃材チップの場合はリングフレーカー等を用いることができる。3層ボードの場合、内層の粗大片は、例えば厚み0.5mm前後、長さ10〜20mmとされる。表層の微小片はさらに細かく粉砕される。小片乾燥は、熱圧成形時におけるパンクを抑制するために必要な工程である。
また、植物繊維と接着剤とを含有する木質板としては、例えば、MDF等のファイバーボードを用いることができる。
MDFは、ファイバーを原料とし緻密であるため、曲げ強さ、剥離強さ等を高めることができる。
MDFは、植物繊維として、マツ、スギ、ヒノキ等の針葉樹、またはラワン、カポール、ポプラ等の広葉樹を高温、高圧で分解して得られるウッドファイバーを加熱および加圧しながら加工したものを用いることができる。
MDFは、例えば、従来のMDFの製造ラインを用いて製造することができる。このような製造ラインによるMDFの製造は、チップヤードからの集荷、チップ洗浄、チップのスチーミング、リファイナーによる繊維化、接着剤等の添加、熱風等によるファイバー乾燥、マット成形(フォーミング)、熱圧成形、仕上げ工程を経て行われる。これらの工程においてチップやファイバーは、例えば空気により圧送される。
パーティクルボードやMDF等の木質板の接着剤としては、パーティクルボードやMDF等の木質ボードの種類に応じた合成樹脂接着剤を用いることができる。例えば、ユリア樹脂接着剤、メラミン樹脂接着剤、ユリア・メラミン共縮合樹脂接着剤、フェノール樹脂接着剤、MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)、TDI(トリレンジイソシアネート)、MDIプレポリマー、TDIプレポリマー等のイソシアネート樹脂接着剤等を用いることができる。これらは2種以上を混合して用いることもできる。また、合成樹脂接着剤の種類に応じた硬化触媒を併用することもできる。例えば、ユリア樹脂接着剤、メラミン樹脂接着剤、ユリア・メラミン共縮合樹脂接着剤の硬化触媒の具体例として、硫酸アンモニウムや塩化アンモニウム等が挙げられる。
上記に例示した接着剤のうち、例えばユリア樹脂接着剤、メラミン樹脂接着剤、ユリア・メラミン共縮合樹脂接着剤はアンモニアを発生する窒素化合物を含有している。しかし本発明では、化粧単板の着色剤に弱酸性のキレート剤および抗菌剤から選ばれる少なくとも1種を含有しているので、このような窒素化合物の分解によるアンモニアの発生を抑制し、化粧単板の変色を抑制することができる。
フォーミングのためのマットに用いられるマット用混合物は、植物系のパーティクルまたは植物繊維と接着剤とを混合して調製される。
このマット用混合物には、ホルムアルデヒドのキャッチャー剤を配合することが好ましい。キャッチャー剤としては、例えば、尿素、あるいはコハク酸ジヒドラジドやアジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジン系化合物等を用いることができる。これらのキャッチャー剤は、製造された木質板から発生するホルムアルデヒドを効果的に捕捉し、無害化することができる。
中でも、キャッチャー剤としては尿素が好ましい。尿素は安価で、かつホルムアルデヒドとの反応が緩やかなため、木質板の接着強度の低下が小さい。しかし、尿素は窒素化合物として単純な構造であるため、加水分解や微生物による分解を起こしアンモニアを発生させやすい。ところが、本発明では、化粧単板の着色剤に弱酸性のキレート剤および抗菌剤から選ばれる少なくとも1種を含有しているので、尿素の分解によるアンモニアの発生を抑制し、化粧単板の変色を抑制することができる。
また、マット用混合物には、本発明の効果を損なわない範囲内において、他の添加剤を配合することができる。このような添加剤としては、例えば、脂肪酸アミド等のワックス等を挙げることができる。
マット用混合物は、例えば、上記の各成分を配合してブレンダーの中で攪拌混合することにより調製することができる。
キャッチャー剤のマット用混合物への配合は、例えば、ブレンダーの中で植物系パーティクルや植物繊維を攪拌しながら接着剤とともに尿素水等の水溶液の形態で噴霧することによって行うことができる。その他、熱圧成形後の木質板に希釈液の形態で含浸させる方法等により木質板に含有させることもできる。
パーティクルボードの製造における接着剤の配合量は、特に限定されないが、例えば3層ボードの場合、乾燥状態の植物系のパーティクル100質量部に対して表層10〜15質量部、内層5〜10質量部とすることができる。
MDFの製造における接着剤の配合量は、特に限定されないが、例えば、平面引張強度、曲げ強度、耐水性等を考慮して、乾燥状態の植物繊維100質量部に対して5〜25質量部とすることができる。
マット用混合物を調製した後、マットを形成する工程は、例えば、パーティクルボードやMDFの製造において行われているフォーミングにより行うことができる。
例えば、パーティクルボードの3層ボードの場合は、表層形成用のマット用混合物を成形ベルトに堆積させ、次に内層形成用のマット用混合物をその上に堆積させ、その後表層形成用のマット用混合物をその上に堆積させることでマットを得ることができる。
こうして得られるケーキ状のマットは、室温等において予備圧縮することが好ましい。成形台やスチールベルト等への堆積前または堆積後に予め目的とする木質板の形状を考慮して予備圧縮し、その後に熱圧成形することで、木質板の品質を安定させることができる。
このようにしてマットを形成した後、熱圧成形する。このときの熱圧条件(含水率、温度、圧締圧、時間等)は木質板の特性、例えば表面状態、曲げ強さ、接着剤、ホルムアルデヒド放出量、難燃性等を決める要因となり得る。
熱圧成形時の熱盤またはスチールベルトの表面温度と圧力は、接着剤の種類等によるが、パーティクルボードの場合では、例えば表面温度180〜220℃、圧力0.3〜0.5MPaとすることができる。
熱圧成形のプレス方式は、スチールベルトを用いる連続プレスや、バッチ式の多段プレス、一段プレス等の平面プレス等を挙げることができる。中でも、生産性を考慮すると、連続プレスが好ましい。
その後、パーティクルボードの場合にはトリミング、サンダーによる表面仕上げ等の仕上げ工程を経て素地のパーティクルボードを製造することができる。
MDFの場合には、熱圧成形後のボードを一旦積載して養生した後、仕上げ工程として、サンダーによる表面仕上げを行い、さらに所望の寸法にカットして素地のMDFを製造することができる。
このようにして製造された木質板の表面には、化粧単板が貼着される。化粧単板の貼着には、例えば化粧単板の貼着に従来用いられている接着剤を用いることができる。具体的には、例えば、酢酸ビニル系接着剤、ラテックス系接着剤、尿素樹脂系接着剤等を用いることができる。
化粧単板は、例えば、オーク、ナラ、クルミ、ウォールナット、ビーチ、バーチ等の単板を用いることができる。化粧単板の変色は、化粧単板に含有されるタンニン成分と木質板から発生するアンモニアとによりアルカリ汚染が生じることが原因であると考えられる。そのため、化粧単板が上記に例示したようなタンニン成分を多く含有する木材の単板である場合には着色剤に含有された弱酸性のキレート剤や抗菌剤による変色抑制はより顕著となる。
化粧単板の表面には目地加工を施すことができる。目地加工があれば着色剤に含有された弱酸性のキレート剤や抗菌剤が木質板表層により浸透しやすくなる。
また、木質板の化粧単板とは反対側の裏面には、吸水や吸湿の抑制のために防湿シートを貼着してもよい。
木質板の表面に化粧単板を貼着した後、化粧単板の表面に着色剤を塗装する。着色剤としては、例えば、木質材料系の着色ステイン塗料を用いることができる。例えば、ウレタン樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、アミノアルキッド樹脂塗料、ポリエステル樹脂塗料等を用いることができる。作業環境における安全面や大気汚染に関する影響等を考慮すると、水性の着色塗料を用いることが好ましい。
この着色剤には、弱酸性のキレート剤や抗菌剤が配合される。キレ−ト剤は細菌の生育に必要な金属イオンを奪う作用があり、抗菌剤も細菌の繁殖を抑制する。
本発明の木質化粧板においては、キレート剤として弱酸性のものを用いることが必要である。キレート剤として強酸性のものを用いた場合、化粧単板をいわゆる「酸やけ現象」で変色させる場合や、塗装設備に錆びを発生させる場合がある。またキレート剤が酸性であればアンモニアを中和することができるが、キレート剤として塩基性のものを用いた場合、化粧単板がその塩基により変色する場合がある。
なお、本発明において「弱酸性」とは、水溶液pHが3〜6.5、好ましくは4〜5の範囲にあることを意味する。
弱酸性のキレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム(EDTA・2Na)、ニトリロ三酢酸二ナトリウム(NTA・H・2Na)、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸二ナトリウム(HEDP・2Na)等を用いることができる。
中でも、エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウムが好ましい。エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウムは水に可溶で水溶液は弱酸性を示し、変色抑制作用も良好である。
抗菌剤としては、無機系および有機系の抗菌剤を用いることができる。無機系の抗菌剤としては、例えば、銀系、亜鉛系、銀−亜鉛系、銅系等の抗菌剤を挙げることができる。有機系の抗菌剤としては、例えば、トリアジン系、イミダゾール・チアゾール系、ジスルフィド系、スルファミド系(例えばジメチルフェニルスルファミド系)等の抗菌剤を挙げることができる。
弱酸性のキレート剤または抗菌剤の配合量は、固形分換算で着色剤全量に対して0.1〜5質量%が好ましい。配合量が少な過ぎると化粧単板の変色抑制が十分でない場合があり、配合量が多過ぎると着色剤の中での分散性や塗膜密着性が低下する場合がある。
着色剤の塗装は、ロール塗装機により行うことができる。ロール塗装機としては、木質板の表面の化粧単板に塗料状の着色剤を塗装するスポンジロールと、化粧単板の表面の余剰の着色剤を掻き取るリバースロールと、木質板の下面を支持する支持ロールとを備えるものを用いることができる。
スポンジロールとしては、合成樹脂を発泡させたもの、例えば、ポリエチレン発泡体、ポリウレタン発泡体等をロールとしたものを用いることができる。
リバースロールとしては、例えば、ウレタンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム等をロールとしたものを用いることができる。
ロール塗装機に木質板を搬送し、支持ロールにより木質板の下面を支持しながら上流側において化粧単板の表面に搬送方向に回転するスポンジロールから着色剤を供給して塗布する。着色剤は塗料タンクからスポンジロールに供給され、着色剤は木質板表面の化粧単板の表面全体にローラーコートされる。
そして連続的に下流側において、着色剤がローラーコートされた化粧単板の表面に搬送方向とは逆側に回転するリバースロールを押し当てて余剰の着色剤を掻き取ることにより均一に着色剤を塗装する。余剰の着色剤は回収タンクに回収される。これにより、着色剤が凹溝や導管等に充填され、凹溝や導管等が着色される。
化粧単板の表面にロール塗装機により着色剤を塗装した後、溶媒を飛散させて乾燥する。乾燥は、例えば、ジエットドライヤー等を用いて行うことができ、例えば乾燥温度80〜150℃、乾燥時間30秒〜3分の条件で乾燥することができる。
その後、この木地着色を施した化粧単板には、化粧単板の表面保護や仕上がり等を考慮して表面全体にクリア塗料を塗装することができる。
クリア塗料による塗装は、例えば下塗り、中塗り、上塗り等の複数回の塗装により行うこともでき、これらの塗装の前後において適宜に研磨(サンディング)を行うことができる。
下塗りおよび中塗りには、例えば、常温硬化型のウレタン樹脂塗料、あるいは加熱硬化型のメラミン樹脂塗料、尿素・メラミン樹脂塗料、ポリエステル樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、あるいは紫外線硬化型のウレタン樹脂塗料、ポリエステル変性アクリル樹脂塗料等を用いることができる。
上塗りには、例えば、アクリル樹脂塗料、アミノアルキド樹脂塗料、ビニル樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、ポリウレタン樹脂塗料等を用いることができる。
着色剤およびクリア塗料の塗装により、化粧単板の持つ自然の色合いを生かした表現ができ、木の自然な雰囲気を演出することもできる。
本発明の木質化粧板は、弱酸性のキレート剤および抗菌剤から選ばれる少なくとも1種を着色剤に含有している。これにより、キャッチャー剤として木質板に含有する尿素等の窒素化合物や、その他の窒素化合物の分解により発生するアンモニアによる化粧単板の変色を抑制することができる。従って、本発明の木質化粧板は、床、壁、扉等の住宅用建材に好適に用いることができる。
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
<実施例1>
植物系のパーティクルとして微小片、接着剤としてMDIとメラミン樹脂、耐水剤としてワックスエマルジョン、ホルムアルデヒドのキャッチャー剤として尿素を配合した。これらを十分に攪拌混合して表層形成用混合物を調製した。
一方、植物系のパーティクルとして粗大片、接着剤としてMDIとメラミン樹脂、耐水剤としてワックスエマルジョン、ホルムアルデヒドのキャッチャー剤として尿素を配合した。これらを十分に攪拌混合して内層形成用混合物を調製した。
表層形成用混合物をベルトに堆積させ、次に内層形成用混合物をその上に堆積させ、表層形成用混合物をさらにその上に堆積させることで3層のマットを得た。
このマットを予備圧縮した後、180℃、0.4MPa、3分間の条件で熱圧成形し、仕上げ工程を経て縦横300×300mm、厚み12mmの3層構造のパーティクルボードを得た。
このパーティクルボードを養生した後、裏面に防湿シート、表面にオークの化粧単板をそれぞれ酢酸ビニル系接着剤を用いて接着した。その後、化粧単板の表面に目地加工を施した。
この目地加工した化粧単板表面に、キレート剤のNTA・H・2Naを2質量%配合した着色剤をロール塗装機により塗装した。ロール塗装機にパーティクルボードを搬送し、支持ロールによりパーティクルボードの下面を支持しながら上流側において化粧単板の表面にスポンジロールから着色剤を供給して化粧単板の表面全体にローラーコートした。そして連続的に下流側において、着色剤がローラーコートされた化粧単板の表面に搬送方向とは逆側に回転するリバースロールを押し当てて余剰の着色剤を掻き取った。
着色剤を乾燥後、着色剤を塗装した化粧単板の表面にUV塗装によりクリア塗料を塗装し木質化粧板を得た。図1にその縦断面図を示す。この木質化粧板1は、両面側の表層2bとその間の内層2aとを有する3層構造のパーティクルボード(木質板2)の表面に酢酸ビニル系接着剤3により化粧単板4が貼着され、裏面に酢酸ビニル系接着剤7により防湿シート8が貼着されている。化粧単板4の表面には着色剤5が塗装され、その上にクリア塗料による塗膜6を有している。
<実施例2>
実施例1において、キレート剤をHEDP・2Naに変更し、それ以外は実施例1と同様にして木質化粧板を製造した。
<実施例3>
実施例1において、キレート剤をEDTA・2Naに変更し、それ以外は実施例1と同様にして木質化粧板を製造した。
<実施例4>
実施例3において、化粧単板をビーチに変更し、それ以外は実施例3と同様にして木質化粧板を製造した。
<実施例5>
実施例1において、キレート剤の代わりに有機系の抗菌剤(ジメチルフェニルスルファミド系)を着色剤全量に対して0.5質量%配合した。それ以外は実施例1と同様にして木質化粧板を製造した。
<実施例6>
実施例1において、キレート剤の代わりに無機系の抗菌剤(銀-亜鉛系)を着色剤全量に対して0.5質量%配合した。それ以外は実施例1と同様にして木質化粧板を製造した。
<比較例1>
実施例1において、キレート剤を配合せず、それ以外は実施例1と同様にして木質化粧板を製造した。
<比較例2>
比較例1において、化粧単板をビーチに変更し、それ以外は比較例1と同様にして木質化粧板を製造した。
<比較例3>
実施例1において、キレート剤を塩基性のHEDTA・3Naに変更し、それ以外は実施例1と同様にして木質化粧板を製造した。
なお、実施例1〜6および比較例3のキレート剤のpHは前述の濃度条件により測定した。
実施例および比較例の木質化粧板について次の試験を行った。
[変色試験]
実施例および比較例のカットサンプルの表面に濡れ雑巾を置いて、ビニール袋で密閉し、40℃90%RHの恒温恒湿器の中で2週間放置して、化粧単板の変色程度を次の基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:ほとんど変色なし
○:少し変色あり
△:変色あり
×:変色が大きい
その結果を表1に示す。
Figure 2012232569
表1より、実施例1〜6では、着色剤に弱酸性のキレート剤や抗菌剤を配合することで化粧単板の変色を抑制することができた。弱酸性のキレート剤としては、実施例3、4のEDTA・2Naが特に有効で変色抑制作用を顕著に発揮した。また実施例5、6の有機系および無機系の抗菌剤も特に有効で変色抑制作用を顕著に発揮した。化粧単板の種類では、オークやビーチ等のようにタンニン成分が多い場合に変色抑制作用を顕著に発揮した。
これに対して着色剤に弱酸性のキレート剤や抗菌剤を配合しなかった比較例1、2では高温多湿な環境に曝されたことにより化粧単板が黒く変色した。また塩基性のキレート剤を用いた比較例3の場合にも同様に化粧単板が変色した。これは細菌繁殖や尿素分解によるアンモニアの中和が不十分でタンニンとの反応を抑制できなかったためと考えられる。
1 木質化粧板
2 木質板
4 化粧単板
5 着色剤

Claims (4)

  1. アンモニアを発生させる窒素化合物を含有する木質板の表面に化粧単板を貼着し着色剤で塗装した木質化粧板において、前記着色剤は、弱酸性のキレート剤および抗菌剤から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする木質化粧板。
  2. 前記着色剤は、前記弱酸性のキレート剤としてエチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウムを含有することを特徴とする請求項1に記載の木質化粧板。
  3. 前記木質板は、前記窒素化合物としてキャッチャー剤の尿素を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の木質化粧板。
  4. 前記化粧単板は、オーク、ナラ、クルミ、ウォールナット、ビーチ、およびバーチから選ばれるいずれかの木材の単板であることを特徴とする請求項1ないし3いずれか一項に記載の木質化粧板。
JP2011177237A 2011-04-20 2011-08-12 木質化粧板 Withdrawn JP2012232569A (ja)

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