JP2012227069A - 燃料電池用焼成電極の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】グリーン状態の平板状成形体を乾燥させるとき、平板状成形体の反りを抑制させ、ひいては平板状成形体を焼成して形成した多孔質の平板状の焼成電極の反りを抑制させるのに貢献できる燃料電池用焼成電極の製造方法を提供する。
【解決手段】燃料極および空気極のうちのいずれか一方の電極を形成するセラミックス粉末と、ゲル化剤とを含む流動物を準備する。次に、流動物を平板状に成形してグリーン状態の平板状成形体1を成形する。次に、グリーン状態の平板状成形体1の一方の表面1aおよび他方の表面1cの双方を空気に接触させつつ、平板状成形体1を治具3に支持させた状態で、平板状成形体1を乾燥させる。次に、乾燥させた平板状成形体1を焼成して多孔質の焼成電極を形成する。
【選択図】図1

Description

本発明は燃料電池用焼成電極の製造方法に関する。固体酸化物形燃料電池のアノードおよび/またはカソードの製造に適する。
電極支持形セルに用いるような厚膜電極(例えば厚さ0.5〜1mm)は、従来、テープ成形法で成形されている。しかし平板状をなすグリーンシートの乾燥工程における反りが大きい。
特許文献1は、300-500μmの厚みをもつ薄い複数の平板状をなす電極グリーンシートを積層することにより厚膜燃料極を作製する固体電解質燃料電池の作製方法を開示する。このものによれば、積層の際、接着用スラリーを電極グリーンシート間に塗布する。
特許文献2は、平板状をなす電極グリーンシートを積層させた積層体の積層方向の両面に電解質グリーンシートを積層し,焼成後に積層体の積層方向の中央で積層体を切断し、電極・電解質積層体を得る固体酸化物形燃料電池の製造方法を開示する。このものによれば、焼成時において積層体を押さえるための押さえ板が不要となる。
特許文献3は、平板型固体酸化物形燃料電池のセル基板の四隅に曲面Rをつけることにより、セルの反りを軽減する平板型固体酸化物形燃料電池およびその作製方法を開示する。
特許文献4は、平板状をなすセルの焼成時において、重しとしての荷重担体により荷重をセルにかけた状態でセルを焼成する固体酸化物形燃料電池の作製方法を開示する。
特許文献5は、円筒形状の複数の貫通孔をもつ空気極用の多孔質支持体をセラミックススラリーの鋳込み成形で形成し、その多孔質支持体の各貫通孔の内周壁面に円筒状の電解質膜および円筒状の状燃料層を順に積層させるセルスタックの製造方法を開示する。多孔質支持体となるセラミックススラリーは、ゲル化剤を含む水溶液にセラミックス粉末を分散させて形成されている。
特開2009−54411号公報 特開2009−245717号公報 特開2006−24371号公報 特開2009−146745号公報 特開2007−227113号公報
上記した特許文献1〜4に係る技術によれば、乾燥時における平板状電極の反りの抑制については必ずしも充分ではなかった。
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、グリーン状態の平板状成形体を乾燥させるとき、平板状成形体の反りを抑制させ、ひいては平板状成形体を焼成して形成した多孔質の平板状の焼成電極の反りを抑制させるのに貢献できる燃料電池用焼成電極の製造方法を提供することを課題とする。
(1)本発明の様相1に係る燃料電池用焼成電極の製造方法は、(i)燃料極および空気極のうちのいずれか一方の電極を形成するセラミックス粉末と、ゲル化剤とを含む流動性をもつ流動物を準備する準備工程と、(ii)流動物を平板状に成形し、互いに対向する一方の表面および他方の表面をもつグリーン状態の平板状成形体を成形する成形工程と、(iii)グリーン状態の平板状成形体の一方の表面および他方の表面の双方を空気に接触させつつ、平板状成形体を治具により支持させた状態で、平板状成形体を乾燥させる乾燥工程と、(iv)乾燥させた平板状成形体を焼成して多孔質の焼成電極を形成する焼成工程とを順に実施する。グリーン状態とは焼成前の状態をいう。
ゲル化剤は三次元網目構造を形成し易いため、グリーン状態の平板状成形体にゲル化剤が含まれていると、グリーン状態の平板状成形体の保形性を高めることができる。よって焼成によりゲル化剤が蒸散して消失すれば、三次元網目構造の細孔を形成し易く、アノード流体やカソード流体の透過性を高めることができる。
乾燥工程において、グリーン状態の平板状成形体の一方の表面および他方の表面の双方を空気に接触させつつ、平板状成形体を治具により支持された状態で、平板状成形体を乾燥させる。グリーン状態の平板状成形体の一方の表面および他方の表面の双方から乾燥できるため、一方の表面および他方の表面において乾燥のばらつきが低減される。このため乾燥時におけるグリーン状態の平板状成形体の反りが抑制される。従って、焼成工程において、乾燥させた平板状成形体を焼成して多孔質の焼成電極を形成するとき、焼成電極の反りも抑制される。
(2)本発明の様相2に係る燃料電池用焼成電極の製造方法によれば、上記様相において、治具は多数の貫通孔を有する多孔部材である。乾燥工程において、グリーン状態の平板状成形体の一方の表面および他方の表面の双方を空気に接触させつつ、平板状成形体を治具(多数の貫通孔を有する多孔部材)に支持させた状態で、平板状成形体を乾燥させる。このため、グリーン状態の平板状成形体の一方の表面および他方の表面の双方から乾燥できるため、一方の表面および他方の表面において乾燥のばらつきが低減される。この結果、前述したように、乾燥時におけるグリーン状態の平板状成形体の反りが抑制される。従って、焼成工程において、乾燥させた平板状成形体を焼成して多孔質の焼成電極を形成するとき、焼成電極の反りも抑制される。多孔部材としては、メッシュ部材、不織布、繊維布、多孔質焼結体が例示される。多孔部材の材質としては、金属、樹脂、セラミックス、カーボンが例示される。多孔質焼結体としては金属焼結体、発泡金属、セラミックス焼結体、発泡セラミックスが例示される。多孔部材がセラミックスの場合には、多孔部材が耐熱性をもつため、多孔部材を焼成工程でもそのまま使用できる。
(3)本発明の様相3に係る燃料電池用焼成電極の製造方法によれば、上記様相において、ゲル化剤は、寒天、アガロース、カラギーナン、キサンタンガム、ゼラチンから選ばれる少なくとも1種である。ゲル化剤と水との混合比率を変更させれば、グリーン状態の平板状成形体の固さを調整できる。混合比率はグリーン状態の平板状成形体の固さに影響を与える。例えば、水100グラムに対してゲル化剤は0.5〜50グラムが挙げられ、更に1〜30グラム、2〜20グラムが挙げられる。但し、セラミックス粉末の配合量としては、水100グラムに対してセラミックス粉末は5〜400グラムの添加量が例示され、10〜300グラムの添加量としても良い。
(4)本発明の様相4に係る燃料電池用焼成電極の製造方法によれば、上記様相において、乾燥工程と焼成工程との間に、乾燥した平板状成形体の一方の表面および他方の表面のうちのいずれか一方に、電解質膜を積層させた積層体を形成する工程を実施し、焼成工程は、積層体を共焼成することにより、多孔質の焼成電極に焼成電解質膜を一体的に形成させる。
本発明によれば、グリーン状態の平板状成形体を乾燥させるとき、平板状成形体の反りを抑制させ、ひいては平板状成形体を焼成して形成した多孔質の平板状の焼成電極の反りを抑制させるのに貢献できる燃料電池用焼成電極の製造方法を提供することができる。従って、グリーン状態の平板状成形体を焼成したときにおいても、焼成電極の反りを抑制できる。
実施形態1に係り、焼成電極の製造過程を示す図である。 実施形態2に係り、グリーン状態の平板状成形体を治具に支持させつつ乾燥させている状態を示す図である。 実施形態3に係り、グリーン状態の平板状成形体を治具に支持させつつ乾燥させている状態を示す図である。 実施例に係り、グリーン状態の平板状成形体に電解質膜を積層させて一体に焼成させる製造過程を示す図である。 発電試験の結果(電流密度と出力電力密度との特性)を示すグラフである。 発電試験の結果(電流密度と出力電圧との特性)を示すグラフである。 焼成電極(アノード)付近の構造を示す電子顕微鏡写真である。 焼成電極(アノード)付近の構造を拡大して示す電子顕微鏡写真である。
本発明は、電極支持形固体酸化物形燃料電池の作製に貢献できる。厚膜電極支持体作製において、結合剤としてゲル化剤を使用する。ゲル化剤は、寒天、アガロース、カラギーナン、キサンタンガム、ゼラチンから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。ゲル化剤として寒天を使用する場合には、従来の有機バインダーを用いたテープ成形法と比較して、単位面積あたり(例えば1cm2)の材料コストを半減させることができる。電極支持形の固体酸化物形の燃料電池(SOFC)に用いられる電極の多くは、従来、有機バインダーを用いたテープ成形法で作製されることが多い。しかし、厚膜になるほど乾燥および焼成時に反りが生じ易い。これがセルの欠陥の原因となることが多い。有機バインダーを含むグリーン状態の平板状成形体をキャリアフィルム上に載せた状態で乾燥させる場合には、グリーン状態の平板状成形体のうち、テープと反対側の表面からのみ乾燥が進行するものの、テープと接触している側の表面からの乾燥が制限される。このため、乾燥過程において、グリーン状態の平板状成形体のうちテープと接触している表面側と、テープと反対側の開放側の表面とで粗密差が出来易い。このため、グリーン状態の平板状成形体は、乾燥時に、開放側へ引っ張られる形で反りを発生させることが多い。特に、グリーン状態の平板状成形体の厚みが厚くなるほど、この傾向は強くなる。平板状成形体の厚みとしては、0.5〜2mm、0.5〜1mmが例示できる。また、グリーン状態の平板状成形体をテープから取り外し、平板状成形体の両面側から乾燥させる方法が考えられる。しかしこの場合には、平板状成形体に配合されている有機バインダーは、乾燥しないと、平板状成形体の形状が保持できないためテープを取り外せない。
この点について本発明によれば、グリーン状態の平板状成形体に含まれる結合剤としてゲル化剤(例えば寒天)を用いることで、グリーン状態の平板状成形体の固化は、乾燥よりも先に進行され易い。このことから、グリーン状態の平板状成形体が湿潤状態であっても、グリーン状態の平板状成形体の保形性が良好に得られる。従って、グリーン状態の平板状成形体を成形型の成形キャビティから容易に型抜きすることが可能となる。その後の乾燥工程で、グリーン状態の平板状成形体の一方の表面および他方の表面の双方を空気に接触させつつ、平板状成形体を治具により支持された状態で、平板状成形体を乾燥させることができる。この結果、グリーン状態の平板状成形体の一方の表面および他方の表面の双方について、乾燥のばらつきを抑制または解消できる。これにより、反りが抑えられたグリーン状態の平板状成形体を得ることができ、信頼性、歩留まり向上および生産性の向上が可能となる。寒天は、食物繊維(アガロースやアガロペクチン等の多糖類)を主要成分としている。寒天は一般的にはテングサ、オゴノリ等の海藻から形成される。流動物を形成させる寒天としては、粉末状の寒天、フレーク状の寒天、固形寒天、角寒天、糸寒天が例示される。
流動物の組成比としては、電極に要請される気孔率、気孔サイズ、ゲル化剤の種類、セラミックス粉の種類等によっても相違するものの、質量比で、水:ゲル化剤:セラミックス粉=100:(1〜30):(100〜200)にできる。水:ゲル化剤:セラミックス粉=100:(1.2〜10):(100〜180)にできる。また、水:ゲル化剤:セラミックス粉=100:(1.2〜5):(110〜160)にできる。但し、これに限定されるものではない。ゲル化剤の比率を増加すれば、グリーン状態の平板状成形体1の保形性が向上する。ゲル化剤の比率を過剰に減少させれば、グリーン状態の平板状成形体1の保形性が低下する。セラミックス粉の比率を増加すれば、焼結体の緻密性が向上する。セラミックス粉の比率を減少すれば、強度が低く割れやすくなる。
好ましくは、乾燥工程を実施した後、乾燥した平板状成形体の一方の表面および他方の表面のうちのいずれか一方に、電解質膜を積層させた積層体を形成する工程を実施できる。この場合、焼成工程は、積層体を共焼成することにより、多孔質の焼成電極に焼成電解質膜を一体的に形成させることができる。例えば、電解質膜となるセラミックススラリーを、乾燥した平板状成形体の一方の表面および他方の表面のうちのいずれか一方に、スピンコートにより積層させて積層体を形成することができる。そして、この積層体を焼成温度領域で焼成することで、重石荷重を平板状成形体に与えることなく、反りが抑えられた焼成電極を提供することができる。
(実施形態1)
図1は実施形態1の概念を示す。準備工程では、燃料極(アノード)となる電極を形成するセラミックス粉と、ゲル化剤として寒天を含む流動性をもつスラリー状の流動物を準備する。流動物の組成比としては、ゲル化剤、セラミックス粉によっても相違するものの、質量比で、水:ゲル化剤:セラミックス粉=100:(1〜20):(100〜200)=100:(1.2〜10):(100〜180)にできる。但し、これに限定されるものではない。ゲル化剤としては、寒天、アガロース、カラギーナン、キサンタンガム、ゼラチンから選ばれる少なくとも1種を採用する。
図1の(A)に示すように、流動物を平坦な設置面2aをもつ設置部材2(例えばフイルム、プレート等)の上に、平板状に成形してグリーン状態の平板状成形体1を成形する。この場合、スラリーの保形性を考慮すると、フィルムやプレート上にシート状に成形し、スラリー温度が下がることで寒天がゲル化し、スラリーが保形されるまで放置することが好ましい。成形方法は、アプリケーターやドクターブレードが好ましい。ただし、スラリーが冷えて固まらないように治具などを加熱しておくことが好ましい。その後、グリーン状態の平板状成形体1を設置部材2から外す。
乾燥工程では、グリーン状態の平板状成形体1の他方の表面1cを治具3に載せる。図1の(B)に示すように、治具3は、多数のメッシュ目30を有する網部材であるメッシュ部材(多孔部材)で形成されている。この場合、グリーン状態の平板状成形体1の他方の表面1cはメッシュ目30を介して空気に露出されており、空気に接触している。グリーン状態の平板状成形体1のうちの一方の表面1aも空気に接触している。この状態で、常温領域において所定時間放置させて平板状成形体1を乾燥させる。この結果、グリーン状態の平板状成形体1の一方の表面1aおよび他方の表面1cの双方について、乾燥のばらつきを抑制または解消できる。これにより、乾燥時における反りが抑えられたグリーン状態の平板状成形体1を得ることができ、信頼性、歩留まり向上および生産性の向上が可能となる。乾燥時間としては、乾燥温度によっても異なるが、例えば1〜48時間の範囲が挙げられる。メッシュ部材を構成する線材3xの断面形状としては、図1(B)の(i)に示すように円形状でも良い。この場合、グリーン状態の平板状成形体1の設置性を確保できる。図1(B)の(ii)に示すように縦長の円形状でも良い。この場合、メッシュ部材の剛性を高めるのに有利である。図1(B)の(iii)に示すように長辺が水平方向に延びる共に短辺が高さ方向に沿った長方形形状でも良い。この場合、グリーン状態の平板状成形体1との接触性を高めるのに有利である。
その後、メッシュから平板状成形体1を外した後、図1の(C)に示すように、乾燥させた平板状成形体1を多孔質なアルミナ板の上に置き、焼成炉5により焼成雰囲気(一般的には大気雰囲気)において焼成温度領域(例えば1300〜1400℃)に加熱して焼成し、多孔質の焼成電極4を形成する。乾燥時における反りが抑えられているため、焼成時においても反りが抑えられている。図1の(D)に示すように、乾燥させた平板状成形体1に電解質膜を載せ、その状態で共焼成させることにより、焼成電解質膜6を焼成電極4に一体化させた焼成積層体7を形成させても良い。焼成電極4のうちメッシュ部材に接触していた表面に焼成電解質膜6を形成しても良い。あるいは、焼成電極4のうちメッシュ部材に接触していなかった表面に焼成電解質膜6を形成しても良い。メッシュ部材のメッシュ径(目開き)としては、平板状成形体1と空気との接触性を考慮すると、0.1〜10mm、さらに望ましくは1〜10mm、2〜8mmが好ましい。
(実施形態2)
図2は実施形態2を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図1の(A)(C)(D)を準用する。本実施形態では、図2に示すように、乾燥工程では、グリーン状態の平板状成形体1の他方の表面1cを治具3Bに載せる。治具3Bは、多数の孔32を有する多孔部材(例えばパンチングメタル等)で形成されている。この場合、グリーン状態の平板状成形体1の他方の表面1cは多数の孔32を介して空気に露出されており、空気に接触している。一方の表面1aも空気に接触している。この状態で、所定時間放置させて平板状成形体1を乾燥させる。この結果、グリーン状態の平板状成形体1の一方の表面1aおよび他方の表面1cの双方について、乾燥のばらつきを抑制または解消できる。これにより、乾燥時における反りが抑えられたグリーン状態の平板状成形体1を得ることができ、信頼性、歩留まり向上および生産性の向上が可能となる。乾燥させた平板状成形体1を焼成温度領域に加熱して焼成し、多孔質の焼成電極4を形成する。乾燥時における反りが抑えられているため、焼成時においても反りが抑えられている。焼成は、乾燥させた平板状成形体1のみを乾燥させても良いし、あるいは、電解質膜を載せた状態で共焼成させても良い。多孔部材(パンチングメタル等)においては、孔32が多数形成されることが好ましい。多孔部材(パンチングメタル等)の孔32の内径としては、平板状成形体1と空気との接触性を考慮すると、0.1〜10mm、さらに望ましくは1〜10mm、2〜8mmが例示される。但しこれに限定されるものではない。
(実施形態3)
図3は実施形態3を示す。本実施形態は実施形態1,2と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図1の(A)(C)(D)を準用する。本実施形態では、図3に示すように、乾燥工程では、グリーン状態の平板状成形体1の他方の表面1cを治具3Cに載せる。治具3Cは、グリーン状態の平板状成形体1の両端部1e,1fを載せて両持ち支持する構造とされている。この場合、グリーン状態の平板状成形体1の他方の表面1cは空気に露出されており、空気に接触している。一方の表面1aも空気に接触している。この状態で、平板状成形体1を乾燥させる。平板状成形体1の端部1e,1f同士の間隔距離Lがあまり長くないとき、あるいは、グリーン状態の平板状成形体1の固さがあるときに有効である。焼成は、乾燥させた平板状成形体1のみを乾燥させても良いし、あるいは、電解質膜を載せた状態で共焼成させても良い。なお、間隔距離Lがあまり長いときには、グリーン状態の平板状成形体1の中間部位を中間支持体3Eにより補助的に支持しても良い。
(実施形態4)
本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図1を準用する。乾燥工程では、グリーン状態の平板状成形体1の他方の表面1cを治具3に載せる。この状態で、常温領域において所定時間放置させて平板状成形体1を乾燥させる。その後、乾燥工程の途中において、グリーン状態の平板状成形体1の表裏を反転させ、一方の表面1aを治具3に載せる。このようにすれば、グリーン状態の平板状成形体1の一方の表面1aおよび他方の表面1cの双方について、乾燥のばらつきを更に抑制または解消できる。実施形態2,3についても同様に乾燥工程の途中においてグリーン状態の平板状成形体1の表裏を反転させることができる。
(実施形態5)
本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図1を準用する。乾燥工程では、グリーン状態の平板状成形体1の他方の表面1cを治具3に載せる。更に一方の表面1aにも、同様のメッシュ部材で形成された治具を載せることにしても良い。この場合、平板状成形体1の一方の表面1aと,他方の表面1cとについて乾燥条件を同じにできる。
実施例1について説明する。本実施例は、電極支持形の固体酸化物形燃料電池の製造に関する。まず、所定の温度(90℃)以上に加熱した水に、寒天(ゲル化剤)と、燃料極(アノード)用のセラミックス粉(NiO-YSZ原料,粉末粒径:0.1〜2マイクロメートル)を原料として加えて混合物を形成した。混合物を攪拌機で混合して燃料極用のスラリー(流動物)を調製した。このスラリーを、キャリアフィルム(設置部材)上にシート状にアプリケーターにより成形し、スラリー温度が低下することで寒天がゲル化してスラリーが保形されるまで放置し、厚さ約1mmの板状の保形部材を形成した。そして、保形部材を直径36mmにベルトポンチで打ち抜いてグリーン状態の平板状成形体1を形成した。このグリーン状態の平板状成形体1を、多数のメッシュ目をもつ水平状の乾燥用メッシュ部材(100メッシュ,治具)上に載せた。その状態でグリーン状態の平板状成形体1を、一昼夜放置させることにより、室温で乾燥させた。乾燥時には、グリーン状態の平板状成形体1の他方の表面1cは空気に露出されており、空気に接触している。一方の表面1aも空気に接触している(図1の(B)参照)。
実施例1では、スラリーを形成するにあたり、水:寒天:燃料極用のセラミックス粉の組成比を表1に示すように変更させた。表1は、調製したスラリーの組成比(水:寒天:セラミックス粉との質量比)と、水/セラミックス粉の比率(質量比)、寒天/セラミックス粉の比率(質量比)、乾燥前のグリーン状態の平板状成形体1の強度評価(ハンドリング性の評価)、乾燥後の平板状成形体1の反り評価、乾燥収縮率(%)、焼成収縮率(%)をそれぞれ示す。乾燥収縮率(%)は乾燥前後の直径を測定して、計算式(乾燥前直径−乾燥後直径)/乾燥前直径×100によって求めた。焼成収縮率(%)も同様とした。水は蒸留水またはイオン交換水を用いた。
表1に示すように、寒天の比率があまり高くない領域では、即ち、寒天/セラミックス粉の比率(質量比)が0.009以下の領域では、乾燥前の平板状成形体1の強度の評価は◎ではなく○であり、ハンドリング性は中程度であった。しかし、寒天の比率が高い領域では、即ち、寒天/粉の比率(質量比)が0.013、0.014、0.017(0.013以上)の領域では、乾燥前の平板状成形体1の保形性はかなり高く、平板状成形体1は高い強度を有しており、パンチング操作や乾燥用ネットへの移動といったハンドリング操作を容易になし得た。また、水の比率が高めの領域、即ち、水/セラミックス粉(質量比)が0.83では、乾燥後の板状成形体にやや反りが僅かに認められたが、実用的には良品の範囲であった。水の比率を低下させ、水/セラミックス粉(質量比)が0.71、0.68(0.71以下の領域)にすることで、乾燥後であっても、反りのない平板状成形体1が得られることがわかった。
上記した実施例1で得られた乾燥後の板状成形体1(φ30mm×t 1 mm)の片面に、8mol%Y2O3-92mol%ZrO2 (8YSZ)のYSZコート液(溶媒エタノール;YSZ濃度63質量%)、つまり電解質スラリーを用いて、スピンコートにより電解質薄膜を形成させた積層体を形成した。具体的には、図4の(A)に示すように、回転テーブル90のテーブル面91に、乾燥後のアノードとなる板状成形体1を載せる。その状態で、回転テーブル90の回転中心92の回りで回転テーブル90を板状成形体1と共に水平方向に沿って回転させつつ、電解質スラリーを板状成形体1に供給し、スラリーを遠心力により延設させて薄膜状の電解質膜(厚さ10μm程度)を板状成形体1に積層させて積層体を形成した。このように形成した積層体を多孔質なアルミナ板等の上に載置し、大気雰囲気において1400℃で5時間、共焼成し、焼成電極4(アノード)と焼成電解質膜6とが積層した焼成積層体7(図4(B)参照)を形成した。なお、YSZは、イットリアで安定化させたジルコニアである。
次に、金属酸化物(La0.8Sr0.2MnO3)とポリエチレングリコール(#400)を金属酸化物3の質量に対してポリエチレングリコールを1の質量割合で混合したカソード用のペーストを用い、スクリーン印刷により、焼成積層体7の焼成電解質膜6(YSZ膜)上に直径16mmのカソード(空気極)を形成させ、大気雰囲気において1100℃で2時間焼成させた。これにより固体酸化物形燃料電池(SOFC)の単セル9を作製した(図4(C)参照)。単セル9は、焼成電極4(アノード)と焼成電解質膜6と焼成電極8(カソード)とが積層して形成されている(図4(C))。
得られた単セル9について700℃における発電試験を実施した。発電試験では、セル温度を700℃、燃料(アノードガス)として、体積%で3%HOを含む水素ガスを用いた。燃料の供給速度は200ml/minと、50ml/minとした。カソードガスとして空気を用いた。試験結果を図5および図6に示す。
開回路電圧(OCV,電流密度=0)は1.029 Vであり(図5参照)、理論値(1.080V)に対して95%と高い値が得られた。これは、三次元網目構造を示す寒天を焼結時において消失させた焼成電極4(アノード)が多孔質であり、アノードガス(水素ガス)の透過性が高いこと、焼成電極4(アノード)反りが抑えられていることを示唆するものである。最大出力密度は0.142 W/cm2であり、高かった(図6参照)。
発電試験後の単セルの断面走査型電子顕微鏡写真を図7および図8に示す。約10μmの緻密な焼成電解質膜(YSZ膜)が、Ni-YSZからなる焼成燃料極(アノード)の凹凸に沿って連続的に形成されているのがわかる。焼成燃料極(アノード)の内部には、多くの不規則な形状およびサイズの細孔が観察された。焼成燃料極(アノード)の作製において、造孔材は使用されていないことから、結合剤として用いた寒天が造孔材的機能を示し、焼成燃料極(アノード)に適した細孔の形成に寄与したと考えられる。
(その他)本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。実施例ではゲル化剤として寒天が用いられているが、アガロース、カラギーナン、キサンタンガム、ゼラチンから選ばれる少なくとも1種であれば良い。平板状成形体の厚みが薄い場合には、場合によっては、複数の平板状成形体を積層させることもできる。
多孔部材の材質としては、金属、樹脂、セラミックス、カーボンが例示される。多孔部材としては、メッシュ部材に限らず、不織布、繊維布、多孔質焼結体とすることができる。多孔質焼結体としては、金属焼結体、発泡金属、セラミックス焼結体、発泡セラミックスとすることができる。多孔部材がセラミックスの場合には、多孔部材が耐熱性をもつため、乾燥工程などにおいて使用された多孔部材を焼成工程でもそのまま使用できる。
1は平板状成形体、1aは一方の表面、1cは他方の表面、2は設置部材、3は治具、4は焼成電極(アノード)、6は焼成電解質膜、8は焼成電極(カソード)、9は単セルを示す。

Claims (4)

  1. 燃料極および空気極のうちのいずれか一方の電極を形成するセラミックス粉末と、ゲル化剤とを含む流動性をもつ流動物を準備する準備工程と、
    前記流動物を平板状に成形し、互いに対向する一方の表面および他方の表面をもつグリーン状態の平板状成形体を成形する成形工程と、
    グリーン状態の前記平板状成形体の前記一方の表面および前記他方の表面の双方を空気に接触させつつ、前記平板状成形体を治具により支持させた状態で、前記平板状成形体を乾燥させる乾燥工程と、
    乾燥させた前記平板状成形体を焼成して多孔質の焼成電極を形成する焼成工程とを順に実施する燃料電池用焼成電極の製造方法。
  2. 請求項1において、前記治具は、多数の貫通孔を有する多孔部材である燃料電池用焼成電極の製造方法。
  3. 請求項1または2において、前記ゲル化剤は、寒天、アガロース、カラギーナン、キサンタンガム、ゼラチンから選ばれる少なくとも1種である燃料電池用焼成電極の製造方法。
  4. 請求項1〜3のうちのいずれか一項において、前記乾燥工程と前記焼成工程との間に、乾燥した前記平板状成形体の前記一方の表面および前記他方の表面のうちのいずれか一方に、電解質膜を積層させた積層体を形成する工程を実施し、
    前記焼成工程は、前記積層体を共焼成することにより、多孔質の前記焼成電極に焼成電解質膜を一体的に形成させる燃料電池用焼成電極の製造方法。
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