以下、本発明の光導波路、光電気混載基板および電子機器について添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
<光導波路および光導波路モジュール>
≪第1実施形態≫
まず、本発明の光導波路の第1実施形態およびこれを含む光導波路モジュール(本発明の光電気混載基板)について説明する。
図1は、本発明の光導波路の第1実施形態およびこれを含む光導波路モジュールを示す(一部透過して示す)分解斜視図、図2は、図1のY−Y線断面図、図3、4は、それぞれ図2の部分拡大図である。なお、以下の説明では、図1〜4の上側を「上」、下側を「下」という。また、図2〜4では、図が煩雑になるのを避けるため、支持フィルムおよびカバーフィルムの図示を省略している。また、各図では、光導波路の上下方向を強調して描いている。
図1に示す光導波路1は、一方の端部から他方の端部に信号光を伝送する光配線として機能するものであり、ここでは、一例として図1に示す光入射端部1Aから信号光を入射し、光出射端部1Bから信号光を出射する場合について説明する。
図1に示す光導波路1は、下側からクラッド層111、コア層131、クラッド層112、コア層132、およびクラッド層113をこの順で積層してなる積層体12を有しており、細長い帯状をなしている。
コア層131、132中には、図1、2に示すように、それぞれ、光入射端部1Aから光出射端部1Bにかけて並列して延在する2つのコア部14が形成されており、光導波路1全体には4つのコア部14が形成されている。コア層131、132のうち、コア部14以外の部分は側面クラッド部15である。なお、一部の図に示す各コア部14にはドットを付している。
このような光導波路1のうち、コア層131の光入射端部1Aにはミラー(光反射面)1612が、光出射端部1Bにはミラー1614が、それぞれコア部14ごとに設けられている。また、コア層132の光入射端部1Aにはミラー1611が、光出射端部1Bにはミラー1613が、それぞれコア部14ごとに設けられている。これらのミラー1611、1612、1613、1614は、図2の左右方向に延在する光導波路1の光路を、光導波路1の外部へと変換するものである。具体的には、図2に示すミラー1611、1612は、それぞれ光入射端部1Aにおいて光導波路1の光路が発光素子71、72の発光部711、721と光学的に接続されるよう、光路を上方に90°変換する。同様に、ミラー1613、1614は、光出射端部1Bにおいて光導波路1の光路が受光素子73、74の受光部731、741と光学的に接続されるよう、光路を上方に90°変換する。このようなミラー1611、1612、1613、1614を介することにより、発光素子71、72から出射した信号光を光導波路1のコア部14に入射させ、また、コア部14を伝搬してきた信号光を受光素子73、74に入射させることができる。その結果、発光素子71、72と受光素子73、74との間で光通信が可能になる。
ここで、各コア部14は、図2に示すように、ミラー1612の近傍において途中で途切れている。この途切れた部分は、コア部14よりも屈折率の低い材料で構成され、光路を横切るように設けられた薄い層状をなしている。この部分を低屈折率層145という。また、コア部14は、ミラー1614の近傍においても途中で途切れており、途切れた部分が低屈折率層145になっている。
このような低屈折率層145は、コア部14との間で信号光を反射することにより、本来であれば損失になっていたはずの信号光を光路に戻すよう作用する。このため、低屈折率層145を設けることにより、例えば発光素子72から出射してミラー1612へ入射する信号光の入射効率を高めるとともに、ミラー1614から出射して受光素子74へ入射する信号光の入射効率を高めることができる。すなわち、光導波路1と受発光素子との光結合効率を高めることができる。また、光結合効率が向上を多少犠牲にする場合、その分、相互のアライメント精度やミラー1612、1614の面精度の許容幅を緩和することができる。このため、ミラー1612、1614の形成が容易になり、光導波路1は低コストで製造可能なものとなる。
以下、光導波路1および光導波路モジュール10の各部について詳述する。
(コア層)
コア層131、132には、前述したように、それぞれ2つのコア部14と側面クラッド部15とが形成されている。
図2に示す光導波路1では、例えばミラー1611を介して入射された信号光を、コア部14とクラッド部(各クラッド層112、113および各側面クラッド部15)との界面で全反射させ、他方の端部に伝搬させることができる。
コア部14とクラッド部との界面で全反射を生じさせるためには、界面に屈折率差が存在する必要がある。コア部14の屈折率は、クラッド部の屈折率より大きければよく、その差は特に限定されないものの、クラッド部の屈折率の0.5%以上であるのが好ましく、0.8%以上であるのがより好ましい。一方、上限値は、特に設定されなくてもよいが、好ましくは5.5%程度とされる。屈折率の差が前記下限値未満であると光を伝達する効果が低下する場合があり、前記上限値を超えても、光の伝送効率のそれ以上の増大は期待できない。
なお、前記屈折率差とは、コア部14の屈折率をA、クラッド部の屈折率をBとしたとき、次式で表わされる。
屈折率差(%)=|A/B−1|×100
また、図1に示す構成では、コア部14は平面視で直線状に形成されているが、途中で湾曲、分岐等していてもよく、その形状は任意である。
また、コア部14の横断面形状は、正方形または矩形(長方形)のような四角形であるのが一般的であるが、特に限定されず、真円、楕円のような円形、菱形、三角形、五角形のような多角形であってもよい。
コア部14の幅および高さは、特に限定されないが、それぞれ、1〜200μm程度であるのが好ましく、5〜100μm程度であるのがより好ましく、20〜70μm程度であるのがさらに好ましい。
コア層131、132の構成材料(主材料)としては、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリシラン、ポリシラザン、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリウレタン、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂のような各種樹脂材料の他、石英ガラス、ホウケイ酸ガラスのようなガラス材料等が挙げられる。なお、樹脂材料は、異なる組成のものを組み合わせた複合材料であってもよく、未重合のモノマーを含んでいてもよい。コア層131、132では、主材料は同一であるものの、材料の分子構造、添加物の濃度等が相違することにより、コア部14と側面クラッド部15との間の屈折率差が発現していてもよい。
また、これらの中でも特にノルボルネン系樹脂が好ましい。ノルボルネン系樹脂は、例えば、開環メタセシス重合(ROMP)、ROMPと水素化反応との組み合わせ、ラジカルまたはカチオンによる重合、カチオン性パラジウム重合開始剤を用いた重合、これ以外の重合開始剤(例えば、ニッケルや他の遷移金属の重合開始剤)を用いた重合等、公知のすべての重合方法で得ることができる。
(クラッド層)
クラッド層111、112、113は、コア層131、132の上部および下部に位置している。
クラッド層111、112、113の平均厚さは、コア層131、132の平均厚さ(各コア部14の平均高さ)の0.1〜1.5倍程度であるのが好ましく、0.2〜1.25倍程度であるのがより好ましく、具体的には、クラッド層111、112、113の平均厚さは、特に限定されないが、それぞれ、通常、1〜200μm程度であるのが好ましく、3〜100μm程度であるのがより好ましく、5〜60μm程度であるのがさらに好ましい。これにより、光導波路1が必要以上に大型化(厚膜化)するのを防止しつつ、クラッド層としての機能が好適に発揮される。
また、各クラッド層111、112、113の構成材料としては、例えば、前述したコア層131、132の構成材料と同様の材料を用いることができるが、特にノルボルネン系樹脂が好ましい。
また、コア層131、132の構成材料およびクラッド層111、112、113の構成材料を選択する場合、両者の間の屈折率差を考慮して材料を選択すればよい。具体的には、コア層131とクラッド層111、112との境界において光を確実に全反射させるため、コア層131の構成材料の屈折率がクラッド層111、112の屈折率に比べ十分に大きくなるように材料を選択すればよい。これにより、光導波路1の厚さ方向において十分な屈折率差が得られ、コア部14からクラッド層111、112に光が漏れ出るのを抑制することができる。
なお、光の減衰を抑制する観点からは、コア層131の構成材料とクラッド層111、112の構成材料との密着性(親和性)が高いことも重要である。
(支持フィルム)
光導波路1の下面には、必要に応じて、図1に示すような支持フィルム2を積層するようにしてもよい。
支持フィルム2は、光導波路1の下面を支持して、保護・補強する。これにより、光導波路1の信頼性および機械的特性を高めることができる。
このような支持フィルム2の構成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミド等の各種樹脂材料の他、銅、アルミニウム、銀等の金属材料が挙げられる。なお、金属材料の場合は、支持フィルム2として金属箔が用いられる。
また、支持フィルム2の平均厚さは、特に限定されないが、5〜200μm程度であるのが好ましく、10〜100μm程度であるのがより好ましい。これにより、支持フィルム2は、適度な剛性を有するものとなるため、光導波路1を確実に支持するとともに、光導波路1の柔軟性を阻害し難くなる。
なお、支持フィルム2と光導波路1との間は接着または接合されているが、その方法としては、熱圧着、接着剤または粘着剤による接着等が挙げられる。
このうち、接着層としては、例えば、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤の他、各種ホットメルト接着剤(ポリエステル系、変性オレフィン系)等が挙げられる。また、特に耐熱性の高いものとして、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリイミドアミドエーテル、ポリエステルイミド、ポリイミドエーテル等の熱可塑性ポリイミド接着剤が好ましく用いられる。このような材料で構成された接着層は、比較的柔軟性に富んでいるため、光導波路1の形状が変化したとしても、その変化に自在に追従することができる。その結果、形状変化に伴う剥離を確実に防止し得るものとなる。
このような接着層の平均厚さは、特に限定されないが、1〜100μm程度であるのが好ましく、5〜60μm程度であるのがより好ましい。
(カバーフィルム)
一方、光導波路1の上面には、必要に応じて、図1に示すようなカバーフィルム3を積層するようにしてもよい。
カバーフィルム3は、光導波路1を保護するとともに、光導波路1を上方から支持するものである。これにより、汚れや傷などから光導波路1が保護され、光導波路1の信頼性および機械的特性を高めることができる。
このようなカバーフィルム3の構成材料としては、支持フィルム2の構成材料と同様であり、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミド等の各種樹脂材料の他、銅、アルミニウム、銀等の金属材料が挙げられる。なお、金属材料の場合は、カバーフィルム3として金属箔が用いられる。また、カバーフィルム3を貫通するように光路が設定された場合、カバーフィルム3の構成材料は実質的に透明であるのが好ましい。
また、カバーフィルム3の平均厚さは、特に限定されないが、3〜50μm程度であるのが好ましく、5〜30μm程度であるのがより好ましい。カバーフィルム3の厚さを前記範囲内とすることにより、カバーフィルム3は光通信において十分な光透過率を有するとともに、光導波路1を確実に保護するために十分な剛性を有するものとなる。
なお、カバーフィルム3と光導波路1との間は接着または接合されているが、その方法としては、熱圧着、接着剤または粘着剤による接着等が挙げられる。このうち、接着剤としては前述したようなものを用いることができる。
(ミラー)
図2に示すミラー(光反射面)1611、1612、1613、1614は、それぞれ光導波路1に掘り込み加工を施し、これにより得られた凹部(空間)1601、1602、1603、1604の内壁面の一部で構成される。この内壁面の一部には、コア部14を光路に対して斜め45°に横切るよう形成された平面が含まれており、この平面がミラー1611、1612、1613、1614となる。図2に示す凹部1601、1603は、クラッド層111、コア層131、クラッド層112およびコア層132にわたって形成されている。また、凹部1602、1604は、クラッド層111およびコア層131にわたって形成されている。また、図2では省略されているが、支持フィルム2やカバーフィルム3にも施されていてもよい。なお、ミラー1611、1612、1613、1614には、必要に応じて反射膜を成膜するようにしてもよい。この反射膜としては、Au、Ag、Al等の金属膜が好ましく用いられる。
また、凹部の形状は、ミラーを含む形状であれば、特に限定されない。また、図2では、光導波路1の途中に凹部を設けているが、光導波路1の端部に設けるようにしてもよい。具体的には、光導波路1の端部を斜めに切り落として得られる切断面にミラー1611、1612、1613、1614が形成されていてもよい。なお、光導波路1の途中に凹部を設けることにより、ミラーは凹部の内側に露出することとなり、外光の侵入を防止し易いため、安定性に優れる。
なお、図2に示す凹部1601は、クラッド層113より下方に位置する各層に掘り込み加工を施してなるものである。この凹部1601の内壁面のうち、コア層132の露出面がミラー1611になっている。また、凹部1602は、クラッド層112より下方に位置する各層に掘り込み加工を施してなるものである。この凹部1602の内壁面のうち、コア層131の露出面がミラー1612になっている。
また、図2に示す凹部1603は、クラッド層113より下方に位置する各層に掘り込み加工を施してなるものである。この凹部1603の内壁面のうち、コア層132の露出面がミラー1613になっている。また、凹部1604は、クラッド層112より下方に位置する各層に掘り込み加工を施してなるものである。この凹部1604の内壁面のうち、コア層131の露出面がミラー1614になっている。
このように図2に示す光導波路1では、ミラーを形成すべき層とそれより下側の層とを含めて形成された凹部を有しているので、各層を積層した後、まとめて掘り込み加工を施すことで全てのミラーを形成することが可能な構造になっている。すなわち、図2に示す光導波路1の構造は、掘り込み加工の際に、コア部14に対する加工の基準位置を一度決めれば、その後、全てのミラーを形成し終わるまでその基準位置を利用することができるので、ミラー間の位置ズレを最小限に抑えることが可能な構造であるといえる。一方、各コア層のそれぞれに、そのコア層のみを掘り込む加工を施す場合には、各コア層に掘り込み加工を施した後、ミラー間の位置合わせをしつつ各層を積層しなければならず、ミラー間の位置ズレが生じ易いという点で不利である。
したがって、図2に示す光導波路1は、ミラー間の位置精度が高いものとなり、1つの素子中に複数の発光部や受光部を備える受発光素子に対して、高い精度で位置合わせをし、高い効率で結合させ得るものとなる。
なお、ミラーは、例えば屈曲導波路等のその他の光路変換手段で代替することもできる。
(発光素子および受光素子)
図2に示す発光素子71、72は、素子本体710、720と、その下面に設けられた発光部711、721と電極712、722とを有している。このような発光素子71、72の具体例としては、面発光レーザー(VCSEL)のような半導体レーザーや、発光ダイオード(LED)等が挙げられる。
一方、図2に示す受光素子73、74は、素子本体730、740と、その下面に設けられた受光部731、741と電極732、742とを有している。このような受光素子73、74の具体例としては、フォトダイオード等が挙げられる。
なお、発光素子71、72や受光素子73、74としては、例えば、BGA(Ball Grid Array)タイプやLGA(Land Grid Array)タイプ等のパッケージ仕様の素子が用いられる。図2には、一例として表面実装型の素子を示している。
また、光導波路1の上面には、電気配線77が設けられている。そして、発光素子71、72および受光素子73、74は、各種ハンダ、各種ろう材等からなるバンプ78により電気配線77に対して電気的かつ機械的に接続されている。
なお、光導波路1と発光素子71、72との隙間、および、光導波路1と受光素子73、74との隙間には、それぞれアンダーフィル(封止材)79が充填されている。これにより、発光素子71、72から出射した信号光が光導波路1に入射する際の入射効率や、光導波路1から出射した信号光が受光素子73、74に入射する際の入射効率を、それぞれ高めることができる。それとともに、振動、外力、異物付着等から発光素子71、72や受光素子73、74を保護することができる。
アンダーフィル79の構成材料は、透明な材料であれば特に限定されないが、例えば、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられる。
また、図2では、光導波路1の上に発光素子71、72や受光素子73、74を載置するよう図示しているが、前述したように、光導波路1と各素子との間には、カバーフィルム3が介挿されていてもよい。
(低屈折率層)
光導波路1は、前述したように、コア層131、132とクラッド層111、112、113とが交互に積層されてなる積層体12を有している。
この各コア層131、132には、それぞれ2つのコア部14が形成されており、各コア部14の光路上には、ミラー1611、1612、1613、1614が形成されている。各コア部14内の光路の中心軸を第1の光路とすると、この第1の光路は、各ミラーにより、積層体12の表面上の接続点121を経て、各受発光素子と接続されるよう変換されている。なお、各ミラーと各受発光素子とをつなぐ光路の中心軸を第2の光路とする。すなわち、本明細書では、図2において各コア部14内を左右方向に延びる光路の中心軸を第1の光路とし、第1の光路に対して直交する光路の中心軸を第2の光路とする。
ここで、ミラー1612と接続点121とを通過する第2の光路は、コア層132に形成されたコア部14中で第1の光路と交差することとなる。同様に、ミラー1614と接続点121と通過する第2の光路は、コア層132に形成されたコア部14中で第1の光路と交差する。
コア部内で2つの光路が交差する場合、従来では、交差点において信号光の交錯や損失が生じ、光通信の混信やS/N比の低下といった不具合を招いていた。このため、できるだけ交差しないように光路を配置する必要があり、光導波路の配設パターンに制約があった。しかしながら、複数のコア層が積層された光導波路では、光路を交差させることが避けられないこともあり、高密度化の妨げとなっていた。
そこで、本発明では、コア部14内において2つの光路が交差する場合、例えば第1の光路に対して第2の光路が交差する場合、第1の光路を横切るように、かつ、第2の光路に沿って延在するように低屈折率層145を配置することとした。低屈折率層145を配置したことにより、コア部14は途中で途切れることとなる。図2では、例えば発光素子72の発光部721とミラー1612とをつなぐ第2の光路に沿って、コア層132のコア部14を横切るように2つの低屈折率層145が配置されている。また、例えばミラー1614と受光素子74の受光部741とをつなぐ第2の光路に沿って、コア層132のコア部14を横切るように3つの低屈折率層145が配置されている。
これらの低屈折率層145は、前述したように、第1の光路と第2の光路との交差における信号光の交錯や損失を抑制する作用をもたらす。以下、この作用を図3、4に基づいて説明する。
図3は、図2のうち、ミラー1612周辺の部分拡大図である。図3に示す矢印L1、L2、L3は、発光素子72の発光部721から出射した信号光の光跡の一例である。
光跡L1のようにミラー1612の端部より外側に向かって発光部721から出射された信号光は、従来であればミラー1612に入射することなく損失となっていたが、低屈折率層1451(145)を設けたことにより、この信号光は図3に示すコア層132のコア部14と低屈折率層1451との界面で反射され、ミラー1612に入射し得るよう、その進路が変更される。同様に、光跡L2のように出射された信号光は、コア層132のコア部14と低屈折率層1452(145)との界面で反射され、ミラー1612に入射し得るよう、その進路が変更される。その結果、この信号光は、図3に光跡L1、L2で示すように、ミラー1612で反射され、コア部14の延在方向(図3の右側)に向かって伝搬することとなり、損失光を信号光とすることができる。
また、図3に示す低屈折率層145のうちの一部(低屈折率層1451)は、コア層132中のみでなく、コア層131中にも延在している。光跡L3は、この延在部分によって反射されることにより、ミラー1612に入射している。そして、コア部14の右側に向かって伝搬する。
なお、ミラー1612における反射の後、これらの信号光は低屈折率層1451を透過する必要があるが、ミラー1612で反射された信号光は、低屈折率層1451に対して大きな入射角で入射することになるため、ほとんど反射されることなく透過する。
同様に、コア層132のコア部14の第1の光路を伝搬する信号光は、低屈折率層1451、1452を透過する必要があるが、コア部14を伝搬する信号光は、その伝搬角が第1の光路とほぼ平行かそれに近い角度になっているので、低屈折率層1451、1452に対して大きな入射角で入射することとなり、ほとんど反射されることなく透過する。
以上のことから、第2の光路に沿って低屈折率層145を設けたことにより、第2の光路と交差する第1の光路における伝送効率を損なうことなく、第2の光路の伝送効率を高めることができる。すなわち、光導波路1と発光素子72との間の光結合効率を高めることができる。その結果、光導波路モジュール10全体のS/N比が向上し、光通信の品質を高めることができる。
また、発光素子72の発光部721とミラー1612とをつなぐ第2の光路に沿って設けられる低屈折率層1451は、ミラー1612に干渉するように設けられていてもよく、やや離れた位置に設けられていてもよいが、好ましくは、図3に示すように、ミラー1612と、コア層131のコア部14とクラッド層111との境界面と、が交わる位置(図3に示す交点M1)に設けられる。この位置は、ミラー1612の縁部にあたる位置であり、この位置に低屈折率層1451を設けることで、ミラー1612に入射できないで損失となる光量を最小限に抑え、光結合効率を最大化することができる。
なお、前記交点M1以外の位置に配置する場合であっても、低屈折率層1451を設ける位置はミラー1612の近傍であるのが好ましい。ミラー1612近傍とは、ミラー1612が設けられている範囲、および、前記交点M1から前記コア部14の厚さの50%以下の距離に相当する範囲である。低屈折率層1451がこの範囲内に位置していれば、上述したような効果が確実に得られる。また、後に説明するが、低屈折率層1451はミラー1612近傍に複数個設けられていてもよく、その場合も、各低屈折率層1451はそれぞれ前記範囲内に設けられるのが好ましい。
また、図3では、交点M1のみでなく、ミラー1612と、コア層131のコア部14とクラッド層112との境界面と、が交わる位置(図3に示す交点M2)にも低屈折率層145(1452)が設けられている。この位置も、ミラー1612の縁部にあたる位置である。すなわち、低屈折率層145は、前記交差点近傍において、第2の光路を挟むように、コア層132中の第1の光路の一端側(右側)と他端側(左側)の双方に設けられている。これにより、第2の光路は、2つの低屈折率層145で挟まれることとなり、前記交差点における信号光の交錯や損失が特に抑制される。その結果、第2の光路における伝送効率、すなわち発光素子72の発光部721とミラー1612との光結合効率を特に高めることができる。なお、2つの低屈折率層145で挟まれたコア部14の断片Fは、第1の光路に沿って信号光を伝搬するとともに、第2の光路に沿って信号光を伝搬する。すなわち、断片Fは、第2の光路に沿って伝搬する信号光をその内部に閉じ込めることで、図3の上下方向における導波路としての機能を有する。
また、低屈折率層145の延在方向は、発光素子72とミラー1612とを繋ぐ第2の光路に応じて適宜設定される。具体的には、光導波路1のコア部14の延在方向(光路)に対して80〜100°の角度をなす方向に設定されるのが好ましく、85〜95°の角度をなす方向に設定されるのがより好ましい。図3の場合、第1の光路に対するミラー1612の角度は45°であり、第2の光路は第1の光路に対して直交しているため、それに応じて、低屈折率層145の延在方向も第1の光路に対して直交する方向(第2の光路に対して平行な方向)に設定される。なお、第1の光路に対する第2の光路の角度は、上記低屈折率層145の延在方向と同様、80〜100°程度であるのが好ましいが、光結合効率の観点から90°であるのがより好ましい。第2の光路の光路長を最短にすることができるからである。また、この場合、発光素子72の載置が容易であるという利点もある。
さらには、低屈折率層145の延在方向が第1の光路に対して直交していると、光導波路1の製造時に露光プロセスを伴う場合、露光プロセスが容易になるという利点もある。これは、複数のコア層131、132に対して、それぞれ低屈折率層145を形成する際、一回の露光で形成することができるからである。
一方、図4は、図2のうち、ミラー1614周辺の部分拡大図である。図4に示す矢印L4、L5、L6は、それぞれコア層131のコア部14を伝搬し、ミラー1614で反射された後、受光素子74に入射する信号光の光跡の一例である。
コア部14を伝搬してきた信号光は、ミラー1614に入射し、反射された後、受光素子74の受光部741に向かうが、光跡L4のような角度で反射した場合、その信号光は、従来であれば受光部741に入射することなく損失となっていたが、低屈折率層1453(145)を設けたことにより、この信号光は図4に示すコア層132のコア部14と低屈折率層1453との界面で反射され、受光部741に入射し得るよう、その進路が変更される。同様に、光跡L5のような角度で反射した信号光は、コア層132のコア部14と低屈折率層1455(145)との界面で反射され、受光部741に入射するよう、その進路が変更される。その結果、損失光を信号光とすることができるようになる。
また、図4に示す低屈折率層145のうちの一部(低屈折率層1453、1454)は、コア層132中のみでなく、コア層131中にも延在している。光跡L6は、この延在部分によって反射されることにより、受光部741に入射しており、これにより受光部741に入射する光量を多くすることができる。
なお、コア部14を伝搬してきた信号光がミラー1614に入射するためには、低屈折率層1453、1454を透過する必要があるが、コア部14を伝搬してきた信号光は、その伝搬角がコア部14の光路とほぼ平行かそれに近い角度になっているので、低屈折率層1453、1454に対して大きな入射角で入射することとなり、ほとんど反射されることなく透過する。
同様に、コア層132のコア部14の第1の光路を伝搬する信号光は、低屈折率層1453、1454、1455を透過する必要があるが、ほとんど反射されることなく透過する。
以上のことから、第2の光路に沿って低屈折率層145を設けたことにより、第2の光路と交差する第1の光路における伝送効率を損なうことなく、第2の光路の伝送効率を高めることができる。すなわち、光導波路1と受光素子74との間の光結合効率を高めることができる。その結果、光導波路モジュール10全体のS/N比が向上し、光通信の品質を高めることができる。
また、ミラー1614と受光素子74の受光部741とをつなぐ第2の光路に沿って設けられる低屈折率層1453は、ミラー1614に干渉するように設けられていてもよく、やや離れた位置に設けられていてもよいが、好ましくは、図4に示すように、ミラー1614と、コア層131のコア部14とクラッド層111との境界面と、が交わる位置(図4に示す交点M3)に設けられる。この位置に設けることで、受光部741に入射できないで損失となる光量を最小限に抑えることができ、光結合効率を最大化することができる。
なお、前記交点M3以外の位置に配置する場合であっても、低屈折率層1453を設ける位置はミラー1614の近傍であるのが好ましい。ミラー1614近傍とは、ミラー1614が設けられている範囲、および、前記交点M3から前記コア部14の厚さの50%以下の距離に相当する範囲である。低屈折率層1453がこの範囲内に位置していれば、上述したような効果が確実に得られる。
また、図4では、交点M3のみでなく、ミラー1614と、コア層131のコア部14とクラッド層112との境界面と、が交わる位置(図4に示す交点M4)にも低屈折率層145(1455)が設けられている。すなわち、低屈折率層145は、第2の光路を挟んで、コア層132中の第1の光路の一端側(右側)と他端側(左側)の双方に設けられている。これにより、第2の光路は、2つの低屈折率層145で挟まれることとなり、前記交差点における信号光の交錯や損失が特に抑制される。その結果、第2の光路における伝送効率、すなわちミラー1614と受光素子74の受光部741との光結合効率を特に高めることができる。
さらに、図4では、ミラー1614と干渉する位置にも低屈折率層145(1454)が設けられている。これにより、ミラー1614と受光素子74の受光部741とをつなぐ第2の光路近傍には、3つの低屈折率層145が設けられている。このように低屈折率層145の数を増やすことで、損失光を信号光に変換する確率が高くなるため、その分、光結合効率を高めることができる。
低屈折率層145の数は、特に限定されず、4つ以上であってもよい。これは、光出射側のみならず、光入射側でも同様である。
以上の説明では、ミラー1612、1614近傍について特に説明したが、低屈折率層145は、ミラー1612、1614近傍のみでなく、ミラー1611、1613近傍にも設けられている。これにより、発光素子71とミラー1611とをつなぐ第2の光路や、ミラー1613と受光素子73とをつなぐ第2の光路においても、光結合効率を高めることができる。なお、第2の光路は、ミラーと受発光素子とをつなぐ光路に限られるものではない。例えば、コア部を挟んで両側に設けられた発光素子と受光素子とをつなぐ光路も、上記第2の光路になり得る。このような場合であっても、コア部を避けることなく第2の光路を自由に設定することができるので、光導波路モジュールの設計自由度を高めることができる。
上述したような低屈折率層145の厚さは、コア部14と低屈折率層145との界面で光反射を生じ得る厚さであれば特に限定されないが、好ましくは0.5〜50μm程度、より好ましくは1〜20μm程度とされる。低屈折率層145の厚さを前記範囲内とすることにより、前記界面で確実に光反射させるとともに、低屈折率層145を信号光が透過する際の損失を抑えることができる。
なお、低屈折率層145の屈折率は、コア部14の屈折率より低ければ特に限定されないが、側面クラッド部15の屈折率と同等であるのが好ましい。これにより、コア層131、132中にコア部14や側面クラッド部15を形成する際、余分な工程を増やすことなく低屈折率層145を形成することができる。
また、図2に示すコア層131およびコア層132には、同様のパターンが形成されている。このため、各コア層を形成する際の露光プロセスは一回で済み、製造工程の簡略化が可能である。
また、コア部14の屈折率と低屈折率層145の屈折率との大小関係は、前述したコア部の屈折率とクラッド部の屈折率との大小関係と同様に設定される。
(漸増部)
図5は、図1に示す光導波路1を一部(カバーフィルム3およびクラッド層113)が透過するようにして示す平面図である。
コア層131、132に形成されたコア部14の平面視における幅は、全長にわたって均一であってもよいが、図5に示すように光入射端部1Aから光出射端部1Bに向かって幅(外径)が徐々に広くなっているのが好ましい。特に、ミラー1612近傍で3つに分断されているコア部14では、低屈折率層1451より左側における幅よりも、右側(光出射端部1B側)における幅の方が広くなっているのが好ましい。さらに、図5には図示しないものの、低屈折率層1452より左側における幅よりも、右側における幅の方が広くなっているのが好ましい。これにより、発光素子72で出射され、ミラー1612で反射された信号光がコア部14に入射する確率を高めることができ、伝送効率の向上が図られる。同様に、ミラー1614近傍で4つに分断されているコア部14では、低屈折率層1453より左側(光入射端部1A側)における幅よりも、右側における幅の方が広くなっているのが好ましい。さらに、図5には図示しないものの、低屈折率層1454より左側における幅よりも、右側における幅の方が広くなっているのが好ましく、低屈折率層1455より左側における幅よりも、右側における幅の方が広くなっているのが好ましい。これにより、コア部14を伝搬してきた信号光がミラー1614に入射する確率を高めることができ、伝送効率の向上が図られる。
幅の増加率の一例としては、増加前の幅を1としたとき、増加後の幅は1.02〜1.50程度であるのが好ましく、1.05〜1.40程度であるのがより好ましい。
なお、図5では図示していないが、ミラー1611近傍やミラー1613近傍においても、上記のような構成になっているのが好ましい。
このように光導波路1では、光入射端部1Aから光出射端部1Bに向かって幅が漸増していることにより、伝送効率の向上が図られる。なお、図5では、段階的に幅が漸増している例を示しているが、連続的に漸増していてもよい。
また、図5に示す光導波路1は、コア部14の横断面形状が矩形(四角形)をなしているが、円形の場合等はコア部14の外径が漸増しているのが好ましい。
以上、説明したように、光導波路1は、コア部14中の第1の光路と交差する第2の光路に沿って延在するように設けられた低屈折率層145を有することにより、交差点における信号光の交錯や損失を抑制し、受発光素子との光結合効率を高め得るものとなる。また、光結合効率の向上を多少犠牲にする場合、アライメント精度やミラー1612、1614の面精度(加工精度)の許容幅が緩和される。
また、光導波路1では、各ミラー1611、1612、1613、1614によって、各第2の光路が、光導波路1の上面の各接続点121に接続されているため、全てのコア部14に対して第1の光路に対して光導波路1の上面側からアクセスすることが可能になる。このため、光導波路1の上面に受発光素子を搭載するのみで、容易に光結合が実現される。しかも、光導波路1では、前述したように、第1の光路と第2の光路とが交差したとしても伝送効率や光結合効率が低下し難いため、光路設計の自由度が高い。例えば、光導波路1を上面から見たとき、図5に示すように、コア層131に形成されたコア部14は、コア層132に形成されたコア部14の陰に隠れて、直接見ることはできない。従来の光導波路では、陰に隠れたコア部に対して上面側から直接アクセスすることはできなかったが、光導波路1では、第1の光路と第2の光路の交差を可能にしているので、第1の光路に沿って接続点121の位置をずらすのみで、陰に隠れたコア部に対しても上面側からアクセスすることが可能になる。そして、これらの効果はコア層の積層数を増やしても変わらない。このようなことから、光導波路1は、極めて容易に高密度化を可能にし、かつ容易に実装し得るものである。
≪第2実施形態≫
次に、本発明の光導波路の第2実施形態について説明する。
図6は、本発明の光導波路の第2実施形態およびこれを含む光導波路モジュールを示す(一部透過して示す)分解斜視図である。
以下、第2実施形態等について説明するが、以下の説明では、第1実施形態等との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
本実施形態は、上面に開口する光ファイバーコネクター用のかん合穴18を有している以外、第1実施形態と同様である。また、図6に示す光導波路モジュール10は、表面実装型の受発光素子に代えて、発光用光ファイバーコネクター75および受光用光ファイバーコネクター76のような光ファイバーコネクターと、これらに接続された光ファイバー70と、を有している以外、図1に示す光導波路モジュール10と同様である。
図6に示す発光用光ファイバーコネクター75は、コネクター本体751と、コネクター本体751を貫通する4つの貫通孔752と、コネクター本体751の下面から突出する2つのかん合ピン753と、を有している。また、各貫通孔752にはそれぞれ光ファイバー70が挿入されており、各光ファイバー70の端面がコネクター本体751の下面に露出するよう構成されている。
同様に、図6に示す受光用光ファイバーコネクター76は、コネクター本体761と、コネクター本体761を貫通する4つの貫通孔762と、コネクター本体761の下面から突出する2つのかん合ピン763と、を有している。また、各貫通孔762にはそれぞれ光ファイバー70が挿入されており、各光ファイバー70の端面がコネクター本体761の下面に露出するよう構成されている。
一方、図6に示す光導波路1には、その上面に4つのかん合穴18が開口している。これらのかん合穴18は、上述した各かん合ピン753、763とかん合するよう構成されており、このかん合により、発光用光ファイバーコネクター75と受光用光ファイバーコネクター76の光導波路1に対する固定および位置合わせを行うことができる。
なお、発光用光ファイバーコネクター75に設けられた各貫通孔752は、それぞれに挿入された各光ファイバー70の端面が、光導波路1のミラー1611、1612と接続される接続点121と重なるよう形成されている。同様に、受光用光ファイバーコネクター76に設けられた各貫通孔762は、それぞれに挿入された各光ファイバー70の端面が、光導波路1のミラー1613、1614と接続される接続点121と重なるよう形成されている。
このような構成の光導波路1によれば、第1実施形態と同様の作用、効果が得られるとともに、かん合穴18に各コネクターのかん合ピン753、763をかん合させるのみで、光ファイバー(受発光素子)との光結合を行うことができるので、光結合およびその解除を容易に行い得るという利点を有するものとなる。
図7は、図6に示す光導波路1を一部(カバーフィルム3およびクラッド層113)が透過するようにして示す平面図である。
また、発光用光ファイバーコネクター75や受光用光ファイバーコネクター76は、それぞれ光ファイバーの端面がかん合ピンに対して線対称の位置関係になるよう配置されている場合が多い。このため、光導波路1についてもそれに合わせて、前記接続点121がかん合穴18に対して線対称の位置関係になるよう配置されていることが好ましい。すなわち、この位置関係を満足するように、ミラーや低屈折率層が配置されているのが好ましい。これにより、光導波路1は、汎用的な光ファイバーコネクターを接続可能なものとなる。
なお、発光用光ファイバーコネクター75や受光用光ファイバーコネクター76における光ファイバーの配置は、図6に示すような格子状の配置に限られず、例えば隣り合う光ファイバーの位置が光導波路1の長手方向に沿って互いにずれているような配置でもよい。この場合、光導波路1に形成されるミラーや低屈折率層の配置も、それに合わせたものにされる。
<光導波路の製造方法>
次に、光導波路1の製造方法の一例について説明する。ここでは、図2に示す光導波路1を製造する方法を例にする。
図8〜11は、それぞれ図2に示す光導波路を製造する方法を説明するための図(断面図)である。
光導波路1は、下方からクラッド層111、コア層131、クラッド層112、コア層132、およびクラッド層113をこの順で積層してなる積層体12と、この積層体12の一部を除去することで形成された凹部1601、1602、1603、1604と、を有している。
このような光導波路1は、各層を個別に製造し、各層に凹部を形成した後、層同士を積層する方法や、各層を個別に製造し、層同士を積層して積層体を得た後、この積層体に凹部を形成する方法等により製造されるが、ここでは、後者の方法について説明する。
以下、光導波路の製造方法を、[1]積層体を形成するための母材を製造する工程、[2]母材の一部に活性放射線を照射することで屈折率差を形成する工程、[3]凹部を形成する工程、に分けて説明する。
[1]積層体を形成するための母材960は、例えば、層911、912を個別に支持基板上に成膜した後、それぞれを支持基板から剥離して互いに貼り合わせる方法等により製造される。
具体的には、各層形成用の組成物901、902を支持基板951上に塗布して液状被膜を形成した後、液状被膜を均一化するとともに揮発成分を除去する(図8参照)。
塗布方法としては、例えば、ドクターブレード法、スピンコート法、ディッピング法、テーブルコート法、スプレー法、アプリケーター法、カーテンコート法、ダイコート法等の方法が挙げられる。
また、液状被膜中の揮発成分を除去するには、液状被膜を加熱したり、減圧下に置いたり、あるいは乾燥ガスを吹き付けたりする方法が用いられる。これにより、層911、912が得られる。
次いで、この層911、912を支持基板951から剥離し、積層する。これにより、図9に示す母材960が得られる。なお、この母材960は、支持基板951上に各組成物901、902を順次塗り重ねた後、揮発成分を除去することによっても形成可能である。
また、層911、912の形成用組成物としては、例えば、前述した各層の構成材料を各種溶媒に溶解または分散してなる溶液(分散液)が挙げられる。
このうち、コア層を形成するための組成物901としては、ポリマー915と、モノマー、重合開始剤等の添加剤920と、を含有している。このような組成物から形成された層911、912では、活性放射線の照射によりモノマーが反応し、それに伴ってポリマー915とモノマーの存在比率に偏りが生じることにより、活性放射線の照射領域と非照射領域との間で屈折率差を形成することができる。したがってこのような組成物901を用いることで、コア層131、132中にコア部14や側面クラッド部15を形成することができる。
一方、クラッド層を形成するための組成物902としては、前述したクラッド層の構成材料を主成分とし、コア層中に屈折率差が生じたとき、含まれる最も高い屈折率よりも低屈折率の組成物が用いられる。なお、クラッド層を形成するための組成物902には、上述したようなモノマーが含まれていないので、活性放射線を照射したとしても屈折率差が形成されることはない。
よって、組成物901から形成される層911と組成物902から形成される層912とを交互に積層することで、光導波路1を製造するための母材960が得られることになる。
ここで、コア層を形成するための組成物901の構成成分について説明する。
(ポリマー)
ポリマー915は、コア層のベースポリマーとなるものである。
ポリマー915には、透明性が十分に高く(無色透明であり)、かつ、後述するモノマーと相溶性を有するもの、さらに、その中でも後述するようにモノマーが反応(重合反応や架橋反応)可能であり、モノマーが重合した後においても十分な透明性を有するものが好適に用いられる。
ここで、「相溶性を有する」とは、モノマーが少なくとも混和して、組成物901中や層911中においてポリマー915と相分離を起こさないことをいう。
このようなポリマー915としては、例えば、ノルボルネン系樹脂やベンゾシクロブテン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、シリコーン系樹脂、ポリウレタン、フッ素系樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(ポリマーアロイ、ポリマーブレンド(混合物)、共重合体など)用いることができる。
これらの中でも、特に、環状オレフィン系樹脂を主とするものが好ましい。ポリマー915として環状オレフィン系樹脂を用いることにより、優れた光伝送性能や耐熱性を有するコア層を得ることができる。
環状オレフィン系樹脂としては、例えば、特開2010−090328号公報に記載されたものが用いられる。
なお、コア層の各部の屈折率は、各部におけるポリマー915の屈折率とモノマーの屈折率の相対的な大小関係とその存在比率に応じて決定されるため、用いるモノマーの種類に応じてポリマー915の屈折率を適宜調整するようにしてもよい。
例えば、比較的高い屈折率を有するポリマー915を得るためには、分子構造中に、芳香族環(芳香族基)、窒素原子、臭素原子や塩素原子を有するモノマーを一般的に選択して、ポリマー915が合成(重合)される。一方、比較的低い屈折率を有するポリマー915を得るためには、分子構造中に、アルキル基、フッ素原子やエーテル構造(エーテル基)を有するモノマーを一般的に選択して、ポリマー915が合成(重合)される。
また、以上のようなポリマー915は、主鎖から分岐し、活性放射線の照射により、その分子構造の少なくとも一部が主鎖から離脱し得る離脱性基(離脱性ペンダントグループ)を有していてもよい。離脱性基の離脱によりポリマー915の屈折率が低下するため、ポリマー915は、活性放射線の照射の有無によって屈折率差を形成することができる。
このような離脱性基を有するポリマー915としては、例えば、分子構造中に、−O−構造、−Si−アリール構造および−O−Si−構造のうちの少なくとも1つを有するものが挙げられる。かかる離脱性基は、カチオンの作用により比較的容易に離脱する。
このうち、離脱により樹脂の屈折率に低下を生じさせる離脱性基としては、−Si−ジフェニル構造および−O−Si−ジフェニル構造の少なくとも一方が好ましい。
側鎖に離脱性基を有するポリマー915の具体例としては、特開2010−090328号公報に記載されたものが挙げられる。
一方、別の離脱性基としては、例えば、末端にアセトフェノン構造を有する置換基が挙げられる。この離脱性基は、フリーラジカルの作用により比較的容易に離脱する。
前記離脱性基の含有量は、特に限定されないが、前記側鎖に離脱性基を有するポリマー915中の10〜80重量%であるのが好ましく、特に20〜60重量%であるのがより好ましい。含有量が前記範囲内であると、特に可撓性と屈折率変調機能(屈折率差を変化させる効果)との両立に優れる。
例えば、離脱性基の含有量を多くすることにより、屈折率を変化させる幅を拡張することができる。
(添加剤)
添加剤920は、モノマーおよび重合開始剤を含んでいる。
((モノマー))
モノマーは、後述する活性放射線の照射により、活性放射線の照射領域において反応して反応物を形成し、それとともにモノマーが拡散移動することで、層911において照射領域と非照射領域との間に屈折率差を生じさせ得るような化合物である。
モノマーの反応物としては、モノマーがポリマー915中で重合して形成されたポリマー(重合体)、モノマーがポリマー915同士を架橋してなる架橋構造、および、モノマーがポリマー915に重合してポリマー915から分岐した分岐構造のうちの少なくとも1つが挙げられる。
ところで、照射領域と非照射領域との間に生じる屈折率差は、ポリマー915の屈折率とモノマーの屈折率との差に基づいて生じることから、添加剤920中に含まれるモノマーは、ポリマー915の屈折率との大小関係を考慮して選択される。
具体的には、層911において、照射領域の屈折率が高くなることが望まれる場合には、比較的低い屈折率を有するポリマー915と、このポリマー915に対して高い屈折率を有するモノマーとを組み合わせて使用される。一方、照射領域の屈折率が低くなることが望まれる場合には、比較的高い屈折率を有するポリマー915と、このポリマー915に対して低い屈折率を有するモノマーとを組み合わせて使用される。
なお、屈折率が「高い」または「低い」とは、屈折率の絶対値を意味するものではなく、ある材料同士の相対的な関係を意味するものである。
そして、モノマーの反応(反応物の生成)により、層911において照射領域の屈折率が低下する場合、当該部分がコア層の側面クラッド部および低屈折率層となり、照射領域の屈折率が上昇する場合、当該部分がコア層のコア部となる。
なお、モノマーとしては、ポリマー915との相溶性を有し、ポリマー915との屈折率差が0.01以上であるものが好ましく用いられる。
このようなモノマーとしては、重合可能な部位を有する化合物であればよく、特に限定されないが、例えば、ノルボルネン系モノマー、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、エポキシ系モノマー、オキセタン系モノマー、ビニルエーテル系モノマー、スチレン系モノマー等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、モノマーとしては、オキセタニル基またはエポキシ基等の環状エーテル基を有するモノマーまたはオリゴマー、あるいはノルボルネン系モノマーを用いるのが好ましい。環状エーテル基を有するモノマーまたはオリゴマーを用いることにより、環状エーテル基の開環が起こり易いため、速やかに反応し得るモノマーが得られる。また、ノルボルネン系モノマーを用いることにより、光伝送性能に優れ、かつ、耐熱性および柔軟性に優れるコア層(光導波路1)が得られる。
このうち、環状エーテル基を有するモノマーの分子量(重量平均分子量)またはオリゴマーの分子量(重量平均分子量)は、それぞれ100以上400以下であるのが好ましい。
オキセタニル基を有するモノマー、オキセタニル基を有するオリゴマーとしては、例えば、特開2010−090328号公報に記載されたものが挙げられる。これらの中でも特に下記式(20)で表わされるものが好ましい。
また、エポキシ基を有するモノマー、エポキシ基を有するオリゴマーとしては、例えば、特開2010−090328号公報に記載されたものが挙げられる。
これらのモノマーの添加量は、ポリマー100重量部に対し、1重量部以上50重量部以下であることが好ましく、2重量部以上20重量部以下であることがより好ましい。これにより、屈折率変調を可能にし、可撓性と耐熱性との両立が図れるという効果がある。
((重合開始剤))
重合開始剤は、活性放射線の照射に伴ってモノマーに作用し、モノマーの反応を促すものであり、モノマーの反応性を考慮し、必要に応じて添加される。
用いる重合開始剤としては、モノマーの重合反応または架橋反応の種類に応じて適宜選択される。例えば、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、スチレン系モノマーには専らラジカル重合開始剤が、エポキシ系モノマー、オキセタン系モノマー、ビニルエーテル系モノマーには専らカチオン重合開始剤が好ましく用いられる。
ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類等が挙げられる。
一方、カチオン重合開始剤としては、例えば、ジアゾニウム塩のようなルイス酸発生型のもの、ヨードニウム塩、スルホニウム塩のようなブレンステッド酸発生型のもの等が挙げられる。
特に、モノマーとして環状エーテル基を有するモノマーを用いる場合には、以下のようなカチオン重合開始剤(光酸発生剤)が好ましく用いられる。具体的には、特開2010−090328号公報に記載されたものが挙げられる。
重合開始剤の含有量は、ポリマー100重量部に対し0.01重量部以上0.3重量部以下であることが好ましく、0.02重量部以上0.2重量部以下であることがより好ましい。これにより、反応性の向上という効果がある。
なお、モノマーの反応性が著しく高い場合には、重合開始剤の添加を省略してもよい。
また、添加剤920は、モノマーや重合開始剤に加え、増感剤等を含んでいてもよい。
このうち、増感剤は、光に対する重合開始剤の感度を増大して、重合開始剤の活性化(反応または分解)に要する時間やエネルギーを減少させる機能や、重合開始剤の活性化に適する波長に光の波長を変化させる機能を有するものである。具体的には、特開2010−090328号公報に記載されたものが挙げられる。
増感剤の含有量は、組成物901中で、0.01重量%以上であるのが好ましく、0.5重量%以上であるのがより好ましく、1重量%以上であるのがさらに好ましい。なお、上限値は、5重量%以下であるのが好ましい。
なお、組成物901には、添加剤920として上記の他に、触媒前駆体、助触媒、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、シランカップリング剤、塗面改良剤、熱重合禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、着色剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、フィラー、無機粒子、劣化防止剤、濡れ性改良剤、帯電防止剤等を含んでいてもよい。
以上のような組成物901から得られる層911は、ポリマー915中に一様に分散する添加剤920の作用により、所定の屈折率を有している。そして、後述する活性放射線の照射により、この屈折率が部分的に変調し、屈折率の偏りを生じるのである。
[2]次に、開口(窓)9351が形成されたマスク(マスキング)935を用意し、このマスク935を介して、母材960に活性放射線930を照射する(図10参照)。
以下では、組成物901中に含まれるモノマーとして、ポリマー915より低い屈折率を有するものを用いる場合を一例に説明する。
すなわち、ここで示す例では、活性放射線930の照射領域925が主に側面クラッド部および低屈折率層となる。
したがって、ここで示す例では、マスク935には、主に、形成すべき側面クラッド部および低屈折率層の各パターンと等価な開口(窓)9351が形成される。この開口9351は、照射する活性放射線930が透過する透過部を形成するものである。
マスク935は、予め形成(別途形成)されたもの(例えばプレート状のもの)でも、母材960上に例えば気相成膜法や塗布法により形成されたものでもよい。
マスク935として好ましいものの例としては、石英ガラスやPET基材等で作製されたフォトマスク、ステンシルマスク、気相成膜法(蒸着、スパッタリング等)により形成された金属薄膜等が挙げられるが、これらの中でもフォトマスクやステンシルマスクを用いるのが特に好ましい。微細なパターンを精度良く形成することができるとともに、ハンドリングがし易く、生産性の向上に有利であるからである。
また、図10においては、マスク935の開口(窓)9351は、活性放射線930の照射領域925のパターンに沿ってマスクを部分的に除去したものを示したが、前記石英ガラスやPET基材等で作製されたフォトマスクを用いる場合、該フォトマスク上に例えばクロム等の金属による遮蔽材で構成された活性放射線930の遮蔽部を設けたものを用いることもできる。このマスクでは、遮蔽部以外の部分が前記窓(透過部)となる。
用いる活性放射線930は、重合開始剤に対して光化学的な反応(変化)を生じさせ得るもの、および、ポリマー915に含まれる離脱性基を離脱させ得るものであればよく、例えば、可視光、紫外光、赤外光、レーザー光の他、電子線やX線等を用いることもできる。
これらの中でも、活性放射線930は、重合開始剤や離脱性基の種類、増感剤を含有する場合には、増感剤の種類等によって適宜選択され、特に限定されないが、波長200〜450nmの範囲にピーク波長を有するものであるのが好ましい。これにより、重合開始剤を比較的容易に活性化させるとともに、離脱性基を比較的容易に離脱させることができる。
また、活性放射線930の照射量は、0.05〜9J/cm2程度であるのが好ましく、0.1〜6J/cm2程度であるのがより好ましく、0.1〜3J/cm2程度であるのがさらに好ましい。
マスク935を介して母材960に活性放射線930を照射すると、母材960のうち、組成物901から形成された層911において、以下の現象が起こる。まず、層911の照射領域925において重合開始剤が活性化される。これにより、照射領域925においてモノマーが重合する。モノマーが重合すると、照射領域925におけるモノマーの量が減少するため、それに応じて非照射領域940中のモノマーが照射領域925に拡散移動する。前述したように、ポリマー915とモノマーは、互いに屈折率差が生じるように適宜選択されるため、モノマーの拡散移動に伴って照射領域925と非照射領域940との間に屈折率差が生じる。
図12は、母材960において、照射領域925と非照射領域940との間で屈折率差が生じる様子を説明するための図であり、層911の横断面の位置を横軸にとり、横断面の屈折率を縦軸にとったときの屈折率分布を示す図である。
本実施形態では、モノマーとしてポリマー915より屈折率が小さいものを用いているため、モノマーの拡散移動に伴い、非照射領域940の屈折率が高くなるとともに、照射領域925の屈折率は低くなる(図12(a)参照)。
モノマーの拡散移動は、照射領域925においてモノマーが消費され、それに応じて形成されたモノマーの濃度勾配がきっかけとなって起こると考えられる。このため、非照射領域940全体のモノマーが一斉に照射領域925に向かうのではなく、照射領域925に近い部分から徐々に移動が始まり、これを補うように非照射領域940の中央部から外側へのモノマーの移動も生起される。その結果、図12(a)に示すように、照射領域925と非照射領域940との境界を挟んで、非照射領域940側に高屈折率領域H、照射領域925側に低屈折率領域Lが形成される。これら高屈折率領域Hおよび低屈折率領域Lは、それぞれ上述したようなモノマーの拡散移動に伴って形成されるため、必然的に滑らかな曲線で構成されることとなる。具体的には、高屈折率領域Hは、例えば上に凸の略U字状となり、低屈折率領域Lは、例えば下に凸の略U字状となる。
なお、上述したようなモノマーが重合してなるポリマーの屈折率は、重合前のモノマーの屈折率とほぼ同じ(屈折率差が0〜0.001程度)であるため、照射領域925では、モノマーの重合が進むにつれ、モノマーの量およびモノマー由来の物質の量に応じて屈折率の低下が進むこととなる。
一方、非照射領域940では、重合開始剤やモノマーが活性化されないため、モノマーは重合しない。
また、照射領域925ではモノマーの重合が進むにつれてモノマーの拡散移動の容易性が徐々に低下する。これにより、照射領域925では、非照射領域940に近いほど自ずとモノマーの濃度が高くなり、屈折率の低下量が大きくなる。その結果、照射領域925に形成される低屈折率領域Lの分布形状は、左右非対称になり易く、非照射領域940側の勾配はより急峻なものとなる。
また、ポリマー915は前述したように離脱性基を有していてもよい。この離脱性基は活性放射線930の照射に伴って離脱し、ポリマー915の屈折率を低下させる。したがって、照射領域925に活性放射線930が照射されると、層911では、前述したモノマーの拡散移動が開始されるとともに、ポリマー915から離脱性基が離脱し、照射領域925の屈折率は照射前から低下することとなる(図12(b)参照)。
この屈折率の低下は、照射領域925全体で一律に生じるため、前述した高屈折率領域Hと低屈折率領域Lの屈折率差は、より拡大される。その結果、図12(b)に示すグレーデッドインデックス型の屈折率分布Wが得られる。グレーデッドインデックス型の屈折率分布とは、屈折率の極大値を有し、その極大値の両側では屈折率が裾を引くように連続的に低下するような分布のことをいう。
なお、組成物901を用いて製造されたコア層では、コア部の屈折率分布がグレーデッドインデックス型になっている。このような分布は、屈折率が階段状に変化するステップインデックス型の分布に比べて、コア部を伝搬する信号光の閉じ込め作用が強い。このため、伝送効率の高いコア部が得られる。
なお、活性放射線930の照射量を調整することにより、形成される屈折率差を制御することができ、例えば、照射量を多くすることで、屈折率差を拡大することができる。
また、上記のような屈折率差の形成は、母材960に含まれる複数の層911において、活性放射線930の一回の照射で同時に生じる。このため、複数の層911に対して個別に照射する必要がなく、製造工程の大幅な簡略化が図られる。特に、前記各実施形態では、各コア層に形成されるパターンは、ミラーの有無を除いて互いに同じになっている。このため、各実施形態は、一回の照射で同時に形成するのに適した構造であるといえる。さらに、各層911間に形成されるパターンの層間の位置関係はほぼ完全に一致するため、個別に照射する場合に比べて、位置ズレが極めて少なくなり、層間の光結合効率の向上が図られる。
一方、上記のような屈折率差の形成は、組成物902から形成された層912では生じない。
次に、母材960に加熱処理を施す。この加熱処理において、光を照射した照射領域925中のモノマーがさらに重合する。一方で、この加熱工程において、非照射領域940のモノマーは揮発することとなる。これにより、非照射領域940ではモノマーがさらに少なくなり、屈折率が高くなってポリマー915に近い屈折率となる。
この加熱処理における加熱温度は、特に限定されないが、30〜180℃程度であるのが好ましく、40〜160℃程度であるのがより好ましい。
また、加熱時間は、照射領域925のモノマーの重合反応がほぼ完了するように設定するのが好ましく、具体的には、0.1〜2時間程度であるのが好ましく、0.1〜1時間程度であるのがより好ましい。
なお、この加熱処理は必要に応じて行えばよく、省略してもよい。
以上のような原理で、母材960のうち、層911において相対的に屈折率の高い部分と低い部分とが形成される。その結果、層911は、コア層131およびコア層132となり、また、層912は、各クラッド層111、112、113となり、これらが積層されてなる積層体12が得られる(図11参照)。
なお、モノマーとしてポリマー915より高い屈折率を有するものを用いる場合には、上記と反対に、モノマーの拡散移動に伴って移動先の屈折率が高くなるため、それに応じて、照射領域925および非照射領域940を設定するようにすればよい。
また、活性放射線930として、レーザー光のように指向性の高い光を用いる場合には、マスク935の使用を省略してもよい。
[3]次に、積層体12に凹部1601、1602、1603、1604を形成する。
これらの凹部1601、1602、1603、1604は、積層体12の下面側から一部を除去する掘り込み加工により形成される。この掘り込み加工は、例えば、レーザー加工法、ダイシングソーによるダイシング加工法等により行うことができる。なお、前記各実施形態は、凹部の形成にあたって、積層体12の形成後、全ての凹部をまとめて形成し得る構造になっているので、掘り込み加工を行う際には、一度基準位置を決めれば、その後、全ての凹部を形成し終わるまでその基準位置を利用し続けることが可能な形態である。したがって、凹部間の間隔等を高い精度で再現することができ、位置ズレによる光結合損失の発生を抑制することができる。
以上のようにして、光導波路1が得られる。
<電子機器>
上述したような本発明の光導波路は、他の光学素子(受発光素子等)との光結合効率が高いものである。このため、本発明の光導波路を備えることにより、2点間で高品質の光通信を行い得る信頼性の高い電子機器(本発明の電子機器)が得られる。
本発明の光導波路を備える電子機器としては、例えば、携帯電話、ゲーム機、ルーター装置、WDM装置、パソコン、テレビ、ホーム・サーバー等の電子機器類が挙げられる。これらの電子機器では、いずれも、例えばLSI等の演算装置とRAM等の記憶装置との間で、大容量のデータを高速に伝送する必要がある。したがって、このような電子機器が本発明の光導波路を備えることにより、電気配線に特有なノイズ、信号劣化等の不具合が解消され、その性能の飛躍的な向上が期待できる。
さらに、光導波路部分では、電気配線に比べて発熱量が大幅に削減される。このため、冷却に要する電力を削減することができ、電子機器全体の消費電力を削減することができる。
以上、本発明の光導波路、光電気混載基板および電子機器について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば光導波路には、任意の構成物が付加されていてもよい。
また、光導波路の製造方法は上記のものに限定されず、例えば、活性放射線の照射により分子結合を切断し、屈折率を変化させる方法(フォトブリーチ法)、組成物に光異性化または光二量化可能な不飽和結合を有する光架橋性ポリマーを含有させ、これに活性放射線を照射して分子構造を変化させるとともに屈折率を変化させる方法(光異性化法・光二量化法)等の方法を用いることもできる。
また、光導波路の屈折率分布は、ステップインデックス型の分布等であってもよい。
また、光導波路の形態は、前記各実施形態で説明したような積層構造でなくてもよく、例えばコア部を覆うように管状のクラッド部が設けられた構造であってもよい。
次に、本発明の実施例について説明する。
1.光導波路の製造
(実施例1)
(1)脱離性基を有するノルボルネン系樹脂の合成
水分および酸素濃度がいずれも1ppm以下に制御され、乾燥窒素で充満されたグローブボックス中において、ヘキシルノルボルネン(HxNB)7.2g(40.1mmol)、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン12.9g(40.1mmol)を500mLバイアル瓶に計量し、脱水トルエン60gと酢酸エチル11gを加え、シリコン製のシーラーを被せて上部を密栓した。
次に、100mLバイアルビン中に下記化学式(A)で表わされるNi触媒1.56g(3.2mmol)と脱水トルエン10mLを計量し、スターラーチップを入れて密栓し、触媒を十分に撹拌して完全に溶解させた。
この下記化学式(A)で表わされるNi触媒溶液1mLをシリンジで正確に計量し、上記2種のノルボルネンを溶解させたバイアル瓶中に定量的に注入し室温で1時間撹拌したところ、著しい粘度上昇が確認された。この時点で栓を抜き、テトラヒドロフラン(THF)60gを加えて撹拌を行い、反応溶液を得た。
100mLビーカーに無水酢酸9.5g、過酸化水素水18g(濃度30%)、イオン交換水30gを加えて撹拌し、その場で過酢酸水溶液を調製した。次にこの水溶液全量を上記反応溶液に加えて12時間撹拌してNiの還元処理を行った。
次に、処理の完了した反応溶液を分液ロートに移し替え、下部の水層を除去した後、イソプロピルアルコールの30%水溶液を100mL加えて激しく撹拌を行った。静置して完全に二層分離が行われた後で水層を除去した。この水洗プロセスを合計で3回繰り返した後、油層を大過剰のアセトン中に滴下して生成したポリマーを再沈殿させ、ろ過によりろ液と分別した後、60℃に設定した真空乾燥機中で12時間加熱乾燥を行うことにより、ポリマー#1を得た。ポリマー#1の分子量分布は、GPC測定により、Mw=10万、Mn=4万であった。また、ポリマー#1中の各構造単位のモル比は、NMRによる同定により、ヘキシルノルボルネン構造単位が50mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が50mol%であった。
(2)組成物の製造
(2−1)コア層形成用の組成物の製造
精製した上記ポリマー#1 10gを100mLのガラス容器に秤量し、これにメシチレン40g、酸化防止剤Irganox1076(チバガイギー社製)0.01g、シクロヘキシルオキセタンモノマー(式(20)で示したモノマー、東亜合成製 CHOX、CAS#483303−25−9、分子量186、沸点125℃/1.33kPa)2g、重合開始剤(光酸発生剤) RhodorsilPhotoinitiator 2074(Rhodia社製、CAS# 178233−72−2)(1.36E-2g、酢酸エチル0.1mL中)を加え均一に溶解させた後、0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄な感光性樹脂組成物を得た。
(2−2)クラッド層形成用の組成物の製造
クラッド層形成用の組成物として、感光性ノルボルネン樹脂組成物(プロメラス社製 Avatrel2000Pワニス)を用意した。
(3)光導波路の製造
(母材の製造)
ポリエーテルスルホン(PES)フィルム上にクラッド層形成用の組成物をドクターブレードにより均一に塗布した後、45℃の乾燥機に15分間投入し、クラッド層形成層を形成した。形成されたクラッド層形成層は、厚さが5μmであり、無色透明であった。
次いで、形成したクラッド層形成層上にコア層形成用の組成物をドクターブレードにより均一に塗布した後、45℃の乾燥機に15分間投入し、溶剤を完全に除去した。
以上のような、クラッド層形成層とコア層形成層とを交互に塗り重ねて、光導波路を製造するための母材を得た。なお、コア層形成層の厚さは50μmであった。
また、コア部の屈折率は1.55、クラッド部の屈折率(側面クラッド部の屈折率とクラッド層の屈折率との平均)は1.53、低屈折率層の屈折率は1.54であった。
(露光)
次いで、母材の上面にフォトマスクを圧着して紫外線を500mJ/cm2で選択的に照射した。マスクを取り去り、乾燥機中150℃で1.5時間の加熱を行った。なお、フォトマスクには、図5に示す低屈折率層や側面クラッド部等の低屈折率領域に対応した開口が形成されたものを用いた。これにより、光導波路を製造するための積層体を得た。得られた積層体中のコア層では、側面クラッド部の幅が80μm、低屈折率層の厚さが5μmであった。また、コア部の幅については、光の進行方向に沿って徐々に拡大するよう、光入射端部近傍では45μm、中間部では50μm、光出射端部近傍では55μmとした。
(凹部加工)
次いで、積層体に対してレーザー加工により、図2に示す凹部を形成した。これにより図2に示すミラー付き光導波路を得た。なお、得られた光導波路の長さは10cmであり、後述するいずれの光導波路についてもミラー間の長さが同じになるようにした。
(実施例2)
光入射端部のミラー1611、1612近傍に位置する低屈折率層を省略した以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
(実施例3)
光出射端部のミラー1613、1614近傍に位置する低屈折率層を省略した以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
(実施例4)
図2のミラー1614近傍に設けられた低屈折率層のうち、低屈折率層145の数を1つ減らすようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。なお、減らしたのは、ミラー1614に干渉している低屈折率層1454である。
(実施例5)
低屈折率層の厚さを1μmに変更した以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
(実施例6)
低屈折率層の厚さを10μmに変更した以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
(実施例7)
低屈折率層の厚さを20μmに変更した以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
(実施例8)
低屈折率層の厚さを25μmに変更した以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
(実施例9)
低屈折率層の厚さを0.5μmに変更した以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
(実施例10)
コア部の幅が50μmで一定になっている以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
(比較例)
低屈折率層の形成を省略した以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。なお、得られた光導波路の断面図を図13に示す。図13に示す光導波路8では、下側からクラッド層811、コア層831、クラッド層812、コア層832、クラッド層813がこの順で積層されており、コア層831、832中には実施例1で得られた光導波路と同条件のコア部および側面クラッド部が形成されている。また、実施例1で得られた光導波路と同様、各コア部に対応して凹部841、842、843、844が形成されている。これらの凹部841、842、843、844の内壁面の一部がミラーを構成している。
2.光導波路の評価
2.1.光導波路の挿入損失の評価
850nmVCSEL(面発光レーザー)より発せられた光を50μmφの光ファイバーを経由して、実施例および比較例で得られた光導波路に導入し、200μmφの光ファイバーで受光を行って光の強度を測定した。なお、測定には挿入損失法を用いた。そして、比較例で得られた光導波路の挿入損失を1としたときの相対値を求め、これを以下の評価基準にしたがって評価した。また、評価には、図2に示すミラー1612とミラー1614とを経由する光路を用いた。
<挿入損失の評価基準>
AA:挿入損失の相対値が0.3未満である
A:挿入損失の相対値が0.3以上0.5未満である
B:挿入損失の相対値が0.5以上0.7未満である
C:挿入損失の相対値が0.7以上0.9未満である
D:挿入損失の相対値が0.9以上1未満である
E:挿入損失の相対値が1以上である
2.2.光導波路の伝送損失の評価
挿入損失の評価後、光導波路のミラー近傍を切り落とし、全て同じ長さに揃えて、カットバック法により光導波路の伝送損失(単位dB/cm)を測定した。
結果を表1に示す。
表1から明らかなように、各実施例で得られた光導波路は、いずれも比較例で得られた光導波路に比べて挿入損失が抑えられていることが認められた。
また、伝送損失については、実施例1、7、8、10および比較例で得られた光導波路を除いて、いずれもほぼ同等であった。なお、実施例7、8、10および比較例で得られた光導波路の伝送損失は、その他のものに比べて約20%大きかった。また、実施例1で得られた光導波路の伝送損失は、その他のものに比べて約20%小さかった。
以上の結果から、伝送損失の差を差し引いたとしても、各実施例で得られた光導波路は、比較例で得られた光導波路に比べて、光ファイバーとの結合部における損失が低くなっていると推察される。したがって、各実施例で得られた光導波路は、受発光素子等に対する光結合効率が高いことが明らかとなった。