以下、本発明について添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
<光導波路および光導波路モジュール>
≪第1実施形態≫
まず、本発明の光導波路の第1実施形態およびこれを含む本発明の光導波路モジュールの第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の光導波路モジュールの第1実施形態を示す斜視図、図2は、図1のA−A線断面図、図3は、図2の部分拡大図である。なお、以下の説明では、図2、3の上側を「上」、下側を「下」という。また、各図では、厚さ方向を強調して描いている。
図1に示す光導波路モジュール10は、光導波路1と、その上方に設けられた回路基板2と、回路基板2上に搭載された発光素子3(受発光素子)と、を有している。
光導波路1は、長尺の帯状をなしており、回路基板2および発光素子3は、光導波路1の一方の端部(図2の左側の端部)に設けられている。
発光素子3は、電気信号を光信号に変換し、発光部31から光信号を出射して光導波路1に入射させる素子である。図2に示す発光素子3は、その下面に設けられた発光部31と、発光部31に通電する電極32とを有している。発光部31は、図2の下方に向けて光信号を出射する。なお、図2に示す矢印は、発光素子3から出射した信号光の光路の例である。
光導波路1のうち、発光素子3の位置に対応してミラー16が設けられている。このミラー16は、図2の左右方向に延伸する光導波路1の光路を、光導波路1の外部へと変換するものであり、図2では、発光素子3の発光部31と光学的に接続されるよう、光路を90°変換する。このようなミラー16を介することにより、発光素子3から出射した信号光を光導波路1に入射させることができる。また、図2には図示しないものの、光導波路1の他方の端部には、受光素子が設けられる。この受光素子も光導波路1と光学的に接続されており、光導波路1に入射された信号光は受光素子に到達する。その結果、光導波路モジュール10において光通信が可能になる。
このようなミラー16は、光導波路1の途中に掘り込み加工を施し、これにより光導波路1の表面が部分的に凹没してなる凹部161の内壁面で構成される。
また、光導波路1の表面のうち、ミラー16と発光部31とを繋ぐ光路が通過する部位には、表面が部分的に突出してなる凸部101で構成されたレンズ100が形成されている(図3参照)。このレンズ100は、発光部31から光導波路1に入射する信号光を収束させることにより、信号光の発散を抑制し、ミラー16の有効領域に対してより多くの信号光を到達させるよう構成されている。したがって、このようなレンズ100を設けることにより、発光素子3と光導波路1との光結合効率が向上する。
本発明では、上記凹部161および凸部101が、それぞれ成形型を用いた成形プロセスにより形成されている。これにより、凹部161および凸部101を同一の成形プロセスによって同時にまたは連続して形成することができるため、凹部161と凸部101との位置関係を設計通りに制御することができる。これは、一般に成形型の寸法精度は非常に高くすることができ、それを凹部161と凸部101との位置関係の精度に反映させ易いからである。したがって、例えば凸部を別途製造しこれを貼り付けるといったプロセスで形成する場合に比べて、発光素子3や受光素子等の受発光素子と光導波路1との光結合損失を特に小さくすることができる。
以下、光導波路モジュール10の各部について詳述する。
(光導波路)
図1に示す光導波路1は、下方からクラッド層11、コア層13、およびクラッド層12をこの順で積層してなる帯状の積層体で構成される。このうちコア層13には、図1に示すように、平面視で直線状をなす1本のコア部14と、このコア部14の側面に隣接する側面クラッド部15とが形成されている。コア部14は、帯状の積層体の長手方向に沿って延伸しており、かつ、積層体の幅のほぼ中央に位置している。なお、図1において、コア部14にはドットを付している。
図2に示す光導波路1では、ミラー16を介して入射された光を、コア部14とクラッド部(各クラッド層11、12および各側面クラッド部15)との界面で全反射させ、他方の端部に伝搬させることができる。これにより、出射端で受光した光の明滅パターンおよび光の強弱パターンの少なくとも一方に基づいて光通信を行うことができる。
コア部14とクラッド部との界面で全反射を生じさせるためには、界面に屈折率差が存在する必要がある。コア部14の屈折率は、クラッド部の屈折率より大きければよく、その差は特に限定されないものの、クラッド部の屈折率の0.5%以上であるのが好ましく、0.8%以上であるのがより好ましい。一方、上限値は、特に設定されなくてもよいが、好ましくは5.5%程度とされる。屈折率の差が前記下限値未満であると光を伝達する効果が低下する場合があり、前記上限値を超えても、光の伝送効率のそれ以上の増大は期待できない。
なお、前記屈折率差とは、コア部14の屈折率をA、クラッド部の屈折率をBとしたとき、次式で表わされる。
屈折率差(%)=|A/B−1|×100
また、図1に示す構成では、コア部14は平面視で直線状に形成されているが、途中で湾曲、分岐等していてもよく、その形状は任意である。
また、コア部14の横断面形状は、正方形または矩形(長方形)のような四角形であるのが一般的であるが、特に限定されず、真円、楕円のような円形、菱形、三角形、五角形のような多角形であってもよい。
コア部14の幅および高さは、特に限定されないが、それぞれ、1〜200μm程度であるのが好ましく、5〜100μm程度であるのがより好ましく、20〜70μm程度であるのがさらに好ましい。
コア層13の構成材料は、上記の屈折率差が生じる材料であれば特に限定されないが、具体的には、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ系樹脂やオキセタン系樹脂のような環状エーテル系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリシラン、ポリシラザン、また、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂のような各種樹脂材料の他、石英ガラス、ホウケイ酸ガラスのようなガラス材料等である。
また、これらの中でも特にノルボルネン系樹脂が好ましい。これらのノルボルネン系ポリマーは、例えば、開環メタセシス重合(ROMP)、ROMPと水素化反応との組み合わせ、ラジカルまたはカチオンによる重合、カチオン性パラジウム重合開始剤を用いた重合、これ以外の重合開始剤(例えば、ニッケルや他の遷移金属の重合開始剤)を用いた重合等、公知のすべての重合方法で得ることができる。
一方、各クラッド層11、12は、それぞれ、コア層13の下部および上部に位置している。このような各クラッド層11、12は、各側面クラッド部15とともに、コア部14の外周を囲むクラッド部を構成し、これにより光導波路1は信号光を漏出させることなく伝搬させることができる導光路として機能する。
クラッド層11、12の平均厚さは、コア層13の平均厚さ(各コア部14の平均高さ)の0.1〜1.5倍程度であるのが好ましく、0.2〜1.25倍程度であるのがより好ましく、具体的には、クラッド層11、12の平均厚さは、特に限定されないが、それぞれ、通常、1〜200μm程度であるのが好ましく、3〜100μm程度であるのがより好ましく、5〜60μm程度であるのがさらに好ましい。これにより、光導波路1が必要以上に大型化(厚膜化)するのを防止しつつ、クラッド層としての機能が好適に発揮される。
なお、クラッド層12の厚さを適宜設定することにより、レンズ100の焦点がミラー16近傍に合うよう調整することができる。
また、各クラッド層11、12の構成材料としては、例えば、前述したコア層13の構成材料と同様の材料を用いることができるが、特にノルボルネン系ポリマーが好ましい。
また、コア層13の構成材料およびクラッド層11、12の構成材料を選択する場合、両者の間の屈折率差を考慮して材料を選択すればよい。具体的には、コア層13とクラッド層11、12との境界において光を確実に全反射させるため、コア層13の構成材料の屈折率がクラッド層11、12の屈折率に比べ十分に大きくなるように材料を選択すればよい。これにより、光導波路1の厚さ方向において十分な屈折率差が得られ、コア部14からクラッド層11、12に光が漏れ出るのを抑制することができる。
また、光の減衰を抑制する観点からは、コア層13の構成材料とクラッド層11、12の構成材料との密着性(親和性)が高いことも重要である。
(ミラー)
また、前述したように、光導波路1の途中には、ミラー16が設けられている(図2参照)。このミラー16は、光導波路1の途中に掘り込み加工を施し、これにより得られた凹部161の内壁面で構成される。この内壁面の一部は、コア部14を斜め45°に横切る平面であり、この平面がミラー16となる。ミラー16を介して、光導波路1と発光部31とが光学的に接続されている。
なお、ミラー16には、必要に応じて反射膜を成膜するようにしてもよい。この反射膜としては、Au、Ag、Al等の金属膜が好ましく用いられる。
また、クラッド層12の上面には、上面を局所的に突出させることにより形成された凸部101が設けられている。この凸部101によりレンズ100が構成されている。なお、このレンズ100については後に詳述する。
なお、光導波路1は、さらに、クラッド層11の下面に設けられた支持フィルムおよびクラッド層12の上面に設けられたカバーフィルムを有していてもよい。
このような支持フィルムおよびカバーフィルムの構成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミド等の各種樹脂材料等が挙げられる。
また、支持フィルムおよびカバーフィルムの各平均厚さは、特に限定されないが、5〜200μm程度であるのが好ましく、10〜100μm程度であるのがより好ましい。
なお、支持フィルムとクラッド層11との間、および、カバーフィルムとクラッド層12との間は、接着または接合されるが、その方法としては、熱圧着、接着剤または粘着剤による接着等が挙げられる。
このうち、接着層としては、例えば、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤の他、各種ホットメルト接着剤(ポリエステル系、変性オレフィン系)等が挙げられる。また、特に耐熱性の高いものとして、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリイミドアミドエーテル、ポリエステルイミド、ポリイミドエーテル等の熱可塑性ポリイミド接着剤が好ましく用いられる。
また、接着層の平均厚さは、特に限定されないが、1〜100μm程度であるのが好ましく、5〜60μm程度であるのがより好ましい。
(レンズ)
ここで、クラッド層12の上面のうち、ミラー16と発光部31とを繋ぐ光路が通過する部位には、前述したように、表面を局所的に突出させてなるレンズ100が形成されている。
このようなレンズ100がない場合、発光部31から出射した信号光が光導波路1に入射するまでの間で、信号光が発散し、ミラー16の有効領域からはみ出てしまう信号光が発生する。このとき、はみ出た信号光は損失となり、ミラー16で反射される信号光の光量が少なくなるため、光通信のS/N比が低下してしまう。
これに対し、レンズ100を設けることにより、光導波路1の表面に信号光の収束(収斂)機能が付与される。その結果、より多くの信号光をミラー16に入射させることにより信号光の損失の発生が抑制され、光通信のS/N比を高めることができる。そして、信頼性が高く高品質な光通信を提供し得る光導波路1および光導波路モジュール10が得られる。
図4は、図1に示す光導波路モジュールのうちの光導波路について示す部分拡大図である。
図4に示すレンズ100は、前述したように、クラッド層12の上面を部分的に突出させてなる凸部101で構成されている。この凸部101は、平面視で円形をなし、上面が湾曲凸面である平凸レンズの形状をなしている。このような平凸レンズは、信号光の収束作用が高いため、発光素子3と光導波路1との光結合効率をより高めることに寄与する。なお、凸部101(レンズ100)の形態は、この形態に限定されず、例えばフレネルレンズ等であってもよい。フレネルレンズは、一般的な湾曲凸面を有するレンズについて、湾曲凸面を複数に分割し、分割後の断片の厚さを薄くして組み合わせてなるレンズである。したがって、一般的な凸レンズと同等の焦点距離であっても、レンズの厚さを薄くすることができる。また、凸部101の平面視形状は、真円、楕円、長円のような円形に限定されず、三角形、正方形、長方形、菱形、平行四辺形、台形、五角形、六角形、八角形のような多角形等であってもよい。なお、凸部101の平面視形状が楕円や長円、菱形のように細長い形状である場合、凸部101は、その長軸(長径)方向がコア部14の延伸方向と平行になるように設けられるのが好ましい。これにより、信号光の収束機能をより高めることができる。
凸部101の高さは、特に限定されないが、1〜300μm程度であるのが好ましく、3〜200μm程度であるのがより好ましい。これにより、十分な収束作用を有するレンズ100が得られる。
一方、凸部101の外径は、ミラー16の有効径や発光部31の外径等に応じて適宜設定されるが、好ましくは3〜500μm程度とされ、より好ましくは5〜300μm程度とされる。
なお、レンズ100の焦点距離は、例えば、凸部101の高さや外径、湾曲凸面の曲率半径等を適宜設定することにより調整することができる。
また、それとともに、レンズ100を形成するクラッド層12の厚さを適宜設定することによっても、レンズ100の収束光をミラー16の有効領域内に導くことができる。
一方、レンズ100は、その焦点が発光素子3の発光部31近傍に位置するよう構成されている。このような構成のレンズ100は、発光素子3の発光部31から放射状に出射した信号光を、平行光または収束光に変換し、それ以上発散しないように光路変換することができる。その結果、信号光の発散に伴う損失を確実に抑制することができる。
また、凸部101の湾曲凸面には、図5に示すような凹凸パターン100dを形成するようにしてもよい。凹凸パターン100dは、凸部101の湾曲凸面を局所的に突出させた突起または局所的に凹ませた穴(図5では穴)を一定の間隔で複数個配置してなるパターンである。このような凹凸パターン100dを設けることにより、凸部101の湾曲凸面に光の反射防止機能が付与され、湾曲凸面に入射する信号光の入射効率を高めることができる。
凹凸パターン100dにおける突起または穴の分布パターンは、不規則的であってもよいが、一定の間隔で規則的に分布したパターンであるのが好ましい。これにより、凹凸パターン100dによる反射防止機能がより確実なものとなり、かつ、凹凸パターン100d全体で反射防止機能が均一になる。
具体的な分布パターンとしては、例えば、四方格子状パターン、六方格子状パターン、八方格子状パターン、放射状パターン、同心円状パターン、螺旋状パターン等が挙げられる。
また、隣り合う突起同士または穴同士の配置周期(図5に示す配置周期P)は、発光素子3から出射される信号光の波長以下であるのが好ましい。これにより、凹凸パターン100dでは、信号光の回折現象がほとんど生じなくなり、回折に伴う損失の発生を防止することができる。そして、光学的には、凹凸パターン100d付近の空間の屈折率を、空隙222の屈折率とクラッド層12の屈折率との中間の値としてみなすことができるようになり、凹凸パターン100dに入射する信号光は、このみなし屈折率に応じて振る舞うこととなる。すなわち、凹凸パターン100d付近の空間によって空隙222とクラッド層12の界面の屈折率差が緩和されることとなり、入射効率が格段に向上する。その結果、反射に伴う光結合損失の増大を抑制することができる。
また、隣り合う突起同士または穴同士の間隔が一定でない場合も、同様の理由から、その間隔は信号光の波長以下であるのが好ましい。
なお、発光素子3から出射される信号光の波長は、一般的に150〜1600nm程度であるので、それに応じて間隔の上限が設定される。
一方、間隔の下限は、特に限定されないが、形成容易性や長期信頼性等の観点から20nm程度とされる。
また、突起の高さや穴の深さ(図5に示す深さD)は、発光素子3から出射される信号光の波長以下であるのが好ましい。これにより、反射に伴う光結合損失の増大をより抑制することができる。
なお、発光素子3から出射される信号光の波長は、一般的に150〜1600nm程度であるので、それに応じて突起の高さや穴の深さの上限が設定される。
一方、突起の高さや穴の深さの下限は、特に限定されないが、形成容易性や長期信頼性等の観点から20nm程度とされる。
図5は、凹凸パターンの一例を示す斜視図である。図5に示す凹凸パターン100dは、複数の穴の一例である複数の穴100aで構成されているが、各穴100aの形状は、それぞれ開口の平面視形状が四角形であり、深さ方向にその四角形が維持された形状になっている。すなわち、各穴100aは、それぞれ四角柱状をなしている。
なお、凹凸パターン100dを構成する各穴100aの形状は、図5に示す形状に限定されず、例えば、角柱状、角錐状、角錐台形状、円柱状、円錐状、円錐台形状、半球状、楕円半球状、長円半球状等の形状であってもよい。さらに、これらの2種以上が混在したものであってもよい。
(発光素子)
発光素子3は、前述したように、下面に発光部31と電極32とを有するものであるが、具体的には、面発光レーザー(VCSEL)のような半導体レーザーや、発光ダイオード(LED)等の発光素子である。
一方、図1、2に示す光導波路モジュール10の回路基板2上には、発光素子3に隣り合うように半導体素子4が搭載されている。半導体素子4は、発光素子3の動作を制御する素子であり、下面には電極42を有している。かかる半導体素子4としては、例えば、ドライバーICや、トランスインピーダンスアンプ(TIA)、リミッティングアンプ(LA)等を含むコンビネーションICの他、各種LSI、RAM等が挙げられる。
なお、発光素子3と半導体素子4は、後述する回路基板2により電気的に接続されており、半導体素子4により発光素子3の発光パターンおよび発光の強弱パターンを制御し得るよう構成されている。
(回路基板)
光導波路1の上方には、回路基板2が設けられており、回路基板2の下面と光導波路1の上面とは接着層5を介して接着されている。
回路基板2は、図2に示すように、絶縁性基板21と、その下面に設けられた導体層22と、上面に設けられた導体層23と、を有している。回路基板2上に搭載された発光素子3と半導体素子4とは、導体層23を介して電気的に接続されている。
ここで、発光素子3の発光部31と光導波路1のミラー16との間は光学的に接続されているため、信号光の光路は、絶縁性基板21を厚さ方向に貫通することとなる。したがって、絶縁性基板21は、透光性を有する材料で構成されているのが好ましい。これにより、光路の伝送効率を高めることができる。なお、絶縁性基板21には、光路に対応する領域に開口するスルーホールを形成するようにしてもよい。
また、絶縁性基板21は可撓性を有しているのが好ましい。可撓性を有する絶縁性基板21は、回路基板2と光導波路1との密着性向上に寄与するとともに、形状変化に対する優れた追従性を有するものとなる。その結果、光導波路1が可撓性を有している場合には、光導波路モジュール10全体も可撓性を有するものとなり、実装性に優れたものとなる。また、光導波路モジュール10を湾曲させた際には、絶縁性基板21と導体層22、23との剥離や、回路基板2と光導波路1との剥離を確実に防止することができ、剥離に伴う絶縁性の低下や伝送効率の低下を防止する。
絶縁性基板21のヤング率(引張弾性率)は、一般的な室温環境下(20〜25℃前後)で1〜20GPa程度であるのが好ましく、2〜12GPa程度であるのがより好ましい。ヤング率の範囲がこの程度であれば、絶縁性基板21は、上述したような効果を得る上で十分な可撓性を有するものとなる。
このような絶縁性基板21を構成する材料としては、例えば、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、各種ビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル系樹脂等の各種樹脂材料が挙げられるが、中でもポリイミド系樹脂を主材料とするものが好ましく用いられる。ポリイミド系樹脂は、耐熱性が高く、優れた透光性および可撓性を有していることから、絶縁性基板21の構成材料として特に好適である。
なお、絶縁性基板21の具体例としては、ポリエステル銅張フィルム基板、ポリイミド銅張フィルム基板、アラミド銅張フィルム基板等に使用されるフィルム基板が挙げられる。
また、絶縁性基板21の平均厚さは、5〜50μm程度であるのが好ましく、10〜40μm程度であるのがより好ましい。このような厚さの絶縁性基板21であれば、その構成材料によらず、十分な可撓性を有するものとなる。また、絶縁性基板21の厚さが前記範囲内であれば、光導波路モジュール10の薄型化が図られるとともに、絶縁性基板21の透過損失が抑制される。
さらには、絶縁性基板21の厚さが前記範囲内であれば、信号光の発散によって伝送効率が低下するのを防止することができる。例えば、発光素子3の発光部31から出射した信号光は、一定の出射角で発散しつつ回路基板2を通過してミラー16に入射するが、発光部31とミラー16との離間距離が大き過ぎる場合、信号光が発散し過ぎてしまい、ミラー16に到達する光量が減少するおそれがある。これに対し、絶縁性基板21の平均厚さを前記範囲内とすることにより、発光部31とミラー16との離間距離を確実に小さくすることができるため、信号光は広く発散してしまう前にミラー16に到達する。その結果、ミラー16に到達する光量の減少を防止し、発光素子3と光導波路1との光結合に伴う損失(光結合損失)を十分に低下させることができる。
なお、絶縁性基板21は、1枚の基板であってもよいが、複数層の基板を積層してなる多層基板(ビルドアップ基板)であってもよい。この場合、多層基板の層間には、パターニングされた導体層を含み、この導体層には任意の電気回路が形成されていてもよい。これにより、絶縁性基板21中に高密度の電気回路を構築することができる。
また、絶縁性基板21には、厚さ方向に貫通する1つまたは複数の貫通孔が設けられていてもよく、これらの貫通孔には導電性材料が充填されているか、または、貫通孔の内壁面に沿って導電性材料の被膜が成膜されていてもよい。この導電性材料は、絶縁性基板21の両面の間を電気的に接続する貫通ビアとなる。
また、絶縁性基板21に設けられた導体層22および導体層23は、それぞれ導電性材料で構成されている。各導体層22、23には、所定のパターンが形成されており、このパターンは配線として機能する。絶縁性基板21に貫通ビアが形成されている場合、貫通ビアと各導体層22、23とが接続され、これにより、導体層22と導体層23とが一部で導通する。
各導体層22、23に用いられる導電性材料としては、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)等の各種金属材料が挙げられる。
また、各導体層22、23の平均厚さは、配線に要求される導電率等に応じて適宜設定されるものの、例えば1〜30μm程度とされる。
また、各導体層22、23に形成される配線パターンの幅も、配線に要求される導電率や各導体層22、23の厚さ等に応じて適宜設定されるものの、例えば2〜1000μm程度であるのが好ましく、5〜500μm程度であるのがより好ましい。
なお、このような配線パターンは、例えば、一旦全面に形成された導体層をパターニングする(例えば、銅張基板の銅箔を部分的にエッチングする)方法、別途用意した基板上にあらかじめパターニングされた導体層を転写する方法等により形成される。
また、図3に示す各導体層22、23は、発光素子3の発光部31とミラー16との間の光路に干渉しないよう設けられた開口部221、231を有している。その結果、開口部221には導体層22の厚さに相当する高さの空隙222が、開口部231には導体層23の厚さに相当する高さの空隙232がそれぞれ生じている。
また、発光素子3や半導体素子4と導体層23との間は、各種ハンダ、各種ろう材等により電気的かつ機械的に接続される。
ハンダおよびろう材としては、例えば、Sn−Pb系の鉛ハンダの他、Sn−Ag−Cu系、Sn−Zn−Bi系、Sn−Cu系、Sn−Ag−In−Bi系、Sn−Zn−Al系の各種鉛フリーハンダ、JISに規定された各種低温ろう材等が挙げられる。
なお、発光素子3や半導体素子4としては、例えばBGA(Ball Grid Array)タイプやLGA(Land Grid Array)タイプ等のパッケージ仕様の素子が用いられる。
また、導体層23とハンダ(またはろう材)とが接触することにより、導体層23を構成する金属成分の一部がハンダ側に溶解する現象が生じるおそれがある。この現象は、特に銅製の導体層23に対して生じる場合が多いことから「銅食われ」と呼ばれている。銅食われが発生すると、導体層23が薄くなったり、欠損したりする等の不具合を招き、導体層23の機能を損なうおそれがある。
そこで、ハンダと接する導体層23の表面には、あらかじめ、ハンダの下地として銅食われ防止膜(下地層)を形成しておくのが好ましい。この銅食われ防止膜の形成により、銅食われが防止され、導体層23の機能を長期にわたって維持することができる。
銅食われ防止膜の構成材料としては、例えば、ニッケル(Ni)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、パラジウム(Pd)等が挙げられ、銅食われ防止膜は、これらの金属組成1種からなる単層であってもよく、2種以上を含む複合層(例えば、Ni−Au複合層、Ni−Sn複合層等)であってもよい。
銅食われ防止膜の平均厚さは、特に限定されないが、0.05〜5μm程度であるのが好ましく、0.1〜3μm程度であるのがより好ましい。これにより、銅食われ防止膜そのものの電気抵抗を抑制しつつ、十分な銅食われ防止作用を発現させることができる。
なお、発光素子3や半導体素子4と導体層23との電気的接続は、上述したような接続方法の他、ワイヤーボンディング、異方性導電フィルム(ADF)、異方性導電ペースト(ACP)等を用いた製造方法で行われてもよい。
このうち、ワイヤーボンディングによれば、発光素子3や半導体素子4と回路基板2との間で熱膨張差が生じたとしても、柔軟性の高いボンディングワイヤーによって熱膨張差を吸収することができるので、接続部に対する応力集中が防止される。
また、発光素子3と導体層23との隙間および発光素子3の側方には、発光素子3を囲うように封止材61が配置されている。これにより、導体層23に開口部231を形成したことによる空隙232にも封止材61が充填される。
一方、半導体素子4と導体層23との隙間および半導体素子4の側方には、封止材62が充填されている。
このような封止材61、62は、発光素子3および半導体素子4の耐候性(耐熱性、耐湿性、気圧変化等)を高めるとともに、振動、外力、異物付着等から発光素子3および半導体素子4を確実に保護することができる。
封止材61、62としては、例えば、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられる。
また、回路基板2と光導波路1との間は接着層5により接着されているが、接着層5を構成する接着剤としては、例えば、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤の他、各種ホットメルト接着剤(ポリエステル系、変性オレフィン系)等が挙げられる。また、特に耐熱性の高いものとして、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリイミドアミドエーテル、ポリエステルイミド、ポリイミドエーテル等の熱可塑性ポリイミド接着剤が挙げられる。
また、図3に示す接着層5は、レンズ100と絶縁性基板21との間に生じた空隙222を埋めるように設けられている。これにより、レンズ100の表面における反射や散乱に伴う入射効率の低下を防止することができる。なお、かかる観点から、接着層5の屈折率は、レンズ100の屈折率より低いことが好ましく、その差は0.01以上であるのがより好ましい。
なお、この屈折率差を大きくする観点からは、空隙222は接着剤で充填されないのが好ましい。これにより、空隙222には空気が充填されることとなり、レンズ100との屈折率差を最大化することができる。その結果、この屈折率差に基づいて発現するレンズ100による収束機能をより高めることができる。
以上のような光導波路モジュール10では、発光素子3の発光部31から出射した信号光が、空隙232に充填された封止材61、絶縁性基板21、および空隙222に充填された接着層5を通過して、光導波路1に入射される。
なお、光導波路モジュール10は、光導波路1の他方の端部にも、回路基板2を有していてもよく、他の光学部品との接続を担うコネクター等を有していてもよい。
図6は、図2に示す光導波路モジュールの他の構成例を示す縦断面図である。
図6(a)に示す光導波路モジュール10では、光導波路1の他方の端部(図2の右側の端部)の上面にも回路基板2が設けられている。また、この回路基板2上には、受光素子7と半導体素子4とが搭載されている。また、光導波路1には、受光素子7の受光部71の位置に対応してミラー16およびレンズ100が形成されている。
このような光導波路モジュール10では、光導波路1からミラー16を介して出射した信号光が、受光素子7の受光部71に到達すると、光信号から電気信号への変換がなされる。このようにして光導波路1の両端部間における光通信が行われる。
一方、図6(b)に示す光導波路モジュール10では、光導波路1の他方の端部に、他の光学部品との接続を担うコネクター20が設けられている。コネクター20としては、光ファイバーとの接続に用いられるPMTコネクター等が挙げられる。コネクター20を介して光導波路モジュール10を光ファイバーに接続することで、より長距離の光通信が可能になる。
なお、図6では、光導波路1の一方の端部と他方の端部とで1対1の光通信を行う場合について説明したが、光導波路1の他方の端部には、光路を複数に分岐することができる光スプリッターを接続するようにしてもよい。
(ミラーおよびレンズの形成)
ところで、上記のようなミラー16を構成する凹部161およびレンズ100を構成する凸部101は、それぞれ成形型により形成されたものである。具体的には、凹部161は、その形状に対応した凸部を成形面に有する成形型を用いた成形プロセスにおいて、成形型が転写されることにより形成されたものである。また、凸部101も、その形状に対応した凹部を成形面に有する成形型を用いた成形プロセスにおいて、成形型が転写されることにより形成されたものである。前述したように、成形型は一般に寸法精度が非常に高く、このようなプロセスで形成された凹部161および凸部101は、その高い寸法精度が反映されることによって、相互の位置関係の精度が高いものとなる。このため、ミラー16とレンズ100を経由する光路、すなわち発光素子3と光導波路1との光結合損失を特に小さくすることができる。
また、レンズ100を構成する凸部101は、クラッド層12と同じ材料で構成され、クラッド層12と一体的に形成されている。このため、レンズ100とクラッド層12との間を信号光が通過する際に、界面等が存在せず、それゆえ界面における散乱等に伴う損失もほとんど発生しない。このため、凸部101が成形型を用いた成形プロセスにより形成されることで、発光素子3と光導波路1との光結合損失を特に小さくすることができる。
また、このようなプロセスで形成されたミラー16およびレンズ100は、それぞれ複雑な形状を有するものであっても精度の高いものとなる。例えば、レンズ100の湾曲凸面が球面である場合の他、非球面である場合でも、面精度の高い湾曲凸面が得られる。これにより、例えば球面収差といった各種収差の少ないレンズ100が得られる。なお、非球面形状としては、例えば、二次曲線回転体、四次曲線回転体、六次曲線回転体、正規分布曲線回転体、三角関数曲線回転体、その他、任意の曲線の回転体等の形状が挙げられる。
なお、形成方法の詳細については、後に詳述する。
≪第2実施形態≫
次に、本発明の光導波路モジュールおよびそれに含まれる本発明の光導波路の第2実施形態について説明する。
図7(a)は、第2実施形態の断面図であり、図7(b)は、断面図の幅方向に引かれた中心線C1上の屈折率分布Wの一例を模式的に示す図である。
以下、第2実施形態について説明するが、第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。なお、各図において、第1実施形態と同様の構成部分については、先に説明したのと同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
第1実施形態に係る光導波路1は、いわゆるステップインデックス型の屈折率分布を有するものであるが、本実施形態に係る光導波路1は、いわゆるグレーデッドインデックス型の屈折率分布を有するものである。また、本実施形態に係る光導波路1は、コア層13中に2つのコア部14を有している。これらが異なる以外は、第1実施形態と同様である。
光導波路1の横断面に対して幅方向に線を引いたとき、その線上における屈折率分布Wは、特に限定されないが、本実施形態では、屈折率が高い領域とその両側にそれぞれ隣接する屈折率が低い領域とを有し、かつ屈折率が連続的に変化している分布になっている。本明細書では、このような特徴を有する屈折率分布をグレーデッドインデックス型の分布という。この屈折率分布Wにおいて相対的に屈折率が高い領域に対応する部分が各コア部14、相対的に屈折率が低い領域に対応する部分が各側面クラッド部15になっている。
一方、光導波路1の横断面に対して厚さ方向に線を引いたとき、その線上における屈折率分布Tも、本実施形態では、グレーデッドインデックス型の分布になっている。この屈折率分布Tにおいて相対的に屈折率が高い領域に対応する部分が各コア部14、相対的に屈折率が低い領域に対応する部分がクラッド層11、12になっている。
以下、光導波路1について詳述する。
(屈折率分布W)
図7(b)に示す屈折率分布Wは、屈折率が相対的に高い領域とその両側にそれぞれ隣接する低い領域とを有し、かつ屈折率が連続的に変化している分布になっている。図7(a)に示す断面図のうち、図7(b)に示す屈折率分布Wの屈折率が高い領域に対応する部分がコア部14になっており、屈折率が低い領域に対応する部分が側面クラッド部15になっている。グレーデッドインデックス型の分布は、コア部14に屈折率の極大値が位置し、そこから両側にかけて裾を引くように屈折率が連続的に低下する分布を含んでいればよいが、その裾の先に極小値や別の極大値(前記極大値よりも小さな極大値)を含むような分布もグレーデッドインデックス型の分布の一種である。このような分布が形成されたコア層13に入射された光は、この極大値近傍に集中し易くなる。このため、コア部14を伝搬する信号光はより中心部に閉じ込められることとなり、側面クラッド部15側への漏出が抑制される。その結果、伝送効率の高い光導波路1が得られる。
図7(b)に示す屈折率分布Wは、4つの極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4と、5つの極大値Wm1、Wm2、Wm3、Wm4、Wm5と、を含む分布になっている。また、5つの極大値には、相対的に屈折率の高い極大値(第1の極大値)と、相対的に屈折率の低い極大値(第2の極大値)とが存在している。
このうち、極小値Ws1と極小値Ws2との間および極小値Ws3と極小値Ws4との間には、それぞれ相対的に屈折率の高い極大値Wm2、Wm4が存在している。
光導波路1では、図7に示すように、極小値Ws1と極小値Ws2との間に、相対的に屈折率の高い極大値Wm2が位置していることから、この領域に対応する部分がコア部14となり、同様に、極小値Ws3と極小値Ws4との間にも極大値Wm4が位置していることから、この領域に対応する部分もコア部14となる。なお、図7では、各コア部14のうち、極小値Ws1と極小値Ws2との間に位置しているのをコア部141とし、極小値Ws3と極小値Ws4との間に位置しているのをコア部142とする。
また、極小値Ws1の左側の領域、極小値Ws2と極小値Ws3との間の領域、および極小値Ws4の右側の領域は、それぞれコア部14の側面に隣接する領域であることから、この領域に対応する部分がそれぞれ側面クラッド部15となる。なお、図7では、各側面クラッド部15のうち、極小値Ws1の左側に位置しているのを側面クラッド部151とし、極小値Ws2と極小値Ws3との間に位置しているのを側面クラッド部152とし、極小値Ws4の右側に位置しているのを側面クラッド部153とする。
このように屈折率分布Wは、第2の極大値、極小値、第1の極大値、極小値、第2の極大値がこの順で並ぶ領域を有している。なお、この領域は、コア部の数に応じて繰り返し設けられる。本実施形態のように光導波路1の幅方向に並ぶコア部14の数が2つである場合、屈折率分布Wは、第2の極大値、極小値、第1の極大値、極小値、第2の極大値、極小値、第1の極大値、極小値、第2の極大値のように、極大値と極小値が交互に並び、かつ極大値については第1の極大値と第2の極大値とが交互に並ぶ領域を有しており、その上で第1の極大値の数が2つであればよい。つまり、コア部14の数に対して第1の極大値の数が同数に設定され、さらにそれに応じて第2の極大値や極小値の数が決まることとなる。例えばコア部14がn個である場合には、屈折率分布Wは、第1の極大値をn個、極小値を2n個、第2の極大値をn+1個有していればよい。なお、このような極大値と極小値に対する一定の規則は、屈折率分布Wの全体に適用されている必要はなく、屈折率分布Wの一部のみに適用されていてもよい。
また、これら複数の極小値、複数の第1の極大値、および複数の第2の極大値は、それぞれ互いにほぼ同じ値であることが好ましいが、極小値が第1の極大値や第2の極大値より低く、第2の極大値が第1の極大値より低いという関係が保持されれば、互いの値が多少ずれていても差し支えない。その場合、ずれ量は、複数の極小値の平均値の10%以内に抑えられているのが好ましい。
また、上記のような屈折率分布Wは、光導波路1の光路上においてほぼ同じ分布になるよう設定されている。
以上のような屈折率分布Wに伴い、コア層13には、長尺状の2つのコア部141、142と、これらのコア部14の側面に隣接する3つの側面クラッド部15とが形成されることとなる。
2つのコア部141、142の平均屈折率は、3つの側面クラッド部151、152、153の平均屈折率より高くなっているので、各コア部141、142と各側面クラッド部151、152、153との界面において光の反射を生じさせることができる。
ここで、4つの極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4は、それぞれ、側面クラッド部15における平均屈折率WA未満である。これにより、各コア部14と各側面クラッド部15との間には、側面クラッド部15よりもさらに屈折率の小さい領域が存在することとなる。その結果、各コア部14と各側面クラッド部15との境界付近では、より急峻な屈折率の勾配が形成され、これにより、各コア部14からの光の漏れが確実に抑制されることとなる。その結果、光導波路1の伝送損失を特に小さくすることができる。
また、屈折率分布Wは、全体で屈折率が連続的に変化している。これにより、屈折率が不連続的に変化している場合に比べて、コア部14に光を閉じ込める作用がより増強されるため、伝送損失のさらなる低減が図られる。
さらに、上述したような屈折率分布Wによれば、コア部14のより中心部に近い部分を信号光が集中的に伝搬するため、光路ごとの伝搬時間に差が生じ難くなる。このため、信号光にパルス信号が含まれている場合でも、パルス信号の鈍り(パルス信号の広がり)を抑制することができる。その結果、光通信の品質をより高めることができる。
なお、屈折率分布Wにおいて屈折率が連続的に変化しているとは、屈折率分布Wの曲線が各部で丸みを帯びており、かつ微分可能な曲線であるということである。
また、本実施形態のように、コア層13中にコア部14と側面クラッド部15とを作り込む場合、一般的には、屈折率差を形成する原理による制約から、コア部14の平均屈折率と側面クラッド部15の平均屈折率との間で十分な屈折率差を形成することが難しいが、本発明によれば、平均屈折率の差が小さくても、コア部14に光を確実に閉じ込めることができる。このため、同一層からコア部14と側面クラッド部15とを形成する方法で製造される光導波路1において、本発明は特にその効果を発揮する。
また、屈折率分布Wのうち、極大値Wm2、Wm4は、図7に示すように、極小値Ws1とWs2との間(コア部141)および極小値Ws3とWs4との間(コア部142)に位置しているが、コア部141、142の中でもその幅の中心部に位置しているのが好ましい。これにより、各コア部141、142では、信号光がコア部141、142の幅の中心部に集まる確率が高くなり、相対的に側面クラッド部151、152、153に漏れ出る確率が低くなる。その結果、コア部141、142の伝送損失をより低減することができる。
なお、コア部141の幅の中心部とは、極小値Ws1の位置と極小値Ws2の位置との中点から、その両側にコア部141の幅の30%の距離の領域である。
また、極大値Wm2、Wm4の位置は、必ずしも中心部でなくても、コア部141、142の縁部近傍(各側面クラッド部151、152、153との界面近傍)以外に位置していれば、特性の著しい低下は免れる。すなわち、コア部141、142の伝送損失をある程度抑えることができる。
なお、コア部141の縁部近傍とは、前述した縁部から内側に、コア部141の幅の5%の距離の領域である。
一方、屈折率分布Wのうち、極大値Wm1、Wm3、Wm5は、図7に示すように、極小値Ws1の左側(側面クラッド部151)、極小値Ws2と極小値Ws3との間(側面クラッド部152)、極小値Ws4の右側(側面クラッド部153)に位置しているが、特に側面クラッド部151、152、153の縁部近傍(コア部141、142との界面近傍)以外に位置しているのが好ましい。これにより、コア部141、142中の極大値Wm2、Wm4と、側面クラッド部151、152、153中の極大値Wm1、Wm3、Wm5とが、互いに十分に離間したものとなるため、コア部141、142中の信号光が、側面クラッド部151、152、153中に漏れ出る確率を十分に低くすることができる。その結果、コア部141、142の伝送損失を低減することができる。
なお、側面クラッド部151、152、153の縁部近傍とは、前述した縁部から内側に、側面クラッド部151、152、153の幅の5%の距離の領域である。
また、極大値Wm1、Wm3、Wm5は、側面クラッド部151、152、153の幅の中央部に位置しており、しかも、極大値Wm1、Wm3、Wm5から、それぞれに隣接する極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4に向かって、屈折率が連続的に低下しているのが好ましい。これにより、コア部141、142中の極大値Wm2、Wm4と側面クラッド部151、152、153中の極大値Wm1、Wm3、Wm5との離間距離は、最大限確保されることとなり、しかも極大値Wm1、Wm3、Wm5近傍に光を確実に閉じ込めることができるため、前述したコア部141、142からの信号光の漏出をより確実に抑制することができる。
さらに、極大値Wm1、Wm3、Wm5は、前述したコア部141、142に位置する極大値Wm2、Wm4よりも相対的に小さいので、コア部141、142のような高い光伝送性は有しないものの、周囲よりも屈折率が若干高くなっているため、側面クラッド部151、152、153はわずかな光伝送性を有することとなる。その結果、側面クラッド部151、152、153は、コア部141、142から漏出した信号光を閉じ込めることができ、漏出した信号光が他のコア部へと波及するのを防止することを可能にする。すなわち、極大値Wm1、Wm3、Wm5が存在することで、各コア部14間のクロストークを抑制することができる。
なお、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4は、前述したように、側面クラッド部15の平均屈折率WA未満であるが、その差は、所定の範囲内であることが望まれる。具体的には、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4と側面クラッド部15の平均屈折率WAとの差は、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4とコア部141、142中の極大値Wm2、Wm4との差の3〜80%程度であるのが好ましく、5〜50%程度であるのがより好ましく、7〜30%程度であるのがさらに好ましい。これにより、側面クラッド部15は、クロストークを抑制するのに必要かつ十分な光伝送性を有するものとなる。なお、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4と側面クラッド部15の平均屈折率WAとの差が前記下限値を下回る場合は、側面クラッド部15における光伝送性が小さ過ぎて、クロストークを十分に抑制することができないおそれがあり、前記上限値を上回る場合には、側面クラッド部15における光伝送性が大き過ぎて、コア部141、142の光伝送性に悪影響を及ぼすおそれがある。
なお、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4とコア部141、142中の極大値Wm2、Wm4との屈折率差は、できるだけ大きい方がよいが、0.005〜0.07程度であるのが好ましく、0.007〜0.05程度であるのがより好ましく、0.01〜0.05程度であるのがさらに好ましい。これにより、上述した屈折率差が、コア部141、142中に光を閉じ込めるのに必要かつ十分なものとなる。
また、コア部141、142における屈折率分布Wは、図7(b)に示すように、横軸にコア層13の横断面の幅方向の位置をとり、縦軸に屈折率をとったとき、極大値Wm2近傍および極大値Wm4近傍において、連続的に変化している形状であればよいが、好ましくは上に凸の略U字状(極大値近傍全体が丸みを帯びている)形状とされる。屈折率分布Wがこのような形状をなしていると、コア部141、142における光の閉じ込め作用がより顕著なものとなる。
また、屈折率分布Wは、図7(b)に示すように、極小値Ws1近傍、極小値Ws2近傍、極小値Ws3近傍、極小値Ws4近傍において、屈折率が連続的に変化している形状であればよいが、好ましくは下に凸の略U字状(極小値近傍全体が丸みを帯びている)形状とされる。
なお、上述したような屈折率分布Wが形成された光導波路1では、複数のコア部141、142のうち、一方のコア部に光を入射したとき、他方のコア部への光の漏出が抑制される。すなわち、光導波路1ではクロストークを確実に抑制することができる。
図8は、光導波路1のコア部141に光を入射したときの出射光の強度分布を示す図である。
光導波路1のコア部141に光を入射すると、出射光の強度は、コア部141の出射端面の中心部において最も大きくなる。そして、コア部141の中心部から離れるにつれて出射光の強度は小さくなるが、光導波路1では、コア部141に隣り合うコア部142において極小値をとるような強度分布が得られる。このように光導波路1では、光を入射したコア部141に隣り合うコア部142の位置に出射光の強度分布の極小値が一致するため、コア部142におけるクロストークは極めて小さく抑えられることとなる。その結果、光導波路1は、多チャンネル化および高密度化によっても混信の発生を確実に防止することができる。
このような出射光の強度分布は、光導波路1における屈折率分布Wの特徴的な分布形状に起因したものであると考えられる。すなわち、屈折率分布Wが、極小値とそれに隣接する高さの異なる2種類の極大値とを有し、かつ、全体で屈折率が連続的に変化している、という特徴的な分布になっているため、従来であればコア部142に漏れ出ていた光を、コア部142に隣接する側面クラッド部153等にシフトさせ、その結果、コア部142には強度分布の極小値が位置することになったと考えられる。このような理由から、光導波路1においてクロストークが抑えられることとなり、光導波路1は、クロストークの発生が抑制され、光通信の品質を高め得るものとなる。
また、出射光の強度分布が側面クラッド部15にシフトしたとしても、受光素子等はコア部14の位置に合わせて配置されているため、混信を招くおそれはほとんどなく、光通信の品質を劣化させることはない。
なお、上記のような出射光の強度分布は、屈折率分布Wが上記のような分布になっていれば必ず観測されるわけではなく、入射光のNA(numerical aperture)やコア部141の横断面積、コア部141、142のピッチ等によっては、明瞭な極小値が観測されなかったり、あるいは極小値の位置がコア部142から外れたりする場合もあるが、このような場合でもクロストークは十分に抑制される。
また、図7(b)に示す屈折率分布Wにおいて、側面クラッド部15における平均屈折率をWAとしたとき、極大値Wm2、Wm4近傍における屈折率が連続して平均屈折率WA以上である部分の幅をa[μm]とし、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4近傍における屈折率が連続して平均屈折率WA未満である部分の幅をb[μm]とする。このとき、bは、0.01a〜1.2a程度であるのが好ましく、0.03a〜1a程度であるのがより好ましく、0.1a〜0.8a程度であるのがさらに好ましい。これにより、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4の実質的な幅が、上述した作用・効果を奏するのに必要かつ十分なものとなる。すなわち、bが前記下限値を下回っている場合は、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4の実質的な幅が狭過ぎるため、コア部141、142に光を閉じ込める作用が低下するおそれがある。一方、bが前記上限値を上回っている場合は、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4の実質的な幅が広過ぎて、その分、コア部141、142の幅やピッチが制限され、伝送効率が低下したり多チャンネル化および高密度化が妨げられるおそれがある。
また、側面クラッド部15における平均屈折率WAは、極大値Wm1と極小値Ws1との中点で近似される。
(屈折率分布T)
図9(b)に示す屈折率分布Tは、グレーデッドインデックス型の分布になっている。この屈折率分布Tにおいて相対的に屈折率が高い領域に対応する部分が各コア部14、相対的に屈折率が低い領域に対応する部分がクラッド層11、12になっている。
図9(a)は、第2実施形態の断面図の一部であり、図9(b)は、断面図の厚さ方向に引かれた中心線C2上の屈折率分布Tの一例を模式的に示す図である。なお、図9(b)は、横軸に屈折率をとり、縦軸に中心線C2上の位置をとったときの屈折率分布Tの一例を示す図である。
ここで、屈折率分布Tは、光導波路1の厚さ方向のほぼ中心に位置し、屈折率がほぼ一定である高屈折率領域THと、高屈折率領域THの厚さ方向の両側に位置し、厚さ方向の両側に向かって屈折率が連続的に低下している中屈折率領域TMと、各中屈折率領域TMの厚さ方向の両側に位置し、屈折率がほぼ一定である低屈折率領域TLと、を有している。すなわち、屈折率分布Tのうち、高屈折率領域THにおける屈折率は相対的に高く、低屈折率領域TLにおける屈折率は高屈折率領域THより相対的に低く、中屈折率領域TMでは、高屈折率領域THの屈折率と低屈折率領域TLの屈折率とをつなぐように屈折率が連続的に変化している。このような屈折率分布Tは、いわゆるグレーデッドインデックス型の分布である。
このような屈折率分布Tのうち、高屈折率領域THおよび中屈折率領域TMに対応するのがコア部14(コア層13)であり、低屈折率領域TLに対応するのが各クラッド層11、12である。
換言すれば、コア層13は、高屈折率領域THに対応する高屈折率層と、中屈折率領域TMに対応する中間層により構成されており、各クラッド層11、12は、それぞれ、低屈折率領域TLに対応する低屈折率層により構成されている。
屈折率分布Tを有する光導波路1では、中屈折率領域TMにおいて、コア部14に入射された光が、その光路を徐々にコア部14の中心軸側に変更しつつ伝搬される、という挙動を示す。このため、入射光は、コア部14の中心軸に沿って伝搬し、各クラッド層11、12側には漏出し難くなる。その結果、このような屈折率分布Tを有する光導波路1では、伝送損失が抑えられることとなる。
ここで、図9に示す屈折率分布Tでは、高屈折率領域THが、コア部14の厚さ方向の中心部に位置している。これにより、コア部14を伝搬する光は、コア部14の厚さ方向の中心部に集まる確率が高くなり、相対的に各クラッド層11、12に漏れ出る確率がより低くなる。その結果、コア部14の伝送損失をより低減することができる。
このような屈折率分布Tは、例えば、上述した光導波路1を複数枚積層してなる光導波路において、その層間(光導波路同士の間)におけるクロストークの発生を確実に防止する作用をもたらす。すなわち、1層目のコア層13中のコア部14に光を入射したとき、その光が2層目のコア層13中のコア部14に侵入して混信を招くことが確実に防止される。したがって、光導波路1は、厚さ方向の多チャンネル化、高密度化を容易にするものである。
なお、コア部14に対応する領域の中心部とは、コア部14の厚さ方向の中点から両側に、コア部14の厚さの30%の距離の領域である。
また、高屈折率領域THの位置は、必ずしもコア部14に対応する領域の中心部でなくてもよく、コア部14の縁部近傍(各クラッド層11、12との界面近傍)以外に位置していれば、特性の著しい低下は免れる。これにより、コア部14の伝送損失をある程度抑えることができる。
なお、コア部14の縁部近傍とは、前述した縁部から内側に、コア部14の厚さの5%の距離の領域である。
また、屈折率分布Tのうち、高屈折率領域THにおける屈折率nHと、低屈折率領域TL(クラッド層11およびクラッド層12)における屈折率nLとの屈折率差の割合(屈折率nLに対する割合)は、できるだけ大きいほどよいが、好ましくは0.5%以上とされ、より好ましくは0.8%以上とされる。なお、上限値は、特に設定されなくてもよいが、好ましくは5.5%程度とされる。屈折率の差が前記下限値未満であると光を伝送する効果が低下する場合があり、一方、前記上限値を超えても、光の伝送効率のそれ以上の増大は期待できない。
なお、屈折率nHと屈折率nLとの前記屈折率差の割合は、次式で表わされる。
屈折率差の割合(%)=|nH/nL−1|×100
また、高屈折率領域THや低屈折率領域TLでは、屈折率がほぼ一定であるが、具体的には、各領域における平均屈折率からのずれ量が、平均屈折率の10%以下であるのが好ましく、5%以下であるのがより好ましい。
また、光導波路1は、細長い帯状をなしており、上記のような屈折率分布Tは、光導波路1の長手方向全体においてほぼ同じ分布が維持されている。
以上のような屈折率分布Tに基づいて、光導波路1は、クラッド層11、コア層13およびクラッド層12の3層に分けられている。
なお、本明細書では、説明の便宜上、光導波路1を上記3層に分けて説明しているが、上述したように屈折率分布Tの変化は連続的であり、それとともに3層の界面ではその組成も連続的に変化しているため、各層の境界は明瞭ではなく、視覚的に境界を識別することができない場合もある。
なお、屈折率分布Tは、以下のような分布であってもよい。
図10(a)は、第2実施形態の断面図の一部であり、図10(b)は、断面図の厚さ方向に引かれた中心線C3上の屈折率分布Tの一例を模式的に示す図である。なお、図10(b)は、横軸に屈折率をとり、縦軸に横断面のコア部の厚さ方向の位置をとったときの屈折率分布Tの一例を模式的に示す図である。
図10(b)に示す屈折率分布Tは、その中心部に位置する極大値Tmと、極大値Tmの両側にそれぞれ位置する極小値Ts1、Ts2を有している。なお、極大値Tmの下側に位置する極小値をTs1とし、上側に位置する極小値をTs2とする。
そして、図10に示す光導波路1では、極小値Ts1と極小値Ts2との間の領域に極大値Tmを含んでおり、かつ、この領域がコア部14となる。
一方、極小値Ts1の下側の領域がクラッド層11となり、極小値Ts2の上側の領域がクラッド層12となる。
すなわち、屈折率分布Tは、極小値、極大値、極小値がこの順で並ぶ領域を有している。
なお、この領域は、コア層13が積層される数に応じて繰り返し設けられ、例えばコア層13を2層設けた場合、屈折率分布Tでは、極小値と極大値が交互に並ぶこととなる。この場合、極大値については、相対的に大きい第1の極大値と、相対的に小さい第2の極大値が、交互に並んでいるのが好ましい。すなわち、第2の極大値、極小値、第1の極大値、極小値、第2の極大値、極小値、第1の極大値・・・のように並んでいればよい。
また、これらの複数の極小値、複数の第1の極大値、および複数の第2の極大値は、それぞれ互いにほぼ同じ値であることが好ましいが、極小値は第1の極大値や第2の極大値より小さく、第2の極大値は第1の極大値より小さいという関係が保持されれば、互いの値が多少ずれていても差し支えない。その場合、ズレ量は、複数の極小値の平均値の10%以内に抑えられているのが好ましい。
また、光導波路1は、細長い帯状をなしており、上記のような屈折率分布Tは、光導波路1の長手方向全体においてほぼ同じ分布が維持されている。
ここで、極小値Ts1は、クラッド層11における平均屈折率TA未満であり、極小値Ts2は、クラッド層12における平均屈折率TA未満である。これにより、コア部14と各クラッド層11、12との間に、各クラッド層11、12よりもさらに屈折率の小さい領域が存在することとなる。その結果、各極小値Ts1、Ts2の近傍では、より急峻な屈折率の勾配が形成され、これにより、各コア部14から各クラッド層11、12への光の漏れが抑制されるため、伝送損失の小さい光導波路1が得られる。
また、屈折率分布Tは、全体で屈折率が連続的に変化している。これにより、ステップインデックス型の屈折率分布を有する光導波路に比べ、コア部14に光を閉じ込める作用がより増強されるため、伝送損失のさらなる低減が図られる。
さらに、上述したような各極小値Ts1、Ts2を有するとともに、屈折率が連続的に変化している屈折率分布Tによれば、コア部14のより中心部に近い領域を伝送光が集中的に伝搬するため、光路ごとの伝搬時間に差が生じ難くなる。このため、伝送光にパルス信号が含まれている場合でも、パルス信号の鈍り(パルス信号の広がり)を抑制することができる。その結果、光通信の品質をより高め得る光導波路1が得られる。
なお、屈折率分布Tにおいて屈折率が連続的に変化しているとは、屈折率分布Tの曲線が各部で丸みを帯びており、この曲線が微分可能であるという状態である。
また、屈折率分布Tのうち、極大値Tmは、図10に示すようにコア部14に位置しているが、コア部14の中でもその厚さの中心部に位置している。これにより、コア部14では、伝送光がコア部14の厚さの中心部に集まる確率が高くなり、相対的に各クラッド層11、12に漏れ出る確率が低くなる。その結果、コア部141、142の伝送損失をより低減することができる。
なお、コア部14の厚さの中心部とは、極小値Ts1と極小値Ts2の中点から両側に、コア部14の厚さの30%の距離の領域である。
また、極大値Tmの位置は、できればコア部14の厚さの中心部に位置していることが望まれるが、必ずしも中心部でなくても、コア部14の縁部近傍(各クラッド層11、12との界面近傍)以外に位置していれば、特性の著しい低下は免れる。すなわち、コア部14の伝送損失をある程度抑えることができる。
なお、コア部14の縁部近傍とは、前述した縁部から内側に、コア部14の厚さの5%の距離の領域である。
一方、屈折率分布Tでは、各クラッド層11、12において、コア部14との界面近傍以外で最も高く、コア部14との界面近傍で最も低くなるよう屈折率が変化している。これにより、コア部14中の極大値Tmと、各クラッド層11、12中における屈折率の高い領域とが、互いに十分に離間したものとなるため、コア部14中の伝送光が、各クラッド層11、12中に漏れ出る確率を十分に低くすることができる。その結果、コア部14の伝送損失を低減することができる。
なお、各クラッド層11、12におけるコア部14との界面近傍とは、この界面から内側に、各クラッド層11、12の厚さの5%の距離の領域である。
また、各クラッド層11、12における平均屈折率TAは、極小値Ts1、Ts2と各クラッド層11、12における最大値との中点で近似される。
また、前述したように複数のコア層13を積層する場合には、相対的に大きい第1の極大値がコア部中に位置し、相対的に小さい第2の極大値はクラッド層中に位置することとなる。この場合、好ましくは、第2の極大値は、クラッド層の厚さの中央部に位置しているのが好ましい。これにより、コア部中に位置する第1の極大値と、クラッド層中に位置する第2の極大値との離間距離が、最大限確保され、しかもコア部から漏れ出た光が、他のコア部に侵入しないよう、クラッド層中に閉じ込めることができるようになる。これにより、複数のコア層13を積層した場合でも、層間におけるクロストークを確実に抑制することができる。
なお、極小値Ts1、Ts2は、前述したように、各クラッド層11、12の平均屈折率TA未満であるが、両者の差は、所定の範囲内であることが望まれる。具体的には、極小値Ts1、Ts2とクラッド層11、12の平均屈折率TAとの差は、極小値Ts1、Ts2とコア部14中の極大値Tmとの差の3〜80%程度であるのが好ましく、5〜50%程度であるのがより好ましく、7〜30%程度であるのがさらに好ましい。これにより、各クラッド層11、12は、クロストークを抑制するのに必要かつ十分な光伝送性を有するものとなる。なお、極小値Ts1、Ts2と各クラッド層11、12の平均屈折率TAとの差が前記下限値を下回る場合は、各クラッド層11、12における光伝送性が小さ過ぎて、クロストークを十分に抑制することができないおそれがあり、前記上限値を上回る場合には、各クラッド層11、12における光伝送性が大き過ぎて、コア部14の光伝送性に悪影響を及ぼすおそれがある。
また、極小値Ts1、Ts2とコア部14中の極大値Tmとの屈折率差は、できるだけ大きい方がよいが、0.005〜0.07程度であるのが好ましく、0.007〜0.05程度であるのがより好ましく、0.01〜0.05程度であるのがさらに好ましい。これにより、上述した屈折率差が、コア部14中に光を閉じ込めるのに必要かつ十分なものとなる。
また、コア部14における屈折率分布Tは、横軸にコア部14の横断面の位置をとり、縦軸に屈折率をとったとき、極大値Tm近傍において、屈折率が連続的に変化している形状であれば上に凸の略V字状(極大値以外はほぼ直線状)をなしていてもよいが、好ましくは上に凸の略U字状(極大値近傍全体が丸みを帯びている)とされる。屈折率分布Tがこのような形状をなしていると、コア部14における光の閉じ込め作用がより顕著なものとなる。
また、屈折率分布Tは、極小値Ts1近傍および極小値Ts2近傍において、屈折率が連続的に変化している形状であれば下に凸の略V字状(極大値以外はほぼ直線状)をなしていてもよいが、好ましくは下に凸の略U字状(極大値近傍全体が丸みを帯びている)とされる。
≪第3実施形態≫
次に、本発明の光導波路モジュールの第3実施形態について説明する。
図11は、本発明の光導波路モジュールの第3実施形態を示す縦断面図である。
以下、第3実施形態について説明するが、第1、2実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。なお、図11において、第1実施形態と同様の構成部分については、先に説明したのと同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
図11に示す光導波路モジュール10は、光導波路1と回路基板2との間に設けられた実装基板17を有する以外は、第1実施形態と同様である。
実装基板17は、光導波路1の上面を覆うよう構成されたものであり、光導波路1と回路基板2との間に配置されている。そして、実装基板17は、光導波路1や回路基板2、発光素子3等を実装している。
このような実装基板17のうち、導体層22、23に設けられた開口部221、231に対応する位置には貫通孔171が形成されている。そして、光導波路1および実装基板17は、この貫通孔171内にレンズ100が突出するように配置されている。その上で、貫通孔171内のレンズ100以外の空間を埋めるように、充填部172が配置されている。
ここで、充填部172は、その屈折率がレンズ100の屈折率より低いことが好ましく、その差は0.01以上であるのがより好ましい。これにより、発光素子3から出射した信号光をレンズ100に入射させる際、レンズ100の表面における反射や散乱に伴って入射効率が低下するのを防止することができる。
なお、充填部172の構成材料としては、透光性を有する材料であれば特に限定されないが、例えば、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられる。
また、実装基板17としては、例えば、紙、ガラス布、樹脂フィルム等を基材とし、この基材に、フェノール系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、シアネート樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂等の樹脂材料を含浸させたものが挙げられる。具体的には、ガラス布・エポキシ銅張積層板、ガラス不織布・エポキシ銅張積層板等のコンポジット銅張積層板に使用される絶縁性基板の他、ポリエーテルイミド樹脂基板、ポリエーテルケトン樹脂基板、ポリサルフォン系樹脂基板等の耐熱・熱可塑性の有機系リジッド基板や、アルミナ基板、窒化アルミニウム基板、炭化ケイ素基板等のセラミックス系リジッド基板等が挙げられる。
実装基板17の平均厚さは、レンズ100の高さより厚ければ特に限定されないが、好ましくは300μm〜3mm程度、より好ましくは500μm〜2.5mm程度とされる。
また、貫通孔171の内径は、発光素子3から出射される信号光の出射角やミラー16の有効面積に応じて適宜設定される。なお、これは、導体層22、23に設けられた開口部221、231についても同様である。
なお、充填部172は、必要に応じて設けられればよく、省略してもよい。その場合、貫通孔171内は空気で充填されることとなり、レンズ100との屈折率差を最大化することができる。その結果、この屈折率差に基づいて発現するレンズ100による収束機能をより高めることができる。
<光導波路の製造方法および光導波路モジュールの製造方法>
≪第1製造方法≫
次に、本発明の光導波路の製造方法の第1実施形態および上述したような光導波路モジュールを製造する方法の一例について説明する。
図1に示す光導波路モジュール10は、光導波路1、回路基板2、発光素子3および半導体素子4を用意し、これらを実装することで製造される。
このうち、回路基板2は、絶縁性基板21の両面を覆うように導体層を形成した後、不要部分を除去(パターニング)し、配線パターンを含む導体層22、23を残存させることで形成される。
導体層の製造方法としては、例えば、プラズマCVD、熱CVD、レーザーCVDのような化学蒸着法、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の物理蒸着法、電解めっき、無電解めっき等のめっき法、溶射法、ゾル・ゲル法、MOD法等が挙げられる。
また、導体層のパターニング方法としては、例えばフォトリソグラフィー法とエッチング法とを組み合わせた方法が挙げられる。
このようにして形成された回路基板2と、後述する方法で製造された光導波路1と、を接着層5により接着・固定する。
次いで、回路基板2上に発光素子3および半導体素子4を搭載する。これにより、導体層23と、発光素子3の電極32および半導体素子4の電極42とが電気的に接続される。
この電気的接続は、例えば、ハンダやろう材を、バンプやボールの形態で、あるいはハンダペースト(ろう材ペースト)の形態で供給し、加熱によって溶融・固化させることで行われる。
その後、封止材61、62を供給し、封止する。
以上のようにして光導波路モジュール10が得られる。
次に、光導波路の製造方法(本発明の光導波路の製造方法)の一例について説明する。
光導波路1は、下方からクラッド層11、コア層13およびクラッド層12をこの順で積層してなる積層体(母材)と、この積層体の一部を除去することで形成されたミラー16と、クラッド層12の上面に形成されたレンズ100と、を有している。
図12〜14は、それぞれ図2に示す光導波路を製造する方法を説明するための模式図(縦断面図)である。なお、図12、14は、それぞれ光導波路の長手方向に沿って切断した縦断面図であり、図13は、光導波路の幅方向に沿って切断した縦断面図である。
以下、光導波路の製造方法を、[1]層910を形成する工程、[2]ミラー16を形成する工程、に分けて説明する。
[1]図12(b)に示す層910は、クラッド層11、コア層13およびクラッド層12を多色成形により一括成膜する方法、クラッド層11、コア層13およびクラッド層12を順次成膜して形成する方法、あるいは、クラッド層11、コア層13およびクラッド層12をあらかじめ基材上に成膜した後、それぞれを基板から剥離して貼り合わせる方法等により製造される。
ここでは、一例として、多色成形による方法について説明する。具体的には、[1−1]支持基板951上に2種類の光導波路形成用組成物901、902を層状に押出成形して層910を得る。[1−2]次いで、層910の一部に活性放射線を照射することで屈折率差を生じさせる。
以下、各工程について順次説明する。
[1−1]まず、光導波路形成用組成物901、902を用意する。
光導波路形成用組成物901、902は、それぞれ、ポリマー915と、添加剤920(本実施形態では、少なくともモノマーを含む。)と、を含有するものであるが、その組成はやや異なっている。
2種類の組成物のうち、光導波路形成用組成物901は、主にコア層13を形成するための材料であり、活性放射線の照射により、ポリマー915中において少なくともモノマーの活発な反応が生じ、それに伴って屈折率分布に変化を生じさせる材料である。すなわち、光導波路形成用組成物901は、ポリマー915とモノマーの存在比率の偏りによって屈折率分布に変化が生じ、その結果、コア層13中にコア部14と側面クラッド部15とを形成することのできる材料である。
一方、光導波路形成用組成物902は、主にクラッド層11、12を形成するための材料であり、光導波路形成用組成物901より低屈折率の材料で構成されている。
光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902との屈折率差は、それぞれに含まれるポリマー915の組成、モノマーの組成、ポリマー915とモノマーとの存在比率等を設定することにより、適宜調整することができる。
例えば、モノマーの屈折率がポリマー915より低い場合、組成物中のモノマーの含有率は、光導波路形成用組成物901より光導波路形成用組成物902の方が高くなっている。一方、モノマーの屈折率がポリマー915より高い場合、組成物中のモノマーの含有率は、光導波路形成用組成物902より光導波路形成用組成物901の方が高くなっている。換言すれば、ポリマー915やモノマーの各屈折率に応じて、各光導波路形成用組成物901、902中のポリマー915および添加剤920の組成が適宜選択されている。
また、光導波路形成用組成物901および光導波路形成用組成物902では、モノマーの含有率が互いにほぼ等しくなるよう、組成が設定されているのが好ましい。このように設定すれば、光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902との間で、モノマーの含有率の差が小さくなるため、これをきっかけにしたモノマーの拡散移動が抑制される。モノマーの拡散移動は、前述したように屈折率差の形成において有用であるが、望ましくない方向に移動することが避けられない場合もある。本発明では、後述する多色押出成形法により、層910の厚さ方向の屈折率分布を形成することが可能であるため、少なくとも厚さ方向においてはモノマーの拡散移動が抑制されていても差し支えなく、むしろ厚さ方向における意図しないモノマーの拡散移動は抑制される方が好ましい。意図しないモノマーの拡散移動を抑制することにより、最終的に目的とする形状の屈折率分布Tを有する光導波路1を確実に製造することができる。
なお、モノマーの含有率をほぼ等しくした場合には、光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902との間で、ポリマー915またはモノマーの条件を異ならせればよい。また、用いるモノマーの組成、すなわち屈折率を異ならせるようにしてもよい。このようにすれば、光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902とでモノマーの含有率をほぼ等しくし、モノマーの拡散移動を抑制しながら、両者の間に屈折率差を形成することができる。
次いで、支持基板951上に光導波路形成用組成物901、902を多色押出成形法により層状に成形する。
多色押出成形法では、光導波路形成用組成物901を1層で押し出すと同時に、この層の両面側にそれぞれ光導波路形成用組成物902を押し出すことで、3層を積層してなる多色成形体914を一括形成する。具体的には、多色成形体914では、光導波路形成用組成物902、光導波路形成用組成物901、および光導波路形成用組成物902が、この順でそれぞれ押し出されるため、組成物同士の境界においては、光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902とがわずかに混濁している。したがって、組成物同士の境界近傍では、光導波路形成用組成物901の一部と光導波路形成用組成物902の一部とが混合し、厚さ方向に沿って混合比率が連続的に変化している領域が形成される。その結果、多色成形体914は、図12(a)の下方から、光導波路形成用組成物902からなる第1成形層914a(第2の層状成形物)、光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902の混合物からなる第2成形層914b、光導波路形成用組成物901からなる第3成形層914c(第1の層状成形物)、光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902の混合物からなる第4成形層914d、および光導波路形成用組成物902からなる第5成形層914e(第2の層状成形物)が、この順で積層されたものとなる。
そして、得られた多色成形体914中の溶媒を蒸発(脱溶媒)させ、層910を得る(図12(b)参照)。
得られた層910は、図12(b)の下方から、第1成形層914aから形成されるクラッド層11と、第2成形層914b、第3成形層914cおよび第4成形層914dから形成されるコア層13と、第5成形層914eから形成されるクラッド層12との積層体となる。
得られた層910中では、ポリマー(マトリックス)915が実質的に一様かつランダムに存在し、添加剤920は、ポリマー915中に実質的に一様かつランダムに分散している。これにより、層910中には、添加剤920が実質的に一様かつランダムに分散している。
層910の平均厚さは、形成すべき光導波路1の厚さに応じて適宜設定され、特に限定されないが、10〜500μm程度であるのが好ましく、20〜300μm程度であるのがより好ましい。
なお、支持基板951には、例えば、シリコン基板、二酸化ケイ素基板、ガラス基板、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等が用いられる。
ところで、このような層910を得るための多色成形体914は、以下のようなダイコーター(多色押出成形装置)800を用いて製造される。
図17は、多色成形体914を得るダイコーターを示す斜視図、図18は、ダイコーターの一部を拡大して示す縦断面図である。
ダイコーター800は、図17に示すように、上リップ部811と、その下方に設けられた下リップ部812とを備えるダイヘッド810を有している。
上リップ部811および下リップ部812は、それぞれ長尺のブロック体で構成され、互いに重ね合わされている。合わせ面には空洞のマニホールド820が形成されている。マニホールド820の幅はダイヘッド810の右側ほど広くなるよう連続的に拡張している。一方、マニホールド820の厚さはダイヘッド810の右側ほど小さくなるよう連続的に縮小している。そして、マニホールド820の右端では、空洞の幅が最大でかつ厚さが最小になっており、スリット821を形成している。
このダイヘッド810は、マニホールド820の左側から供給された光導波路形成用組成物901、902をスリット821から右側に成形しつつ押し出すことができる。すなわち、スリット821の形状に応じて、多色成形体914の幅および厚さが決定される。
ダイヘッド810の左側には、ミキシングユニット830が設けられている。ミキシングユニット830は、光導波路形成用組成物901、902をそれぞれダイヘッド810に供給するための2系統の配管を組み合わせて構成されており、光導波路形成用組成物901をダイヘッド810に供給する第1の供給管831と、光導波路形成用組成物902をダイヘッド810に供給する第2の供給管832とを有している。
また、第1の供給管831および第2の供給管832から供給された光導波路形成用組成物901、902は、ダイヘッド810との接続を担う接続部835において合流し、ダイヘッド810のマニホールド820へと供給される。なお、第2の供給管832は、途中で上下2つに分岐し、接続部835の上層部および下層部にそれぞれ接続されている。一方、第1の供給管831は、接続部835の中層部に接続されている。すなわち、接続部835では、光導波路形成用組成物901で構成される1層の流れを、光導波路形成用組成物902で構成される上下2層の流れで挟み込むようにして合流している。
また、ミキシングユニット830は、第1の供給管831と第2の供給管832との合流地点に設けられた、複数のピン836を有している。これらのピン836は、長尺の円柱状をなしており、その軸と、第1の供給管831および第2の供給管832の延伸方向とがほぼ直交するよう配置されている。また、図18では、これらのピン836が、接続部835の上層部と中層部との間、および、下層部と中層部との間にそれぞれ3本ずつ設けられている。なお、ピン836の本数は特に限定されないが、好ましくは2本以上とされ、より好ましくは3〜10本程度とされる。また、ピン836は、光導波路形成用組成物901、902間に乱流を生じさせ得るものであれば、他の構造物(例えば、メッシュ、パンチングメタル等)で代替することもできる。
ダイヘッド810の右側には、多色押出成形された多色成形体914を搬送する搬送部840が設けられている。搬送部840は、ローラー841と、ローラー841に沿って移動する搬送フィルム842とを有している。搬送フィルム842はローラー841の回転により、図17の下方から右側へと搬送されるが、その際に、ローラー841上にて多色成形体914を積層する。これにより、多色成形体914の形状を保持しつつ、右側へと搬送することができる。
次いで、ダイコーター800の動作について説明する。
ミキシングユニット830に光導波路形成用組成物901、902が同時に供給されると、接続部835において3層の層流が形成される。接続部835において光導波路形成用組成物901、902が合流する際、合流部に設けられた複数のピン836の作用により、光導波路形成用組成物901、902の流れに乱れが生じる。この乱れは、層流間の境界を不明瞭とし、境界では光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902とが混在した領域が形成される。
このようにして形成された層流は、ダイヘッド810のマニホールド820において、幅方向に拡張されるとともに厚さ方向には圧縮される。その結果、前述したような、第1成形層914a、第2成形層914b、第3成形層914c、第4成形層914d、および第5成形層914eが、下方からこの順で積層されてなる多色成形体914が形成される。そしてこのような多色成形体914を用いることにより、最終的に前述した厚さ方向の屈折率分布Tを有する光導波路1が得られる。
なお、多色成形体914は、搬送フィルム842上に形成されるが、この搬送フィルム842をそのまま前述した支持基板951として利用することもできる。
また、図17に示すダイコーター800は、コア層13を1層含む層910を形成可能であるが、コア層13を複数層設ける場合には、それに応じて、ミキシングユニット830の構造を変更すればよい。具体的には、コア層13の層数に応じて第1の供給管831を分岐し、さらに、各第1の供給管831から押し出された光導波路形成用組成物901の各層を挟むように、第2の供給管832の分岐数を増やすようにすればよい。
図19は、ミキシングユニット830の他の構成例を示す断面図である。なお、図19では、複雑になるのを避けるため、第1の供給管831および第2の供給管832の管軸を線で模式的に示しており、各供給管831、832に各組成物を注入する始点を●印で示している。また、光導波路形成用組成物901の流れを実線の矢印で、光導波路形成用組成物902の流れを破線の矢印で、光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902の混合物の流れを一点鎖線の矢印で、それぞれ示している。
図19に示す第1の供給管831は、始点831aから3つに分岐しており、このうち、中央の分岐管8311は、真っ直ぐにダイヘッド810方向に延伸している。
一方、中央の分岐管8311の上方には、始点831aから分岐した分岐管8312が斜めに延伸しており、中央の分岐管8311の下方には、始点831aから分岐した分岐管8313が斜めに延伸している。
中央の分岐管8311からやや上方に離れた位置には、第2の供給管832の第1の始点832aが設けられており、この第1の始点832aからは分岐した分岐管8321が上方に延伸しており、また、分岐した分岐管8322が下方に延伸している。
このうち、下方に延伸した分岐管8322は、合流点J1で中央の分岐管8311に合流している。
また、上方に延伸した分岐管8321は、上述した分岐管8312と混合点M1で合流するよう構成されている。混合点M1より先では、分岐管8321と分岐管8312とが集合管8331に集約されており、この集合管8331は、分岐管8322よりもダイヘッド810側(先端側)に位置する合流点J2で中央の分岐管8311に合流している。
一方、中央の分岐管8311からやや下方に離れた位置には、第2の供給管832の第2の始点832bが設けられており、この第2の始点832bからは分岐した分岐管8323が上方に延伸しており、また、分岐した分岐管8324が下方に延伸している。
このうち、上方に延伸した分岐管8323は、合流点J1で中央の分岐管8311に合流している。
また、下方に延伸した分岐管8324は、上述した分岐管8313と混合点M2で合流するよう構成されている。混合点M2より先では、分岐管8323と分岐管8324とが集合管8332に集約されており、この集合管8332は、分岐管8323よりもダイヘッド810側(先端側)に位置する合流点J2で中央の分岐管8311に合流している。
また、各混合点M1、M2および各合流点J1、J2には、前述したピン836が設けられている(図示せず)。なお、各混合点M1、M2では、光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902とが完全に混合されるよう、ピン836の配置および本数が設定されている。一方、各合流点J1、J2では、光導波路形成用組成物901と前記混合物とが部分的に混合されるよう、ピン836の配置および本数が設定されている。
ここで、第1の供給管831の始点831aには、光導波路形成用組成物901が注入される一方、第2の供給管832の第1の始点832aおよび第2の始点832bには、光導波路形成用組成物902が注入される。
光導波路形成用組成物901は、中央の分岐管8311を介して、多色成形体914の中央の層を構成することとなる。
一方、光導波路形成用組成物902は、分岐管8322と分岐管8323とを介して、中央の層を挟むように合流する。
さらに、光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902との混合物は、第2の供給管832を介して、上記の光導波路形成用組成物902で構成された層を挟むように合流する。
以上のようにして多色成形体914が成形される。
なお、ピン836は必要に応じて設けるようにすればよく、例えば、屈折率分布Tをステップインデックス型にする場合には、省略するようにしてもよい。この場合、各組成物の流れには乱れが生じないので、層流間の境界が比較的明瞭となり、光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902とが混在した領域はほとんど形成されない。このようにして得られた層910を用いれば、厚さ方向の屈折率が階段状に変化した屈折率分布Tを有するステップインデックス型の光導波路1も製造することができる。
また、第1の供給管831からの光導波路形成用組成物901の供給条件、例えば、第1の供給管831の内径、第2の供給管832に対する第1の供給管831の合流角度、単位時間当たりの供給量、供給圧力、粘度、温度等と、第2の供給管832からの光導波路形成用組成物902の供給条件、例えば、第2の供給管832の内径、第1の供給管831に対する第2の供給管832の合流角度、単位時間当たりの供給量、供給圧力、粘度、温度等と、を適宜設定することにより、多色成形体914中の各組成物の占有率を変更することができる。これにより、最終的に光導波路1の屈折率分布Tの形状を自在に変更することができる。
なお、上記多色押出成形法およびダイコーターは、多色成形体914を製造する方法および装置の一例であり、層間での組成物の混濁を生じ得る方法および装置であれば、例えば射出成形法(装置)、塗布法(装置)、印刷法(装置)等の各種方法(装置)を用いることもできる。
以上のようにして得られた層910では、厚さ方向において組成が連続的に変化し、これにより厚さ方向において屈折率が連続的に変化した屈折率分布Tが形成されている。
次に、各光導波路形成用組成物901、902に含まれるポリマー915および添加剤920について説明する。
(ポリマー)
ポリマー915は、コア層のベースポリマーとなるものである。
ポリマー915には、透明性が十分に高く(無色透明であり)、かつ、後述するモノマーと相溶性を有するもの、さらに、その中でも後述するようにモノマーが反応(重合反応や架橋反応)可能であり、モノマーが重合した後においても十分な透明性を有するものが好適に用いられる。
ここで、「相溶性を有する」とは、モノマーが少なくとも混和して、光導波路形成用組成物901、902中や層910中においてポリマー915と相分離を起こさないことをいう。
このようなポリマー915としては、例えば、ノルボルネン系樹脂やベンゾシクロブテン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、シリコーン系樹脂、ポリウレタン、フッ素系樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(ポリマーアロイ、ポリマーブレンド(混合物)、共重合体など)用いることができる。
これらの中でも、特に、環状オレフィン系樹脂を主とするものが好ましい。ポリマー915として環状オレフィン系樹脂を用いることにより、優れた光伝送性能や耐熱性を有する光導波路1を得ることができる。
環状オレフィン系樹脂としては、例えば、特開2010−090328号公報に記載されたものが用いられる。
一方、ポリマー915は、前述したようにアクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミド、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリウレタン等であってもよい。
このうち、アクリル系樹脂およびメタクリル系樹脂としては、例えば、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エポキシアクリレート)、ポリ(エポキシメタクリレート)、ポリ(アミノアクリレート)、ポリ(アミノメタクリレート)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(イソシアナートアクリレート)、ポリ(イソシアナートメタクリレート)、ポリ(シアナートアクリレート)、ポリ(シアナートメタクリレート)、ポリ(チオエポキシアクリレート)、ポリ(チオエポキシメタクリレート)、ポリ(アリルアクリレート)、ポリ(アリルメタクリレート)、アクリレート・エポキシアクリレート共重合体(メチルメタクリレートとグリシジルメタクリレートの共重合体)、スチレン・エポキシアクリレート共重合体等が挙げられ、これらの1種または2種以上の複合材料が用いられる。
また、エポキシ系樹脂としては、例えば、脂環式エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン環含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂およびトリグリシジルイソシアヌレート等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上の複合材料が用いられる。
また、ポリイミドとしては、ポリイミド樹脂前駆体であるポリアミド酸を閉環し、硬化(イミド化)させることにより得られる樹脂であれば、特に限定されない。
ポリアミド酸としては、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド中、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを等モル比にて反応させることにより、溶液として得ることができる。
このうち、テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水物等が挙げられる。
一方、ジアミンとしては、例えば、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−2,2−ジメチルビフェニル、2,2−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル等が挙げられる。
また、シリコーン系樹脂としては、例えば、シリコーンゴム、シリコーンエラストマー等が挙げられる。これらのシリコーン系樹脂は、シリコーンゴムモノマーまたはオリゴマーと硬化剤とを反応させることにより得られるものである。
シリコーンゴムモノマーまたはオリゴマーとしては、例えば、メチルシロキサン基、エチルシロキサン基、フェニルシロキサン基を含むものが挙げられる。
また、シリコーンゴムモノマーまたはオリゴマーとしては、光反応性を付与するため、例えば、エポキシ基、ビニルエーテル基、アクリル基等の官能基を導入してなるものが好ましく用いられる。
また、フッ素系樹脂としては、例えば、含フッ素脂肪族環構造を有するモノマーから得られる重合体、2つ以上の重合性不飽和結合を有する含フッ素モノマーを環化重合して得られる重合体、含フッ素系モノマーとラジカル重合性単量体とを共重合して得られる重合体等が挙げられる。
含フッ素脂肪族環構造としては、例えば、ペルフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)、ペルフルオロ(4−メチル−1,3−ジオキソール)、ペルフルオロ(4−メトキシ−1,3−ジオキソール)等が挙げられる。
また、含フッ素モノマーとしては、例えば、ペルフルオロ(アリルビニルエーテル)、ペルフルオロ(ブテニルビニルエーテル)等が挙げられる。
また、ラジカル重合性モノマーとしては、例えば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)等が挙げられる。
なお、コア層の各部の屈折率は、各部におけるポリマー915の屈折率とモノマーの屈折率の相対的な大小関係とその存在比率に応じて決定されるため、用いるモノマーの種類に応じてポリマー915の屈折率を適宜調整するようにしてもよい。
例えば、比較的高い屈折率を有するポリマー915を得るためには、分子構造中に、芳香族環(芳香族基)、窒素原子、臭素原子や塩素原子を有するモノマーを一般的に選択して、ポリマー915が合成(重合)される。一方、比較的低い屈折率を有するポリマー915を得るためには、分子構造中に、アルキル基、フッ素原子やエーテル構造(エーテル基)を有するモノマーを一般的に選択して、ポリマー915が合成(重合)される。
比較的高い屈折率を有するノルボルネン系樹脂としては、アラルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むものが好ましい。かかるノルボルネン系樹脂は、特に高い屈折率を有する。
アラルキルノルボルネンの繰り返し単位が有するアラルキル基(アリールアルキル基)としては、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、ナフチルエチル基、ナフチルプロピル基、フルオレニルエチル基、フルオレニルプロピル基等が挙げられるが、ベンジル基やフェニルエチル基が特に好ましい。かかる繰り返し単位を有するノルボルネン系樹脂は、極めて高い屈折率を有するものであることから好ましい。
また、以上のようなポリマー915は、主鎖から分岐し、活性放射線の照射により、その分子構造の少なくとも一部が主鎖から離脱し得る離脱性基(離脱性ペンダントグループ)を有していてもよい。離脱性基の離脱によりポリマー915の屈折率が低下するため、ポリマー915は、活性放射線の照射の有無によって屈折率差を形成することができる。
このような離脱性基を有するポリマー915としては、例えば、分子構造中に、−O−構造、−Si−アリール構造および−O−Si−構造のうちの少なくとも1つを有するものが挙げられる。かかる離脱性基は、カチオンの作用により比較的容易に離脱する。
このうち、離脱により樹脂の屈折率に低下を生じさせる離脱性基としては、−Si−ジフェニル構造および−O−Si−ジフェニル構造の少なくとも一方が好ましい。
ここで、側鎖に離脱性基を有するポリマー915としては、例えばシクロヘキセン、シクロオクテン等の単環体モノマーの重合体、ノルボルネン、ノルボルナジエン、ジシクロペンタジエン、ジヒドロジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、トリシクロペンタジエン、ジヒドロトリシクロペンタジエン、テトラシクロペンタジエン、ジヒドロテトラシクロペンタジエン等の多環体モノマーの重合体等の環状オレフィン系樹脂が挙げられる。これらの中でも多環体モノマーの重合体の中から選ばれる1種以上の環状オレフィン系樹脂が好ましく用いられる。これにより、樹脂の耐熱性を向上することができる。
なお、重合形態としては、ランダム重合、ブロック重合等の公知の形態を適用することができる。例えばノルボルネン型モノマーの重合の具体例としては、ノルボルネン型モノマーの(共)重合体、ノルボルネン型モノマーとα−オレフィン類などの共重合可能な他のモノマーとの共重合体、およびこれらの共重合体の水素添加物などが具体例に該当する。これら環状オレフィン系樹脂は、公知の重合法により製造することが可能であり、その重合方法には付加重合法と開環重合法とがあり、前述の中でも付加重合法で得られる環状オレフィン系樹脂(特にノルボルネン系樹脂)が好ましい(すなわち、ノルボルネン系化合物の付加重合体)。これにより、透明性、耐熱性および可撓性に優れる。
側鎖に離脱性基を有するポリマー915の具体例としては、特開2010−090328号公報に記載されたものが挙げられる。
一方、別の離脱性基としては、例えば、末端にアセトフェノン構造を有する置換基が挙げられる。この離脱性基は、フリーラジカルの作用により比較的容易に離脱する。
前記離脱性基の含有量は、特に限定されないが、前記側鎖に離脱性基を有するポリマー915中の10〜80重量%であるのが好ましく、特に20〜60重量%であるのがより好ましい。含有量が前記範囲内であると、特に可撓性と屈折率変調機能(屈折率差を変化させる効果)との両立に優れる。
例えば、離脱性基の含有量を多くすることにより、屈折率を変化させる幅を拡張することができる。
また、光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902との間で、含まれるポリマー915は同じ組成のものでも、異なる組成のものでもよい。なお、同じ組成のものを用いることで、互いの相溶性が高くなるため、組成物同士が混合し易くなる。これにより、屈折率分布Tの連続性を高めることができる。
また、異なる組成のものを用いる場合、ポリマー915の基本組成は同じであるものの、離脱性基(反応媒体)の有無を変えるようにしてもよい。例えば、光導波路形成用組成物901が含有するポリマー915は離脱性基を含む一方、光導波路形成用組成物902が含有するポリマー915は離脱性基を含まないのが好ましい。これにより、コア層13においてのみ、離脱性基の離脱が生じ、層内で屈折率差が形成するとともに、クラッド層11、12では、離脱性基の離脱が生じないので、層内で屈折率が変化せず、クラッド層11、12の屈折率を比較的均一にすることができる。なお、この場合、光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902の双方において添加剤920(モノマー、重合開始剤等)の添加を省略することができる。
一方、少なくとも光導波路形成用組成物901中の後述する添加剤920がモノマーを含んでいる場合には、各光導波路形成用組成物901、902が含有するポリマー915は、必ずしも離脱性基を含んでいなくてもよい。
(添加剤)
添加剤920は、モノマーおよび重合開始剤を含んでいる。
((モノマー))
モノマーは、後述する活性放射線の照射により、活性放射線の照射領域において反応して反応物を形成し、それとともにモノマーが拡散移動することで、層910において照射領域と非照射領域との間に屈折率差を生じさせ得るような化合物である。
モノマーの反応物としては、モノマーがポリマー915中で重合して形成されたポリマー(重合体)、モノマーがポリマー915同士を架橋してなる架橋構造、および、モノマーがポリマー915に重合してポリマー915から分岐した分岐構造のうちの少なくとも1つが挙げられる。
ところで、照射領域と非照射領域との間に生じる屈折率差は、ポリマー915の屈折率とモノマーの屈折率との差に基づいて生じることから、添加剤920中に含まれるモノマーは、ポリマー915の屈折率との大小関係を考慮して選択される。
具体的には、層910において、照射領域の屈折率が高くなることが望まれる場合には、比較的低い屈折率を有するポリマー915と、このポリマー915に対して高い屈折率を有するモノマーとを組み合わせて使用される。一方、照射領域の屈折率が低くなることが望まれる場合には、比較的高い屈折率を有するポリマー915と、このポリマー915に対して低い屈折率を有するモノマーとを組み合わせて使用される。
なお、屈折率が「高い」または「低い」とは、屈折率の絶対値を意味するものではなく、ある材料同士の相対的な関係を意味するものである。
そして、モノマーの反応(反応物の生成)により、層910において照射領域の屈折率が低下する場合、当該部分がコア層の側面クラッド部および低屈折率層となり、照射領域の屈折率が上昇する場合、当該部分がコア層のコア部となる。
なお、モノマーとしては、ポリマー915との相溶性を有し、ポリマー915との屈折率差が0.01以上であるものが好ましく用いられる。
このようなモノマーとしては、重合可能な部位を有する化合物であればよく、特に限定されないが、例えば、ノルボルネン系モノマー、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、エポキシ系モノマー、オキセタン系モノマー、ビニルエーテル系モノマー、スチレン系モノマー等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、モノマーとしては、オキセタニル基またはエポキシ基等の環状エーテル基を有するモノマーまたはオリゴマー、あるいはノルボルネン系モノマーを用いるのが好ましい。環状エーテル基を有するモノマーまたはオリゴマーを用いることにより、環状エーテル基の開環が起こり易いため、速やかに反応し得るモノマーが得られる。また、ノルボルネン系モノマーを用いることにより、光伝送性能に優れ、かつ、耐熱性および柔軟性に優れるコア層(光導波路1)が得られる。
このうち、環状エーテル基を有するモノマーの分子量(重量平均分子量)またはオリゴマーの分子量(重量平均分子量)は、それぞれ100以上400以下であるのが好ましい。
オキセタニル基を有するモノマー、オキセタニル基を有するオリゴマーとしては、例えば、特開2010−090328号公報に記載されたものが挙げられる。これらの中でも特に下記式(15)、(20)で表わされるものが好ましい。
また、エポキシ基を有するモノマー、エポキシ基を有するオリゴマーとしては、例えば、特開2010−090328号公報に記載されたものが挙げられる。これらの中でも特に下記式(37)で表わされるものが好ましい。
なお、上記以外のモノマー、例えばアクリル酸(メタクリル酸)系モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド、アクリロニトリル等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
具体的には、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ブトキシエチル等が挙げられる。
また、ビニルエーテル系モノマーとしては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、n−ペンチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、n−ドデシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類またはシクロアルキルビニルエーテル類が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、ジビニルベンゼン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種を組み合わせて用いることができる。
なお、これらのモノマーと前述したポリマー915との組み合わせは、特に限定されず、いかなる組み合わせであってもよい。
また、モノマーは、その少なくとも一部が上述したようにオリゴマー化していてもよい。
これらのモノマーの添加量は、ポリマー100重量部に対し、1重量部以上50重量部以下であることが好ましく、2重量部以上20重量部以下であることがより好ましい。これにより、屈折率変調を可能にし、可撓性と耐熱性との両立が図れるという効果がある。
なお、光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902との間で、含まれるモノマーは同じ組成のものでも、異なる組成のものでもよい。同じ組成のものを用いることで、相互のモノマーの拡散移動が確実に生じるため、上述した屈折率分布Tをより明確化することができる。その結果、特性に優れた光導波路1が得られる。
また、光導波路形成用組成物901がモノマーを含む一方、光導波路形成用組成物902がモノマーを含まないようにしてもよい。この場合、各クラッド層11、12では、層内でのモノマーの拡散移動が生じないので、各クラッド層11、12の層内の屈折率を均一にすることができる。
((重合開始剤))
重合開始剤は、活性放射線の照射に伴ってモノマーに作用し、モノマーの反応を促すものであり、モノマーの反応性を考慮し、必要に応じて添加される。
用いる重合開始剤としては、モノマーの重合反応または架橋反応の種類に応じて適宜選択される。例えば、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、スチレン系モノマーには専らラジカル重合開始剤が、エポキシ系モノマー、オキセタン系モノマー、ビニルエーテル系モノマーには専らカチオン重合開始剤が好ましく用いられる。
ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類等が挙げられる。
一方、カチオン重合開始剤としては、例えば、ジアゾニウム塩のようなルイス酸発生型のもの、ヨードニウム塩、スルホニウム塩のようなブレンステッド酸発生型のもの等が挙げられる。
特に、モノマーとして環状エーテル基を有するモノマーを用いる場合には、以下のようなカチオン重合開始剤(光酸発生剤)が好ましく用いられる。具体的には、特開2010−090328号公報に記載されたものが挙げられる。
なお、本実施形態では、上述したように、光導波路形成用組成物901中の添加剤920が重合開始剤を含んでいる一方、光導波路形成用組成物902中の添加剤920は重合開始剤を含んでいないため、コア層13においてのみ、層内でモノマーの重合反応が促進され、クラッド層11、12では、モノマーの重合反応が促進されない。したがって、クラッド層11、12では屈折率の変化が抑えられ、層内での屈折率を比較的均一にすることができる。
ただし、重合開始剤の添加については、上記の場合に限定されず、光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902の双方が重合開始剤を含んでいてもよい。この場合、クラッド層11、12ではできるだけモノマーの重合反応を抑えることが好ましいので、光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902とで含まれる重合開始剤の種類や添加量を異ならせるようにすればよい。具体的には、例えば、光導波路形成用組成物901に含まれる重合開始剤として後述する活性放射線930の波長に対して反応性の高いものを用い、光導波路形成用組成物902に含まれる重合開始剤として後述する活性放射線930の波長に対して反応性の低いものを用いればよい。また、同じ種類の重合開始剤を用いる場合には、光導波路形成用組成物901に比べて光導波路形成用組成物902への添加量を少なくすればよい。
さらに、光導波路形成用組成物901に含まれる重合開始剤として光酸発生剤を用い、光導波路形成用組成物902に含まれる重合開始剤として熱酸発生剤を用いるようにしてもよい。これにより、活性放射線930の照射に伴って主にコア層13の層内でのみモノマーの重合反応が促進され、屈折率分布Wが形成される一方、クラッド層11、12ではモノマーの重合反応が促進されない。屈折率分布Wが形成された後、層910に熱を加えることにより、今度はクラッド層11、12においてモノマーの重合反応が促進される。その結果、層910では、厚さ方向の屈折率分布が固定される。
熱酸発生剤としては、例えば、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルフォン酸、トリフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルフォン酸のようなスルホニウム塩型化合物、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルフォン酸、ジフェニルヨードニウムノナフルオロブタンスルフォン酸のようなヨードニウム塩型化合物、ペンタフェニルホスニウムトリフルオロメタンスルフォン酸、ペンタフェニルホスニウムノナフルオロブタンスルフォン酸のようなホスニウム塩型化合物等が挙げられる。
また、添加剤920は、モノマーや重合開始剤に加え、増感剤等を含んでいてもよい。
このうち、増感剤は、光に対する重合開始剤の感度を増大して、重合開始剤の活性化(反応または分解)に要する時間やエネルギーを減少させる機能や、重合開始剤の活性化に適する波長に光の波長を変化させる機能を有するものである。具体的には、特開2010−090328号公報に記載されたものが挙げられる。
なお、添加剤920はこの他に、触媒前駆体、助触媒、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、シランカップリング剤、塗面改良剤、熱重合禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、着色剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、フィラー、無機粒子、老化防止剤、濡れ性改良剤、帯電防止剤等を含んでいてもよい。
以上のようなポリマー915と添加剤920とを含有する層910は、ポリマー915中に一様に分散する添加剤920の作用により、所定の屈折率を有している。
このような層910は、上述したような活性放射線に反応するモノマー等を含んでいるため、厚さ方向には前述した屈折率分布Tを有する一方、幅方向には、活性放射線の照射の有無により、屈折率差を形成することのできる屈折率調整能を潜在的に有するものとなる。
したがって、層910は、単に活性放射線を選択的に照射するのみで、厚さ方向に光信号の伝送効率に優れた屈折率分布Tを有し、幅方向にも光信号の伝送効率に優れた屈折率分布Wを有する光導波路1を容易に製造し得るという優れた特徴を有するものとなる。
なお、多数の層910を製造、保管しておき、その後、必要数に対して活性放射線を照射すれば、簡単に光導波路1を製造することができ、製造効率の観点から有用である。
[1−2]次に、開口(窓)9351が形成されたマスク(マスキング)935を用意し、このマスク935を介して、層910に活性放射線930を照射する(図13参照)。
以下では、モノマーとして、ポリマー915より低い屈折率を有するものを用いる場合を一例に説明する。また、これに対応して、層910を形成するために用いた光導波路形成用組成物901、902において、ポリマー915の組成が、(光導波路形成用組成物901の屈折率)>(光導波路形成用組成物902の屈折率)の関係を満足するよう設定されている。これにより、層910では、厚さ方向の中央部が最も屈折率が高く、両面側に向かって屈折率が連続的に低下する屈折率分布Tが形成されている。
また、ここで示す例では、活性放射線930の照射領域925が主に側面クラッド部15となる。
したがって、ここで示す例では、マスク935には、主に、形成すべき側面クラッド部15のパターンと等価な開口(窓)9351が形成される。この開口9351は、照射する活性放射線930が透過する透過部を形成するものである。なお、コア部14や側面クラッド部15のパターンは、活性放射線930の照射に応じて形成される屈折率分布Wに基づいて決まるため、開口9351のパターンと側面クラッド部15のパターンとは完全に一致するものではなく、前記両パターンには多少のずれが生じる場合もある。
マスク935は、予め形成(別途形成)されたもの(例えばプレート状のもの)でも、層910上に例えば気相成膜法や塗布法により形成されたものでもよい。
マスク935として好ましいものの例としては、石英ガラスやPET基材等で作製されたフォトマスク、ステンシルマスク、気相成膜法(蒸着、スパッタリング等)により形成された金属薄膜等が挙げられるが、これらの中でもフォトマスクやステンシルマスクを用いるのが特に好ましい。微細なパターンを精度良く形成することができるとともに、ハンドリングがし易く、生産性の向上に有利であるからである。
また、図13においては、マスク935の開口(窓)9351は、活性放射線930の照射領域925のパターンに沿ってマスクを部分的に除去したものを示したが、前記石英ガラスやPET基材等で作製されたフォトマスクを用いる場合、該フォトマスク上に例えばクロム等の金属による遮蔽材で構成された活性放射線930の遮蔽部を設けたものを用いることもできる。このマスクでは、遮蔽部以外の部分が前記窓(透過部)となる。
用いる活性放射線930は、重合開始剤に対して光化学的な反応(変化)を生じさせ得るもの、および、ポリマー915に含まれる離脱性基を離脱させ得るものであればよく、例えば、可視光、紫外光、赤外光、レーザー光の他、電子線やX線等を用いることもできる。
これらの中でも、活性放射線930は、重合開始剤や離脱性基の種類、増感剤を含有する場合には、増感剤の種類等によって適宜選択され、特に限定されないが、波長200〜450nmの範囲にピーク波長を有するものであるのが好ましい。これにより、重合開始剤を比較的容易に活性化させるとともに、離脱性基を比較的容易に離脱させることができる。
また、活性放射線930の照射量は、0.1〜9J/cm2程度であるのが好ましく、0.2〜6J/cm2程度であるのがより好ましく、0.2〜3J/cm2程度であるのがさらに好ましい。
マスク935を介して層910に活性放射線930を照射すると、照射領域925のうち、コア層13における照射領域9253において重合開始剤が活性化される。これにより、照射領域9253においてモノマーが重合する。モノマーが重合すると、照射領域9253におけるモノマーの量が減少するため、それに応じて未照射領域940のうち、コア層13における未照射領域9403中のモノマーが照射領域9253に拡散移動する。前述したように、ポリマー915とモノマーは、互いに屈折率差が生じるように適宜選択されるため、モノマーの拡散移動に伴ってコア層13の照射領域9253と未照射領域9403との間に屈折率差が生じる。一方、クラッド層11、12における照射領域9251、9252では、重合開始剤が含まれていないので、モノマーの重合反応が抑えられる。
図15は、コア層13の照射領域9253と未照射領域9403との間で屈折率差が生じる様子を説明するための図であり、層910の横断面の幅方向の位置を横軸にとり、横断面の屈折率を縦軸にとったときの屈折率分布を示す図である。
本実施形態では、モノマーとしてポリマー915より屈折率が小さいものを用いているため、モノマーの拡散移動に伴い、未照射領域9403の屈折率が高くなるとともに、照射領域9253の屈折率は低くなる(図15(a)参照)。
モノマーの拡散移動は、照射領域9253においてモノマーが消費され、それに応じて形成されたモノマーの濃度勾配がきっかけとなって起こると考えられる。このため、未照射領域9403全体のモノマーが一斉に照射領域9253に向かうのではなく、照射領域9253に近い部分から徐々に移動が始まり、これを補うように未照射領域9403の中央部から外側へのモノマーの移動も生起される。その結果、図15(a)に示すように、照射領域9253と未照射領域9403との境界を挟んで、未照射領域9403側に高屈折率部WH、照射領域9253側に低屈折率部WLが形成される。これら高屈折率部WHおよび低屈折率部WLは、それぞれ上述したようなモノマーの拡散移動に伴って形成されるため、必然的に滑らかな曲線で構成されることとなる。具体的には、高屈折率部WHは、例えば上に凸の略U字状となり、低屈折率部WLは、例えば下に凸の略U字状となる。
なお、上述したようなモノマーが重合してなるポリマーの屈折率は、重合前のモノマーの屈折率とほぼ同じ(屈折率差が0〜0.001程度)であるため、照射領域9253では、モノマーの重合が進むにつれ、モノマーの量およびモノマー由来の物質の量に応じて屈折率の低下が進むこととなる。
一方、未照射領域9403では、重合開始剤が活性化されないため、モノマーは重合しない。
また、照射領域9253ではモノマーの重合が進むにつれてモノマーの拡散移動の容易性が徐々に低下する。これにより、照射領域9253では、未照射領域9403に近いほど自ずとモノマーの濃度が高くなり、屈折率の低下量が大きくなる。その結果、照射領域9253に形成される低屈折率部WLの分布形状は、左右非対称になり易く、未照射領域9403側の勾配はより急峻なものとなる。
また、ポリマー915は前述したように離脱性基を有している場合、この離脱性基は活性放射線930の照射に伴って離脱し、ポリマー915の屈折率を低下させる。したがって、照射領域9253に活性放射線930が照射されると、前述したモノマーの拡散移動が開始されるとともに、ポリマー915から離脱性基が離脱し、照射領域9253の屈折率は照射前から低下することとなる(図15(b)参照)。
この屈折率の低下は、照射領域9253全体で一律に生じるため、前述した高屈折率部WHと低屈折率部WLの屈折率差は、より拡大される。その結果、図15(b)に示す屈折率分布Wが得られる。なお、図15(a)における屈折率の変化と、図15(b)における屈折率の変化は、ほぼ同時に起こり、屈折率分布Wが形成されることとなる。
なお、活性放射線930の照射量を調整することにより、形成される屈折率差を制御することができ、例えば、照射量を多くすることで、屈折率差を拡大することができる。
また、照射領域9253では、コア層13中の未照射領域9403からのモノマーの拡散移動のみならず、照射領域925のうち、クラッド層11における照射領域9251およびクラッド層12における照射領域9252からのモノマーの拡散移動も生じる。これにより、照射領域9253では、さらに屈折率の低下が生じることとなる。一方、照射領域9251および照射領域9252では、モノマーの拡散移動に伴って屈折率の上昇が生じるが、この領域ではそもそも屈折率が低くなるようポリマー915の組成等が設定されているので、屈折率の上昇が生じても光導波路1の機能を損なうことはない。
また、クラッド層11における照射領域9251およびクラッド層12における照射領域9252では、コア層13における照射領域9253と同様、離脱性基の離脱が生じ、ポリマー915の屈折率が低下する。その結果、照射領域9251および照射領域9252においても、さらなる屈折率の低下が生じる。
以上のような原理で、屈折率分布Wが形成される。
なお、屈折率分布Wにおいては、低屈折率部WLが転化した極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4が存在しており、これらの極小値の位置がコア部14と側面クラッド部15との界面に相当する。
また、モノマーとしてポリマー915より高い屈折率を有するものを用いる場合には、上記と反対に、モノマーの拡散移動に伴って移動先の屈折率が高くなるため、それに応じて、照射領域925および未照射領域940を設定するようにすればよい。
一方、活性放射線930を照射する前の層910には、図16(a)に示すように、その厚さ方向において、いわゆるグレーデッドインデックス型の屈折率分布T’が形成されている。この厚さ方向における屈折率分布T’は、前述したように、互いに屈折率の異なる光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902とを用い、多色成形法によって層910を得たことにより形成されたものである。
ここで、マスク935を介して層910に活性放射線930を照射すると、光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902とでモノマーの含有率に差がある場合、未照射領域9403中のモノマーが照射領域9253に拡散移動する。このため、コア部14の厚さ方向における屈折率分布T’においても、コア部14に対応する領域の屈折率が高くなる。一方、コア部14の上下に位置するクラッド層11、12では、屈折率が変化しないため、結果的に、コア部14とその上下のクラッド層11、12との間で屈折率差が拡大することとなる。
以上のような原理で、屈折率差の大きいグレーデッドインデックス型の屈折率分布Tを有する光導波路1が得られる(図16(b)参照)。なお、屈折率分布T’において、すでに十分な効果が認められるような屈折率分布の形状が実現されている場合には、上述した屈折率分布T’から屈折率分布Tへの変化は省略されてもよい。
また、屈折率分布Wは、コア層13中のモノマー由来の構造体濃度に一定の相関関係を有している。したがって、このモノマー由来の構造体の濃度を測定することにより、光導波路1が有する屈折率分布Wを間接的に特定することが可能である。
同様に、屈折率分布Tは、光導波路1中のモノマー由来の構造体濃度に一定の相関関係を有している。したがって、このモノマー由来の構造体の濃度を測定することにより、光導波路1が有する屈折率分布Tを間接的に特定することが可能である。
なお、モノマー由来の構造体とは、モノマー、モノマーが反応してなるオリゴマー、およびモノマーが反応してなるポリマー等、モノマーの未反応物か反応に伴って形成される構造体のことである。
構造体の濃度の測定は、例えば、FT−IR、TOF−SIMSの線分析、面分析等を用いて行うことができる。
さらには、光導波路1の出射光の強度分布が、屈折率分布Wあるいは屈折率分布Tと一定の相関関係を有していることを利用しても、屈折率分布Wおよび屈折率分布Tを間接的に特定することができる。
もちろん、屈折率分布Wおよび屈折率分布Tは、屈折ニアフィールド法、微分干渉法等により、直接特定することもできる。
また、活性放射線930として、レーザー光のように指向性の高い光を用いる場合には、マスク935の使用を省略してもよい。
ここで、多色成形体914は、図12に示すように、支持基板951上に成膜されるが、支持基板951として上面に凹部9511を有するものを用いる。この支持基板951上に多色成形体914が成膜されると、この凹部9511に多色成形体914の一部が侵入することにより、この部分が凸部となる。そして、最終的には、レンズ100を有する光導波路1が得られる。したがって、凹部9511の形状は、形成しようとするレンズ100の凸部101の形状に応じて適宜設定される。すなわち、支持基板951は、レンズ100を形成するための成形型(第2の成形型)として用いられる。
支持基板951の構成材料としては、特に限定されないが、例えば各種樹脂材料、各種ガラス材料、各種金属材料、各種セラミックス材料等が挙げられる。また、支持基板951の表面には離型層を形成しておいてもよい。
また、支持基板951の凹部9511は、例えば、レーザー加工法、電子ビーム加工法、フォトリソグラフィー法等の方法により形成することができる。
なお、支持基板951の凹部9511は、マスター型(原型)から複製されたものであってもよい。
[2]次に、層910に対して、形成しようとするミラー16の凹部161の形状に応じた凸部9521を有する成形型(第1の成形型)952を押圧する(図14(a)参照)。これにより、層910には、成形型の凸部の形状が転写されることとなり、凹部161が形成される。
成形型952の構成材料としては、特に限定されないが、例えば各種樹脂材料、各種ガラス材料、各種金属材料、各種セラミックス材料等が挙げられる。また、成形型952の表面には離型層を形成しておいてもよい。
また、成形型952の凸部9521は、例えば、レーザー加工法、電子ビーム加工法、フォトリソグラフィー法等の方法により形成することができる。
なお、成形型952の凸部9521は、マスター型(原型)から複製されたものであってもよい。
また、活性放射線の照射後、成形型952の押圧を速やかに行うことで、層910が完全に硬化する前に凹部161を形成することができる。
次に、必要に応じて、層910に加熱処理を施す。この加熱処理において、光を照射したコア層13の照射領域9253中のモノマーがさらに重合する。
この加熱処理における加熱温度は、特に限定されないが、30〜180℃程度であるのが好ましく、40〜160℃程度であるのがより好ましい。
また、加熱時間は、照射領域925のモノマーの重合反応がほぼ完了するように設定するのが好ましく、具体的には、0.1〜2時間程度であるのが好ましく、0.1〜1時間程度であるのがより好ましい。
以上により、図14(b)に示す光導波路1が得られる。
このような製造方法では、上記凹部161および凸部101が、それぞれ成形型を用いた成形プロセスにより形成されている。これにより、凹部161および凸部101を同一の成形プロセスによって同時にまたは連続して形成することができるため、凹部161と凸部101との位置関係を設計通りに制御することができる。これは、一般に成形型の寸法精度は非常に高くすることができ、それを凹部161と凸部101との位置関係の精度に反映させ易いからである。
また、支持基板(第2の成形型)951と成形型(第1の成形型)952の位置関係は、反対であってもよい。すなわち、成形型952上に多色成形体914を形成し、その上に支持基板951を押圧するようにしてもよい。
なお、上記の説明では、層910に活性放射線を照射した後、成形型952を押圧し、その後、層910に加熱処理を施す場合について説明したが、光導波路1の製造方法の工程順は上記のものに限定されない。例えば、層910に成形型952を押圧した後、活性放射線の照射および加熱処理を施すようにしてもよく、反対に、層910に活性放射線の照射および加熱処理を施した後、成形型952を押圧するようにしてもよい。また、層910に加熱処理を施した後、成形型952を押圧し、その後、活性放射線の照射を施すようにしてもよい。さらに、活性放射線の照射や加熱処理は、成形型952の押圧プロセスを挟んでそれぞれ複数回行うようにしてもよい。
≪第2製造方法≫
次に、上述したような光導波路モジュールを製造する方法の一例、具体的には、前述した本発明の光導波路モジュールの第3実施形態を製造する方法について説明する。
図20は、図11に示す光導波路モジュールを製造する方法を説明するための図である。
以下、第2実施形態について説明するが、第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
図11に示す光導波路モジュール10は、光導波路1と回路基板2との間に設けられた実装基板17を有する。この実装基板17には、図11に示すように、貫通孔171と、その内部に設けられ、上面が湾曲凹面175で構成された充填部172とが形成されている。
充填部172は、貫通孔171に液状材料を供給し、その後固化させることで形成される。具体的には、まず、図20(a)に示すように、貫通孔171内に液状材料173を供給する。この際、液状材料173は、その表面張力により、貫通孔171の横断面の中央部において液面が最も低くなり、外周部において液面が最も高くなる。その結果、液状材料173の上面は、自ずと湾曲凹面175になる。その後、この液状材料173を固化または硬化させることにより、液状材料173はその上面形状を保持したまま、前述した充填部172が得られる(図20(b)参照)。
なお、貫通孔171の内壁面には、必要に応じて親液膜、撥液膜等を成膜することにより、液状材料173の上面の形状を調整することができる。
以上のようにして実装基板17が得られる。
次いで、この実装基板17の表面に多色成形体914を成膜する等して、前記第1実施形態と同様にして光導波路モジュール10を製造する。すなわち、実装基板17は、光導波路1を支持する基板としての機能のみでなく、前記第1実施形態に係る支持基板951のような第2の成形型としての機能を有するものとなる。
このような方法によれば、非常に滑らかでかつ面精度の高い湾曲凹面175が形成される。このため、実装基板17を成形型として用いることにより、非常に滑らかでかつ面精度の高い湾曲凸面を有するレンズ100が得られる。
そして、このような実装基板17を光導波路1と回路基板2との間に配置することで、光導波路モジュール10が得られる。
なお、前述したように、充填部172は省略することもできるが、その場合、貫通孔171を有する実装基板17上に多色成形体914を成膜することとなる。これにより、多色成形体914の下面は、その自重により、または毛細管現象に伴い、一部が貫通孔171内に侵入する。侵入した部分の先端は、表面張力により自ずと湾曲凸面を構成する。このようにして、実装基板17に湾曲凹面175が形成されていない場合でも、湾曲凸面を有するレンズ100を容易に形成することができる。また、必要に応じて、貫通孔171の反対側を減圧することで、多色成形体914の下面を貫通孔171側に強制的に吸引するようにしてもよい。これにより、多色成形体914の粘度が高く、流動性が低い場合でも、レンズ100を効率よく形成することができる。
<電子機器>
本発明の光導波路モジュールを備える電子機器(本発明の電子機器)は、光信号と電気信号の双方の信号処理を行ういかなる電子機器にも適用可能であるが、例えば、ルーター装置、WDM装置、携帯電話、ゲーム機、パソコン、テレビ、ホーム・サーバー等の電子機器類への適用が好適である。これらの電子機器では、いずれも、例えばLSI等の演算装置とRAM等の記憶装置との間で、大容量のデータを高速に伝送する必要がある。したがって、このような電子機器が本発明の光導波路モジュールを備えることにより、電気配線に特有なノイズ、信号劣化等の不具合が解消されるため、その性能の飛躍的な向上が期待できる。
さらに、光導波路部分では、電気配線に比べて発熱量が大幅に削減される。このため、基板内の集積度を高めて小型化が図られるとともに、冷却に要する電力を削減することができ、電子機器全体の消費電力を削減することができる。
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば光導波路モジュールを構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよく、複数の実施形態同士を組み合わせるようにしてもよい。
また、光導波路が有するチャンネル(コア部)数は、特に限定されず、3つ以上であってもよい。この場合、チャンネル数に応じてミラー、レンズ、発光素子、受光素子等の数を設定すればよい。また、発光素子および受光素子については、1つの素子に複数の発光部または複数の受光部を備えたものを用いるようにしてもよい。
また、本発明の光導波路の横断面の幅方向に線を引いたときその線上における屈折率分布Wは、ステップインデックス型の分布であってもよい。
同様に、横断面の厚さ方向に線を引いたときその線上における屈折率分布Tも、ステップインデックス型の分布であってもよい。このような分布を形成する場合、各コア層および各クラッド層をそれぞれ個別に製造した後、互いに貼り合わせる製法(ラミネート法)が採用される。
また、本発明の光導波路を製造する方法は、上記の方法に限定されず、例えば、活性放射線の照射線により分子結合を切断し、屈折率を変化させる方法(フォトブリーチ法)、コア層を形成する組成物に光異性化または光二量化可能な不飽和結合を有する光架橋性ポリマーを含有させ、これに活性放射線を照射して分子構造を変化させるとともに屈折率を変化させる方法(光異性化法・光二量化法)等の方法を用いることもできる。
これらの方法では、活性放射線の照射量に応じて屈折率の変化量を調整することができるので、目的とする屈折率分布Wの形状に応じて層の各部に照射する活性放射線の照射量を異ならせることにより、屈折率分布Wを有するコア層を形成することができる。
次に、本発明の実施例について説明する。
1.光導波路の製造
(実施例1)
(1)離脱性基を有するノルボルネン系樹脂の合成
水分および酸素濃度がいずれも1ppm以下に制御され、乾燥窒素で満たされたグローブボックス中において、ヘキシルノルボルネン(HxNB)7.2g(40.1mmol)、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン12.9g(40.1mmol)を500mLバイアル瓶に計量し、脱水トルエン60gと酢酸エチル11gを加え、シリコン製のシーラーを被せて上部を密栓した。
次に、100mLバイアルビン中に下記化学式(A)で表わされるNi触媒1.56g(3.2mmol)と脱水トルエン10mLを計量し、スターラーチップを入れて密栓し、触媒を十分に撹拌して完全に溶解させた。
この下記化学式(A)で表わされるNi触媒溶液1mLをシリンジで正確に計量し、上記2種のノルボルネンを溶解させたバイアル瓶中に定量的に注入し室温で1時間撹拌したところ、著しい粘度上昇が確認された。この時点で栓を抜き、テトラヒドロフラン(THF)60gを加えて撹拌を行い、反応溶液を得た。
100mLビーカーに無水酢酸9.5g、過酸化水素水18g(濃度30%)、イオン交換水30gを加えて撹拌し、その場で過酢酸水溶液を調製した。次にこの水溶液全量を上記反応溶液に加えて12時間撹拌してNiの還元処理を行った。
次に、処理の完了した反応溶液を分液ロートに移し替え、下部の水層を除去した後、イソプロピルアルコールの30%水溶液を100mL加えて激しく撹拌を行った。静置して完全に二層分離が行われた後で水層を除去した。この水洗プロセスを合計で3回繰り返した後、油層を大過剰のアセトン中に滴下して生成したポリマーを再沈殿させ、ろ過によりろ液と分別した後、60℃に設定した真空乾燥機中で12時間加熱乾燥を行うことにより、ポリマー#1を得た。ポリマー#1の分子量分布は、GPC測定により、Mw=10万、Mn=4万であった。また、ポリマー#1中の各構造単位のモル比は、NMRによる同定により、ヘキシルノルボルネン構造単位が50mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が50mol%であった。
(2)光導波路形成用組成物(第1の組成物)の製造
精製した上記ポリマー#1 10gを100mLのガラス容器に秤量し、これにメシチレン40g、酸化防止剤Irganox1076(チバガイギー社製)0.01g、シクロヘキシルオキセタンモノマー(式(20)で示したモノマー、東亜合成製 CHOX、CAS#483303−25−9、分子量186、沸点125℃/1.33kPa)2g、重合開始剤(光酸発生剤) RhodorsilPhotoinitiator 2074(Rhodia社製、CAS# 178233−72−2)(1.36E-2g、酢酸エチル0.1mL中)を加え均一に溶解させた後、0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄な光導波路形成用組成物(第1の組成物)を得た。
(3)光導波路形成用組成物(第2の組成物)の製造
精製した上記ポリマー#1 10gを100mLのガラス容器に秤量し、これにメシチレン40g、酸化防止剤Irganox1076(チバガイギー社製)0.01g、シクロヘキシルオキセタンモノマー(式(20)で示したモノマー、東亜合成製 CHOX、CAS#483303−25−9、分子量186、沸点125℃/1.33kPa)2gを加え均一に溶解させた後、0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄な光導波路形成用組成物(第2の組成物)を得た。
(4)光導波路の製造
まず、図18に示すミキシングユニットの構造を変更し、第1の供給管および第2の供給管の各分岐数を増やしたミキシングユニットを用意した。
そして、ダイコーターにより、シリコンウエハー上に上記光導波路形成用組成物を押し出し、多色押出成形を行った。これにより、第1の組成物を第1層、第3層および第5層とし、第2の組成物を第2層および第4層とする多色成形体を得た。これを45℃の乾燥器に15分間投入し、溶剤を完全に除去して、図10に示すような屈折率分布Tを有する光導波路形成用フィルムを得た。次いで、光導波路形成用フィルムにフォトマスクを圧着して紫外線を1000mJ/cm2で選択的に照射した。
その後、マスクを取り去り、得られた多色成形体にミラー形成用の凸部を有する成形型(シリコン製)を押圧した。これにより、ミラー形成用の凸部に対応した凹部を多色成形体に転写することができた。なお、用いた成形型は、コア部の長手方向の両端部にそれぞれ凹部が転写されるよう、複数個の凸部を有するものである。また、凸部の最大高さは100μm、凸部の傾斜面の傾斜角度は45度であった。
その後、得られた多色成形体に対して、乾燥機中で150℃、1.5時間の加熱を行った。加熱後、コア部および側面クラッド部が形成されているのが確認された。その後、得られた光導波路から、長さ10cm分を切り出した。なお、形成された光導波路は、コア部が8本並列に形成され、その両端にはミラーおよびレンズが形成されたものである。また、コア部の幅を50μm、側面クラッド部の幅を80μm、光導波路の厚さを100μmとした。
また、シリコンウエハーとしては、上面に形成すべきレンズの形状に対応した凹部を有するものを用いた。凹部の形状は略半球状(平凸レンズ形状)とし、凹部の外径を50μm、凹部の最大深さを20μmに設定した。この凹部に多色成形体の一部が入り込むことで、凹部形状に対応したレンズが形成された。
(屈折率分布の評価)
そして、得られた光導波路のコア層の横断面について、屈折ニアフィールド法により幅方向の屈折率分布Wを取得した。その結果、屈折率分布Wは、複数の極小値および極大値を有し、屈折率が連続的に変化したもの(グレーデッドインデックス(GI)型の分布)であった。
一方、光導波路の横断面について、屈折ニアフィールド法により厚さ方向の屈折率分布Tを取得した。その結果、屈折率分布Tは、2つの極小値とその間に位置する1つの極大値とを有し、屈折率が連続的に変化したもの(グレーデッドインデックス(GI)型の分布)であった。
以上のような製造条件を表1、2に示す。
(実施例2)
紫外線の照射量を1500mJ/cm2に高めた以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
(実施例3)
紫外線の照射量を2000mJ/cm2に高めるとともに、ポリマーとして、ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位が40mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が60mol%に変更したものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
(実施例4)
紫外線の照射量を500mJ/cm2に減らすとともに、ポリマーとして、ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位が45mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が55mol%に変更したものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
(実施例5)
ポリマーとして、ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位が30mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が70mol%に変更したものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
(実施例6)
ポリマーとして、ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位が10mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が90mol%に変更したものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
(実施例7)
紫外線の照射量を500mJ/cm2に減らすとともに、ポリマーとして、ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位が20mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が80mol%に変更したものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
(実施例8)
紫外線の照射量を300mJ/cm2に減らすとともに、ポリマーとして、ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位が40mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が60mol%に変更したものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
(実施例9)
紫外線の照射量を500mJ/cm2に減らすとともに、ポリマーとして、ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位が30mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が70mol%に変更したものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
(実施例10)
紫外線の照射量を100mJ/cm2に減らすとともに、ポリマーとして、ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位が60mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が40mol%に変更したものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
(実施例11)
紫外線の照射量を1500mJ/cm2に高めるとともに、ポリマーとして、ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位が10mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が90mol%に変更したものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
(実施例12)
紫外線の照射量を3000mJ/cm2に高めるとともに、ポリマーとして、ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位が5mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が95mol%に変更したものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
(実施例13)
光導波路形成用組成物(第1の組成物)として、以下に示す方法で製造されたものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
精製した上記ポリマー#1 10gを100mLのガラス容器に秤量し、これにメシチレン40g、酸化防止剤Irganox1076(チバガイギー社製)0.01g、2官能オキセタンモノマー(式(15)で示したもの、東亜合成製、DOX、CAS#18934−00−4、分子量214、沸点119℃/0.67kPa)2g、光酸発生剤 RhodorsilPhotoinitiator 2074(Rhodia社製、CAS# 178233−72−2)(1.36E-2g、酢酸エチル0.1mL中)を加え均一に溶解させた後、0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄な光導波路形成用組成物を得た。
(実施例14)
光導波路形成用組成物(第1の組成物)として、以下に示す方法で製造されたものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
精製した上記ポリマー#1 10gを100mLのガラス容器に秤量し、これにメシチレン40g、酸化防止剤Irganox1076(チバガイギー社製)0.01g、脂環式エポキシモノマー(式(37)で示したもの、ダイセル化学製、セロキサイド2021P、CAS#2386−87−0、分子量252、沸点188℃/4hPa)2g、光酸発生剤 RhodorsilPhotoinitiator 2074(Rhodia社製、CAS# 178233−72−2)(1.36E-2g、酢酸エチル0.1mL中)を加え均一に溶解させた後、0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄な光導波路形成用組成物を得た。
(実施例15)
光導波路形成用組成物(第1の組成物)として、以下に示す方法で製造されたものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
精製した上記ポリマー#1 10gを100mLのガラス容器に秤量し、これにメシチレン40g、酸化防止剤Irganox1076(チバガイギー社製)0.01g、シクロヘキシルオキセタンモノマー(式(20)で示したもの、東亜合成製 CHOX)1g、脂環式エポキシモノマー(ダイセル化学製、セロキサイド2021P) 1g、光酸発生剤 RhodorsilPhotoinitiator 2074(Rhodia社製、CAS# 178233−72−2)(1.36E-2g、酢酸エチル0.1mL中)を加え均一に溶解させた後、0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄な光導波路形成用組成物を得た。
(実施例16)
ポリマーとして、以下に示す方法で合成されたものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
まず、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン12.9g(40.1mmol)に代えて、フェニルジメチルノルボルネンメトキシシラン10.4g(40.1mmol)を用いた以外は実施例1と同様にしてポリマーを合成した。得られたポリマーの構造単位を下記式(103)に示す。このポリマーの分子量は、GPC測定により、Mw=11万、Mn=5万であった。また、各構造単位のモル比は、NMRによる同定により、ヘキシルノルボルネン構造単位が50mol%、フェニルジメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が50mol%であった。
(実施例17)
シクロヘキシルオキセタンモノマーを省略してなる光導波路形成用組成物(第1の組成物)を用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路形成用フィルムを得るとともに光導波路を得た。
なお、得られた光導波路では、コア部の屈折率がほぼ一定であり、側面クラッド部の屈折率もほぼ一定であった。すなわち、得られた光導波路のコア層の幅方向の屈折率分布Wは、いわゆるステップインデックス(SI)型の分布になっていた。
(実施例18)
ミキシングユニットからピンを省略し、組成物同士が混じり合わないように設定した以外は、実施例1と同様にして光導波路形成用フィルムを得るとともに光導波路を得た。
なお、得られた光導波路では、幅方向の屈折率分布Wはグレーデッドインデックス(GI)型の分布であり、厚さ方向の屈折率分布Tはステップインデックス(SI)型の分布であった。
(実施例19)
シクロヘキシルオキセタンモノマーを省略してなる光導波路形成用組成物(第1の組成物)を用いるようにした以外は、実施例18と同様にして光導波路形成用フィルムを得るとともに光導波路を得た。
なお、得られた光導波路では、幅方向の屈折率分布Wと厚さ方向の屈折率分布Tの双方がステップインデックス(SI)型の分布であった。
(比較例1)
(1)光導波路の製造
(下側クラッド層の作製)
シリコンウエハー上に感光性ノルボルネン樹脂組成物(プロメラス社製 Avatrel2000Pワニス)をドクターブレードにより均一に塗布した後、45℃の乾燥機に15分間投入した。溶剤を完全に除去した後、塗布された全面に紫外線を100mJ照射し、乾燥機中120℃で1時間加熱して、塗膜を硬化させて、下側クラッド層を形成させた。形成された下側クラッド層は、厚みが20μmであり、無色透明であった。
(コア層の作製)
上記下側クラッド層上に実施例1で用いたのと同じ光導波路形成用組成物(第1の組成物)からモノマーを除いた組成物をドクターブレードによって均一に塗布した後、45℃の乾燥機に15分間投入した。溶剤を完全に除去した後、フォトマスクを圧着して紫外線を1000mJ/cm2で選択的に照射した。マスクを取り去り、乾燥機中150℃で1.5時間の加熱を行った。加熱後、非常に鮮明な導波路パターンが現れているのが確認された。また、コア部および側面クラッド部の形成が確認された。なお、形成した光導波路は、幅が一定のコア部が8本並列に形成されたものである。また、コア部の幅を50μm、側面クラッド部の幅を80μm、コア層の厚さを50μmとした。
(上側クラッド層の作製)
ポリエーテルスルホン(PES)フィルム上に、予め乾燥厚み20μmになるようにAvatrel2000Pを積層させたドライフィルムを、上記コア層に貼り合わせ、140℃に設定された真空ラミネーターに投入して熱圧着を行った。その後、紫外線を100mJ全面照射し乾燥機中120℃で1時間加熱して、Avatrel2000Pを硬化させて、上側クラッド層を形成させ、光導波路を得た。
なお、得られた光導波路から、長さ10cm分を切り出した。
また、得られた光導波路では、幅方向の屈折率分布Wと厚さ方向の屈折率分布Tの双方がステップインデックス(SI)型の分布であった。
(ミラーの作製)
次いで、得られた光導波路に対し、ダイシングソーにより、ミラーを形成するための凹部を加工した。得られた凹部は、最大深さが100μm、凹部の傾斜面の傾斜角度は45度であった。
(レンズの作製)
まず、外径が50μm、最大厚さ20μmの平凸レンズを用意した。そして、エポキシ系接着剤により、光導波路に対して平凸レンズを接着した。
以上のような製造条件を表1、2に示す。
(比較例2)
シリコンウエハーとして、上面に形成すべきレンズの形状に対応した凹部を有するものを用いるようにした以外は、比較例1と同様にして光導波路を得た。なお、凹部の形状は略半球状(平凸レンズ形状)とし、凹部の外径を50μm、凹部の最大深さを20μmに設定した。この凹部に多色成形体の一部が入り込むことで、凹部形状に対応したレンズが形成された。
2.評価
2.1 光導波路の屈折率分布
得られた光導波路の横断面について、幅方向に引いた線上における屈折率分布を屈折ニアフィールド法により測定した。なお、得られた屈折率分布は、コア部ごとに同様の屈折率分布パターンが繰り返されているので、得られた屈折率分布から一部を切り出し、これを屈折率分布Wとした。
各実施例で得られた光導波路の屈折率分布Wのうち、実施例1〜16、18のものは、いずれも図7(b)に示すような形状(GI型)であった。そして、得られた屈折率分布Wから、分布のパラメーターを求めた。
また、実施例17、19および比較例1、2の屈折率分布Wは、いずれもステップインデックス(SI)型の分布であった。
一方、得られた光導波路の横断面について、厚さ方向に引いた線上における屈折率分布を屈折ニアフィールド法により測定した。そして、得られた屈折率分布を屈折率分布Tとした。
各実施例で得られた光導波路の屈折率分布Tのうち、実施例1〜17、19のものは、いずれも図10(b)に示すような形状(GI型)であった。そして、得られた屈折率分布Tから、分布のパラメーターを求めた。
また、実施例18および比較例1、2の屈折率分布Tは、いずれもステップインデックス(SI)型の分布であった。
2.2 光導波路の挿入損失
850nmVCSEL(面発光レーザー)より発せられた光を50μmφの光ファイバーを経由し、形成したレンズおよびミラーを介して光導波路に導入し、出射側でもミラーおよびレンズを介して、200μmφの光ファイバーで受光を行って光の強度を測定した。これにより、光導波路の挿入損失を測定した。次いで、各実施例で得られた光導波路の損入損失について、比較例1で得られた光導波路の損入損失を1としたときの相対値を求めた。
2.3 パルス信号の波形の保持性
得られた光導波路に対して、レーザーパルス光源からパルス幅1nsのパルス信号を入射し、出射光のパルス幅を測定した。
そして、測定した出射光のパルス幅について、比較例1で得られた光導波路の測定値を1としたときの相対値を算出し、これを以下の評価基準にしたがって評価した。
<パルス幅の評価基準>
◎:パルス幅の相対値が0.5未満である
○:パルス幅の相対値が0.5以上0.8未満である
△:パルス幅の相対値が0.8以上1未満である
×:パルス幅の相対値が1以上である
以上、評価結果を表3に示す。
表3から明らかなように、各実施例で得られた光導波路では、比較例1で得られた光導波路に比べ、挿入損失およびパルス信号の鈍りがそれぞれ抑えられていることが認められた。
このうち、実施例19と比較例1、2との比較から、成形型による成形で形成されたミラーおよびレンズが、挿入損失の低下に寄与していることが明らかとなった。
また、各実施例の結果から、図7(b)に示すようなグレーデッドインデックス型の屈折率分布W、および、図10(b)に示すようなグレーデッドインデックス型の屈折率分布Tが、それぞれ挿入損失の低下やパルス信号の鈍りの抑制に寄与していることが明らかとなった。