以下、本発明の光導波路の製造方法、光導波路および電子機器について添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
<光導波路>
まず、本発明の光導波路について説明する。
図1は、本発明の光導波路の実施形態を示す(一部切り欠いて、および透過して示す)斜視図、図2は、図1に示すX−X線断面図について、横軸にコア層の厚さの中心線C1における位置をとり、縦軸に屈折率をとったときの屈折率分布の一例を示す図である。なお、以下の説明では、図1中の上側を「上」、下側を「下」という。また、図1は、層の厚さ方向(図1の上下方向)が誇張して描かれている。
図1に示す光導波路1は、一方の端部から他方の端部に光信号を伝送する光配線として機能する。
以下、光導波路1の各部について詳述する。
光導波路1は、細長い帯状をなしており、図1中の下側からクラッド層11、コア層13およびクラッド層12に分かれている。
このうち、コア層13の横断面には、幅方向において屈折率が偏りを有してなる屈折率分布が形成されている。この屈折率分布は、相対的に屈折率の高い領域と低い領域とを有しており、入射された光を屈折率の高い領域に閉じ込めて伝搬することができる。また、屈折率の高い領域と低い領域との間では、屈折率の変化が連続的になっている。このような屈折率分布は、一般にグレーテッドインデックス型(GI型)と呼ばれる。
以下では、このような連続的な屈折率変化を伴う屈折率分布の一例について説明する。
図2(a)は、図1のX−X線断面図であり、図2(b)は、X−X線断面図のコア層13の厚さ方向の中心を通過する中心線C1上の屈折率分布の一例を模式的に示す図である。
コア層13は、その幅方向において、図2(b)に示すような、2つの極大値Wm1、Wm2を含む屈折率分布Wを有している。この屈折率分布Wでは、各極大値から離れるにつれて屈折率が徐々に低下するような屈折率変化を伴っている。このため、図2(b)に示す屈折率分布Wは、極大値Wm1近傍および極大値Wm2近傍において、上に凸の略U字状(極大値近傍全体が丸みを帯びている)の形状をなしている。
屈折率分布Wのうち、このように上に凸の略U字状の形状をなす領域は、他の領域よりも相対的に屈折率が高くなっていることからコア部14となる。なお、図2では、2つのコア部14のうち、極大値Wm1近傍に位置するものをコア部141とし、極大値Wm2近傍に位置するものをコア部142とする。
一方、コア部14に隣接する領域では、コア部14よりも屈折率が低く、屈折率の変化がほとんどない。すなわち、この領域の屈折率は、各極大値より低い一定の値になっている。したがってこの領域は側面クラッド部15となる。なお、図2では、3つの側面クラッド部15が存在しており、このうちコア部141の左側に位置するものを側面クラッド部151とし、コア部141とコア部142との間に位置するものを側面クラッド部152とし、コア部142の右側に位置するものを側面クラッド部153とする。
また、屈折率分布Wは、コア部の数に応じた極大値を有する。本実施形態のようにコア部14が2つである場合、屈折率分布Wは2つの極大値を有するが、極大値の数(コア部14の数)は3つ以上であってもよい。
また、これら複数の極大値は、ほぼ同じ値であることが好ましいが、多少ずれていても差し支えない。その場合、ずれ量は、複数の極大値の平均値の10%以内に抑えられているのが好ましい。
また、光導波路1は、細長い帯状をなしており、上記のような屈折率分布Wは、光導波路1の長手方向全体においてほぼ同じ分布が維持されている。
以上のような屈折率分布Wに伴い、コア層13には、長尺状の2つのコア部14と、これらのコア部14の各両側面に隣接する3つの側面クラッド部15とが形成されることとなる。
より詳しくは、図1に示す光導波路1には、並列する2つのコア部141、142と、並列する3つの側面クラッド部151、152、153とが交互に設けられている。これにより、各コア部141、142は、それぞれ、各側面クラッド部151、152、153および各クラッド層11、12(以下、これらを合わせて単に「クラッド部」ともいう。)で囲まれた状態となる。各コア部141、142に入射された信号光は、クラッド部との界面またはその近傍で反射されるため、各コア部141、142では、信号光を伝搬することができる。なお、図1に示す各コア部14には密なドットを付し、各側面クラッド部15には疎なドットを付している。
コア部14とクラッド部との界面またはその近傍で信号光の反射を生じさせるためには、コア部14中の極大値Wm1、Wm2とクラッド部の屈折率との間に屈折率差が存在する必要がある。各極大値Wm1、Wm2の値は、クラッド部の屈折率より大きければよく、その差(屈折率差)の大きさは特に限定されないが、好ましくはクラッド部の屈折率の0.5%以上とされ、より好ましくは0.8%以上とされる。一方、屈折率差の上限値は、特に限定されないが、好ましくは5.5%程度とされる。屈折率差が前記下限値未満であると信号光を伝搬する効果が低下する場合があり、前記上限値を超えても信号光の伝送効率についてそれ以上の増大は期待できない。
なお、前記屈折率差とは、コア部14の最大の屈折率(極大値Wm1、Wm2)をn1とし、クラッド部の屈折率をn2としたとき、次式で表わされる。
屈折率差(%)=|n1/n2−1|×100
また、図1に示す構成では、コア部14は平面視で直線状に形成されているが、途中で湾曲、分岐等していてもよく、その形状は任意である。
また、図1に示すコア部14は、その横断面形状が正方形または長方形のような四角形(矩形)をなしているが、この形状は特に限定されず、例えば、真円、楕円形、長円形等の円形、三角形、五角形、六角形等の多角形であってもよい。
コア部14の幅および高さ(コア層13の厚さ)は、特に限定されないが、それぞれ、1〜200μm程度であるのが好ましく、5〜100μm程度であるのがより好ましく、20〜70μm程度であるのがさらに好ましい。
一方、側面クラッド部15の幅は、コア部14の幅の0.2〜5倍程度であるのが好ましく、0.3〜3倍程度であるのがより好ましい。
以上のように、屈折率分布Wは、極大値Wm1、Wm2を有し、これらの極大値から離れるにつれて屈折率が連続的に低下する分布を有していることから、このような屈折率分布Wを有する光導波路1は、いわゆるステップインデックス型の屈折率分布を有する光導波路に比べ、コア部14に光を閉じ込める作用がより増強される。このため、光導波路1においては、伝送損失のさらなる低減が図られる。
また、コア部14中を伝搬する信号光は、コア部14の中でもより中央部に近い領域に集中して伝搬する。このため、光路ごとの伝搬時間には差がほとんどなくなり、伝搬に伴って光信号の波形が変化し難くなる。例えば、信号光にパルス信号が含まれている場合には、パルス信号の鈍り(広がり)を抑制することができる。その結果、光通信の品質をより高めることができる。
なお、屈折率分布Wにおいて屈折率が連続的に変化しているとは、屈折率分布Wの曲線が各部で丸みを帯びており、この曲線が微分可能なものであるという状態である。
また、屈折率分布Wのうち、極大値Wm1、Wm2近傍の屈折率分布は、左右対称であるのが好ましい。これにより、各コア部14では、信号光がコア部14の幅の中心部に集まる確率が高くなり、相対的に側面クラッド部15側に漏れ出る確率が低くなる。その結果、コア部14における伝送損失をより低減させることができる。
なお、図2には図示しないものの、必要に応じて、屈折率分布Wのうち側面クラッド部15に対応する位置には、それぞれ、極大値Wm1、Wm2より小さい極大値が存在していてもよい。
このような極大値Wm1、Wm2よりも相対的に小さい極大値は、コア部141、142のような高い光伝送性は有しないものの、周囲よりも屈折率がやや高くなっているため、わずかな光伝送性を有することとなる。その結果、側面クラッド部151、152、153において、コア部141、142から漏出した伝送光を閉じ込めることができるようになり、他のコア部への波及を防止することができる。すなわち、側面クラッド部15に極大値が存在することで、光導波路1は、クロストークを確実に抑制し得るものとなる。
上述したようなコア層13の構成材料(主材料)は、上記の屈折率差が生じる材料であれば特に限定されないが、具体的には、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ系樹脂やオキセタン系樹脂のような環状エーテル系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリシラン、ポリシラザン、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ウレタン系樹脂、また、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂のような各種樹脂材料等を用いることができる。なお、樹脂材料は、異なる組成のものを組み合わせた複合材料であってもよい。
また、これらの中でも特にノルボルネン系樹脂が好ましい。ノルボルネン系ポリマーは、例えば、開環メタセシス重合(ROMP)、ROMPと水素化反応との組み合わせ、ラジカルまたはカチオンによる重合、カチオン性パラジウム重合開始剤を用いた重合、これ以外の重合開始剤(例えば、ニッケルや他の遷移金属の重合開始剤)を用いた重合等、公知のすべての重合方法で得ることができる。
クラッド層11および12は、それぞれ、コア層13の下部および上部に位置するクラッド部を構成するものである。
クラッド層11、12の平均厚さは、コア層13の平均厚さ(各コア部14の平均高さ)の0.1〜1.5倍程度であるのが好ましく、0.2〜1.25倍程度であるのがより好ましく、具体的には、クラッド層11、12の平均厚さは、特に限定されないが、それぞれ、通常、1〜200μm程度であるのが好ましく、5〜100μm程度であるのがより好ましく、10〜60μm程度であるのがさらに好ましい。これにより、光導波路1が必要以上に大型化(厚膜化)するのを防止しつつ、クラッド部としての機能が好適に発揮される。
また、クラッド層11および12の構成材料としては、例えば、前述したコア層13の構成材料と同様の材料を用いることができるが、特にノルボルネン系ポリマーが好ましい。
また、コア層13の構成材料およびクラッド層11、12の構成材料を選択する場合、両者の間の屈折率差を考慮して材料を選択すればよい。具体的には、コア部14とクラッド層11、12との境界において光を確実に反射させるため、クラッド層11、12の構成材料の屈折率が十分に小さくなるように材料を選択すればよい。これにより、光導波路1の厚さ方向において十分な屈折率差が得られ、各コア部14からクラッド層11、12に光が漏れ出るのを抑制することができる。
なお、光の減衰を抑制する観点からは、コア層13の構成材料とクラッド層11、12の構成材料との密着性(親和性)が高いことも重要である。
また、光導波路1には、クラッド層11の下面に設けられた支持フィルム2およびクラッド層12の上面に設けられたカバーフィルム3が積層されていてもよい。
このような支持フィルム2およびカバーフィルム3の構成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミド等の各種樹脂材料等が挙げられる。
また、支持フィルム2およびカバーフィルム3の各平均厚さは、特に限定されないが、5〜200μm程度であるのが好ましく、10〜100μm程度であるのがより好ましい。
なお、支持フィルム2とクラッド層11との間、および、カバーフィルム3とクラッド層12との間は、接着または接合されているが、その方法としては、熱圧着、接着剤または粘着剤による接着等が挙げられる。
このうち、接着層としては、例えば、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤の他、各種ホットメルト接着剤(ポリエステル系、変性オレフィン系)等が挙げられる。また、特に耐熱性の高いものとして、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリイミドアミドエーテル、ポリエステルイミド、ポリイミドエーテル等の熱可塑性ポリイミド接着剤が好ましく用いられる。
また、接着層の平均厚さは、特に限定されないが、1〜100μm程度であるのが好ましく、5〜60μm程度であるのがより好ましい。
<光導波路の製造方法>
次に、上述した光導波路1の製造方法の一例について説明する。
(第1の製造方法)
まず、光導波路1の第1の製造方法(本発明の光導波路の製造方法の第1実施形態)について説明する。
図3、4、8〜10は、それぞれ図1に示す光導波路1の第1の製造方法を説明するための図である。なお、以下の説明では、図3、4、8〜10中の上側を「上」、下側を「下」という。
光導波路1の第1の製造方法は、[1]支持基板951上にコア層形成用組成物900を層状に供給して層910を得る工程と、[2]層910の一部に活性放射線を照射することで屈折率差を生じさせ、光導波路1を得る工程と、を有する。
以下、各工程について順次説明する。
[1]まず、コア層形成用組成物900を用意する。
コア層形成用組成物900は、ポリマー915と添加剤920とを含有するものである。
次いで、支持基板951上にコア層形成用組成物900を塗布して液状被膜を形成する(図3(a)参照)。そして、支持基板951をレベルテーブルに置いて、液状被膜を平坦化するとともに、溶媒を蒸発(脱溶媒)させる。これにより、図3(b)に示す層910を得る(第1の工程)。
支持基板951には、例えば、シリコン基板、二酸化ケイ素基板、ガラス基板、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等が用いられる。
液状被膜を形成するための塗布法としては、例えば、ドクターブレード法、スピンコート法、ディッピング法、テーブルコート法、スプレー法、アプリケーター法、カーテンコート法、ダイコート法等の方法が挙げられる。
得られた層910中では、ポリマー(マトリックス)915が実質的に一様かつランダムに存在し、添加剤920は、ポリマー915中に実質的に一様かつランダムに分散している。これにより、層910中には、添加剤920が実質的に一様かつランダムに分散している。
層910の平均厚さは、形成すべきコア層13の厚さに応じて適宜設定され、特に限定されないが、5〜300μm程度であるのが好ましく、10〜200μm程度であるのがより好ましい。
(ポリマー)
ポリマー915は、コア層13のベースポリマーとなるものである。
ポリマー915には、透明性が十分に高く(無色透明であり)、かつ、後述する活性放射線の照射により化学構造の一部が変化することに起因して屈折率が変化するものが用いられる。化学構造の変化とは、例えば、化学構造の一部が切断されること、化学構造中の分子配置(原子配置)が変わること等が挙げられる。ここでは、特に化学構造の一部が切断されて屈折率が低下する場合について説明する。
このようなポリマー915としては、例えば、ノルボルネン系樹脂やベンゾシクロブテン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ系樹脂やオキセタン系樹脂のような環状エーテル系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ウレタン系樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(ポリマーアロイ、ポリマーブレンド(混合物)、共重合体など)用いることができる。
これらの中でも、特に、環状オレフィン系樹脂を主とするものが好ましい。ポリマー915として環状オレフィン系樹脂を用いることにより、優れた光伝送性能や耐熱性を有する光導波路1を得ることができる。
環状オレフィン系樹脂は、無置換のものであってもよいし、水素が他の基により置換されたものであってもよい。
環状オレフィン系樹脂としては、例えばノルボルネン系樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂等が挙げられる。
中でも、耐熱性、透明性等の観点からノルボルネン系樹脂を使用することが好ましい。また、ノルボルネン系樹脂は、高い疎水性を有するため、吸水による寸法変化等を生じ難い光導波路1を得ることができる。
ノルボルネン系樹脂としては、単独の繰り返し単位を有するもの(ホモポリマー)、2つ以上のノルボルネン系繰り返し単位を有するもの(コポリマー)のいずれであってもよい。
このようなノルボルネン系樹脂としては、例えば、
(1)ノルボルネン型モノマーを付加(共)重合して得られるノルボルネン型モノマーの付加(共)重合体、
(2)ノルボルネン型モノマーとエチレンやα−オレフィン類との付加共重合体、
(3)ノルボルネン型モノマーと非共役ジエン、および必要に応じて他のモノマーとの付加共重合体のような付加重合体、
(4)ノルボルネン型モノマーの開環(共)重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂、
(5)ノルボルネン型モノマーとエチレンやα−オレフィン類との開環(共)重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂、
(6)ノルボルネン型モノマーと非共役ジエン、または他のモノマーとの開環共重合体、および必要に応じて該共重合体を水素添加したポリマーのような開環重合体が挙げられる。これらの重合体としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体等が挙げられる。
これらのノルボルネン系樹脂は、例えば、開環メタセシス重合(ROMP)、ROMPと水素化反応との組み合わせ、ラジカルまたはカチオンによる重合、カチオン性パラジウム重合開始剤を用いた重合、これ以外の重合開始剤(例えば、ニッケルや他の遷移金属の重合開始剤)を用いた重合等、公知のすべての重合方法で得ることができる。
これらの中でも、ノルボルネン系樹脂としては、下記構造式Bで表される少なくとも1個の繰り返し単位を有するもの、すなわち、付加(共)重合体が好ましい。付加(共)重合体は、透明性、耐熱性および可撓性に富むことから、例えば光導波路1を形成した後、これに電気部品等を半田を介して実装することがあるが、このような場合においても光導波路1に、高い耐熱性、すなわち、耐リフロー性を付与することができるためである。
かかるノルボルネン系ポリマーは、例えば、ノルボルネン系モノマーを用いることにより好適に合成される。
また、光導波路1を各種製品に組み込んだ際には、例えば、80℃程度の環境下で製品が使用される場合がある。このような場合においても、耐熱性を確保するという観点から、付加(共)重合体が好ましい。
中でも、ノルボルネン系樹脂は、後述する離脱性基を含むノルボルネンの繰り返し単位を含むとともに、重合性基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位や、アリール基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位を含むものが好ましい。
重合性基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位としては、エポキシ基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位、(メタ)アクリル基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位、および、アルコキシシリル基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位のうちの少なくとも1種が好適である。これらの重合性基は、各種重合性基の中でも、反応性が高いことから好ましい。
また、このような重合性基を含むノルボルネンの繰り返し単位を、2種以上含むものを用いれば、可撓性と耐熱性の両立を図ることができる。
一方、アリール基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位を含むことにより、アリール基に由来する極めて高い疎水性によって、吸水による寸法変化等をより確実に防止することができる。
さらに、ノルボルネン系樹脂は、アルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むものが好ましい。なお、アルキル基は、直鎖状または分岐状のいずれであってもよい。
アルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むことにより、ノルボルネン系樹脂は、柔軟性が高くなるため、高いフレキシビリティ(可撓性)を付与することができる。
また、アルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むノルボルネン系樹脂は、特定の波長領域(特に、850nm付近の波長領域)の光に対する透過率が優れることからも好ましい。
上記のようなノルボルネンの繰り返し単位を含むノルボルネン系樹脂の具体例としては、ヘキシルノルボルネンのホモポリマー、フェニルエチルノルボルネンのホモポリマー、ベンジルノルボルネンのホモポリマー、ヘキシルノルボルネンとフェニルエチルノルボルネンとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとベンジルノルボルネンとのコポリマー等が挙げられる。
このうち、アルキルノルボルネンを含むノルボルネンの繰り返し単位としては、以下の式(1)〜(4)、(8)〜(10)で表されるものが好適である。
(式(1)中、R
1は、炭素数1〜10のアルキル基を表し、aは、0〜3の整数を表し、bは、1〜3の整数を表し、p
1/q
1が20以下である。)
式(1)の繰り返し単位を含むノルボルネン系樹脂は、以下のようにして製造することができる。
R1を有するノルボルネンと、側鎖にエポキシ基を有するノルボルネンとをトルエンに溶かし、Ni化合物(A)を触媒として用いて溶液重合させることで(1)を得る。
なお、側鎖にエポキシ基を有するノルボルネンの製造方法は、たとえば、(i)(ii)の通りである。
(i)ノルボルネンメタノール(NB−CH2−OH)の合成
DCPD(ジシクロペンタジエン)のクラッキングにより生成したCPD(シクロペンタジエン)とαオレフィン(CH2=CH−CH2−OH)を高温高圧下で反応させる。
(ii)エポキシノルボルネンの合成
ノルボルネンメタノールとエピクロルヒドリンとの反応により生成する。
なお、式(1)において、bが2または3の場合には、エピクロルヒドリンのメチレン基がエチレン基、プロピレン基等になったものを使用する。
式(1)で表される繰り返し単位を含むノルボルネン系樹脂の中でも、可撓性と耐熱性の両立を図ることが可能との観点から、特に、R1が炭素数4〜10のアルキル基であり、aおよびbがそれぞれ1である化合物、例えば、ブチルノルボルネンとメチルグリシジルエーテルノルボルネンとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとメチルグリシジルエーテルノルボルネンとのコポリマー、デシルノルボルネンとメチルグリシジルエーテルノルボルネンとのコポリマー等が好ましい。
(式(2)中、R
2は、炭素数1〜10のアルキル基を表し、R
3は、水素原子またはメチル基を表し、cは、0〜3の整数を表し、p
2/q
2が20以下である。)
式(2)の繰り返し単位を含むノルボルネン系樹脂は、R2を有するノルボルネンと、側鎖にアクリルおよびメタクリル基を有するノルボルネンとをトルエンに溶かし、上述したNi化合物(A)を触媒に用いて溶液重合させることで得ることができる。
なお、式(2)で表される繰り返し単位を含むノルボルネン系樹脂の中でも、可撓性と耐熱性との両立の観点から、特に、R2が炭素数4〜10のアルキル基であり、cが1である化合物、例えば、ブチルノルボルネンとアクリル酸2−(5−ノルボルネニル)メチルとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとアクリル酸2−(5−ノルボルネニル)メチルとのコポリマー、デシルノルボルネンとアクリル酸2−(5−ノルボルネニル)メチルとのコポリマー等が好ましい。
(式(3)中、R
4は、炭素数1〜10のアルキル基を表し、各X
3は、それぞれ独立して、炭素数1〜3のアルキル基を表し、dは、0〜3の整数を表し、p
3/q
3が20以下である。)
式(3)の繰り返し単位を含む樹脂は、R4を有するノルボルネンと、側鎖にアルコキシシリル基を有するノルボルネンとをトルエンに溶かし、上述したNi化合物(A)を触媒に用いて溶液重合させることで得ることができる。
なお、式(3)で表されるノルボルネン系ポリマーの中でも、特に、R4が炭素数4〜10のアルキル基であり、dが1または2、X3がメチル基またはエチル基である化合物、例えば、ブチルノルボルネンとノルボルネニルエチルトリメトキシシランとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとノルボルネニルエチルトリメトキシシランとのコポリマー、デシルノルボルネンとノルボルネニルエチルトリメトキシシランとのコポリマー、ブチルノルボルネンとトリエトキシシリルノルボルネンとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとトリエトキシシリルノルボルネンとのコポリマー、デシルノルボルネンとトリエトキシシリルノルボルネンとのコポリマー、ブチルノルボルネンとトリメトキシシリルノルボルネンとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとトリメトキシシリルノルボルネンとのコポリマー、デシルノルボルネンとトリメトキシシリルノルボルネンとのコポリマー等が好ましい。
(式(4)中、R
5は、炭素数1〜10のアルキル基を表し、A
1およびA
2は、それぞれ独立して、下記式(5)〜(7)で表される置換基を表すが、同時に同一の置換基であることはない。また、p
4/(q
4+r)が20以下である。)
式(4)の繰り返し単位を含む樹脂は、R5を有するノルボルネンと、側鎖にA1およびA2を有するノルボルネンとをトルエンに溶かし、Ni化合物(A)を触媒に用いて溶液重合させることで得ることができる。
(式(5)中、eは、0〜3の整数を表し、fは、1〜3の整数を表す。)
(式(6)中、R
6は、水素原子またはメチル基を表し、gは、0〜3の整数を表す。)
(式(7)中、X
4は、それぞれ独立して、炭素数1〜3のアルキル基を表し、hは、0〜3の整数を表す。)
なお、式(4)で表される繰り返し単位を含むノルボルネン系樹脂としては、例えば、ブチルノルボルネン、ヘキシルノルボルネンまたはデシルノルボルネンのいずれかと、アクリル酸2−(5−ノルボルネニル)メチルと、ノルボルネニルエチルトリメトキシシラン、トリエトキシシリルノルボルネンまたはトリメトキシシリルノルボルネンのいずれかとのターポリマー、ブチルノルボルネン、ヘキシルノルボルネンまたはデシルノルボルネンのいずれかと、アクリル酸2−(5−ノルボルネニル)メチルと、メチルグリシジルエーテルノルボルネンとのターポリマー、ブチルノルボルネン、ヘキシルノルボルネンまたはデシルノルボルネンのいずれかと、メチルグリシジルエーテルノルボルネン、ノルボルネニルエチルトリメトキシシラン、トリエトキシシリルノルボルネンまたはトリメトキシシリルノルボルネンのいずれかとのターポリマー等が挙げられる。
(式(8)中、R
7は、炭素数1〜10のアルキル基を表し、R
8は、水素原子、メチル基またはエチル基を表し、Arは、アリール基を表し、X
1は、酸素原子またはメチレン基を表し、X
2は、炭素原子またはシリコン原子を表し、iは、0〜3の整数を表し、jは、1〜3の整数を表し、p
5/q
5が20以下である。)
式(8)の繰り返し単位を含む樹脂は、R7を有するノルボルネンと、側鎖に−(CH2)i−X1−X2(R8)3−j(Ar)jを含むノルボルネンとをトルエンに溶かし、Ni化合物を触媒に用いて溶液重合させることで得ることができる。
なお、式(8)で表される繰り返し単位を含むノルボルネン系樹脂の中でも、X1が酸素原子、X2がシリコン原子、Arがフェニル基であるものが好ましい。
さらには、可撓性、耐熱性および屈折率制御の観点から特に、R7が炭素数4〜10のアルキル基であり、X1が酸素原子、X2がシリコン原子、Arがフェニル基、R8がメチル基、iが1、jが2である化合物、例えば、ブチルノルボルネンとジフェニルメチルノルボルネンメトキシシランとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとジフェニルメチルノルボルネンメトキシシランとのコポリマー、デシルノルボルネンとジフェニルメチルノルボルネンメトキシシランとのコポリマー等が好ましい。
具体的には、以下のようなノルボルネン系樹脂を使用することが好ましい。
(式(9)におけるR
7、p
5、q
5、iは、式(8)と同じである。)
また、可撓性と耐熱性および屈折率制御の観点から、式(8)において、R7が炭素数4〜10のアルキル基であり、X1がメチレン基、X2が炭素原子、Arがフェニル基、R8が水素原子、iが0、jが1である化合物、例えば、ブチルノルボルネンとフェニルエチルノルボルネンとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとフェニルエチルノルボルネンとのコポリマー、デシルノルボルネンとフェニルエチルノルボルネンとのコポリマー等であってもよい。
さらに、ノルボルネン系樹脂として、次のようなものを使用してもよい。
(式(10)において、R
10は、炭素数1〜10のアルキル基を表し、R
11は、アリール基を示し、kは0以上、4以下である。p
6/q
6は20以下である。)
また、p1/q1〜p3/q3、p5/q5、p6/q6またはp4/(q4+r)は、20以下であればよいが、15以下であるのが好ましく、0.1〜10程度がより好ましい。これにより、複数種のノルボルネンの繰り返し単位を含む効果が如何なく発揮される。
一方、ポリマー915は、前述したようにアクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミド、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリシラン、ポリウレタン等であってもよい。
このうち、アクリル系樹脂およびメタクリル系樹脂としては、例えば、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エポキシアクリレート)、ポリ(エポキシメタクリレート)、ポリ(アミノアクリレート)、ポリ(アミノメタクリレート)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(イソシアナートアクリレート)、ポリ(イソシアナートメタクリレート)、ポリ(シアナートアクリレート)、ポリ(シアナートメタクリレート)、ポリ(チオエポキシアクリレート)、ポリ(チオエポキシメタクリレート)、ポリ(アリルアクリレート)、ポリ(アリルメタクリレート)、アクリレート・エポキシアクリレート共重合体(メチルメタクリレートとグリシジルメタクリレートの共重合体)、スチレン・エポキシアクリレート共重合体等が挙げられ、これらの1種または2種以上の複合材料が用いられる。
また、エポキシ系樹脂としては、例えば、脂環式エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン環含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂およびトリグリシジルイソシアヌレート等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上の複合材料が用いられる。
また、ポリイミドとしては、ポリイミド樹脂前駆体であるポリアミド酸を閉環し、硬化(イミド化)させることにより得られる樹脂であれば、特に限定されない。
ポリアミド酸としては、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド中、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを等モル比にて反応させることにより、溶液として得ることができる。
このうち、テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水物等が挙げられる。
一方、ジアミンとしては、例えば、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−2,2−ジメチルビフェニル、2,2−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル等が挙げられる。
また、シリコーン系樹脂としては、例えば、シリコーンゴム、シリコーンエラストマー等が挙げられる。これらのシリコーン系樹脂は、シリコーンゴムモノマーまたはオリゴマーと硬化剤とを反応させることにより得られるものである。
シリコーンゴムモノマーまたはオリゴマーとしては、例えば、メチルシロキサン基、エチルシロキサン基、フェニルシロキサン基を含むものが挙げられる。
シリコーンゴムモノマーまたはオリゴマーとしては、光反応性を付与するため、例えば、エポキシ基、ビニルエーテル基、アクリル基等の官能基を導入してなるものが好ましく用いられる。
また、フッ素系樹脂としては、例えば、含フッ素脂肪族環構造を有するモノマーから得られる重合体、2つ以上の重合性不飽和結合を有する含フッ素モノマーを環化重合して得られる重合体、含フッ素系モノマーとラジカル重合性単量体とを共重合して得られる重合体等が挙げられる。
含フッ素脂肪族環構造としては、例えば、ペルフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)、ペルフルオロ(4−メチル−1,3−ジオキソール)、ペルフルオロ(4−メトキシ−1,3−ジオキソール)等が挙げられる。
含フッ素モノマーとしては、例えば、ペルフルオロ(アリルビニルエーテル)、ペルフルオロ(ブテニルビニルエーテル)等が挙げられる。
ラジカル重合性モノマーとしては、例えば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)等が挙げられる。
また、ポリシランとしては、主鎖がSi原子のみからなる高分子であれば、いかなるものも用いられる。主鎖は、直鎖型であってもよく分岐型であってもよい。そして、ポリシラン中のSi原子には、Si原子以外に、水素原子、炭化水素基、アルコキシ基等の有機置換基が結合している。
このうち、炭化水素基としては、例えば、ハロゲンで置換されていてもよい炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜14の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
脂肪族炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、トリフルオロプロピル基、ノナフルオロヘキシル基のような鎖状炭化水素基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基のような脂環式炭化水素基等が挙げられる。
芳香族炭化水素基の具体例としては、フェニル基、p−トリル基、ビフェニル基、アントラシル基等が挙げられる。
アルコキシ基としては、炭素数1〜8のものが挙げられ、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、オクチルオキシ基等が挙げられる。
また、ポリウレタンとしては、主鎖にウレタン結合(−O−CO−NH−)を含む高分子であれば、いかなるものも用いられる。また、主鎖にウレタン結合とウレア結合(−NH−CO−NH−、−NH−CO−N=、または、−NH−CO−N<)とを含むウレタン−ウレア共重合体等であってもよい。
なお、組成によらず、比較的高い屈折率を有するポリマー915を得るためには、分子構造中に、芳香族環(芳香族基)、窒素原子、臭素原子や塩素原子を有するモノマーを一般的に選択して、ポリマー915が合成(重合)される。一方、比較的低い屈折率を有するポリマー915を得るためには、分子構造中に、アルキル基、フッ素原子やエーテル構造(エーテル基)を有するモノマーを一般的に選択して、ポリマー915が合成(重合)される。
比較的高い屈折率を有するノルボルネン系樹脂としては、アラルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むものが好ましい。かかるノルボルネン系樹脂は、特に高い屈折率を有する。
アラルキルノルボルネンの繰り返し単位が有するアラルキル基(アリールアルキル基)としては、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、ナフチルエチル基、ナフチルプロピル基、フルオレニルエチル基、フルオレニルプロピル基等が挙げられるが、ベンジル基やフェニルエチル基が特に好ましい。かかる繰り返し単位を有するノルボルネン系樹脂は、極めて高い屈折率を有するものであることから好ましい。
また、以上のようなポリマー915は、前述したように、活性放射線の照射により化学構造の一部が切断され、これにより屈折率が変化し得るものである。
具体的には、ポリマー915は、主鎖と、主鎖から分岐し、活性放射線の照射により、その分子構造の少なくとも一部が主鎖から離脱し得る離脱性基(離脱性ペンダントグループ)と、を有している。すなわち、ポリマー915は、離脱性基を含む繰り返し単位を有している。離脱性基の離脱によりポリマー915の屈折率が低下するため、ポリマー915では、活性放射線の照射の有無によって屈折率差を形成することができる。なお、化学構造の変化の種類によっては、屈折率が上昇する場合もある。
このような離脱性基を有するポリマー915としては、例えば、分子構造中に、−O−構造、−Si−アリール構造および−O−Si−構造のうちの少なくとも1つを有するものが挙げられる。かかる構造は、カチオンの作用により比較的容易に離脱し、離脱性基となり得る。
このうち、離脱により樹脂の屈折率に低下を生じさせる離脱性基としては、−Si−ジフェニル構造および−O−Si−ジフェニル構造の少なくとも一方が好ましい。
ここで、側鎖に離脱性基を有するポリマー915としては、例えばシクロヘキセン、シクロオクテン等の単環体モノマーの重合体、ノルボルネン、ノルボルナジエン、ジシクロペンタジエン、ジヒドロジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、トリシクロペンタジエン、ジヒドロトリシクロペンタジエン、テトラシクロペンタジエン、ジヒドロテトラシクロペンタジエン等の多環体モノマーの重合体等の環状オレフィン系樹脂が挙げられる。これらの中でも多環体モノマーの重合体の中から選ばれる1種以上の環状オレフィン系樹脂が好ましく用いられる。これにより、樹脂の耐熱性を向上することができる。
なお、ポリマー915は、離脱性基を含む繰り返し単位(第1の繰り返し単位)を含んでいれば、それ以外にいかなる繰り返し単位(第2の繰り返し単位)を含んでいてもよく、第1の繰り返し単位と第2の繰り返し単位との組み合わせ、第1の繰り返し単位同士の組み合わせ、第2の繰り返し単位同士の組み合わせは限定されない。
また、重合形態としては、ランダム重合、ブロック重合等の公知の形態を適用することができる。例えばノルボルネン型モノマーの重合の具体例としては、ノルボルネン型モノマーの(共)重合体、ノルボルネン型モノマーとα−オレフィン類などの共重合可能な他のモノマーとの共重合体、およびこれらの共重合体の水素添加物等が具体例に該当する。これら環状オレフィン系樹脂は、公知の重合法により製造することが可能であり、その重合方法には付加重合法と開環重合法とがあり、前述の中でも付加重合法で得られる環状オレフィン系樹脂(特にノルボルネン系樹脂)が好ましい(すなわち、ノルボルネン系化合物の付加重合体)。これにより、透明性、耐熱性および可撓性に優れる。
さらに、側鎖に離脱性基を有するノルボルネン系樹脂としては、例えば、式(8)で表されるノルボルネン系樹脂の中で、X1が酸素原子、X2がシリコン原子、Arがフェニル基であるものが挙げられる。
また、式(3)においては、アルコキシシリル基のSi−O−X3の部分で脱離する場合がある。
また、例えば、式(9)のノルボルネン系樹脂を使用した場合、光酸発生剤(PAGと表記)から発生した酸により、以下のように反応が進むと推測される。なお、ここでは、離脱性基の部分のみを示し、また、i=1の場合で説明している。
さらに、式(9)の構造に加えて、側鎖にエポキシ基を有するものであってもよい。このようなものを使用することで基材に対して密着性に優れた光導波路1が形成可能という効果がある。
具体例として以下のようなものが挙げられる。
(式(11)において、p
7/(q
7+r
2)は、20以下である。)
式(11)で示される化合物は、たとえば、ヘキシルノルボルネンと、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン(側鎖に−CH2−O−Si(CH3)(Ph)2を含むノルボルネン)およびエポキシノルボルネンをトルエンに溶かし、Ni化合物を触媒に用いて溶液重合させることで得ることができる。
一方、別の離脱性基としては、例えば、末端にアセトフェノン構造を有する置換基が挙げられる。この離脱性基は、フリーラジカルの作用により比較的容易に離脱する。
前記離脱性基の含有量は、特に限定されないが、前記側鎖に脱離性基を有するポリマー915中の10〜80重量%であるのが好ましく、特に20〜60重量%であるのがより好ましい。含有量が前記範囲内であると、特に可撓性と屈折率変調機能(屈折率差を変化させる効果)との両立に優れる。
なお、離脱性基の含有量を多くすることにより、屈折率を変化させる幅を拡張することができる。
また、活性放射線の照射により化学結合の一部が切断されるポリマー915としては、上述したようなものの他に、下式に示すようなポリシラン化合物が特に好ましく用いられる。
このようなポリシラン化合物では、活性放射線の照射に伴ってSi−Si結合が切断され、Si−O結合に変化する。この際、屈折率の低下を伴うため、これにより、屈折率差を形成することができる。
(添加剤)
添加剤920としては、例えば、触媒前駆体、助触媒、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、シランカップリング剤、塗面改良剤、熱重合禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、着色剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、フィラー、無機粒子、劣化防止剤、濡れ性改良剤、帯電防止剤等が挙げられる。
コア層形成用組成物900中における添加剤920の含有量は、0.01重量%以上であるのが好ましく、0.5重量%以上であるのがより好ましく、1重量%以上であるのがさらに好ましい。なお、上限値は、5重量%以下であるのが好ましい。
なお、上述したような層910は、マスク935を介して活性放射線930を照射することにより、屈折率差を形成することのできる屈折率調整能を潜在的に有するものである。
したがって、多数の層910を製造、保管しておき、その後、必要数に対して活性放射線930を照射するようにすれば、簡単に光導波路1を製造することができ、製造効率の観点から有用である。
[2]次に、開口(透過部)9351が形成されたマスク(マスキング)935を用意し、このマスク935を介して、層910に対して活性放射線930を照射する(図4参照)。
マスク935は、遮蔽部9350と、遮蔽部9350の一部に設けられた開口9351と、を有している。ここで、開口9351は、その全体で活性放射線930を均一に透過するわけではなく、部分的に透過率が異なるよう構成されている。このようなマスク935は、グレートーンマスクとも呼ばれる。
また、マスク935は、層910の平面視における大きさより小さいものであり、層910に対して相対的に移動することで、開口9351を透過した活性放射線930を、層910に対して走査させることができる。活性放射線930が走査されることにより、その軌跡において屈折率差が形成され、コア部14および側面クラッド部15が形成される。このような方法によれば、単にマスク935を介して活性放射線930を照射することのみで、グレーテッドインデックス型またはそれに類似した屈折率分布Wを有する光導波路1を効率よく製造することができる。しかも、活性放射線930を照射する際、その照射位置を正確に制御することは容易であるため、結果的にコア部14および側面クラッド部15の形成位置の精度も容易に高めることができる。したがって、伝送効率の低下やクロストークの発生を確実に抑制しつつ、光導波路1の多チャンネル化および高密度化を容易に図ることができる。
図5は、マスク935の構成を示す図である。なお、以下の説明では、活性放射線930の照射に伴いポリマー915の屈折率が低下する場合を例に説明する。
図5(a)に示す開口9351は、平面視で長方形をなしている。そして、開口9351の長辺の中点を通り、長辺に垂直な中心線C2を引いたとき、開口9351の透過率は、中心線C2近傍から離れるにつれて徐々に小さくなるよう設定されている。
図5(b)は、開口9351の長辺の各位置に対する透過率の分布を示す図である。開口9351の透過率は、中心線C2近傍において最も大きく、開口9351の両端部に向かうにつれて連続的に小さくなっている。
このような透過率分布Tを有する開口9351を活性放射線930が透過すると、この透過率分布Tに応じて透過した活性放射線930には所定の強度(照度)分布が生じる。強度分布が生じた活性放射線930が層910に照射されると、積算光量の分布に反映されることとなり、最終的には、層910に屈折率分布が形成されることとなる。したがって、目的とする屈折率分布Wの形状に応じて、開口9351の透過率分布Tを決定すればよい。
図6は、第1の製造方法において、層910に対して活性放射線930を照射しつつマスク935を走査する様子を示す平面図である。
マスク935は、開口9351の中心線C2が、形成すべき側面クラッド部15の延伸方向に沿うように(図6の中心線R1に沿うように)走査される。また、マスク935の走査に対応して活性放射線930の線源も走査される。これにより、開口9351を透過した活性放射線930も層910に対して走査されることとなり、活性放射線930の通過経路の中心線R1上あるいはその近傍において活性放射線930の積算光量が最も多くなる。
図6(a)では、図の下方から上方に向かってマスク935を走査させる。マスク935が通過した第1の軌跡931では、屈折率が低下し、中心線R1を挟んでその両側に側面クラッド部15が形成される。
次いで、第1の軌跡931に隣接するように、図の上方から下方に向かってマスク935を走査させる(図6(b)参照)。マスク935が通過した第2の軌跡932でも、やはり屈折率が低下し、中心線R2を挟んでその両側に側面クラッド部15が形成される。
そして、第1の軌跡931と第2の軌跡932との境界線B1上は、周辺に比べて活性放射線の積算光量が少ないため、屈折率の低下が最も少ない。したがって、この領域では、屈折率が相対的に高くなる。その結果、境界線B1には、屈折率の極大値が形成されることとなり、境界線B1を挟んでその両側にコア部14が形成される。なお、このコア部14には、境界線B1から離れるにつれて屈折率が徐々に低下する屈折率分布が形成される。
次いで、第2の軌跡932に隣接するように、図の下方から上方に向かってマスク935を走査させる(図6(c)参照)。マスク935が通過した第3の軌跡933でも、やはり屈折率が低下し、中心線R3を挟んでその両側に側面クラッド部15が形成される。
ここで、第2の軌跡932と第3の軌跡933との境界線B2上も、境界線B1上と同様、屈折率の低下が少ない。したがって、この領域では、屈折率が相対的に高くなる。その結果、境界線B2にも、屈折率の極大値が形成されることとなり、境界線B2を挟んでその両側にコア部14が形成される。なお、このコア部14にも、境界線B2から離れるにつれて屈折率が徐々に低下する屈折率分布が形成される。
以上のようにして層910には、前述した屈折率分布Wが形成される。そして、屈折率分布Wを有するコア層13が形成される(図8参照)。
図7は、図6に示すY−Y線断面における位置とマスクを透過する活性放射線の透過率との関係、Y−Y線断面における位置と積算光量との関係、および、Y−Y線断面における位置と活性放射線の照射後の層910の屈折率との関係を示す図である。
上述した第1の軌跡931、第2の軌跡932および第3の軌跡933においては、マスク935の開口9351における図7(a)に示すような透過率分布Tに応じて、図7(b)に示すような積算光量の分布Lが生じる。この積算光量は、上述したように、各中心線R1、R2、R3近傍において最も大きく、各中心線R1、R2、R3から離れるほど連続的に小さくなる。
このような積算光量の分布Lに応じて、層910には、図7(c)に示すような屈折率分布Wが形成され、最終的にコア層13が形成される。
なお、屈折率分布Wの形状は、積算光量の分布Lを上下反転させた形状で近似することができる。この近似を利用すれば、目的とする形状の屈折率分布Wを形成可能な積算光量の分布Lの形状、ひいてはそれを実現するマスク935の開口9351における最適な透過率分布Tを容易に決定することができる。
また、開口9351における透過率分布Tは、中心線C2に対して線対称の関係を満足する分布であるのが好ましい。これにより、積算光量の分布Lの形状についても、各中心線R1、R2、R3に対して線対称の関係を満足する形状になり、ひいては、屈折率分布Wの形状についても、各中心線R1、R2、R3に対して線対称の関係を満足する形状になる。このような形状の屈折率分布Wを備える光導波路1は、コア部14の中心部において確実に信号光を閉じ込めることができ、伝送効率の高いものとなる。
活性放射線930は、切断する化学結合の結合エネルギー等に応じて適宜選択されるが、例えば、可視光、紫外光、赤外光、レーザー光の他、電子線やX線等を用いることもできる。
これらの中でも、活性放射線は、波長200〜450nmの範囲にピーク波長を有するもの(主に紫外線に分類される)であるのが好ましい。このような特性の活性放射線を用いることにより、本発明に用いられるポリマー915の多くで、目的とする化学結合の切断を、選択的にかつ効率よく行うことができる。
また、活性放射線930の積算光量は、0.01〜9J/cm2程度であるのが好ましく、0.05〜6J/cm2程度であるのがより好ましく、0.05〜3J/cm2程度であるのがさらに好ましい。
また、活性放射線930では、マスク935に到達する前において強度(照度)分布は均一であるのが好ましい。これにより、マスク935の開口9351における透過率分布Tのみで、積算光量の分布Lの形状を決定することができ、最終的に屈折率分布Wの形状を決定することができる。その結果、所望の形状の屈折率分布Wを有する光導波路1を容易に製造することができる。
さらに、マスク935の開口9351の平面視形状は、各中心線R1、R2、R3と平行な成分の長さが、その全体で均一である形状であるのが好ましい。この形状であれば、開口9351における透過率分布Tが積算光量の分布Lの形状に直接反映され易くなり、所望の形状の屈折率分布Wを有する光導波路1を容易に製造することができる。
なお、このようにして形成された屈折率分布Wは、活性放射線930の照射に伴って切断された化学結合の存在比率の分布に一定の相関関係を有している。したがって、コア層13においてこの化学構造の濃度分布を測定することにより、コア層13が有する屈折率分布Wの形状を間接的に特定することが可能である。
化学構造の濃度の測定は、例えば、FT−IR、TOF−SIMSの線分析、面分析等を用いて行うことができる。
また、屈折率分布Wの形状は、コア層13に対して屈折ニアフィールド法、微分干渉法等の測定法を適用することにより、直接特定することもできる。
活性放射線930の照射後、必要に応じて、コア層13に加熱処理を施す。これにより、形成された屈折率分布Wが固定され、コア層13の耐久性が向上する。
なお、活性放射線930の出射面が十分に大きく、かつ、マスク935に複数個の開口9351が形成されている場合には、第1の軌跡931、第2の軌跡932および第3の軌跡933に対する活性放射線930の照射を1回の走査で行うことができる。これにより、光導波路1をより効率よく製造することができる。
さらには、開口9351において中心線C2に平行な成分の長さが、形成すべき側面クラッド部15の長さより長い場合には、マスク935を走査させることなく活性放射線930を照射すればよい。この場合、層910およびマスク935に対して、活性放射線930の線源を走査してもよく、活性放射線930の出射面が十分に大きい場合には固定されていてもよい。
ここで、図5に示すマスク935は、開口9351が活性放射線930を透過し得る材料で構成されており、それ以外の部分(遮蔽部9350)は活性放射線930を遮蔽し得る材料で構成されている。
前述したように、開口9351では、活性放射線930の透過率が均一ではなく、部分的に異なるよう構成されている。このような透過率分布の偏りは、開口9351に設けられたいくつかの手段により実現される。
以下、これらの手段について説明する。
図11は、図5に示すマスクの平面図および断面図の一例である。
図11(a)に示すマスク935は、遮蔽部9350が活性放射線930を遮蔽し得る材料で構成されている一方、開口9351を覆うように設けられた透明基板9351aと、透明基板9351a上に設けられ、部分的に厚さの異なる遮蔽膜9351bと、を有している。
遮蔽膜9351bは、図11(b)に示すように、マスク935の中心線C2近傍においてその厚さが最も薄く、中心線C2から離れるにつれて遮蔽膜9351bの厚さが徐々に厚くなるよう構成されている。これにより、遮蔽膜9351bでは、その厚さの分布に応じた、活性放射線930の透過率分布Tが形成されることとなる。
透明基板9351aを構成する材料としては、例えば、石英ガラス、ホウケイ酸ガラスのような各種ガラス材料、水晶、サファイアのような各種結晶材料、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂のような各種樹脂材料等が挙げられる。
このような遮蔽膜9351bを構成する材料としては、例えば、アルミニウム、ケイ素、チタン、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、銅、モリブデン、銀、タングステン、金のような金属または半金属、またはこれらの化合物(例えば、酸化物、硫化物、炭化物等)、グラファイトのような炭素等が挙げられる。
これらの中でも、効率的な遮蔽性および優れた耐久性等の観点から、クロムが好ましく用いられる。
遮蔽膜9351bの成膜方法は、特に限定されないが、真空蒸着法、スパッタリング法のような各種物理成膜法、CVD法のような各種化学成膜法、電解めっき法、無電解めっき法のような各種めっき法等が挙げられる。
このうち、めっき法が好ましく用いられる。
遮蔽膜9351bの平均厚さは、構成材料によって適宜設定されるものの、好ましくは20〜1000nm程度、より好ましくは30〜300nm程度とされる。
図12は、図11に示すマスクの他の構成例である。
図12に示すマスク935は、透明基板9351a上に、平面視でドット状に設けられた多数の点状の遮蔽膜9351bを有しており、各遮蔽膜9351bの厚さが実質的に同じであること以外、図11に示すマスク935と同様である。
ところで、ドット状に設けられた遮蔽膜9351bは、その間隔が均一ではなく、部分的に異なるよう構成されている。遮蔽膜9351b同士の間隔は、より巨視的に見たとき、遮蔽膜9351bによる遮蔽率に反映されるため、結果的には活性放射線930の透過率分布Tに反映されることとなる。
図12に示すマスク935では、遮蔽膜9351b同士の間隔が、中心線C2近傍において広く、中心線C2から離れるにつれて徐々に狭くなるよう構成されている。これにより、遮蔽膜9351bでは、その間隔の分布に応じた、活性放射線930の透過率分布Tが形成されることとなる。
また、ドット状に設けられた遮蔽膜9351b同士の間隔(隣り合う遮蔽膜9351bの中心部間の距離)は、活性放射線930の波長より長ければよく、特に限定されないが、1〜30μm程度であるのが好ましく、2〜20μm程度であるのがより好ましい。これにより、ドット状に設けられた遮蔽膜9351bは、層910に形成されるパターンの形状に悪影響を及ぼし難くなり、寸法精度に優れた光導波路1を形成することができる。
なお、ドット状の遮蔽膜9351b同士の間隔が連続的に変化するよう遮蔽膜9351bを配置するためには、その配置を各種のアルゴリズムに基づいて決定することにより、前記間隔の連続性を高めることができる。
かかるアルゴリズムとしては、例えば、誤差分散法、組織的ディザ法等が好ましく用いられる。
図13は、図11に示すマスクの他の構成例である。
図13に示すマスク935は、ドット状に設けられた多数の点状の遮蔽膜9351bの代わりに、線状の遮蔽膜9351bを多数併設してなるストライプ状のものを有している以外、図11に示すマスク935と同様である。
ここで、線状の遮蔽膜9351bは、その間隔が均一ではなく、部分的に異なるよう構成されている。遮蔽膜9351b同士の間隔は、より巨視的に見たとき、遮蔽膜9351bによる遮蔽率に反映されるため、結果的には活性放射線930の透過率分布Tに反映されることとなる。
この点は、図12に示すドット状に設けられた遮蔽膜9351bと同様であり、また、線状の遮蔽膜9351b同士の間隔(隣り合う遮蔽膜9351bの中心部間の距離)は、活性放射線930の波長より長いことが好ましい。
[3]次に、コア層13の両面にクラッド層11、12を積層する。これにより、光導波路1が得られる。
これにはまず、支持基板952上に、クラッド層11(12)を形成する(図9参照)。
クラッド層11(12)の形成方法としては、クラッド材を含むワニス(クラッド層形成用組成物)を塗布し硬化(固化)させる方法、硬化性を有するモノマー組成物を塗布し硬化(固化)させる方法等、いかなる方法でもよい。
次に、コア層13を支持基板951から剥離し、剥離したコア層13を、クラッド層11が形成された支持基板952と、クラッド層12が形成された支持基板952とで挟持する(図10(a)参照)。
そして、図10(a)中の矢印で示すように、クラッド層12が形成された支持基板952の上面側から加圧し、クラッド層11、12とコア層13とを圧着する。
これにより、クラッド層11、12とコア層13とが接合、一体化される。
次いで、クラッド層11、12から、それぞれ支持基板952を剥離、除去する(図10(b)参照)。これにより、光導波路1が得られる。
その後、必要に応じて、光導波路1の下面に支持フィルムを積層し、上面にカバーフィルムを積層する。
また、コア層13は、支持基板951上ではなく、クラッド層11上に直接成膜するようにしてもよい。さらに、クラッド層12は、コア層13上に貼り合わせるのではなく、コア層13上に材料を塗布して形成するようにしてもよい。
また、本製造方法では、クラッド層11、コア層13およびクラッド層12をそれぞれ独立に成膜した後、貼り合わせるようにして光導波路1を形成しているが、各層の形成用組成物を用い、これらを多色成形法により一括して成膜しつつ積層するようにしてもよい。このようにすれば、クラッド層11を形成するためのクラッド層形成用組成物からなる第1層、コア層13を形成するためのコア層形成用組成物からなる第2層、および、クラッド層12を形成するためのクラッド層形成用組成物からなる第3層を積層してなる多色成形体が得られる。なお、各組成物を選択するにあたっては、各層の屈折率が、(第2層)>(第1層、第3層)の関係を満足するように行われる。また、多色成形法としては、例えば、多色押出成形法、多色射出成形法等が挙げられる。
ここで、上述したポリマー915は第2層のみに含有させ、残る第1層および第3層には活性放射線を照射しても屈折率の変化しないポリマーを含有させるようにするのが好ましい。これにより、第2層においてのみ活性放射線の照射によって屈折率に変化が生じ、第1層および第3層では活性放射線の照射によっても屈折率に変化が生じない。これにより、コア層13中にコア部14と側面クラッド部15とを作り込むことができ、かつ、クラッド層11、12の屈折率が変化するのを防止することができる。
また、多色成形する際に、第1層と第2層との層間、および、第2層と第3層との層間において、それぞれ組成物同士が一部混合するように成形するのが好ましい。これにより、層間において屈折率が連続的に変化し、最終的には光導波路1の厚さ方向においてもグレーテッドインデックス型の屈折率分布が形成される。すなわち、多色成形体を用いることにより、面方向のみならず、厚さ方向においてもGI型の屈折率分布を有する光導波路1が得られる。このような光導波路1では、伝送損失およびパルス信号の鈍りをさらに抑えることができる。
さらには、厚さ方向においてGI型の屈折率分布が形成されることにより、光導波路を複数層積層したときに、層内でのクロストークのみならず、層間でのクロストークをも抑制することができる。
(第2の製造方法)
次に、光導波路1の第2の製造方法(本発明の光導波路の製造方法の第2実施形態)について説明する。
以下、第2の製造方法について説明するが、前記第1の製造方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
第2の製造方法では、マスク935の開口9351における透過率分布Tが異なる以外は、第1の製造方法と同様である。なお、以下の説明では、活性放射線930の照射に伴いポリマー915の屈折率が低下する場合を例に説明する。
図14は、第2の製造方法において、マスク935の構成を示す図である。図14(a)は、マスク935の平面図であり、図14(b)は、開口9351の長辺の各位置に対する透過率の分布を示す図である。開口9351の長辺の中点を通り、長辺に垂直な中心線C2を引いたとき、開口9351の透過率は、中心線C2近傍から離れるにつれて徐々に大きくなるよう設定されている。
そして、マスク935は、開口9351の中心線C2が、形成すべきコア部14の延伸方向に沿うように走査される。これにより、開口9351を透過した活性放射線930も層910に対して走査されることとなり、活性放射線930の通過経路の中心線R1上あるいはその近傍において活性放射線930の積算光量が最も少なくなる。その結果、中心線R1から離れるほど屈折率が低下し、中心線R1を挟んでその両側にコア部14が形成される。
同様に、中心線R2近傍および中心線R3近傍にもコア部14が形成される。
一方、中心線R1と中心線R2との中間に位置する境界線B1近傍、および、中心線R2と中心線R3との中間に位置する境界線B2近傍では、側面クラッド部15が形成される。
以上のようにして層910には、前述した屈折率分布Wが形成される。そして、屈折率分布Wを有するコア層13が形成される(図8参照)。
<電子機器>
上述したような本発明の光導波路は、光伝送効率および長期信頼性に優れたものである。このため、本発明の光導波路を備えることにより、2点間で高品質の光通信を行い得る信頼性の高い電子機器(本発明の電子機器)が得られる。
本発明の光導波路を備える電子機器としては、例えば、携帯電話、ゲーム機、ルーター装置、WDM装置、パソコン、テレビ、ホーム・サーバー等の電子機器類が挙げられる。これらの電子機器では、いずれも、例えばLSI等の演算装置とRAM等の記憶装置との間で、大容量のデータを高速に伝送する必要がある。したがって、このような電子機器が本発明の光導波路を備えることにより、電気配線に特有なノイズ、信号劣化等の不具合が解消され、その性能の飛躍的な向上が期待できる。
さらに、光導波路部分では、電気配線に比べて発熱量が大幅に削減される。このため、冷却に要する電力を削減することができ、電子機器全体の消費電力を削減することができる。
また、本発明の光導波路は、伝送損失およびパルス信号の鈍りが小さく、多チャンネル化および高密度化しても混信が生じ難い。このため、高密度かつ小面積でも信頼性の高い光導波路が得られ、この光導波路を搭載することで、電子機器の信頼性向上および小型化が図られる。
以上、本発明の光導波路の製造方法、光導波路および電子機器について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば光導波路には、任意の構成物が付加されていてもよい。
次に、本発明の実施例について説明する。
1.光導波路の製造
(実施例1)
(1)離脱性基を有するノルボルネン系樹脂の合成
水分および酸素濃度がいずれも1ppm以下に制御され、乾燥窒素で満たされたグローブボックス中において、ヘキシルノルボルネン(HxNB)7.2g(40.1mmol)、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン12.9g(40.1mmol)を500mLバイアル瓶に計量し、脱水トルエン60gと酢酸エチル11gを加え、シリコン製のシーラーを被せて上部を密栓した。
次に、100mLバイアルビン中に下記化学式(A)で表わされるNi触媒1.56g(3.2mmol)と脱水トルエン10mLを計量し、スターラーチップを入れて密栓し、触媒を十分に撹拌して完全に溶解させた。
この下記化学式(A)で表わされるNi触媒溶液1mLをシリンジで正確に計量し、上記2種のノルボルネンを溶解させたバイアル瓶中に定量的に注入し室温で1時間撹拌したところ、著しい粘度上昇が確認された。この時点で栓を抜き、テトラヒドロフラン(THF)60gを加えて撹拌を行い、反応溶液を得た。
100mLビーカーに無水酢酸9.5g、過酸化水素水18g(濃度30%)、イオン交換水30gを加えて撹拌し、その場で過酢酸水溶液を調製した。次にこの水溶液全量を上記反応溶液に加えて12時間撹拌してNiの還元処理を行った。
次に、処理の完了した反応溶液を分液ロートに移し替え、下部の水層を除去した後、イソプロピルアルコールの30%水溶液を100mL加えて激しく撹拌を行った。静置して完全に二層分離が行われた後で水層を除去した。この水洗プロセスを合計で3回繰り返した後、油層を大過剰のアセトン中に滴下して生成したポリマーを再沈殿させ、ろ過によりろ液と分別した後、60℃に設定した真空乾燥機中で12時間加熱乾燥を行うことにより、ポリマー#1を得た。ポリマー#1の分子量分布は、GPC測定により、Mw=10万、Mn=4万であった。また、ポリマー#1中の各構造単位のモル比は、NMRによる同定により、ヘキシルノルボルネン構造単位が50mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が50mol%であった。
(2)コア層形成用組成物の製造
精製した上記ポリマー#1 10gを100mLのガラス容器に秤量し、これにメシチレン40g、酸化防止剤Irganox1076(チバガイギー社製)0.01gを加え均一に溶解させた後、0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄なコア層形成用組成物を得た。
(3)光導波路の製造
(下側クラッド層の製造)
シリコンウエハー上に感光性ノルボルネン樹脂組成物(プロメラス社製 Avatrel2000Pワニス)をドクターブレードにより均一に塗布した後、45℃の乾燥機に15分間投入した。溶剤を完全に除去した後、塗布された全面に紫外線を100mJ照射し、乾燥機中120℃で1時間加熱して、塗膜を硬化させて、下側クラッド層を形成した。形成された下側クラッド層は、厚みが20μmであり、無色透明であった。
(コア層の製造)
上記下側クラッド層上にコア層形成用組成物をドクターブレードによって均一に塗布して層を形成した後、45℃の乾燥機に15分間投入した。溶剤を完全に除去した後、図5(図11)に示すマスクを介して紫外線(波長405nm)を、最大積算光量が1000mJ/cm2となるように直線状に、かつ経路をずらしながら複数回往復するように走査させた。その後、層を、乾燥機中150℃で1.5時間の加熱を行った。加熱後、非常に鮮明な導波路パターンが現れているのが確認された。また、コア部および側面クラッド部の形成が確認された。なお、形成した光導波路は、コア部が8本並列に形成されたものである。また、マスクの開口の平面視形状は、長径が120μm、短径が50μmであった。そして、走査経路をずらすときには、2つの経路の間隔を10μmとした。なお、得られた光導波路では、コア部の幅が50μm、側面クラッド部の幅が80μm、コア層の厚さが50μmであった。
(上側クラッド層の製造)
ポリエーテルスルホン(PES)フィルム上に、乾燥厚み20μmになるようにAvatrel2000Pのドライフィルムを成膜した後、このドライフィルムを上記コア層に貼り合わせ、140℃に設定された真空ラミネーターに投入して熱圧着を行った。その後、紫外線を100mJ全面照射し乾燥機中120℃で1時間加熱して、Avatrel2000Pを硬化させた。これにより、上側クラッド層を形成するとともに光導波路を得た。
なお、得られた光導波路から、長さ10cm分を切り出した。
(実施例2)
コア層の製造に際して図12に示すマスクを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
(実施例3)
コア層の製造に際して図13に示すマスクを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
(実施例4)
コア層の製造に際して図14に示すマスクを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
(実施例5〜8)
ポリマー#1に代えて、下式に示すようなポリシラン化合物を用いるようにした以外は、それぞれ実施例1〜4と同様にして光導波路を得た。
(比較例1)
マスクとして、透過率分布が均一なものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
(比較例2)
マスクとして、透過率分布が均一なものを用いるようにした以外は、実施例5と同様にして光導波路を得た。
2.評価
2.1 光導波路の屈折率分布
各実施例で得られた光導波路のコア層の横断面について、その厚さ方向の中心線に沿って屈折率分布を屈折ニアフィールド法により測定した。なお、得られた屈折率分布は、コア部ごとに同様の屈折率分布パターンが繰り返されているので、得られた屈折率分布から一部を切り出し、これを屈折率分布Wとした。取得された屈折率分布Wの形状は、図2に示すような、2つの極大値が離間して位置する形状であり、屈折率の変化は連続的であった。すなわち、各実施例で得られた光導波路の屈折率分布Wは、いずれもGI型の分布であった。
そして、得られた屈折率分布Wから、2つの極大値、および側面クラッド部の平均屈折率を求めた。その結果、屈折率分布Wの極大値と側面クラッド部の平均屈折率との差は、1〜2%の範囲内であった。
一方、各比較例で得られた光導波路のコア層の横断面について、得られた屈折率分布は、いずれもSI型の分布であった。
2.2 光導波路の伝送損失
850nmVCSEL(面発光レーザー)より発せられた光を50μmφの光ファイバーを経由して得られた光導波路に導入し、200μmφの光ファイバーで受光を行って光の強度を測定した。なお、測定にはカットバック法を採用した。光導波路の長手方向を横軸にとり、挿入損失を縦軸にとって測定値をプロットしたところ、測定値は直線上に並んだ。そこで、その直線の傾きから伝送損失を算出した。
その結果、実施例1〜4で得られた光導波路では、いずれも比較例1で得られた光導波路に比べ、伝送損失が抑えられていることが認められた。また、同様に、実施例5〜8で得られた光導波路でも、それぞれ比較例2で得られた光導波路に比べて、伝送損失が抑えられていることが認められた。
2.3 パルス信号の波形の保持性
得られた光導波路に対して、レーザーパルス光源からパルス幅1nsのパルス信号を入射し、出射光のパルス幅を測定した。そして、測定した出射光のパルス幅について、入射光のパルス幅に対する鈍りの程度を評価した。
その結果、実施例1〜4で得られた光導波路では、いずれも比較例1で得られた光導波路に比べ、パルス信号の鈍りが抑えられていることが認められた。また、同様に、実施例5〜8で得られた光導波路でも、それぞれ比較例2で得られた光導波路に比べて、パルス信号の鈍りが抑えられていることが認められた。
2.4 クロストークの評価
8本のコア部のうちの1つに直径50μmの光ファイバーから信号光を入射するとともに、各コア部の出射側に直径62.5μmの光ファイバーを配置し、各コア部から出射する信号光の強度を測定した。そして、信号光を入射したコア部における出射光の強度と、このコア部以外のコア部における出射光の強度とを比較することにより、クロストークの評価を行った。
その結果、実施例1〜4で得られた光導波路では、いずれも比較例1で得られた光導波路に比べ、クロストークが抑えられていることが認められた。また、同様に、実施例5〜8で得られた光導波路でも、それぞれ比較例2で得られた光導波路に比べて、クロストークが抑えられていることが認められた。
また、マスクの開口の透過率分布を変えることにより、GI型の分布の極大値(第1の極大値)同士の間に、これらの第1の極大値より相対的に小さい第2の極大値を有する屈折率分布Wを形成することができた。
そして、第1の極大値と第2の極大値とを含む屈折率分布Wを有する以外は実施例1、5と同様にして得られた光導波路についても、クロストークを評価した。その結果、第1の極大値と第2の極大値とを含む屈折率分布Wを有する光導波路は、各実施例1、5で得られた光導波路に比べて、クロストークがさらに小さく抑えられていることが認められた。