JP2012224900A - 加工性および低温靭性に優れた中空部材用超高強度電縫鋼管およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量%で、C:0.31〜0.50%、Si:0.01〜1.0%、Mn:1.0〜4.0%、Al:0.1%以下、N:0.0010〜0.0100%、B:0.0003〜0.0050%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の電縫鋼管とし、Ac3変態点以上に加熱・均熱したのち、圧延終了温度:Ar3変態点〜900℃、900℃以下の温度域での累積縮径率:20〜75%である縮径圧延を施す。これにより、TSが1500MPa以上、TS×Elが27000MPa%以上で、さらに母材部と電縫溶接部の硬さの差ΔHVが50ポイント以下、−40℃でのシャルピー衝撃値vE−40が50J/cm2以上である超高強度電縫鋼管。
【選択図】なし
Description
本発明は、かかる従来技術の問題を有利に解決し、焼入れ処理等の熱処理を行なうことなく非調質で、引張強さTS:1500MPa以上で、かつ強度−伸びバランスTS×Elが27000MPa%以上で、かつ−40℃でのシャルピー衝撃試験の衝撃値vE−40が50J/cm2以上となる、加工性および靭性に優れた高強度電縫鋼管およびその製造方法を提供することを目的とする。なお、自動車部品であるドライブシャフトやスタビライザーなどでは引張強さ:1500MPa以上の強度の材料が、また、ドライブシャフトではスウェージ加工が、スタビライザーでは曲げ加工が適用されるため、延性に優れた材料が要望されており、そのため、概ね、強度−伸びバランスTS×Elで27000MPa%以上となる材料(超高強度電縫鋼管)を目標とする。さらに、材質の均一性という観点から、電縫溶接部と母材部との特性差が少ない、具体的には母材部と電縫溶接部との硬度差がビッカース硬さで50ポイント以下となる、電縫鋼管を目的とする。さらに、高靭性という観点から、vE−40が50J/cm2以上となる靭性に優れた電縫鋼管を目的とする。
質量%で、C:0.31%、Si:0.2%、Mn:2.5%、P:0.01%、S:0.0010%、Al:0.03%、N:0.0025%、B:0.0020%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の電縫鋼管(外径89.1mmφ×肉厚7mm)を素材鋼管とした。なお、この素材鋼管のAc1変態点は702℃、Ac3変態点は750℃、Ar3変態点は725℃である。
得られた製品管について、組織観察、引張試験および衝撃試験を実施した。試験方法はつぎのとおりとした。
(1)組織観察
得られた製品管から、組織観察用試験片を採取し、円周方向断面を研磨し、ナイタール腐食して、走査型電子顕微鏡(倍率:2000倍)を用いて、組織を観察し、組織の種類を判別した。
(2)引張試験
得られた製品管から、引張方向が管長手方向となるように、JIS 1号試験片(管状試験片:GL50mm)を採取し、JIS Z 2241の規定に準拠して引張試験を行い、引張特性(引張強さTS、伸びEl)を求めた。
(3)衝撃試験
得られた製品管の肉厚中央位置から、管長手方向が試験片の長さ方向に一致するように、JIS Z 2242に準拠して、Vノッチシャルピー衝撃試験片(3mm厚)を採取した。試験温度:−40℃で試験し、衝撃値vE−40(J/cm2)を求めた。試験は各3本実施し、その平均をその製品管の衝撃値とした。
図1から、引張強さTS:1500MPa以上の高強度を確保することができるのは、縮径圧延終了温度が650℃以上であり、伸びElは15%以上となることを知見した。また、図2から、縮径圧延終了温度が650℃以上であれば、強度−伸びバランスTS×Elが27000MPa%以上を確保できることを見出した。図3から、縮径圧延終了温度がAr3変態点以上であればvE−40:50J/cm2以上を確保できることを見出した。
(1)質量%で、C:0.31〜0.50%、Si:0.01〜1.0%、Mn:1.0〜4.0%、Al:0.1%以下、N:0.0010〜0.0100%、B:0.0003〜0.0050%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、ベイナイトを主相とし、第二相としてマルテンサイトおよび/またはフェライトを合計で、面積率で0〜20%含む組織とを有し、引張強さTSが1500MPa以上で、かつ強度−伸びバランスTS×Elが27000MPa%以上、−40℃でのシャルピー衝撃試験の衝撃値がvE−40:50J/cm2であり、さらに母材部と電縫溶接部の硬さの差ΔHVが50ポイント以下であることを特徴とする加工性および低温靭性に優れた中空部材用超高強度電縫鋼管。
(3)(1)または(2)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:1%以下、Cr:1%以下、Mo:2.0%以下、Ni:2.0%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする中空部材用超高強度電縫鋼管。
(5)電縫鋼管を素材鋼管とし、該素材鋼管に縮径圧延を施して製品鋼管とする電縫鋼管の製造方法であって、前記素材鋼管を、質量%で、C:0.31〜0.50%、Si:0.01〜1.0%、Mn:1.0〜4.0%、Al:0.1%以下、N:0.0010〜0.0100%、B:0.0003〜0.0050%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の電縫鋼管とし、前記縮径圧延を、Ac3変態点以上に加熱・均熱したのち、圧延終了温度:Ar3変態点以上900℃以下とし、900℃以下の温度域での累積縮径率:20〜75%である縮径圧延とすることを特徴とする加工性および低温靭性に優れた中空部材用超高強度電縫鋼管の製造方法。
(7)(5)または(6)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:1%以下、Cr:1%以下、Mo:2.0%以下、Ni:2.0%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする中空部材用超高強度電縫鋼管の製造方法。
また、本発明によれば、母材部と電縫溶接部の硬さの差ΔHVが50HV以下と小さく均質な電縫鋼管が得られ、安定してドライブシャフト、スタビライザー等の自動車部品用中空部材に適用することが可能となり、自動車車体の軽量化に寄与し、地球環境の保全に貢献できるという効果もある。また、本発明電縫鋼管は、低温靭性に優れているため、寒冷地仕様の自動車用部材として安心して適用できるという効果もある。また、自動車用部材以外にも、機械構造用部材、土木建築構造物用部材に適用できるという効果もある。
C:0.31〜0.50%
Cは、鋼の強度を増加させる作用を有し、所望の強度を確保するために重要な元素である。このような効果を得るためには、0.31%以上の含有を必要とする。一方、0.50%を超える含有は、電縫溶接性や加工性を顕著に低下させる。このため、Cは0.31〜0.50%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.31〜0.40%である。
Siは、脱酸剤として作用するとともに、固溶して強度増加に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.01%以上の含有を必要とする。一方、1.0%を超える含有は、加工性、焼入れ性を低下させる。このため、Siは0.01〜1.0%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.01〜0.5%である。
Mnは、焼入れ性を向上させるとともに、固溶して強度増加に寄与する元素であリ、所望の高強度を確保するためには、1.0%以上の含有を必要とする。一方、4.0%を超える含有は、加工性を低下するとともに、電縫溶接部の品質を低下させる。このため、Mnは1.0〜4.0%の範囲に限定した。なお、好ましくは2.0〜3.0%である。
Alは、脱酸剤として有効に作用するとともに、焼入れ加熱時のオーステナイト粒の成長を抑制し、焼入れ後の強度の確保に有効な元素である。このような効果を得るためには0.001%以上含有することが望ましい。一方、0.1%を超えて含有すると、アルミナ系介在物が増加し、表面性状を低下させるとともに、疲労強度の低下を招く。このため、Alは0.1%以下に限定した。なお、好ましくは0.001〜0.06%である。
Nは、Alと結合してAlNを形成し、加熱時に、結晶粒の成長を抑制し、結晶粒の微細化に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.0010%以上の含有を必要とする。一方、0.0100%を超えて過剰に含有すると、Bと結合してBNを形成するため、固溶B量が減少し、Bが有する焼入れ性向上効果が低減する。このため、Nは0.0010〜0.0100%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.0010〜0.0080%である。
Bは、粒界に偏析して少量の含有で鋼の焼入れ性を向上させる元素である。このような効果を得るためには、0.0003%以上の含有を必要とする。一方、0.0050%を超えて含有しても、効果が飽和し含有量に見合う効果を期待できないため、経済的に不利となるうえ、粒界に多量に偏析して粒界破壊を促進し、疲労強度を低下させる。このため、Bは0.0003〜0.0050%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.0010〜0.0030%である。
Tiは、鋼中のNと結合し、窒化物(TiN)を形成してNを固定するとともに、熱処理時の結晶粒の粗大化を抑制する作用を有する元素であり、必要に応じて含有できる。このような効果を得るためには、0.01%以上含有することが望ましいが、0.1%を超えて含有すると、加工性、靭性が低下する。このため、含有する場合には、Tiは0.1%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.01〜0.05%である。
Cu、Cr、Mo、Niはいずれも、焼入れ性向上を介して鋼の強度増加に寄与し、疲労強度を高める作用を有する元素であり、必要に応じて1種または2種以上を選択して含有できる。このような効果を得るためには、Cu:0.01%以上、Cr:0.01%以上、Mo:0.01%以上、Ni:0.01%以上をそれぞれ含有することが望ましいが、Cu:1.0%、Cr:1.0%、Mo:2.0%、Ni:2.0%をそれぞれ超える含有は、加工性を著しく低下させる。このため、含有する場合には、Cu:1.0%以下、Cr:1.0%以下、Mo:2.0%以下、Ni:2.0%以下にそれぞれ限定することが好ましい。なお、より好ましくは、Cu:0.05〜0.5%、Cr:0.05〜0.5%、Mo:0.05〜0.5%、Ni:0.05〜0.5%である。
W、V、Nbは、いずれも、炭化物を形成し、鋼の強度を増加させる元素であり、必要に応じて選択して1種または2種以上を含有できる。このような効果を得るためには、W:0.01%以上、V:0.01%以上、Nb:0.01%以上をそれぞれ含有することが望ましいが、W:2.0%、V:1.0%、Nb:0.1%をそれぞれ超えて含有しても、効果が飽和するうえ、加工性が著しく低下する。このため、含有する場合には、W:2.0%以下、V:1.0%以下、Nb:0.1%以下にそれぞれ限定することが好ましい。なお、より好ましくは、W:0.05〜0.5%、V:0.05〜0.5%、Nb:0.001〜0.05%である。
つぎに、本発明超高強度電縫鋼管の組織限定の理由について説明する。
本発明超高強度電縫鋼管は、ベイナイトを主相とし、第二相としてマルテンサイトおよび/またはフェライトを合計で、面積率で0〜20%含む組織を有する。
主相以外の第二相は、合計で面積率で0〜20%とする。第二相の合計で20%を超えて多くなると、第二相がフェライトの場合には、強度が低下し、所望の高強度を確保できなくなる。一方、第二相がマルテンサイトの場合には延性が低下するとともに、低温靭性が低下する。このため、第二相は、合計で20%以下に限定した。第二相としては、マルテンサイトおよび/またはフェライトとする。
まず、素材鋼管として、上記した組成を有する電縫鋼管を用意し、素材鋼管に縮径圧延を施して製品鋼管とする。
素材鋼管として使用する電縫鋼管は、通常、鋼帯を、連続的にロール成形し、略円筒状のオープン管とし、該オープン管の端部同士を電縫溶接して製造される。使用する鋼帯は、上記した組成を有する熱延鋼帯とすることが、経済性の点から好ましいが、冷延鋼帯でもなんら問題はない。
縮径圧延は、圧延終了温度:900℃〜Ar3変態点とし、900℃以下の温度域での累積縮径率:20〜75%とする圧延とする。
鋼管表面温度で、圧延終了温度が、900℃を超えて高温では、表面性状が低下する。一方、Ar3変態点未満では、ベイナイト分率が低下し、所望の高強度、高靭性が得られない。このため、縮径圧延の圧延終了温度を900℃〜Ar3変態点の範囲に限定することが好ましい。
縮径圧延を終了したのち、管は冷却される。冷却条件はとくに限定する必要はないが、低温靭性向上という観点からは平均冷却速度で0.5℃/s以上10℃/s以下で400℃以下まで冷却することが好ましい。冷却速度(肉厚中心で)が0.5℃/s未満では、フェライト分率が増加し、所望の強度が確保できなくなる。一方、10℃/sを超えるとマルテンサイト分率が増加し、Elの低下が著しくなるため、所望のTS×El値が得られなくなる。
以下、実施例に基づいて、さらに本発明について説明する。
これら素材鋼管に、表2に示す条件で、縮径圧延を施し、製品鋼管(外径22.2〜69.2mm×肉厚7.0mm)とした。なお、一部の鋼管では、縮径圧延なしの場合を試験し、比較例とした。
(1)組織観察
得られた製品鋼管から組織観察用試験片を採取し、円周方向断面を研磨し、ナイタール腐食して、走査型電子顕微鏡(倍率:2000倍)を用いて、組織を観察し、組織の種類を判別した。
(2)引張試験
得られた製品鋼管から、引張方向が管長手方向となるように、JIS 11号試験片(管状試験片:GL50mm)を採取し、JIS Z 2241の規定に準拠して引張試験を行い、引張特性(引張強さTS、伸びEl)を求めた。
(3)硬さ試験
得られた製品鋼管から、電縫溶接部を含む硬さ測定用試験片を採取し、硬さ分布を測定した。硬さ測定は、ビッカース硬度計(試験力:4.9N)を用いて、管円周方向断面について、母材部から電縫溶接部を含み管円周方向に沿って、0.1mmピッチで測定した。測定位置は、中心偏析を避けた肉厚中央部に近い部分とし、電縫溶接部を中心に片方5mmの範囲とした。得られた結果から、母材部の平均硬さHVと、電縫溶接部の平均硬さHVを求め、電縫溶接部の平均硬さと母材部の平均硬さとの差ΔHVを求めた。
(4)衝撃試験
得られた製品鋼管の肉厚中央から、JIS Z 2242に準拠して、試片長手方向が管軸方向となるように3mm厚のシャルピー衝撃試験片(Vノッチ)を母材部、電縫溶接部から採取し、シャルピー衝撃試験を実施した。なお、電縫溶接部では、Vノッチ底が電縫部に位置するようにノッチ加工を行った。試験温度は−40℃とし、各鋼管各位置3本ずつ試験し、その算術平均値をその鋼管各位置の衝撃値とした。
得られた結果を表3に示す。
Claims (8)
- 質量%で、
C:0.31〜0.50%、 Si:0.01〜1.0%、
Mn:1.0〜4.0%、 Al:0.1%以下、
N:0.0010〜0.0100%、 B:0.0003〜0.0050%、
を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、ベイナイトを主相とし、第二相としてマルテンサイトおよび/またはフェライトを合計で、面積率で0〜20%含む組織とを有し、引張強さTSが1500MPa以上で、かつ強度−伸びバランスTS×Elが27000MPa%以上であり、さらに母材部と電縫溶接部の硬さの差ΔHVが50HV以下であり、−40℃でのシャルピー衝撃値がvE−40が50J/cm2以上であることを特徴とする加工性および低温靭性に優れた中空部材用超高強度電縫鋼管。 - 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ti:0.1%以下を含有することを特徴とする請求項1に記載の中空部材用超高強度電縫鋼管。
- 前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:1%以下、Cr:1%以下、Mo:2.0%以下、Ni:2.0%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の中空部材用超高強度電縫鋼管。
- W:2.0%以下、V:1.0%以下、Nb:0.1%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の中空部材用超高強度電縫鋼管。
- 電縫鋼管を素材鋼管とし、該素材鋼管に縮径圧延を施して製品鋼管とする電縫鋼管の製造方法であって、前記素材鋼管を、質量%で、
C:0.31〜0.50%、 Si:0.01〜1.0%、
Mn:1.0〜4.0%、 Al:0.1%以下、
N:0.0010〜0.0100%、 B:0.0003〜0.0050%、
を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の電縫鋼管とし、
前記縮径圧延を、Ac3変態点以上に加熱・均熱したのち、圧延終了温度:Ar3変態点以上900℃以下、900℃以下の温度域での累積縮径率:20〜75%である縮径圧延とする
ことを特徴とする加工性および低温靭性に優れた中空部材用超高強度電縫鋼管の製造方法。 - 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ti:0.1%以下を含有することを特徴とする請求項5に記載の中空部材用超高強度電縫鋼管の製造方法。
- 前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:1%以下、Cr:1%以下、Mo:2.0%以下、Ni:2.0%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項5または6に記載の中空部材用超高強度電縫鋼管の製造方法。
- 前記組成に加えてさらに、質量%で、W:2.0%以下、V:1.0%以下、Nb:0.1%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項5ないし7のいずれかに記載の中空部材用超高強度電縫鋼管の製造方法。
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