JP2012224568A - 保湿用組成物、それを含む皮膚外用剤および飲食品、およびその保湿用組成物の生産方法 - Google Patents

保湿用組成物、それを含む皮膚外用剤および飲食品、およびその保湿用組成物の生産方法 Download PDF

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Abstract

【課題】優れた保湿効果を有する保湿組成物を提供する。
【解決手段】冷凍又は冷蔵したハマミズナ科の植物体から抽出した抽出物を含有する、保湿用組成物。
【選択図】図1

Description

本発明は、保湿用組成物、それを含む皮膚外用剤および飲食品、およびその保湿用組成物の生産方法に関する。
加齢に伴う皮膚の老化現象としては、保湿力の低下による皮膚の乾燥、弾力性の低下、しわ、たるみなどが挙げられる。そのため、皮膚の乾燥等を防ぐための保湿剤の必要性が増している。このような従来公知の保湿剤としては、バラフの抽出物を配合することによって得られる肌荒れ改善作用に優れた皮膚外用剤(特許文献1)が存在する。
特開2009−29734号公報
しかしながら、上記の文献では、実験例1において保湿作用について検討しているが、バラフの熱水抽出物およびバラフ50%エタノール抽出物の保湿作用を水(ネガティブコントロール)と比較しているだけであり、従来公知の保湿成分であるセラミド、1,3ブチレングリコールなど(ポジティブコントロール)と比較した場合にどの程度の保湿効果があるかは明らかではなかった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、優れた保湿効果を有する保湿組成物を提供することを目的とする。
本発明によれば、冷凍又は冷蔵したハマミズナ科の植物体から抽出した抽出物を含有する、保湿用組成物が提供される。
この組成によれば、後述する実施例で示すように、優れた保湿効果を有する、冷凍又は冷蔵したハマミズナ科の植物体から抽出した抽出物を含有するため、優れた保湿効果を有する保湿組成物が得られる。
また、本発明によれば、上記の保湿用組成物を含有する、皮膚外用剤が提供される。
この組成によれば、後述する実施例で示すように、優れた保湿効果を有する、冷凍又は冷蔵したハマミズナ科の植物体から抽出した抽出物を含有するため、優れた保湿効果を有する皮膚外用剤が得られる。
また、本発明によれば、上記の保湿用組成物を含有する、飲食品が提供される。
この組成によれば、後述する実施例で示すように、優れた保湿効果を有する、冷凍又は冷蔵したハマミズナ科の植物体から抽出した抽出物を含有するため、優れた保湿効果を有する飲食品が得られる。
また、本発明によれば、ハマミズナ科の植物体を冷凍又は冷蔵する工程と、上記の冷凍又は冷蔵したハマミズナ科の植物体から抽出物を抽出する工程と、上記の抽出物を含有する保湿用組成物を調製する工程と、を含む、保湿用組成物の生産方法が提供される。
この方法によれば、ハマミズナ科の植物体を冷凍又は冷蔵した後に、冷凍又は冷蔵したハマミズナ科の植物体から抽出物を抽出して保湿用組成物に含有させるため、後述する実施例に示すように常温のまま保持したハマミズナ科の植物体から抽出物を抽出する場合に比べて、優れた保湿効果を有する保湿用組成物が得られる。
本発明によれば、冷凍又は冷蔵したハマミズナ科の植物体から抽出した抽出物を含有するため、優れた保湿効果を有する保湿組成物が得られる。
アイスプラント(バラフ)冷蔵後抽出物、アイスプラント(バラフ)冷凍後抽出物、アイスプラント(バラフ)室温抽出物および従来公知の保湿成分の30分後における保湿能の精製水比を示すためのグラフである。 アイスプラント(バラフ)冷蔵後抽出物、アイスプラント(バラフ)冷凍後抽出物およびアイスプラント(バラフ)室温抽出物の保湿能の精製水比の推移を示したグラフである。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<保湿組成物>
本実施形態の保湿組成物は、冷凍又は冷蔵したハマミズナ科の植物体から抽出した抽出物を含有する。この組成によれば、後述する実施例で示すように、従来公知の保湿成分であるセラミド、1,3ブチレングリコールなど(ポジティブコントロール)と比較して優れた保湿効果を有する、冷凍又は冷蔵したハマミズナ科の植物体から抽出した抽出物を含有するため、優れた保湿効果を有する保湿組成物が得られる。
ここで、ハマミズナ科(Aizoaceae)とは、双子葉植物の科で、約126属1100種を含む。なお、ハマミズナ科は、呼び名に混乱があり、ツルナ科と呼ばれることも多いが、ツルナ属(Tetragonia)とTribulocarpus属を狭義のツルナ科(Tetragoniaceae)として分ける場合には、他の属の植物にはハマミズナ科の名が用いられる(ただし、現在は、ツルナもハマミズナ科に含めるのが普通である)。ハマミズナ科は、別名としてマツバギク科、メセン科などの通称も使われる。学名もTetragoniaceae、Ficoideaeなどの旧称が使われることがある。また、かつてはザクロソウ科(Molluginaceae)と一緒にしていたため、古い図鑑には「ザクロソウ科 Aizoaceae」などの表記もみられる。本明細書では、これらの用語の混乱を避けるために、ハマミズナ科(Aizoaceae)とは、ツルナ科、マツバギク科、メセン科を含み、かつてはザクロソウ科に分類されていた属・種を含む概念であるものとする。
また、メセンブリアンテマ属(Mesembryanthemum)とは、ハマミズナ科に含まれる多肉植物の属であり、約50種を含む。このメセンブリアンテマ属には、例えば、Mesembryanthemum aitonis、Mesembryanthemum barklyi、Mesembryanthemum cryptanthum、Mesembryanthemum crystallinum、Mesembryanthemum excavatum、Mesembryanthemum fastigiatum、Mesembryanthemum gariusanum、Mesembryanthemum guerichianum、Mesembryanthemum hypertrophicum、Mesembryanthemum inachabense、Mesembryanthemum lomgistylum、Mesembryanthemum nodiflorum、Mesembryanthemum pellitum、Mesembryanthemum stenandrum、Mesembryanthemum subtruncatum、Mesembryanthemum teretifolium、Mesembryanthemum teretiusculum、Mesembryanthemum ventricosum、Mesembryanthemum violenseなどの種が含まれる。
また、アイスプラント(学名:Mesembryanthemum crystallinum)は、ハマミズナ科メセンブリアンテマ属に含まれる植物の種名である。表皮に塩を隔離するための細胞があるため葉の表面が凍ったように見えることが、名前の由来となっている。アイスプラントは、南アフリカ原産、ヨーロッパ、西アジア等に自生の種である。アイスプラントは、乾燥に耐えるとともに、耐塩性が高い塩生植物の一つであり、海水と同程度の塩化ナトリウム水溶液中でも水耕栽培が可能である。さらに、アイスプラントは、生活環が半年程度と比較的短く、栽培も容易なため、植物の耐塩性研究におけるモデル生物と考えられ、学術的な注目も集まっている。しかしながら、アイスプラントは、水耕栽培等の養液栽培ではなく土耕栽培を行った場合はエグ味成分が蓄積しやすく、また地中にカドミウムなどの有害な重金属が含まれている場合、一般作物以上に吸収、蓄積する場合がある。
また、アイスプラントは、非常に特徴的なことに、乾燥や塩ストレスを与えないと、一般的な光合成経路であるC3光合成を行い、乾燥/塩ストレスを与えるとCAM型光合成へ移行することができる。また、表皮には塩嚢細胞(ブラッダー細胞、英語:BladderCell)と呼ばれる体内に侵入した塩類を隔離するための細胞が発達する。この塩嚢細胞の大きさは2ミリ前後に達し、透明でキラキラと輝くため、種名のクリスタリナムの由来となっている。
アイスプラントは、日本でも佐賀大学農学部が栽培化し、塩味のする新野菜として紹介されたことをきっかけに、近年、全国各地でも栽培されはじめている。国立ファームはソルトリーフ、佐賀大学発ベンチャーの農研堂はバラフとクリスタルリーフ、アグリ社はプッチーナ、滋賀県長浜市の日本アドバンストアグリはツブリナという商標を用いている。また、静岡県ではソルティーナやシオーナの名で販売されている。本明細書では、これらの用語の混乱を避けるために、アイスプラント(学名:Mesembryanthemum crystallinum)には、バラフ、クリスタルリーフ、プッチーナ、ツブリナ、ソルティーナ、シオーナなどが含まれるものとする。
ここで、「バラフ」(登録商標)とは、佐賀大学農学部で研究開発されている、南アフリカ原産の植物「アイスプラント」を野菜化した佐賀大学ブランド商品である。葉や茎の表面に宝石のようにキラキラと光る水滴のような細胞がついているのが、大きな特徴である。その外観から、アフリカのスワヒリ語で「水晶」や「氷」を意味する「バラフ」と名付けられている。バラフは、佐賀大学発ベンチャー企業(株)農研堂の契約農家で栽培を行っており、佐賀大学農学部で開発された技術によって品質安定を図り、安全性・安心に配慮して栽培されている。
バラフの栄養成分について
バラフは、レタスと比較すると、ミネラル分やカロテンが多いのが特徴である。特に、体内の塩分を調節する働きがあるカリウムを多く含む。また、バラフは、疲労回復効果の働きが知られているリンゴ酸やクエン酸を含むことも特徴である。また最近では、バラフは、体内の活性酸素を抑える抗酸化作用があるβカロテンが多いことから、老化防止や疲労回復、生活習慣病予防などに効果があるといわれ、細胞内の脂肪を燃焼させる効果のあるパントテン酸が含まれることもわかってきている。
バラフの成分分析結果について
項目 バラフ>レタス結玉葉 生※
エネルギー(kcal) 15>12
ナトリウム(mg) 360>2
カリウム(mg) 480>200
カルシウム(mg) 30>19
マグネシウム(mg) 18>8
リン(mg) 45>22
カロテン注)(μg) 910>240
レチノール当量(μg) 150>40
ビタミンK(μg) 77>29
パントテン酸(mg) 0.63>0.2
食塩相当量(g) 0.9>0
単位は全て、地上部分100g当りの成分含有量
※ 五訂日本食品標準成分表より抜粋
注)β−カロテン当量として
なお、プチプチとした食感で、塩味の新野菜として注目を集めているアイスプラントの栽培について、商品化した佐賀大学農学部の研究グループが、土での栽培に注意を呼び掛けている。主要な県産品は養液栽培だが、土耕栽培の場合、土に重金属が含まれると吸収、蓄積する可能性があるためである。
佐賀大のグループは、もともと干拓地の塩害改善作物としてアイスプラントの研究をしていた。佐賀大のグループは、アイスプラントの食用も開発し「バラフ」の名称で商標登録をした。佐賀大のグループは、栽培方法としては、「地中にカドミウムなどの有害な重金属が含まれている場合、一般作物以上に吸収、蓄積する特性があった」(野瀬昭博教授)として養液栽培を選択している。また、栽培に使用する培地についても分析を行い、栽培に使用する水は飲料適水に限定している。同教授は、土耕栽培をする場合には、「重金属の有無など、精密に土壌分析したうえで栽培すべき」と注意を喚起している。
これらのハマミズナ科の植物体(例えば、アイスプラント)を用いる場合には、植物の地上部を用いることが好ましい。ハマミズナ科の植物体(例えば、アイスプラント)のうち地上部が特に食用として適しているため、保湿組成物に用いる抽出物も食履歴などに基づく安全性および健康によい成分を多く含むことが期待されることなどの観点から地上部を用いることが好ましいためである。ここで、本明細書において、植物体の「地上部」とは、地表よりも上部に位置する部位(葉、茎など)を含む概念である。
<保湿組成物の生産方法>
本実施形態では、冷凍又は冷蔵したハマミズナ科の植物体として、10℃以下で2時間以上保持したハマミズナ科の植物体を用いることが好ましい。この条件でハマミズナ科の植物体を保持した場合には、後述する実施例で示すように、従来公知の保湿成分であるセラミド、1,3ブチレングリコールなど(ポジティブコントロール)と比較して優れた保湿効果を有する、冷凍又は冷蔵したハマミズナ科の植物体から抽出した抽出物が得られるためである。
また、本実施形態では、冷凍又は冷蔵したハマミズナ科の植物体からの抽出物は、ハマミズナ科の植物体を細分又は圧搾したものから抽出されたものであることが、保湿組成物の品質向上および製造安定性の面から好ましい。このように、冷凍又は冷蔵したハマミズナ科の植物体を、例えばミキサーなどを用いて或いは手作業によるせん断力によって物理的に細分したか、又は機械を用いて或いは手作業などによって圧搾したものから抽出することによって、熱水抽出又はエタノール抽出などの場合のようにハマミズナ科の植物体に含まれる有効成分が変質・失活などしてしまう危険性を低減することができる。
また、この場合、ハマミズナ科の植物体をミキサーなどを用いてせん断力によって機械的・物理的に細分する際の細分時間は、1時間以内であることが保湿組成物の品質向上および製造安定性の面から好ましい。
そして、ハマミズナ科の植物体を例えばミキサーなどを用いて或いは手作業によるせん断力によって物理的に細分、又は機械を用いて或いは手作業などによって圧搾した後に濾過する場合には、任意の公知の濾過法を用いることができ、例えば濾布、フィルター、メンブレン、金属濾材、セラミック濾材などを好適に用いることができる。
また、ハマミズナ科の植物体を例えばミキサーなどを用いて或いは手作業によるせん断力によって物理的に細分、又は機械を用いて或いは手作業などによって圧搾した後に、濾過する場合には、0.1〜10MPa程度の圧力で濾過を行うことが保湿組成物の品質向上および製造安定性の面から好ましい。
次いで、ハマミズナ科の植物体を例えばミキサーなどを用いて或いは手作業によるせん断力によって物理的に細分するか、又は機械を用いて或いは手作業などによって圧搾して得られた抽出物は、抽出した溶液のまま用いても良く、必要に応じて、濃縮、希釈及び濾過処理、活性炭等による脱色、脱臭処理等をして用いても良い。更には、抽出した溶液を濃縮乾固、噴霧乾燥、凍結乾燥等の処理を行い、乾燥物として用いても良い。これらの中でも、凍結乾燥することが、抽出物の品質安定性および取扱容易性の面から好ましい。
得られた抽出物を凍結乾燥する場合には、凍結乾燥時間は、24時間以内であることが抽出物の品質安定性および取扱容易性の面から好ましい。
本実施形態では、上記のように抽出した抽出物を含有する保湿用組成物を調製する際には、上記抽出物をそのまま使用しても良く、単に水(精製水など)で希釈して用いても良く、あるいは抽出物の効果を損なわない範囲内で、保湿用組成物に用いられる成分である油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、金属石鹸、pH調整剤、防腐剤、香料、粉体、紫外線吸収剤、増粘剤、色素、酸化防止剤、美白剤、キレート剤等の成分を配合することができる。
本実施形態の保湿用組成物に含まれる上記の抽出物の配合量としては、品質向上および製造安定性の観点からは、乾燥重量として0.0001〜50質量%が好ましく、0.01〜10質量%がさらに好ましいが、用いる剤型、使用対象等の様々の条件に応じて、広範囲でその配合量を適宜設定できる。もっとも、この乾燥重量としての配合量は、0.0001、0.001、0.01、0.1、1、5、10、20、30、40、50質量%の2つの配合量の範囲内であってもよい。
<皮膚外用剤および飲食品>
本実施形態に係る皮膚外用剤は、上記の保湿用組成物を含有する。この組成によれば、後述する実施例で示すように、従来公知の保湿成分であるセラミド、1,3ブチレングリコールなど(ポジティブコントロール)と比較して優れた保湿効果を有する、冷凍又は冷蔵したハマミズナ科の植物体から抽出した抽出物を含有するため、優れた保湿効果を有する皮膚外用剤が得られる。
ここで、本実施形態に係る皮膚外用剤は、上記の抽出物をそのまま使用しても良く、単に水(精製水など)で希釈して用いても良く、あるいは抽出物の効果を損なわない範囲内で、保湿用組成物に用いられる成分である油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、金属石鹸、pH調整剤、防腐剤、香料、粉体、紫外線吸収剤、増粘剤、色素、酸化防止剤、美白剤、キレート剤等の成分を配合することができる。
なお、本実施形態に係る皮膚外用剤は、化粧品、医薬部外品、医薬品のいずれにも用いることができ、その剤形としては、例えば、化粧水、クリ−ム、乳液、ゲル剤、エアゾール剤、エッセンス、パック、洗浄剤、浴用剤、ファンデ−ション、打粉、口紅、軟膏、パップ剤等の皮膚に適用されるものが挙げられる。
また、本実施形態に係る飲食品は、上記の保湿用組成物を含有する。この組成によれば、後述する実施例で示すように、従来公知の保湿成分であるセラミド、1,3ブチレングリコールなど(ポジティブコントロール)と比較して優れた保湿効果を有する、冷凍又は冷蔵したハマミズナ科の植物体から抽出した抽出物を含有するため、優れた保湿効果を有する飲食品が得られる。
ここで、本実施形態に係る飲食品は、上記の抽出物をそのまま使用しても良く、単に水(精製水など)で希釈して用いても良く、あるいは抽出物の効果を損なわない範囲内で、種々の栄養成分を加えて、食用に適した形態、例えば、粉末状・粒状・顆粒状・液状・ペースト状・クリーム状・タブレット状・カプセル状・カプレット状・ソフトカプセル状・錠剤状・棒状・板状・ブロック状・丸薬状・固形状・ゲル状・ゼリー状・グミ状・ウエハース状・ビスケット状・飴状・チュアブル状・シロップ状・スティック状などに成形して食品素材として提供することができる。また、水、牛乳、豆乳、果汁飲料、乳清飲料、清涼飲料、青汁、ヨーグルトなどに添加して使用してもよい。
本実施形態の皮膚外用剤又は飲食品に含まれる上記の抽出物の配合量としては、品質向上および製造安定性の観点からは、乾燥重量として0.0001〜50質量%が好ましく、0.01〜10質量%がさらに好ましいが、用いる剤型、使用対象等の様々の条件に応じて、広範囲でその配合量を適宜設定できる。もっとも、この乾燥重量としての配合量は、0.0001、0.001、0.01、0.1、1、5、10、20、30、40、50質量%の2つの配合量の範囲内であってもよい。
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
例えば、上記実施の形態では、ハマミズナ科の植物体を例えばミキサーなどを用いて或いは手作業によるせん断力によって物理的に細分するか、又は機械を用いて或いは手作業などによって圧搾することとしたが、細分又は圧搾の際には他の溶媒(例えば水など)又は助剤(例えば0.1%程度の微量のジエチレングリコールやアルコール)などを加えてもよい。また、ハマミズナ科の植物体を手作業などによって圧搾する際には、細分化したハマミズナ科の植物体を、てこ、ネジ、水圧、油圧などを用いた圧搾機などで圧搾してもよい。このようにしても、ハマミズナ科の植物体を効率よく細分又は圧搾することが可能だからである。
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は、下記の実施例に限定して解釈すべきではなく、特許請求の範囲における記載の範囲内で種々の変更が可能である。
<実施例1>
(実施例1:性能評価試験)
アイスプラント(バラフ)を用いた保湿剤の保湿作用を豚皮を使用し、以下のようにして評価した。
(被験物質の調整)
まず、冷蔵保存(4〜10℃、2時間以上)したアイスプラント(バラフ)、冷凍保存(0℃以下、2時間以上)したアイスプラント(バラフ)および室温で保存(15〜25℃、2時間以上)したアイスプラント(バラフ)の地上部を、それぞれ室温下においてミキサーで細分(15〜25℃、20分)した。次に、細分したアイスプラントを濾布で濾過した後、濾過液を凍結乾燥(18時間)させ、アイスプラント(バラフ)冷蔵後抽出物とアイスプラント(バラフ)冷凍後抽出物、アイスプラント(バラフ)室温抽出物を得た。
(被験物質水溶液の調整)
アイスプラント(バラフ)冷蔵後抽出物、アイスプラント(バラフ)冷凍後抽出物、アイスプラント(バラフ)室温抽出物を容量パーセント濃度で1%となるように精製水で調整し被験物質水溶液とした。
(対照水溶液の調整)
精製水のみ、もしくは、セラミド、1、3ブチレングリコールを容量パーセント濃度で1%となるように精製水で調整したものを対照水溶液とした。
(吸水)
上記で調整した各水溶液が20mlずつ入った各々の遠沈管にあらかじめ重量を計測した200mg〜300mgの豚皮を投入し、室温(15〜25℃)で5分間振とうさせた。5分後に豚皮を取り出し、余分な水分を除き重量を測定した。
(蒸発)
上記で重量を測定した豚皮を37℃のインキュベーター中に移し、30分後と60分後に取り出し重量を測定した。
(保湿性の評価)
下記のようにして保湿能を精製水比として求め、各水溶液の保湿性を比較した。
乾燥豚皮1gあたりの水分保持量(mg/g of dry skin)
=(B−A)*1000/A
保湿能の精製水比(% of control)
=(C/D)×100
A:豚皮の乾燥重量(mg)
B:37℃のインキュベーターに移してから30分後および60分後の豚皮重量(mg)
C:被験物質もしくは対照物質を含有する水溶液を用いた際の乾燥豚皮1gあたりの水分保持量
D:精製水を用いた際の乾燥豚皮1gあたりの水分保持量
上記の方法で求めた30分後における保湿能の精製水比を表1および図1に、アイスプラント(バラフ)の保湿能の精製水比の推移を表2および図2に示す。
<結果の考察>
上記の表1および図1に示すように、実施例である冷凍又は冷蔵保存されたアイスプラント(バラフ)の抽出物は、精製水、セラミド、1,3ブチレングリコール、室温保存されたアイスプラント(バラフ)の抽出物などの比較対照に対して高い水分保持能を有することが明らかになった。また、表2および図2に示すように、冷凍又は冷蔵保存されたアイスプラント(バラフ)の抽出物の水分保持能は持続することが明らかになった。
一方、従来公知の保湿剤としては、バラフの抽出物を配合することによって得られる肌荒れ改善作用に優れた皮膚外用剤(特許文献1)が存在するが、特許文献1では常温で保持したバラフの抽出物を用いている。また、特許文献1では実験例1において保湿作用について検討しているが、バラフの熱水抽出物およびバラフ50%エタノール抽出物の保湿作用を水(ネガティブコントロール)と比較しているだけであり、従来公知の保湿成分であるセラミド、1,3ブチレングリコールなど(ポジティブコントロール)と比較した場合にどの程度の保湿効果があるかは明らかではなかった。さらに、特許文献1では、バラフの熱水抽出物およびバラフ50%エタノール抽出物を用いているため、バラフの抽出物内の有効成分が変質・失活などする可能性があった。
これに対して、上記の実施例では、冷凍又は冷蔵保存されたアイスプラント(バラフ)の抽出物を用いているため、従来公知の保湿成分であるセラミド、1,3ブチレングリコールなど(ポジティブコントロール)と比較しても優れた保湿効果があることが実証されている。また、上記の実施例では、冷凍又は冷蔵保存されたアイスプラント(バラフ)の抽出物を用いているため、特許文献1の常温で保持したバラフの抽出物に比べても優れた保湿効果があることが実証されている。さらに、上記の実施例では、冷凍又は冷蔵保存されたアイスプラント(バラフ)を粉砕(細分)したものから濾過によって抽出された抽出物を用いているため、バラフの抽出物内の有効成分が変質・失活などする危険性が少ない。
以上、本発明を実施例に基づいて説明した。この実施例はあくまで例示であり、種々の変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
たとえば、上記実施例では、濾過液を凍結乾燥して用いたが、濾過液をそのまま用いても良い。この場合にも、冷凍又は冷蔵保存されたアイスプラント(バラフ)の濾過液そのものも、上記実施例の場合と同様に高い水分保持能を有することは当業者に容易に理解可能である。

Claims (10)

  1. 冷凍又は冷蔵したハマミズナ科の植物体から抽出した抽出物を含有する、保湿用組成物。
  2. 前記冷凍又は冷蔵したハマミズナ科の植物体が、10℃以下で2時間以上保持したハマミズナ科の植物体である、請求項1に記載の保湿用組成物。
  3. 前記抽出物は、前記ハマミズナ科の植物体を細分又は圧搾したものから抽出されたものである、請求項1又は2に記載の保湿用組成物。
  4. 前記ハマミズナ科の植物体がメセンブリアンテマ属の植物体である、請求項1〜3のいずれかに記載の保湿用組成物。
  5. 前記ハマミズナ科の植物体がアイスプラントに含まれる植物体である、請求項1〜4のいずれかに記載の保湿用組成物。
  6. 前記ハマミズナ科の植物体が植物の地上部である、請求項1〜5のいずれかに記載の保湿用組成物。
  7. 前記ハマミズナ科の植物体が養液栽培されたものである、請求項1〜6のいずれかに記載の保湿用組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の保湿用組成物を含有する、皮膚外用剤。
  9. 請求項1〜7のいずれかに記載の保湿用組成物を含有する、飲食品。
  10. ハマミズナ科の植物体を冷凍又は冷蔵する工程と、
    前記冷凍又は冷蔵したハマミズナ科の植物体から抽出物を抽出する工程と、
    前記抽出物を含有する保湿用組成物を調製する工程と、
    を含む、保湿用組成物の生産方法。
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