JP2012223739A - 電気集塵装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】正コロナ放電と負コロナ放電を同じ帯電部内で発生させる電気集塵装置において、コンパクトかつ低コストで、省エネ運転が可能な形状・構造を提供する。
【解決手段】先端が尖った複数のトゲを設けた平板の帯電部極板1を複数枚用い、トゲの先端が風上に向く帯電部極板1aと、風下に向く帯電部極板1bとを隣同士互い違いに並行に並べて帯電部13を構成し、風上を向くトゲにおいては正コロナ放電を、風下を向くのトゲにおいては負コロナ放電を生じさせ、粉塵を正負両極性に帯電させ、集塵部16における荷電極板2aと接地極板2bの両者で粉塵を捕集する構成とする。
【選択図】図2

Description

本発明は、一般的には電気集塵装置に関し、特定的には、正コロナ放電と負コロナ放電を同じ帯電部内で発生させる電気集塵装置に関するものである。
従来、この種の電気集塵装置は、帯電部の放電極に直流高電圧を印加し、正コロナまたは負コロナのいずれか一方を発生させ、帯電部を通過する粉塵を正または負に帯電する。この帯電された粉塵を、直流高電圧が印加された荷電極板と、接地に繋がれた接地極板を有する集塵部の高電界により、静電気力で接地極板面上に捕集する技術が広く一般的に知られている。(例えば、特許文献1参照)。
以下、その電気集塵送風原理について図12を参照しながら説明する。
図12に示すように、電気集塵装置は帯電部104と集塵部105により構成される。通風方向は、帯電部104から、集塵部105への向きである。帯電部104と集塵部105にはそれぞれ+11kVの直流高圧電源108と+5.5kVの直流高圧電源109が接続されている。帯電部104は放電極104Aと接地極板104Bにより構成される。放電極104Aに+11kVの直流高圧が印加され、放電極104Aと接地極板104Bの間の空間に正コロナが発生する。この正コロナにより発生した正イオンが、空間中の粉塵(図示されず)に電荷を与え、粉塵は正に帯電される。帯電した粉塵は後段の集塵部105における、荷電極板105Aと接地極板105B間で形成される強電界により、静電気力で接地極板105B上に捕集される。電気集塵装置に正の高電圧が印加される場合で説明したが、負の高電圧が印加される場合でも、同様に、接地極板105B上に粉塵が捕集される。また、電圧値は必ずしも前記の値でなくてもよい。帯電部と集塵部が独立した二段式電気集塵方式であることが特徴となっている。
また、この種の電気集塵装置には、集塵部で捕集した粉塵の一部が剥離して、再び空中に舞い戻り、集塵効率の低下を招く「再飛散」という課題があったので、この課題を解決するために、直流高電圧を用いる帯電部で粉塵を帯電し、集塵部に、正と負の高電圧が周期的に交互に反転する矩形波電圧を印加することにより、集塵部における集塵可能な極板面積を倍増させて再飛散を抑制し、集塵性能を向上する技術が、特許文献2に示されている。
以下、その電気集塵送風原理について図13を参照しながら説明する。
図13に示すように、殆どの部分が図12と同じである。一点異なるのは、集塵部105に印加させる高電圧が直流ではなく、正負が交互に反転する矩形波であり、矩形波高圧電源110が設けられていることである。帯電部104のコロナ放電により粉塵(図示されず)は正に帯電され、集塵部105に流入する。ここで、集塵部105の荷電極板105Aに印加される電圧が正の時は、正に帯電した粉塵は、接地極板105B上に捕集される。また、時間が経過し、荷電極板105Aに印加される電圧が負の時は、正に帯電した粉塵は、荷電極板105A上に捕集される。即ち、集塵部において接地極板のみならず荷電極板上でも粉塵を捕集することができ、集塵面積を倍増することができ、集塵性能の向上を図れることが特徴となっている。

また、この種の電気集塵装置には、帯電部において、正に帯電した粉塵と負に帯電した粉塵を同時かつ等量生成し、集塵部における、接地に繋がれた接地極板と、直流高電圧が
印加された荷電極板の両者で捕集するという技術が、特許文献3に示されている。集塵部を通過した粉塵が、電気的中和作用により帯電しないようにし、電気集塵装置の後方の壁面等の汚れを防止する技術である。
以下、その電気集塵送風原理について図14から図16を参照しながら説明する。
図14に示すように、帯電部104の正の放電極104Aは、接地極板104Bに向かって正コロナを発生する。このとき、帯電部104の接地極板104Bと同電位の放電極104Cは、正の放電極104Aの平面部に向かって、負コロナを発生する。帯電部の印加電圧+6kVは、事前の試験に基づき得られた数値である。即ち、正の放電極104Aからの正コロナと、負の放電極104Cからの負コロナから生成される帯電粉塵の量が同じになるように、正の印加電圧が決定されたものである。図14では、帯電部104における接地ラインにつながる部位が、接地極板104Bと負の放電極104Cとに独立している形態を示しているが、これらを一体化した形態も考えられる。それらが、図15と図16に示されている。図15にも、図16にも通風の方向が示されていないが、いずれにせよ、図15と図16に示される形態は、正の放電極104Aと、接地極板平面部と放電極が一体化された負の放電極104Dが、並行に配置されることが示されている。正コロナおよび負コロナから、それぞれ生成される帯電粉塵の量が同じになるように、正の印加電圧を決定することにより、集塵性能の向上が図れることが特徴となっている。また、印加電圧は負の電圧でもよい。いずれにせよ、電圧値はハードウェアの形状ごとに、事前の試験により決定されるものである。
特開平10−202143号公報(図4) 特開2004−66063号公報(図1) 特許第3124193号公報(図2、図3、図4)
このような従来の、電気集塵装置の集塵性能を向上させる技術においては、矩形波高電圧を発生する集塵部用高圧電源が特殊で高コストになってしまい、また、周期的に変化する集塵部の電圧が帯電部の電圧と異極性になることを考慮し、設計上、帯電部と集塵部の空間絶縁距離を大きく保たねばならず、電気集塵装置が大型化するという課題を有していた。
また、帯電部における正負放電極のための印加電圧を予め確定して、両極性の帯電粉塵を同時かつ等量に生成する必要があるので、印加電圧を自由に変化させて、処理風量が下がった時には帯電量を減らすという、帯電部の省エネ運転を行うことができないことが課題であった。
そこで本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、帯電部における、正コロナと負コロナの発生順序を定めた電気集塵装置を提供することを目的とする。
そして、この目的を達成するために、本発明は、帯電部と集塵部とからなる電気集塵装置において、全ての帯電部極板がトゲ放電部及び電極面部を有し、各帯電部極板に隣接する帯電部極板のトゲ放電部が通風の流れ方向に互い違いにずれた位置関係にあり、風上側のトゲ放電部においては相対的高電位のトゲ放電部から相対的低電位の電極面部へ正コロナを、風下側のトゲ放電部においては相対的低電位のトゲ放電部から相対的高電位の電極
面部へ負コロナを生じさせ、粉塵を正負両極性に帯電させ、集塵部における荷電極板と接地極板の両者で粉塵を捕集することを特徴とする電気集塵装置としたものであり、これにより所期の目的を達成するものである。
本発明によれば、帯電部と集塵部とからなる電気集塵装置において、全ての帯電部極板がトゲ放電部及び電極面部を有し、各帯電部極板に隣接する帯電部極板のトゲ放電部が通風の流れ方向に互い違いにずれた位置関係にあり、風上側のトゲ放電部においては相対的高電位のトゲ放電部から相対的低電位の電極面部へ正コロナを、風下側のトゲ放電部においては相対的低電位のトゲ放電部から相対的高電位の電極面部へ負コロナを生じさせ、粉塵を正負両極性に帯電させ、集塵部における荷電極板と接地極板の全面で粉塵を捕集することを特徴とする電気集塵装置にしたことにより、高圧電源が低コストで、装置がコンパクトで、帯電部の省エネ運転が可能という効果を得ることができる。
本発明の実施の形態の帯電部の構成図(A)帯電極板の外形図(B)帯電部側面概略図(C)帯電部下面概略図 本発明の実施の形態の実験装置概略図 本発明の実施の形態1の集塵効率の特性図 本発明の実施の形態2の集塵効率の特性図 本発明の実施の形態3の集塵効率の特性図 本発明の実施の形態3の(A)凹み距離Xが小さいとき(B)凹み距離Xが大きいとき(C)隣接する帯電部極板が風向に対し重なりがないときの極板位置関係図 本発明の実施の形態4の集塵効率の特性図 本発明の実施の形態5の集塵効率の特性図 本発明の実施の形態6の集塵効率の特性図 本発明の実施の形態7の集塵効率の特性図 本発明の実施の形態8の集塵効率の特性図 従来の電気集塵装置の集塵原理図 従来の電気集塵装置の集塵原理図 従来の電気集塵装置の集塵原理図 従来の電気集塵装置の帯電部の構成例の図 従来の電気集塵装置の帯電部の構成例の図
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
本発明の実施の形態として、以下のような試験装置を用いて行った実験を例にして説明する。
図1(A)は,実験で使用した(帯電部13で用いる)帯電部極板1の外形を示す。実験で使用した帯電部極板1はすべて同じ形状である。長辺Lは100mm、短辺Wは36mm、板厚0.4mmである。そして、上流側、あるいは、下流側に位置する短辺に複数のトゲを形成したものである。トゲの先端角度は30度でトゲの高さSは10mm、二つの短辺のうちの一つに3個のトゲを配列し、トゲの間隔Pは12mmである。極板の材質はSUS304である。
図1(B)は、正負の双極のコロナ放電を行う帯電部13の原理を示す。図に示すように、帯電部13は、トゲの先端が風上に向く帯電部極板1aと、風下に向く帯電部極板1bとを隣同士互い違いに並行に並べて構成した。トゲが風下を向く帯電部極板1bを接地
し、トゲが風上を向く帯電部極板1aに正または負の直流高電圧を印加して実験した。帯電部極板1aの枚数は、帯電部極板1bよりも1枚少ない。この形態で、たとえば正の高電圧を印加すると、風上側の放電空間(放電域S1)では、正のコロナ放電が発生し、風下側の放電空間(放電域S2)では、負のコロナ放電が発生する。負の高電圧を印加する場合は、正コロナと負コロナの発生場所が入れ代わる。
図1(C)は、帯電部13を真下から眺めた図である。各トゲの先端を二重丸で示した。隣接する帯電部極板1の間隔をG[mm]で表す。また,トゲの先端が,隣接する帯電部極板1の端部より何mm凹んでいるかを、凹み距離X[mm]で表す。すなわち、凹み距離Xは、トゲが風上を向く帯電部極板1aのトゲ先端と帯電部極板1bの上流側端部との風向での距離である。トゲが風下を向く帯電部極板1bのトゲについても同様である。さらに、隣接する極板同士のトゲ先端間の距離をY[mm]で表す。トゲ先端間の距離Yは、トゲの高さSを変えたり、極板の長辺Lを変えることによって変更される。
実験条件は、平行に配置され隣接する帯電部極板1の間隔Gについては、10、15、20mmの3ケースとした。また凹み距離Xは、10、20、35、50、65、75mmの6ケースとした。但し、G10(G=10mmを示す)については、X05(X=5mmを示す)についても実験を行った。
図2に本試験装置の概略図を示す。図に示すように、吸込ダクト11から空気を吸い込み、帯電部13で含まれる粉塵に電荷を与えた後、集塵部16で捕集するものである。対象の空気は、このダクト系の後端部に設けたファン19によって吸い込まれる。
帯電部極板1への印加電圧は正負含めて可変としたが、集塵部16の極板間隔は10mm一定とし、直流の印加電圧−9kVも一定とし、帯電部13の条件変化が集塵効率にどのように影響するのかを把握することにした。ファン19は周波数制御により回転数を可変できる。熱線風速計14は、吸込ダクト11部分での風速を計るのに用いた。帯電部13では、内部の開口面積が狭められており,この内部での風速が,9m/s一定になるようにファン19の電源周波数を微調整した。帯電部13は、正及び負の高圧電源22を切り替えて使用した。集塵部16に収納される集塵部極板2としての荷電極板2aと接地極板2b用には、負高圧電源23を使用した。電圧が印加される荷電極板2aと接地される接地極板2bについては、形状・使用枚数ともに同一とした。粉塵の濃度測定用には、パーティクルカウンター15を用い、帯電部13の風上側と集塵部16の風下側を濃度サンプル場所として集塵効率測定を行った。0.3ミクロンメートル以上の全ての粒径による粉塵濃度を用いて、集塵効率を算出した。除去対象の粉塵は、室中の大気塵である。
以上のような試験装置を用いた試験をより詳細に説明する。
(実施の形態1)
図3は、X35(凹み距離X=35mmを指す)の場合の実験結果であり、消費電力に対する集塵効率(帯電部に流入する粉塵を集塵部の極板で捕集する効率)を示すものである。実線は、風上側の放電部に正の電圧を印加し風上側で正コロナを発生させ、風下側の放電部から負コロナを発生させる場合(風上側正コロナ)を示している。一方、破線は、風上側の放電部に負の電圧を印加し風上側で負コロナを発生させ、風下側の放電部から正コロナを発生させる場合(風上側負コロナ)を示している。Gと数字の組合せ記号の意味は、隣接する帯電部極板1の間隔を示し、10、15、20mmの3ケースを表わしている。これらの合計6ケースのいずれにおいても、コロナ放電の消費電力の増大とともに、集塵効率は増加しており、正常な傾向といえる。しかし、ここで注目すべき点がある。それは、風上側の放電部に負の電圧を印加した場合(風上側負コロナの場合)よりも、風上側の放電部に正の電圧を印加した場合(風上側正コロナの場合)の方が、明らかに集塵効
率が良い傾向になっていることである。この傾向は凹み距離XについてX20、X50、X65、X75の条件においても同様である。
この理由を、まだ完全には解明していないが、おそらく、「γ(ガンマ)作用による電離の促進」であると考えている。(γ作用とは、例えば、三好保憲「気体の伝導」(材料科学誌8巻1号(1971年3月)の34ページ)に示される。)その要旨は、「正イオンが負の放電部に衝突すると、負放電部からの二次電子放出が活発になり、電離が活発になり負イオンが生成されやすくなる」というものである。これを、電気集塵の初期プロセスである帯電過程にあてはめて考える。即ち、風上側の正コロナ放電で粉塵は正に帯電し、風に乗って、正に帯電した粉塵と帯電に寄与になかった残余の正イオンが、風下側の負コロナ放電空間に流入する。すると残余の正イオンが、負放電部に衝突しγ作用を引き起こし、負イオンの生成が活発になる。即ち、風下の負コロナ放電領域において負に帯電した粉塵が増加し、結果、集塵効率が向上する、という理屈である。これが、逆の場合、即ち、風上側が負コロナ放電する場合には、風下の正放電部に負イオンが衝突しても、決してγ作用は引き起こされないのである。コロナ放電の詳細なメカニズムについては、学術的に未だ、未知の部分が残されており、前述の推論も、今後もっと精査されるものと考える。しかし、「風上側の放電部で負コロナを発生させる場合よりも、風上側の放電部で正コロナを発生させる場合の方が、明らかに集塵効率が良い」ことは事実である。
すなわち、帯電部13においては、正のコロナ放電と負のコロナ放電を同時に発生させ、正のコロナ放電を負のコロナ放電よりも上流側において発生させることにより、高い集塵効率の電気集塵装置が得られるのである。
なお、帯電部極板1の1枚のトゲの数は3個でなくても、1個以上あればよい。
なお、帯電部極板1のトゲの数は全て同じでなくてもよい。
なお、帯電部極板1のトゲの先端角度は30でなくても、10度から40度程度の範囲であればよい。
なお、帯電部極板1のトゲの高さSは10mmでなくても、5mmから20mm程度の範囲であればよい。
なお、帯電部極板1の端部上で隣接するトゲの間隔は12mmでなくても、4mmから20mm程度の範囲であればよい。
なお、帯電部極板1の板厚は0.4mmでなくても、0.2mmから1.5mm程度の範囲であればよい。
なお、帯電部極板1の材質はSUS304でなくても、平板化可能な金属であればよい。
なお、帯電部極板1の寸法は100mm×36mmでなくてもよい。
(実施の形態2)
次に、図4は、帯電部のコロナ放電で消費される電力を一定にして、隣接する帯電部極板1の間隔Gを変化させたときの、集塵効率の特性である。実施の形態1において、実験条件を詳細に記述したので、重複する部分の記述は省略する。
消費電力は、1.3、2.0、2.8Wの3ケースとした。凹み距離は、X=35mm
とした。
間隔Gの増大とともに、集塵効率は増加していくが、さらに間隔Gが増えると、集塵効率は減少するという山形特性である。概ね、消費電力が大きいほうが、集塵効率が良いことを示している。ここで、間隔Gが概ね、10mmから20mmの範囲いおいて、集塵効率が高くなる。この傾向は凹み距離X20、X50、X65、X75の条件においても同様である。
すなわち、帯電部13においては、隣り合う帯電部極板1の間隔を10〜20mmとすることにより、高い集塵効率の電気集塵装置が得られるのである。
(実施の形態3)
図5は、凹み距離Xを変化させた時の、集塵効率である。実施の形態1において、実験条件を詳細に記述したので、重複する記述は省略する。
間隔Gについて、G10、G15、G20それぞれについての実験結果である。消費電力は、2.0W一定にて実験した。
凹み距離Xが、概ね20mm以上あれば、集塵効率は高めで安定することが分かる。この傾向は、消費電力1.3、2.8Wの条件においても同様である。
また、図6は、凹み距離Xを増加させていった場合の位置関係を示す概念図である。図6(A)では、凹み距離Xの値が小さく、風上側の放電域S1と風下側の放電域S2が別個に現れている。図6(B)のように、凹み距離Xをもう少し大きくしても、放電域S1,S2は同様に別個に現れる。しかし、図6(C)のように、凹み距離Xの値がもっと大きくなり、風上側を向く帯電部極板1aの突起先端が、風下側を向く帯電部極板1bの突起先端よりも風下側に位置するようになると、放電域S1と放電域S2が同一空間になってしまい、粉塵への帯電効率が低下してしまう。従って、最適な凹み距離Xには、範囲が定められることになる。
以上のように、帯電部13においては、トゲの先端と、隣り合う帯電部極板1のトゲを設けた辺と向かい合う辺との距離、すなわち凹み距離が20mm以上であって、帯電部極板1の長辺の長さLとトゲの高さSの和よりも小さくする(言い換えれば、風上側を向くトゲが風下側を向くトゲよりも上流側に位置する)ことにより、高い集塵効率の電気集塵装置が得られるのである。
(実施の形態4)
図7は、帯電部極板1の間隔は、G15で、隣接する帯電部極板1のトゲ先端間の隔離距離Yを変化させた時の、集塵効率である。実施の形態1において、実験条件を詳細に記述したので、重複する記述は省略する。
一定にした消費電力は1.3、2.0、2.8Wの3ケースである。図7に示すように、トゲ先端間距離Yが、大きくなれば、集塵効率は増加するが、約60mm以上になると集塵効率が飽和していることがわかる。この傾向は、G10とG20の条件においても同様である。
また、図6での説明と類似するが、各トゲは隣接する帯電部極板1の垂直投影面上に位置していないと、放電域S1と放電域S2が形成されないので、帯電効率が低下してしまう。従って、最適なトゲ先端間距離Yには、範囲が定められることになる。すなわち、帯電部極板1の長辺の長さLとトゲの高さSの和よりも小さいことが必要になる。
すなわち、帯電部13においては、隣り合う帯電部極板1のトゲ先端間の距離を60mm以上であって、両者の突起先端が、互いにこれと隣接する電極面部の垂直投影面上に位置する(言い換えれば、トゲの先端は、隣り合う極板の電極面部の風上側先端と風下側の後端との間に位置する)ことにより、高い集塵効率の電気集塵装置が得られるのである。
(実施の形態5)
図8は、トゲ一個あたりの消費電力を変化させた時の、集塵効率である。実施の形態1において、実験条件を詳細に記述したので、重複する記述は省略する。
凹み距離Xは、65mmとした。図8に示すように、各ケースとも消費電力が、大きくなれば、集塵効率は増加することが分かる。しかし、消費電力が130mWを超えて大きくなると、印加される電圧値が高めになり火花放電(スパーク)が頻発するので、集塵不能となる。よって、トゲ一個あたりの消費電力が、概ね40mWから130mWの範囲にあれば、良好な集塵効率が得られることが分かる。この傾向は、X20、X35、X50、X75の条件においても同様である。ここで、本願においては、極板間の距離Gを10〜20mmとしたが、極板間の距離Gが小さいと、火花放電しやすい上、送風時の抵抗が大きくなり、実用的でない。また、極板間の距離Gが大きいと、放電させるのに大きな電圧が必要となってくるので、絶縁上の課題が生じる。
すなわち、帯電部13においては、帯電部極板1間の距離Gが10〜20mmにおいて、トゲ一個あたりの消費電力を約40〜13mWとすることにより、高い集塵効率の電気集塵装置が得られるのである。
(実施の形態6)
図9は、トゲ一個あたりの放電電流を変化させた時の、集塵効率である。実施の形態1において、実験条件を詳細に記述したので、重複する記述は省略する。
凹み距離Xは、65mmとした。帯電部極板1の間隔Gについては、G10とG15とG20とした。各ケースとも5μAを超えて放電電流が、大きくなれば、集塵効率は増加することが分かる。また、8μAを超えて大きくなると、印加される電圧値が高めになり火花放電(スパーク)が頻発するので、集塵不能となる。よって、概ね5μAから8μAの範囲にあれば、良好な集塵効率が得られることが分かる。この傾向は、X20、X35、X50、X75の条件においても同様である。
すなわち、帯電部13においては、帯電部極板1間の距離Gが10〜20mmにおいて、トゲ一個あたりの放電電流を約5〜8μAとすることにより、高い集塵効率の電気集塵装置が得られるのである。
(実施の形態7)
図10は、全消費電力に対して正コロナの消費電力の割合を変化させて集塵効率を測定した実験結果である。横軸は、正コロナの消費電力が全消費電力(正コロナと負コロナの消費電力の総和)に対し何%であったかを示している。この実験では、風上側のトゲで正コロナ放電を、風下側のトゲで負コロナ放電を発生させた。実施の形態1において、実験条件を詳細に記述したので、重複する記述は省略し、異なる部分のみ記述する。
本来、トゲが風上を向く帯電部極板1aと、トゲが風下を向く帯電部極板1bの形状と位置関係が決まり、印加電圧が定められてしまうと、正コロナ放電の電流値と、負コロナ放電の電流も一義的に定まる。つまり、正コロナ放電の消費電力と、負コロナ放電の消費電力の比率は概ね一定の比率となる。しかし、トゲが風上を向く帯電部極板1aのトゲの
個数と、トゲが風下を向く帯電部極板1bのトゲの個数を変えれば、正コロナ放電の消費電力と、負コロナ放電の消費電力の比率を自在に変化させることが可能となる。このことは、正コロナ放電の消費電力が、全消費電力(正コロナと負コロナの消費電力の総和)に対し、何%程度の比率のときに、集塵効率が良くなるのかを見極めることは重要であることを示唆している。
そこで、トゲが風上を向く帯電部極板1aと、トゲが風下を向く帯電部極板1bをそれぞれ、垂直に二分割し(切断し)、風上向きのトゲに正の高電圧を印加し、風下向きのトゲに負の高電圧を印加するという実験方法を採用することにした。つまり、風上向きのトゲの正コロナの消費電力と、風下向きのトゲの負コロナの消費電力を自在に(強制的に)変化できる実験装置を実現し、これを用いて、正コロナと負コロナの消費電力の総和を常に一定に保ちながら、正コロナと負コロナの消費電力を変化させる実験を行った。この実験結果が、図10である。帯電部極板1の間隔Gは15mm、凹み距離Xは35mmである。全消費電力は1.3Wで一定となるようした。図10は「山」形の特性を示している。特に、全消費電力中の正コロナの消費電力の割合が約1割から約5割の範囲にあるときに、高い集塵効率を示している。この傾向は、G10、G20の条件においても同様であるし、X20、X50、X65、X75の条件においても同様である。また、一定となるべき全消費電力値を1.3W以外の他の値にしても同様である。
すなわち、帯電部13においては、正コロナの消費電力が全消費電力に対して約1〜5割となるように電力を供給することにより、高い集塵効率の電気集塵装置が得られるのである。
(実施の形態8)
図11は、凹み距離Xが、5から10mmの範囲にある時の、消費電力に対する集塵効率特性である。各Gは、10、15、20mmである。なお、実施の形態1において、実験条件を詳細に記述したので、重複する記述は省略する。
図11に示すように、風上側のトゲに負電圧を印加した場合は、消費電力の増大とともに、集塵効率が上昇しており、理解しやすい。しかし、風上側のトゲに正電圧を印加した場合は、消費電力の増大とともに、集塵効率が低下している。また、凹み距離Xが、5から10mmの範囲にある時、風上側のトゲに負電圧を印加する方が、正電圧を印加するより、良好な集塵効率が得られていることが分かる。この原因は、凹み距離Xの値が小さいので、トゲ先端からの放電と、隣接する帯電部極板1の直線端部からの逆放電が干渉し、帯電効果が弱まり、結果として低い集塵効率になったものと考えられる。
すなわち、帯電部13で、トゲが風上を向く帯電部極板1aのトゲ先端から負コロナ放電を発生させ、トゲが風下を向く帯電部極板1bのトゲ先端から正コロナ放電を発生させる場合においては、隣り合った極板からのトゲ先端の凹み距離Xが、約5から10mmの範囲にある時、高い集塵効率の電気集塵装置が得られるのである。
本発明にかかる電気集塵装置は、正コロナ放電と負コロナ放電を同じ帯電部内で発生させることで、コンパクトで、低コストかつ省エネ運転が可能となるので、広い範囲で有用である。
1 帯電部極板
1a (トゲ先端が風上を向いた)帯電部極板
1b (トゲ先端が風下を向いた)帯電部極板
2 集塵部極板
2a 荷電極板
2b 接地極板
11 吸込ダクト
13 帯電部
14 熱線風速計
15 パーティクルカウンター
16 集塵部
19 ファン
22 高圧電源
23 負高圧電源
S1 放電域
S2 放電域

Claims (10)

  1. 正負に荷電する帯電部極板を交互に平行に設けた帯電部と、
    荷電極板と接地極板を交互に平行に設けた集塵部とからなる電気集塵装置において、
    全ての帯電部極板がトゲ放電部及び電極面部を有し、
    隣り合った帯電部極板のトゲ放電部が通風の流れ方向に互い違いにずれた位置関係にあり、風上側のトゲ放電部においては相対的高電位のトゲ放電部から相対的低電位の電極面部へ正コロナを発生し、
    風下側のトゲ放電部においては相対的低電位のトゲ放電部から相対的高電位の電極面部へ負コロナを発生し、
    前記帯電部を通過する粉塵を正負両極性に帯電させ、
    前記集塵部において前記荷電極板と前記接地極板の全面で粉塵を捕集することを特徴とする電気集塵装置。
  2. ひとつのトゲ放電部と、これに隣接する電極面部の距離が約10mmから約20mmの範囲にあることを特徴とする請求項1記載の電気集塵装置。
  3. 風上側のトゲ放電部の突起先端が、これと隣接する電極面部における風上側の端部よりも風下側に約20mm以上ずれ、かつ風下側のトゲ放電部の突起先端よりも風上側に位置することを特徴とする請求項2記載の電気集塵装置。
  4. 風上側のトゲ放電部の突起先端と風下側のトゲ放電部の突起先端の距離が約60mm以上であり、両者の突起先端が、互いにこれと隣接する電極面部の垂直投影面上に位置することを特徴とする請求項2記載の電気集塵装置。
  5. トゲ1個あたりの平均消費電力が約40mWから約130mWの範囲にあることを特徴とする請求項2記載の電気集塵装置。
  6. トゲ1個あたりの平均放電電流が約5μAから約8μAの範囲にあることを特徴とする請求項2記載の電気集塵装置。
  7. 帯電部の全消費電力における正コロナによる消費電力の割合が約1割から約5割の範囲にあることを特徴とする請求項1記載の電気集塵装置。
  8. 正負に荷電する帯電部極板を交互に平行に設けた帯電部と、
    荷電極板と接地極板を交互に平行に設けた集塵部とからなる電気集塵装置において、
    全ての帯電部極板がトゲ放電部及び電極面部を有し、
    隣り合った帯電部極板のトゲ放電部が通風の流れ方向に互い違いにずれた位置関係にあり、
    前記帯電部において正コロナと負コロナを生じさせることにより粉塵を正負両極性に帯電させ、
    前記帯電部の全消費電力における正コロナによる消費電力の割合が約1割から約5割の範囲にあることを特徴とする電気集塵装置。
  9. ひとつのトゲ放電部と、これに隣接する電極面部の距離が約10mmから約20mmの範囲にあることを特徴とする請求項8に示す電気集塵装置。
  10. 風上側のトゲ放電部においては相対的低電位のトゲ放電部から相対的高電位の電極面部へ負コロナを発生し、
    風下側のトゲ放電部においては相対的高電位のトゲ放電部から相対的低電位の電極面部へ
    正コロナを発生し、
    風上側のトゲ放電部の突起先端が、これと隣接する電極面部における風上側の端部よりも風下側に約5mmから約10mmの範囲内でずれた位置関係にあることを特徴とする請求項9に示す電気集塵装置。
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