JP2012223104A - 誘導多能性幹細胞の識別方法 - Google Patents

誘導多能性幹細胞の識別方法 Download PDF

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Abstract

【課題】細胞核内における特定のタンパク質の存在量や局在等を指標として、iPS細胞と正常な分化細胞と癌化した細胞とを識別する方法の提供。
【解決手段】誘導多能性幹細胞を識別する方法であって、SP1(Specificity Protein 1)、カハールボディに含まれているタンパク質、核ラミナに含まれているタンパク質、傍核小体コンパートメントに含まれているタンパク質、及びPMLボディに含まれているタンパク質から選択される1種以上のマーカータンパク質の細胞核内の存在量、前記マーカータンパク質を含む構造体の細胞核内における数量、又は前記マーカータンパク質を含む構造体の細胞核内における形状を識別用指標とし、1種又は2種類以上の前記識別用指標に基づいて、被検細胞が、誘導多能性幹細胞、正常な分化細胞、又は癌化した細胞のいずれであるかを識別することを特徴とする誘導多能性幹細胞の識別方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、核内における特定のタンパク質の存在量や、核内構造体の数量や形状を指標として、誘導多能性幹(iPS)細胞と正常な分化細胞と癌化した細胞とを識別するための方法に関する。
多細胞生物は、基本単位としての細胞の共同体であり、多様な生命活動を行っている。個体を構成する細胞は、細胞核内に遺伝情報を有しており、細胞分裂や分化の際に、この遺伝情報を子孫細胞に伝達している。すなわち、細胞核は発生、再生、老化、発癌、細胞機能などの生命現象をつかさどる源泉と考えられている。細胞内外からの様々なシグナル情報は細胞核に集約されて、その応答を行っている。
一般的に癌細胞では、核サイズの不同、細胞質に対する核面積の増大、核膜の不整、クロマチンの不均一化、核小体の増加を含めた核内構造体形成の異常、細胞核の位置異常、多核、巨核などがみられる。これらは癌細胞の分裂異常、細胞の過増殖性と分化異常、細胞核内構造体及びクロマチン構造の異常を反映していると考えられる。生体を構成する細胞の中から癌細胞が発生することから、発癌の過程には後成的(エピジェネティック)なメカニズムが関わっており、とりわけ遺伝子発現の変化を伴うと考えられている(例えば、非特許文献1参照。)。
遺伝子の複雑な発現様式を可能にするために、細胞核内は高度に分画化されており、核スペックル、PML(promyelocytic leukemia)ボディ、カハールボディ、核小体、傍核小体コンパートメント(Perinucleolar Compartment;PNC)を含む多くの核内構造体が存在し、時空間・状況に応じて形成と離散を繰り返し、ダイナミックに変動しながら機能している。様々な核構造体が同定され、その機能解析の研究がすすんでいる。これらの構造体が染色体上の個々の遺伝子群と相互作用を持つことで、エピジェネティックな、遺伝子発現の活性調整に働くことが示唆されている。(例えば、非特許文献2参照。)。
一方で、DNAのメチル化やクロマチンの形成異常等のエピジェネティックな異常は、癌における遺伝子制御異常において重要な役割を果たしていることがわかっている(例えば、非特許文献3参照。)。実際に、癌細胞では、ゲノム全体のDNAの低メチル化、染色体不安定性と染色体異常等、クロマチン構造の形成異常、核内構造体の形成や局在の異常等、正常細胞と違いがあることがわかってきており、それらの形態異常を検出できる抗体もつくられるようになってきている(例えば、非特許文献4参照。)。
また、細胞が癌化する過程で様々な変化が現れるが、癌細胞に見られる様々な形態異常のうち、最も重要なものが細胞核の形態異常、すなわち核異型である。具体的には、細胞核の大きさ、形、核小体の大きさや数、核クロマチンの量やパターン等の要素が、正常な細胞核とは異なるものを核異型という。これらは実際の癌細胞の病理学的な診断に用いられている。しかし、なぜ核構造の異常が起こるのか、癌の形質とどう結びつくのか、そのメカニズムについてはほとんどわかっていない。一方で、近年、細胞核構造に関する知見は急速に進歩しており、癌細胞の核異型についての謎に迫ることも可能になりつつある。
また、近年、再生医療研究では、分化細胞の初期化メカニズムをはじめとする幹細胞研究分野においても、エピジェネティクス研究が重視されている(例えば、非特許文献5参照。)さらに、ES細胞やiPS細胞は、体性細胞とは異なる癌化プロセスをとる可能性がある。そのため、薬事法上の再生医療に関する指針(ガイドライン)には、エピジェネティクスの網羅的解析が記載されている。当該網羅的解析のひとつに、エピジェネティクスのDNAメチル化が挙げられている。このように、新たな局面を迎えている再生医療・細胞治療分野において、選択すべき重要な細胞特性指標としてエピジェネティクスに注目が集まっている。
Cajalボディ(カハールボディ、別名コイルドボディ)は、snRNA(small nuclear RNA)、snoRNA(small nucleolar RNA)の成熟や、ヒストンmRNAのプロセシングに機能する。癌化した細胞においては、テロメラーゼRNA因子が局在化したり、細胞ストレスによりp53を含む細胞制御因子が集積すること等のことから、カハールボディは老化とストレス応答経路にかかわる構造体であると考えられている(例えば、非特許文献6及び7参照。)。また、正常細胞では、その大きさ(直径:0.2〜2.0μm)や数(1〜10個)は、細胞の種類によって変化するといわれているのに対して、癌細胞であるHeLa細胞では高発現しているといわれている。(例えば、非特許文献7参照。)。また、ヒトES細胞(hES H9)においては、未分化状態では発現していないが、分化誘導すると発現するということが、免疫染色の結果から報告されている(例えば、非特許文献8参照。)。
SP1(Specificity Protein 1)は、多くの細胞で恒常的に発現している基本転写因子であり、プロモーター上流域のGC boxに結合し、多くの遺伝子の転写を活性化する。SP1はDNA結合ドメインと転写活性化ドメインを持ち、基本転写因子や他の転写因子と相互作用する(例えば、非特許文献9参照。)。また、SP1は、胃癌、大腸癌、膵臓癌、乳癌、甲状腺癌など様々な癌で高発現していることが報告されている(例えば、非特許文献10参照。)。一方で、正常細胞では、癌細胞よりも低い発現の傾向がある。一例を挙げれば、ヒト組織アレイを用いた免疫染色の結果から、正常細胞組織と比較して、胃癌組織ではその発現が高いことが確認されている(例えば、非特許文献11参照。)。但し、iPS細胞やES細胞などの幹細胞では、この分子の発現に関する論文は報告されていない。
細胞核内と細胞質は核膜により区画化されており、核膜上には、タンパク質やRNAの核―細胞質間の輸送を担う核膜孔複合体が多数存在している。核内側の核膜近傍にはヘテロクロマチンが豊富に存在し、一般的に核膜は遺伝子抑制の環境を作り上げているとされる。核膜の不整は、疾患細胞において観察される核異型のうち、代表的なもののひとつである。核膜の裏打ちタンパク質であるラミンAとラミン結合蛋白質の変異は、筋ジストロフィー、ニューロパチーを含むラミノパチー(核膜病)と総称される様々な遺伝病を引き起こす。例えば、核膜病のひとつであるHutchinson−Gilford早老症候群(HGPS) では、ラミンAのRNAのスプライシング異常により翻訳後の脂質修飾が異常となり、正常な核膜の形成が不能になる。HGPS患者由来の細胞核は、陥没したような不整な核膜を示し、ヘテロクロマチンの不形成がみられ、損傷DNAが蓄積している。ラミンは、高等真核生物の核内膜の裏打ちタンパク質である核ラミナを構成する主要な成分であり、正常細胞では、HeLa細胞と同等の発現量であるといわれている。老化細胞(高齢者由来のファイブロブラスト)、及び早老症(HGPS;Hutchinson−Gilford progeria syndrome)患者由来の細胞では、核膜異型が見られる。ラミンA/Cの染色は、丸い綺麗な球形ではなく、でこぼこやくびれがある傾向が観察される。さらに、ヒトES細胞(HSF−6hES)においては、未分化状態では発現していないが、分化誘導すると発現すると報告されている(例えば、非特許文献12参照。)。
傍核小体コンパートメントは、核小体に隣接して存在する核内構造体であり、分子マーカーとしてhnRNPIが知られている。傍核小体コンパートメントには、RNA polymerase IIIの転写産物であるSRP RNAやAlu RNAなどが存在しており、当該核内構造体は、RNA polymerase IIIによって転写されたRNAのプロセッシングに関与していることが予想されている。(例えば、非特許文献13参照。)。また、細胞内に存在する傍核小体コンパートメントの数や大きさは、がんの悪性化と相関することが知られているが、そのメカニズムは分かっていない。正常ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC:Normal Human Umbilical Vein Endothelial Cells)では、抗体免疫染色によって、hnRNPIの発現が観察されないことが確認されている。一方で、HeLa細胞、MCF−7細胞をはじめとする多くの固形腫瘍細胞株では、発現していることが確認されている(例えば、非特許文献14参照。)。原発腫瘍部位、リンパ節、及び遠隔転移部位について、免疫染色画像からhnRNPIの発現を比較したところ、乳癌では、がんの進行度に従って傍核小体コンパートメントの数が増大することがわかった。(例えば、非特許文献15参照。)。さらに、ヒトES細胞では、傍核小体コンパートメントが形成されていないことが確認されている(例えば、非特許文献14参照。)。
PMLボディは、癌抑制遺伝子産物であるPML(promyelocytic leukemia)タンパク質を主体とした核内構造体であり、ほぼすべての哺乳動物細胞に存在する。通常の細胞内では、直径0.2〜1μmの粒状の構造体が10〜30個存在しているが、その形状は、細胞の種類やその環境状態により異なっている。PMLボディは、老化、発癌、ウィルス感染、分化、アポトーシス等の様々な生命現象にかかわっており、特に癌化や老化等に密接に関係すること等が報告されている。急性前骨髄性白血病(acute promyelocytic leukemia; APL)の腫瘍細胞においては、染色体転座でPMLとレチノイン酸受容体の融合タンパク質が合成される結果、正常のPMLボディはほとんど形成されていない。この細胞をレチノイン酸で処理すると、融合タンパク質がユビキチン-プロテアソームで分解されることで、正常なアレルからのPMLによってPMLボディが再形成される。この時に白血病細胞が好中球に最終分化することから、分子標的型の癌治療の最初の例となっている。(例えば、非特許文献16参照。)。一方、ヒトES細胞(hES H9)においては、未分化状態では、線状形(Linear)や ロゼッタ(Rosetta)型のPMLボディが観察されるが、分化誘導するとドット状の分布を示すことが報告されている(例えば、非特許文献8参照。)。
国際公開第2007/069666号パンフレット
ホリディ(Holliday)、サイエンス(Science)、1987年、第238巻、第163〜170ページ。 斉藤、他5名、蛋白質核酸酵素、2006年、第51巻第14号、第1957〜1963ページ。 クサノ(Kusano)、他9名、キャンサー(Cancer)、2006年、第106巻、第1467〜1479ページ。 アオト(Aoto)、他4名、ディベロップメンタル・バイオロジー(Developmental biology)、2006年、第298巻、第354〜367ページ。 医学のあゆみ、2008年、第225巻、第7号、第588ページ。 シオス(Cioce)、他1名、アニュアル・レビュー・オブ・セル・アンド・ディベロップメンタル・バイオロジー(Annual review of cell and developmental biology)、2005年、第21巻、第105〜131ページ。 モリス(Morris)、バイオキミカ・バイオフィジカ・アクタ(Biochimica et Biophysica Acta)、2008年、第11巻、第2108〜2115ページ。 バトラー(Butler)、他3名、ジャーナル・オブ・セルラー・バイオケミストリー(Journal of Cellular Biochemistry)、2009年、第107巻、第609〜621ページ。 スッケ(Suske)、ジーン(Gene)1999年、第238巻、第291〜300ページ。 セイフ(Safe)、他1名、ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・キャンサー(European Journal of Cancer)、2005年、第41巻、第2438〜2448ページ。 リウ(Liu)、他9名、ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(Journal of Biological Chemistry)、2009年、第284巻、第5165〜5174ページ。 コンスタンチヌス(Constantinescu)、他4名、ステム・セルズ(Stem Cells)、2006年、第24巻、第177〜185ページ。 ワン(Wang)、他3名、 モレキュラー・バイオロジー・オブ・ザ・セル(Molecular Biology of the Cell)2003年、第14巻、第2425〜2435ページ。 ノートン(Norton)、他5名、キャンサー(Cancer)2008年、第113巻、第861〜869ページ。 カマス(Kamath)、他13名、キャンサー・リサーチ(Cancer Research)、2005年、第65巻、第1号、第246〜53ページ。 ゴスティッサ(Gostissa)、他3名、カレント・オピニオン・セル・バイオロジー(Current Opinion in Cell Biology)、2003年、第15巻、第351〜357ページ。 タカハシ、他6名、セル(Cell)、2007年、第131巻、第5号、第861〜872ページ。
これらの従来からの知見により、核内構造体や核膜の構造が、癌化や分化の程度により影響を受けることは示唆されているものの、iPS細胞と正常な分化細胞と癌化した細胞との3者を識別する方法については、未だ報告がない。
よって、本発明は、細胞核内における特定のタンパク質の存在量や局在等を指標として、iPS細胞と正常な分化細胞と癌化した細胞とを識別する方法を提供することを目的とする。
本発明は、
(1) 誘導多能性幹細胞を識別する方法であって、
SP1(Specificity Protein 1)、カハールボディに含まれているタンパク質、核ラミナに含まれているタンパク質、傍核小体コンパートメントに含まれているタンパク質、及びPMLボディに含まれているタンパク質から選択される1種以上のマーカータンパク質の細胞核内の存在量、前記マーカータンパク質を含む構造体の細胞核内における数量、又は前記マーカータンパク質を含む構造体の細胞核内における形状を識別用指標とし、
1種又は2種類以上の前記識別用指標に基づいて、被検細胞が、誘導多能性幹細胞、正常な分化細胞、又は癌化した細胞のいずれであるかを識別することを特徴とする誘導多能性幹細胞の識別方法、
(2) 前記識別用指標として、被検細胞の細胞核内におけるSP1の存在量を用いることを特徴とする前記(1)に記載の誘導多能性幹細胞の識別方法、
(3) 2種類以上の前記識別用指標を組み合わせて用いることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の誘導多能性幹細胞の識別方法
(4) (p1)SP1の細胞核内の存在量、及び核ラミナに含まれているタンパク質の細胞核内の存在量、
(p2)SP1の細胞核内の存在量、及びカハールボディの細胞核内の数量、
(p3)SP1の細胞核内の存在量、及び傍核小体コンパートメントに含まれているタンパク質の細胞核内の存在量、
(p4)SP1の細胞核内の存在量、及び傍核小体コンパートメントの細胞核内の数量、
(p5)SP1の細胞核内の存在量、及びPMLボディの細胞核内の数量、
(p6)SP1の細胞核内の存在量、及び線状形のPMLボディの細胞核内の数量、
(p7)カハールボディの細胞核内の数量、及び核ラミナに含まれているタンパク質の細胞核内の存在量、
(p8)カハールボディの細胞核内の数量、及び傍核小体コンパートメントに含まれているタンパク質の細胞核内の存在量、
(p9)カハールボディの細胞核内の数量、及び傍核小体コンパートメントの細胞核内の数量、
(p10)カハールボディの細胞核内の数量、及びPMLボディの細胞核内の数量、
(p11)カハールボディの細胞核内の数量、及び線状形のPMLボディの細胞核内の数量、
(p12)核ラミナに含まれているタンパク質の細胞核内の存在量、及び傍核小体コンパートメントに含まれているタンパク質の細胞核内の存在量、
(p13)核ラミナに含まれているタンパク質の細胞核内の存在量、及び傍核小体コンパートメントの細胞核内の数量、
(p14)核ラミナに含まれているタンパク質の細胞核内の存在量、及びPMLボディの細胞核内の数量、
(p15)核ラミナに含まれているタンパク質の細胞核内の存在量、及び線状形のPMLボディの細胞核内の数量、
(p16)傍核小体コンパートメントに含まれているタンパク質の細胞核内の存在量、及び傍核小体コンパートメントの細胞核内の数量、
(p17)傍核小体コンパートメントに含まれているタンパク質の細胞核内の存在量、及びPMLボディの細胞核内の数量、
(p18)傍核小体コンパートメントに含まれているタンパク質の細胞核内の存在量、及び線状形のPMLボディの細胞核内の数量、又は
(p19)PMLボディの細胞核内の数量、及び線状形のPMLボディの細胞核内の数量、
を識別用指標として用いることを特徴とする前記(3)に記載の誘導多能性幹細胞の識別方法、
(5) 前記カハールボディに含まれているタンパク質がcoilinであり、前記核ラミナに含まれているタンパク質がラミンA及び/又はラミンCであり、前記傍核小体コンパートメントに含まれているタンパク質がhnRNPIであり、前記PMLボディに含まれているタンパク質がPMLであることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の誘導多能性幹細胞の識別方法、
(6) 前記被検細胞が、誘導多能性幹細胞へ誘導するための初期化処理が行われた細胞であることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか一つに記載の誘導多能性幹細胞の識別方法、
(7) 前記被検細胞が、誘導多能性幹細胞へ誘導するための初期化処理が行われた細胞群が形成するコロニーのうち、辺縁部以外に存在する細胞であることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか一つに記載の誘導多能性幹細胞の識別方法、
(8) 被検細胞中の前記マーカータンパク質の細胞核内の存在量、又は当該マーカータンパク質を含む構造体の細胞核内における数量若しくは形状は、
(a)被検細胞の細胞核内の前記マーカータンパク質及び核酸をそれぞれ標識する工程と、
(b)前記工程(a)の後、前記被検細胞から、核酸の標識画像を取得する工程と、
(c)前記工程(a)の後、前記被検細胞から、前記マーカータンパク質の標識画像を、標識されたマーカータンパク質の種類ごとに別個に取得する工程と、
(d)前記工程(b)において取得された核酸の標識画像に基づいて、細胞核領域を決定する工程と、
(e)前記工程(c)において取得された前記マーカータンパク質の標識画像中の、前記工程(d)において決定された細胞核領域に含まれる各画素の輝度値を測定し、1画素当たりの輝度値が閾値以上である1又は複数の陽性領域を決定し、全陽性領域に含まれる各画素の輝度値の統計値、並びに、各陽性領域の数、MAxフェレット直径、及びエロンゲーションファクターからなる群より選択される1以上を測定する工程と、
により得られた値に基づいて決定されることを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれか一つに記載の誘導多能性幹細胞の識別方法、
を、提供するものである。
本発明のiPS細胞の識別方法により、細胞染色後に取得された細胞画像を解析することによって、iPS細胞を、正常な分化細胞や癌細胞と区別して検出することができる。すなわち、本発明のiPS細胞の識別方法により、iPS細胞へ誘導するための初期化処理が行われた細胞群から、初期化が不十分な分化細胞や、初期化処理により癌化してしまった細胞と区別して、iPS細胞を検出することができる。
画像解析における細胞核領域の具体的な決定方法を模式的に示した図である。 (A)は、細胞画像解析装置の一実施形態である細胞画像解析装置1aの機能構成を表す概略ブロック図であり、(B)は、細胞画像解析装置1aの動作例を表すフローチャートである。 (P1)の組み合わせの識別用指標を用いた場合において、第1の識別用指標の測定値を横軸に、第2の識別用指標の測定値を縦軸にした場合の、iPS細胞と、正常な分化細胞と、癌化した細胞の分布パターンを模式的に示した図である。 (P2)の組み合わせの識別用指標を用いた場合において、第1の識別用指標の測定値を横軸に、第2の識別用指標の測定値を縦軸にした場合の、iPS細胞と、正常な分化細胞と、癌化した細胞の分布パターンを模式的に示した図である。 (P3)の組み合わせの識別用指標を用いた場合において、第1の識別用指標の測定値を横軸に、第2の識別用指標の測定値を縦軸にした場合の、iPS細胞と、正常な分化細胞と、癌化した細胞の分布パターンを模式的に示した図である。 (P4)の組み合わせの識別用指標を用いた場合において、第1の識別用指標の測定値を横軸に、第2の識別用指標の測定値を縦軸にした場合の、iPS細胞と、正常な分化細胞と、癌化した細胞の分布パターンを模式的に示した図である。 (P5)の組み合わせの識別用指標を用いた場合において、第1の識別用指標の測定値を横軸に、第2の識別用指標の測定値を縦軸にした場合の、iPS細胞と、正常な分化細胞と、癌化した細胞の分布パターンを模式的に示した図である。 (P6)の組み合わせの識別用指標を用いた場合において、第1の識別用指標の測定値を横軸に、第2の識別用指標の測定値を縦軸にした場合の、iPS細胞と、正常な分化細胞と、癌化した細胞の分布パターンを模式的に示した図である。 (P7)の組み合わせの識別用指標を用いた場合において、第1の識別用指標の測定値を横軸に、第2の識別用指標の測定値を縦軸にした場合の、iPS細胞と、正常な分化細胞と、癌化した細胞の分布パターンを模式的に示した図である。 (P8)の組み合わせの識別用指標を用いた場合において、第1の識別用指標の測定値を横軸に、第2の識別用指標の測定値を縦軸にした場合の、iPS細胞と、正常な分化細胞と、癌化した細胞の分布パターンを模式的に示した図である。 (P9)の組み合わせの識別用指標を用いた場合において、第1の識別用指標の測定値を横軸に、第2の識別用指標の測定値を縦軸にした場合の、iPS細胞と、正常な分化細胞と、癌化した細胞の分布パターンを模式的に示した図である。 (P10)の組み合わせの識別用指標を用いた場合において、第1の識別用指標の測定値を横軸に、第2の識別用指標の測定値を縦軸にした場合の、iPS細胞と、正常な分化細胞と、癌化した細胞の分布パターンを模式的に示した図である。 (P11)の組み合わせの識別用指標を用いた場合において、第1の識別用指標の測定値を横軸に、第2の識別用指標の測定値を縦軸にした場合の、iPS細胞と、正常な分化細胞と、癌化した細胞の分布パターンを模式的に示した図である。 (P12)の組み合わせの識別用指標を用いた場合において、第1の識別用指標の測定値を横軸に、第2の識別用指標の測定値を縦軸にした場合の、iPS細胞と、正常な分化細胞と、癌化した細胞の分布パターンを模式的に示した図である。 (P13)の組み合わせの識別用指標を用いた場合において、第1の識別用指標の測定値を横軸に、第2の識別用指標の測定値を縦軸にした場合の、iPS細胞と、正常な分化細胞と、癌化した細胞の分布パターンを模式的に示した図である。 (P14)の組み合わせの識別用指標を用いた場合において、第1の識別用指標の測定値を横軸に、第2の識別用指標の測定値を縦軸にした場合の、iPS細胞と、正常な分化細胞と、癌化した細胞の分布パターンを模式的に示した図である。 (P15)の組み合わせの識別用指標を用いた場合において、第1の識別用指標の測定値を横軸に、第2の識別用指標の測定値を縦軸にした場合の、iPS細胞と、正常な分化細胞と、癌化した細胞の分布パターンを模式的に示した図である。 (P16)の組み合わせの識別用指標を用いた場合において、第1の識別用指標の測定値を横軸に、第2の識別用指標の測定値を縦軸にした場合の、iPS細胞と、正常な分化細胞と、癌化した細胞の分布パターンを模式的に示した図である。 (P17)の組み合わせの識別用指標を用いた場合において、第1の識別用指標の測定値を横軸に、第2の識別用指標の測定値を縦軸にした場合の、iPS細胞と、正常な分化細胞と、癌化した細胞の分布パターンを模式的に示した図である。 (P18)の組み合わせの識別用指標を用いた場合において、第1の識別用指標の測定値を横軸に、第2の識別用指標の測定値を縦軸にした場合の、iPS細胞と、正常な分化細胞と、癌化した細胞の分布パターンを模式的に示した図である。 (P19)の組み合わせの識別用指標を用いた場合において、第1の識別用指標の測定値を横軸に、第2の識別用指標の測定値を縦軸にした場合の、iPS細胞と、正常な分化細胞と、癌化した細胞の分布パターンを模式的に示した図である。 実施例1において、IMR90細胞、iPS細胞201B7株、及びHeLa細胞のSP1標識画像中の細胞核当たりのSP1の平均蛍光強度を示した図である。 実施例1において、iPS細胞201B7株のコロニーの中心部と辺縁部の細胞における細胞核当たりのSP1の平均蛍光強度を示した図である。 実施例3において、IMR90細胞、iPS細胞201B7株、及びHeLa細胞の核酸標識画像(DAPI染色画像)及びラミンA/C標識画像〔Alexa488(ラミンA/C)染色画像〕である。 実施例3において、IMR90細胞、iPS細胞201B7株、及びHeLa細胞のラミンA/C標識画像中の細胞核当たりの平均蛍光強度を示した図である。 実施例4において、IMR90細胞、iPS細胞201B7株、及びHeLa細胞のhnRNPI標識画像中の細胞核当たりのhnRNPIの平均蛍光強度を示した図である。 実施例4において、IMR90細胞、iPS細胞201B7株、及びHeLa細胞のhnRNPI標識画像中の一の細胞核領域中に存在する傍核小体コンパートメント(PNC)の数を算出した結果を示した図である。 実施例5において、IMR90細胞、iPS細胞201B7株、及びHeLa細胞のPML標識画像中の一の細胞核領域中に存在するPMLボディの数を算出した結果を示した図である。 実施例5において、IMR90細胞、iPS細胞201B7株、及びHeLa細胞のPML標識画像中の一の細胞核領域中に存在する線状形のPMLボディの全PMLボディに対する割合を算出した結果を示した図である。
<iPS細胞の識別方法>
本発明のiPS細胞の識別方法は、誘導多能性幹細胞を識別する方法であって、SP1、カハールボディに含まれているタンパク質、核ラミナに含まれているタンパク質、傍核小体コンパートメントに含まれているタンパク質、及びPMLボディに含まれているタンパク質から選択される1種以上のマーカータンパク質の細胞核内の存在量、前記マーカータンパク質を含む構造体の細胞核内における数量、又は前記マーカータンパク質を含む構造体の細胞核内における形状を識別用指標とし、1種又は2種類以上の前記識別用指標に基づいて、被検細胞が、iPS細胞、正常な分化細胞、又は癌化した細胞のいずれであるかを識別することを特徴とする。SP1、カハールボディに含まれているタンパク質、核ラミナに含まれているタンパク質、傍核小体コンパートメントに含まれているタンパク質、及びPMLボディに含まれているタンパク質(以降、「本発明のマーカータンパク質」ということがある。)は、細胞核内における存在量、当該タンパク質が含まれる構造体の細胞核内における数量、及び当該タンパク質が含まれる構造体の細胞核内における形状のうちの少なくとも1つにおいて、iPS細胞は、正常な分化細胞や癌化した細胞と明らかに異なる傾向を有する。このため、これらを指標とすることにより、iPS細胞を、正常な分化細胞や癌細胞から区別して検出することができる。
初期化処理により全ての分化細胞をiPS細胞へ誘導することは非常に困難である。このため、初期化処理が行われた細胞群には、誘導が成功して得られたiPS細胞と、脱分化されなかった分化細胞や、充分に脱分化されなかった細胞が混在している場合が多い。また、初期化処理によって、脱分化のみならず癌化が起こるおそれもある。このため、iPS細胞を作製する際には、初期化処理が行われた細胞群からiPS細胞を識別する必要がある。正常細胞、癌細胞、未分化細胞などの個々の特徴を示す表面抗原マーカーを用いることによってもiPS細胞を識別することができるが、多数のマーカーを用いなければならない。例えば、未分化細胞の表面抗原をマーカーとして用いることにより、被検細胞が未分化であるか否かを判定することはできるが、当該細胞が正常な分化細胞であるか、癌化した細胞であるのかを判定することは難しい。これに対して、本発明のiPS細胞の識別方法では、マーカーとして、核内構造体等の細胞核内に存在する物質を用いている。このため、iPS細胞へ誘導するための初期化処理が行われた細胞を被検細胞として本発明のiPS細胞の識別方法を行うことにより、当該細胞がiPS細胞であるのか、正常分化細胞に近い特徴を有しているのか、又は癌細胞に近い特徴を有しているのかを、より少ないマーカー数で、例えば1種類又は2種類のマーカーを用いることにより、判定することができる。
また、iPS細胞のコロニーは、外周の周辺にいくほど未分化状態が保たれ難い傾向があることが報告されている(例えば、非特許文献8参照。)。そこで、iPS細胞へ誘導するための初期化処理が行われた細胞群が形成するコロニーのうち、辺縁部以外に存在する細胞、特にコロニーの中心付近の細胞が、iPS細胞である可能性が高いため、これらの細胞を被検細胞とすることが好ましい。
なお、iPS細胞へ誘導する初期化処理は、例えば特許文献1や非特許文献17等に記載されている方法により、行うことができる。
まず、本発明のマーカータンパク質について説明する。
SP1は、iPS細胞における細胞核内の存在量が、正常な分化細胞よりも多く、癌化した細胞よりも少ない傾向がある。このため、iPS細胞と正常な分化細胞とを識別するための閾値(iPS細胞/正常分化細胞用閾値)やiPS細胞と癌化した細胞とを識別するための閾値(iPS細胞/癌細胞用閾値)を適切に設定することにより、SP1の細胞核内の存在量を指標として、被検細胞がiPS細胞か、正常な分化細胞か、癌化した細胞かを、識別することができる。例えば、被検細胞の細胞核内におけるSP1の存在量が、予め設定されたiPS細胞/正常分化細胞用閾値よりも少なければ、当該被検細胞は正常な分化細胞であり、予め設定されたiPS細胞/正常分化細胞用閾値よりも多く、かつ予め設定されたiPS細胞/癌細胞用閾値よりも少なければ、当該被検細胞はiPS細胞であり、予め設定されたiPS細胞/癌細胞用閾値よりも多ければ、当該被検細胞は癌化した細胞である、と識別することができる。
本発明のマーカータンパク質として用いられる核ラミナに含まれているタンパク質は、核ラミナを構成するタンパク質や、核ラミナと特異的に結合するタンパク質であれば特に限定されるものではない。当該タンパク質として、例えば、ラミンAやラミンC、エメリン等が挙げられる。本発明においては、ラミンA及び/又はラミンCを用いることが好ましい。ラミンA/Cは、正常な分化細胞や癌化した細胞では、細胞核内(主に核膜)において発現が観察されるのに対して、iPS細胞においては、細胞核内にほとんど存在していないか、若しくは極微量にしか存在していない。このため、iPS細胞と、正常な分化細胞や癌化した細胞とを識別するための閾値(iPS細胞用閾値)を適切に設定することにより、ラミンA/Cの細胞核内の存在量を指標として、被検細胞がiPS細胞か、又は正常な分化細胞若しくは癌化した細胞かを、識別することができる。例えば、被検細胞の細胞核内におけるラミンA/Cの存在量が、予め設定されたiPS細胞用閾値よりも少なければ、当該被検細胞はiPS細胞である、と識別することができる。
本発明のマーカータンパク質として用いられるカハールボディに含まれているタンパク質は、カハールボディを構成するタンパク質や、カハールボディと特異的に結合するタンパク質、カハールボディに内包されているタンパク質であれば特に限定されるものではない。当該タンパク質として、例えば、coilinやSMN(survival of motor neuron)タンパク質等が挙げられる。本発明においては、coilinを用いることが好ましい。iPS細胞においては、細胞核内のカハールボディの数量は、正常な分化細胞よりも多く、癌化した細胞よりも少ない傾向がある。このため、iPS細胞と正常な分化細胞とを識別するための閾値(iPS細胞/正常分化細胞用閾値)やiPS細胞と癌化した細胞とを識別するための閾値(iPS細胞/癌細胞用閾値)を適切に設定することにより、カハールボディの細胞核内の数量を指標として、被検細胞がiPS細胞か、正常な分化細胞か、癌化した細胞かを、識別することができる。例えば、被検細胞の細胞核内におけるカハールボディの数量が、予め設定されたiPS細胞/正常分化細胞用閾値よりも少なければ、当該被検細胞は正常な分化細胞であり、予め設定されたiPS細胞/正常分化細胞用閾値よりも多く、かつ予め設定されたiPS細胞/癌細胞用閾値よりも少なければ、当該被検細胞はiPS細胞であり、予め設定されたiPS細胞/癌細胞用閾値よりも多ければ、当該被検細胞は癌化した細胞である、と識別することができる。
本発明のマーカータンパク質として用いられる傍核小体コンパートメントに含まれているタンパク質は、傍核小体コンパートメントを構成するタンパク質や、傍核小体コンパートメントと特異的に結合するタンパク質、傍核小体コンパートメントに内包されているタンパク質であれば特に限定されるものではない。本発明においては、当該タンパク質として、hnRNPIを用いることが好ましい。抗hnRNPI抗体を用いて正常な分化細胞を免疫染色した場合には、細胞核全体が薄く染色され、癌化した細胞を染色した場合には、細胞核内の傍核小体コンパートメントがスポット状に濃く染色される。これに対して、iPS細胞は、抗hnRNPI抗体を用いた免疫染色では、ほとんど細胞核は染色されない。つまり、hnRNPIは、iPS細胞における細胞核内の存在量が、正常な分化細胞よりも多く、癌化した細胞よりも少ない傾向がある。このため、iPS細胞と正常な分化細胞とを識別するための閾値(iPS細胞/正常分化細胞用閾値)やiPS細胞と癌化した細胞とを識別するための閾値(iPS細胞/癌細胞用閾値)を適切に設定することにより、SP1と同様に、hnRNPIの細胞核内の存在量を指標として、被検細胞がiPS細胞か、正常な分化細胞か、癌化した細胞かを、識別することができる。
なお、細胞核内にスポット状に存在する傍核小体コンパートメントは、癌化した細胞では検出されるものの、正常な分化細胞やiPS細胞では検出されない。このため、傍核小体コンパートメントの細胞核内の数量を指標として、被検細胞がiPS細胞若しくは正常な分化細胞か(数量が0の場合)、又は癌化した細胞か(数量が1以上の場合)を、識別することができる。
本発明のマーカータンパク質として用いられるPMLボディに含まれているタンパク質は、PMLボディを構成するタンパク質や、PMLボディと特異的に結合するタンパク質、PMLボディに内包されているタンパク質であれば特に限定されるものではない。当該タンパク質として、例えば、PML等が挙げられる。細胞核内にスポット状に存在するPMLボディの数量は、iPS細胞においては、正常な分化細胞や癌化した細胞よりも少ない傾向がある。このため、iPS細胞と、正常な分化細胞や癌化した細胞とを識別するための閾値(iPS細胞用閾値)を適切に設定することにより、PMLボディの細胞核内の数量を指標として、被検細胞がiPS細胞か、又は正常な分化細胞若しくは癌化した細胞かを、識別することができる。
また、正常な分化細胞や癌化した細胞においては、球状に近い形状のPMLボディが観察される。これに対して、iPS細胞では、線状形(Linear)や ロゼッタ(Rosetta)型のPMLボディが観察される。このため、PMLボディの形状を指標とすることによっても、被検細胞がiPS細胞か、又は正常な分化細胞若しくは癌化した細胞かを、識別することができる。例えば、線状形のPMLボディの数量について、iPS細胞と、正常な分化細胞や癌化した細胞とを識別するための閾値(iPS細胞用閾値)を適切に設定した場合には、被検細胞の細胞核内のPMLボディの数量が当該閾値以上である場合に、当該被検細胞はiPS細胞である、と判断することができる。なお、後述するように、画像解析を用いてPMLボディの形状を解析する場合、MAXフェレット直径やエロンゲーションファクター等の形状の記述ファクターを用いることにより、線状形のPMLボディを検出することができる。
具体的には、被検細胞の細胞核内における、SP1の存在量、カハールボディの構成タンパク質の存在量、核ラミナの構成タンパク質の存在量、傍核小体コンパートメントの構成タンパク質の存在量、PMLボディの構成タンパク質の存在量、カハールボディの数、傍核小体コンパートメントの数、PMLボディの数、及びPMLボディの形状からなる群より選択される1種以上を識別用指標とする。これらのマーカータンパク質の細胞核内の存在量や、当該マーカータンパク質を含む構造体の数量や形状は、当該分野において公知のいずれの手法で検出・測定してもよいが、画像解析法、特に、イメージングサイトメータと多因子計測解析法を組み合わせた方法を用いることが好ましい。
例えば、マーカータンパク質やその構造体の標識画像を取得し、この標識画像を画像解析することにより、細胞核内の存在量等を測定する。イメージング(画像)を用いて解析を行うことにより、マーカータンパク質やその構造体を様々なパラメータを用いて多角的に数値化することができ、定量性に優れている。また、客観的な判断基準を確立することができ、多数の細胞について同一の基準を適応することができる。このため、解析者の主観を排除した客観的で精度のよい解析結果を得ることができる。さらに、数値定量化し、その特徴的なパラメータを組み合わせ、多次元にグラフに展開させることによって、脱分化前の正常細胞、脱分化後の未分化細胞、癌化した細胞のいずれであるかを、一枚の標識画像から識別することが可能になる。
また、マーカータンパク質やその構造体の自動検出とハイスループット解析も可能である。例えば、96検体を同時に解析可能であり、多数の細胞について効率的に計測、解析することが可能である。さらに、細胞同士が近接している組織切片などの標本を対象とした場合であっても、ソフトウェア上で個々の細胞を判断したり、マーカータンパク質やその構造体の細胞核内における存在量や局在等を、画像を見ながら判断することができる。
具体的には、下記工程(a)〜(e)により、被検細胞中の前記マーカータンパク質の細胞核内の存在量、又は当該マーカータンパク質を含む構造体の細胞核内における数量若しくは形状を測定することができる。
(a)被検細胞の細胞核内の前記マーカータンパク質及び核酸をそれぞれ標識する工程と、
(b)前記工程(a)の後、前記被検細胞から、核酸の標識画像を取得する工程と、
(c)前記工程(a)の後、前記被検細胞から、前記マーカータンパク質の標識画像を、標識されたマーカータンパク質の種類ごとに別個に取得する工程と、
(d)前記工程(b)において取得された核酸の標識画像に基づいて、細胞核領域を決定する工程と、
(e)前記工程(c)において取得された前記マーカータンパク質の標識画像中の、前記工程(d)において決定された細胞核領域に含まれる各画素の輝度値を測定し、1画素当たりの輝度値が閾値以上である1又は複数の陽性領域を決定し、全陽性領域に含まれる各画素の輝度値の統計値、並びに、各陽性領域の数、MAxフェレット直径、及びエロンゲーションファクターからなる群より選択される1以上を測定する工程。
以下、工程ごとに説明する。
まず、工程(a)として、被検細胞の細胞核内の前記マーカータンパク質及び核酸をそれぞれ標識する。なお、標識方法は、細胞内成分(細胞核を構成する構造体や核酸)を、適当な波長の光を照射して撮像された画像上で、他の細胞内成分と視覚的に区別し得るように標識し得る方法であれば特に限定されるものではなく、当該技術分野で公知のいずれの手法を用いてもよい。例えば、マーカータンパク質や核酸と特異的に結合するような抗体やリガンド等を用いた免疫染色法を行ってもよく、構造体や核酸に集積し得る色素を用いた色素染色法を行ってもよい。また、免疫染色法では、蛍光物質を結合させた一次抗体や二次抗体を用いた蛍光免疫染色法であってもよく、DAB法、ニッケルDAB法、NBT/BCIP法等の酵素抗体法であってもよい。なお、これらの染色法は、当該技術分野において汎用されている染色法であり、常法により行うことができる。また、本発明においては、検出感度が良好であるため、各マーカータンパク質や核酸は、蛍光物質により標識することが好ましい。
例えば、核酸は、公知の核酸染色剤の中から、適宜選択して用いることにより、標識することができる。例えば、核酸染色剤としてDNAインターカレータを用いることができる。DNAインターカレータとしては、例えば、DAPI(4’,6−diamino−2−phenylindole)、PI(propidium iodide)、Hoechst33258、Hoechst33342、7−AAD(7Amino actinomycin D)、DRAQ5(登録商標)(Biostatus社製)、Sytox(登録商標)(インビトロジェン社製)、YOYO(登録商標)(インビトロジェン社製)等が挙げられる。
また、核酸は酸性物質であることから、核酸染色剤として塩基性色素を用いることもできる。このような色素を用いた染色として、例えば、HE染色、パパニコロウ染色、フォイルゲン染色、メチル緑・ピロニン染色等が挙げられる。
本発明においては、核酸染色剤としては、DNAインターカレータ等のように、細胞内の核酸量を反映可能な染色剤であることが好ましい。細胞内の核酸量依存的に染色される核酸染色剤を用いた場合には、一細胞核内に存在するDNA量が多い場合や凝集している場合には、DNA量が少ない場合や凝集していない場合よりも強く染色される。このため、撮像された核酸の標識画像を解析することにより、細胞周期を判断することもできる。
核酸と各マーカータンパク質は、標識画像上で互いに区別して検出可能なように、それぞれ異なる種類の染色剤等を用いて標識する。本発明においては、一の被検細胞に対して、1種類のマーカータンパク質を標識してもよく、2種類以上のマーカータンパク質を標識してもよい。例えば、複数種類のマーカータンパク質を蛍光免疫染色し、DAPI等の蛍光性核酸染色剤を用いて核酸を染色する場合、各マーカータンパク質を染色する蛍光物質の蛍光特性と、蛍光性核酸染色剤の蛍光特性とが、互いに異なっていることが好ましい。なお、蛍光特性が異なるとは、FITCとローダミンのように、励起光照射により発される蛍光の波長が、区別して検出し得るほど異なることを意味する。その他、例えば、1種類のマーカータンパク質をDAB法等の酵素抗体法により標識し、その他の種類のマーカータンパク質及び核酸を、互いに蛍光特性の異なる蛍光物質を用いてそれぞれ標識してもよく、また、核酸を非蛍光性の核酸染色剤を用いて標識し、各種マーカータンパク質を互いに蛍光特性の異なる蛍光物質を用いてそれぞれ標識してもよい。
次に、工程(b)として、工程(a)において標識された細胞の、核酸の標識画像を取得する。また、工程(c)として、工程(a)において標識された細胞の、解析対象であるマーカータンパク質の標識画像を、標識されたマーカータンパク質の種類ごとに別個に取得する。なお、同じ細胞に対して、核酸の標識画像と各マーカータンパク質の標識画像とを取得する。それぞれの標識画像は、マーカータンパク質や核酸の標識方法に応じて、常法により取得することができる。具体的には、例えば、1種類又は複数種類のマーカータンパク質及び核酸を、互いに蛍光特性の異なる蛍光物質を用いて標識した場合、共焦点レーザ顕微鏡等を用いて、解析対象であるマーカータンパク質と核酸が標識された細胞に対して、各蛍光物質の蛍光特性に応じた波長の励起光を順次照射し、発された蛍光を検出して撮像することにより各標識画像を取得することができる。また、マーカータンパク質や核酸を、酵素抗体法等のように非蛍光物質により標識した場合には、透過光を撮像することにより、各標識画像を取得することができる。
これらの画像は、CCDカメラ等の細胞の撮像に通常用いられる撮像装置を用いて撮像し取得することができる。例えばCCDカメラによる撮像は、通常、個々のXY位置に対して1枚あるいは複数枚の画像を撮像する。レンズの焦点位置を例えばZとし、これに垂直な面にXY面を設定して撮像ポイントを特定する場合が多い。CCDカメラで撮像された各チャンネルの画像は白黒画像であり、明るさごとに例えば0〜4096の値を各XY位置(画像の画素)に割り当て、各画素の輝度を記録している。
また、これらの画像は、細胞を入れた細胞観察用容器を、イメージングサイトメータ等の蛍光画像の取得装置に設置して行うことができる。画像を取得する細胞は、細胞観察用容器に接着していればよく、必ずしも固定化処理がなされている必要はない。なお、細胞観察用容器への細胞の固定方法は、特に限定されるものではなく、常法により行うことができる。例えば、自然乾燥させてもよく、ホルムアルデヒドやパラホルムアルデヒド、メタノール等の細胞固定架橋剤を呈することにより、細胞観察用容器へ細胞を固定することができる。
細胞観察用容器としては、一般的に細胞染色に用いられるものであれば、特に限定されるものではないが、スライドガラス又はマルチウェルプレートであることが好ましい。
スライドガラス又はマルチウェルプレートを用いて、イメージングサイトメータ等を用いることにより、多数の検体も迅速かつ簡便に処理することが可能となる。
工程(b)及び(c)は、どちらを先に行ってもよく、同時に行ってもよい。なお、同時に行うとは、1ショット(1顕微鏡視野)ごとに、マーカータンパク質の種類ごとの標識画像と核酸の標識画像とを別個に取得し蓄積することを意味する。
次いで、工程(d)として、工程(b)において取得された核酸の標識画像(以下、「核酸標識画像」と略記することがある。)に基づいて、各細胞における細胞核領域を決定する。
本発明において、標識画像の解析は、公知の画像解析の手法を適宜組み合わせることにより行うことができる。基本的な細胞画像解析や自動細胞認識においては、画像に適当な輝度の閾値を設定することにより、標識画像中の標識された領域の決定は、画像に適当な輝度の閾値を設定することにより行う。例えば、輝度値が設定された閾値より上の点(画素)を1、それ以外を0というように二値化を行い、さらに1となった画素からなる領域を個々に切り分ける(一の島ごとに切り分けて番号付けを行う)ことによって、個々の細胞核やマーカータンパク質を認識する。
具体的には、予め、核酸標識画像中の細胞核を認識するための細胞核用閾値及び細胞核用面積閾値を設定しておき、核酸標識画像から、各画素(ピクセル)が細胞核用閾値以上の輝度の値(以下、「輝度値」という。)を有する一塊の領域をメインオブジェクトとして認識する。このオブジェクト中の各画素の輝度値の勾配から、当該オブジェクトの境界を分離し、閉じた領域のうち細胞核用面積閾値以上の面積を有する領域を抽出し、細胞核領域として決定する。
なお、ここでいう輝度とは、例えば濃淡画像においては濃淡を表す値であり、画像中の各ピクセル(画素)の明るさを表す値である。また、ここでいう面積とは、領域の正確な面積の数値のみならず、領域に含まれる画素の数を意味しても良い。
ここで、細胞核用閾値及び細胞核用面積閾値は、解析する対象の細胞の種類、核酸の標識に用いた染色剤の種類等を考慮して適宜設定されるものである。例えば、解析対象の細胞と同種の細胞を予め核酸染色剤を用いて染色し、核酸標識画像を取得した後、当該核酸標識画像から細胞核領域の輝度値や面積値を測定し、得られた測定値に基づいて設定することができる。
図1は、画像解析における細胞核領域の具体的な決定方法を模式的に示した図である。図1(A)は1つの細胞を模式的に示した図である。図中、領域101は核(細胞核)を、領域102は細胞質を、それぞれ示している。まず、画像解析において、細胞一つ一つを自動的に識別するために、DAPI等の核酸染色剤で染色されたこの領域101、すなわち細胞核領域103をメインオブジェクトとして認識するような領域を設定する{図1(B)}。具体的には、核酸染色剤により染色された部分の面積の最大値と最小値及び蛍光強度を測定し、各画素が細胞核用閾値以上の輝度値を有する領域のうち細胞核用面積閾値以上の面積を有する領域を抽出し、細胞核領域として決定する。
さらに、細胞密度が高く、細胞が込み合っているような場合がある場合は、領域分割を行う手法の一つとして知られているウォーターシェッド(Watershed)アルゴリズム手法を用いることが好ましい。該手法は、マークと呼ばれる領域の中心を隣接画素へと広げていくことによって領域を得るものであり、この機能を同時に使用することにより、個々の細胞を認識するよう設定する{図1(C)}。図1(C)に示すように、2つの重なり合う細胞は、ウォーターシェッド機能を用いない場合には1つの細胞核として認識されるが{図1(C―a)}、ウォーターシェッド機能を用いることにより、2つの細胞核として認識できるようになる{図1(C―b)}。細胞核の認識は、他にも、エッジ認識や隣接する細胞のくびれを認識されることによっても同様に行うことができる。
測定された輝度値の解析時には、画像処理の一つの方法としてローリングボールを使ったバックグランド補正を行ってもよい。また、決定された全ての細胞核領域に対して、以降の解析を行ってもよいが、核の誤認識を排除するため、細胞核領域の面積(Area)と、例えば、サーキュラリティーファクターをはじめとする細胞核の形状の記述ファクター(その他、円周ペリメータ、MAXフェレット直径、エロンゲーションファクター等)とにより、特定の形状的特徴を備える細胞核を有する細胞集団を選択し、当該細胞集団に含まれる細胞に対してのみ以降の解析を行うことにより、ノイズを排除して解析を行うことが好ましい。
さらに、工程(e)として、解析対象である標識したマーカータンパク質の細胞核領域中における存在量や、当該マーカータンパク質が含まれる構造体の数量や形状を測定する。具体的には、まず、工程(c)において取得された各マーカータンパク質の標識画像(以下、「マーカータンパク質標識画像」と略記することがある。)のそれぞれに対して、核酸標識画像から決定された各細胞核領域に相当する領域に含まれる各画素の輝度値を測定する。得られた測定値を、予め決定しておいた閾値(マーカータンパク質用閾値)と比較し、1画素当たりの輝度値がこのマーカータンパク質用閾値以上である領域(画素の集合)を陽性領域として決定する。決定される陽性領域は、マーカータンパク質の種類や細胞の状態等により異なり、細胞核領域と同一である場合もあり、一の細胞核領域中で1又は複数の部分領域として決定される場合もある。決定された全陽性領域中の各画素の輝度値の統計値、並びに各陽性領域の数、MAxフェレット直径、及びエロンゲーションファクターからなる群より選択される1以上を測定する。なお、輝度値の統計値とは、当該領域に含まれる全画素の輝度値の合計値であってもよく、1画素当たりの平均値であってもよく、1画素当たりの最大値であってもよい。
マーカータンパク質用閾値は、標識の際のノイズを排除し、標識の有無を認識するための閾値である。この閾値は、マーカータンパク質の種類や標識方法に依存して変動するものであるため、マーカータンパク質の種類及び標識方法の種類ごとに、それぞれマーカータンパク質用閾値を設定しておく。例えば、被検細胞と同種の細胞や、被検細胞と由来が同一若しくは発生学的に近縁の細胞を予め染色し、マーカータンパク質標識画像を取得した後、当該標識画像から各画素の輝度値を測定し、得られた測定値に基づいて設定することができる。なお、被検細胞と由来が同一の細胞としては、例えば、初期化処理がなされる前の正常な分化細胞等が挙げられる。その他、例えば、マーカータンパク質標識画像中の当該マーカータンパク質が存在していないことが明らかな領域(バックグラウンド)の1画素当たりの輝度値やその統計値等をマーカータンパク質用閾値としてもよく、経験的に取得された閾値であってもよい。
測定された統計値に基づき、マーカータンパク質の細胞核内における存在量、マーカータンパク質が含まれる構造体(マーカータンパク質標識画像中の陽性領域)の数量及び形状からなる群より選択される少なくとも1種を解析する。具体的には、一の細胞核領域中の全陽性領域の各画素の輝度値の総和が、当該細胞の細胞核内におけるマーカータンパク質の存在量である。例えば、一の細胞核領域中の全陽性領域中の各画素の輝度値の統計値が、予め対照細胞を同様に処理して測定された輝度値の統計値よりも大きい場合には、解析された被検細胞では、対照細胞よりも当該マーカータンパク質の細胞核内における存在量が多いことが分かる。
また、各陽性領域のMAxフェレット直径やエロンゲーションファクター等を測定することにより、当該陽性領域の形状(すなわち、マーカータンパク質が含まれる構造体の形状)を解析することができる。ここで、MAxフェレット直径は、一の陽性領域に含まれる異なる2画素間の距離の最大値である。また、エロンゲーションファクターは、MAxフェレット直径を、当該陽性領域と面積及び周囲長が等しい矩形の短径で除した値である。これらのパラメータは、画像解析において、オブジェクトの形態を解析する際に用いられている。
ある領域の形状が、真円よりも、楕円形や線状形に近い場合には、当該領域のMAxフェレット直径とエロンゲーションファクターは、いずれも大きくなる。逆に、真円に近い形状であれば、当該領域のMAxフェレット直径とエロンゲーションファクターは、いずれも小さくなる。そこで、各陽性領域のMAxフェレット直径及びエロンゲーションファクターを測定し、両ファクターの値が比較的大きい場合には、当該陽性領域は線状形(若しくは楕円形)であり、両ファクターの値が比較的小さい場合には、当該陽性領域は真円形に近いことが分かる。
核酸標識画像中の全ての細胞核領域を解析対象とすることもできるが、コロニーの辺縁部以外の細胞を解析対象としてもよい。例えば、核酸標識画像中の全ての細胞核領域の位置をXY軸上に展開した後、コロニーの辺縁部の細胞を避けるようにしてコロニー中央部分の領域を選択し、当該領域内部の細胞核領域のみを解析対象とすることができる。
<細胞画像解析装置>
前記工程(b)〜(e)の工程は、これらの工程を実現可能な一の画像解析装置を用いて解析することができる。例えば、画像解析の分野において一般的に用いられている公知の画像解析装置又はこれを適宜改変した装置を用いることにより、解析することができる。細胞画像解析装置は、パーソナルコンピュータやワークステーション等の情報処理装置を用いて構成されても良いし、顕微鏡などに組み込まれた専用装置として構成されても良い。例えば、顕微鏡やCCDカメラ等の細胞画像の撮像手段をさらに備える画像解析装置を用いることにより、工程(a)以外の全工程を、一の装置を用いて行うこともできる。
図2(A)は、このような細胞画像解析装置の一実施形態である細胞画像解析装置1の機能構成を表す概略ブロック図である。細胞画像解析装置1は、光源2、CCDカメラ3、カメラコントローラ4、ステージコントローラ5、結像光学系6、パーソナルコンピュータ(図中、「PC」)7、PCモニタ8、及びキーボード9を備える。
ステージコントローラ5は、スライドガラスやマルチウェルプレート等の画像を取得する細胞が含まれている細胞観察用容器が設置されたステージを制御する。光源2は、標識した細胞の画像を取得するために、ステージコントローラ5により制御されたステージに設置された細胞観察用容器中の細胞に、所望の波長の光を照射する。
結像光学系6は、動作制御を指示するソフトウェアを介してフォーカス位置を自動で調整する。また、CCDカメラ3は、当該細胞観察用容器中の細胞の画像を取得し、カメラコントローラ4は、CCDカメラ3を制御する。パーソナルコンピュータ7は、光源2、CCDカメラ3、カメラコントローラ4、ステージコントローラ5、結像光学系6の動作制御を指示するソフトウェアを有している。
また、パーソナルコンピュータ7は、CCDカメラ3により撮像された細胞の標識画像に基づいて、画素当たりの輝度値を測定し、当該測定結果に基づき、細胞核領域を決定したり、各マーカータンパク質の陽性領域を決定したりする。さらに、マーカータンパク質標識画像において、決定された全陽性領域中の各画素の輝度値の統計値、並びに各陽性領域の数、MAxフェレット直径、及びエロンゲーションファクターからなる群より選択される1以上を測定する。かつ、これらの測定結果に基づき、マーカータンパク質の細胞核内における存在量や、当該マーカータンパク質を含む構造体の数量や形状を解析する。すなわち、一連の画像解析は、パーソナルコンピュータ7において行われる。さらに、パーソナルコンピュータ7は、得られた結果を保存し、測定及び解析結果を出力することもできる。解析結果等は、画像出力装置に文字又はグラフなどの図形として表示させることによって出力しても良いし、プリンターに印字させることによって出力しても良い。
PCモニタ8やキーボード9は、パーソナルコンピュータ7の操作に用いられる。PCモニタ8は、CCDカメラ3により撮像された細胞の標識画像やパーソナルコンピュータ7から出力される結果等を表示するための画像出力装置としても用いられる。
また、図2(B)は、細胞画像解析装置1の動作例を表すフローチャートである。まず、ステップ1として、マーカータンパク質と核酸をそれぞれ標識した被検細胞の、マーカータンパク質標識画像と核酸標識画像とを、それぞれ別個に撮像する。具体的には、まず、細胞観察用容器を、細胞画像解析装置1のステージに設置し、ステージコントローラ5により、適当な位置にセットする。次いで、当該細胞観察用容器中の細胞に対して光源2から標識に応じた光を照射し、結像光学系6によりフォーカス調整を行い、CCDカメラ3により、各標識画像を撮像する。
次に、ステップ2として、パーソナルコンピュータ7において、核酸標識画像に基づき、細胞核領域を決定する。さらに、ステップ3として、同じくパーソナルコンピュータ7において、マーカータンパク質標識画像に基づき、決定された細胞核領域に含まれる各画素の輝度値を測定し、1画素当たりの輝度値が閾値以上である1又は複数の領域を決定し、当該領域を陽性領域として検出する。
次いで、ステップ4として、細胞核領域ごとに、1又は複数の特徴量を算出する。ここで、特徴量とは、全陽性領域中の各画素の輝度値の統計値、各陽性領域の数量、及び各陽性領域の形状を示す。
最後に、ステップ5として、ステップ4で得られた特徴量に基づき、細胞核領域ごとに、マーカータンパク質の存在量、当該マーカータンパク質を含む構造体の数量及び形状からなる群より選択される少なくとも1種を解析し、結果を出力する。
上述した本発明の細胞画像解析装置の一態様である細胞画像解析装置1の機能をコンピュータで実現するようにしても良い。その場合、各機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現しても良い。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでも良い。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
前記工程(b)〜(e)の工程は、このような細胞画像解析装置と、細胞画像を取得するための顕微鏡部及び撮像部、並びに撮像された画像を蓄積し記録する画像記録部とを備える、イメージングサイトメータを用いて行うことが好ましい。なお、本発明及び本願明細書において、イメージングサイトメータとは、自動的に染色画像の取得と得られた染色画像の解析を行うことができる画像解析装置を意味する。例えば、スライドガラス上の細胞集団に対して、レーザを収束させたスポットで走査し、この細胞集団の個々の細胞が発する蛍光を検出し、走査画像データを画像処理することにより、個々の細胞のデータを抽出して測定するレーザ走査型サイトメータ(例えば、特開平3−255365号公報参照。)やこれを適宜改良したサイトメータ等が挙げられる。
特に、取得された顕微鏡画像に基づき得られた解析データから、顕微鏡画像の画像データを呼び出す手段を有するイメージングサイトメータを用いることが好ましい。各解析データに対して画像データを迅速に確認することができ、より信頼性の高い診断結果を得ることもできるためである。また、解析結果をヒストグラムやドットプロットにより表示する手段を有していることが好ましい。本発明においては、ドットプロット表示がより望ましい。ドットプロット表示では、個々の細胞が1つ1つのドットとして表示されるため、解析結果をドットプロット表示することにより、個々の細胞情報を画像とともに瞬時に確認できる利点がある。さらに、標識画像の撮影から解析までの一連の工程を全て自動で行うことができるため、1視野ずつ細胞を探すことなく撮影し解析することができる。つまり、目視により解析対象とする細胞を探した後に撮像する場合よりも、細胞を長時間露光することなく観察、評価することができるため、細胞へのダメージも最小限にとどめ、精度の高い評価が可能である。
本発明のiPS細胞の識別方法においては、被検細胞の細胞核内における、SP1の存在量、カハールボディの構成タンパク質の存在量、核ラミナの構成タンパク質の存在量、傍核小体コンパートメントの構成タンパク質の存在量、PMLボディの構成タンパク質の存在量、カハールボディの数、傍核小体コンパートメントの数、PMLボディの数、及びPMLボディの形状からなる群より選択される2種類以上の識別用指標を組み合わせて用いることが好ましい。複数の識別用指標を組み合わせることにより、iPS細胞と、正常な分化細胞と、癌化した細胞とを、より明確かつ精度よく識別することができる。
本発明においては、特に、下記(p1)〜(P19)に示される組み合わせを用いることがより好ましい。
(p1)SP1の細胞核内の存在量、及び核ラミナに含まれているタンパク質の細胞核内の存在量。
(p2)SP1の細胞核内の存在量、及びカハールボディの細胞核内の数量。
(p3)SP1の細胞核内の存在量、及び傍核小体コンパートメントに含まれているタンパク質の細胞核内の存在量。
(p4)SP1の細胞核内の存在量、及び傍核小体コンパートメントの細胞核内の数量。
(p5)SP1の細胞核内の存在量、及びPMLボディの細胞核内の数量。
(p6)SP1の細胞核内の存在量、及び線状形のPMLボディの細胞核内の数量。
(p7)カハールボディの細胞核内の数量、及び核ラミナに含まれているタンパク質の細胞核内の存在量。
(p8)カハールボディの細胞核内の数量、及び傍核小体コンパートメントに含まれているタンパク質の細胞核内の存在量。
(p9)カハールボディの細胞核内の数量、及び傍核小体コンパートメントの細胞核内の数量。
(p10)カハールボディの細胞核内の数量、及びPMLボディの細胞核内の数量。
(p11)カハールボディの細胞核内の数量、及び線状形のPMLボディの細胞核内の数量。
(p12)核ラミナに含まれているタンパク質の細胞核内の存在量、及び傍核小体コンパートメントに含まれているタンパク質の細胞核内の存在量。
(p13)核ラミナに含まれているタンパク質の細胞核内の存在量、及び傍核小体コンパートメントの細胞核内の数量。
(p14)核ラミナに含まれているタンパク質の細胞核内の存在量、及びPMLボディの細胞核内の数量。
(p15)核ラミナに含まれているタンパク質の細胞核内の存在量、及び線状形のPMLボディの細胞核内の数量。
(p16)傍核小体コンパートメントに含まれているタンパク質の細胞核内の存在量、及び傍核小体コンパートメントの細胞核内の数量。
(p17)傍核小体コンパートメントに含まれているタンパク質の細胞核内の存在量、及びPMLボディの細胞核内の数量。
(p18)傍核小体コンパートメントに含まれているタンパク質の細胞核内の存在量、及び線状形のPMLボディの細胞核内の数量。
(p19)PMLボディの細胞核内の数量、及び線状形のPMLボディの細胞核内の数量。
図3(A)〜(S)に、(P1)〜(P19)の各組み合わせにおいて、第1の識別用指標の測定値を横軸に、第2の識別用指標の測定値を縦軸にした場合の、iPS細胞と、正常な分化細胞と、癌化した細胞の分布パターンを模式的に示す。なお、細胞核の面積は、同種又は近縁の細胞では、細胞核の面積はほぼ等しい。このため、全陽性領域の各画素の輝度値の総和を、細胞核領域の面積で除した平均輝度値も、細胞核内におけるマーカータンパク質の存在量を反映した値である。
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
iPS細胞、正常な分化細胞、及び癌化した細胞に対して、抗SP1抗体を用いた免疫染色を行い、取得された染色画像に基づいて、各細胞の細胞核中のSP1の存在量を測定し、比較した。
正常な分化細胞として、ヒト繊維芽細胞であるIMR90細胞を、癌化した細胞としてHeLa細胞を、それぞれ用いた。これらの細胞は、常法により培養した。
また、iPS細胞として、ヒト成人の皮膚繊維芽細胞に対して、4つの初期化因子(Oct3/4、Sox2、Klf4、及びc−Myc)を用いて、非特許文献17に記載の手法で樹立されたiPS細胞201B7株を用いた。iPS細胞201B7株の培養は、ヒト多能性幹細胞の維持培養プロトコール(2010)(理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター ヒト幹細胞研究支援室発行:http://www.cdb.riken.go.jp/hsct/protocol.html)に記載の方法に準じて行った。具体的には、まず、マイトマイシンC処理を施したMEF細胞を、2×10cell/60mm dishとなるように培養した。このMEF細胞を播いたディッシュに、iPS細胞201B7株を蒔き、継代の翌日から毎日培地交換を行って5〜7日間培養後、継代した。なお、iPS細胞201B7株の培養培地としては、Repro Stem(カタログ番号:RCHEMD005、ReproCELL社製)に、bFGF(終濃度5ng/ml)(カタログ番号:RCHEOT002、ReproCELL社製)、ペニシリン、及びトレプトマイシンを添加したものを用いた。
培養したIMR90細胞、iPS細胞201B7株、及びHeLa細胞をPBSで1回洗浄し、4%パラホルムアルデヒド溶液で室温15分間固定処理した後、PBSで3回洗浄し、0.5%のTritonX−100溶液で氷上5分間浸透処理した。その後、各細胞に対して、0.5%のNGS(Normal Goat Serum) 溶液で3回洗浄・ブロッキング操作を行った後、一次抗体として抗SP1抗体(rabbit、Santa cruz biotechnology社製、カタログ番号:SC−59)を0.5%のBSA溶液で希釈した溶液を添加し、1時間インキュベートした。さらにPBSで3回洗浄を行った後、二次抗体としてAlexa488標識抗Rabbit抗体(Invitrogen社製、カタログ番号:A11034)を0.5%のBSA溶液で希釈した溶液を添加し、1時間インキュベートすることにより、細胞中のSP1を標識(ラベル化)した。ラベル化した細胞を、PBSで1回洗浄した後、1μg/mlDAPI−PBS溶液中で5分間インキュベートし、核酸を染色した。PBSで1回洗浄後、スライドガラスに載せ、封入し撮像を行った。核酸標識画像(以下、「DAPI染色画像」)及びSP1標識画像(以下、「Alexa488(SP1)染色画像」)は、IX70(オリンパス社製)を使用し、20倍対物レンズを用いて撮像し、CELAVIEW Analysis Soft(オリンパス社製)を用いて解析を行った。
各細胞において、DAPI染色画像に基づいて細胞中の細胞核領域を決定した後、SP1標識画像中の対応する各細胞核領域内に存在するある一定以上の輝度値(蛍光強度)をもった陽性領域を検出した。3種の細胞全てにおいて、陽性細胞は、細胞核領域とほぼ同一であった。各陽性領域(すなわち、細胞核領域)に含まれる全画素の輝度値の平均値(細胞核当たりの平均蛍光強度)を算出した。なお、iPS細胞201B7株に関しては、コロニー中央に存在する細胞を対象に解析を行った。
図4に、IMR90細胞、iPS細胞201B7株、及びHeLa細胞のSP1標識画像中の細胞核当たりの平均蛍光強度を示す。この結果、iPS細胞201B7株のSP1の平均蛍光強度は、IMR90細胞よりも高く、HeLa細胞よりも明らかに低いことが分かった。つまり、細胞核中のSP1の存在量は、iPS細胞、正常な分化細胞、及び癌化した細胞で異なっており、SP1の存在量を指標とすることにより、これらの細胞を識別可能であることが示唆された。
また、iPS細胞201B7株については、コロニーの中心部に位置する細胞における一細胞核当たりのSP1の平均蛍光強度と、辺縁部に位置する細胞における一細胞核当たりのSP1の平均蛍光強度とを分けて算出した。算出結果を図5に示す。この結果、コロニーの辺縁部に位置する細胞では、中心部に位置するiPS細胞よりも低く、IMR90細胞とほぼ同じ程度であった。
[実施例2]
実施例1において用いたiPS細胞201B7株、IMR90細胞、及びHeLa細胞に対して、抗coilin抗体を用いた免疫染色を行い、取得された染色画像に基づいて、各細胞の細胞核中のカハールボディの数量を測定し、比較した。
具体的には、一次抗体として、抗coilin抗体(mouse、BD Transduction Laboratories社製、カタログ番号:612074)を0.5%のBSA溶液で希釈した溶液を用い、二次抗体としてcy3標識抗mouse抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories社製、カタログ番号:115−165−164)を0.5%のBSA溶液で希釈した溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして各細胞を染色した後、DAPI染色画像及びcoilin標識画像(以下、「Cy3(coilin)染色画像」)を撮像し、解析を行った。
各細胞において、DAPI染色画像に基づいて細胞中の細胞核領域を決定した後、coilin標識画像中の対応する各細胞核領域内に存在するある一定以上の輝度値(蛍光強度)と面積をもった陽性領域(カハールボディ)を検出し、細胞核領域当たりに含まれるカハールボディの個数を算出した。なお、iPS細胞201B7株に関しては、コロニー中央に存在する細胞を対象に解析を行った。各細胞についてのカハールボディの個数を表1に示す。この結果、IMR90細胞の細胞核内には、カハールボディはほとんど存在していなかったが、HeLa細胞では2〜4個存在していた。これに対して、iPS細胞201B7株では、1細胞核当たりのカハールボディの平均個数は1個以下であり、IMR90細胞よりも若干多い傾向があるものの、HeLa細胞よりも少なかった。つまり、細胞核中のカハールボディの個数は、iPS細胞、正常な分化細胞、及び癌化した細胞で異なっており、カハールボディの個数を指標とすることにより、これらの細胞を識別可能であることが示唆された。
[実施例3]
実施例1において用いたiPS細胞201B7株、IMR90細胞、及びHeLa細胞に対して、抗ラミンA/C抗体を用いた免疫染色を行い、取得された染色画像に基づいて、各細胞の細胞核中のラミンA/Cの存在量を測定し、比較した。
具体的には、一次抗体として、抗ラミンA/C抗体636(mouse、Santa cruz biotechnology社製、カタログ番号:SC−7292)を0.5%のBSA溶液で希釈した溶液を用い、二次抗体としてAlexa488標識抗mouse抗体(Molecular Probes社製、カタログ番号:11029)を0.5%のBSA溶液で希釈した溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして各細胞を染色した後、DAPI染色画像及びラミンA/C標識画像(以下、「Alexa488(ラミンA/C)染色画像」)を撮像し、解析を行った。
各細胞におけるDAPI染色画像及びラミンA/C標識画像を図6に示す。この結果、IMR90細胞及びHeLa細胞では、ほぼ全ての細胞において、DAPIにより染色された領域の外周若しくはほぼ同一の領域が、ラミンA/Cにより染色されていた。これに対して、iPS細胞201B7株では、コロニーの辺縁部に位置する細胞では、IMR90細胞とラミンA/Cによって染色されたが、コロニーの中心付近の細胞はラミンA/Cによって染色されなかった。
各細胞において、DAPI染色画像に基づいて細胞中の細胞核領域を決定した後、ラミンA/C標識画像中の対応する各細胞核領域内に存在するある一定以上の輝度値(蛍光強度)をもった陽性領域を検出した。決定された陽性領域から、一の細胞核領域に含まれる全陽性領域に含まれる全画素の輝度値の総和を、細胞核領域の面積で除した平均値(細胞核当たりのラミンA/Cの平均蛍光強度)を算出した。なお、iPS細胞201B7株に関しては、コロニー中央に存在する細胞を対象に解析を行った。
さらに、図7に、各細胞における、一細胞核当たりのラミンA/Cの平均蛍光強度の算出結果を示す。この結果、IMR90細胞とHeLa細胞のラミンA/Cの平均蛍光強度はほぼ同一であったのに対して、iPS細胞201B7株ではラミンA/Cの平均蛍光強度は非常に小さく、ほとんどラミンA/Cは存在していなかった。つまり、細胞核中のラミンA/Cの存在量は、iPS細胞と、正常な分化細胞及び癌化した細胞とで異なっており、ラミンA/Cの存在量を指標とすることにより、iPS細胞を正常な分化細胞や癌化した細胞から識別可能であることが示唆された。
なお、iPS細胞201B7株を、抗SP1抗体と抗ラミンA/C抗体の両方で染色した場合には、コロニーの中心部には、SP1の発現が多くみられるがラミンA/Cはほとんど発現していない細胞が多く、コロニーの外周(辺縁部)には、SP1の発現量はコロニー中心部の細胞よりも少ないが、ラミンA/Cの発現が観察される細胞が多かった。
[実施例4]
実施例1において用いたiPS細胞201B7株、IMR90細胞、及びHeLa細胞に対して、抗hnRNPI抗体を用いた免疫染色を行い、取得された染色画像に基づいて、各細胞の細胞核中のhnRNPIの存在量及び傍核小体コンパートメントの数量を測定し、比較した。
具体的には、一次抗体として、抗hnRNPI抗体N−20(goat、Santa cruz biotechnology社製、カタログ番号:SC−16547)を0.5%のBSA溶液で希釈した溶液を用い、二次抗体としてAlexa488標識抗goat抗体(Molecular Probes社製、カタログ番号:11055)0.5%のBSA溶液で希釈した溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして各細胞を染色した後、DAPI染色画像及びhnRNPI標識画像(以下、「Alexa488(hnRNPI)染色画像」)を撮像し、解析を行った。
各細胞において、DAPI染色画像に基づいて細胞中の細胞核領域を決定した後、hnRNPI標識画像中の対応する各細胞核領域内に存在するある一定以上の輝度値(蛍光強度)をもった陽性領域を検出した。なお、iPS細胞201B7株に関しては、コロニー中央に存在する細胞を対象に解析を行った。この結果、iPS細胞201B7株はほとんど抗hnRNPI抗体では染色されず、細胞核内にhnRNPIはほとんど存在していなかった。また、HeLa細胞では、hnRNPI標識画像中のDAPIで染色された細胞核領域中に、1又は複数のはっきりとした粒形状の陽性領域が観察された。一方で、IMR90細胞は、DAPIで染色された細胞核領域が抗hnRNPI抗体によって薄く染色されていた。すなわち、陽性領域は細胞核領域とほぼ同一の領域であり、細胞核内にはっきりとした粒状形態としては認識できなかった。
各細胞に対して、一の細胞核領域中の全陽性領域に含まれる全画素の輝度値の総和を、細胞核領域の面積で除した平均値(細胞核当たりのhnRNPIの平均蛍光強度)を算出した。また、細胞核領域中に存在する抗hnRNPI抗体によって染色された粒状形態が傍核小体コンパートメントである。そこで、hnRNPI標識画像中の一の細胞核領域中に存在する傍核小体コンパートメント(粒状形態)の数を算出した。算出結果を図8、9及び表2に示す。この結果、iPS細胞201B7株は、hnRNPIの平均蛍光強度は非常に小さく、かつ傍核小体コンパートメントは検出されなかった。これに対して、IMR90細胞は、傍核小体コンパートメントは検出されず、かつhnRNPIの平均蛍光強度は、iPS細胞201B7株よりも大きいが、HeLa細胞よりも小さかった。つまり、細胞核中のhnRNPIの存在量や傍核小体コンパートメントの数量は、iPS細胞と、正常な分化細胞及び癌化した細胞とで異なっており、hnRNPIの存在量や傍核小体コンパートメントの数量を指標とすることにより、iPS細胞を正常な分化細胞や癌化した細胞から識別可能であることが示唆された。
[実施例5]
実施例1において用いたiPS細胞201B7株、IMR90細胞、及びHeLa細胞に対して、抗PML抗体を用いた免疫染色を行い、取得された染色画像に基づいて、各細胞の細胞核中のPMLボディの数量及び形状を測定し、比較した。
具体的には、一次抗体として、抗PML抗体PG−M3(mouse、Santa cruz biotechnology社製、カタログ番号:SC−966)を0.5%のBSA溶液で希釈した溶液を用い、二次抗体としてcy3標識抗mouse抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories社製、カタログ番号:115−165−164)を0.5%のBSA溶液で希釈した溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして各細胞を染色した後、DAPI染色画像及びPML標識画像(以下、「Alexa488(PML)染色画像」)を撮像し、解析を行った。
各細胞において、DAPI染色画像に基づいて細胞中の細胞核領域を決定した後、PML標識画像中の対応する各細胞核領域内に存在するある一定以上の輝度値(蛍光強度)をもった陽性領域(PMLボディ)を検出し、細胞核領域当たりに含まれるPMLボディの個数を算出した。なお、iPS細胞201B7株に関しては、コロニー中央に存在する細胞を対象に解析を行った。各細胞についてのPMLボディの個数を図10に示す。この結果、IMR90細胞の細胞核内には、平均2個程度のPMLボディが存在しており、IMR90細胞やHeLa細胞と比較して明らかに少なかった。また、IMR90細胞よりもHeLa細胞のほうが、一の細胞核内に存在するPMLボディの個数が多い傾向が観察された。
さらに、各細胞において、一細胞核当たりの線状形のPMLボディの数量を調べた。なお、PML標識画像中の陽性領域(PMLボディ)について、形状を示すパラメータのうち、Maxferet直径とエロンゲーションファクターをパラメータとして2次元スキャッタグラムで表示し、両ファクターが共陽性の領域に分布されたPMLボディが線状形である。各細胞について、一の細胞核当たりの、全PMLボディに対する線状形のPMLボディの占める割合を図11に示す。この結果、線状形のPMLボディは、IMR90細胞及びHeLa細胞では検出されず、iPS細胞201B7株でのみ検出された。
これらの結果から、細胞核中のPMLボディの数量や形状は、iPS細胞と、正常な分化細胞及び癌化した細胞とで異なっており、PMLボディの数量や形状を指標とすることにより、iPS細胞を正常な分化細胞や癌化した細胞から識別可能であることが示唆された。
本発明のiPS細胞の識別方法を用いることにより、iPS細胞と正常な分化細胞と癌化した細胞とを識別することができるため、主に再生医療分野において利用が可能である。
1…細胞画像解析装置1、2…光源、3…CCDカメラ、4…カメラコントローラ、5…ステージコントローラ、6…結像光学系、7…パーソナルコンピュータ、8…PCモニタ、9…キーボード、101…核、102…細胞質、103…細胞核領域。

Claims (8)

  1. 誘導多能性幹細胞を識別する方法であって、
    SP1(Specificity Protein 1)、カハールボディに含まれているタンパク質、核ラミナに含まれているタンパク質、傍核小体コンパートメントに含まれているタンパク質、及びPMLボディに含まれているタンパク質から選択される1種以上のマーカータンパク質の細胞核内の存在量、前記マーカータンパク質を含む構造体の細胞核内における数量、又は前記マーカータンパク質を含む構造体の細胞核内における形状を識別用指標とし、
    1種又は2種類以上の前記識別用指標に基づいて、被検細胞が、誘導多能性幹細胞、正常な分化細胞、又は癌化した細胞のいずれであるかを識別することを特徴とする誘導多能性幹細胞の識別方法。
  2. 前記識別用指標として、被検細胞の細胞核内におけるSP1の存在量を用いることを特徴とする請求項1に記載の誘導多能性幹細胞の識別方法。
  3. 2種類以上の前記識別用指標を組み合わせて用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の誘導多能性幹細胞の識別方法。
  4. (p1)SP1の細胞核内の存在量、及び核ラミナに含まれているタンパク質の細胞核内の存在量、
    (p2)SP1の細胞核内の存在量、及びカハールボディの細胞核内の数量、
    (p3)SP1の細胞核内の存在量、及び傍核小体コンパートメントに含まれているタンパク質の細胞核内の存在量、
    (p4)SP1の細胞核内の存在量、及び傍核小体コンパートメントの細胞核内の数量、
    (p5)SP1の細胞核内の存在量、及びPMLボディの細胞核内の数量、
    (p6)SP1の細胞核内の存在量、及び線状形のPMLボディの細胞核内の数量、
    (p7)カハールボディの細胞核内の数量、及び核ラミナに含まれているタンパク質の細胞核内の存在量、
    (p8)カハールボディの細胞核内の数量、及び傍核小体コンパートメントに含まれているタンパク質の細胞核内の存在量、
    (p9)カハールボディの細胞核内の数量、及び傍核小体コンパートメントの細胞核内の数量、
    (p10)カハールボディの細胞核内の数量、及びPMLボディの細胞核内の数量、
    (p11)カハールボディの細胞核内の数量、及び線状形のPMLボディの細胞核内の数量、
    (p12)核ラミナに含まれているタンパク質の細胞核内の存在量、及び傍核小体コンパートメントに含まれているタンパク質の細胞核内の存在量、
    (p13)核ラミナに含まれているタンパク質の細胞核内の存在量、及び傍核小体コンパートメントの細胞核内の数量、
    (p14)核ラミナに含まれているタンパク質の細胞核内の存在量、及びPMLボディの細胞核内の数量、
    (p15)核ラミナに含まれているタンパク質の細胞核内の存在量、及び線状形のPMLボディの細胞核内の数量、
    (p16)傍核小体コンパートメントに含まれているタンパク質の細胞核内の存在量、及び傍核小体コンパートメントの細胞核内の数量、
    (p17)傍核小体コンパートメントに含まれているタンパク質の細胞核内の存在量、及びPMLボディの細胞核内の数量、
    (p18)傍核小体コンパートメントに含まれているタンパク質の細胞核内の存在量、及び線状形のPMLボディの細胞核内の数量、又は
    (p19)PMLボディの細胞核内の数量、及び線状形のPMLボディの細胞核内の数量、
    を識別用指標として用いることを特徴とする請求項3に記載の誘導多能性幹細胞の識別方法。
  5. 前記カハールボディに含まれているタンパク質がcoilinであり、前記核ラミナに含まれているタンパク質がラミンA及び/又はラミンCであり、前記傍核小体コンパートメントに含まれているタンパク質がhnRNPIであり、前記PMLボディに含まれているタンパク質がPMLであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の誘導多能性幹細胞の識別方法。
  6. 前記被検細胞が、誘導多能性幹細胞へ誘導するための初期化処理が行われた細胞であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の誘導多能性幹細胞の識別方法。
  7. 前記被検細胞が、誘導多能性幹細胞へ誘導するための初期化処理が行われた細胞群が形成するコロニーのうち、辺縁部以外に存在する細胞であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の誘導多能性幹細胞の識別方法。
  8. 被検細胞中の前記マーカータンパク質の細胞核内の存在量、又は当該マーカータンパク質を含む構造体の細胞核内における数量若しくは形状は、
    (a)被検細胞の細胞核内の前記マーカータンパク質及び核酸をそれぞれ標識する工程と、
    (b)前記工程(a)の後、前記被検細胞から、核酸の標識画像を取得する工程と、
    (c)前記工程(a)の後、前記被検細胞から、前記マーカータンパク質の標識画像を、標識されたマーカータンパク質の種類ごとに別個に取得する工程と、
    (d)前記工程(b)において取得された核酸の標識画像に基づいて、細胞核領域を決定する工程と、
    (e)前記工程(c)において取得された前記マーカータンパク質の標識画像中の、前記工程(d)において決定された細胞核領域に含まれる各画素の輝度値を測定し、1画素当たりの輝度値が閾値以上である1又は複数の陽性領域を決定し、全陽性領域に含まれる各画素の輝度値の統計値、並びに、各陽性領域の数、MAxフェレット直径、及びエロンゲーションファクターからなる群より選択される1以上を測定する工程と、
    により得られた値に基づいて決定されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の誘導多能性幹細胞の識別方法。
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