JP2012221896A - 画像表示装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】放電による電子放出素子や駆動回路の動作特性の変動に繋がるような損傷を抑制して、均一な表示特性を維持した信頼性の高い画像表示装置を提供する。
【解決手段】画像表示装置は、カソードプレートの画像表示領域の外の周辺部に、前記カソードプレートを貫通してアノードに電気的に接続されたアノード端子と、前記アノード端子から距離をおいて前記カソードプレートの真空外囲器内部側の表面に設けられたガード電極と、前記画像表示領域の最外側の行方向配線または列方向配線と前記ガード電極との間に前記最外側の行方向配線または列方向配線と平行して設けられ、電位規定部と接続された電位固定電極と、を備えており、前記電位固定電極は、前記最外側の行方向配線または列方向配線よりも高いインダクタンス値を有する。
【選択図】図2

Description

本発明は、FEDなどの電子放出素子から放出された電子を発光体に衝突させて発光させるフラットパネルディスプレイであって、高電圧を印加する画像表示装置に関する。
特許文献1には、陰極基板、蛍光体基板、及び封止枠とで真空容器を構成してなる画像表示装置において、陰極基板上の表示領域の最外側に、低インピーダンスで一定電位の電極に接続された電位固定電極を有する構成が開示されている。より詳細には、陰極基板は、絶縁層を介して交差する信号線と走査線の交差部に薄膜型電子源を有し、該電子源が表示領域内にマトリクス状に配列されている。そして、このような基板において、電位固定電極が表示領域の最外側の信号線又は走査線に隣接して配置されている。こうすることで、予期しない帯電や放電による電荷注入は電位固定電極に吸収され、表示のための電子源が破壊から保護されると記載している。また、電位固定電極が信号線又は走査線と同様の配線であり、信号線又は走査線と交差する部分に絶縁層が介在されていることが開示されている。
特許文献2には、前面板、背面板、支持枠及び高圧引出配線からなる画像表示装置において、背面板の高圧引出配線と最端側の配線との間に接地電極が配置されている構成が開示されている。詳細には、高圧引出配線は、背面板の端部を貫通して引き出され、前面板に高電圧を印加している。背面板は、複数の電子源及び陰極配線を片面に有しており、最端側の陰極配線と高圧引出配線との間に接地電極が配置されている構成が開示されている。こうすることで、高圧引出配線近傍の放電を抑制できると記載している。
特開2006−253026号公報 特開2008−305739号公報
特許文献1に記載されている画像表示装置は、信頼性向上の観点から、放電による電子源破壊防止に関して次のような課題がある。すなわち、放電が発生して放電電流が電位固定電極に流れたときに、隣接する表示領域の特に最外側の信号配線又は走査配線に誘導起電力が発生して、電子源や駆動回路に誘導電流が流れる場合がある。
特許文献2に記載されている画像表示装置は、信頼性向上の観点から、放電による電子源損傷防止に関して次のような課題がある。すなわち、万が一、高圧引出配線と接地電極の間で放電したときに、接地電極に放電電流が流れ、隣接する最端側の陰極配線に誘導起電力が発生して、電子源や駆動回路に誘導電流が流れる場合がある。
上記のような誘導電流が駆動回路や電子放出素子の動作上の過電流を超える場合には、駆動回路や電子放出素子の動作特性が変動したり、不可逆的な動作不良状態を招いたりする。これらは、画像表示エリア内の表示特性ムラとして表示の不均一性に繋がるため好ましくない。
本発明の目的は、上記課題を解決し、放電による電子放出素子や駆動回路の動作特性変動を抑制して、高信頼性の画像表示装置を提供することにある。
本発明は、行方向配線、前記行方向配線と絶縁層を介して配置された列方向配線、および前記配線の交差部に配置された電子放出素子を有し、前記電子放出素子が画像表示領域内にマトリクス状に配列されたカソードプレートと、前記画像表示領域に発光体とアノードとを有するアノードプレートと、前記カソードプレートと前記アノードプレートの間に配置された枠部材、とで構成される真空外囲器を有する画像表示装置であって、
前記カソードプレートの前記画像表示領域の外の周辺部に、
前記カソードプレートを貫通して前記アノードに電気的に接続されたアノード端子と、
前記アノード端子から距離をおいて前記カソードプレートの真空外囲器内部側の表面に設けられたガード電極と、
前記画像表示領域の最外側の行方向配線または列方向配線と前記ガード電極との間に前記最外側の行方向配線または列方向配線と平行して設けられ、電位規定部と接続された電位固定電極と、
を備えており、
前記電位固定電極は、前記最外側の行方向配線または列方向配線よりも高いインダクタンス値を有する、ことを特徴とする。
本発明は、放電による電子放出素子や駆動回路の動作特性の変動を抑制した信頼性の高い画像表示装置を提供することができる。
実施例1の画像表示装置の一部を切り書いて表現した斜視図。 実施例1に係る表示パネル角部の平面図模式図と断面模式図。 比較例に係る表示パネル角部の平面図模式図と断面模式図。 実施例2に係る表示パネル角部の平面図模式図である。 実施例3に係る表示パネル角部の平面図模式図である。 実施例4に係る表示パネル角部の平面図模式図である。 実施例5に係る表示パネル角部の平面図模式図である。
以下、本発明の実施の形態について図1〜図7を用いて説明する。まず、本発明の画像表示装置の一例を、図1、図2を用いて説明する。図1は画像表示装置を模式化した斜視図(表示パネルの一部を切り欠いて表現している)である。図2Aは、画像表示装置の特徴的な部分の構成を示す模式図であり、図1の破線円で囲んだ部分を拡大したX−Y平面模式図である。図2Bは、図2AのA−A’で示した部分の断面模式図である。なお、図1、図2において、同じ部材、または同じ機能を有する部材には、共通の符号を示してある。
画像表示装置は、表示パネル1と、アノード電位規定手段16と、ガード電位規定手段20と、固定電位規定手段22と、駆動回路と、を少なくとも備える。
表示パネル1について説明する。表示パネル1は、カソードプレート2と、これと対向して配置されたアノードプレート3と、枠部材4とで構成される真空外囲器である。以下において、真空外囲器内部のことを真空内・真空側などのように用語「真空」を使って表記し、真空外囲器外部のことを大気中・大気側などのように用語「大気」を使って表記する。
カソードプレート2は、絶縁性の基板である第1基板5と、第1基板5の真空側表面上
に設けられた電子放出素子6と、Y方向に沿って延びる列方向配線7と、X方向に沿って延びる行方向配線8とを少なくとも備える。第1基板5は、少なくとも表面が絶縁性を有していればよく、ガラス基板、或いは基板の上に絶縁層を設けたものを好ましく用いることができる。
本明細書中において、「絶縁性」を有する部材は、「導電性」を有する部材よりも体積抵抗率が大きい部材として定義される。「絶縁性」を有する部材は、実用的には、その体積抵抗率が10Ωm以上の材料、即ち絶縁体からなる部材を用いることが好ましい。また、「導電性」を有する部材は、その体積抵抗率が10−3Ωm以下である材料からなる部材を用いることが好ましく、体積抵抗率が10−5Ωm以下である材料、即ち導電体からなる部材を用いることがより好ましい。なお、「配線」、「電極」、「端子」は導電性を有する部材である。また、これ以下、「電位」は、接地電位を基準電位(0V)とした値として説明する。
電子放出素子6は、少なくともカソードを備え、必要に応じてカソードからの電子放出を制御するゲートを備える。電子放出素子6は、典型的にはマトリクス状に多数、例えば100万個以上配列される。
電子放出素子6は、列方向配線7および行方向配線8に接続される。列方向配線7および行方向配線8は、それぞれ第1基板5の縁に向かって延びており、大気側に引き出されている。列方向配線7と行方向配線8は不図示の絶縁層を介して交差し、電子放出素子6の数に応じて、必要数が画像表示領域内にマトリクス状に配列される。ここでは例示的に、第1基板5の上に、列方向配線7、絶縁層、行方向配線8の順で積層されたものとして示した。
駆動回路は、電子放出素子6を駆動する、即ち、電子放出素子6から電子を放出させるための回路であって、少なくともカソード電位規定手段9を含み、必要に応じてゲート電位規定手段10を含む電気回路である。図2Aに示すように、電子放出素子6のカソードと接続された行方向配線8は、真空外囲器外部にてカソード電位規定手段9と接続され、カソード電位Vcに規定される。電子放出素子6のゲートと接続された列方向配線7は、真空外囲器外部にてゲート電位規定手段10と接続され、ゲート電位Vgに規定される。ゲート電位Vgは、カソード電位Vcよりも高電位である。電子放出素子6からは、VcとVgの電位差(駆動電圧)Vdに応じて電子が放出される。駆動電圧Vdは、典型的には、100V以下である。例えば、接地電位に対してVcを負電位に、Vgを正電位にすることにより所望の駆動電圧Vdを得ることができる。
アノードプレート3は、透明な、つまり光に対して透過性のある絶縁性の基板である第2基板11と、第2基板11の真空側表面上に設けられたアノード12とを少なくとも備える。
アノード12は、膜状、層状、或いは板状の導電性の部材である。アノード12の一例は、メタルバックと呼ばれる金属薄膜である。メタルバックの金属にはアルミニウムを好適に用いることができる。また、アノード12としてITOやZnO等の透明な導電性材料を用いることもできる。
アノードプレート3はさらに、第2基板11の真空側表面上に蛍光体や燐光体等の発光体13を備える。アノード12としてメタルバックを用いる場合には、発光体13は、メタルバックと第2基板11との間に設けられる。アノード12として透明な導電性材料を用いる場合には、アノード12を第2基板11と発光体13との間に設けることもできる。
以上のように、表示パネル1は、アノードプレート3のアノード12および発光体13が、カソードプレート2の電子放出素子6と離れて対向する構造である。この構造により、表示領域を形成することができる。表示領域とは、アノードプレート3においては、発光体13が設けられる領域であり、カソードプレート2においては、電子放出素子6が設けられる領域である。換言すれば、電子放出素子6と発光体13とが対向する領域が表示領域である。
アノード端子14は、第1基板5の貫通孔15を貫通して、真空外囲器内部にてアノード12と電気的に接続されている。アノード端子14は、真空外囲器外部にてアノード電位規定手段16と接続され、アノード電位Vaに規定される。アノード電位Vaは、カソード電位Vcよりも高電位であり、ゲート電位Vgよりも高電位である。
なお、本明細書において、「電気的に接続される」とは、直接、或いは導電性の部材を介して、互いに機械的に接続されることによって、導通していることを指す。なお、「機械的に接続される」とは、接着、接合、当接、接触を含む。
図1の破線円で囲んだ部分について詳しく説明する。破線円で囲んだ部分は、表示領域の外側に設けられ、図1や図2Aに示したように、表示パネル1の角部近傍に設けられる。
アノード端子14は典型的には、金属ピンあるいは金属バネ等の導電性の部材であるがその形状は特に限定されない。図2Bに示すように、アノード端子14は、第1基板5を貫通して設けられる。図1においてはアノード端子14を一体物として描いているが、電気機能的に一体であれば構造上は組合せ物でも構わない。アノード端子14は接着剤17によって第1基板5に固定される。接着剤17は貫通孔15を完全に塞ぎ、真空封止の役
割も兼ねる。接着剤17はガラスフリットが適用できる。
貫通孔15の真空側開口および大気側開口の周辺には、アノード補助電極を設けることもできる。図2Aおよび図2Bには真空側のアノード補助電極18のみ示した。アノード補助電極18を設けた場合、アノード端子14とアノード補助電極18は電気的に接続させる。よって、接着剤17は導電性のものが好ましく、導電性ガラスフリット等が適用できる。
アノード12は、アノード端子14と電気的に接続され、アノード電位Vaまたは、アノード電位Vaと同等の電位に規定される。電子放出素子6から放出された電子は、アノード電位Vaによって加速され、発光体13に衝突する。このように、本実施形態の画像表示装置は、電子放出素子6から放出された電子を、アノード12によって形成される電界で加速する電子線装置である。
発光体13は電子の衝突により発光する。発光体13を発光させるために必要な、実用的なアノード電位Vaは、1kV以上100kV以下、好ましくは5kV以上30kV以下、より好ましくは10kV以上25kV以下の範囲である。
図2Aおよび図2Bに示すように、第1基板5の真空外囲器内部側の表面であって画像表示領域の外の周辺部に、ガード電極19が設けられている。ガード電極19は、アノード端子14(以下アノード端子14はアノード補助電極18を含むものとする)と距離をおいて環状に囲むように設けられ、一部より真空外囲器外部まで引き出されている。ガード電極19は真空外囲器外部のガード電位規定手段20に接続され、ガード電位Vrに規定される。ガード電位Vrはアノード電位Vaよりも低い電位である。ガード電位Vrは
、すくなくともゲート電位Vgよりも小さいことが好ましく、接地電位であることがより好ましい。従って、ガード電極19は、アノード端子14によって生じる電界を遮蔽し、電界が電子放出素子6や列方向配線7および行方向配線8等の部材に与える影響を低減する機能を有する。
ガード電極19は、体積抵抗率が10−3Ωm以下である材料を用いることができ、体積抵抗率が10−5Ωm以下である材料(導電体)を用いることが好ましい。ガード電極19の好適な材料としては、Cu、Ag、Au、Al、Ti、Ptなどの金属、或いはこれらの金属を含む合金、ITO、ZnO等の化合物を用いることができる。ガード電極19の形成方法としては、予めガード電極19の形状の部品を用意して、当該部材を第1基板5の真空側表面上に配置することによって形成することができる。しかしながら、アノード12との放電を抑制するためにガード電極19の厚みは薄いことが好ましく、実用的には100μm以下の厚さである。そのため、真空成膜法、印刷法、メッキ法等の公知の方法によって形成することができる。特に、第1基板5の真空側表面上に設けられる列方向配線7や行方向配線8の材料と同じ材料を用いると、列方向配線7または行方向配線8と同じ工程でガード電極19を形成できるので、作製の容易性の観点で好ましい。
ガード電極19の内周形状は多角形でもよいし、円、楕円等でもよい。特に、円形が好ましい。なお、本明細書における「円形」とは「円」だけでなく、「ほぼ円とみなせる形状」を含む。「円形」とは、その幾何学的中心(または幾何学的重心)から周までの距離の最小値と最大値との比が、0.95以上であることとする。また、ガード電極19の内
周にアノード端子14側に向かって先鋭な形状の部分があると、その部分に電界が集中しやすいので、内縁はできるだけ滑らかな曲線または曲面であることが好ましい。
図2Aおよび図2Bに示すように、第1基板5の真空外囲器内部側の表面であって、ガード電極19と画像表示領域最外側の行方向配線または列方向配線との間に、電位固定電極21が設けられている。電位固定電極21は、表示領域の最外側の列方向配線または行方向配線とガード電極19との間に位置し、例えば列方向配線7と平行に配置される。電位固定電極21は、列方向配線7や行方向配線8と同様に、それぞれ第1基板5の縁に向かって延びており、大気側に引き出されている。また、電位固定電極21は、不図示の絶縁層を介して、列方向配線7や行方向配線8と交差して配置されるが、電子放出素子6とは接続されず、電子放出素子6の駆動には寄与しない。図2Aでは例示的に、第1基板5の上に、電位固定電極21、絶縁層、行方向配線8の順で積層されたものとして示した。
電位固定電極21の幅や厚みなどの形状については、特に制約はなく、作製の容易性などの観点から、形状を適宜選択することができる。図2Aでは例示的に、電位固定電極21の幅は、列方向配線7と同じものとして示した。また、材料については、導電性を有する部材であって、電位固定電極21の電位を一様に規定できれば良く、作成の容易性などの観点から、材料を適宜選択することができる。そのため、真空成膜法、印刷法、メッキ法等の公知の方法によって形成することができる。特に、列方向配線7や行方向配線8の材料と同じ材料を用いて、同じ工程によって電位固定電極21を形成することが、作製の容易性の観点で好ましい。
電位固定電極21は、真空外囲器外部で固定電位規定手段22と接続され、固定電位Vsに規定される。固定電位Vsはアノード電位Vaよりも低い電位である。固定電位Vsは、すくなくともゲート電位Vgよりも小さいことが好ましく、接地電位であることがより好ましい。また、電位固定電極21は、2箇所以上で固定電位規定手段22に接続してもよい。例えば、図2Aに示している第1基板5の縁と反対側の縁に対しても電位固定電極21を延長させ、大気側に引き出して固定電位規定手段22と接続することができる。
また、電位固定電極21は、隣接する列方向配線や行方向配線よりも高インダクタンスである。ここで、放電対策という観点からは、電位固定電極21は全体として、隣接する列方向配線や行方向配線よりも高インダクタンスであればよい。しかし、表示特性を考慮すると、表示領域最外側の電子放出素子6周囲の電界が均一となるように、電子放出素子6周囲では列方向配線や行方向配線と同一の形状及び材料を用いることが好ましい。そこで、電位固定電極21は、電子放出素子6と隣接する部分である中央部21aと、中央部21aと固定電位規定手段22とを接続する接続部21bとから構成し、接続部21bの形状又は材質を変えることで電位固定電極21を高インダクタンスとする。採用可能な接続部21bの形状の例は、幅が中央部21aの幅よりも狭い狭幅部、厚みが中央部21aの厚みよりも薄い薄厚部、長さが中央部21aと固定電位規定手段22と接続させる最短距離よりも長い長線路部、またはこれらの組合せである。また、接続部21bは電位固定電極21の一部であるが、この部分のみ別の部材で構成して中央部21aよりも高インダクタンスとしてもかまわない。図2Aでは例示的に、接続部21bが、電位固定電極21の中央部21aの幅よりも幅の狭い場合を示した。
なお、表示特性の観点から列方向配線や行方向配線の周囲では、電位固定電極21と列方向配線や行方向配線と同一形状であることが好ましいが、行方向配線や列方向配線との交差部においては形状等が異なっても表示特性に与える影響は少ない。したがって、行方向配線や列方向配線との交差部において、電位固定電極21の幅を狭くしたり、厚みを薄くしたり、長さを長くすることで電位固定電極21全体のインダクタンスを大きくしてもかまわない。もちろん、配線との交差部と接続部21bの両方を用いてインダクタンスを大きくしてもかまわない。
ここで、電位固定電極の効果について、図2Aを用いて説明する。万が一、アノード端子14とガード電極19間で沿面放電が発生した場合、ガード電極19に放電電流が流れる。この放電電流はnsecオーダと、非常に短時間に流れるもので高周波電流である。その際、ガード電極19と隣接する電位固定電極21との結合により、電位固定電極21に誘導起電力が発生し、電位固定電極21のインピーダンスにより、誘導電流が電位固定電極21に流れる。このとき、電位固定電極21と画像表示領域の最外側の列方向配線7との結合により、列方向配線7に誘導起電力が発生し、列方向配線7に誘導電流が流れる。この誘導起電力や誘導電流は、電位固定電極21が配置されていない場合に、列方向配線7に生じる誘導起電力や誘導電流よりも小さくなる。従って、電位固定電極21は、電子放出素子6やカソード電位規定手段9を含む駆動回路に与える影響を低減する機能を有する。
さらに、電位固定電極21を高インダクタンスにすることにより、電位固定電極21自体に流れる誘導電流を低減することができる。これは、放電電流は高周波電流であるため、電位固定電極21のインピーダンスとしては、インダクタンス成分の電流制限効果が大きくなるためである。よって、電位固定電極21の一部にインダクタンス値が高い高インダクタンス部を配置することが好ましい。この高インダクタンス部は、上述のように、他の箇所よりも電極幅の狭い狭幅部や厚さの薄い薄厚部、最短経路よりも長い長線路部である。これにより、列方向配線7に生じる誘導起電力と誘導電流をさらに低減することができる。なお、この高インダクタンス部を、表示領域と隣接しない部分や、表示領域と隣接するが行方向配線と列方向配線と交差する部分に設けることで、誘導電流の低減効果とともに、電子放出素子周囲の電場を均一化するという効果も同時に達成できる。
表示パネル1について、さらに説明する。表示パネル1の真空外囲器内部の圧力は、1×10−5Pa以下が好ましい。また、カソードプレート2とアノードプレート3との間に、両者の間隔を規定するためのスペーサ(不図示)を設けてもよい。
電子放出素子6は、スピント型、表面伝導型、MIM型、MIS型などの電界放出素子を用いることができ、その種類は特に限定されない。ここまで説明したマトリクス配線では、例示的に、列方向配線7は電子放出素子6のゲートと接続され、行方向配線8は電子放出素子6のカソードと接続されるものとして説明した。しかしながら、列方向配線7が電子放出素子6のカソードと接続され、行方向配線8が電子放出素子6のゲートと接続されていてもよい。また、列方向配線7の幅が行方向配線8の幅よりも小さい形態を示したが、列方向配線7の幅が行方向配線8の幅よりも大きくてもよいし、列方向配線7と行方向配線8の幅が同じであってもよい。
アノードプレート3には別の電位規定電極(不図示)を設けても良い。該電位規定電極は、第2基板11の真空外囲器内部表面上に、アノード12から離れて、アノード12の外縁を囲むように設けられる。該電位規定電極は、接地電位に規定されることが好ましく、該電位規定電極より外側領域を略設置電位に規定するために設けられる。
表示パネル1では、複数の電子放出素子6の各々と、対向する位置に配置された発光体13とで、1つのピクセル又はサブピクセルを構成することができる。フルカラー表示を行う場合は、各々が赤、緑、青の発光色を呈するサブピクセルが並べられて、1つのピクセルを構成することができる。発光体13として、それぞれが、赤、緑、青の発光色を呈する3種類の発光体を用いれば、フルカラー表示が可能である。また、第2基板11の真空内側表面上に、サブピクセル及びピクセルを画定するブラックマトリクスを備えることができる。また、発光体13と第2基板11との間に、カラーフィルターを設けることもできる。
次に、表示装置の詳細について説明する。上述したように、表示装置は、表示パネル1と、アノード電位規定手段16と、ガード電位規定手段20と、固定電位規定手段22と、電子放出素子6を駆動するための駆動回路と、を少なくとも備えている。
図1に示したように、アノード電位規定手段16は真空外囲器外部で、表示パネル1のアノード端子14と電気的に接続されている。アノード電位規定手段16は、接地電位に対してアノード電位Vaを規定するための手段である。アノード電位規定手段16は、具体的には、アノード電位Vaを発生可能な電気回路(電源回路)である。典型的には、家庭用交流電源(例えば100V)から、アノード電位Vaを生成可能な、変圧器や整流器を含む。
図2Aに示したように、ガード電位規定手段20は真空外囲器外部でガード電極19と電気的に接続され、固定電位規定手段22は真空外囲器外部で電位固定電極21と電気的に接続されている。ガード電位規定手段20と固定電位規定手段22は、アノード電位Vaよりも小さい電位Vrと電位Vsを生成可能な電気回路(電圧源)を用いることができる。しかし、ガード電位規定手段20や固定電位規定手段22として、電気回路を用いた場合には、万が一放電が生じた場合に、電気回路の動作特性が変動するような損傷が生じる可能性が有る。そこで、ガード電位規定手段20と固定電位規定手段22として、接地電極を用いることが好ましい。この場合、所定電位VrとVsは接地電位(GND電位、基準電位、0V)となる。
駆動回路は電子放出素子6を駆動する(電子を放出させる)ための回路であって、少なくともカソード電位規定手段9を含み、必要に応じてゲート電位規定手段10を含む電気回路である。
[実施例1]
以下、具体的な実施例を挙げて本発明を詳しく説明する。本実施例では、図1に示す構
成の表示パネルを製造した。
まず、第1基板5としてガラス基板を用意した。ガラス基板5の角部近傍に直径2mmの貫通孔15を設けた。ガラス基板5上に、公知の方法により複数の表面伝導型電子放出素子6を形成した。貫通孔15に対して、最近接の電子放出素子6(=表示領域の端)は45°の方向(+X方向を0°、+Y方向を90°としている)に配置した。
ガラス基板5の上に、スパッタ法により厚さ3μmのCu膜を堆積させた。次に、フォトリソグラフィー工程でポジ型フォトレジスト(TSMR−8900/東京応化社製)をスリットコーティングした。引き続き、フォトマスクパターンでフォトレジストを露光して、現像した後、エッチャントとしてSEA−1(関東科学社製)を用いてウェットエッチングし、幅50μm、配線間隔200μmの列方向配線7を形成した。この列方向配線形成時に、同時に、電位固定電極21を画像表示領域の最外側の列方向配線7と平行方向に配置した。電位固定電極21と列方向配線7の間隔は、列方向配線間隔と同じ200μmとした。また、電位固定電極21は、列方向配線7と同じ電極幅で形成したが、Y方向の画像表示領域の下端位置より、固定電位規定手段22に至る部分において、電極幅を40μmと狭くしている。
絶縁性ペーストを用いたスクリーン印刷法、Agペーストを用いたスクリーン印刷法によって、層間絶縁層(不図示)、行方向配線8を形成した。行方向配線8は幅300μmと厚さ20μm、配線間隔は600μmで形成した。
Agペーストを用いたスクリーン印刷法によって、貫通孔15を囲むようにして、直径6mmのアノード補助電極18と、内径が12mm、外径が14mmの環状のガード電極19を、同心円状に、厚さが10μmで形成した。また、ガード電極19は環状の部分のほかに2箇所より第1基板5の端部に向かう引出し部分を設けた。列方向配線7とガード電極19の最近接距離は1mm、行方向配線8とガード電極19の最近接距離も1mmとした。
このようにして、ガラス基板5の上に表面伝導型電子放出素子6と、マトリクス配線(列方向配線7および行方向配線8)と、ガード電極19と、電位固定電極21とを備えたカソードプレート2を作製した。
その後、貫通孔15に直径1mmのアノード端子14を挿入した。アノード端子14の材料としては、機械的な強度の観点から基板(ガラス)と熱膨張係数が近いことが望ましいため、426合金(Ni42%、Cr6%、残りFe)を用いた。アノード端子14は、ガラス基板5のマトリクス配線(列方向配線7および行方向配線8)を設けた面において、導電性の接着剤17を用いてガラス基板5上にアノード補助電極18と電気的に接続される様に固定した。また、接着剤17によって貫通孔15を塞いだ。接着剤17は、アノード補助電極18からはみださないように設けた。
第2基板11として、透明なガラス基板を用意した。発光体13が配置される開口を有する導電性の黒色部材(ブラックマトリクス)をガラス基板11上に形成した。導電性の黒色部材の材料としては、感光性カーボンブラックを使用し、10μmの厚さとした。感光性カーボンブラックに開口を設けるように露光、パターニングし、導電性の黒色部材の開口部分に、発光体13としてR、G、B各色の蛍光体を充填した。スクリーン印刷法により、R・G・Bの三色の蛍光体それぞれを導電性の黒色部材の開口内に厚さ10μmになるように形成した。アノード12として、アルミニウム膜を蒸着法により導電性の黒色部材および蛍光体の上の全面に100nm堆積させた。
以上のように、ガラス基板11の上にブラックマトリクスとアノード12と発光体13とを備えるアノードプレート3を作製した。
次に、カソードプレート2とアノードプレート3との間隔を規定する枠部材4を用意した。枠部材4によって、外周部のカソードプレート2とアノードプレート3との間隔を1.6mmに規定し、接着した。接着部分は低融点金属を用いて気密に封着した。
このようにして作製した真空外囲器の内部を、真空外囲器に別途設けた排気孔から排気したのち、排気孔を封止して、真空外囲器内部が真空を保持するようにして表示パネル1を得た。表示パネル1のアノード端子14に、10kV以上の電圧を発生することができる電源を接続した。
ここで、表示パネル1にArガス流入系とスクロールポンプを備えた真空排気系、真空計を用いて、放電による表示欠陥の抑制効果を検証した。列方向配線7、行方向配線8、ガード電極19および電位固定電極21を接地して、アノード端子14に12kVの印加を試みた。このとき、表示パネル1にArガスを流入させ、真空外囲器内部の圧力を1×10−1Paとした。10パネルほど試したところ、全てのパネルが放電した。その後、真空排気系により、真空外囲器内部の圧力を1×10−5Paとし、電子放出素子6を駆動して蛍光体を発光させたところ、何れのパネルにおいても、表示欠陥は確認されず、良好な表示が得られた。
また、表示確認後に、パネルを分解してガード電極19に近接するゲート電位規定手段10を含む駆動回路や電子放出素子6を光学顕微鏡とSEMにて確認したところ、動作特性の変動に繋がるような損傷は確認されなかった。
[比較例]
比較例について、図3A,図3Bを用いて説明する。図3Aは、図2Aと同様に、X−Y平面模式図である。図3Bは、図2Bと同様に、図3AのA−A’で示した部分の断面図である。図3に用いた部番は同じ機能において図1と同じである。比較例が実施例1と異なる主な点は、電位固定電極21’が平行する列方向配線7と同じ形状をしており、高インダクタンス部が設けられていない点である。
実施例1と同様に、10パネルほど真空外囲器内部の圧力を1×10−1Paとし、12kVを印加して放電させ、その後、真空外囲器内部の圧力を1×10−5Paとし、電子放出素子6を駆動して蛍光体を発光させたところ、すべてのパネルにおいて表示欠陥が確認された。
また、表示確認後に、パネルを分解してガード電極19に近接するゲート電位規定手段10を含む駆動回路や電子放出素子6を光学顕微鏡とSEMにて確認したところ破壊は確認されなかった。しかし、電子放出特性を測定したところ、電子放出特性がシフトしたことが確認された。
[実施例2]
実施例2について、図4を用いて説明する。図4は図2Aと同様に、X−Y平面模式図である。図4において、図1と同じまたは同様の機能を有する部材については、共通の符号を付している。実施例3が実施例1と異なる主な点は、電位固定電極21が、アノード端子が配置されている第1の基板5のY方向における反対側の基板端でも、固定電位規定手段23に接続されている点である。
反対側の基板端においても、Y方向の画像表示領域の上端位置より、固定電位規定手段
23に至る部分において、電極幅を40μmと狭くしている。
実施例1と同様に、10パネルほど真空外囲器内部の圧力を1×10−1Paとし、12kVを印加して放電させ、その後、真空外囲器内部の圧力を1×10−5Paとし、電子放出素子6を駆動して蛍光体を発光させた。本実施例においても実施例1と遜色のない結果が得られた。
[実施例3]
実施例3について、図5を用いて説明する。図5は図2Aと同様に、X−Y平面模式図である。図5において、図1と同じまたは同様の機能を有する部材については、共通の符号を付している。実施例3が実施例1と異なる主な点は、電位固定電極21の接続部21b(Y方向の画像表示領域の下端位置から固定電位規定手段22に至る部分)において、電極厚を1μmと狭くしている(図中、ハッチング部)点である。
実施例1と同様に、10パネルほど真空外囲器内部の圧力を1×10−1Paとし、12kVを印加して放電させ、その後、真空外囲器内部の圧力を1×10−5Paとし、電子放出素子6を駆動して蛍光体を発光させた。本実施例においても、実施例1と遜色のない結果が得られた。
[実施例4]
実施例4について、図6を用いて説明する。図6は図2Aと同様に、X−Y平面模式図である。図6において、図1と同じまたは同様の機能を有する部材については、共通の符号を付している。実施例4が実施例1と異なる主な点は、電位固定電極21の接続部21b(Y方向の画像表示領域の下端位置から固定電位規定手段22に至る部分)において、蛇行パターンによる長線路部が配置されている点である。
実施例1と同様に、10パネルほど真空外囲器内部の圧力を1×10−1Paとし、12kVを印加して放電させ、その後、真空外囲器内部の圧力を1×10−5Paとし、電子放出素子6を駆動して蛍光体を発光させた。本実施例においても、実施例1と遜色のない結果が得られた。
[実施例5]
実施例5について、図7を用いて説明する。図7は図2Aと同様に、X−Y平面模式図である。図7において、図1と同じまたは同様の機能を有する部材については、共通の符号を付している。実施例6が実施例1と異なる主な点は、電位固定電極24をさらに、画像表示領域の最外側の行方向配線8と平行方向に配置した点である。電位固定電極24は、Agペーストを用いたスクリーン印刷法によって形成し、行方向配線8形成時に同時に形成した。電位固定電極24と行方向配線8の間隔は、行方向配線間隔と同じ600μmとした。また、電位固定電極24の画像表示領域と隣接する部分(中央部)は、行方向配線8と同じ電極幅で形成したが、行方向の画像表示領域端位置から固定電位規定手段25に至る部分(接続部)において、電極幅を200μmと狭くしている。行方向配線8とガード電極19の距離は、実施例1と同じとした。
実施例1と同様に、10パネルほど真空外囲器内部の圧力を1×10−1Paとし、12kVを印加して放電させ、その後、真空外囲器内部の圧力を1×10−5Paとし、電子放出素子6を駆動して蛍光体を発光させた。本実施例においても、実施例1と遜色のない結果が得られた。
[その他]
上記の実施例1〜実施例5は適宜組み合わせることができる。たとえば、電位固定電極
の端部を中央部よりも、幅が狭く、厚さが薄く、かつ、蛇行パターンを有していても良い。また、上記のように電位固定電極の端部を高インダクタンス部としているのは、電子放出素子周囲の電界を均一化するためである。このような観点からは、電位固定電極の端部ではなく、電位固定電極の中央部のうち列方向配線や行方向配線と交差する交差部を高インダクタンス部としても良い。また、電子放出素子周囲の電界を均一化する効果を達成させず、放電による電子放出素子特性の変化防止を優先させる場合には、電位固定電極全体(あるいは任意の部分)を行方向配線や列方向配線よりも高インダクタンスにしても良い。
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想としての要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
2 カソードプレート
3 アノードプレート
4 枠部材
5 第1基板
6 電子放出素子
7 列方向配線
8 行方向配線
14 アノード端子
15 貫通孔
19 ガード電極
21 電位固定電極
22 固定電位規定手段

Claims (6)

  1. 行方向配線、前記行方向配線と絶縁層を介して配置された列方向配線、および前記配線の交差部に配置された電子放出素子を有し、前記電子放出素子が画像表示領域内にマトリクス状に配列されたカソードプレートと、前記画像表示領域に発光体とアノードとを有するアノードプレートと、前記カソードプレートと前記アノードプレートの間に配置された枠部材、とで構成される真空外囲器を有する画像表示装置であって、
    前記カソードプレートの前記画像表示領域の外の周辺部に、
    前記カソードプレートを貫通して前記アノードに電気的に接続されたアノード端子と、
    前記アノード端子から距離をおいて前記カソードプレートの真空外囲器内部側の表面に設けられたガード電極と、
    前記画像表示領域の最外側の行方向配線または列方向配線と前記ガード電極との間に前記最外側の行方向配線または列方向配線と平行して設けられ、電位規定手段と接続された電位固定電極と、
    を備えており、
    前記電位固定電極は、前記最外側の行方向配線または列方向配線よりも高いインダクタンス値を有する、ことを特徴とする画像表示装置。
  2. 前記電位固定電極は、画像表示領域に隣接し前記最外側の行方向配線または列方向配線と平行な中央部と、該中央部と前記電位規定手段とを接続する接続部とを有しており、
    前記接続部の幅が前記中央部の幅よりも狭いことを特徴とする、請求項1に記載の画像表示装置。
  3. 前記電位固定電極は、画像表示領域に隣接し前記最外側の行方向配線または列方向配線と平行な中央部と、該中央部と前記電位規定手段とを接続する接続部とを有しており、
    前記接続部の厚さが前記中央部の厚さよりも薄いことを特徴とする、請求項1または2に記載の画像表示装置。
  4. 前記電位固定電極は、画像表示領域に隣接し前記最外側の行方向配線または列方向配線と平行な中央部と、該中央部と前記電位規定手段とを接続する接続部とを有しており、
    前記接続部の長さが、前記中央部と前記電位規定手段とを結ぶ最短距離よりも長いことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像表示装置。
  5. 前記電位固定電極は、2つ以上の電位規定手段に接続されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像表示装置。
  6. 前記電位規定手段は、電圧源もしくは、接地電極であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像表示装置。
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