JP2012219869A - 動力伝達装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 簡単な構成で出力軸の回転位置の位置決め及び保持をすることができる動力伝達装置を提供する。
【解決手段】 動力伝達装置10の入力軸11が駆動されないとき、出力軸12は、ワンウェイクラッチおよびツーウェイクラッチの作用によって、正転(時計回り)方向には小さなトルクで回転可能である。出力軸12を正転させると、出力側支持板62に固定されたストッパピン47aが略扇形の出力ギア44aの当接面46aに当接し、出力軸12が回転限界位置で位置決めされる。一方、逆転(反時計回り)方向には、出力軸12の逆転力が入力軸11に等速で伝達されるため、入力軸11に接続されるモータの負荷トルクによって回転が規制される。したがって、出力軸12は回転限界位置で保持される。
【選択図】図11

Description

本発明は、入力軸の回転力を出力軸へ伝達する動力伝達装置に関する。
動力伝達装置は、モータ等の駆動力による入力軸の回転を等速で又は減速もしくは増速して出力軸へ伝達し、出力軸に接続された目的動作機構を駆動する。このような回転機構を備える装置では、組付け時等に回転軸の回転位置を位置決めすることが求められる。
例えば特許文献1に開示された回転位置の位置決め方法によると、「駆動用モータを逆転させて回転位置決めする際に、回転軸をその機械誤差量を含む分過回転させ、その後正規の位置へ回転させる」ことにより、最終的に常に同一方向から回転させ、バックラッシュなどの機械的誤差を測定することなく高精度に位置決めする。
特開平05−111827号公報
しかしながら、特許文献1の回転位置の位置決め方法は、過回転分を測定するセンサ、及び、過回転分を記憶しモータ制御に反映させる演算器が必要となり、構成が複雑でコストアップする。また、位置決めされた回転位置を装置の非通電時に保持するための機構が必要となる。
ところで本出願人は、先に、動力伝達装置に係る発明を共同出願した(特願2011−063012)。この出願に係る発明は、入力軸の正転時と逆転時とで等速動力伝達と減速動力伝達とを自動的に切り替える動力伝達装置を提供する。
この動力伝達装置は、製造後、例えば入力軸にモータ等の駆動手段が接続された状態で保管および出荷される。そして、出荷先で出力軸が目的動作機構の一部である相手回転軸に接続される。その他、目的動作機構の修理等でこの動力伝達装置を一旦取り外した後の再組付け時に、出力軸を相手回転軸に再接続する場合等がある。
このとき、出力軸と相手回転軸との回転位置を高精度に一致させることが要求される場合には、動力伝達装置の出力軸の回転位置を位置決めする必要がある。さらに、位置決めした後、保管時や移送時に装置の自重や振動によって出力軸が不規則に回転しないよう回転位置を保持する必要がある。
したがって、特にこの動力伝達装置において、上記課題の解決は重要である。
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、簡単な構成で出力軸の回転位置の位置決め及び保持をすることができる動力伝達装置を提供することである。
請求項1に記載の動力伝達装置は、駆動手段によって駆動される入力軸の回転力を出力軸へ伝達する。ここで、入力軸の一方の回転方向への回転を「正転」とし入力軸の他方の回転方向への回転を「逆転」とすると、この動力伝達装置は、入力軸の正転時には出力軸を入力軸の回転と等速に回転させる。また、入力軸の逆転時には出力軸を入力軸の回転に対し減速して回転させる。
この動力伝達装置は、入力伝動部材、第1伝動部材、第2伝動部材、出力伝動部材、ハウジング、規制部材、一方向回転力伝達部材および二方向回転力伝達部材を備える。
入力伝動部材は、入力軸に固定され、入力軸とともに回転する。
第1伝動部材は、入力軸とは別の軸上に設けられる入力側副軸に固定され、入力伝動部材の回転を伝達されて入力側副軸とともに回転する。
第2伝動部材は、出力軸とは別の軸上に設けられる出力側副軸に固定され、出力側副軸とともに回転する。
出力伝動部材は、出力軸に固定され、第2伝動部材の回転を伝達されて出力軸とともに回転する。
上記の各伝動部材として、具体的には歯車、プーリ等を用いることができる。
ハウジングは、入力軸、出力軸、入力側副軸および出力側副軸を回転可能に支持する
規制部材は、出力伝動部材またはハウジングの一方に設けられ、出力伝動部材またはハウジングの他方に設けられる当接部に当接可能である。
一方向回転力伝達部材は、入力軸の正転時に入力軸の正転力を出力軸に伝達し、入力軸の逆転時に出力軸を空転させることが可能である。
二方向回転力伝達部材は、入力側副軸の回転力を出力側副軸に伝達し、出力側副軸の回転力に対して入力側副軸を空転させることが可能である。
一方向回転力伝達部材として、具体的にはワンウェイクラッチ等を用いることができる。また、二方向回転力伝達部材として、具体的にはツーウェイクラッチ等を用いることができる。
以上の構成による動力伝達装置は、駆動手段によって入力軸が駆動されるときには、入力軸の正転時、入力軸の正転力が一方向回転力伝達部材を経由して出力軸に伝達され、入力軸の逆転時、入力軸の逆転力が入力伝動部材、第1伝動部材、入力側副軸、二方向回転力伝達部材、出力側副軸、第2伝動部材、出力伝動部材を経由して出力軸に伝達される。
また、駆動手段による駆動が停止しているときには、出力軸を逆転させると出力軸の逆転力が一方向回転力伝達部材を経由して入力軸に伝達され、出力軸を正転させると一方向回転力伝達部材によって且つ二方向回転力伝達部材によって出力軸は空転する。そして、出力軸を正転させ規制部材を当接部に当接させることにより、出力軸のハウジングに対する回転位置を位置決め可能である。
本発明の動力伝達装置は、一方向回転力伝達部材と二方向回転力伝達部材とを使用することで、駆動手段によって入力軸が駆動されるとき、「入力軸の正転時と逆転時とで、等速動力伝達と減速動力伝達とを自動的に切り替える機構」を実現することができる。
また、駆動手段による駆動が停止しているとき、出力軸は、正転方向には小さなトルクで回転可能であり、出力軸を正転させると、規制部材が当接部に当接し、出力軸が位置決めされる。一方、逆転方向には、出力軸の逆転力が入力軸に等速で伝達されるため、入力軸に接続される駆動手段の負荷トルクによって回転が規制され、一旦位置決めされた出力軸の回転位置が保持される。このように、本発明の動力伝達装置は、簡単な構成で出力軸の回転位置の位置決め及び保持をすることができる。
請求項2に記載の発明では、規制部材はハウジングに設けられる、また、出力伝動部材は、出力軸を中心とする扇形板状に形成され、正転方向に向く壁が当接部を構成する。
これにより、規制部材および当接部の構成を具体的に示す。例えば、扇形の中心角を出力軸の要求可動範囲に応じた角度に設定することにより、出力伝動部材の大きさを最小限とし、装置を小型化、軽量化することができる。また、規制部材は、例えば、ピン等を用いることができる。
請求項3に記載の発明によると、規制部材は、出力伝動部材またはハウジングに固定される。
動力伝達装置の駆動時における出力軸の要求可動範囲が、「360°から規制部材等が占める領域に対応する角度を差し引いた角度」よりも小さくてよい場合には、規制部材を固定することにより、規制部材の取付構造が簡単となる。
請求項4に記載の発明によると、規制部材は、出力伝動部材またはハウジングに着脱自在に設けられる。
一方、出力軸の回転位置を位置決めするときのみ規制部材を取り付け又は係合状態とし、駆動時には規制部材を取り外し又は解除状態とすることにより、動力伝達装置の駆動時における出力軸の可動範囲を無制限とすることができる。
本発明の第1実施形態による動力伝達装置の全体断面図である。 図1のII方向の矢視図である。 図1のIII方向の矢視図である。 本発明の動力伝達装置が適用される可変圧縮比エンジンの模式図である。 ワンウェイクラッチを説明する説明図である。 ツーウェイクラッチを説明する説明図である。 (a):カップリングおよびスプリングの斜視図である。(b):入力軸が停止から正転に切り替わったときのカップリングの模式断面図である。(c):入力軸が正転から停止または逆転に切り替わったときのカップリングの模式断面図である。 本発明の第1実施形態による動力伝達装置の(a)入力軸正転時の作動メカニズム、(b)入力軸逆転時の作動メカニズムを示す模式図である。 (a):比較例の動力伝達装置のタイミングチャートである。(b):本発明の第1実施形態による動力伝達装置のタイミングチャートである。 本発明の第1実施形態による動力伝達装置の(a)出力軸正転時の作動メカニズム、(b)出力軸逆転時の作動メカニズムを示す模式図である。 本発明の第1実施形態による動力伝達装置の出力側模式図である。 本発明の第1実施形態の変形例による動力伝達装置の出力側模式図である。 本発明の第2実施形態による動力伝達装置の出力側模式図である。 本発明の第3実施形態による動力伝達装置の出力側模式図である。 本発明の第4実施形態による動力伝達装置の出力側模式図である。 本発明の第5実施形態による動力伝達装置の出力側模式図である。 本発明の第6実施形態による動力伝達装置の出力側模式図である。 本発明の第7実施形態による動力伝達装置の出力側模式図である。 本発明の第8実施形態による動力伝達装置の出力側模式図である。 本発明の第9実施形態による動力伝達装置の出力側模式図である。
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態は、自動車等に搭載され圧縮比を変更可能な可変圧縮比エンジンに本発明の動力伝達装置を適用したものである。図4に示す可変圧縮比エンジン80は、カムカバー81、シリンダヘッド82、シリンダブロック83およびロアケース84等から構成される。シリンダブロック83にはシリンダ85が形成され、シリンダ85内に往復移動可能にピストン86が収容される。シリンダヘッド82には、吸気通路を開閉する吸気弁881、排気通路を開閉する排気弁882が設けられる。シリンダ85の内壁、ピストン86の上端、吸気弁881および排気弁882に囲まれた空間は燃焼室89を形成する。ロアケース84内にはクランクシャフト871、コンロッド872等が収容され、ピストン86の往復運動がクランクシャフト871の回転運動に変換される。
また、シリンダブロック83には、動力伝達装置10、モータ17、ウォーム18およびウォームホイール19からなる圧縮比変更変機構が設けられている。
以下、動力伝達装置10の入力軸側(図4の左側)から見て時計回り方向(以下「CW方向」という。)の回転を「正転」といい、反時計回り方向(以下「CCW方向」という。)の回転を「逆転」という。
「駆動手段」としてのモータ17の正転時、動力伝達装置10は、モータ17の正転力を等速でウォーム18に伝達する。また、モータ17の逆転時、動力伝達装置10は、モータ17の逆転力を減速してウォーム18に伝達する。
図4に示す状態では、シリンダブロック83はロアケース84に対して最も低い位置にある。このとき、燃焼室89の容積は最小であり、ピストン86の移動による容積変化率が最大となる「高圧縮比」の状態である。
モータ17の正転力がウォーム18に伝達されると、カムカバー81、シリンダヘッド82およびシリンダブロック83はロアケース84に対して上昇し、カムカバー81の上端位置が図中破線指示した位置に移動する。これにより、燃焼室89の容積が増加するためピストン86の移動による容積変化率が小さくなり「低圧縮比」の状態となる。この高圧縮比側から低圧縮比側への推移では燃焼室89の燃焼圧がシリンダブロック83に作用する力が同じ向きに働くことから、大きな駆動力が要求されない。そのため、動力伝達装置10は、モータ17の回転を等速でウォーム18に伝達し、シリンダブロック83を比較的高速で上昇させることができる。
続いて、モータ17の逆転力がウォーム18に伝達されると、カムカバー81、シリンダヘッド82およびシリンダブロック83はロアケース84に対して下降する。これにより、燃焼室89の容積が減少するためピストン86の移動による容積変化率が大きくなり「高圧縮比」の状態となる。この低圧縮比側から高圧縮比側への推移ではシリンダブロック83を燃焼室89の燃焼圧に抗して下降させる必要がある。そこで、動力伝達装置10は、モータ17の回転を減速し、高トルクを出力することができる。
次に、動力伝達装置10の構成について図1〜3、図5〜7に基づいて説明する。
図1〜3に示すように、動力伝達装置10は、主支持体60、入力側支持板61、出力側支持板62、入力軸11、出力軸12、入力側副軸51および出力側副軸52等を備える。主支持体60、入力側支持板61および出力側支持板62は、特許請求の範囲に記載の「ハウジング」を構成する。
入力軸11および入力側副軸51は、入力側支持板61に固定された軸受63、64に回転可能に支持されており、出力軸12および出力側副軸52は、出力側支持板62に固定された軸受65、66に回転可能に支持されている。さらに、出力軸12は、主支持体60に固定された軸受67に回転可能に支持されており、入力側副軸51は、主支持体60に固定された軸受68に回転可能に支持されている。
入力軸11および出力軸12は、回転軸Pを中心に回転する。入力側副軸51および出力側副軸52は、回転軸Pに対して略平行の回転軸Qを中心に回転する。入力軸11はモータ等の動力に接続され、出力軸12はアクチュエータ等の目的動作機構に接続される。なお、出力軸12に代えて、あるいは出力軸12に加えて、出力側副軸52が目的動作機構に接続されてもよい。
入力軸11と出力軸12とは、カップリング20およびワンウェイクラッチ30を介して連結されている。カップリング20は、入力ロータ21、中間ロータ23およびスプリング29から構成され、入力軸11と中間軸13との間に回転時間差を発生させる。ワンウェイクラッチ30は、中間ロータ23と一体に形成された内輪32としての中間軸13、及び出力軸12と一体に形成された外輪31等から構成される。ワンウェイクラッチ30は、入力軸11の正転時、中間軸13の正転力を出力軸12に伝達し、入力軸11の逆転時、中間軸13に対して出力軸12を空転させる。また、入力側副軸51と出力側副軸52とは、ツーウェイクラッチ50を介して連結されている。カップリング20、ワンウェイクラッチ30およびツーウェイクラッチ50の詳細については後述する。
入力軸11には入力ギア41が固定され、入力側副軸51には第1ギア42が固定されている。また、出力側副軸52には第2ギア43が固定され、出力軸12には略扇形の出力ギア44aが固定されている。
ギア41〜44aは平歯車であり、入力ギア41と第1ギア42とが噛み合い、第2ギア43と出力ギア44aとが噛み合う。第1ギア42の歯数は入力ギア41の歯数より多く、第1ギア42のピッチ円直径は入力ギア41のピッチ円直径より大きい。したがって、入力軸11の回転は、回転方向が反対となるとともに減速されて入力側副軸51に伝達される。また、出力ギア44aの歯数を全周に換算した歯数は第2ギア43の歯数より多く、出力ギア44aのピッチ円直径は第2ギア43のピッチ円直径より大きい。したがって、出力側副軸52の回転は、回転方向が反対となるとともに減速されて出力軸12に伝達される。
ここで、図5を参照して、ワンウェイクラッチの具体的な構成を説明する。
ワンウェイクラッチ30は、外輪31、内輪32、複数のコロ33およびスプリング34から構成される。複数のコロ33は、外輪31と内輪32とに挟まれる環状の隙間に配置されている。外輪31の内壁に、各コロ33に対応するくさび部31aが形成されている。くさび部31aは、周方向の一方(図のCW方向)でコロ33が噛み込み、周方向の他方(図のCCW方向)でコロ33がフリーとなる形状に形成されている。スプリング34は、コロ33とコロ33との間に設けられ、コロ33を外輪31側へ押し付けている。
図5(a)に示すスタンバイ状態において、外輪31および内輪32は停止しており、コロ33はくさび部31aに押し付けられている。
図5(c)は、駆動軸である内輪32が外輪31に対してCW方向に回転した場合を示し、図5(d)は、駆動軸である外輪31が内輪32に対してCCW方向に回転した場合を示す。いずれの場合も、図中実線矢印で示すように、コロ33がくさび部31aに噛み込み、駆動軸の回転力がコロ33を介して相手側の軸に伝達される。ここで、内輪32の回転数をRin、外輪31の回転数をRoutとし、CW方向の回転を正、CCW方向の回転を負とすると、「Rin>Rout」のとき、動力伝達状態が成立する。
次に、図5(e)は、駆動軸である内輪32が外輪31に対してCCW方向に回転した場合を示し、図5(f)は、駆動軸である外輪31が内輪32に対してCW方向に回転した場合を示す。いずれの場合も、図中破線矢印および「×」印で示すように、コロ33が外輪31と内輪32との間を滑り、駆動軸の回転力は伝達されず、相手軸は空転する。つまり、「Rin<Rout」のとき、空転状態が成立する。
要するに、外輪31または内輪32の一方が停止している場合を含め、「外輪31と内輪32との相対回転」の方向によって動力伝達状態となるか空転状態となるかが決まる。
また、図5(b)に示すように、コロ33がくさび部31aから離れた状態からくさび部31aに噛み込み空転状態から動力伝達状態に移行するとき、または、逆に動力伝達状態から空転状態に移行するときには、所定の切替角度λ1の回転が必要である。切替角度λ1は、いわゆるバックラッシュに相当する。
次に、図6を参照して、ツーウェイクラッチ50の具体的な構成を説明する。
図1のVIa部拡大図である図6(a)に示すように、ツーウェイクラッチ50は、外輪としての入力側副軸51、内輪としての出力側副軸52、コロ53、保持器54、摺動ばね55、ケース56等から構成される。
保持器54は、コロ53を保持する。摺動ばね55は、径方向内側の端部55aが保持器54に引っ掛かり、径方向外側の摺動部55bがケース56内壁に当接して突っ張る。ケース56は主支持体60に固定され、入力側副軸51の径方向外側を保持するとともに、軸受57を介して出力側副軸52を回転可能に支持している。
図6(b)は、入力側副軸(外輪)51が駆動軸として回転する場合を示す。このとき、保持器54は、ケース56と摺動ばね55間の摺動抵抗によりその場に留まろうとするため、コロ53は、入力側副軸51の回転方向に対して反対方向へ相対回転する。コロ53が反対方向に移動しくさび部51aに噛み込むと、入力側副軸51の回転がコロ53を介して出力側副軸52へ伝達される。ここで、入力側副軸51の回転数をSin、出力側副軸52の回転数をSoutとすると、入力側副軸51の回転方向に関係なく、「Sin>Sout」のときには入力側副軸51から出力側副軸52へ回転力が伝達する。
図6(c)は、出力側副軸(内輪)52が駆動軸として回転する場合を示す。このとき、保持器54および入力側副軸51は動かない。コロ53は、入力側副軸51の径方向内側の凹部51bに位置し、入力側副軸51および出力側副軸52に噛み合うことができないため、出力側副軸52のみが回転する。したがって、出力側副軸52の回転方向に関係なく、「Sin<Sout」のときには出力側副軸52から入力側副軸51へ回転力が伝達せず、入力側副軸51は空転する。
また、ワンウェイクラッチ30と同様、ツーウェイクラッチ50が空転状態から動力伝達状態に移行するとき、または、動力伝達状態から空転状態に移行するとき、バックラッシュに相当する所定の切替角度λ2の回転が必要である。
次に、図7を参照して、カップリング20の構成を説明する。
図7(a)に示すように、カップリング20は、円柱状の入力ロータ21と中間ロータ23、及びコイル状のスプリング29から構成される。入力ロータ21は入力軸11と同軸かつ一体に設けられる。中間ロータ23は中間軸13と同軸かつ一体に設けられる。
図7(b)に示すように、入力ロータ21は、中間ロータ23側の端面に突起する2つの扇形状の突起部22を設けている。一方、中間ロータ23は、入力ロータ21側の端面に2つの扇形状のストッパ部24を設けている。突起部22およびストッパ部24は、それぞれ回転軸Pに対して対象に配置される。突起部22は、ストッパ部24同士の周方向の間に、ストッパ部24に対して所定の遊び角度θの範囲で相対回転可能に配置される。
すなわち、突起部22は、ストッパ部24のCW側の外壁25に当接する「初期位置」からストッパ部24のCCW側の外壁26に当接する「限界位置」まで、遊び角度θだけ相対回転可能である。入力ロータ21の正転時、突起部22が限界位置に達すると、突起部22はストッパ部24の外壁26に当接して一体に正転する。これにより、入力ロータ21から中間ロータ23への動力伝達が可能となる。
図7(a)に示すように、スプリング29は、入力ロータ21および中間ロータ23の外周に設けられる爪部27、28に両端が係止される。スプリング29は、入力ロータ21が初期位置から中間ロータ23に対して正転したとき、引っ張られて荷重を発生する。そのため、図7(c)に示すように、入力ロータ21が正転から停止または逆転に切り替わったとき、スプリング29は、突起部22がストッパ部24に対して遊び角度θを確保する初期位置に戻すように、入力ロータ21を中間ロータ23に対してCCW方向に付勢する。
以上説明した一実施形態の構成において、入力ギア41、第1ギア42、第2ギア43および出力ギア44aは、それぞれ、特許請求の範囲に記載の「入力伝動部材」、「第1伝動部材」、「第2伝動部材」、「出力伝動部材」に相当する。また、ワンウェイクラッチ30は、「一方向回転力伝達部材」に相当し、ツーウェイクラッチ50は、「二方向回転力伝達部材」に相当する。
次に、図8、図9を参照して、モータ17によって入力軸11が駆動されるときの動力伝達装置10の作動を説明する。図8の太線矢印は伝達される駆動力Fdを示し、中太線破線矢印は非駆動力Fnを示す。細線矢印は、CW方向またはCCW方向の回転を示す。
図8(a)に示すように、入力軸11の正転時、正転力は、カップリング20を経由して中間軸13に伝達される。すると、ワンウェイクラッチ30において内輪32の回転数Rinは正の値であるから、外輪31の回転数Routをゼロと見なせば、「Rin>Rout」の関係が成立し、正転力が出力軸12に等速で伝達される(図5(c)参照)。
このとき、入力ギア41と第1ギア42との噛み合いにより、入力側副軸51は減速されて逆転する。一方、出力ギア44aと第2ギア43との噛み合いにより出力側副軸52は増速されて逆転する。すると、ツーウェイクラッチ50において内輪(出力側副軸)52の回転数Soutが外輪(入力側副軸)51の回転数Sinよりも大きくなる(Sin<Sout)ため、出力側副軸52が入力側副軸51に対して空転する(図6(c)参照)。
一方、図8(b)に示すように、入力軸11の逆転時、入力ギア41と第1ギア42との噛み合いにより、入力側副軸51は減速されて正転する。すると、ツーウェイクラッチ50において外輪(入力側副軸)51の回転数Sinが停止している内輪(出力側副軸)52の回転数Soutよりも大きくなる(Sin>Sout)ため、入力側副軸51の正転力が出力側副軸52に伝達される(図6(b)参照)。そして、第2ギア43と出力ギア44aとの噛み合いにより、出力軸12は減速されて逆転する。その結果、入力軸11の逆転力が減速されて出力軸12に伝達される。
このとき、入力軸11の逆転力は、カップリング20を経由して中間軸13に伝達される。しかし、ワンウェイクラッチ30において内輪32の回転数Rinは負の値であるから、外輪31の回転数Routをゼロと見なせば、「Rin<Rout」の関係が成立し、出力軸12は空転する(図5(e)参照)。
続いて図9を参照して、入力軸11が逆転から正転へ切り替わるときの挙動について説明する。まず、本発明の一実施形態に対する比較例として、動力伝達装置がカップリングを備えない場合のタイミングチャートを図9(a)に示す。
ここで、各変数を以下のように定義する。
n(1/s):入力軸11の1秒あたりの回転数(正転を正、逆転を負とする。)
λ1(deg):ワンウェイクラッチ30の切替角度
λ2(deg):ツーウェイクラッチ50の切替角度
Z(−):入力側減速比(=(第1ギア42の歯数/入力ギア41の歯数)=(入力軸11および中間軸13の回転数/入力側副軸51の回転数))
T1(s):中間軸13(=ワンウェイクラッチ30の内輪32)が切替角度λ1回転する時間
T2(s):入力側副軸51(=ツーウェイクラッチ50の外輪)が切替角度λ2回転するのに対応して入力軸11および中間軸13が角度Z×λ2回転する時間
時間T1、T2は下式1、2にて表される。
T1=λ1/(360・n) ・・・(式1)
T2=Z×λ2/(360・n) ・・・(式2)
よって、Z×λ2>λ1のとき、図9(a)に示すようにT2>T1となる。すると、入力軸11が逆転から正転へ切り替わる時刻をt0とすると、ワンウェイクラッチ30は、時刻t0から時間T1後に空転状態から動力伝達状態に移行し、ツーウェイクラッチ50は、時刻t0から時間T2後に動力伝達状態から空転状態に移行する。したがって、図中斜線指示した範囲にてワンウェイクラッチ30とツーウェイクラッチ50とが同時に動力伝達状態となることとなり、いわゆるデッドロックが発生する。
なお、入力軸11が正転から逆転へ切り替わるときには、ワンウェイクラッチ30が動力伝達状態から空転状態に移行した後、ツーウェイクラッチ50が空転状態から動力伝達状態に移行するため、デッドロックは発生しない。
この課題を解決するため、本発明の一実施形態は、遊び角度θを有するカップリング20を備えている。ここで、遊び角度θは、下式3を満たすように設定される。
θ≧Z×λ2−λ1 ・・・(式3)
Z×λ2>λ1のとき、θは正の値を取る。また、時間Tθを以下のように定義する。
Tθ(s):入力軸11が中間軸13に対して遊び角度θ回転する時間
言い換えれば、Tθは、入力軸11が逆転から正転へ切り替わったときの中間軸13の「追従遅れ時間」である。その結果、図9(b)のタイミングチャートに示すように、ワンウェイクラッチ30は、時刻t0から時間(T1+Tθ)後に空転状態から動力伝達状態に移行することとなる。よって、ワンウェイクラッチ30とツーウェイクラッチ50とが同時に動力伝達状態となることがなく、デッドロックの発生を回避することができる。
なお、入力軸11が正転から逆転へ切り替わるときには、カップリング20のスプリング29によって突起部22が初期位置に戻されることから、入力軸11と中間軸13との間に、遊び角度θによる回転時間差が生じない。したがって、図9(a)に示す比較例と同じ挙動をする。
以上説明したように、動力伝達装置10は、ワンウェイクラッチ30とツーウェイクラッチ50とを使用することで、モータ17によって入力軸11が駆動されるとき、「入力軸の正転時と逆転時とで、等速動力伝達と減速動力伝達とを自動的に切り替える機構」を実現することができる。
次に、図10、図11を参照して、モータ17による駆動が停止しているときの動力伝達装置10の作動について説明する。この作動は、動力伝達装置10の組立時やメンテナンス時に、手動、または一時的に接続される回転動力によって出力軸12を回転するものである。図10では、図8と同様に、太線矢印は伝達される駆動力Fdを示し、中太線破線矢印は非駆動力Fnを示す。細線矢印は、入力軸11側から視たCW方向(正転方向)またはCCW方向(逆転方向)の回転を示す。
図10(a)に示すように、出力軸12の正転時、正転力は、ワンウェイクラッチ30の外輪31に伝達される。しかし、ワンウェイクラッチ30において外輪31の回転数Routは正の値であり、内輪32の回転数Rinはゼロであるから、「Rin<Rout」の関係が成立し、出力軸12は空転する(図5(f)参照)。
また、ツーウェイクラッチ50において内輪(出力側副軸)52の回転数Soutが停止している外輪(入力側副軸)51の回転数Sinよりも大きくなる(Sin<Sout)ため、出力側副軸52が入力側副軸51に対して空転する(図6(c)参照)。
したがって、出力軸12の正転力は入力軸11に伝達されず、入力軸11は停止したままである。
一方、図10(b)に示すように、出力軸12の逆転時、逆転力は、ワンウェイクラッチ30の外輪31に伝達される。すると、ワンウェイクラッチ30において外輪31の回転数Routは負の値であり、内輪32の回転数Rinはゼロであるから、「Rin>Rout」の関係が成立し、逆転力が入力軸11に等速で伝達される(図5(d)参照)。その結果、停止しているモータ17を外力により回転させることとなるため、負荷トルク(コギングトルク)が発生する。言い換えれば、出力軸12を逆転させるためには負荷トルクより大きい逆転トルクが必要であり、逆転トルクが負荷トルク以下の場合は出力軸12を逆転させることができない。
なお、このとき、出力ギア44aと第2ギア43との噛み合いにより、出力側副軸52は増速されて正転する。一方、入力ギア41と第1ギア42との噛み合いにより、入力側副軸51は減速されて正転する。すると、ツーウェイクラッチ50において内輪(出力側副軸)52の回転数Soutが外輪(入力側副軸)51の回転数Sinよりも大きくなる(Sin<Sout)ため、出力側副軸52が入力側副軸51に対して空転する(図6(c)参照)。
図11は、図1および図3に示された動力伝達装置10の出力側部分を模式的に示す図であり、出力軸12および出力側副軸52を図1よりも細く図示している。図11(b)は、図11(a)のb−b断面すなわち出力軸12および出力側副軸52上の断面図であり、図11(a)は、図11(b)のa矢視すなわち入力軸11側から視た図である。
なお、以下の実施形態を示す図12〜図20は、図11と同様の模式図である。
図11に示すように、扇形の出力ギア44aは、正転方向に向く壁が当接部46aを構成する。また、出力側支持板62には、「規制部材」としてのストッパピン47aが固定されている。上述のように、モータ17の非駆動時、出力軸12は正転方向に容易に回転可能である。そこで、図11(a)に示すように、略扇形の出力ギア44aが正転方向に回転すると、ストッパピン47aが当接部46aに当接する。このときの出力軸12の回転位置を「回転限界位置」という。
一方、出力軸12は、モータ17の負荷トルクによって、図11(b)に示す逆転方向への回転が規制されるため、一旦ストッパピン47aが当接部46aに当接すると、出力ギア44aは容易に回転することができない。よって、出力軸12は、「回転限界位置」に保持されることとなる。
そこで、動力伝達装置10の製造後、出力軸12を「回転限界位置」に保持した状態で保管、出荷等することにより、装置の自重や振動によって出力軸12が不規則に回転することを防止することができる。そして、図4に示す可変圧縮比エンジン80に組み付ける際、予め所定の回転位置に位置決めされたエンジン側の回転軸に出力軸12を接続することで、回転位置を高精度に一致させることができる。
第1実施形態は、出力ギア44aが略扇形に形成されているため、例えば、扇形の中心角を出力軸12の要求可動範囲に応じた角度に設定することにより、出力ギア44aの大きさを最小限とし、装置を小型化、軽量化することができる。また、第1実施形態は、「規制部材」等の構成の自由度が高い。例えば、「規制部材」として、ストッパピン47aに代えて、図12に示す変形例のようにストッパキー47jを採用してもよい。
(第2実施形態)
以下の実施形態の動力伝達装置は、第1実施形態に対し、出力ギアおよび「規制部材」の構成のみが異なる。以下の実施形態の説明では、実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
図13に示すように、第2実施形態は、第1実施形態と同様、略扇形の出力ギア44bは、正転方向に向く壁が当接部46bを構成する。出力側支持板62bには、出力ギア44bの当接部46bが当接可能なストッパ壁48bが「規制部材」として設けられている。出力ギア44bが正転すると、ストッパ壁48bが当接部46bに当接し、出力軸12の回転位置が位置決めされる。
第2実施形態は、部品点数を低減することができ、また、出力側支持板62bの形状を工夫することによって、動力伝達装置10の高さ寸法を小さくすることができる。
(第3実施形態)
図14に示すように、第3実施形態では、「規制部材」としてのストッパピン47cが出力ギア44cに固定されている。また、出力側支持板62cには、ストッパピン47cが当接可能な当接部46cが設けられている。出力ギア44cが正転すると、ストッパピン47cが当接部46cに当接し、出力軸12の回転位置が位置決めされる。
第3実施形態は、部品点数の低減が可能であり、また、出力軸12の可動範囲を比較的大きくすることができる。
(第4実施形態)
図15に示すように、第4実施形態では、出力ギア44dは、円弧状の穴45dを有している。「規制部材」としてのストッパピン47dは、先端部が穴45dに嵌合し、根元部が出力側支持板62に固定されている。出力ギア44dが正転すると、ストッパピン47dが穴45dの内壁に形成される当接部46dに当接し、出力軸12の回転位置が位置決めされる。
第4実施形態は、出力ギア44dの穴45dの加工が比較的容易であり、また、部品点数の低減が可能である。
(第5実施形態)
図16に示すように、第5実施形態では、出力ギア44eは、周方向に複数の肉盗み45eを有している。「規制部材」としてのストッパピン47eは、先端部が複数のうち1箇所の肉盗み45eに嵌合し、根元部が出力側支持板62に固定されている。出力ギア44eが正転すると、ストッパピン47eが肉盗み45eのリブに形成される当接部46eに当接し、出力軸12の回転位置が位置決めされる。
第5実施形態は、出力ギア44eを軽量化するとともに部品点数の低減が可能である。
(第6実施形態)
図17に示すように、第6実施形態では、出力ギア44fは、中心角の比較的大きい円弧状で有底の溝45fを有している。「規制部材」としてのストッパピン47fは、先端部が溝45fに嵌合し、根元部が出力側支持板62に固定されている。出力ギア44fが正転すると、ストッパピン47fが溝45fの内壁に形成される当接部46fに当接し、出力軸12の回転位置が位置決めされる。
第6実施形態は、出力ギア44fの溝45fが有底であるため、出力ギアの板厚を穴45dや肉盗み45eが貫通する第4実施形態や第5実施形態に比べ、出力ギアの強度への影響が小さい。したがって、溝45fの角度を360°近くまで最大限に設定することができる。よって、出力軸12の可動範囲を比較的大きくすることができる。
(第7実施形態)
上記第1〜第6実施形態では、「規制部材」としてのストッパピン等が出力側支持板62または出力ギア44cに固定されている。したがって、出力軸12が「回転限界位置」以内の可動範囲で回転する動力伝達装置にしか適用することができない。すなわち、上記実施形態のうち可動範囲を最大とするのに最も有利な第6実施形態でさえ、出力軸12の可動範囲が360°以上の装置に適用することは不可能である。
そこで、図18に示すように、第7実施形態では、出力ギア44gは渦巻き溝45gを有している。「規制部材」としてのストッパピン47gは、先端部が渦巻き溝45gに嵌合し、また、根元部の外径およびツバ部が出力側支持板62のガイド溝49gに案内され径方向に摺動可能である。これにより、ストッパピン47gが渦巻き溝45gの回転に伴って径方向に摺動することで、出力ギア44gは360°以上回転可能である。そして、出力ギア44gが正転すると、ストッパピン47gが渦巻き溝45gの内壁に形成される当接部46gに当接し、出力軸12の回転位置が位置決めされる。このように、第7実施形態は、出力軸12の可動範囲が360°以上の場合に適用することができる。
(第8実施形態)
上記第7実施形態は、出力軸12の可動範囲が360°以上の装置に適応可能であるものの、許容される可動範囲は所詮有限である。それに対し、第8実施形態および次の第9実施形態では、規制部材を着脱自在とし、あるいは係合状態と解除状態とを切替可能とすることで、出力軸12の可動範囲を無制限とすることができる。
図19に示すように、第8実施形態では、「規制部材」としてのストッパ部材47hが係合状態と解除状態とを切替可能に設けられている。動力伝達装置10を可変圧縮比エンジン80に組付ける前、図19(a)、(b)に示すように、略扇形の出力ギア44hが正転すると、係合状態のストッパ部材47hの外壁48hが出力ギア44hの当接部46hに当接し、出力軸12の回転位置が位置決めされる。一方、動力伝達装置10を可変圧縮比エンジン80に組付けた後の駆動時には、図19(c)に示すようにストッパ部材47hが出力側支持板62に押し込まれて解除状態となり、出力軸12は無制限に回転可能となる。
(第9実施形態)
図20に示すように、第9実施形態では、出力ギア44iは周方向に複数の肉盗み45iを有している。「規制部材」としての鉤形のストッパ部材47iは、複数のうち1箇所の肉盗み45iのリブ46iに係合可能である。動力伝達装置10を可変圧縮比エンジン80に組付ける前、図20(a)、(b)に示すように、出力ギア44iが正転すると、係合状態のストッパ部材47iの外壁48iが肉盗み部45iのリブに形成される当接部46iに当接し、出力軸12の回転位置が位置決めされる。一方、動力伝達装置10を可変圧縮比エンジン80に組付けた後の駆動時には、図20(c)に示すようにストッパ部材47iが出力側支持板62に押し込まれて解除状態となり、出力軸12は無制限に回転可能となる。
(その他の実施形態)
(ア)上記実施形態では、入力ギア41と第1ギア42との関係により、入力軸11の回転は減速して入力側副軸51に伝達される。また、第2ギア43と出力ギア44aとの関係により、出力側副軸52の回転は減速して出力軸12に伝達される。すなわち、「減速→減速」かつ「全体として減速」の関係にある。ここで、入力軸11の逆転時にワンウェイクラッチ30の外輪である出力軸12を内輪である中間軸13に対して空転させるため、出力軸12の回転数が入力軸11の回転数よりも小さいこと、つまり、動力伝達装置10が「全体として減速」することは必須の要件である。
しかし、入力軸11と入力側副軸51との回転数の関係、及び出力側副軸52と出力軸12との回転数の関係は、上記実施形態のように「減速→減速」に限らず、「等速→減速」または「減速→等速」としてもよい。あるいは、「少し増速→多いに減速」または「多いに減速→少し増速」とすることで「全体として減速」としてもよい。いずれの実施形態も、噛み合うギア同士の歯数およびピッチ円直径を調整することで実現することができる。
ここで、「等速→減速」または「少し増速→多いに減速」の場合、式2における「Z」は1または1より小さい値となる。
(イ)動力伝達装置10の説明の冒頭に述べたように、出力軸12に代えて、あるいは出力軸12に加えて、出力側副軸52を目的動作機構に接続してもよい(図1参照)。これにより、2とおりの出力特性を選択または併用することができる。上記の(ア)で説明したように出力側副軸52と出力軸12との回転数の関係を多様に選択することで、動力伝達装置10の適用範囲をさらに広げることができる。
(ウ)入力軸11から出力軸12へ回転力を伝達する各「伝動部材」は、平歯車に限らず、はすば歯車、ウォーム、遊星歯車であってもよく、あるいは、摩擦伝達、ベルトとプーリ、チェーンとスプロケット等、回転を伝達するものであれば形式を問わない。
(エ)「一方向回転力伝達部材」および「二方向回転力伝達部材」は、上記実施形態のワンウェイクラッチおよびツーウェイクラッチに限らず、他の形式のものであってもよい。例えば、ワンウェイクラッチに代えて反転防止ラチェットを用いてもよい。
(オ)上記実施形態では、ワンウェイクラッチ30の外輪31は出力軸12と一体に設けられ、内輪32は中間軸13と一体に設けられる。しかし、外輪31は出力軸12と別体に形成され、同軸に結合されてもよい。また、内輪32は中間軸13と別体に形成され、同軸に結合されてもよい。
(カ)カップリング20を構成する突起部22およびストッパ部24は上記実施形態の構成に限らず、入力ロータ21と中間ロータ23とを所定の遊び角度θの範囲で相対回転可能とする構成であれば、どのような構成であってもよい。
また、カップリング20を構成する入力ロータ21は入力軸11と別体に形成され、同軸に結合されてもよく、中間ロータ23は中間軸13と別体に形成され、同軸に結合されてもよい。
(キ)ワンウェイクラッチ30の切替角度λ1、ツーウェイクラッチ50の切替角度λ2および入力側減速比Zの関係が「Z×λ2≦λ1」である場合には「θ=0」であっても式3が成立することから、遊び角度θを設ける必要がない。よって、カップリングを無くして入力軸11と中間軸13とを直結してもよい。その場合、入力軸11がワンウェイクラッチ30の内輪32となり得る。
(ク)出力軸12の回転位置を位置決めし保持するための規制部材および当接部の構成は、上記実施形態に限定されない。
例えば、「規制部材を着脱自在とし、あるいは係合状態と解除状態とを切替可能とする」実施形態について、上記第8および第9実施形態のようにストッパ部材を軸方向に押し込むことで係合状態を解除する形態の他、ストッパ部材を軸方向に引き抜いて係合状態を解除してもよい。また、軸方向と直角方向、すなわち出力側支持板62の面方向に沿ってスライドまたは回転することで、係合状態と解除状態とを切り替えるようにしてもよい。
(ケ)上記実施形態では、入力軸11側から見てCW方向を「正転」、入力軸11側から見てCCW方向を「逆転」と定義したが、その逆であってもよい。
(コ)本発明の動力伝達装置は、可変圧縮比エンジンに限らず、正逆転で入力軸と出力軸との変速比および伝達トルクを変更する種々の装置に適用可能である。
以上、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施することができる。
10 ・・・動力伝達装置、
11 ・・・入力軸、
12 ・・・出力軸、
13 ・・・中間軸、
17 ・・・モータ(駆動手段)、
20 ・・・カップリング、
30 ・・・ワンウェイクラッチ(一方向回転力伝達部材)、
31 ・・・外輪、
32 ・・・内輪、
41 ・・・入力ギア(入力伝動部材)、
42 ・・・第1ギア(第1伝動部材)、
43 ・・・第2ギア(第2伝動部材)、
44a〜44i・・・出力ギア(出力伝動部材)、
46a〜46i・・・当接部、
47a〜47g・・・ストッパピン(規制部材)、
47h、47i・・・ストッパ部材(規制部材)、
47j ・・・ストッパキー(規制部材)、
50 ・・・ツーウェイクラッチ(二方向回転力伝達部材)、
51 ・・・入力側副軸、外輪、
52 ・・・出力側副軸、内輪、
60 ・・・主支持体(ハウジング)、
62 ・・・出力側支持板(ハウジング)、
80 ・・・可変圧縮比エンジン。

Claims (4)

  1. 駆動手段によって駆動される入力軸の回転力を出力軸へ伝達し、前記入力軸の一方の回転方向への回転を正転とし前記入力軸の他方の回転方向への回転を逆転とすると、前記入力軸の正転時には前記出力軸を前記入力軸の回転と等速に回転させ、前記入力軸の逆転時には前記出力軸を前記入力軸の回転に対し減速して回転させる動力伝達装置であって、
    前記入力軸に固定され、前記入力軸とともに回転する入力伝動部材と、
    前記入力軸とは別の軸上に設けられる入力側副軸に固定され、前記入力伝動部材の回転を伝達されて前記入力側副軸とともに回転する第1伝動部材と、
    前記出力軸とは別の軸上に設けられる出力側副軸に固定され、前記出力側副軸とともに回転する第2伝動部材と、
    前記出力軸に固定され、前記第2伝動部材の回転を伝達されて前記出力軸とともに回転する出力伝動部材と、
    前記入力軸、前記出力軸、前記入力側副軸および前記出力側副軸を回転可能に支持するハウジングと、
    前記出力伝動部材または前記ハウジングの一方に設けられ、前記出力伝動部材または前記ハウジングの他方に設けられる当接部に当接可能な規制部材と、
    前記入力軸の正転時に前記入力軸の正転力を前記出力軸に伝達し、前記入力軸の逆転時に前記出力軸を空転させることが可能な一方向回転力伝達部材と、
    前記入力側副軸の回転力を前記出力側副軸に伝達し、前記出力側副軸の回転力に対して前記入力側副軸を空転させることが可能な二方向回転力伝達部材と、
    を備え、
    前記駆動手段によって前記入力軸が駆動されるとき、
    前記入力軸の正転時、前記入力軸の正転力が前記一方向回転力伝達部材を経由して前記出力軸に伝達され、前記入力軸の逆転時、前記入力軸の逆転力が前記入力伝動部材、前記第1伝動部材、前記入力側副軸、前記二方向回転力伝達部材、前記出力側副軸、前記第2伝動部材、前記出力伝動部材を経由して前記出力軸に伝達され、
    前記駆動手段による駆動が停止しているとき、
    前記出力軸を逆転させると前記出力軸の逆転力が前記一方向回転力伝達部材を経由して前記入力軸に伝達され、前記出力軸を正転させると前記一方向回転力伝達部材によって且つ前記二方向回転力伝達部材によって前記出力軸は空転し、前記出力軸を正転させ前記規制部材を前記当接部に当接させることにより、前記出力軸の前記ハウジングに対する回転位置を位置決め可能であることを特徴とする動力伝達装置。
  2. 前記規制部材は、前記ハウジングに設けられ、
    前記出力伝動部材は、前記出力軸を中心とする扇形板状に形成され、正転方向に向く壁が前記当接部を構成することを特徴とする請求項1に記載の動力伝達装置。
  3. 前記規制部材は、前記出力伝動部材または前記ハウジングに固定されることを特徴とする請求項1または2に記載の動力伝達装置。
  4. 前記規制部材は、前記出力伝動部材または前記ハウジングに着脱自在、あるいは係合状態と解除状態とを切替可能に設けられることを特徴とする請求項1または2に記載の動力伝達装置。
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