JP2012216441A - フィールドエミッションランプ - Google Patents

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健彦 西ヶ谷
Yasuhiko Nishi
泰彦 西
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賢治 宗宮
Shin Manjo
伸 萬城
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Abstract

【課題】 イオンアタックに強く、二極構造にできるフィールドエミッションランプを提供する。
【解決手段】 上記課題は、カソード電極と、前記カソード電極の表面に設けられた電界放出層と、アノード電極と、前記アノード電極に形成された蛍光体層とを具備するフィールドエミッションランプであって、前記電界放出層はカーボンナノチューブ集合体で構成されており、前記カーボンナノチューブ集合体は、隣接する複数本の三層以上の多層カーボンナノチューブが平行に同一方向を向いて結合しているものを含み、532nmの波長を有するレーザーを照射して得られるラマンスペクトルにおいて、1860±20cm−1にピークAを有し、1580±20cm−1にピークBを有し、当該ピークAの相対強度が当該ピークBの相対強度の0.2以上であることを特徴とするフィールドエミッションランプによって解決される。
【選択図】 図1

Description

本発明は、カーボンナノチューブ(CNT)を用いたフィールドエミッションランプに関するものである。
従来の照明装置は白熱電球や蛍光灯が一般的であったが、最近は、消費電力が少ないLED電球が普及し始めている。これらの光源は点光源または線光源であるため、照度分布を均一化するために、拡散板やレンズなどの光学部材を必要としていた。さらに、これらの光源からは程度の差はあっても光ると共に熱も発生するため、放熱機構も設けなければならなかった。
これらに対し、低消費電力で高輝度のランプとして、真空中で冷陰極電子放出源から電界放出させた電子を蛍光体に衝突させることにより、蛍光体を励起発光させる電界電子放出(フィールドエミッション)型の照明ランプ(Field Emission Lamp :FEL)が開発されている。
例えば、特許文献1には、カソード電極と、ゲート電極と、アノード電極とが真空容器中に配置されたフィールドエミッションランプにおいて、前記カソード電極は、突起部または溝部が形成された基板と、前記基板の突起部または溝部の表面に形成されたナノ炭素材料とを含むナノ炭素材料複合基板で形成されていることを特徴とするフィールドエミッションランプが開示されている。
特開2010−86792号公報
しかし、従来のフィールドエミッションランプは、次の様な問題があった。
従来のフィールドエミッションランプに用いられているCNTは、結晶性が悪く壁厚が薄い。そのため、イオンアタックに弱く、寿命を長くするためには、三極構造にしてカソード電極部の電圧を低くする必要があった。三極構造にすると構造が複雑になり、ランプも大きくなった。
すなわち、電子が放出されると、真空室内を漂う分子や原子に衝突してこれらの分子や原子は電子バランスが崩れてイオン化する。イオン化すると電界中で引力を受けるのでイオン化した分子や原子はカソードであるCNTに衝突し(イオンアタック)、その衝撃でCNTは損傷を受ける。一方、三極構造にするとゲート(引き出し電極)があるのでアノードとカソードの間の電位差を小さくでき、そのため電界が小さくなってイオンアタックが弱められる。そこで、従来のCNTを用いたフィールドエミッションランプでは三極構造を採用していた。
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討の結果、本発明者らが先に開発したカーボンナノチューブ集合体は、結晶性が良好で壁厚も充分にあり、イオンアタックにも強いため、二極構造にしても充分使用できるものであることを見出した。
そこで、本発明のフィールドエミッションランプは、このカーボンナノチューブ集合体を電界放出層に用いたことを特徴としている。
すなわち、本発明は、カソード電極の表面に設けられた電界放出層を、隣接する複数本の三層以上の多層カーボンナノチューブが平行に同一方向を向いて結合しているものを含み、532nmの波長を有するレーザーを照射して得られるラマンスペクトルにおいて、1580±20cm−1にピークBを有し、1860±20cm−1にピークAを有し、ピークAの相対強度がピークBの相対強度の0.2以上であるカーボンナノチューブ集合体で構成されていることを特徴とするフィールドエミッションランプを提供するものである。
(フィールドエミッションランプの効果)
・本フィールドエミッションランプは、用いているCNTの耐久性が高いので、二極構造にできる。したがって、構造がシンプルで、コンパクト化および低コスト化を図れる。
・CNT自体の駆動電圧が低いので、省エネルギーであり、電源部も小型コンパクト化および低コスト化を図れる。
(平板状の面発光型フィールドエミッションランプの効果)
・発光面の照度分布が均一な面発光である。
(平板状の面発光型フィールドエミッションランプを備えた照明装置の効果)
・屋内競技場の天井照明として用いた場合、選手などの影ができなくなるので、野球やサッカーなどが心地よく観戦できる。
・水槽の天井照明として用いた場合、魚などの影ができなくなるので、観賞しやすい。
・乗り物(車、バス、電車、飛行機など)の車内照明として用いた場合、全体が明るくなって眩しくない。光がやさしい感じになり、高級感が出せる。
・事務所、勉強部屋、学習塾などの天井照明として用いた場合、人体や物の影ができなくなるので、読み書きなどが快適にできる。
・バッテリー電源を使用する非常用照明として用いた場合、消費電力が少ないので、長時間照明できる。
・自動車のヘッドライトなどに用いた場合、バッテリーへの負荷を少なくできる。特に電気自動車で効果が高い。また、任意の形状の面全体を発光させることが可能なので、ライトや自動車などのデザインの自由度が大きい。
・ランプ交換が困難な場所(トンネルの天井、高層ビルの外壁など)の照明に用いた場合、寿命が長いので、交換頻度が少なくなる。
・ディスコの照明に用いた場合、発光の応答性が速いので、音楽と連動して照明を点滅させることができる。
(平板状の面発光型フィールドエミッションランプを備えた撮影用光源の効果)
・写真、映画、テレビなどの撮影を行う場合、太陽光や人工照明などからの直接光以外に、その光線をレフ板で反射させて間接光として利用している。被写体の意図しない影を薄くできて、美しい画像や映像の撮影が可能になる。平板状の面発光型フィールドエミッションランプを撮影用光源として用いることにより、直接光がなくても、同様の効果が得られる。
(平板状の面発光型フィールドエミッションランプを備えたシャウカステンの効果)
・パネルの照度が均一なので、レントゲン写真などが見やすく判定の精度が上がる。
二極構造の本発明のフィールドエミッションランプの概略構造を示す側面部分断面図である。 三極構造の本発明のフィールドエミッションランプの概略構造を示す側面部分断面図である。 本発明の実施例で得られたカーボンナノチューブ集合体の透過型電子顕微鏡の画像である。
フィールドエミッションランプとしては、冷陰極電子放出源を形成するカソード電極、そこから放出された電子を受けとるアノード電極、これらを収容し、内部を真空に保つハウジングが必要である。
カソード電極は、基本的に基板とその上に形成される電界放出層によりなる。
基板は、電界放出層を保持して固定するものであり、単結晶シリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素、窒素ガリウム、炭化珪素などの半導体や銅、ステンレス系基材、ニッケル系基材、42アロイなどの金属系基材、さらにはガラス、セラミックスなどを使用することができる。厚みは特に制限されないが、通常100〜2000μm程度である。
本発明では、この電界放出層として、隣接する複数本の三層以上の多層カーボンナノチューブが平行に同一方向を向いて結合しているものを含み、532nmの波長を有するレーザーを照射して得られるラマンスペクトルにおいて、1860±20cm−1にピークAを有し、1580±20cm−1にピークBを有し、当該ピークAの相対強度が当該ピークBの相対強度の0.2以上であるカーボンナノチューブ集合体を用いたところに特徴がある。
このカーボンナノチューブ集合体は、隣接する複数本の三層以上の多層カーボンナノチューブが平行に同一方向を向いて互いに結合しているものである。
この多層カーボンナノチューブの層数は3〜30程度、多くは3〜20程度である。多層カーボンナノチューブの直径としては、3〜20nmであり、多くは5〜13nmである。長さは1〜20μm程度であり、多くは1〜16μmである。この多層カーボンナノチューブが複数本、すなわち、互いに隣接する2〜10本程度、通常2〜5本程度の多層カーボンナノチューブが結合しているものであり、透過型電子顕微鏡の観察によりそれらが並列に揃った状態にあることが観察されている。
そして、532nmの波長を有するレーザーを照射して得られるラマンスペクトルにおいて、1580±20cm−1にピークBを有し、1860±20cm−1にピークAを有し、ピークAの相対強度がピークBの相対強度の0.2以上、通常、0.2〜2.0程度、多くは0.2〜1.6程度であることを特徴としている。この相対強度比は、レーザー光の波長が633nmでも0.2以上であるが、波長が785nmでは0.2未満になる。なお、1860±20cm−1のピークとともに、1830±5cm−1付近にも別のピークが出現することがあるが、その場合、この二つのピークの相対強度を合計してピークAの相対強度とする。
このような発明のカーボンナノチューブ集合体は、水素や水分を含まない非酸化性ガスを放電用ガスおよび冷却用ガスとして用いる外は、特許第3912273号公報に記載されている方法と同様にして作製することができる。
すなわち、製造装置は、アーク放電法でカーボンナノチューブ(CNT)を製造する公知の装置を用いればよく、陽極には炭素材料あるいはそれにCNT合成の触媒作用を有する触媒を混合した混合材料を棒状、板状等に整形して用いることが好ましい。これらは、内部に放電用ガスの通路を設けた中空状(筒状)としてもよい。
陰極も炭素系材料、特に黒鉛化が進行していない炭素質材料が好ましい。形状は、板状、丸棒状等如何なる形状であってもよい。
アーク放電を誘導してその方向を安定させるために陽極から陰極に向けて放電用ガスを流す。この放電ガスの通路は陽極の外側に放電用ガス管を付設してもよく、あるいは陽極を管内に収容して陽極と該管の内周面の間に形成される環状の空隙を放電用ガスの通路としてもよいが、陽極を中空筒状にしてその中空部を放電用ガスの通路とすることが好ましい。
本発明においては、この放電用ガスに、水素や水分を含まない非酸化性ガスを用いる。非酸化性ガスの例としては、アルゴン、キセノン等の不活性ガスや窒素等を挙げることができる。放電用ガスに含まれる水分は、放電ガスの通路にシリカゲルのような水分を吸湿する材質を充填した容器を設置し、そこに放電ガスを通気させることより抑制することが可能である。また、事前に水分を十分に除去する形で注入されている市販ボンベを使用することも可能である。水分量としては、50ppm以下にすることが好ましい。
また、炭素陰極に含まれる水分も本発明のカーボンナノチューブ集合体の生成を阻害するので予め炭素陰極を充分に水分を除去して用いる。
除去方法としては、湿度を極力下げた恒温室や真空に引いたチャンバー中に陰極を入れ、製造前に一定時間保持する方法や加熱による方法などがある。保持時間としては、2時間以上が好ましい。
このようなカーボンナノチューブ集合体の基板への固着方法としては、例えば、ペースト化して印刷法による成膜、有機溶媒中で分散処理をしてスプレー法により成膜する方法などを利用できる。
アノード電極は、ガラス等の透明基板のカソード対向面に、電子線により励起発光する導電性蛍光膜が設けられているものである。この導電性蛍光膜は、蛍光体自体に導電性を持っているものを用いてもよく、あるいは、基板上に導電膜を設けてその上に電子線励起蛍光体を配置してもよい。
本発明のフィールドエミッションランプは二極構造の外、三極構造をとることもできる。三極構造の場合には、通常カソード電極とアノード電極に引き出し電極等と呼ばれる電子線を加速する電極を設ける。
カソード電極とアノード電極との間隔は、二極構造で50μm〜1mm、三極構造で1mm〜10mm程度である。
これらの電極は、少なくとも投光面が透明で内部を真空に保てるハウジングに収容される。ハウジングの材料は特段の事情がなければガラスでよく、カソード電極やアノード電極の基板をその一部として利用できる。
本発明のフィールドエミッションランプは、平板状の面発光型とすることができ、各種の照明装置、撮影用光源、シャウカステンなどに広く利用できる。
カーボンナノチューブを含むテープ状物質の合成は、陽極電極を10mmΦの炭素電極を用い、陰極として直径35mmの円柱状炭素電極(電気抵抗率4600μΩ・cm、熱伝導率31W/m・K、表面の算術平均粗さ(Ra)3.2μm)を用いた。陰極電極は合成開始24時間前より常温で湿度を10%以下にした部屋で保管し、乾燥したものを用いた。陰極電極を回転させるとともに、陽極電極を陰極電極の軸方向に直線的に移動させて、陰極電極上に螺旋を描く形で陰極点を移動させて行った。陰極の回転速度は1.5回転/分であり、陽極の移動速度は35mm/分であった。また、アーク放電は開放空間(大気圧下・大気雰囲気中)で行い、図示しないガス供給装置により、アーク放電用ガスを1リットル/分で送給した。放電用ガスとしては、水分を5ppm以下にした市販の高純度アルゴンガスを用いた。また、冷却用ガスとしては水分を5ppm以下にした市販の高純度窒素ガスを用いた。放電条件は、100A−20Vであった。この条件で合成すると、幅2〜10mm程度、厚さ100μm程度のカーボンナノチューブ集合体を含むテープ状物質が合成できた。得られたカーボンナノチューブ集合体の透過型電子顕微鏡の画像を図4に示す、また、波長が532nm、633nm、785nmのレーザー光を照射して、本発明のカーボンナノチューブ集合体のラマンスペクトルを測定し、ピークAの強度とピークBの強度の比を求めた結果、波長が532nmでは1.65、633nmでは0.77、785nmでは0.06であった。さらに、レーザーの波長を514.5nmに変えて同様に測定したが、波長が532nmのときとほぼ同じラマンスペクトルとなった。
このカーボンナノチューブ集合体を用いて二極構造のフィールドエミッションランプを作製した。その概略構造を図1に示す。
同図に示すように、このフィールドエミッションランプは、カソード電極とアノード電極よりなり、カソード電極は基板が導電膜付きのガラスであり、導電膜には、ITO(Indium Tin Oxide 酸化インジウムスズ)をスパッタリング法でガラスに蒸着した膜が用いられており、その上に電界放出層として、カーボンナノチューブ集合体が取着されている。
アノード電極は、基板としてのガラス板の上に導電性蛍光膜が設けられている。導電性蛍光膜には、青 ZnS:Ag,Al、緑ZnS:Cu,Al、赤Y2 O2 S:Euのように発光の色によって塗り分けられている。成膜方法は、有機溶媒に分散させてからペースト化し、スクリーン印刷法により塗布して形成されている。
これらを収容するハウジングは、アノード−グリッド間に適正な厚さの絶縁材で作製したスペーサーを配置し、グリッド−カソード間の電極間距離が適正に保てるように適当な寸法と形状の側壁を配置し、これらアノード、スペーサー、グリッド、側壁、カソードを真空封止する。そして、アノード、カソードの各基板に接続した端子を配線したものである。
次に、図2に示すような三極構造のフィールドエミッションランプを作製した。このフィールドエミッションランプは、カソード電極、引き出し電極、およびアノード電極よりなっている。
カソード電極は、基板上の導電膜上に、円孔が規則正しく多数設けられた絶縁層が配置され、各円孔の底部のカソード配線上にはカーボンナノチューブ集合体が取付けられている。絶縁層の上には引き出し電極が設けられている。
一方、アノード電極には基板のカソード電極対向面に蛍光体が赤、青、緑の三色に分かれて各円孔に対応して配置され、蛍光体間は黒枠(ブラックマトリックス)で仕切られている。
カソード−グリッド間に電界を印加することによりカソードから電子が引き出されるグリッド−アノード間に印加した電界によりカソードから引き出された電子はア
ノードに到達する。引き出された電子の約1〜3割がグリッドに流れ、7〜9割がアノードに流れる。アノード上の蛍光物質に当たった電子は蛍光物質を励起し、励起順位から基底順位に遷移する際にエネルギー差に応じて決まる波長の光を発する。
本発明のフィールドエミッションランプは、カーボンナノチューブがイオンアタックに強いので二極構造とすることができ、各種の照明装置、撮影用光源、シャウカステンなどに幅広く利用できる。

Claims (5)

  1. カソード電極と、前記カソード電極の表面に設けられた電界放出層と、アノード電極と、前記アノード電極に形成された蛍光体層とを具備するフィールドエミッションランプであって、
    前記電界放出層はカーボンナノチューブ集合体で構成されており、
    前記カーボンナノチューブ集合体は、隣接する複数本の三層以上の多層カーボンナノチューブが平行に同一方向を向いて結合しているものを含み、532nmの波長を有するレーザーを照射して得られるラマンスペクトルにおいて、1860±20cm−1にピークAを有し、1580±20cm−1にピークBを有し、当該ピークAの相対強度が当該ピークBの相対強度の0.2以上であることを特徴とするフィールドエミッションランプ。
  2. 平板状の面発光型であることを特徴とする請求項1に記載のフィールドエミッションランプ。
  3. 請求項2に記載のフィールドエミッションランプを備えることを特徴とする照明装置。
  4. 請求項2に記載のフィールドエミッションランプを備えることを特徴とする撮影用光源。
  5. 請求項2に記載のフィールドエミッションランプを備えることを特徴とするシャウカステン。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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