JP2012214957A - 吸音構造体 - Google Patents
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Abstract
【課題】 低周波数領域から高周波領域までの広い周波数領域に亘って良好な吸音性能を有し、しかも複数の吸音繊維を組み合わせたり、複数の吸音シートを複合化したりする必要が無い吸音構造体を提供すること。
【解決手段】 ポリマーマトリックス相1中に、p−(p−トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、及びN,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミンから選択された化合物からなる分散相2等を有する有機減衰材料を溶融紡糸して得られる吸音繊維3を構成繊維とするメルトブロー不織布4からなり、前記不織布4を構成する吸音繊維3が繊維の長さ方向に亘って繊維径が変化する繊維からなる吸音構造体。
【選択図】図1
【解決手段】 ポリマーマトリックス相1中に、p−(p−トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、及びN,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミンから選択された化合物からなる分散相2等を有する有機減衰材料を溶融紡糸して得られる吸音繊維3を構成繊維とするメルトブロー不織布4からなり、前記不織布4を構成する吸音繊維3が繊維の長さ方向に亘って繊維径が変化する繊維からなる吸音構造体。
【選択図】図1
Description
本発明は、低周波数領域から高周波領域までの広い周波数領域に亘って良好な吸音性能を有し、しかも複数の吸音繊維を組み合わせたり、複数の吸音シートを複合化したりする必要が無い吸音構造体に関する。
従来、低周波数領域から高周波領域までの広い周波数領域に亘って吸音性が発揮されるようにした吸音構造体としては、例えば異なる周波数領域に吸音特性を有する複数の吸音繊維を組み合わせて用いたことを特徴とするものが提案されている(例えば特許文献1参照)。
また、別の吸音構造体としては、ガラス繊維を構成繊維とする面密度500〜4000g/m2の不織布層と、0.1〜12dtexのポリオレフィン高強力繊維を構成繊維とする面密度50〜500g/m2の不織布層とからなるものもある(例えば特許文献2参照)。
また、さらに別の吸音構造体としては、目付けが10〜300g/m2、通気度が1.5〜10cc/cm2/sec、構成繊維の平均繊度が0.1〜2dtexである不織布と、その密度が0.01〜0.10g/cm3、厚みが5〜100mm、構成繊維の平均繊度が0.5〜10dtexである繊維構造体とが積層してなるものも提案されている(例えば特許文献3参照)。
ところが、従来より知られる吸音構造体にあっては、異なる周波数領域に吸音特性を有する複数の吸音繊維を組み合わせたり、或いは異なる周波数領域に吸音特性を有する複数の吸音シートを複合したりするなど、複合化されておらず単一の繊維或いは単一の層からなるものは無かった。
例えば複数の吸音繊維を組み合わせる場合、これらを所定の配合割合に配合する手間、配合した後は、これらを一体化する必要があった。一方、複数の吸音シートを複合する場合には、接着等の加工が必要であり、接着等の加工後は剥離等の問題が生じる恐れもあった。
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、低周波数領域から高周波領域までの広い周波数領域に亘って良好な吸音性能を有し、しかも複数の吸音繊維を組み合わせたり、複数の吸音シートを複合化したりする必要が無い吸音構造体を提供することを目的とするものである。
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、有機減衰材料を溶融紡糸して得られる吸音繊維を構成繊維とするメルトブロー不織布からなり、前記メルトブロー不織布を構成する吸音繊維が繊維の長さ方向に亘って繊維径が変化する長繊維からなることを特徴とする吸音構造体をその要旨とした。
請求項2に記載の発明は、有機減衰材料が、ポリマーマトリックス相中に、p−(p−トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、及びN,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミンから選択された1種若しくは2種以上の化合物からなる分散相を有することを特徴とする請求項1に記載の吸音構造体をその要旨とした。
請求項3に記載の発明は、複数の異なる分散相を有する有機減衰材料又は異なる分散相を有する複数の有機減衰材料を溶融紡糸して得られる吸音繊維を構成繊維とするメルトブロー不織布からなることを特徴とする請求項2に記載の吸音構造体をその要旨とした。
請求項4に記載の発明は、異なる分散相を有する複数の有機減衰材料を溶融紡糸して得られる複数の吸音繊維を構成繊維とするメルトブロー不織布からなることを特徴とする請求項2に記載の吸音構造体をその要旨とした。
請求項5に記載の発明は、有機減衰材料を含む溶融ポリマーを紡糸して得られる吸音繊維を構成繊維とするメルトブロー不織布からなる吸音構造体の製造方法であって、
前記溶融ポリマーをノズルオリフィスから吐出させ、これに高温のジェット気流を噴射させて紡糸するときに、前記溶融ポリマーの吐出時の温度、吐出量、高温ガスのガス圧及びガス温度のうちの少なくとも1つを変動させることにより、或いは紡糸後に延伸する場合には、その延伸速度を変更することにより、前記メルトブロー不織布を構成する吸音繊維の繊維径を長さ方向に亘って変化させたことを特徴とする吸音構造体の製造方法をその要旨とした。
前記溶融ポリマーをノズルオリフィスから吐出させ、これに高温のジェット気流を噴射させて紡糸するときに、前記溶融ポリマーの吐出時の温度、吐出量、高温ガスのガス圧及びガス温度のうちの少なくとも1つを変動させることにより、或いは紡糸後に延伸する場合には、その延伸速度を変更することにより、前記メルトブロー不織布を構成する吸音繊維の繊維径を長さ方向に亘って変化させたことを特徴とする吸音構造体の製造方法をその要旨とした。
請求項6に記載の発明は、有機減衰材料が、ポリマーマトリックス相中に、p−(p−トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、及びN,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミンから選択された1種若しくは2種以上の化合物からなる分散相を有することを特徴とする請求項5に記載の吸音構造体の製造方法をその要旨とした。
請求項7に記載の発明は、複数の異なる分散相を有する有機減衰材料又は異なる分散相を有する複数の有機減衰材料を配合した溶融ポリマーを紡糸することを特徴とする請求項6に記載の吸音構造体の製造方法をその要旨とした。
請求項8に記載の発明は、異なる分散相を有する有機減衰材料を配合した複数の溶融ポリマーを紡糸することを特徴とする請求項6に記載の吸音構造体の製造方法をその要旨とした。
請求項9に記載の発明は、異なる分散相を有する有機減衰材料を配合した複数の溶融ポリマーを準備し、前記複数の溶融ポリマーをそれぞれ複数のノズルオリフィスから吐出させ、これらに高温のジェット気流を噴射させて紡糸することを特徴とする請求項8に記載の吸音構造体の製造方法をその要旨とした。
本発明の吸音構造体及びその製造方法にあっては、有機減衰材料、好ましくはポリマーマトリックス相中に、p−(p−トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、及びN,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミンから選択された1種若しくは2種以上の化合物からなる分散相を有する有機減衰材料を溶融紡糸して得られる吸音繊維を構成繊維とするメルトブロー不織布からなり、前記吸音繊維が繊維の長さ方向に亘って繊維径が変化する長繊維からなるので、1本の繊維の中で繊維径が太い部分が低周波数領域の音を効果的に減衰し、繊維径が細い部分が高周波数領域の音を効果的に減衰するようになっており、低周波数領域から高周波数領域までの広い周波数領域で良好な吸音効果が発揮されるようになっている。
またこの吸音構造体及びその製造方法にあっては、溶融ポリマーの吐出時の温度、吐出量、高温ガスのガス圧及びガス温度のうちの少なくとも1つを変動させることにより、或いは紡糸後に延伸する場合には、その延伸速度を変更するといった簡単な方法により、繊維の繊維径が長さ方向に亘って変化する吸音繊維を構成繊維とするメルトブロー不織布を得ることができ、複数の吸音繊維を組み合わせたり、複数の吸音シートを複合したりするなどの手間を必要としない。
以下、本発明の吸音構造体及びその製造方法についてさらに詳しく説明する。本発明の吸音構造体は、有機減衰材料を溶融紡糸して得られる吸音繊維を構成繊維とするメルトブロー不織布からなる。
本発明の有機減衰材料は、振動や音といったエネルギーを効果的に減衰する働きを持つ材料であり、そのマトリックス相を構成するポリマーとしては、熱可塑性樹脂を全て用いることができるが、中でもポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン、それらの共重合体、好ましくはカルボン酸とエポキシ等の極性基をグラフト又は共重合させたポリオレフィン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリルスチレン共重合体(AS)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、塩素化ポリエチレン(CPE)、及びエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)から選ばれる1種若しくは2種以上が好ましく、さらに好ましくはウェブの形成性に優れるポリプロピレンである。
尚、上記マトリックス相を構成するポリマーの選択に際しては、後述するp−(p−トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン等の分散相を構成する成分との相溶性のほか、当該有機減衰材料の適用される材料(用途)や使用形態に応じて、取り扱い性、成形性、入手容易性、温度性能(耐熱性や耐寒性)、耐候性、価格なども考慮するのが望ましい。
有機減衰材料としては、上記ポリマーマトリックス相中に、p−(p−トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、及びN,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミンから選択された1種若しくは2種以上の化合物(以下、本件化合物という)からなる分散相を有するものを挙げることができる。
本件化合物は、上記マトリックス相を構成するポリマー中に混合されて、前記マトリックス相中に分散相を形成し、当該有機減衰材料に加わった振動や音といったエネルギーを効果的に減衰する働きを持つ。さらに詳しくは、分散相を構成する本件化合物は、本件化合物毎にエネルギー減衰効果が異なっている。
この分散相は、本件化合物がミクロ相分離した分散相として、或いは完全相溶した分散相としてマトリックス中に存在している。またこの分散相は、上記マトリックス相中に平均1ミクロン以下、より好ましくは平均0.1ミクロン以下の大きさで存在していることが、上記エネルギー減衰効果をより効果的に発揮させる上で望ましい。
この分散相を構成する本件化合物は、マトリックス相を構成するポリマー100重量部に対し1〜200重量部の割合で含まれていることが望ましい。本件化合物の含有量が1重量部を下回る場合、十分なエネルギー減衰性を得ることができず、また200重量部を上回る場合には、範囲を超える分だけの減衰性が得られず不経済となるからである。
また、振動や音のエネルギーには、低周波領域から高周波領域まで様々な種類があり、用途や使用状態によって求められる振動や音の種類も異なることから、要求される振動や音の種類に応じてマトリックス相を構成するポリマーや分散相を構成する本件化合物を1種若しくは2種以上を選択し、選択されたマトリックス相を構成するポリマー中に本件化合物を混合することにより、要求される振動や音の種類に応じたより効果的なエネルギー減衰効果を有する有機減衰材料を得ることができるのである。
例えば図1は、要求される振動や音の種類に応じてマトリックス相を構成するポリマー及び分散相を構成する本件化合物をそれぞれ1種類ずつ選択し、選択されたマトリックス相を構成するポリマー中に同じく選択された1種類の本件化合物を混合し、これを溶融紡糸することによって得られた吸音繊維からなるメルトブロー不織布を示したものであり、メルトブロー不織布4を構成する吸音繊維3のマトリックス相1中には1種類の本件化合物の分散相2が形成されている。
図2に示す形態は、要求される振動や音の種類に応じてマトリックス相を構成するポリマー及び分散相を構成する本件化合物の組合せを2種類選択し、それぞれ選択されたマトリックス相を構成するポリマー中に同じく選択された1種類の本件化合物を混合し、これを溶融紡糸することによって得られた2種類の吸音繊維からなるメルトブロー不織布を示したものであり、メルトブロー不織布4を構成する各吸音繊維3a、3bのマトリックス相1a、1b中にはそれぞれ1種類の本件化合物の分散相2a、2bが形成されている。
図3に示す形態は、要求される振動や音の種類に応じて1種類のマトリックス相を構成するポリマーと2種類の分散相を構成する本件化合物を選択し、選択されたマトリックス相を構成するポリマー中に同じく選択された2種類の本件化合物を混合し、これを溶融紡糸することによって得られた1種類の吸音繊維からなるメルトブロー不織布を示したものであり、メルトブロー不織布4を構成する吸音繊維3のマトリックス相1中には2種類の本件化合物の分散相2a、2bが形成されている。
尚、本発明の有機減衰材料中には、上述の成分の他に、例えばマイカ鱗片、ガラス片、グラスファイバー、カーボンファイバー、炭酸カルシウム、バライト、沈降硫酸バリウム等の物質や、腐食防止剤、染料、酸化防止剤、制電剤、安定剤、湿潤剤などを必要に応じて適宜加えることができる。
本発明の吸音構造体を構成するメルトブロー不織布は、上記有機減衰材料をメルトブロー法によって溶融紡糸して得られる吸音繊維からなる。メルトブロー不織布を構成する吸音繊維は、例えば図1に示すように、繊維の長さ方向に亘って繊維径が変化する繊維(主として長繊維)からなる。繊維の長さ方向に亘って繊維径が変化するとは、例えば図1に示すように、繊維の所定の長さ毎に又はランダムな長さ間隔で繊維径が異なる部分が形成されていることを意味している。
繊維径が変動する間隔をどのような間隔とするか、また、繊維径の変動の幅、即ち繊維の繊維径が最も細い部分と最も太い部分の差をどのような変動幅にするかについては、上述したように、1本の繊維の中で繊維径が太い部分は低周波数領域の音を効果的に減衰し、繊維径が細い部分は高周波数領域の音を効果的に減衰するようになっていることから、用途や使用状態に応じて要求される振動や音の種類に合わせて繊維の繊維径の変動幅並びに太い部分と細い部分の割合を適宜変更して決定するのが望ましい。
繊維径が変動する間隔をどのような間隔とするか、また、繊維径の変動の幅、即ち繊維の繊維径が最も細い部分と最も太い部分の差をどのような変動幅にするかについては、上述したように、1本の繊維の中で繊維径が太い部分は低周波数領域の音を効果的に減衰し、繊維径が細い部分は高周波数領域の音を効果的に減衰するようになっていることから、用途や使用状態に応じて要求される振動や音の種類に合わせて繊維の繊維径の変動幅並びに太い部分と細い部分の割合を適宜変更して決定するのが望ましい。
また、繊維の繊維径の変動幅並びに太い部分と細い部分の割合を決定する際には、本発明の吸音構造体が図1〜図3に示す形態を採り得ることから、これらの実施形態と合わせて検討するのが望ましい。
次に、本発明の吸音構造体の製造方法(以下、単に「本発明の方法」という)について説明する。尚、有機減衰材料、マトリックス相を構成するポリマー、分散相を構成する本件化合物については、上述したものと同じであるため、ここでの説明は割愛する。本発明の方法は、ポリマーマトリックス相中に本件化合物からなる分散相などを有する有機減衰材料を含む溶融ポリマーをメルトブロー法によって紡糸して得られる吸音繊維を構成繊維とするメルトブロー不織布からなる吸音構造体の製造方法である。
本発明の方法では、溶融ポリマーをノズルピースから吐出させ、これに高温のジェット気流を噴射させて紡糸するときに、前記溶融ポリマーの吐出時の温度、吐出量及び高温ガスのガス圧のうちの少なくとも1つを変動させることにより、或いは紡糸後に延伸する場合には、その延伸速度を変更することにより、前記メルトブロー不織布を構成する吸音繊維の繊維径を長さ方向に亘って変化させたことを特徴としている。
図4にはメルトブロー装置の概略図が示されている。メルトブロー装置10は、原料となる有機減衰材料を投入して溶融させ紡糸用の溶融ポリマーを製造する2つの押出機11a、11bと、各押出機11a、11bに接続されたポリマー配管12a、12bと、ポリマー配管12a、12bを通じて押出機11a、11bから押し出された溶融ポリマーが投入されるメルトブローダイ13とを備えている。押出機11a、11bには、要求される振動や音の種類に応じて選択されたマトリックス相を構成するポリマーと分散相を構成する本件化合物を投入する。
押出機11a、11bでは、マトリックス相を構成するポリマーと本件化合物とが混合されると共に、マトリックス相を構成するポリマーの溶融温度まで加熱され、溶融ポリマーが製造されるようになっている。押出機11a、11bで製造された溶融ポリマーは各ポリマー配管12a、12bを通じてメルトブローダイ13へと送られて紡糸される。
押出機11a、11bでは、マトリックス相を構成するポリマーと本件化合物とが混合されると共に、マトリックス相を構成するポリマーの溶融温度まで加熱され、溶融ポリマーが製造されるようになっている。押出機11a、11bで製造された溶融ポリマーは各ポリマー配管12a、12bを通じてメルトブローダイ13へと送られて紡糸される。
前記メルトブローダイ13は、複数のノズルオリフィス13aを含むノズルピース13cと、複数のノズルオリフィス13a近傍に設けられたコンプレッサー16から送られる高温のジェット気流の流路13bを形成するリップ間距離を0.2mmとしたリッププレート13dとを有しており、前記メルトブローダイ13の複数のノズルオリフィス13aから吐出された溶融ポリマーは、ノズルピース13cとリッププレート13dとから形成される気流噴出口から噴射されるジェット気流によって牽引細化されて繊維状となって押出されるようになっている。
また、メルトブローダイ13の繊維の押出方向には、コンベア18によって水平状に移動する捕集ネット14(コレクター)が配されており、この捕集ネット14上にメルトブローダイ13から押出された繊維が捕集されて堆積し、自己接着性繊維ウェブ15が形成されるようになっている。尚、捕集ネット14下部にはブロアー17が配されており、メルトブローダイ13からのジェット気流による押出しと共に捕集ネット14下部からのブロアー17によるエアー吸引とによってより効果的な繊維の捕集がなされるようになっている。図示の例では、捕集ネット14の上面とノズルオリフィス13aの下端との間の距離は360mmに設定されている。
本発明の方法は、上述の溶融ポリマーをノズルオリフィスから吐出させ、これに高温ガスのジェット気流を噴射させて紡糸するときに、前記溶融ポリマーの吐出時の温度、吐出量、高温ガスのガス圧及びガス温度のうちの少なくとも1つを変動させることにより、或いは紡糸後に延伸する場合には、その延伸速度を変更することにより、前記メルトブロー不織布を構成する吸音繊維の繊維径を長さ方向に亘って変化させている。
従来のメルトブロー不織布の製造方法では、ジェット気流の流速分布にバラツキがなく、繊維径分布や繊維分布が均質な目付ムラ、厚みムラの無いメルトブロー不織布を製造することを目的としており、そのような不織布を得るための様々な関連技術が開発されている。
一方、本発明の方法は、従来のメルトブロー不織布の製造技術とはまったく逆の方向を目指すものであり、溶融ポリマーの吐出時の温度、吐出量、高温ガスのガス圧及び温度を敢えて変動させることで、メルトブロー不織布を構成する吸音繊維の繊維径を長さ方向に亘って変化させているのである。
尚、溶融ポリマーを牽引細化して繊維状とし、移動する捕集ネット上に捕集するプロセスからなるメルトブロー不織布の製造に際しては、条件によっては、糸切れを起こしたり、それによるフライまたはショットが発生し、製品の外観を損ねる恐れがあるため、例えば溶融ポリマーの吐出時の温度及び高温ガスのガス圧を上げる一方で、吐出量を下げるなど、各条件のバランスを考慮して実施するのが望ましい。
一方、本発明の方法は、従来のメルトブロー不織布の製造技術とはまったく逆の方向を目指すものであり、溶融ポリマーの吐出時の温度、吐出量、高温ガスのガス圧及び温度を敢えて変動させることで、メルトブロー不織布を構成する吸音繊維の繊維径を長さ方向に亘って変化させているのである。
尚、溶融ポリマーを牽引細化して繊維状とし、移動する捕集ネット上に捕集するプロセスからなるメルトブロー不織布の製造に際しては、条件によっては、糸切れを起こしたり、それによるフライまたはショットが発生し、製品の外観を損ねる恐れがあるため、例えば溶融ポリマーの吐出時の温度及び高温ガスのガス圧を上げる一方で、吐出量を下げるなど、各条件のバランスを考慮して実施するのが望ましい。
本発明の吸音構造体の説明箇所で述べたとおり、本発明の吸音構造体は、用途や使用状態に応じてマトリックス相を構成するポリマーや分散相を構成する本件化合物を1種若しくは2種以上を選択し、これらを組み合わせることで様々な形態のものを得ることができる。
例えば図1に示すメルトブロー不織布からなる吸音構造体を製造する場合、要求される振動や音の種類に応じてマトリックス相を構成するポリマー及び分散相を構成する本件化合物をそれぞれ1種類ずつ選択し、これらを配合した溶融ポリマーを製造し、その溶融ポリマーを紡糸する。その紡糸の際に溶融ポリマーの吐出時の温度、吐出量、高温ガスのガス圧及び温度を変動させるのである。捕集ネット上には上記溶融ポリマーから造られた1種類の分散相を持つ吸音繊維が堆積し、1つの自己接着性繊維ウェブが形成され、図1に示すメルトブロー不織布を得ることができる。
例えば図1に示すメルトブロー不織布からなる吸音構造体を製造する場合、要求される振動や音の種類に応じてマトリックス相を構成するポリマー及び分散相を構成する本件化合物をそれぞれ1種類ずつ選択し、これらを配合した溶融ポリマーを製造し、その溶融ポリマーを紡糸する。その紡糸の際に溶融ポリマーの吐出時の温度、吐出量、高温ガスのガス圧及び温度を変動させるのである。捕集ネット上には上記溶融ポリマーから造られた1種類の分散相を持つ吸音繊維が堆積し、1つの自己接着性繊維ウェブが形成され、図1に示すメルトブロー不織布を得ることができる。
図2に示すメルトブロー不織布からなる吸音構造体を製造する場合には、要求される振動や音の種類に応じてマトリックス相を構成するポリマー及び分散相を構成する本件化合物の組合せを2種類選択し、これら2種類の有機減衰材料を別々の押出機に投入して、それぞれの押出機で2種類の溶融ポリマーを製造する。
そして、それぞれの溶融ポリマーを別々のノズルオリフィスから吐出させて紡糸する。その紡糸の際に溶融ポリマーの吐出時の温度、吐出量、高温ガスのガス圧及び温度を変動させるのである。捕集ネット上にはそれぞれの溶融ポリマーから造られた異なる性能の異なる2種類の吸音繊維が堆積し、1つの自己接着性繊維ウェブが形成され、図2に示すメルトブロー不織布を得ることができる。
そして、それぞれの溶融ポリマーを別々のノズルオリフィスから吐出させて紡糸する。その紡糸の際に溶融ポリマーの吐出時の温度、吐出量、高温ガスのガス圧及び温度を変動させるのである。捕集ネット上にはそれぞれの溶融ポリマーから造られた異なる性能の異なる2種類の吸音繊維が堆積し、1つの自己接着性繊維ウェブが形成され、図2に示すメルトブロー不織布を得ることができる。
図3に示すメルトブロー不織布からなる吸音構造体を製造する場合には、要求される振動や音の種類に応じて1種類のマトリックス相を構成するポリマーと2種類の分散相を構成する本件化合物を選択し、選択されたマトリックス相を構成するポリマー中に同じく選択された2種類の本件化合物を混合し、溶融ポリマーを製造し、紡糸する。その紡糸の際に溶融ポリマーの吐出時の温度、吐出量、高温ガスのガス圧及び温度を変動させるのである。これにより捕集ネット上には溶融ポリマーから造られた異なる性能の2種類の分散相を持つ吸音繊維が堆積し、1つの自己接着性繊維ウェブが形成され、図3に示すメルトブロー不織布を得ることができる。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲で自由に変更して実施することができる。
実施例
95重量%のホモポリプロピレン(S119「MFR:63」、株式会社プライムポリマー製)に5重量%のオクチル化ジフェニルアミンを添加したポリプロピレンペレットを用い、これを図4に示すメルトブロー装置10の押出機11aに投入した(本例では2つある押出機11a、11bのうち1つのみを用いた。)。押出機は、直径32mmの単軸押出機であり、メルトブローダイ13には、孔径0.15mm、ピッチ0.25mm、孔数1801のノズルラインナップを採用した。
95重量%のホモポリプロピレン(S119「MFR:63」、株式会社プライムポリマー製)に5重量%のオクチル化ジフェニルアミンを添加したポリプロピレンペレットを用い、これを図4に示すメルトブロー装置10の押出機11aに投入した(本例では2つある押出機11a、11bのうち1つのみを用いた。)。押出機は、直径32mmの単軸押出機であり、メルトブローダイ13には、孔径0.15mm、ピッチ0.25mm、孔数1801のノズルラインナップを採用した。
吐出量:0.025cc/分/孔、エアー吐出量:7Nm3/分、捕集ネットを移動させるコンベア速度:0.3m/分、というメルトブロー条件でメルトブローすることで、繊維径5μm程度、目付232g/m2、嵩高さ15mmのメルトブロー不織布を得た。
比較例
ホモポリプロピレン(S119「MFR:63」、株式会社プライムポリマー製)に100重量%のポリプロピレンペレットを用い、実施例と同様にして繊維径5μm程度、目付230g/m2、嵩高さ20mmのメルトブロー不織布を得た。
ホモポリプロピレン(S119「MFR:63」、株式会社プライムポリマー製)に100重量%のポリプロピレンペレットを用い、実施例と同様にして繊維径5μm程度、目付230g/m2、嵩高さ20mmのメルトブロー不織布を得た。
残響室法吸音率の測定
得られた実施例及び比較例に係る各メルトブロー不織布を350mm×700mmの大きさに裁断したものを各2枚用意し、それらを並べて700mm×700mmの大きさにすると共に、実施例と比較例の不織布では嵩高さが異なるため、厚さを10mmに揃えて試験片とし、各試験片について残響室法吸音率を測定した。残響室法吸音率の測定は、標準状態の条件下で、図5に示す試験装置30を用いて行った。
得られた実施例及び比較例に係る各メルトブロー不織布を350mm×700mmの大きさに裁断したものを各2枚用意し、それらを並べて700mm×700mmの大きさにすると共に、実施例と比較例の不織布では嵩高さが異なるため、厚さを10mmに揃えて試験片とし、各試験片について残響室法吸音率を測定した。残響室法吸音率の測定は、標準状態の条件下で、図5に示す試験装置30を用いて行った。
図5に示す試験装置30は、床31上に直接試験片32を置き(背面空気層0mm)、その周囲を高さ50mmの鉄アングル33で囲むと共に、実施例と比較例の不織布では嵩高さが異なるため、目の粗い金網34を試験片32上に置いて厚さを10mmに揃え、その上で金網34側から音を試験片32に当てることで吸音率を測定した。その測定結果を図6に示した。
図6から、比較例の吸音率のグラフと実施例の吸音率のグラフとを対比したとき、実施例に係る試験片の吸音率は、比較例の試験片に係る吸音率に対して1/3オクターブ分だけ低周波にシフトしていることが確認された。
この結果から、吸音材は本来、厚みに従って特定の周波数領域において吸音特性が生じるのであるが、本件化合物を添加することで吸音特性が生じる周波数領域を制御できることが確認された。
本発明は、建築物、防音壁、船舶、車両、電気機器、機械器具などに使用する吸音構造体として産業上好適に利用できる。
1 ・・・マトリックス相
2 ・・・分散相
3 ・・・吸音繊維
4 ・・・メルトブロー不織布
10 ・・・メルトブロー装置
11a・・・押出機
11b・・・押出機
13 ・・・メルトブローダイ
13a・・・ノズルオリフィス
14 ・・・捕集ネット
15 ・・・自己接着性繊維ウェブ
30 ・・・試験装置
32 ・・・試験片
2 ・・・分散相
3 ・・・吸音繊維
4 ・・・メルトブロー不織布
10 ・・・メルトブロー装置
11a・・・押出機
11b・・・押出機
13 ・・・メルトブローダイ
13a・・・ノズルオリフィス
14 ・・・捕集ネット
15 ・・・自己接着性繊維ウェブ
30 ・・・試験装置
32 ・・・試験片
Claims (9)
- 有機減衰材料を溶融紡糸して得られる吸音繊維を構成繊維とするメルトブロー不織布からなり、前記メルトブロー不織布を構成する吸音繊維が繊維の長さ方向に亘って繊維径が変化する長繊維からなることを特徴とする吸音構造体。
- 有機減衰材料が、ポリマーマトリックス相中に、p−(p−トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、及びN,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミンから選択された1種若しくは2種以上の化合物からなる分散相を有することを特徴とする請求項1に記載の吸音構造体。
- 複数の異なる分散相を有する有機減衰材料又は異なる分散相を有する複数の有機減衰材料を溶融紡糸して得られる吸音繊維を構成繊維とするメルトブロー不織布からなることを特徴とする請求項2に記載の吸音構造体。
- 異なる分散相を有する複数の有機減衰材料を溶融紡糸して得られる複数の吸音繊維を構成繊維とするメルトブロー不織布からなることを特徴とする請求項2に記載の吸音構造体。
- 有機減衰材料を含む溶融ポリマーを紡糸して得られる吸音繊維を構成繊維とするメルトブロー不織布からなる吸音構造体の製造方法であって、
前記溶融ポリマーをノズルオリフィスから吐出させ、これに高温のジェット気流を噴射させて紡糸するときに、前記溶融ポリマーの吐出時の温度、吐出量、高温ガスのガス圧及びガス温度のうちの少なくとも1つを変動させることにより、或いは紡糸後に延伸する場合には、その延伸速度を変更することにより、前記メルトブロー不織布を構成する吸音繊維の繊維径を長さ方向に亘って変化させたことを特徴とする吸音構造体の製造方法。 - 有機減衰材料が、ポリマーマトリックス相中に、p−(p−トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、及びN,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミンから選択された1種若しくは2種以上の化合物からなる分散相を有することを特徴とする請求項5に記載の吸音構造体の製造方法。
- 複数の異なる分散相を有する有機減衰材料又は異なる分散相を有する複数の有機減衰材料を配合した溶融ポリマーを紡糸することを特徴とする請求項6に記載の吸音構造体の製造方法。
- 異なる分散相を有する有機減衰材料を配合した複数の溶融ポリマーを紡糸することを特徴とする請求項6に記載の吸音構造体の製造方法。
- 異なる分散相を有する有機減衰材料を配合した複数の溶融ポリマーを準備し、前記複数の溶融ポリマーをそれぞれ複数のノズルオリフィスから吐出させ、これらに高温のジェット気流を噴射させて紡糸することを特徴とする請求項8に記載の吸音構造体の製造方法。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2018150656A (ja) * | 2017-03-14 | 2018-09-27 | 花王株式会社 | 不織布 |
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-
2012
- 2012-03-22 JP JP2012064884A patent/JP2012214957A/ja active Pending
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KR20210152474A (ko) | 2019-04-18 | 2021-12-15 | 쇼와덴코머티리얼즈가부시끼가이샤 | 흡음재 |
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