JP2012213554A - 歩行補助装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】スムースに歩行動作を補助する歩行補助装置を提供する。
【解決手段】歩行補助装置2は、大腿リンク5と下腿リンク9とコントローラ20を備えている。大腿リンク5と下腿リンク9は相互に揺動可能に連結されており、それぞれユーザの大腿と下腿に装着される。コントローラ20は、ユーザの歩幅から下腿リンクの最大揺動角Ag_maxと遊脚時間Tswingを定め、それらに基づいて遊脚軌道を決定する。そして、コントローラ20は、下腿リンクの揺動角が遊脚起動に追従するように下腿リンク9を制御する。ここで、遊脚軌道は、下腿リンクの目標揺動角が予め定められた初期角度Ag_sから単調増加し、最大揺動角Ag_maxへ達した後に単調減少して終端角度Ag_eまで、遊脚時間Tswingをかけて変化する曲線を描く。
【選択図】図1

Description

本発明は、ユーザの脚に装着して歩行動作を補助する歩行補助装置に関する。
ユーザの大腿と下腿に装着する多関節多リンク型の構造を有し、下腿リンクを揺動させて歩行時の脚の動きをガイドする歩行補助装置が研究されている。発明者らもそのような歩行補助装置を提案している(特許文献1)。特許文献1の歩行補助装置は、コントローラが、歩行時の脚の動きを記述した基準歩行パターンを記憶しており、ユーザの歩行動作が基準歩行パターンに追従するように下腿リンクを制御する。基準歩行パターンは具体的には下腿リンクの揺動パターンである。特許文献1の歩行補助装置では、ユーザの実際の歩行状態(歩幅と歩行周期と歩行傾斜面の少なくとも一つ)に応じて基準歩行パターンを補正し、補正された基準歩行パターンに基づいて下腿リンクを制御する。
特開2010−63813号公報
本明細書が開示する技術は、特許文献1の歩行補助装置を発展させ、より自然な歩行動作となるようにユーザを補助することのできる歩行補助装置を提供する。
本明細書が開示する歩行補助装置は、大腿リンク、下腿リンク、アクチュエータ、及び、コントローラを備えている。大腿リンクと下腿リンクは相互に揺動可能に連結されており、それぞれユーザの大腿と下腿に装着される。アクチュエータは、大腿リンクに対して下腿リンクを揺動させる。コントローラは、下腿リンクの揺動角が目標揺動角に一致するようにアクチュエータを制御する。
本明細書が開示する歩行補助装置の一態様では、コントローラは、ユーザの歩幅から下腿リンクの最大揺動角Ag_maxと遊脚時間Tswingを決定し、それらに基づいて遊脚軌道を決定する。遊脚軌道とは、大腿リンクに対する下腿リンクの目標揺動角の時系列データを意味する。本明細書では、ユーザの膝が伸びきった状態を揺動角=ゼロとし、ユーザの膝屈曲方向を揺動角の正値方向と定めて揺動角を定義する。遊脚軌道は、下腿リンクの目標揺動角が予め定められた初期角度Ag_sから単調増加し、最大揺動角Ag_maxへ達した後に単調減少して終端角度Ag_eまで、遊脚時間Tswingをかけて変化する曲線を描くように予め定められている。初期角度Ag_sと終端角度Ag_eは予め定められているが、最大揺動角Ag_maxと遊脚時間Tswingは、コントローラが歩行動作中にリアルタイムに決定する。即ちコントローラは、最大揺動角Ag_maxと遊脚時間Tswingを変数とする遊脚軌道の基本パターンを記憶しており、決定された最大揺動角Ag_maxと遊脚時間Tswingを基本パターンに当てはめて遊脚軌道を確定する。基本パターンは最大揺動角Ag_maxと遊脚時間Tswingを変数とする関数で与えられる。この関数(基本パターン)を、縦軸を揺動角にとり横軸に時間をとった座標系にてグラフ化すると、基本パターンは山型のグラフになるが、コントローラは、算出された最大揺動角Ag_maxに応じて山型のグラフの高さを決定し、算出された遊脚時間Tswingに応じてグラフの横幅を決定する。ただし、「山型」のグラフは、最大揺動角Ag_maxを境とする左右対称の曲線に限られないことに留意されたい。
より詳しくは、コントローラは、次の処理を行う。(1)歩行補助装置を装着した脚(以下、装着脚)が着地した第1タイミングにおける腰位置と装着脚の着地位置との間の前後方向の距離(第1距離)を計測する。第1タイミング以降、装着脚は立脚期となる。(2)次いで、装着脚が立脚期を経て離地した第2タイミングにおける腰位置と装着脚の離地位置との前後方向の距離(第2距離)を計測する。(3)第1距離と第2距離を加算した距離を歩幅として遊脚軌道を決定する。(4)第2タイミング以降、下腿リンクの揺動角が遊脚軌道に追従するようにアクチュエータを制御する。一般に、歩幅とは、前方の足が着地したときの両足間の前後方向の距離をいうが、上記の処理では、立脚の動きだけから歩幅を定める。これより、装着脚の立脚期のデータから、直後の装着脚の遊脚期の軌道を定めることができるという利点が得られる。即ち、装着脚が遊脚となる直前のデータで遊脚軌道を決めることができるので、立脚の動きとスムースに連続する遊脚軌道を生成できる。即ち、この歩行補助装置は、自然な歩行動作となるようにユーザの脚の動きをガイドする。
なお、本明細書でいう「遊脚期」や「遊脚軌道」は、必ずしも足が完全に離地するタイミングを始期、始点としなくともよい。これは、足が完全に離地する前の、足先は接地したままであるが踵が浮いている状態を遊脚期に含めるか立脚期に含めるかは定義次第であるからである。本明細書が開示する技術は、立脚期の終端時期(立脚の足先が腰位置よりも後に位置する期間)において、所定の条件、例えば、足位置が腰位置よりも所定の距離閾値以上後方にあり、かつ、足に加わる荷重(床反力)が荷重閾値を下回ったときを、遊脚期間の始点と定義する。なお、これとは異なる定義で遊脚期始点を定める場合であっても本明細書が開示する技術は適用できることに留意されたい。
最大揺動角Ag_maxの算出式の一例は、後述する(1)式である。また、遊脚時間Tswingの算出式の一例は後述する(2)式である。(1)式、(2)式において、Ks・S2(Sは歩幅)は、歩行速度の推定値に相当する。即ち、別言すれば、この歩行補助装置は、計測した歩幅から歩行速度を推定し、推定した歩行速度に基づいて最大揺動角Ag_max及び/又は遊脚時間Tswingを決定する。
本明細書が開示する技術は、歩幅から歩行速度を推定し、推定された歩行速度に基づいて、遊脚の最大揺動角Ag_max及び/又は遊脚時間Tswingを決定する。(1)式と(2)式から明らかなとおり、歩幅が大きくなるにつれて最大揺動角Ag_maxも大きくなり(即ち下腿リンクは屈曲方向に大きく曲がり)、遊脚時間Tswingは短くなる。そのような相関は、実験データから統計的に得られたものである。以上のとおり、本明細書が開示する歩行補助装置は、自然な歩行動作となるようにユーザの脚の動きをガイドすることができる。
歩行補助装置の模式図である。図1(A)は正面図を示し、図1(B)は側面図を示す。 本明細書で用いる揺動角の定義を説明する図である。 遊脚軌道の一例を示すグラフである。 歩幅の測定原理を説明する図である。 コントローラが実行する処理のフローチャート図である。
図1に、ユーザが装着した状態における歩行補助装置2の模式図を示す。図1(A)は正面図を示し、図1(B)は側面図を示す。本実施例では、ユーザは、右脚を自由に動かすことができない非健常者であるとする。従って、歩行補助装置2は、ユーザの右脚にLRに装着される。以下では、歩行補助装置2を装着した脚(実施例の場合は右脚)を装着脚と称する。
歩行補助装置2の構造を説明する。歩行補助装置2は、機構的には、大腿リンク5と下腿リンク9と足リンク11がジョイントで揺動可能に連結された多リンク多関節機構を有している。大腿リンク5はベルトでユーザの大腿に装着される。下腿リンク9はベルトでユーザの下腿に装着される。図示を省略しているが、足リンク11には靴が取り付けられており、ユーザがその靴を履くことで足リンク11が固定される。大腿リンク5と下腿リンク9は、膝ジョイント7で揺動可能に連結される。ユーザが装着すると、膝ジョイント7は、その回転軸がユーザの膝関節の回転軸と同軸となるように位置する。即ち、下腿リンク9はユーザの下腿とともに揺動する。膝ジョイント7には、モータ6とエンコーダ8が内蔵されている。モータ6は、下腿リンク9を揺動させる。エンコーダ8は、下腿リンク9の揺動角(ユーザの下腿の揺動角にも相当する)を計測する。下腿リンク9と足リンク11は、足首ジョイント10で揺動可能に連結される。ユーザが装着すると、足首ジョイント10は、その回転軸がユーザ足首関節のピッチ軸回りの回転軸と同軸となるように位置する。足リンク11の足裏には、装着脚が接地しているか否かを判断するための荷重センサ12が備えられている。
大腿リンク5にはコントローラ20が取り付けられている。コントローラ20には、傾斜センサ(不図示)が内蔵されている。傾斜センサは、鉛直方向に対する大腿リンク(即ちユーザの大腿)の傾斜角を計測する。コントローラ20には、ユーザの身体データ、具体的には、大腿の長さ、下腿の長さ、体重などの情報が記憶されている。コントローラ20は、大腿と下腿の長さ、大腿の傾斜角(傾斜角センサによって計測される)、及び、下腿の揺動角(エンコーダ8によって計測される)から、ユーザの腰位置と足位置の間の前後方向の距離(腰足間距離)を算出することができる。後述するように腰足間距離は、下腿リンク9の揺動制御に用いられる。コントローラ20は、エンコーダ8、荷重センサ12、及び、傾斜センサのデータを用い、歩行時に装着脚が遊脚として円滑に揺動するようにモータ6を制御する。
図2を参照して、本実施例における下腿(下腿リンク9)の揺動角の定義を説明する。側方からみたときに、ユーザの大腿の中心線を長手方向下方に伸ばした直線、別言すれば、大腿リンク5をその長手方向下方に延長した直線をL1とする。また、ユーザの下腿の中心線を長手方向下方に伸ばした直線、別言すれば、下腿リンク9をその長手方向下方に延長した直線をL2とする。直線L1から直線L2に向かって下腿揺動角Agをとる。単純にいえば、ユーザの膝屈曲方向を揺動角Agの正値方向と定義する。
歩行補助装置2のコントローラ20は、装着脚が円滑に動作するようにモータ6を制御して下腿リンク9を揺動させる。図3を参照して、遊脚の揺動における下腿揺動角Agの軌道(遊脚軌道Path)を説明する。図3のグラフは、遊脚の下腿揺動角Agの軌道を表すグラフである。図3の上方に、遊脚軌道の始点P1におけるユーザの脚の姿勢(a)、遊脚軌道の中点P2における脚の姿勢(b)、及び、遊脚軌道の終点P3における脚の姿勢(c)を示す。なお、図3の(a)、(b)、及び、(c)は、脚の姿勢を模式的に示しており、歩行補助装置は図示を省略している。また、実線の脚が右脚LR(装着脚)を表し、破線の脚が左脚LL(歩行補助装置を装着していない脚)を示している。
遊脚軌道は、始点P1にて初期角度Ag_sから単調増加し、中点P2にて最大揺動角Ag_maxに達した後、単調減少して終点P3にて終端角度Ag_eで終了する。初期角度Ag_sと終端角度Ag_eは予め定められており、コントローラ20に記憶されている。最大揺動角Ag_maxは、歩行中のユーザの歩幅に応じてコントローラ20がリアルタイムに決定する。また、始点P1(始点P1に相当する時刻Ts)から終点P3(終点P3に相当する時刻Te)に至るまでに要する時間(遊脚時間)Tswingも、歩行中のユーザの歩幅に応じてコントローラ20がリアルタイムに決定する。最大揺動角Ag_maxと遊脚時間Tswingを定める数式は後に説明する。
図3の(a)に示すように、始点P1は、装着脚が離地するタイミングに相当する(「離地」を判定するロジックは後述する)。図3(b)に示すように、中点P2は、遊脚の膝が立脚(左脚LL)の横を通過するタイミングに相当し、このとき下腿揺動角が最大(Ag_max)となる。終点P3は装着脚が着地するタイミングに相当する。歩行動作における遊脚の自然な動きでは、離地(始点P1)から中点P2までは下腿揺動角が漸増し、中点P2から着地(終点P3)までは下腿揺動角は漸減する。従って、上記した遊脚軌道は、スムースな遊脚動作を実現する。初期角度Ag_sと終端角度Ag_eは、ゼロ、あるいはゼロに近い値であり、最大揺動角Ag_maxは、60度〜90度である。
なお、コントローラ20は、所定の条件が成立したら遊脚軌道に従って下腿リンクを揺動させるが、遊脚軌道の始点P1は、脚が完全に離地したタイミングに厳密に一致するとは限らないことに留意されたい。コントローラ20は、足の位置が腰位置よりも既定の距離以上後方であり、かつ、装着脚の足の荷重(床反力)が既定の荷重閾値を下回る、という条件が成立した場合に、「離地」と判断し、遊脚軌道に沿った制御を開始する。これは、通常の歩行では脚が離地する際、まずつま先が接地したまま踵が浮き、次いでつま先が浮くというシーケンスを辿るが、そのシーケンスのどの時点を「離地タイミング」とするかは定義次第だからである。本実施例の場合、上記した、「足の位置が腰位置よりも既定の距離以上後方であり、かつ、装着脚の足の荷重が既定の荷重閾値を下回る」という条件が成立するタイミングを「離地タイミング」と定めている。
始点P1から中点P2までの軌道の曲線を規定する数式、及び、中点P2から終点P3までの軌道の曲線を規定する数式も予め決められており、コントローラ20に記憶されている。ただし、それらの式において、最大揺動角Ag_maxと遊脚時間Tswingは変数になっており、遊脚軌道の確定には、リアルタイムに決定されたそれらの値が用いられる。例えば、始点P1からP3までの曲線を表す数式は正弦曲線(sinカーブであって、始点P1が角度=ゼロ、中点P2が角度=π/2、終点が角度=πに対応する曲線)で与えられ、最大揺動角Ag_maxと遊脚時間Tswingが定まれば、遊脚軌道は確定する。この正弦曲線が、最大揺動角Ag_maxと遊脚時間Tswingを変数とする遊脚軌道の基本パターンの一実施例に相当する。
コントローラ20は、装着脚が遊脚となる直前の立脚期における脚(及び腰)の動きから歩幅を決定し、歩幅に基づいて最大揺動角Ag_maxと遊脚時間Tswingを決定する。即ち遊脚軌道を確定する。歩幅の計測方法と最大揺動角Ag_maxと遊脚時間Tswingの決定方法を次に説明する。
図4は、歩行動作において右脚LR(装着脚)が接地したタイミングにおける脚の姿勢(Q1)と、その後に左脚LLが遊脚期を経て、右脚LR(装着脚)が離地するタイミングにおける脚の姿勢(Q2)を示している。コントローラ20は、遊脚期直前の立脚期における装着脚(右脚LR)の動きから、歩幅を計測する。前述したように、コントローラ20は、大腿リンク5に取り付けられた傾斜センサが計測する大腿の傾斜角と、エンコーダ8が計測する下腿リンク9の揺動角から、腰位置と装着脚足位置との間の前後方向距離を計測する。コントローラ20は、「装着脚の足の位置が腰位置よりも既定の距離以上前方であり、かつ、装着脚の足の荷重が既定の荷重閾値を超える」という条件(着地判断条件)の成立を、「着地タイミング」として特定し、その「着地タイミング」における、腰位置と装着脚足位置との間の前後方向距離(第1距離)を計測する。図4においてQ1が示す脚の姿勢が、着地タイミングにおける姿勢を示す。すなわち、図4において、符号q1が「着地タイミング」における腰位置を示しており、符号q2が「着地タイミング」における装着脚足位置を示している。従って、符号S1が示す距離が、第1距離に相当する。また、コントローラ20は、「装着脚の足の位置が腰位置よりも既定の距離以上後方であり、かつ、装着脚の足の荷重が既定の荷重閾値を下回る」という条件(離地判断条件)が成立するタイミングを、「離地タイミング」として特定する。コントローラ20は、その「離地タイミング」における、腰位置と装着脚足位置との間の前後方向距離(第2距離)を計測する。図4においてQ2が示す脚の姿勢が離地タイミングにおける姿勢を示している。すなわち、符号q2が「離地タイミング」における足位置を示しており、符号q3が「離地タイミング」における腰位置を示している。従って、符号S2が示す距離が、第2距離に相当する。なお、着地から離地までの間は接地している足は動かないので、符号q2が示す位置は、着地タイミングにおける装着脚足位置と、離地タイミングにおける装着脚足位置の双方を意味することに留意されたい。
コントローラ20は、第1距離S1と第2距離S2を加算した値を歩幅Sとして扱う。第1距離S1と第2距離S2は、腰位置と立脚の足位置との前後方向の距離ではあるが、図4から理解されるように、歩幅S=S1+S2は、一般に歩幅といわれる距離、即ち、一方の足が着地したときの両方の足の間の前後方向の距離に相当する。コントローラ20が上記のごとく装着脚が立脚のときの足位置と腰位置から歩幅Sを求めるのには理由があるが、その点については後述する。装着脚の足が離地したタイミングから(図4の符号Q2が示す姿勢の直後から)装着脚の遊脚期が開始する。コントローラ20は、歩幅Sを決定した直後の装着脚遊脚期において、決定した歩幅Sに基づいて決定した遊脚軌道に追従するように下腿リンク9を制御する。
歩幅の決定から遊脚軌道追従制御までの処理の流れを図5のフローチャートを参照して再度説明する。なお、以下では、装着脚が完全に遊脚となっている状態(荷重センサの計測値がゼロの状態)から説明を開始する。コントローラ20は、傾斜センサ、エンコーダ、及び、荷重センサのセンサデータから、着地判断条件(「装着脚の足の位置が腰位置よりも既定の距離以上前方であり、かつ、装着脚の足の荷重が既定の荷重閾値を超える」という条件)が成立するか否かをモニタする(ステップS2)。着地判断条件が成立すると、コントローラ20は、そのときの腰位置と装着脚足位置との間の前後方向距離(第1距離S1)を計測する(ステップS4)。コントローラ20は続いて、センサデータを制御周期毎に取得しつつ、離地判断条件(「装着脚の足の位置が腰位置よりも既定の距離以上後方であり、かつ、装着脚の足の荷重が既定の荷重閾値を下回る」という条件)が成立するか否かをモニタする(ステップS6)。離地判断条件が成立すると、コントローラ20は、そのときの腰位置と装着脚足位置との間の前後方向距離(第2距離S2)を計測する(ステップS8)。続いてコントローラ20は、第1距離S1と第2距離S2を加算して歩幅Sを算出し、次の数式(3)に基づいて推定歩行速度Vを算出する(ステップS10)。
Figure 2012213554
数式(3)は、実験により得られたデータから統計的に導き出したものである。次いでコントローラ20は、数式(3)によって得られた推定歩行速度Vと、次の数式(4)、(5)に基づいて、最大揺動角Ag_maxと遊脚時間Tswingを決定する(ステップS12)。
Figure 2012213554
数式(4)、(5)の関係式も、実験データから統計的に導き出したものである。なお、数式(3)を(4)、(5)に代入すると、結局、次の数式(1)、(2)となる。
Figure 2012213554
別言すれば、コントローラ20は、歩幅Sを数式(1)、(2)に代入し、最大揺動角Ag_maxと遊脚時間Tswingを決定する。次にコントローラ20は、決定した最大揺動角Ag_maxと遊脚時間Tswingから、遊脚軌道を確定する(S14)。ここで、「確定」とは、もともと遊脚軌道の基本パターンは、最大揺動角Ag_maxと遊脚時間Tswingを変数として与えられているからである。ステップS14は、「遊脚軌道を決定」と表現しても同じことである。遊脚軌道の一例は前述したとおり、始点が角度=ゼロ、中点が角度=π/2、終点が角度=πの正弦曲線である。最後にコントローラ20は、確定された遊脚軌道に追従するように、下腿リンク9を揺動させる(ステップ16)。下腿リンク9の揺動を開始すると同時に、コントローラ20は、次の装着脚遊脚期に向けての準備として、図5の処置を再び最初から実行する。
上記した歩幅決定方法には、次の利点がある。まず第一に、装着脚に備えられたセンサのデータのみで下腿リンク(モータ)の制御を行える。別言すれば、この歩行補助装置2は、健常脚にセンサを付けることを要しない。歩行補助装置を機構的に構成するリンク群に配置したセンサだけで成立するので、個別にセンサを付けるという煩わしさをユーザに与えずに済む。第二に、装着脚の立脚期のデータから直後の遊脚期の軌道を定めることができる。即ち、装着脚が遊脚となる直前のデータで遊脚軌道を決める。これにより、立脚の動きとスムースに連続する遊脚軌道が生成できる。
実施例の歩行補助装置2は、歩幅に基づいて遊脚軌道、特に、最大揺動角Ag_maxと遊脚時間Tswingを決定した。実験データに基づく統計的解析によれば、これらの変数の間には、前記した数式(1)、(2)の関係がある。具体的には、最大揺動角Ag_maxは、歩幅Sに比例し、遊脚時間Tswingは、歩幅Sにほぼ反比例する。そのような関係に基づいて遊脚軌道を決定することによって、歩行補助装置2は、自然な歩行動作となるようにユーザの遊脚下腿の動きをガイドすることができる。
実施例の歩行補助装置に関する留意点を述べる。遊脚軌道は、下腿リンクの目標揺動角の時系列データを意味し、予め定められた初期角度Ag_sから単調増加し、最大揺動角Ag_maxへ達した後に単調減少して終端角度Ag_eまで、遊脚時間Tswingをかけて変化する曲線を描く。実施例の歩行補助装置では、初期角度Ag_sと終端角度Ag_eは予め定められており、遊脚軌道は最大揺動角Ag_maxと遊脚時間Tswingが変数で記された数式で与えられている。このことは、遊脚軌道の基本パターンが予め定められており、算出された最大揺動角Ag_maxと遊脚時間Tswingで基本パターンを変形することに等しい。例えば縦軸を揺動角にとり横軸に時間をとった座標系にて基本パターンを描くと、基本パターン山型のグラフになるが、遊脚軌道を決定するとは、算出された最大揺動角Ag_maxに応じて山型のグラフの高さを伸縮し、算出された遊脚時間Tswingに応じてグラフの横幅を伸縮することに相当する。なお、初期角度Ag_sと終端角度Ag_eは同じでなくともよい。また、基本パターンは、初期角度Ag_sから最大揺動角Ag_maxまで単調増加であり、最大揺動角Ag_maxから終端角度Ag_eまで単調減少であればよく、特定の曲線(例えば前述した正弦曲線)に限定されない。最大揺動角Ag_maxの前後で曲線が対称でなくともよい。
実施例では、遊脚期に移る直前の立脚期の脚の動きから歩幅Sを特定した。そのような手法が好適ではあるが、健常脚の動きから歩幅を設定しても、歩行動作がスムースになるように遊脚下腿の動きをガイドするという第1の効果は奏する。実施例の歩行補助装置は、歩幅Sを特定するために、荷重センサ、傾斜センサ、エンコーダ(回転角センサ)を採用した。歩幅Sを特定することができるのであれば、他のセンサを用いてもよい。例えば、足リンクに加速度センサを搭載することによって、傾斜センサとエンコーダの代用とすることができる。
実施例の歩行補助装置2は、歩幅Sに応じて最大揺動角Ag_maxと遊脚時間Tswingの双方を決定した。これに代えて、歩行補助装置は、歩幅Sに応じて最大揺動角Ag_maxと遊脚時間Tswingのいずれか一方のみを設定するものであってもよい。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
2:歩行補助装置
5:大腿リンク
6:モータ
7:膝ジョイント
8:エンコーダ
9:下腿リンク
10:足首ジョイント
11:足リンク
12:荷重センサ
20:コントローラ

Claims (4)

  1. ユーザの脚に装着する歩行補助装置であり、
    ユーザの大腿に装着される大腿リンクと、
    大腿リンクと揺動可能に連結しておりユーザの下腿に装着される下腿リンクと、
    下腿リンクを揺動させるアクチュエータと、
    下腿リンクの揺動角が目標揺動角に一致するようにアクチュエータを制御するコントローラと、
    を備えており、コントローラは、
    膝屈曲方向を揺動角の正値方向としたときに、下腿リンクの目標揺動角が予め定められた初期角度Ag_sから単調増加し、最大揺動角Ag_maxへ達した後に単調減少して予め定められた終端角度Ag_eまで、遊脚時間Tswingをかけて変化する遊脚軌道であって、最大揺動角Ag_maxと遊脚時間Tswingを変数とする遊脚軌道の基本パターンを記憶しているとともに、
    ユーザの歩幅に基づいて下腿リンクの最大揺動角Ag_maxと遊脚時間Tswingを決定して遊脚軌道を決定し、
    下腿リンクの揺動角が遊脚軌道に追従するようにアクチュエータを制御する、
    ことを特徴とする歩行補助装置。
  2. コントローラは、
    歩行補助装置を装着した脚(装着脚)が着地した第1タイミングにおける腰位置と装着脚の着地位置との間の前後方向の距離(第1距離)を計測し、
    次いで装着脚が立脚期を経て離地した第2タイミングにおける腰位置と装着脚の離地位置との前後方向の距離(第2距離)を計測し、
    第1距離と第2距離を加算した距離を歩幅として最大揺動角Ag_maxと遊脚時間Tswingを決定し、
    第2タイミング以降に下腿リンクの揺動角が遊脚軌道に追従するようにアクチュエータを制御する、
    ことを特徴とする請求項1に記載の歩行補助装置。
  3. コントローラは、歩幅をSとしたときに次の(1)式に基づいて最大揺動角Ag_maxを算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の歩行補助装置。
    Figure 2012213554
  4. コントローラは、歩幅をSとしたときに次の(2)式に基づいて遊脚時間Tswingを算出することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の歩行補助装置。
    Figure 2012213554
JP2011081848A 2011-04-01 2011-04-01 歩行補助装置 Expired - Fee Related JP5782788B2 (ja)

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