JP2012212540A - 酸化物超電導導体及びそれを備えた酸化物超電導コイル - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の酸化物超電導導体は、基材3と該基材の一面側に設けられる中間層5と酸化物超電導層6と安定化層7を備えて酸化物超電導積層体9が構成され、該酸化物超電導積層体の外周面を覆う被覆層10が形成されて被覆酸化物超電導導体が構成されるとともに、前記基材3の他面側に、前記基材3の長さ方向一端側から他端側にかけて延在する冷却溝3aが形成され、前記冷却溝の開口部を前記被覆層10が覆うことにより前記冷却溝3aに沿って主冷媒通路3cが形成されてなることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
このように酸化物超電導導体を冷却する場合に好適な構造として、酸化物超電導導体に絶縁テープをスパイラル状に巻き付けた構造において、表面中央部に溝を設けた絶縁テープであって、溝の底部に貫通穴を所定の間隔で複数形成した絶縁テープを用意し、この絶縁テープを酸化物超電導導体の外周に巻き付けた構造が知られている。(特許文献1参照)
また、酸化物超電導導体の冷却構造の他の例として、ローターの回転軸の外面に凹部型の溝を形成し、該溝に冷媒循環パイプを敷設し、ローターの一部に固定した超電導コイルを冷媒循環パイプからの伝熱で冷却する構造の超電導モータが提案されている。(特許文献2参照)
また、特許文献2に記載の構造は、冷媒循環パイプを収容したロータの溝からの伝熱により間接的に超電導コイルを冷却する構造であるので、上述のような酸化物超電導層を基材上に積層したタイプの酸化物超電導導体の冷却構造について、応用できるような技術的な開示や示唆は見られない。
本発明は、基材上に中間層と酸化物超電導層と安定化層を備えた構造の酸化物超電導導体を用いて酸化物超電導コイルを構成した場合、冷媒による酸化物超電導層の冷却効果を高めることができ、超電導特性の安定性を高めることができる酸化物超電導コイルの提供を目的とする。
酸化物超電導層を一面側に備えた基材の他面側に基材全長に至る冷却溝に沿って主冷媒通路を設けたので、この主冷媒通路に液体窒素などの冷媒を供給することで、基材をその全長にわたり冷媒で直接冷却できる。このため、酸化物超電導層を全長にわたり基材を介し冷却することができ、基材上の酸化物超電導層を全長にわたり均一に冷却できる。また、基材と中間層と酸化物超電導層と安定化層を備えた積層構造の酸化物超電導導体について、基材と酸化物超電導層は中間層を介し密着されているので、主冷媒通路に供給した冷媒で基材を直接冷却できることで、基材と中間層を介し酸化物超電導層も効率良く冷却することができる。更に、被覆層を備えた酸化物超電導導体であるならば、巻胴に巻回して超電導コイルを形成する場合にそのままの状態で巻胴に巻回することができ、超電導コイル用として有効に利用できる。
基材長手方向の冷却溝からなる主冷媒通路に加え、基材幅方向の補助冷却溝からなる補助冷媒通路を設けるならば、主冷媒通路を介して補助冷媒通路に供給される冷媒を用い、補助冷媒通路に沿って基材幅方向の隅々まで基材を直接冷却できる。このため、基材長さ方向全長に加え、基材幅方向のいずれの位置においても基材を直接冷却できる領域を拡大できる結果、基材を介して行う酸化物超電導層の冷却効率を向上できる。このため、酸化物超電導層の長さ方向と幅方向のいずれの位置において常電導状態への転位などに起因して発熱を生じようとしても、酸化物超電導層を直近から冷媒で直に低温に冷却でき、発熱を抑制できるので、超電導特性の安定性向上に寄与する。
安定化層に第2の冷却溝を形成し、被覆層で覆って第2の冷媒通路とすることにより、安定化層自体を冷媒によって直接冷却できる構造を提供できる。このため、冷媒による基材側からの直接冷却に加え、冷媒による安定化層側からの直接冷却も可能となり、酸化物超電導積層体の冷却効率が向上する。
酸化物超電導コイルを構成する酸化物超電導導体に形成した冷却溝を巻回始端から巻回終端に至るように形成するならば、巻胴に巻き付けた酸化物超電導導体の全長にわたり、冷媒で直接冷却できるので、巻胴に巻き付けて熱がこもりやすい構造となった場合であっても冷媒を用いた効率の良い冷却が可能となる。また、巻胴に巻き付けた外周側の酸化物超電導導体は勿論、内層側の酸化物超電導導体も冷媒により直接冷却できるので、多層巻きした構造の超電導コイルであっても、外層側と内層側のいずれの酸化物超電導導体も冷媒により強制冷却ができる。
本実施形態の超電導コイル用酸化物超電導導体1は、図1(A)に示す如く金属製のテープ状の基材3の上面側(一面側)に、中間層5と酸化物超電導層6と安定化層7、8がこの順で積層されてなる酸化物超電導積層体9を内部に備え、該酸化物超電導積層体9の周面を樹脂等の絶縁材料からなる被覆層10で覆ってなる構造とされている。
図1に示す酸化物超電導導体1は、Agの安定化層7の上に厚いCuの安定化層8を積層した例を示しており、酸化物超電導積層体9の全周に樹脂テープなどの絶縁材を巻き付けて絶縁性の被覆層10が形成され、被覆酸化物超電導導体とされている。
図1(A)に示す構造として被覆層10で絶縁処理した酸化物超電導導体1を巻胴などに巻き付けることで超電導コイルなどの用途に用いることができるが、超電導コイルについては後に詳述する。
前記基材3は、通常の超電導線材の基材として使用することができ、高強度であれば良く、長尺のケーブルとするためにテープ状であり、耐熱性の金属からなるものが好ましい。例えば、ステンレス鋼、ハステロイ等のニッケル合金等の各種高強度高耐熱性の金属材料、もしくはこれら各種金属材料上にセラミックスを配したもの、等が挙げられる。各種耐熱性の金属の中でも、ニッケル合金が好ましい。なかでも、市販品であれば、ハステロイ(米国ヘインズ社製商品名)が好適であり、ハステロイとして、モリブデン、クロム、鉄、コバルト等の成分量が異なる、ハステロイB、C、G、N、W等のいずれの種類も使用できる。基材3の厚さは、目的に応じて適宜調整すれば良く、通常は、100〜500μmの範囲とすることができる。
基材3の他面側に形成する冷却溝3aは横断面V字状に限るものではなく、横断面逆V字状、矩形状、半円状、半楕円状など、その断面形状は問わない。冷却溝3aの幅についても特に制限はないが、基材3の機械的強度を必要以上に低下させないような深さと幅に形成すればよい。また、基材3の他面に形成する冷却溝3aの数についても特に制限はない。
基材3に冷却溝3aを形成する方法は、超硬合金製の切削バイトなどの工具を用いて基材3を切削するスクラッチ加工などによる形成方法、裁断加工、レーザービームによる蝕刻加工、薬液を用いたエッチング加工等、いずれの加工方法を用いても良い。
拡散防止層は、基材3の構成元素拡散を防止する目的で形成されたもので、窒化ケイ素(Si3N4)、酸化アルミニウム(Al2O3、「アルミナ」とも呼ぶ)、あるいは、GZO(Gd2Zr2O7)等から構成され、例えばスパッタリング法等の成膜法により形成され、その厚さは例えば10〜400nmである。
ベッド層は、耐熱性が高く、界面反応性を低減するためのものであり、その上に配される膜の配向性を得るために用いる。このようなベッド層は、例えば、イットリア(Y2O3)などの希土類酸化物であり、組成式(α1O2)2x(β2O3)(1−x)で示されるものが例示できる。より具体的には、Er2O3、CeO2、Dy2O3、Er2O3、Eu2O3、Ho2O3、La2O3等を例示することができる。このベッド層12は、例えばスパッタリング法等の成膜法により形成され、その厚さは例えば10〜100nmである。
この配向層15をIBAD(Ion-Beam-Assisted Deposition)法により良好な結晶配向性(例えば結晶配向度15゜以下)で成膜するならば、その上に形成するキャップ層16の結晶配向性を良好な値(例えば結晶配向度5゜前後)とすることができ、これによりキャップ層16の上に成膜する酸化物超電導層6の結晶配向性を良好なものとして優れた超電導特性を発揮できる酸化物超電導層6を得るようにすることができる。
例えば、Gd2Zr2O7、MgO又はZrO2−Y2O3(YSZ)からなる配向層15は、IBAD法における結晶配向度を表す指標であるΔφ(FWHM:半値全幅)の値を小さくできるため、特に好適である。
例えばCeO2によって構成される。キャップ層16は、上述のように自己配向していることにより、配向層15よりも更に高い面内配向度、例えばΔφ=4〜6゜程度を得ることができる。
例えば、CeO2層は、PLD法(パルスレーザ蒸着法)、スパッタリング法等で成膜することができる。CeO2層の膜厚は、十分な配向性を得るには100nm以上が好ましいが、厚すぎると結晶配向性が悪くなるので、50〜5000nmの範囲とすることができる。
酸化物超電導層6は、スパッタ法、真空蒸着法、レーザー蒸着法、電子ビーム蒸着法、化学気相成長法(CVD法)等の物理的蒸着法;熱塗布分解法(MOD法)等で積層することができ、なかでも生産性の観点から、PLD(パルスレーザー蒸着)法、TFA−MOD法(トリフルオロ酢酸塩を用いた有機金属堆積法、塗布熱分解法)又はCVD法を用いることができる。
第2番目の安定化層8は酸化物超電導層6の安定化のために設けられ、酸化物超電導層6が常電導状態に転移することを防止するために電流のバイパス路として設けられているので、CuやAlまたはそれらの合金などの良導電性の金属材料から形成される。なお、酸化物超電導導体1を限流器などの目的に適用する場合は安定化層8として高抵抗材料を用いることが好ましいので、NiCrなど、CuやAg、Alに対して高抵抗の金属材料から構成することができる。
安定化層8は安定化層7よりも厚く形成して電流のバイパス路として十分な容量を確保するため、100〜500μm程度の厚さに形成する。その場合、半田や導電性接着剤による貼り付け法あるいはめっき法などを用いて安定化層7の上に形成することができる。
前記被覆層10を構成する樹脂として具体的には、ポリイミド樹脂の他に、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ケイ素樹脂、シリコン樹脂、アルキッド樹脂、ビニル樹脂等を例示できる。被覆層10による被覆の厚さは特に限定されず、被覆対象部位等に応じて、適宜調節すれば良い。被覆層10は、その材質に応じて公知の方法で形成すれば良く、例えば、原料を塗布して、これを硬化させれば良い。また、テープ状に代わりシート状のものが入手できる場合には、これを使用して被覆しても良い。
また、被覆層10として、冷媒が通過できない構造を採用した場合、例えば、被覆層10を緻密な構造などとしたり、プリプレグテープなどの巻き付けにより層間接着した場合、酸化物超電導導体1の一端側に開口している主冷媒通路3cの一端部側から強制的に冷媒循環ポンプ等により液体窒素などの冷媒を流入させ、酸化物超電導導体1の反対側の端部から強制的に液体窒素などの冷媒を引き抜く構成を採用し、冷媒循環ポンプにより主冷媒通路3cを介して冷媒を循環させる強制循環型の冷却ができる構造とすることが好ましい。
図1に示す冷却溝3aからなる主冷媒通路3cを備えた酸化物超電導導体1の構造であるならば、被覆層10を介し冷媒を浸漬させる構造あるいは強制循環型の構造のいずれの構造を採用しても、基材3に形成した冷却溝3aに沿って存在する冷媒が酸化物超電導導体1の全長にわたり基材3を介して酸化物超電導層6を冷却するので、超電導特性の安定性に優れた酸化物超電導導体1を提供することができる。
また、基材3上に形成されている中間層5はいずれも成膜法で形成され、上述した如く薄いものであるため、基材3を冷媒で直接冷却できることは、酸化物超電導層6を冷媒で効率良く冷却できることを意味するので、図1に示す構造によれば、酸化物超電導層6の冷却効率も良好にすることができる。
第2実施形態の酸化物超電導導体20において、図1(A)に示す酸化物超電導導体1と異なるのは、酸化物超電導積層体9を構成する基材30の他面側に、主冷媒通路3cに加え、補助冷媒通路3dを形成している点にある。その他、酸化物超電導積層体9における中間層5、酸化物超電導層6、安定化層7、8、被覆層10の構成については第1実施形態の構造と同等構造である。
第3実施形態の酸化物超電導導体25において、図2に示す酸化物超電導導体20と異なるのは、酸化物超電導積層体9を構成するCuの安定化層18の上面側に第2の冷却溝18aが安定化層18の長さ方向に延在するように複数設けられている点にある。その他、酸化物超電導積層体9における中間層5、酸化物超電導層6、安定化層7、8、被覆層10、基材30などの構造については第2実施形態の構造と同等である。
また、図3に示す構造によれば、主冷媒通路3cと補助冷媒通路3dに加え、安定化層18側の第2の冷媒通路18cにも冷媒を導入することができ、第2の冷媒通路18cは酸化物超電導導体25の全長にわたり形成されているので、酸化物超電導層6をその全長にわたり安定化層18側からも冷却できる。
本実施形態の構造によれば、基材30側と安定化層18側の両方から酸化物超電導層6を冷却できるので、冷却効率が一層向上し、酸化物超電導層6の安定性をより高めることができる。
なお、図3に示す如くAgの安定化層7の上にCuの安定化層18を設ける構造とは異なり、酸化物超電導積層体9の全周にめっきで安定化層を形成するか、あるいは、金属テープで全周を囲み、安定化層を設けた構造とする場合、全周に設けた安定化層の外面に更に冷却溝を形成して冷却溝の部分を冷媒の流路として構成してもよい。この構造の場合、基材30の外側に安定化層が配置されるので、基材30の外側の安定化層の外面に冷却溝を設けて冷媒の流路とすることができる。金属テープで酸化物超電導積層体9を囲む場合は、基材30と基材30上の安定化層の外面の両方に冷却溝を設けることができる。
また、上述の実施形態においては基材3の上に中間層5を介し酸化物超電導層6を積層した構造に適用したが、Ni−W合金の圧延材などのような配向性基材上に中間層と酸化物超電導層を積層する構造の酸化物超電導積層体に対し、先の実施形態の冷却溝を設けた構造を採用できる。Ni−W合金の圧延材などのような配向性基材において裏面側に冷却溝を設けることで上述の構造と同等の冷却効果を得ることができる。
本実施形態の酸化物超電導コイル33において、巻胴34が胴部35と鍔板36とからなり、胴部35の外周に先の第1実施形態の酸化物超電導導体1が多層巻きとなるように巻回されている。図4では図示の簡略化のために層構造として4層のみ示しているが実際のコイルにおいては、目的の巻き数となるように必要な積層数とされる。
また、巻胴34に巻回されている酸化物超電導導体1において、その巻回始端1Aと巻回終端1Bに冷媒循環用の接続管38、39が接続され、これら接続管38、39が冷媒供給装置40に接続されている。接続管38、39の先端部はそれぞれ酸化物超電導導体1の主冷媒通路3cに接続されていて、冷媒供給装置40からの冷媒を巻回始端1Aあるいは巻回終端1Bの主冷媒通路3cから酸化物超電導導体1の内部に導入し、巻回終端1Bあるいは巻回始端1Aから排出することで、酸化物超電導導体1の主冷媒通路3cに冷媒を強制循環させつつ酸化物超電導導体1を強制冷却できるように構成されている。
例えば、図4に示す構成の酸化物超電導コイル33を単に冷媒に浸漬して冷却した場合は、多層巻きした酸化物超電導導体1において内層側の酸化物超電導導体1は外層側の酸化物超電導導体1よりも冷媒に遠く、熱がこもり易いので冷却効率の面からみると不利になり易い。しかし、図4に示す構造であるならば、内層側と外層側を問わずにその両方に主冷媒通路3cを介して冷媒を強制循環できるので、超電導コイル33の全体を効率良く均一に冷却できる効果がある。
また、図4に示す構造の巻胴34に対し、第2実施形態の酸化物超電導導体20あるいは第3実施形態の酸化物超電導導体25を適用して酸化物超電導コイルを構成することもできるのは勿論である。
図5にこれらの層のうち、キャップ層16、あるいは、酸化物超電導層6の成膜に用いることができるパルスレーザー蒸着装置(PLD装置)の一例を示す。
なお、転向搬送リール57、58は図5では略しているが図5の紙面厚さ方向に同じ構成のものが複数配列されていて(例えば5列等)、基材3は複数の転向搬送リール57、58間を複数回ターンしながら最終的に巻取リール56に至るように構成されている。更に、転向搬送リール57、58間を複数回ターンしている基材3を目的の成膜温度に加熱するためのヒータ59を内蔵したヒータ装置60が転向搬送リール57、58の間に設けられている。
ここで、基材3の他面側に冷却溝3aあるいは補助冷却溝3dを形成した基材3を用いてこれらの成膜を行うと、これらの溝形成によって部分的に肉薄構造となっている基材3に温度分布が生じて成膜に悪影響を及ぼすとともに、基材3が熱膨張や熱収縮により大きく変形するので、基材3上に積層した膜に大きな熱応力やストレスを加える結果、形成した膜に損傷を与えるおそれがある。また、この事情は、スパッタなどの成膜法により下地層14あるいは安定化層7を形成する場合も同様であるので、基材3の裏面側に冷却溝3aあるいは補助冷却溝3dを予め形成するのは、各層に影響を与えないように安定化層7を形成した後に行うことが好ましい。
よって、基材3の裏面側に冷却溝3aあるいは補助冷却溝3dを形成するのは、安定化層7を形成後であって、安定化層8の形成前あるいは形成後のいずれかにおいて行うという上述の製造手順によれば、積層構造の酸化物超電導導体1を構成するための各層に悪影響を及ぼすことなく冷却溝3aあるいは補助冷却溝3dを形成できる。
ハステロイC276(米国ヘインズ社商品名)からなる幅10mm、厚さ0.1mm、長さ10mのテープ状の基材を用意し、このテープ状基材の表面にAl2O3からなる厚さ100nmの拡散防止層を形成し、更にその上にイオンビームスパッタ法を用いてY2O3からなる厚さ30nmのベッド層を形成した。イオンビームスパッタ法の実施にあたりテープ状の基材はスパッタ装置の内部においてリールに巻回しておき、一方のリールから他方のリールに繰り出す間に成膜できるようにしてテープ状基材の全長にわたり、拡散防止層とベッド層を形成した。次に、イオンビームアシスト蒸着法によりベッド層上に厚さ10nmのMgOの配向層を形成した。この場合、アシストイオンビームの入射角度は、テープ状基材成膜面の法線に対し、45゜とした。
次に、スパッタ法により酸化物超電導層上に厚さ10μmのAgの安定化層を形成し、酸素アニールを500℃で行った。以上の工程により、テープ状の長尺の基材上に拡散防止層とベッド層と配向層とキャップ層と酸化物超電導層と第1の安定化層を備えた構造の酸化物超電導導体を形成した。
次いで、第1の安定化層の上面に厚さ100μmのCuテープを半田付けして酸化物超電導積層体を形成した。この後、酸化物超電導積層体をリールから繰り出しながら超硬合金製の切削バイトにより基材裏面側に深さ60μm、幅60μmのV字状の冷却溝を基材裏面の長さ方向に沿って5本、等間隔で基材に平行に配列形成した。
この溝加工後の酸化物超電導積層体の全周に幅10mmのポリイミドテープをスパイラル状に重ね巻きして絶縁性の被覆層を有する酸化物超電導導体を形成した。
これらの対比から、基材に冷却溝を設けた超電導コイルと冷却溝を設けていない超電導コイルにおいて、基材に冷却溝を設けた酸化物超電導コイルの方の冷却速度が5%早くなり、また、冷却溝を設けた酸化物超電導コイルの方が到達温度も3K低くなった。この結果から基材に冷却溝を設けた場合の優れた冷却効果を確認できた。
Claims (4)
- 基材と該基材の一面側に設けられる中間層と酸化物超電導層と安定化層を備えて酸化物超電導積層体が構成され、該酸化物超電導積層体の外周面を覆う被覆層が形成されて被覆酸化物超電導導体が構成されるとともに、前記基材の他面側に、前記基材の長さ方向一端側から他端側にかけて延在する冷却溝が形成され、前記冷却溝の開口部を前記被覆層が覆うことにより前記冷却溝に沿って主冷媒通路が形成されてなることを特徴とする酸化物超電導導体。
- 前記基材の他面側に該基材の幅方向に沿って延在し、前記冷却溝に連通する補助冷却溝が前記基材の長手方向に沿って間欠的に複数形成され、前記補助冷却溝の開口部を前記被覆層が覆うことにより前記補助冷却溝に沿って補助冷媒通路が形成されてなることを特徴とする請求項1に記載の酸化物超電導導体。
- 前記安定化層の前記基板側と反対側の面に、前記安定化層の長さ方向に沿って延在する第2の冷却溝が形成され、該第2の冷却溝の開口部を前記被覆層が覆って前記安定化層の第2の冷却溝に沿う第2の冷媒通路が形成されてなることを特徴とする請求項1または2のいずれか一項に記載の酸化物超電導導体。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の酸化物超電導導体が巻胴に巻回され、前記冷却溝が前記酸化物超電導導体の巻回始端から巻回終端に至るように延在されてなることを特徴とする酸化物超電導コイル。
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