JP2012210641A - 角型深絞り品の製造方法 - Google Patents

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淳史 須釜
Suetsugu Takahashi
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【課題】フェライト系ステンレス鋼を素材とした場合であっても、角型深絞り品を多段絞り加工法により製造する際に、キャニングや口開ききを発生させることなく、成形精度に優れた角型深絞り品を製造する。
【解決手段】角型深絞り品を多段絞り加工法により製造する際、最終工程で、角型深絞り品のコーナー部において当該角型深絞り品のコーナー部壁面との間に隙間があるパンチを用い、角型深絞り品のコーナー部の変形抵抗が直辺部の変形抵抗以下となる条件で絞りシゴキ加工を施す。
【選択図】図3

Description

本発明は、2次電池のケース等に用いられる角型深絞り品として、成形精度に優れた製品を低コストで提供する方法に関する。
近年、ノート型パソコンやデジタルオーディオ、携帯電話のような電力消費量が大きい携帯用機器が急速に普及しており、電力容量の大きい充電可能な2次電池の需要が世界的に広がっている。
今後は少エネルギー、環境負荷への対応等の観点から、各産業分野で大容量二次電池の適用拡大が見込まれている。
2次電池ケースの形状としては、円筒型や角筒型、コイン型などが存在する。特にエネルギー分野や自動車分野では、電池を複数個配列し高出力・高寿命を得ている。これら分野においては、設置スペースに制限が多く、最も密に配列することができる角筒型ケースの適用が進んでいる。また、角筒電池は、冷却性を向上させるため、著しい扁平形状を呈している。
現在、電池ケース材料としては、アルミニウムやNiメッキを施した普通鋼、或いはオーステナイト系ステンレス鋼などが使用されている。
また、扁平形状を呈する角型の大型ケースは、量産性の観点から、多段絞り加工法により生産される場合が多い。例えば特許文献1では、リチウムイオン二次電池などの各種の角形電池の外体ケースを、絞り加工とシゴキ加工の両方を連続的に一挙に行って製造することが記載されている。
特許第4119612号公報
しかしながら、電池ケース用材料として、アルミニウムは大型化による耐圧強度の不足が懸念され、Niメッキを施した普通鋼はピンホールやメッキ脱落のおそれがある。また高強度でかつ耐食性に優れるオーステナイト系ステンレス鋼は、アルミニウムやNiメッキを施した普通鋼に比べ材料コスト高という短所がある。
これら強度不足や材料コスト高をクリアする素材として、フェライト系ステンレス鋼が注目されている。
さらに、扁平形状を呈する角型の大型ケースは、量産性の観点から、多段絞り加工法により生産される場合が多いが、フェライト系ステンレス鋼はオーステナイト系ステンレス鋼に比べて、耐力のレベルが高いため形状凍結性が悪い。特に多段絞り加工では、加工深さが深くなるほどキャニングや口開きが大きくなる傾向があり、寸法精度を著しく害すことがある。キャニングが発生するとケースに集電体が入らなくなり、口開きが発生するとケースに蓋が嵌らなくなってしまう。
本発明は、このような問題点を解消するために案出されたものであり、フェライト系ステンレス鋼を素材とした場合であっても、角型深絞り品を多段絞り加工法により製造する際に、キャニングや口開きを発生させることなく、成形精度に優れた角型深絞り品を製造することが可能な方法を提供することを目的とする。
本発明の角型深絞り品の製造方法は、その目的を達成するため、角型深絞り品を多段絞り加工法により製造する際、最終工程として、角型深絞り品のコーナー部の変形抵抗が直辺部の変形抵抗以下となる条件で絞りシゴキ加工を施すことを特徴とする。
角型深絞り品のコーナー部の変形抵抗が直辺部の変形抵抗以下となる条件とするには、用いるパンチとして、角型深絞り品のコーナー部において、当該角型深絞り品のコーナー部壁面との間に隙間があるものを用いればよい。
より具体的には、最終工程で、被加工角型深絞り品の長辺部の板厚をt,短辺部の板厚をt,コーナー部の板厚をt,被加工角型深絞り品のコーナー部壁面とパンチのコーナー部との間の隙間をCとしたとき、所望角型深絞り品の外形に合致する内形を有するダイスと、所望角型深絞り品の内形に近似するとともにコーナー部に下記(1)式を満たす隙間Cを有するパンチを用いて絞りシゴキ加工を行えばよい。
=t−{(t+tL)/2} ・・・・・(1)
或いは、最終工程で、被加工角型深絞り品の長辺部の板厚をt,短辺部の板厚をt,コーナー部の板厚をt,被加工角型深絞り品のコーナー部壁面とパンチのコーナー部との間の隙間をCとしたとき、所望角型深絞り品の外形に合致する内形を有するダイスと、所望角型深絞り品の内形に近似するとともにコーナー部に下記(2)式及び(3)式を満たす隙間Cを有するパンチを用いて絞りシゴキ加工を行ってもよい。
=t−{(t+tL)/2}+I ・・・・・(2)
0<I≦I ・・・・・(3)
ただし、Iは被加工角型深絞り品のシゴキ加工量,Iはシゴキ加工量Iに応じた隙間量である。
本発明によれば、角型深絞り品を多段絞り加工法により製造する際に、後期の工程で発生し易いコーナー部の割れやカジリもなく、しかもキャニングや口開きの発生も抑制されるため、成形精度に優れた深絞り品が低コストで製造可能となる。このため、本発明により、電池用の角型ケース等が低コストで安価に提供できることとなる。
多段絞り加工時に発生し易いキャニングや口開きを説明する図 本発明における絞りシゴキ加工方法を説明する図(その1) 本発明における絞りシゴキ加工方法を説明する図(その2) 本明細書中におけるキャニング量及び口開き量を定義する図
前記したように、耐力のレベルが高いため形状凍結性が悪い材料を素材として角型深絞り品を多段絞り加工法によって製造しようとすると、加工深さが深くなるほど図1に示すようなキャニングや口開きが大きくなる傾向があって、寸法精度が著しく低下する場合がある。
そこで、このようなキャニングや口開きが発生した深絞り品に対して、通常、形状矯正のためにシゴキ加工を施している。
多段絞り加工を施すとき、被加工製品が円筒深絞り品の場合には板厚変化は周方向でほぼ均等であるであるが、被加工製品が角筒深絞り品の場合には長辺部及び短辺部とコーナー部とでは、板厚が異なってくる。一般的に、短辺部の板厚は減少するが、長辺部の板厚は若干増加し、コーナー部の板厚は著しく増加する。角筒深絞り品の長辺部板厚をt、短辺部板厚をt、コーナー部の板厚をtとしたとき、tは、tやtよりも著しく大きくなる。すなわち、t>>t>tとなる。
ところで、一般的に筒体にシゴキ加工を施すときには、シゴキ加工のダイス孔寸法を絞りのダイス孔寸法よりも相似的に小さくするか、シゴキ加工のパンチ寸法を絞りのパンチ寸法よりも相似的に大きくすることで行う。被加工製品が円筒深絞り品の場合には所定のシゴキ率で行えば良いが、被加工製品が角筒深絞り品の場合にはシゴキ加工を施すと、板厚増加量の大きいコーナー部のシゴキ率は、長辺部及び短辺部よりも著しく大きくなるために割れが発生し易くなり、またダイス金型のコーナー部も損傷し易くなるために、長辺部及び短辺部とコーナー部とではシゴキ率を変える必要がある。
そこで、本発明では、キャニングや口開きが発生した角筒深絞り品に対して、形状矯正のためのシゴキ加工を施す際に、板厚が増加してシゴキ率が大きくなるコーナー部のシゴキ量を低減または無くす加工法を採用して当該部分における割れの発生を抑制しようとするものである。
すなわち、角型深絞り品を多段絞り加工法により製造する際、最終工程として、角型深絞り品のコーナー部の変形抵抗が長辺部及び短辺部の変形抵抗以下となる条件で絞りシゴキ加工を施そうとするものである。用いるパンチとして、角型深絞り品のコーナー部において、当該角型深絞り品のコーナー部壁面との間に隙間があるパンチを用いればよい。
コーナー部の変形抵抗を長辺部及び短辺部の変形抵抗と同じにすれば、被加工角型深絞り品は、図2(b)に見られるように、全周にわたって均等なシゴキが付与されつつ変形される形態となって、キャニングや口開きを発生させることなく、形状矯正される。
また、コーナー部の変形抵抗を長辺部及び短辺部の変形抵抗よりも小さくすると、図3(b)に見られるように、長辺部及び短辺部はシゴキが付与されつつ変形される形態となるのに対して、コーナー部は絞りが付与されつつ変形される形態となる。以上の形態により、キャニングや口開きを発生させることなく、形状矯正される。
コーナー部の変形抵抗を長辺部及び短辺部の変形抵抗と同じにするには、被加工角型深絞り品の長辺部の板厚をt,短辺部の板厚をt,コーナー部の板厚をtとしたとき、所望角型深絞り品の外形に合致する内形を有するダイスと、所望角型深絞り品の内形に近似するとともにコーナー部にC=t−{(t+tL)/2)なる隙間Cを有するパンチを用いて絞りシゴキ加工を行えばよい。
また、コーナー部の変形抵抗を長辺部及び短辺部の変形抵抗よりも小さくするには、所望角型深絞り品の外形に合致する内形を有するダイスと、所望角型深絞り品の内形に近似するとともにコーナー部にC=t−{(t+tL)/2}+I且つ、0<I≦Iなる隙間Cを有するパンチを用いて絞りシゴキ加工を行えばよい。ただし、Iは被加工角型深絞り品のシゴキ加工量であり、Iはシゴキ加工量Iに応じた隙間量である。
素材として420MPaの耐力、500MPaの引張強さ、35%の全伸びを有するフェライト系ステンレス鋼であって、0.8mmの板厚を有する鋼板を準備した。
この鋼板に7工程の多段絞り加工を施して、長辺:170mm、短辺:42mm、コーナーR:6mmの角型深絞り品を製造した。
この角型深絞り品について、各部の板厚を測定したところ、長辺部の板厚t:0.82mm、短辺部板厚をt:0.80mm、コーナー部の板厚t:1.30mmであった。そして、図3に示す量で定義するキャニング及び口開きは、それぞれ3mm及び1mmであった。
続いて、形状を矯正するために、所望角型深絞り品の外形に合致する内形を有するダイスと、所望角型深絞り品の内形に近似するとともにコーナー部に各種の隙間Cを有するパンチを用いて絞りシゴキ加工を行った。
まず、隙間Cがない条件でシゴキ加工を行ったところ、角型深絞り品とダイスの間隔を0.05mm採った場合であっても、被矯正の角型深絞り品に割れが生じ、所望の矯正はできなかった。
次に、C=t−{(t+t)/2}=1.3mm−(0.80mm+0.82mm)/2=0.49mmとし、ダイスと被加工角型深絞り品の隙間を種々変えてシゴキ加工を行ったときの、キャニング量及び口開き量を表1に示す。
コーナー部に隙間Cを設けたダイスとパンチを用いることにより、確実にキャニング量及び口開き量を小さくすることができて形状矯正されたことがわかる。ただし、ダイスと被加工角型深絞り品の隙間を大きくし過ぎると、コーナー部に割れが生じることがある。
Figure 2012210641
また、C=t−{(t+tL)/2}+Ic=1.3mm−0.81mm+Ic=0.49mm+Icとし、ダイスと被加工角型深絞り品の隙間を種々変えてシゴキ加工を行ったときの、キャニング量及び口開き量を表2に示す。なお、Icは被加工角型深絞り品のシゴキ加工量Iとする。
コーナー部に隙間Cを設けたダイスとパンチを用いることにより、確実にキャニング量及び口開き量を小さくすることができて形状矯正されたことがわかる。この場合、ダイスと被加工角型深絞り品の隙間を2.0mmとしても、割れは生じなかった。
Figure 2012210641

Claims (4)

  1. 角型深絞り品を多段絞り加工法により製造する際、最終工程として、角型深絞り品のコーナー部の変形抵抗が直辺部の変形抵抗以下となる条件で絞りシゴキ加工を施すことを特徴とする角型深絞り品の製造方法。
  2. 用いるパンチとして、角型深絞り品のコーナー部において、当該角型深絞り品のコーナー部壁面との間に隙間があるパンチを用いる請求項1に記載の角型深絞り品の製造方法。
  3. 最終工程で、被加工角型深絞り品の長辺部の板厚をt,短辺部の板厚をt,コーナー部の板厚をt,被加工角型深絞り品のコーナー部壁面とパンチのコーナー部との間の隙間をCとしたとき、所望角型深絞り品の外形に合致する内形を有するダイスと、所望角型深絞り品の内形に近似するとともにコーナー部に下記(1)式を満たす隙間Cを有するパンチを用いて絞りシゴキ加工を行う請求項1又は2に記載の角型深絞り品の製造方法。
    =t−{(t+tL)/2} ・・・・・(1)
  4. 最終工程で、被加工角型深絞り品の長辺部の板厚をt,短辺部の板厚をt,コーナー部の板厚をt,被加工角型深絞り品のコーナー部壁面とパンチのコーナー部との間の隙間をCとしたとき、所望角型深絞り品の外形に合致する内形を有するダイスと、所望角型深絞り品の内形に近似するとともにコーナー部に下記(2)式及び(3)式を満たす隙間Cを有するパンチを用いて絞りシゴキ加工を行う請求項1又は2に記載の角型深絞り品の製造方法。
    =t−{(t+tL)/2}+I ・・・・・(2)
    0<I≦I ・・・・・(3)
    ただし、Iは被加工角型深絞り品のシゴキ加工量,Iはシゴキ加工量Iに応じた隙間量である。
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