JP2012206198A - ホブカッタ - Google Patents

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正宣 森川
Wataru Ikeda
渉 池田
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Abstract

【課題】ホブカッタの切刃と被削歯車の歯面の隙間に切屑が噛み込まれるのを防ぐ。
【解決手段】カッタ回転方向Tに回転されるカッタ本体1外周に螺旋状の歯すじに沿って形成された複数の刃部4のすくい面5と左右刃面7、9との交差稜線部には左右切刃6、8を、すくい面5と歯先面11との交差稜線部には歯先切刃10を形成し、複数の刃部4のうち、創成中心刃を0番刃4Zとして、この0番刃4Zに対し歯すじに沿ってカッタ回転方向T後方側に隣接する+1番刃4Aと、この+1番刃4Aのカッタ回転方向T後方側に隣接する+2番刃4Bとを含む連続する少なくとも2つの一部の刃部4A〜4Cでは、左右切刃6、8のうち刃部4が被削歯車Wのトレーリング側の歯面22を形成する側の切刃6と歯先切刃10とのコーナ部12を他の刃部4の同じコーナ部に対し後退させる。
【選択図】図1

Description

本発明は、軸線回りに回転されるカッタ本体の外周に切刃が形成された複数の刃部が螺旋状の歯すじに沿って形成され、被削歯車に切削により歯形を創成するホブカッタに関するものである。
このようなホブカッタにおいては、例えば特許文献1に記載されているように、カッタ本体が軸線回りに回転させられると、螺旋状の歯すじを形成するように配列された複数の刃部の切刃が順次歯形を創成する面に現れて、この面上に直進するラックが投影されるので、このラックに理想的に噛み合うように被削歯車を回転させつつ、歯形を創成する面が被削歯車の歯すじに沿うようにカッタ本体を送り出すことにより、切刃によって被削歯車が切削させられて歯形が形成される。
ここで、この特許文献1には、刃部に形成される上記切刃のうち軸線方向に位置する左右切刃(歯面切刃)のうち片側あるいは両側を、歯すじ上に所定数おきに配置された一部の刃部において、その少なくともカッタ本体外周側に位置する歯先切刃側の部分で、残りの刃部よりも後退させて切削に関与しないように逃がすことにより、この一部の刃部のカッタ回転方向後方側に隣接する刃部において生成される切屑の厚みを厚くして、熱亀裂によるチッピングを抑制することが提案されている。
一方、特許文献2には、このようなホブカッタによる歯車の創成では、歯車においてホブカッタの切刃の遠のき側の歯面であるトレーリング側の歯の歯元付近で、切刃と歯面との間に隙間が発現し、この隙間に切屑が入り込んで噛み込みを生じることにより、歯面のむしれを生じることが指摘されている。すなわち、通常、被削歯車のトレーリング側から生成されて成長した切屑が、切り終わりで歯車においてホブカッタの切刃の近寄り側の歯面であるリーディング側から生成された切屑によって押されてトレーリング側の歯面に押し付けられ、上記隙間に噛み込まれるというものである。
そこで、この特許文献2には、ホブカッタの切刃を、創成される歯車の各歯の全歯丈に対するデデンダムの比率が0.50〜0.53の所定の範囲となるように転位設計することにより上記隙間を小さくするとともに、切刃を歯先端部に異なる凸曲面を有する連続した複数のR面部を有する形状にして、切屑の噛み込みの発生を防ぐことによってこのような歯面のむしれを防止することが提案されている。
特開2005−66706号公報 特開2010−125571号公報
ところが、この特許文献2に記載されているように上記隙間を小さくしても、隙間が発現する以上、切屑の噛み込みを確実に防止することは困難である。その一方で、例えば特許文献1に記載されているように、一部の刃部において左右切刃のうち片側あるいは両側を、少なくとも歯先切刃側の部分で残りの刃部よりも後退させて切削に関与しないようにした場合、この後退させた部分が上記隙間の発現するトレーリング側に位置していれば、上記隙間は逆に大きくなるため、この隙間を介して噛み込みを生じることなく切屑を逃がすことが期待できる。
しかしながら、この特許文献1に記載のホブカッタでは、このような一部の刃部が歯すじ上に所定数おきに配置されていて、すなわちこの一部の刃部のカッタ回転方向後方側に隣接する残りの刃部は切刃が後退していないので、一部の刃部に後続するこの残りの刃部においては切刃と被削歯車の歯面との間に発現する小さな隙間に切屑が噛み込まれてしまい、やはり歯面のむしれを確実に防止することができなくなるおそれがある。そして、このような切屑の噛み込みは、特に歯形の創成中心刃となる、いわゆる0番刃に対して、そのカッタ回転方向後方側に連続して隣接する複数の刃部において生じ易いが、特許文献1には、切削に関与しない刃部を0番刃に対してどのように配設するかについては記載されてはいない。
本発明は、このような背景の下になされたもので、上述のようにホブカッタの切刃と被削歯車の歯面との間に隙間が生じる場合でも、この隙間に切屑が噛み込まれてしまうのを確実に防いで歯面のむしれを防止することが可能なホブカッタを提供することを目的としている。
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明は、軸線回りにカッタ回転方向に回転させられるカッタ本体の外周に、上記軸線回りに捩れる螺旋状の歯すじに沿って複数の刃部が形成され、これらの刃部のカッタ回転方向を向くすくい面と上記軸線方向を向く左右刃面との交差稜線部には左右切刃が形成されるとともに、上記すくい面と上記刃部の外周側を向く歯先面との交差稜線部には歯先切刃が形成されており、上記複数の刃部のうち、創成中心刃を0番刃として、この0番刃に対し上記歯すじに沿って上記カッタ回転方向後方側に隣接する+1番刃と、この+1番刃の上記カッタ回転方向後方側に隣接する+2番刃とを含む連続する少なくとも2つの一部の刃部においては、上記左右切刃のうち該刃部が被削歯車のトレーリング側の歯面を形成する側の切刃と上記歯先切刃とのコーナ部が、他の刃部の同じコーナ部に対して後退させられていることを特徴とする。
このように構成されたホブカッタでは、上記一部の刃部において、左右切刃のうち該刃部における被削歯車のトレーリング側の切刃が、その歯先切刃とのコーナ部において後退させられているので、このトレーリング側の歯面との間に発現する隙間を大きくして切屑の噛み込みを防止することができる。
そして、このように切刃が後退した一部の刃部が、複数の刃部のうち、創成中心刃を0番刃として、この0番刃に対し上記歯すじに沿って上記カッタ回転方向後方側に隣接する+1番刃と、この+1番刃の上記カッタ回転方向後方側に隣接する+2番刃とを含む連続する少なくとも2つの刃部とされているので、かかる切屑の噛み込みを確実に防止することができる。
以上説明したように、本発明によれば、被削歯車のトレーリング側の歯元部分において切刃との間に隙間が生じても、この隙間に切屑が噛み込まれるのを防ぐことができ、これにより歯面にむしれが生じたりするのを防いで高精度かつ高品位の歯形を創成することが可能となる。
本発明の一実施形態のホブカッタ、および該ホブカッタにより被削歯車に歯形を創成する状態を示す図である。 図1に示す実施形態の一部の刃部により歯形を創成するときの創成線図である。
図1および図2は本発明の一実施形態を示すものである。本実施形態のホブカッタは、超硬合金や高速度工具鋼等の硬質材料により形成されて、図1に示すように軸線O回りにカッタ回転方向Tに回転させられる外形略円筒状のカッタ本体1の外周に、上記軸線O回りに歯すじに沿って捩れる螺旋状のネジ状部2と、周方向に間隔をあけてそれぞれ軸線O方向に延びる複数条の溝部3とが互いに交差するように形成されており、こうして溝部3が交差することによってネジ状部2が分断されることにより、複数(多数)の刃部4が形成されている。
こうして形成された刃部4のカッタ回転方向T側を向く面はすくい面5とされ、該すくい面5はカッタ本体1の外周側に向けて先細りとなる概略等脚台形状とされている。そして、この外周側が上向きの状態でカッタ回転方向T側からすくい面5に対向して見たときに、すくい面5の右側の辺稜部が右切刃6とされて、この右切刃6のカッタ回転方向T後方側に連なる刃部4の軸線O方向を向く側面が右刃面7とされ、すくい面5の左側の辺稜部が左切刃8とされて、この左切刃8のカッタ回転方向T後方側に連なる軸線O方向を向く刃部4の側面が左刃面9とされる。また、すくい面5の外周側の辺稜部は歯先切刃10とされて、この歯先切刃10に連なる刃部4の外周側を向く面が歯先面11とされる。
このようなホブカッタは、歯切り加工装置であるホブ盤の回転軸Sに取り付けられて上記軸線O回りにカッタ回転方向Tに強制的に回転駆動させられるとともに、被削歯車Wの歯すじ方向(被削歯車Wが平歯車の場合は図1および図2において図面に直交する方向)に送られて、該被削歯車Wに歯21を形成してゆく。すなわち、このホブカッタの工具本体1の回転により、上記ネジ状部2に形成された刃部4が順次歯形を創成する面に現れて、この歯形創成面上における刃部4の切刃6、8、10の軌跡が、図1に符号Aに示す進行方向に直進するラックRとして投影される。
一方、被削歯車Wも、上記ホブ盤の他の回転軸に取り付けられて、歯21が創成される部分が上記ラックRの進行方向Aに向かうように、その中心軸C回りに回転方向Bに強制的に回転駆動させられ、この被削歯車Wの回転と上記ホブカッタのカッタ本体1の回転とが、上記ラックRに被削歯車Wの歯21が噛み合うように同期させられて駆動される。
従って、カッタ本体1の刃部4は、その右切刃6が図1において歯21の左歯面22を刃部4が被削歯車Wから遠ざかるときに切削することになり、逆に左切刃8が図1において歯21の右歯面23を刃部4が被削歯車Wに近づくときに切削することになる。すなわち、被削歯車Wから見ると、図1において左歯面22がトレーリング側の歯面となり、右歯面23がリーディング側の歯面となる。
そして、図2に示すように本実施形態のホブカッタでは、上記複数の刃部4のうち歯すじに沿って連続する少なくとも2つ(本実施形態では3つ)の一部の刃部4A〜4Cにおいて、上記左右切刃6、8のうち該刃部における被削歯車Wのトレーリング側の切刃、すなわち本実施形態では右切刃6と、上記歯先切刃10とが交差するコーナ部12が、図2に破線で示す他の刃部4の同じコーナ部に対して後退させられている。
ここで、これら一部の刃部4A〜4Cにおいては、図1に示すように該刃部4A〜4Cにおける右刃面7と歯先面11との交差稜線部に面取り部13が形成されていて、この面取り部13がすくい面5に交差することにより、上記コーナ部12が切り欠かれるようにしてすくい面5の内側に後退させられている。なお、この面取り部13は、カッタ本体1の周方向における各刃部4A〜4Cの全刃幅に亙って延びている。また、こうして後退したコーナ部12は、すくい面5に対向する方向から見て右切刃6と歯先切刃10とに鈍角に交差するように直線状に延びており、ただし右切刃6との交差角の方が歯先切刃10との交差角よりも大きくなるようにされている。
さらに、本実施形態では、こうしてコーナ部12が後退させられた一部の刃部4A〜4Cは、複数の刃部4のうち創成中心刃となる刃部4Zを0番刃として、この0番刃に対しホブカッタの歯すじに沿ってカッタ回転方向Tの後方側に隣接して+1番刃とされる刃部4Aと、この+1番刃のさらにカッタ回転方向T後方側に隣接して+2番刃とされる刃部4Bとされており、さらにこの+2番刃のカッタ回転方向T後方側に隣接して+3番刃とされる刃部4Cにおいても、コーナ部12が後退させられている。
なお、創成中心刃となる刃部4Zは、図1に示すようにカッタ本体1の軸線Oと被削歯車Wの中心軸Cとに直交する直線L上に位置する刃部4である。ここで、複数の被削歯車Wの歯形を創成した後に、カッタ本体1を軸線O方向にずらすようにシフトして再び被削歯車Wの歯形を創成する場合には、この創成中心刃となる刃部4Zもシフトすることになるので、新たに創成中心刃となる刃部4Zからカッタ回転方向T後方側に隣接する少なくとも2つの刃部4においてもコーナ部12を後退させるようにして、1つのカッタ本体1に複数群の上記一部の刃部4A〜4Cが形成されるようにしてもよい。
このように構成されたホブカッタでは、上記一部の刃部4A〜4Cにおいて、左右切刃6、8のうち刃部4A〜4Cが被削歯車Wの左歯面22を形成する側の切刃である右切刃6が、その歯先切刃10とのコーナ部12において後退させられているので、図2に示すように被削歯車Wから見てトレーリング側となるこの左歯面22の歯元部分に発現する隙間Dをコーナ部12が後退した分だけ大きくすることができる。
従って、このトレーリング側の左歯面22で生成された切屑が成長した後に、リーディング側から生成した切屑によって左歯面22に押し付けられても、こうして大きく空いた隙間Dにより切屑の噛み込みを防止することができる。そして、こうしてコーナ部12が後退した一部の刃部4A〜4Cが、創成中心刃となる0番刃の刃部4Zに対して、歯すじに沿ってそのカッタ回転方向Tの後方側に隣接する+1番刃の刃部4Aと、この+1番刃の刃部4Aのさらにカッタ回転方向T後方側に隣接する+2番刃の刃部4Bとを含む少なくとも2つの刃部とされており、さらに本実施形態ではこの+2番刃の刃部4Bのカッタ回転方向T後方側に隣接する+3番刃の刃部4Cもコーナ部12が後退させられているので、上記構成のホブカッタでは、このような切屑の噛み込みを一層確実に防止することが可能となる。
このため、上記構成のホブカッタによれば、このような切屑が被削歯車Wの歯面(左歯面22)と刃部4A〜4Cとの間に噛み込まれてしまって歯面にむしれが生じたりするのを避けることができ、高精度で高品位の歯形を有する歯車を創成することが可能となる。その一方で、こうしてコーナ部12が後退した一部の刃部4A〜4Cは、創成中心刃となる0番刃の刃部4Zの歯すじに沿ってカッタ回転方向T後方側に隣接する連続した刃部であるので、元々コーナ部12は歯形の創成に関与することが無く、従ってコーナ部12が後退していても歯形の精度や品位に影響を及ぼすこともない。
なお、本実施形態では、コーナ部12を上述のようにすくい面5に対向する方向から見て直線状をなして後退するように形成しているが、例えば曲率半径の大きな凸曲線をなすようにしてすくい面5の内側に後退するように形成されていてもよい。また、本実施形態のように3つ以上の刃部4においてコーナ部12が後退させられていてもよいが、こうしてコーナ部12が後退した刃部4が多くなりすぎると高精度、高品位の歯形の創成が困難となるおそれがあるので、被削歯車Wの歯数や刃部4の総数にもよるが、4枚程度までとされるのが望ましい。
1 カッタ本体
4 刃部
4A〜4C +1〜+3番刃
4Z 0番刃
5 すくい面
6 右切刃
7 右刃面
8 左切刃
9 左刃面
10 歯先切刃
11 歯先面
12 コーナ部
13 面取り部
21 歯
22 左歯面(トレーリング側)
23 右歯面(リーディング側)
W 被削歯車
O カッタ本体1の軸線
C 被削歯車Wの中心軸
T カッタ本体1の回転方向
B 被削歯車Wの回転方向
D 隙間

Claims (1)

  1. 軸線回りにカッタ回転方向に回転させられるカッタ本体の外周に、上記軸線回りに捩れる螺旋状の歯すじに沿って複数の刃部が形成され、これらの刃部のカッタ回転方向を向くすくい面と上記軸線方向を向く左右刃面との交差稜線部には左右切刃が形成されるとともに、上記すくい面と上記刃部の外周側を向く歯先面との交差稜線部には歯先切刃が形成されており、上記複数の刃部のうち、創成中心刃を0番刃として、この0番刃に対し上記歯すじに沿って上記カッタ回転方向後方側に隣接する+1番刃と、この+1番刃の上記カッタ回転方向後方側に隣接する+2番刃とを含む連続する少なくとも2つの一部の刃部においては、上記左右切刃のうち該刃部が被削歯車のトレーリング側の歯面を形成する側の切刃と上記歯先切刃とのコーナ部が、他の刃部の同じコーナ部に対して後退させられていることを特徴とするホブカッタ。
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