JP2012201635A - 感光性金属アルコキシド、塗布液、及びパターン化膜の形成方法 - Google Patents

感光性金属アルコキシド、塗布液、及びパターン化膜の形成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】機械的強度が高いパターン化酸化チタン膜を形成できる感光性金属アルコキシド、塗布液、パターン化膜の形成方法を提供する。
【解決手段】金属アルコキシドと、前記金属アルコキシドに配位した、化学式1で表される配位子等から成る感光性金属アルコキシド。

化学式1におけるR1、R2、R3、R4は、炭化水素又は水素である。前記感光性金属アルコキシドを含むことを特徴とする塗布液。その塗布液は、表面を有機物で修飾された金属化合物から成る粒子を含むことができる。
【選択図】図2

Description

本発明は、感光性金属アルコキシド、塗布液、及びパターン化膜の形成方法に関する。
酸化チタンは、その特異な光触媒能、電子物性、光学特性から、環境浄化触媒、光電変換デバイス、光学素子等への応用が研究されている。酸化チタンを光電変換デバイスや光学素子へ応用する場合は、パターン化された酸化チタン膜(パターン化酸化チタン膜)が必要となる。現在、光電変換デバイスや光学素子を低耐熱性のポリマー基板上に形成する研究が進んでおり、パターン化酸化チタン膜を、できるだけ低温での処理で形成する方法が望まれている。また、得られたパターン化酸化チタン膜には、パターン形成助剤の有機物残渣等が、できるだけ残留しないことが望ましい。
パターン化酸化チタン膜を形成する方法として、表面に配位子を修飾した酸化チタンナノ粒子を基板上に製膜し、これに紫外線を位置特異的に照射することで照射部分の配位子を酸化チタンナノ粒子の光触媒反応で分解し、ナノ粒子間の凝集を誘起することでパターン化酸化チタン膜を得る方法が提案されている(特許文献1参照)。この方法では、結晶性のパターン化酸化チタン膜を得るのに加熱する必要がなく、表面配位子が光触媒反応で分解されるので、有機物残渣が少ないという利点がある。
特開2010−214290号公報
しかしながら、特許文献1記載の方法で得られたパターン化酸化チタン膜では、酸化チタンナノ粒子がvan der Waals力で凝集しているだけであるので、パターン化酸化チタン膜の機械的強度が低いという問題があった。
本発明は以上の点に鑑みなされたものであり、機械的強度が高いパターン化膜(例えばパターン化酸化チタン膜)を形成できる感光性金属アルコキシド、塗布液、及びパターン化膜の形成方法を提供することを目的とする。
本発明の感光性金属アルコキシドは、金属アルコキシドと、前記金属アルコキシドに配位した、化学式1〜3のいずれかで表される配位子と、から成ることを特徴とする。
化学式1〜3におけるR1、R2、R3、R4は、炭化水素又は水素である。化学式2、3におけるXは、O、S、N−Cn2n+1(nは整数)、CH2のいずれかであり、Yは、OH、ONa、OKのいずれかである。
本発明の感光性金属アルコキシドの膜を形成し、その膜に対し、例えば、露光、現像の工程を行うことにより、パターン化膜(パターン化酸化チタン膜等のパターン化金属酸化物膜)を形成することができる。そのように形成されたパターン化膜は機械的強度が高い。
本発明の感光性金属アルコキシドは、例えば、溶媒に溶解又は分散させて、塗布液とすることができる。この塗布液を基板に塗布して塗膜を形成し、その後、例えば、露光、現像の工程により、パターン化膜を形成することができる。そのように形成されたパターン化膜は、機械的強度が高い。
この塗布液は、感光性金属アルコキシドに加えて、例えば、表面を有機物で修飾された金属化合物から成る粒子(例えば表面修飾酸化チタンナノ粒子)を含むことができる。
本発明のパターン化膜の形成方法は、上述した塗布液を塗布して膜を形成する工程と、前記膜を露光及び現像する工程と、を含むことを特徴とする。本発明によれば、結晶性金属化合物を含み、且つ機械的強度が高いパターン化膜を容易に形成することができる。
前記金属アルコキシドとしては、例えば、チタンのアルコキシドである、チタン(IV)テトライソプロポキシド、チタン(IV)テトラブトキシドの部分加水分解物が望ましく、チタン(IV)テトラブトキシドを部分的に加水分解・縮合して得られるチタン(IV)ブトキシドポリマーを用いることが最も望ましい。部分加水分解・縮合の方法は、公知の方法で行うことができる。金属アルコキシドとして、チタンアルコキシドに加え、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、アルミニウム、及びケイ素のいずれかのアルコキシドの部分加水分解・縮合産物を単独で、あるいは、複数種混合して用いることができる。また、チタン以外の金属(ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、アルミニウム、ケイ素等)のアルコキシドを単独で用いてもよい。
前記配位子としては、例えば、化学式1で表わされるα-ヒドロキシカルボン酸、又はそのエステル、化学式2〜3で表されるα-ヒドロキシケトン等が挙げられる。化学式1で表わされるα-ヒドロキシカルボン酸、又はそのエステルとしては、例えば、表1に示すものが挙げられる。
また、化学式2で表される化合物としては、例えば、表2に示すものが挙げられる。
また、化学式3で表される化合物としては、例えば、表3に示すものが挙げられる。
化学式1〜3におけるR1、R2、R3、R4は、炭化水素または水素であり、炭化水素の場合は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、鎖中に、化学量論的に取り得る最大数以下の数の多重結合が含まれてもよい。化学式1のR3は、R1またはR2と結合して環を成してもよい。配位子としては、特に、化学式1において、R1=CH3, R2=H, R3=C25である乳酸エチルを用いることが望ましい。
配位子は、上述した金属アルコキシドと錯体を形成し、感光性金属アルコキシドとなる。感光性金属アルコキシドは、溶媒に溶解した金属アルコキシドに、配位子を添加し、攪拌することで得ることができる。溶媒としては、金属アルコキシドと配位子の両方を溶解できれば、何を用いてもよい。乳酸エチル、乳酸ブチル等、配位子であると同時に基板への塗布性に優れる溶媒になりうるものを用いる場合は、これら配位子そのものを溶媒とし、これに金属アルコキシドを溶解して感光性金属アルコキシドとしてもよい。感光性金属アルコキシドの合成は室温で行えるが、加熱して行ってもよい。乳酸エチルとチタンブトキシドポリマーの場合は、チタンブトキシドの1-メトキシ-2-プロパノール溶液に乳酸エチルを添加し、数秒攪拌するだけで、黄色の感光性チタンアルコキシドが得られる。
感光性金属アルコキシドとは、紫外線照射によって配位子が脱離するものである。配位子の脱離によって、金属アルコキシド間で水酸基の重合が進行し、膜は現像液に対して不溶化し、ネガ型パターンが形成される。
前記金属化合物から成る粒子としては、例えば、酸化チタンナノ粒子が挙げられる。 酸化チタンナノ粒子としては、透明な膜が必要な場合は、粒径20nm以下のものを用いることが望ましい。表面修飾酸化チタンナノ粒子は、例えば、特開2010−214290号公報に記載の方法で得ることができる。表面配位子としては、例えば、特開2010−214290号公報に記載のものを用いることができるが、修飾粒子の分散性、配位子の分解しやすさを考慮すると、図1(I)に示すエチルマルトール等の3-ヒドロキシ-4-ピロン誘導体や、図1(II)に示す1,2-オクタンジオール等の1,2-ジオールが望ましい。表面修飾ナノ粒子を懸濁する溶媒は、表面修飾ナノ粒子が分散し、感光性金属アルコキシドが溶解すれば、どのようなものでもよいが、粒子の分散性、塗布性を考慮すると、エタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、乳酸エチル等がよい。
前記塗布液は、上述した感光性金属アルコキシドのみを含むものであってもよいし、感光性金属アルコキシドと表面修飾酸化チタンナノ粒子との両方を含むものであってもよい。塗布液を基板に塗布することで塗膜を形成することができる。
塗布液中に、感光性金属アルコキシドと、表面修飾酸化チタンナノ粒子との両方を含む場合、塗布液における、表面修飾酸化チタンナノ粒子と、感光性金属アルコキシドの混合比は、表面修飾酸化チタンナノ粒子中のチタン原子濃度(Ti(TiO2))と、感光性金属アルコキシド中のチタン原子濃度( Ti(Ti-L))とより規定されるチタン混合比(Ti(Ti-L)/ [Ti(TiO2)+Ti(Ti-L)])が5%以上であることが好ましい。こうすることにより、塗膜の膜強度が一層向上する。
また、塗布液には、表面修飾酸化チタンナノ粒子の代わりに、あるいは、表面修飾酸化チタンナノ粒子に加えて、別の金属酸化物の表面修飾ナノ粒子を用いることも可能である。用いる金属酸化物が強い光触媒活性を示さない場合は、その表面配位子として、配位子‐金属錯体が光化学的に容易に分解する、エチルマルトール等の3-ヒドロキシ-4-ピロン誘導体や、α-ヒドロキシベンゾフェノン誘導体を用いるとよい。
塗布液の溶媒は、感光性金属アルコキシドが溶解し、表面修飾酸化チタンナノ粒子が分散するものなら、どのような溶媒を用いてもよい。
本発明のパターン化膜の形成方法では、上述した塗布液を基板に塗布して膜を形成することができる。その基板としては、ガラス、ポリマー、セラミックス等、塗布液に含まれる溶媒や、現像液(例えばアルカリ性水溶液からなる現像液)で、溶解、毀損しないものが好ましい。基板は、例えば、酸洗浄、アルカリ洗浄、反応性酸素プラズマ処理、エキシマーランプ照射等、公知の方法で洗浄・親水性化してから用いることができる。基板への塗布液の塗布は、スピンコート、ディップコート、フローコート等、どのような方法でもよい。
本発明のパターン化膜の形成方法における露光では、例えば、紫外線照射を用いることができる。紫外線照射の光源には、配位子と金属アルコキシド間で形成された錯体と、表面修飾酸化チタンナノ粒子のバンドギャップおよび表面錯体を、光励起できる光源であれば、どのようなものを用いてもよい。具体的には、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、エキシマーランプ、エキシマーレーザー、Nd:YAGレーザー、UV-LED、殺菌ランプ、ブラックライト蛍光管等を用いることができる。
本発明のパターン化膜の形成方法における現像は、例えば、露光(例えば紫外線照射)した基板を現像液に浸漬する、あるいは、現像液を基板に流しかけることによって行うことができる。現像液としては、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等の水酸化四級アンモニウム塩水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、アンモニア水溶液、アルカノールアミン水溶液等のアルカリ性水溶液を用いることができる。現像液濃度は、0.01〜10wt%の範囲が好ましい。
露光後、現像前に、100℃程度の温度で、短時間の露光後ベイク(post-exposure bake; PEB)を行うと、配位子光分解産物の除去、アルコキシドの重合、粒子間のvan der Waals力による凝集等が促進されるため、膜の不溶化がより速く進み、より短時間の露光、低濃度の現像液でパターン化膜が得られる。特に、金属化合物の光触媒活性が低い場合は、PEB工程で、表面配位子の分解産物が除去されるので、効果が大きい。
本発明のパターン化膜の形成方法は、例えば、図2に示すように行うことができる。すなわち、基板上に、感光性金属アルコキシド(図2では金属アルコキシド+配位子)と表面修飾酸化チタンナノ粒子(図2では表面修飾ナノ粒子)を含む塗布液を塗布し、次に、基板の上にフォトマスクを設置してから、紫外線露光を行う。その後、露光ベイクを行い、アルカリ水溶液である現像液を用いて現像を行い、パターン化膜(パターン化結晶性酸化チタン膜)を形成する。
配位子の構造を表す説明図であり、(I)はエチルマルトールを表し、(II)は1,2-オクタンジオールを表す。 パターン化膜の形成方法を表す説明図である。 パターン化に用いるフォトマスクの構成を表す説明図である。 パターン化酸化チタン膜の光学顕微鏡写真(倍率400倍)である。 パターン化膜のSEM写真であり、「100% Ti−Bu」の写真は、Ti-Bu-EL膜を表し、「100% TiO2」の写真は、EtMal-TiO2膜を表し、「TiO2/Ti−Bu=7/3」の写真は、「EtMal-TiO2/ TiBu-EL = 7/3」の膜を表す。 引っ掻き試験(鉛筆硬度6B)実施後のパターン化膜の写真であり、各写真の上側の数値は、混合液の組成を表す。 引っ掻き試験(鉛筆硬度HB)実施後のパターン化膜の写真であり、各写真の上側の数値は、混合液の組成を表す。 引っ掻き試験(鉛筆硬度3H)実施後のパターン化膜の写真であり、各写真の上側の数値は、混合液の組成を表す。 引っ掻き試験実施後のパターン化膜の写真であり、各写真の上側の数値は、試験に用いた鉛筆硬度を表す。溶液は乳酸エチルを配位子としたチタンブトキシドポリマーのみからなる。
本発明の実施形態を説明する。
1.感光性チタンアルコキシド溶液の調製
(1)感光性チタンアルコキシド溶液A−1〜A−5
チタン(IV)ブトキシドポリマー(Aldrich)を、1-メトキシ-2-プロパノール(PGME)に、チタン(IV)ブトキシドポリマーの濃度が0.5Mとなるように溶解した。この溶液250μLに、配位子である乳酸エチル(α-ヒドロキシカルボン酸エステル)と、PGMEを、チタン終濃度0.25M、溶液の容量500μLとになるように添加し、ボルテックスミキサーで攪拌して感光性チタンアルコキシド溶液を得た。
乳酸エチルの添加量と、PGMEの添加量は、表4に示すとおりとして、A−1〜A−5の5種類の感光性チタンアルコキシド溶液を得た。それぞれの溶液における乳酸エチル(EL)とチタン(IV)ブトキシド(Ti-Bu)とのモル比は表4に示すとおりである。
(2)感光性チタンアルコキシド溶液B
8.47mmolのチタン(IV)テトライソプロポキシド(Aldrich)を、1mLのPGMEに溶解した。これに、チタンに対して1当量の水を含むPGME2.5mLを添加し、85℃で1時間、加熱攪拌した。加熱終了後、ロータリーエバポレイターでPGMEと低沸点化合物を除去し、再度PGMEを添加して、最終容量4.0mLのチタンイソプロポキシド部分加水分解物を得た(最終Ti濃度=2.12M)。
次に、このチタンイソプロポキシド部分加水分解物に、チタンに対して2当量の乳酸エチルを添加し、これをPGMEでチタン濃度が0.25Mになるように希釈して、感光性チタンアルコキシド溶液Bとした。
(3)感光性チタンアルコキシド溶液C
上記感光性チタンアルコキシド溶液A−1〜A−5の調製方法と基本的には同様であるが、配位子として、乳酸エチルの代わりに、表5、表6に示すもののいずれかを用いて、感光性チタンアルコキシド溶液C1〜C12(表7)を調製した。感光性チタンアルコキシド溶液C1〜C12における配位子とチタン(IV)ブトキシド(TiBu)との混合モル比は表7に示すとおりである。
2.EtMal-表面修飾酸化チタン懸濁液の調製
0.1M塩酸水溶液に、チタン(IV)テトライソプロポキシドを、その濃度が0.548Mとなるように添加し、生じた白色沈殿を超音波洗浄機で分散した。その後、100℃で8時間加熱することで、酸化チタンナノ粒子を得た。加熱の後、超音波洗浄機で処理することで、酸化チタンの分散性を向上させた。
得られた酸化チタン5mLにアセトンを添加し、遠心分離によって酸化チタンを沈殿させた。これを 、10mLのN, N-ジメチルアセトアミドに懸濁した後、表面配位子である1-エチル-3-ヒドロキシ-4-ピロン(エチルマルトール; EtMal)を、EtMalの濃度が酸化チタン中のチタン原子濃度の1/5となるように添加し、100℃で30分間加熱攪拌した。得られた黄色の、EtMal-表面修飾酸化チタン反応液にアセトン、ヘキサンを加えて、EtMal-表面修飾酸化チタンナノ粒子を凝集させ、遠心分離で回収した。これをアセトンで一回洗浄した後、乳酸エチル10mLに懸濁し、ロータリーエバポレイターを用いて、チタン原子終濃度0.8125Mになるまで、乳酸エチルを留去した。以上の工程により、EtMal-表面修飾酸化チタンナノ粒子懸濁液が得られた。
3.混合液D1〜D7の調製
上記のようにして得られたEtMal-表面修飾酸化チタンナノ粒子懸濁液と、0.5MチタンブトキシドポリマーのPGME溶液(Ti-Bu)とを混合した。次に、その混合液を、チタンブトキシドポリマーの配位子と溶媒を兼ねた乳酸エチルで希釈した。
EtMal-表面修飾酸化チタンナノ粒子懸濁液(後述する表8ではEtMal-TiO2と表記)、0.5Mチタンブトキシドポリマー(後述する表8ではTi-Buと表記)、乳酸エチル(後述する表8ではELと表記)の配合量は表8に示すとおりとして、D−1〜D−7の7種類の、EtMal-表面修飾酸化チタンナノ粒子及び感光性チタンアルコキシドの混合液(以下、単に混合液とする)を調製した。
混合液D−1〜D−7における、EtMal-TiO2のチタン原子と、Ti-Buのチタン原子との濃度比は上記表8に示すとおりである。また、EtMal-TiO2のチタン原子と、Ti-Buのチタン原子との合計終濃度は、混合液D−1〜D−7のいずれにおいても0.35Mである。
4.混合液Eの調製
上記混合液D−1〜D−7の調製方法と基本的には同様であるが、配位子として、乳酸エチルの代わりに、エチルマルトールを用いて、混合液Eを調製した。この混合液Eは、以下の組成を有する。
混合液Eにおいて、EtMal-表面修飾酸化チタンナノ粒子由来のチタン原子の濃度は0.245Mであり、チタンブトキシドポリマー由来のチタン原子の濃度は0.105Mであり、エチルマルトールの濃度は26.25mMである。また、混合液Eの溶媒はPGMEである。
5.パターン化膜の形成
(1)感光性チタンアルコキシド溶液A−1〜A−5をソーダライムガラスに塗布し、全面に紫外線を所定時間露光したのち、種々の濃度のTMAH水溶液を滴下し、30秒後に、ブロワーでTMAH水溶液を除去し、除去後の膜の有無を目視で評価した。その結果を表9〜13に示す。
表9〜13において、○は現像後に膜が残存していることを表し、△は現像で部分的に膜が溶解したことを表し、×は現像で膜が溶解したことを表す。表9〜13に示すいずれの条件でも、紫外線露光前(露光時間が0secの状態)では膜が溶解し、所定時間の紫外線露光後では、膜がTMAH水溶液に対して不溶になっている。このことから、感光性チタンアルコキシド溶液A−1〜A−5を用いてネガ型パターン(パターン化膜)が形成可能であることが確かめられた。
(2)感光性チタンアルコキシド溶液C−1〜C−12をソーダライムガラスに塗布し、全面に紫外線を所定時間露光したのち、種々の濃度のTMAH水溶液を滴下し、30秒後に、ブロワーでTMAH水溶液を除去し、除去後の膜の有無を目視で評価した。その結果を表14〜16に示す。
表14〜16において、○は現像後に膜が残存していることを表し、△は現像で部分的に膜が溶解したことを表し、×は現像で膜が溶解したことを表す。表14〜16に示すいずれの条件でも、紫外線露光前(露光時間が0secの状態)では膜が溶解し、所定時間の紫外線露光後では、膜がTMAH水溶液に対して不溶になっている。このことから、感光性チタンアルコキシド溶液C−1〜C−12を用いてネガ型パターン(パターン化膜)が形成可能であることが確かめられた。なお、表15、16における「PEB*」は、通常の露光後、100℃で*sec間、露光後ベイクを行うことを意味する。
(3)感光性チタンアルコキシド溶液Bをソーダライムガラスに塗布し、全面に紫外線を所定時間露光したのち、1wt%濃度のTMAH水溶液を滴下し、30秒後に、ブロワーでTMAH水溶液を除去し、除去後の膜の有無を目視で評価した。その結果を表17に示す。
表17において、○は現像後に膜が残存していることを表し、△は現像で部分的に膜が溶解したことを表し、×は現像で膜が溶解したことを表す。表17に示す条件では、紫外線露光前(露光時間が0secの状態)では膜が溶解し、60sec以上の紫外線露光後では、膜がTMAH水溶液に対して不溶になっている。このことから、感光性チタンアルコキシド溶液Bを用いてネガ型パターン(パターン化膜)が形成可能であることが確かめられた。
(4)混合液Eの500μLを、ソーダライムガラス(50×50mm、0.7mm厚)に、1000rpm、20secの条件でスピンコートし、100℃に保温したホットプレート上で1分間乾燥した。これに、石英基板上に形成した線幅5μm、開口率90%のメッシュ(図3参照)からなるクロムフォトマスクを乗せ、250W超高圧水銀ランプ(USH-250BY, ウシオ電機)を装着したランプハウス(ML-251B、ウシオ電機)+照射光学ユニット(PM-25C-75、ウシオ電機)からの紫外光(60〜70mWcm-2, 365nmでの強度)に2分間露光した。露光後、100℃に保温したホットプレート上で2分間、露光後ベイク(PEB)を行ってから、現像液(濃度2.5WT%のTMAH水溶液)を用いて現像した。その結果、図4に示すパターン化膜が得られた。
6.膜強度の評価
混合液D1〜D7を用いてパターン化膜を形成した。その形成条件は、混合液Eを用いてパターン化膜を形成した場合と同様とした。
混合液D7を用いて形成したパターン化膜(乳酸エチルを配位子としたチタンブトキシドポリマー(TiBu-EL)の膜)と、混合液D1を用いて形成したパターン化膜(エチルマルトール修飾酸化チタンナノ粒子(EtMal-TiO2)の膜)と、混合液D6を用いて形成したパターン化膜(TiBu-ELとEtMal-TiO2をEtMal-TiO2/ TiBu-EL=7/3の比率で混合した膜)のそれぞれについて、SEM観察をおこなった。その結果を図5に示す。
Ti-Bu-EL膜(図5における「100% Ti−Bu」)は微細構造のない平滑な膜であり、EtMal-TiO2膜(図5における「100% TiO2」)は粒子が集合した多孔質膜であった。「EtMal-TiO2/ TiBu-EL=7/3」の膜(図5における「TiO2/Ti−Bu=7/3」)は両者の中間的な表面形状の膜であり、酸化チタンナノ粒子と感光性チタンアルコキシドを混合して製膜すると、酸化チタンナノ粒子が膜中に取り込まれることが確かめられた。
混合液D1〜D7を用いて形成したパターン化膜に対し、鉛筆引っ掻き試験を行った。その結果を表18に示す。また、引っ掻き試験実施後のパターン化膜の写真を図6〜図9に示す。なお、図6〜図8において、「TiO2/Ti−Bu」は、EtMal-TiO2のチタン原子と、Ti-Buのチタン原子との濃度比を表す。また、図9は、混合液D7を用いて形成したパターン化膜の結果を表す。また、表18において、×は傷ありを意味し、○は傷なしを意味する。
バインダー(感光性チタンアルコキシド)を添加していないEtMal-表面修飾酸化チタンナノ粒子のみ(混合液D−1)を用いて形成されたパターン化膜では、6Bで既にパターン化膜に傷が見られたが、感光性チタンアルコキシドが添加された混合液(混合液D2〜D6)を用いて形成されたパターン化膜では、EtMal-表面修飾酸化チタンのみのパターン化膜に比べて、傷が減っていた。感光性チタンアルコキシドの添加量が増えるに従って、パターン化膜の機械的強度は上がり、EtMal-TiO2/Ti-Buチタン原子濃度比=70/30の条件では、HB〜3H程度でも傷がつかないパターン化膜が得られた。
また、感光性チタンアルコキシドのみから成る混合液(混合液D−7)を用いて形成されたパターン化膜は、更に強度が高く、硬度9Hの鉛筆引っ掻きでも、パターン化膜の剥離は見られなかった。
7.比較例
(1)チタンテトライソプロポキシド(Aldrich)を、その濃度が0.1Mになるようにエタノールに溶解し、これに配位子であるトリエタノールアミンを、その濃度が0.067Mとなるように添加した。この混合比で、配位子中の水酸基とチタン原子の比が2になる。
溶液を一晩攪拌した後、2000rpmでガラス基板上に溶液をスピンコートして膜を形成し、100℃で1分間乾燥した後、紫外線照射を行った。所定時間露光後、基板を1wt%濃度のTMAH水溶液で現像し、紫外線照射で膜の溶解性の変化が生じるかどうかを調べた。結果を表19に示す。表19において、○は現像後に膜が残存していることを表し、×は現像で膜が溶解したことを表す。
表19に示すように、紫外線照射(PEB工程を追加したものも含む)を行っても、膜の溶解性の変化は見られず、パターン化膜を形成できないことが分かった。
(2)基本的には上記(1)と同様であるが、チタンテトライソプロポキシドの代わりに、同濃度のチタンブトキシドポリマーを用いて試験を行った。その結果を表20に示す。表20において、○は現像後に膜が残存していることを表し、×は現像で膜が溶解したことを表す。
表20に示すように、チタンアルコキシドをチタンブトキシドポリマーに代えても、紫外線照射による膜の溶解性変化は見られず、トリエタノールアミンを配位子とした場合は、現像でパターンを形成できないことがわかった。
なお、本発明は前記実施例になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。

Claims (4)

  1. 金属アルコキシドと、
    前記金属アルコキシドに配位した、化学式1〜3のいずれかで表される配位子と、
    から成る感光性金属アルコキシド。
    化学式1〜3におけるR1、R2、R3、R4は、炭化水素又は水素である。化学式2、3におけるXは、O、S、N−Cn2n+1(nは整数)、CH2のいずれかであり、Yは、OH、ONa、OKのいずれかである。
  2. 請求項1記載の感光性金属アルコキシドを含むことを特徴とする塗布液。
  3. 表面を有機物で修飾された金属化合物から成る粒子を含むことを特徴とする請求項2記載の塗布液。
  4. 請求項2又は3記載の塗布液を塗布して膜を形成する工程と、
    前記膜を露光及び現像する工程と、
    を含むことを特徴とするパターン化膜の形成方法。
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