JP2012197485A - 結晶配向性を有する鋼板の製造方法 - Google Patents

結晶配向性を有する鋼板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、特定の結晶配向性を有する鋼板を所望の厚みで安定して製造することができ、結晶配向性を有する鋼板をより効率的に提供する。
【解決手段】特定の結晶配向性を有し、厚さが0.01mm以上10mm以下の鋼板を製造する方法であって、
(a)α−γ変態系マスターピース鋼板と該マスターピース鋼板より低いA3変態点を有するα−γ変態系マテリアル鋼板2を積層する工程、
(b)積層したマスターピース鋼板とマテリアル鋼板を接着することによって一体化する工程、
(c)マテリアル鋼板のA3変態点以上、マスターピース鋼板のA3変態点未満に加熱した後に、マテリアル鋼板
のA3変態点未満に冷却する工程、
から構成されることを特徴とする結晶配向性を有する鋼板の製造方法である。
【選択図】なし

Description

本発明は、結晶配向性を有する鋼板の製造方法に関する。
従来から鋼板の結晶方位を揃えて、鋼板の加工性や磁気特性を向上させる試みがなされてきた。鋼板の結晶方位を揃える技術としては、凝固時の温度勾配に依存して特定方位の結晶が成長することを利用したり、圧延で得られる変形組織が熱処理で再結晶させる場合に特定方位の結晶配向が生じることを利用してきた。各種結晶方位を揃える従来技術として、具体的には次のような技術が知られている。
特許文献1には、溶鋼を急冷凝固せしめて鋳造鋼帯とし、次いで、当該鋳造鋼帯を圧下率5〜40%未満で冷間圧延して所定の厚さとして、仕上げ焼鈍することにより、鋳片厚中心層での鋳片の表面に平行な{100}面強度を対ランダムで2.3倍以上とした無方向性電磁鋼板の製造方法が記載されている。
特許文献2には、Si:4%以下、Al:3%以下を含有する鋼板スラブを、熱間圧延後、92%以上の圧延率で最終圧延し、次いで、脱炭焼鈍し、仕上焼鈍することにより、鋼板面内に{100}面が高集積化し、圧延方向に対して45°方向の磁気特性に優れた電磁鋼板の製造方法が記載されている。
特許文献3には、{111}面が高集積化し、さらに、{111}<112>方位と{111}<011>方位の分布差がない深絞り性に優れたステンレス鋼板が開示されている。この鋼板の製造方法としては、1次冷延と最終冷延の圧下率が最適な範囲に制御することによって上記集合組織が得られるとしている。
特許文献4には、{110}面が高集積化した方向性電磁鋼板の製造方法について示されている。この方法では、最終冷延圧下率を70%以上91%以下に限定して、{110}<001>組織を成長させることを特徴にしている。
このように、従来から所望の結晶配向性を有する鋼板を製造する方法として、凝固速度を最適化して結晶成長方位を調整したり、冷間加工率を最適化して再結晶時に形成される結晶核の面方位を調整していた。しかしながら、これらの方法では、得られる鋼板の厚みが凝固速度や冷間加工率で決まってしまい、必ずしも所望の厚みの鋼板が製造できない状況にあった。特に、所望の厚みを得るためには、結晶配向性を犠牲にしなければならなかった。
特開平5−279740号公報 特開2007−51338号公報 特開2005−163139号公報 特開2001−107147号公報
そこで、本発明は、所望の結晶配向性を有する鋼板を所望の厚みで安定して製造することができ、さらにこのような結晶配向性を有する鋼板をより効率的に提供することを課題にするものである。
本発明の要旨は、以下の通りである。
(1)特定の結晶配向性を有し、厚さが0.01mm以上10mm以下の鋼板を製造する方法であって、
(a)α−γ変態系のマスターピース鋼板と該マスターピース鋼板より低いA3変態点を有するα−γ変態系のマテリアル鋼板を積層する工程、
(b)積層したマスターピース鋼板とマテリアル鋼板とを接着することによって一体化する工程、
(c)前記マテリアル鋼板のA3変態点以上、前記マスターピース鋼板のA3変態点未満に加熱した後に、前記マテリアル鋼板2のA3変態点未満に冷却する工程、
から構成される結晶配向性を有する鋼板の製造方法。
(2)特定の結晶配向性を有し、厚さが0.01mm以上10mm以下の鋼板を製造する方法であって、
(a)α単相系のマスターピース鋼板とα−γ変態系のマテリアル鋼板を積層する工程、
(b)積層したマスターピース鋼板とマテリアル鋼板とを接着することによって一体化する工程、
(c)前記マテリアル鋼板のA3変態点以上1300℃未満に加熱した後に、前記マテリアル鋼板のA3変態点未満に冷却する工程、
から構成される結晶配向性を有する鋼板の製造方法。
(3)前記マスターピース鋼板が、特定の結晶配向性を有する鋼板である(1)又は(2)に記載の結晶配向性を有する鋼板の製造方法。
(4)前記マスターピース鋼板が、再結晶させることによって特定の結晶配向性を発現する未焼鈍鋼板である(1)又は(2)に記載の結晶配向性を有する鋼板の製造方法。
(5)前記積層が、交互に複数層を積層する(1)〜(4)のいずれか1項に記載の結晶配向性を有する鋼板の製造方法。
<本発明の基本原理の説明>
本発明の製造方法の概略は、結晶配向性の種となるマスターピース鋼板と、マテリアル鋼板とを積層、接着して一体化させた後に、該マテリアル鋼板のA3変態点以上の温度で加熱、A3変態点未満に冷却することによって、マスターピース鋼板の結晶配向性の種を鋼板全体に成長させるものである。両鋼板を積層させる枚数を調整することによって、所望の厚さの鋼板を特定の結晶配向性を有した状態で得ることができる。
マスターピース鋼板の結晶配向性の種を鋼板全体に成長させる原理について、以下に説明する。
結晶配向性の種となるマスターピース鋼板には、マテリアル鋼板のA3変態点より高いA3変態点を有するα−γ変態系のマスターピース鋼板、あるいは、A3変態点を持たないα単相系のマスターピース鋼板を用意する。マテリアル鋼板には、A3変態点を有するα−γ変態系鋼板を用意する。
マスターピース鋼板がα−γ変態系のマスターピース鋼板である場合には、そのA3変態点はマテリアル鋼板2のA3変態点より高く、さらにその温度差は1℃以上であることが望ましい。温度差が1℃以上であると熱処理の際にマスターピース鋼板の結晶配向をより向上させることが可能となる。一方、温度差が大きいほど製造できる温度範囲が広くなるため、安定的な製造が可能となるが、マテリアル鋼板のA3変態点を低下させ過ぎると、磁気特性が低下する場合があるので、温度差は300℃以下が望ましい。
両鋼板を積層、接着して一体化させた鋼板をマテリアル鋼板のA3変態点以上に加熱する。マテリアル鋼板はこれに伴いα相からγ相に変態する。ここで、マスターピース鋼板がα−γ変態系のマスターピース鋼板であるならば、加熱温度は該マスターピース鋼鈑のA3変態点未満、マスターピース鋼板がα単相系鋼板であるならば、加熱温度は1300℃未満で行う。そうすると、加熱中にはマスターピース鋼板はα相を維持しており、結晶配向性も維持されたままになる。
冷却の際には、温度がマテリアル鋼板のA3変態点未満になると、マテリアル鋼板は、γ相からα相へ変態する。マテリアル鋼板の変態と同時に、マスターピース鋼板の結晶方位は鋼板同士の接着界面を介してエピタキシャル的にマテリアル鋼板の結晶成長に影響して、マテリアル鋼板の結晶配向性は、マスターピース鋼板と同様のレベルへ変化する。これにより、鋼板全体が特定の結晶配向性を有するようになるのである。
得られる鋼板の厚みは、0.01mm以上、10mm以下である。
0.01mm未満、あるいは、10mm超であるとエピタキシャル的な結晶成長が起こり難くなり、特定の結晶配向性が得難くなる。このため、加工性や磁気特性が低下するため、本発明では上記範囲に限定した。
<マスターピース鋼板について>
マスターピース鋼板は、結晶配向性の種となる鋼板として用いる。結晶配向性としては{100}、{111}、{110}等の各面や、<100>、<111>、<110>等の各方位の内、所望の結晶配向を有するものを使用する。結晶配向性の種類は、圧延の圧下率、熱処理条件やこれらの組み合わせによって調整する。また、熱処理の際の雰囲気を変えて、表面エネルギーが低減できる結晶方位の結晶粒を優先的に成長させることも有効な手段である。
ここで、積層、接着工程へ適用する鋼板としては、既に再結晶させて特定の結晶配向性を有している鋼板を用いても良いし、再結晶させることによって高い結晶配向性を発現する未焼鈍鋼板を用いても良い。
成分系としては、α―γ変態しないα単相系や、マテリアル鋼板のA3変態点より高いA3変態点を有するα―γ変態系でもよい。例えば、Si、Al、Cr、Mo、Ti、V、Sn、W、Zn等のαフォーマ元素を適量添加させてA3変態点を上昇させたり、さらに添加量を増加させてα単相にさせることは、本発明の効果を容易に得るために有効である。また、C、Al、Mn、P、N、O、Cu、Ni、Si、Zr、Nb等の不可避不純物を含有していても、本発明の効果を得ることはできる。
マスターピース鋼板の厚さは0.001mm以上1.0mm以下であることが好ましい。0.001mm未満ではエピタキシャル成長ができなくなる恐れがある。1.0mm超では十分高い結晶配向性が得られなくなる恐れがある。
<マテリアル鋼板について>
マテリアル鋼板は、α−γ変態系成分であることが必須である。マスターピース鋼板がα−γ変態系である場合には、A3変態点をマスターピース鋼板より低くする必要があり、例えば、C、Mn、Ni、Co、Cu等のγフォーマ元素を含有させてA3点を低下させることは、本発明の効果を容易に得るために有効である。なお、C、Al、Mn、P、N、O、Cu、Ni、Si、Zr、Nb等の不可避不純物を含有していても、本発明の効果を得ることはできる。通常の圧延、再結晶で製造できるが、再結晶していない未焼鈍鋼板を用いても良い。
マテリアル鋼板の厚さは0.003mm以上2.0mm以下であることが好ましい。0.003mm未満では積層させる枚数が多くなり、工業的に効率的でなくなる恐れがある。2.0mmを超えると厚み方向全体にエピタキシャル成長ができなくなる恐れがある。
<積層条件について>
マスターピース鋼板とマテリアル鋼板とを積層させる。積層状態としては、マスターピース鋼板とマテリアル鋼板とをそれぞれ1枚重ねただけでも良いし、それぞれを交互に複数層積層しても良い。奇数枚のマスターピース鋼板と、マテリアル鋼板とを積層させて、表と裏が異なる種類の鋼板から構成されても良い。この場合、少なくともマスターピース鋼板は1枚、マテリアル鋼板は1枚必要である。さらに、奇数枚のマスターピース鋼板と偶数枚のマテリアル鋼板とを積層して、表裏ともマテリアル鋼板、偶数枚のマスターピース鋼板と奇数枚のマテリアル鋼板を積層して、表裏ともマスターピース鋼板にすることも可能である。この場合には少なくとも、マスターピース鋼板とマテリアル鋼板とは1枚と2枚、あるいは、2枚と1枚の組み合わせが必要である。なお、各鋼板の厚みは、組み合わせの中で全て同じでなくても良い。また、上述のようなエピタキシャル成長を阻害しない厚み範囲で、同種の鋼板を積層したもので積層することも可能である。
<接着条件について>
マスターピース鋼板からマテリアル鋼板へのエピタキシャル的な結晶成長のために、積層させるだけでは不十分であり、圧着などによる接着が必要である。
積層させたのみの状態では、マスターピース鋼板とマテリアル鋼板との向かい合った表面同士の間に多数の空隙があり、熱処理の際に期待されるエピタキシャル成長は起こり難い。接着された状態は、界面に少なくとも数百μmオーダーの空隙や異物が無く、熱処理時に相互の原子が拡散によって、マスターピース鋼板とマテリアル鋼板との間を行き来できるレベルを指している。このため、接着のためにろう材等の接着剤を界面に挿入することは望ましくない。
例えば、積層した後、圧延により接着させることは工業的に有効な方法である。圧着時に放電や加熱して接着して一体化させることも有効である。また、マスターピース鋼板とマテリアル鋼板との表面間を真空にして予め酸素や窒素を表面付近から除去し、低温で圧着させてもよい。なお、接着前に各鋼板表面をクリーニングして異物を取り除くことは望ましく、例えば、酸洗したり、逆スパッタして新生面を出すことが望ましい。
<熱処理条件について>
熱処理条件としては、マテリアル鋼板のA3変態点以上に加熱して、γ化させることが必須である。さらに、この時にマスターピース鋼板は、α相を維持し、結晶配向が維持されるようにしなければならない。即ち、マスターピース鋼板がα−γ変態系であるならば、マスターピース鋼板のA3変態点を超えないようにすることが必要である。また、マスターピース鋼板がα単相系ならばその心配は無いが、無用な鋼板の変形等を避けるために、加熱温度は1300℃以下に制御する。加熱の後には、マテリアル鋼板のA3変態点未満に冷却することによって、該マテリアル鋼板をα化させて、マスターピース鋼板から結晶配向をエピタキシャル的に成長させる。
加熱の昇温速度は、結晶配向性には影響しないため、特に制限されないが、工業的に実用範囲である0.1℃/秒以上、1000℃/秒以下が好ましい。
保持時間は、マテリアル鋼板のγ化を完了させるために必要であり、0.0001秒以上が好ましい。長くなり過ぎると生産性が低下するため、好ましくは10分以下が好ましい。
冷却速度は、γ→α変態時のエピタキシャル的な結晶成長を促すため、−10000℃/秒以上、−0.02℃/秒以下が望ましい。−10000℃/秒未満であると、エピタキシャル成長が十分で得ない場合があるので、それ以上が良い。−0.02℃/秒超であると、生産性が低下するので、それ以下が好ましい。
<得られる鋼板について>
製造できる鋼板の幅には大きな制限は無いが、従来から使用されている接着装置から、少なくとも5mm以上3000mm以下であることが好ましい。
<結晶配向性の評価について>
結晶配向性は、例えば、X線回折によって各結晶面の反射強度を測定し、ここから面集積度を求めて評価する方法がある。これらの面集積度の測定は、MoKα線によるX線回折で行うことができる。
詳細に述べると、各試料について、試料表面に対して平行なα−Fe結晶の11ある方位面({110}、{200}、{211}、{310}、{222}、{321}、{411}、{420}、{332}、{521}、{442})の積分強度を測定し、その測定値それぞれを、ランダム方位である試料の理論積分強度で除した後、{200}あるいは{222}強度の比率を百分率で求める。
その際、例えば、{200}強度比率では、以下の式(I)で表される。
{200}面集積度=[{i(200)/I(200)}/Σ{i(hkl)/I(hkl)}]×100 ・・・ (I)
但し、記号は以下のとおりである。
i(hkl): 測定した試料における{hkl}面の実測積分強度
I(hkl): ランダム方位をもつ試料における{hkl}面の理論積分強度
Σ: α−Fe結晶の11の方位面についての和
ここで、ランダム方位を持つ試料の積分強度は、試料を用意して実測して求めてもよい。
以下、実施例により、本発明をさらに詳しく説明する。
(実施例1)
マスターピース鋼板として2種類の成分系を用意した。1つは成分Aのマスターピース鋼板であり、質量%でCr:17%、Ti:0.04%、C:30ppm、残部鉄であり、不可避不純物を含んでいた。このマスターピース鋼板はA3変態点を持たないα単相系であった。
もう一つは、成分Bのマスターピース鋼板であり、質量%でMo:0.3%、W:0.2%、C:10ppm、残部鉄であり、不可避不純物を含んでいた。このマスターピース鋼板のA3変態点は919℃であり、α−γ変態系であった。
これらのマスターピース鋼板では、真空溶解によってインゴットを溶製した後に、熱延と冷延によって所定の厚みに加工した。
成分Aのマスターピース鋼板では、熱延は1200℃に加熱した厚み250mmのインゴットを厚み3mmまで薄肉化した。この熱延板の表面からスケールを除去した後に、冷延で厚み0.4mmまで薄肉化した。さらに、窒素ガス中で800℃×10秒の熱処理を施して再結晶させた。引き続き、冷延で厚み0.001mm〜0.2mmまで薄肉化した。
成分Bのマスターピース鋼板では、熱延は1200℃に加熱した厚み250mmのインゴットを厚み3mmまで薄肉化した。この熱延板の表面からスケールを除去した後に、冷延で厚み0.8mmまで薄肉化した。さらに、窒素ガス中で800℃×10秒の熱処理を施して再結晶させた。引き続き、冷延で厚み0.002mm〜0.4mmまで薄肉化した。
マテリアル鋼板としては、質量%でTi:0.03%、C:40ppm、残部鉄であり、不可避不純物を含んだ成分系を用意した。このマテリアル鋼板のA3変態点は910℃であり、α−γ変態系であった。
マテリアル鋼板は、真空溶解によってインゴットを溶製した後に、熱延と冷延によって所定の厚みに加工して製造した。
マテリアル鋼板では、熱延は1150℃に加熱した厚み250mmのインゴットを厚み4mmまで薄肉化した。この熱延板の表面からスケールを除去した後に、冷延で厚み0.003mm〜0.5mmまで薄肉化した。
製造した各種のマスターピース鋼板、マテリアル鋼板を組み合わせて、表1〜2に示した積層条件で積層、接着、熱処理の各工程を通板させ鋼板を製造した。通板幅はいずれの場合も1000mmであった。ここで、表1〜2に示したマスターピース鋼板1及びマテリアル鋼板2の{222}面集積度は、それぞれ850℃×10秒の条件でオフラインにおいて熱処理を施し、再結晶させた後に、上記に示したX線回折法によって測定したものである。
マスターピース鋼板とマテリアル鋼板の接着はロール圧着法で行った。ロール圧着させる前には、各鋼板の表面は脱脂処理を施し、新生面が出るようにした。ここで、No.23〜37、60〜74の実施例については、ロール圧着の前に、両鋼板とも850℃×10秒の条件で窒素中で熱処理を施して、予め再結晶させておいた。
接着した鋼板の熱処理は窒素雰囲気中で行い、表1〜2に示した昇温速度、保持温度、保持時間、冷却速度で実行した。なお、各表において、積層の欄に記載した「ピース」はマスターピースを、「アル」はマテリアルを意味する。
得られた鋼板の評価は、X線回折による{222}面集積度の測定と、引っ張り試験のr値測定による深絞り性評価を行った。{222}面集積度はマテリアル鋼板の部分まで鋼板面から鋼板を厚さ方向に研磨し、マテリアル鋼板が評価できるようにした。
深絞り性評価は、r値が1.5以上の場合には良好の評価として○を、1.5未満の場合には良好ではない評価として×を与えた。
Figure 2012197485
Figure 2012197485
No.1〜37では、成分Aのマスターピース鋼板(α単相系)とマテリアル鋼板の組み合わせで鋼板を製造した例を示した。
No.1は、マスターピース鋼板とマテリアル鋼板の積層の後に接着の工程が無い比較例である。その結果、熱処理工程を経てもマテリアル鋼板の{222}面集積度は上がることなく、所望の結晶配向性は得られなかった。
No.2〜9は、マスターピース鋼板とマテリアル鋼板の各枚数を変えて本発明の製造法を適用したものである。その結果、高い{222}面集積度が得られ、良好な深絞り性が得られた。
No.10は、全体の厚みが本発明の範囲を超える比較例である。その結果は、{222}面集積度は向上することなく、所望の結晶配向性は得られなかった。
No.11〜21は、マスターピース鋼板とマテリアル鋼板の各厚みを変えて本発明の製造法を適用したものである。その結果、高い{222}面集積度が得られ、良好な深絞り性が得られた。
No.22は、全体の厚みが本発明の範囲を下回る比較例である。その結果は、{222}面集積度は向上することなく、所望の結晶配向性は得られなかった。
No.23は、熱処理の保持温度がマテリアル鋼板のA3変態点910℃を下回る比較例である。その結果は、{222}面集積度は向上することなく、所望の結晶配向性は得られなかった。
No.24〜29は、熱処理の保持温度をマテリアル鋼板のA3変態点910℃以上にして本発明の製造法を適用したものである。その結果、高い{222}面集積度が得られ、良好な深絞り性が得られた。保持温度が1350℃のNo.29の発明例では、やや鋼板の平坦性が失われていた。
No.30〜37は、熱処理の際に各種冷却速度にして本発明の製造法を適用したものである。その結果、高い{222}面集積度が得られ、良好な深絞り性が得られた。冷却速度が−15000℃/秒の場合には、僅かに{222}面集積度は他の発明例に比べて低下していた。また、冷却速度が−0.01℃/秒の場合には、製造効率がやや低下した。
No.38〜74では、成分Bのマスターピース鋼板(α−γ変態系)とマテリアル鋼板の組み合わせで鋼板を製造した例を示した。
No.38は、マスターピース鋼板とマテリアル鋼板の積層の後に接着の工程が無い比較例である。その結果、熱処理工程を経てもマテリアル鋼板の{222}面集積度は上がることなく、所望の結晶配向性は得られなかった。
No.39〜46は、マスターピース鋼板とマテリアル鋼板の各枚数を変えて本発明の製造法を適用したものである。その結果、高い{222}面集積度が得られ、良好な深絞り性が得られた。
No.47は、全体の厚みが本発明の範囲を超える比較例である。その結果は、{222}面集積度は向上することなく、所望の結晶配向性は得られなかった。
No.48〜58は、マスターピース鋼板とマテリアル鋼板の各厚みを変えて本発明の製造法を適用したものである。その結果、高い{222}面集積度が得られ、良好な深絞り性が得られた。
No.59は、全体の厚みが本発明の範囲を下回る比較例である。その結果は、{222}面集積度は向上することなく、所望の結晶配向性は得られなかった。
No.60の実施例は、熱処理の保持温度がマテリアル鋼板のA3変態点910℃を下回る比較例である。その結果は、{222}面集積度は向上することなく、所望の結晶配向性は得られなかった。
No.61〜65は、熱処理の保持温度をマテリアル鋼板のA3変態点910℃以上、マスターピース鋼板のA3変態点919℃未満にして本発明の製造法を適用したものである。その結果、高い{222}面集積度が得られ、良好な深絞り性が得られた。
No.66は、熱処理の保持温度がマスターピース鋼板のA3変態点919℃以上の比較例である。その結果は、{222}面集積度は向上することなく、所望の結晶配向性は得られなかった。
No.67〜74は、熱処理の際に各種冷却速度にして本発明の製造法を適用したものである。その結果、高い{222}面集積度が得られ、良好な深絞り性が得られた。冷却速度が−15000℃/秒の場合には、僅かに{222}面集積度は他の発明例に比べて低下していた。また、冷却速度が−0.01℃/秒の場合には、製造効率がやや低下した。
以上示したように、本発明の鋼板の製造方法を適用すると、高い{222}面集積度を有する鋼板を製造でき、優れた深絞り性が得られるようになることが判った。
(実施例2)
マスターピース鋼板として2種類の成分系を用意した。1つは成分Cのマスターピース鋼板であり、質量%でSi:3.1%、C:30ppm、残部鉄であり、不可避不純物を含んでいた。このマスターピース鋼板はA3変態点を持たないα単相系であった。
もう一つは、成分Dのマスターピース鋼板であり、質量%でAl:0.3%、C:30ppm、残部鉄であり、不可避不純物を含んでいた。このマスターピース鋼板のA3変態点は920℃であり、α−γ変態系であった。
これらのマスターピース鋼板では、真空溶解によってインゴットを溶製した後に、熱延と冷延によって所定の厚みに加工した。
成分Cのマスターピース鋼板では、熱延は900℃に加熱した厚み250mmのインゴットを厚み3mmまで薄肉化した。この圧延板の表面からスケールを除去した後に、冷延で厚み0.001mm〜0.1mmまで薄肉化した。
成分Dのマスターピース鋼板では、熱延は850℃に加熱した厚み250mmのインゴットを厚み3mmまで薄肉化した。この圧延板の表面からスケールを除去した後に、冷延で厚み0.001mm〜0.15mmまで薄肉化した。
マテリアル鋼板としては、質量%でTi:0.02%、C:20ppm、残部鉄であり、不可避不純物を含んだ成分系を用意した。このマテリアル鋼板のA3変態点は911℃であり、α−γ変態系であった。
マテリアル鋼板は、真空溶解によってインゴットを溶製した後に、熱延と冷延によって所定の厚みに加工して製造した。
該マテリアル鋼板では、熱延は1150℃に加熱した厚み230mmのインゴットを厚み4mmまで薄肉化した。この熱延板の表面からスケールを除去した後に、冷延で厚み0.003mm〜0.2mmまで薄肉化した。
製造した各種のマスターピース鋼板及びマテリアル鋼板を組み合わせて、表3〜4に示した積層条件で積層、接着、熱処理の各工程を通板させ鋼板を製造した。通板幅はいずれの場合も1200mmであった。ここで、表5、7に示した鋼板1、2の{200}面集積度はそれぞれ850℃×10秒の条件でオフラインにおいて熱処理を施し、再結晶させた後に上記に示したX線回折法によって測定したものである。
マスターピース鋼板とマテリアル鋼板の接着は真空圧着法で行った。真空圧着させる前には、各鋼板の表面は脱脂処理を施し、新生面が出るようにした。ここで、No.75〜96、112〜133の実施例については、真空圧着の前に、マスターピース鋼板及びマテリアル鋼板とも850℃×10秒の条件で窒素中で熱処理を施して、予め再結晶させておいた。
接着した鋼板の熱処理は窒素雰囲気中で行い、表3〜4に示した昇温速度、保持温度、保持時間、冷却速度で実行した。
得られた鋼板の評価は、X線回折による{200}面集積度の測定と、SST試験のB50による磁束密度評価(励磁磁場5000A/m時の磁束密度)を行った。{200}面集積度は、マテリアル鋼板の部分まで鋼板面から鋼板を厚さ方向に研磨し、マテリアル鋼板が評価できるようにした。
磁束密度評価は、B50が1.65T以上の場合には良好の評価として○を、1.65T未満の場合には良好ではない評価として×を与えた。
Figure 2012197485
Figure 2012197485
No.75〜111では、成分Cのマスターピース鋼板(α単相系)とマテリアル鋼板の組み合わせで鋼板を製造した例を示した。
No.75は、マスターピース鋼板とマテリアル鋼板の積層の後に接着の工程が無い比較例である。その結果、熱処理工程を経てもマテリアル鋼板2の{200}面集積度は上がることなく、所望の結晶配向性は得られなかった。
No.76〜83は、マスターピース鋼板とマテリアル鋼板の各枚数を変えて本発明の製造法を適用したものである。その結果、高い{200}面集積度が得られ、高い磁束密度が得られた。
No.84は、全体の厚みが本発明の範囲を超える比較例である。その結果は、{200}面集積度は向上することなく、所望の結晶配向性は得られなかった。
No.85〜95は、マスターピース鋼板とマテリアル鋼板の各厚みを変えて本発明の製造法を適用したものである。その結果、高い{200}面集積度が得られ、高い磁束密度が得られた。
No.96は、全体の厚みが本発明の範囲を下回る比較例である。その結果は、{200}面集積度は向上することなく、所望の結晶配向性は得られなかった。
No.97は、熱処理の保持温度がマテリアル鋼板のA3変態点911℃を下回る比較例である。その結果は、{200}面集積度は向上することなく、所望の結晶配向性は得られなかった。
No.98〜103は、熱処理の保持温度をマテリアル鋼板のA3変態点911℃以上にして本発明の製造法を適用したものである。その結果、高い{200}面集積度が得られ、高い磁束密度が得られた。保持温度が1350℃のNo.103の発明例では、やや鋼板の平坦性が失われていた。
No.104〜111は、熱処理の際に各種冷却速度にして本発明の製造法を適用したものである。その結果、高い{200}面集積度が得られ、優れた磁束密度が得られた。冷却速度が−15000℃/秒の場合には、僅かに{200}面集積度は他の発明例に比べて低下していた。また、冷却速度が−0.01℃/秒の場合には、製造効率がやや低下した。
No.112〜148では、成分Dのマスターピース鋼板(α−γ変態系)とマテリアル鋼板の組み合わせで鋼板を製造した例を示した。
No.112は、マスターピース鋼板とマテリアル鋼板の積層の後に接着の工程が無い比較例である。その結果、熱処理工程を経てもマテリアル鋼板の{200}面集積度は上がることなく、所望の結晶配向性は得られなかった。
No.113〜120は、マスターピース鋼板とマテリアル鋼板の各枚数を変えて本発明の製造法を適用したものである。その結果、高い{200}面集積度が得られ、高い磁束密度が得られた。
No.121は、全体の厚みが本発明の範囲を超える比較例である。その結果は、{200}面集積度は向上することなく、所望の結晶配向性は得られなかった。
No.122〜132は、マスターピース鋼板とマテリアル鋼板の各厚みを変えて本発明の製造法を適用したものである。その結果、高い{200}面集積度が得られ、高い磁束密度が得られた。
No.133は、全体の厚みが本発明の範囲を下回る比較例である。その結果は、{200}面集積度は向上することなく、所望の結晶配向性は得られなかった。
No.134は、熱処理の保持温度がマテリアル鋼板のA3変態点911℃を下回る比較例である。その結果は、{200}面集積度は向上することなく、所望の結晶配向性は得られなかった。
No.135〜139は、熱処理の保持温度をマテリアル鋼板のA3変態点911℃以上、マスターピース鋼板のA3変態点920℃未満にして本発明の製造法を適用したものである。その結果、高い{200}面集積度が得られ、高い磁束密度が得られた。
No.140は、熱処理の保持温度が鋼板1のA3変態点920℃以上の比較例である。その結果は、{200}面集積度は向上することなく、所望の結晶配向性は得られなかった。
No.141〜148は、熱処理の際に各種冷却速度にして本発明の製造法を適用したものである。その結果、高い{200}面集積度が得られ、高い磁束密度が得られた。冷却速度が−15000℃/秒の場合には、僅かに{200}面集積度は他の発明例に比べて低下していた。また、冷却速度が−0.01℃/秒の場合には、製造効率がやや低下した。
以上示したように、本発明の鋼板の製造方法を適用すると、高い{200}面集積度を有する鋼板を製造でき、優れた深絞り性が得られるようになることが判った。
また、本発明の製造法を適用して、その他の{110}面、<111>軸、<100>軸、<110>軸が特定の方位を向いた所望の結晶配向性を有する鋼板を製造したが、何れの場合も所望の厚さの鋼板を任意に得ることができた。
(実施例3)
マスターピース鋼板として4種類の成分系の鋼板を用意した。
成分Eのマスターピース鋼板では、質量%でZr:0.04%、C:40ppm、残部鉄であり、不可避不純物を含んでいた。このマスターピース鋼板のA3変態点は911℃であり、α−γ変態系であった。
成分Fのマスターピース鋼板では、質量%でNb:0.02%、Mn:0.20%、C:20ppm、残部鉄であり、不可避不純物を含んでいた。このマスターピース鋼板のA3変態点は905℃であり、α−γ変態系であった。
成分Gのマスターピース鋼板では、質量%でNb:0.02%、Mn:0.14%、C:20ppm、残部鉄であり、不可避不純物を含んでいた。このマスターピース鋼板のA3変態点は906℃であり、α−γ変態系であった。
成分Hのマスターピース鋼板では、質量%でNb:0.02%、Mn:0.10%、C:20ppm、残部鉄であり、不可避不純物を含んでいた。このマスターピース鋼板のA3変態点は907℃であり、α−γ変態系であった。
これらのマスターピース鋼板では、真空溶解によってインゴットを溶製した後に、熱延と冷延によって所定の厚みに加工した。
熱延は1050℃に加熱した厚み270mmのインゴットを厚み3.5mmまで薄肉化した。この熱延板の表面からスケールを除去した後に、冷延で厚み0.7mmまで薄肉化した。さらに、窒素ガス中で800℃×10秒の熱処理を施して再結晶させた。引き続き、冷延で厚み0.4mmまで薄肉化した。
マテリアル鋼板として4種類の成分系の鋼板を用意した。
成分Iのマテリアル鋼板では、質量%でZr:0.04%、Ni:0.10%,C:40ppm、残部鉄であり、不可避不純物を含んでいた。このマテリアル鋼板のA3変態点は909℃であり、α−γ変態系であった。
成分Jの鋼板では、質量%でZr:0.04%、Ni:0.05%,C:30ppm、残部鉄であり、不可避不純物を含んでいた。このマテリアル鋼板のA3変態点は910℃であり、α−γ変態系であった。
成分Kのマテリアル鋼板では、質量%でZr:0.04%,C:30ppm、残部鉄であり、不可避不純物を含んでいた。このマテリアル鋼板のA3変態点は911℃であり、α−γ変態系であった。
成分Lのマテリアル鋼板では、質量%でNb:0.02%,Mn:0.2%,C:20ppm、残部鉄であり、不可避不純物を含んでいた。このマテリアル鋼板のA3変態点は905℃であり、α−γ変態系であった。
これらのマテリアル鋼板は、真空溶解によってインゴットを溶製した後に、熱延と冷延によって所定の厚みに加工して製造した。
熱延は1100℃に加熱した厚み270mmのインゴットを厚み4mmまで薄肉化した。この熱延板の表面からスケールを除去した後に、冷延で厚み0.5mmまで薄肉化した。
製造した各種のマスターピース鋼板及びマテリアル鋼板を組み合わせて、表5に示した積層条件で積層、接着、熱処理の各工程を通板させ鋼板を製造した。通板幅はいずれの場合も1800mmであった。ここで、表9に示したマスターピース鋼板1及びマテリアル鋼板2の{222}面集積度は、それぞれ850℃×10秒の条件でオフラインにおいて熱処理を施し、再結晶させた後に上記に示したX線回折法によって測定したものである。
マスターピース鋼板とマテリアル鋼板の接着は温間ロール圧着法で行った。ロール圧着させる前には、各鋼板の表面は脱脂処理を施し、新生面が出るようにした。ここで、ロール圧着の前の両鋼板は未焼鈍材であり、再結晶させていなかった。
接着した鋼板の熱処理は窒素雰囲気中で行い、表5に示した昇温速度、保持温度、保持時間、冷却速度で実行した。
得られた鋼板の評価は、X線回折による{222}面集積度の測定と、引っ張り試験のr値測定による深絞り性評価を行った。{222}面集積度は、マテリアル鋼板の部分まで鋼板面から鋼板を厚さ方向に研磨し、マテリアル鋼板が評価できるようにした。
深絞り性評価は、r値が1.5以上の場合には良好の評価として○を、1.5未満の場合には良好ではない評価として×を与えた。
Figure 2012197485
No.149〜151では、成分Eのマスターピース鋼板(α−γ変態系)に対してマテリアル鋼板を成分I、J、K(何れもα−γ変態系)に変えて、鋼板を製造した例を示した。
No.149、150は、マスターピース鋼板を2枚、マテリアル鋼板を1枚にして本発明の製造法を適用したものである。マスターピース鋼板のA3変態点がマテリアル鋼板のA3変態点に比べて高ければ本発明の効果が得られ、その結果、高い{222}面集積度が得られ、良好な深絞り性が得られた。
No.151は、マスターピース鋼板のA3変態点がマテリアル鋼板のA3変態点に比べて高くない比較例である。その結果、積層、接着、及び熱処理工程を経ても、マテリアル鋼板の{222}面集積度は上がることなく、所望の結晶配向性は得られなかった。
No.152〜154では、成分Lのマテリアル鋼板(α−γ変態系)に対してマスターピース鋼板を成分F、G、H(何れもα−γ変態系)に変えて、鋼板を製造した例を示した。
No.152は、マスターピース鋼板のA3変態点がマテリアル鋼板2のA3変態点に比べて高くない比較例である。その結果、積層、接着、及び熱処理工程を経ても、マテリアル鋼板の{222}面集積度は上がることなく、所望の結晶配向性は得られなかった。
No.153、154は、マスターピース鋼板を2枚、マテリアル鋼板を1枚にして本発明の製造法を適用したものである。マスターピース鋼板のA3変態点がマテリアル鋼板のA3変態点に比べて高ければ本発明の効果が得られ、その結果、高い{222}面集積度が得られ、良好な深絞り性が得られた。
以上示したように、本発明の鋼板の製造方法を適用すると、高い{222}面集積度を有する鋼板を製造でき、優れた深絞り性が得られるようになることが判った。
本発明の方法で製造される鋼板は、電動機、発電機、変圧器等の磁心や、自動車の外板等へ好適に適用される。

Claims (5)

  1. 特定の結晶配向性を有し、厚さが0.01mm以上10mm以下の鋼板を製造する方法であって、
    (a)α−γ変態系のマスターピース鋼板と該マスターピース鋼板より低いA3変態点を有するα−γ変態系のマテリアル鋼板を積層する工程、
    (b)積層したマスターピース鋼板とマテリアル鋼板とを接着することによって一体化する工程、
    (c)前記マテリアル鋼板のA3変態点以上、前記マスターピース鋼板のA3変態点未満に加熱した後に、前記マテリアル鋼板のA3変態点未満に冷却する工程、
    から構成されることを特徴とする結晶配向性を有する鋼板の製造方法。
  2. 特定の結晶配向性を有し、厚さが0.01mm以上10mm以下の鋼板を製造する方法であって、
    (a)α単相系のマスターピース鋼板とα−γ変態系のマテリアル鋼板を積層する工程、
    (b)積層したマスターピース鋼板とマテリアル鋼板とを接着することによって一体化する工程、
    (c)前記マテリアル鋼板のA3変態点以上1300℃未満に加熱した後に、前記マテリアル鋼板のA3変態点未満に冷却する工程、
    から構成されることを特徴とする結晶配向性を有する鋼板の製造方法。
  3. 前記マスターピース鋼板が、特定の結晶配向性を有する鋼板であることを特徴とする請求項1又は2に記載の結晶配向性を有する鋼板の製造方法。
  4. 前記マスターピース鋼板が、再結晶させることによって特定の結晶配向性を発現する未焼鈍鋼板であることを特徴とする請求項1又は2に記載の結晶配向性を有する鋼板の製造方法。
  5. 前記積層が、交互に複数層を積層することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の結晶配向性を有する鋼板の製造方法。
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