JP2012197413A - エポキシ樹脂組成物、プリプレグおよび繊維強化複合材料 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、かかる従来技術の欠点を改良し、優れた弾性率と靭性を併せ持つ樹脂硬化物を形成し、かつ低粘度で強化繊維間への含浸性に優れたエポキシ樹脂組成物、および該エポキシ樹脂組成物を用いたプリプレグ、繊維強化複合材料を提供することを課題とする。
【解決手段】エポキシ樹脂[A]、エポキシ樹脂[B]、エポキシ樹脂[C]および硬化剤[D]を含み、かつ、これら[A]〜[D]のいずれかの構成成分、ならびにそれらを用いて得られる樹脂硬化物が、所定の条件を満足するエポキシ樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、スポーツ用途および一般産業用途に適した繊維強化複合材料のマトリックス樹脂として好ましく用いられるエポキシ樹脂組成物、ならびに、これをマトリックス樹脂としたプリプレグ、およびプリプレグを硬化して得られる繊維強化複合材料に関するものである。
炭素繊維やアラミド繊維などを強化繊維として用いた繊維強化複合材料は、その高い比強度、比弾性率を利用して、航空機や自動車などの構造材料や、テニスラケット、ゴルフシャフト、釣り竿などのスポーツ、一般産業用途などに広く利用されている。これら繊維強化複合材料の製造方法には、強化繊維にマトリックス樹脂が含浸されたシート状中間材料であるプリプレグを用い、それを複数枚積層した後、硬化する方法がよく用いられている。プリプレグを用いる方法は、強化繊維の配向を厳密に制御でき、また積層構成の設計自由度が高いことから、高性能な繊維強化複合材料を得やすい利点がある。プリプレグに用いられるマトリックス樹脂としては、耐熱性や生産性の観点から、主に熱硬化性樹脂が用いられ、中でも強化繊維との接着性などの力学特性の観点からエポキシ樹脂が好ましく用いられる。
近年では、金属等の従来材料を繊維強化複合材料に置き換えることで軽量化を目指す動きに加えて、様々な用途において、繊維強化複合材料そのもののさらなる軽量化を求める動きが活発化してきている。軽量化を達成する方法としては、より高弾性率な強化繊維を適用し、繊維強化複合材料の剛性は維持したまま軽量化する方法が挙げられる。しかし、強化繊維を高弾性率化した場合、繊維方向圧縮強度などの強度特性は、低下する傾向にある。繊維方向圧縮強度などの強度特性を改善するには、マトリックス樹脂として用いるエポキシ樹脂の弾性率を向上させることが有効である。
エポキシ樹脂の弾性率を向上させる方法としては、カーボンナノチューブなどの無機フィラーの添加や弾性率の高いアミン型エポキシ樹脂の配合があげられる。
例えば、特許文献1では、高弾性率なアミン型エポキシ樹脂を配合することで、エポキシ樹脂の弾性率が向上し、これをマトリックス樹脂として適用した繊維強化複合材料の繊維方向圧縮強度と相関の強い繊維方向曲げ強さに顕著な向上が見られている。しかし、この方法では、エポキシ樹脂の靱性が低下するために、耐衝撃性が低下する。
繊維強化複合材料の耐衝撃性を向上させるためには、繊維強化複合材料を構成する強化繊維の伸度やエポキシ樹脂の塑性変形能力や靱性を向上させる必要がある。これらのうち、特にエポキシ樹脂の靱性を向上させることが重要かつ有効であるとされている。
従来、エポキシ樹脂の靱性を向上させる方法としては、靱性に優れるゴム成分や熱可塑性樹脂を配合する方法などが試されてきた。しかし、ゴムは、弾性率やガラス転移温度がエポキシ樹脂に比べて大幅に低いため、エポキシ樹脂に配合した場合、マトリックス樹脂の弾性率やガラス転移温度の低下が見られ、靱性と弾性率のバランスを取ることが困難である。また、熱可塑性成分を配合する方法としては、例えばスチレン−ブタジエン−メタクリル酸メチルからなる共重合体や、ブタジエン−メタクリル酸メチルからなるブロック共重合体などのブロック共重合体を添加することにより、エポキシ樹脂の靭性を大きく向上させる方法が提案されている(特許文献2、3)。しかし、これらの方法には、耐熱性の低下や増粘によるプロセス性の悪化、ボイド発生等の品位低下といった問題があった。また、この方法でも弾性率が不十分である。
弾性率と靱性のバランスを向上させる方法としては、特定の数平均分子量を有するジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂と前記エポキシ樹脂と特定の範囲でSP値が異なるエポキシ樹脂を組み合わせる方法が開示されている。(特許文献4)しかし、この方法でも、弾性率と靱性のバランスが不十分であるだけでなく、粘度が高くなりがちであり、不十分であった。
特開昭62−1717号公報 国際公開第2006/077153号パンフレット 特表2003−535181号公報 国際公開第2009/107697号パンフレット
本発明の目的は、かかる従来技術の欠点を改良し、優れた弾性率と靭性を併せ持つ樹脂硬化物(ここで、樹脂硬化物とは、エポキシ樹脂組成物を硬化させたものを意味する。以下同様である。)を形成し、かつ低粘度で強化繊維間への含浸性に優れたエポキシ樹脂組成物、ならびに、該エポキシ樹脂組成物を用いたプリプレグ、および繊維強化複合材料を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記構成から成るエポキシ樹脂組成物を見いだし、本発明を完成させるに至った。すなわち本発明は、以下の構成からなる。
(I)エポキシ樹脂[A]〜[C]、および硬化剤[D]を含み、かつ以下の条件(1)〜(4)を満たすエポキシ樹脂組成物。
(1)エポキシ樹脂[B]を硬化剤[D]と反応し硬化させて得られる樹脂硬化物[B’]のSP値が、エポキシ樹脂[A]と[C]をそれぞれ硬化剤[D]と反応し硬化させて得られる樹脂硬化物[A’]、[C’]のいずれのSP値に対してよりも1.2以上大きい。
(2)エポキシ樹脂[A]の軟化点が90℃以上であり、かつエポキシ樹脂[B]と[C]の軟化点がいずれも50℃以下である。
(3)エポキシ樹脂[C]と、エポキシ樹脂[C]の全エポキシ基に対し活性水素基が0.9当量となる量のジシアンジアミドと、エポキシ樹脂[C]100質量部に対して2質量部のN,N−ジメチル−N’−(3,4-ジクロロフェニル)ウレア(以下、DCMU)有してなるエポキシ樹脂組成物を、室温から130℃まで2.5℃/分で昇温し、130℃で90分間反応させて得られる樹脂硬化物の弾性率が、3.5GPa以上である。
(4)エポキシ樹脂組成物を硬化させて得られる樹脂硬化物が、[A]リッチ相と[B]リッチ相を含む相分離構造を有し、その相分離構造周期が1nm〜1μmである。
(II)前記エポキシ樹脂組成物において、下記に示す[A]〜[C]が全エポキシ樹脂成分100質量部に対して、以下の配合比を満たす、前記(I)に記載のエポキシ樹脂組成物。
[A]ビスフェノール型エポキシ樹脂 20〜50質量部
[B]3官能以上のアミン型エポキシ樹脂 30〜50質量部
[C]数平均分子量450以下のビスフェノールF型エポキシ樹脂 10〜40質量部
(但し、エポキシ樹脂[A]〜[C]の合計量が100質量部を超えることはない)。
(III)エポキシ樹脂[B]が3官能のアミノフェノール型エポキシ樹脂である、前記(I)または(II)に記載のエポキシ樹脂組成物。
(IV)硬化剤[D]がジシアンジアミドまたはその誘導体である、前記(I)〜(III)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
(V)さらに、S−B−M、B−MおよびM−B−Mからなる群から選ばれる少なくとも1種のブロック共重合体[E](ここで、前記の各ブロックは共有結合によって連結されるか、一方のブロックに一つの共有結合形成を介して結合され、他方のブロックに他の共有結合形成を介して結合された中間分子によって連結されており、ブロックMはポリメタクリル酸メチルのホモポリマーまたは、メタクリル酸メチルを少なくとも50質量%含むコポリマーからなるブロックであり、ブロックBはブロックMに非相溶で、そのガラス転移温度が20℃以下であり、ブロックSはブロックBおよびMに非相溶で、かつ、そのガラス転移温度が、ブロックBのガラス転移温度よりも高いブロックである)を、全エポキシ樹脂成分100質量部に対して1〜10質量部含む、前記(I)〜(IV)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
(VI)前記ブロック共重合体[E]が、M−B−Mで表されるブロック共重合体であり、Mブロックがメタクリル酸メチルよりもSP値の高いモノマーを共重合成分として含有する、前記(V)に記載のエポキシ樹脂組成物。
(VII)エポキシ樹脂[A]〜[C]および硬化剤[D]、またはエポキシ樹脂[A]〜[C]、硬化剤[D]およびブロック共重合体[E]を調製して得られる、エポキシ樹脂組成物の80℃の粘度が0.5〜200Pa・sであり、かつ、エポキシ樹脂[A]〜[C]、またはエポキシ樹脂[A]〜[C]およびブロック共重合体[E]からなるエポキシ樹脂組成物を硬化剤[D]と反応し硬化させて得られる樹脂硬化物の樹脂靱性値が1.3MPa・m0.5以上である、前記(I)〜(VI)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
(VIII)前記(I)〜(VII)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物と強化繊維からなるプリプレグ。
(IX)前記(VIII)に記載のプリプレグを硬化させてなる繊維強化複合材料。
(X)前記(I)〜(VII)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を硬化させて得られる樹脂硬化物と、強化繊維からなる繊維強化複合材料。
本発明によれば、硬化時にエポキシ樹脂の微細な相分離構造が形成され、高弾性率、かつ高靱性の樹脂硬化物を与え、かつ低粘度で強化繊維間への含浸性に優れるエポキシ樹脂組成物を提供できる。また、本発明のエポキシ樹脂組成物をマトリックス樹脂とした繊維強化複合材料は、優れた静的強度特性と耐衝撃性を併せ持つ。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂[B]を硬化剤[D]と反応し硬化させて得られる樹脂硬化物[B’]のSP値が、エポキシ樹脂[A]と[C]をそれぞれ硬化剤[D]と反応し硬化させて得られる樹脂硬化物[A’]、[C’]のいずれのSP値に対してよりも、1.2以上大きいことが必要である。かかるSP値は、一般に知られている溶解性パラメータのことであり、溶解性および相溶性の指標となる。本発明で規定されるSP値は、Polym.Eng.Sci.,14(2),147−154(1974)に記載された、Fedorsの方法に基づき、分子構造から算出した値である。[B’]のSP値が、[A’]のSP値に対して1.2未満である場合は、得られる樹脂硬化物中で、[A]が[B]と相溶し、均一構造になるため、弾性率と靱性が十分でない。さらに、[B’]のSP値が、[C’]のSP値に対して1.2未満である場合は、相溶化剤である[C]が[B]のみに溶け込み、粗大相分離を引き起こす。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、前記エポキシ樹脂[A]の軟化点が90℃以上であり、かつ前記エポキシ樹脂[B]と[C]の軟化点が50℃以下であることが必要である。エポキシ樹脂[A]〜[C]がこれらの要件を満たす場合、得られる樹脂硬化物中で、[A]が[B]と相溶し、均一構造になることを抑えることができるため、弾性率と靱性がともに向上する。
さらに、前記エポキシ樹脂[C]と、エポキシ樹脂[C]の全エポキシ基に対し活性水素基が0.9当量となる量のジシアンジアミドと、エポキシ樹脂[C]100質量部に対して2質量部のDCMUから得られるエポキシ樹脂組成物を、室温から130℃まで2.5℃/分で昇温し、130℃で90分間反応させて得られる樹脂硬化物の弾性率が、3.5GPa以上である必要がある。この樹脂硬化物の弾性率が3.5GPa以下の場合は、本発明のエポキシ樹脂組成物から得られる樹脂硬化物が良好な弾性率を得られない。エポキシ樹脂[C]は、相溶化剤として作用し、[A]リッチ相にも[B]リッチ相にも溶け込む成分であるため、エポキシ樹脂[C]の弾性率が高いことによって、得られる樹脂硬化物の弾性率が高くなる。特に相分離構造が海島構造の場合、島相を覆っている海相の弾性率が高いことが重要であるので、エポキシ樹脂[C]が海相に溶け込むことによって、海相の弾性率が高くなることによる効果が大きい。ここで、活性水素基とは、エポキシ基と反応しうる官能基を意味する。活性水素基として、アミノ基や水酸基等が挙げられる。
さらに、本発明のエポキシ樹脂[A]〜[C]および硬化剤[D]からなるエポキシ樹脂組成物は、それを反応し硬化させて得られる樹脂硬化物が、少なくともエポキシ樹脂[A]リッチ相とエポキシ樹脂[B]リッチ相からなる相分離構造を有し、その相分離構造周期が1nm〜1μmであることが必要である。好ましくはその相分離構造周期が1nm〜1μmとなることである。エポキシ樹脂[A]〜[C]は、硬化前において互いに均一に相溶している状態であったとしても、硬化過程においてスピノーダル分解し、相分離構造を形成することになる。
さらに、ブロック共重合体[E]が含まれる場合、硬化前においてエポキシ樹脂[A]〜[C]とブロック共重合体[E]が互いに均一に相溶している状態であったとしても、硬化過程においてスピノーダル分解し、エポキシ樹脂[A]リッチ相とエポキシ樹脂[B]リッチ相とブロック共重合体[E]リッチ相の3相で相分離構造を形成する傾向がある。本発明のエポキシ樹脂[A]〜[C]、硬化剤[D]およびブロック共重合体[E]からなるエポキシ樹脂組成物は、それを反応し硬化させて得られる樹脂硬化物が、少なくともエポキシ樹脂[A]リッチ相、エポキシ樹脂[B]リッチ相およびブロック共重合体[E]からなる相分離構造を有し、エポキシ樹脂[A]リッチ相と、エポキシ樹脂[B]リッチ相、およびブロック共重合体[E]リッチ相の相分離構造周期が1nm〜1μmであることが好ましい。
本発明において相分離構造とは、エポキシ樹脂[A]リッチ相とエポキシ樹脂[B]リッチ相を含む2相以上の相が分離して形成されている構造をいう。ここで、エポキシ樹脂[A]リッチ相およびエポキシ樹脂[B]リッチ相とは、それぞれエポキシ樹脂[A]およびエポキシ樹脂[B]を主成分とする相のことをいう。また、ここで主成分とは、当該相において最も高い含有率で含まれている成分のことをいう。相分離構造は、エポキシ樹脂[A]およびエポキシ樹脂[B]以外の成分を主成分とする相をさらに含む3相以上の相分離構造であっても良い。これに対し、分子レベルで均一に混合している状態を、相溶状態という。相分離構造であるか否かは、電子顕微鏡、位相差光学顕微鏡、その他種々の方法によって判断することができる。
本発明において、相分離の構造周期は、次のように定義するものとする。なお、相分離構造には、両相連続構造と海島構造が有るのでそれぞれについて定義する。両相連続構造の場合、顕微鏡写真の上に所定の長さの直線をランダムに3本引き、その直線と相界面の交点を抽出し、隣り合う交点間の距離を測定し、これらの数平均値を構造周期とする。かかる所定の長さとは、顕微鏡写真を基に以下のようにして設定するものとする。構造周期が0.01μmオーダー(0.01μm以上0.1μm未満)と予想される場合、倍率を20,000倍で写真撮影し、写真上で引いた20mmの長さ(サンプル上1μmの長さ)をいい、同様にして、相分離構造周期が0.1μmオーダー(0.1μm以上1μm未満)と予想される場合、倍率を2,000倍で写真撮影し、写真上でランダムに20mmの長さ(サンプル上10μmの長さ)をいい、相分離構造周期が1μmオーダー(1μm以上10μm未満)と予想される場合、倍率を200倍で写真撮影し、写真上でランダムに20mmの長さ(サンプル上100μmの長さ)をいうものとする。もし、測定した相分離構造周期が予想したオーダーより外れていた場合、該当するオーダーに対応する倍率にて再度測定する。
海島構造の場合、顕微鏡写真の上にかかる所定の領域を3箇所選出し、その領域内の島相サイズの数平均値である。島相のサイズは、相界面から一方の相界面へ島相を通って引く最短距離の線の長さをいう。島相が楕円形、不定形、または、二層以上の円または楕円になっている場合であっても、相界面から一方の相界面へ島相を通る最短の距離を用いるものとする。かかる所定の領域とは、顕微鏡写真を基に以下のようにして設定するものとする。相分離構造周期が0.01μmオーダー(0.01μm以上0.1μm未満)と予想される場合、倍率を20,000倍で写真撮影し、写真上でランダムに選ばれる4mm四方の領域(サンプル上0.2μm四方の領域)をいい、同様にして、相分離構造周期が0.1μmオーダー(0.1μm以上1μm未満)と予想される場合、倍率を2,000倍で写真撮影し、写真上でランダムに選ばれる4mm四方の領域(サンプル上2μm四方の領域)をいい、相分離構造周期が1μmオーダー(1μm以上10μm未満)と予想される場合、倍率を200倍で写真撮影し、写真上でランダムに選ばれる4mm四方の領域(サンプル上20μm四方の領域)をいうものとする。もし、測定した相分離構造周期が予想したオーダーより外れていた場合、該当するオーダーに対応する倍率にて再度測定する。
この樹脂硬化物の相分離構造は、樹脂硬化物の断面を走査型電子顕微鏡もしくは透過型電子顕微鏡により観察することができる。必要に応じて、オスミウムなどで染色しても良い。染色は、通常の方法で行うことができる。
かかる相分離構造を有することにより、弾性率と靭性の両立が可能となる。構造周期が1nm未満の場合は、キャビテーション効果を発揮できず、靱性不足するだけでなく、弾性率も不足する。また、5μmを超える場合では、その構造周期が大きいために、亀裂が島相への進展なく、海相のみの領域で進展するのでキャビテ―ション効果を発現できず、靱性が不充分となる。
また、かかるエポキシ樹脂[A]リッチ相とエポキシ樹脂[B]リッチ相の相分離構造周期が1nmに満たない場合は、本発明の目的を損なうことのない範囲内で、下記の調整方法の少なくとも1つ以上の方法を行うことにより、相分離構造周期を大きくすることができる。
(1)全エポキシ樹脂に対するエポキシ樹脂[C]の配合割合を減らす。
(2)エポキシ樹脂[A]の軟化点を高くする。
(3)エポキシ樹脂[B]の軟化点を低くする。
(4)エポキシ樹脂[A]、[B]両方の配合割合を増やす。
また、エポキシ樹脂[A]リッチ相とエポキシ樹脂[B]リッチ相の相分離構造周期が1μmを超えた場合は、本発明の目的を損なうことのない範囲内で、下記の調整方法の少なくとも1つ以上の方法を行うことにより、相分離構造周期を小さくすることができる。
(1)全エポキシ樹脂に対するエポキシ樹脂[C]の配合割合を増やす。
(2)エポキシ樹脂[A]の軟化点を低くする。
(3)エポキシ樹脂[B]の軟化点を高くする。
(4)エポキシ樹脂[A]、[B]両方の配合割合を減らす。
また、ブロック共重合体[E]リッチ相の相分離構造周期が1μmを超えた場合は、本発明の目的を損なうことのない範囲内で、下記の調整方法の少なくとも1つ以上の方法を行うことにより、相分離構造周期を小さくすることができる。
(1)ブロック共重合体[E]の配合割合を減らす。
(2)エポキシ樹脂[A]の軟化点を低くする。
(3)エポキシ樹脂[B]の配合割合を増やす。
また、ブロック共重合体[E]リッチ相の相分離構造周期は、本発明の目的を損なうことのない範囲内で、下記の調整方法の少なくとも1つ以上の方法を行うことにより、大きくすることできる。
(1)ブロック共重合体[E]の配合割合を増やす。
(2)エポキシ樹脂[A]の軟化点を高くする。
(3)エポキシ樹脂[B]の配合割合を減らす。
かかるエポキシ樹脂[A]としては、90℃以上の軟化点を有するビスフェノール型、イソシアネート変性型、アントラセン型エポキシ樹脂もしくはこれらのハロゲン、アルキル置換体、水添品等を用いることができる。
かかるエポキシ樹脂[A]の市販品としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂として“jER(登録商標)”1004AF、1007、1009P、1010P、4005P、4007P、4009P、4010P(三菱化学(株)製)、イソシアネート変性エポキシ樹脂としてXAC4151(旭化成ケミカルズ(株)製)、などが挙げられる。
かかるエポキシ樹脂[B]としては、軟化点が50℃以下である、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジルジアミノジフェニルエーテル、トリグリシジルアミノフェノール、トリグリシジルアミノクレゾール、テトラグリシジルキシリレンジアミンなどのアミン型エポキシ樹脂や、トリグリシジルイソシアヌレート骨格を有するエポキシ樹脂、またはこれらのハロゲン、アルキル置換体、水添品などを使用することができる。
前記テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンとしては、“スミエポキシ(登録商標)”ELM434(住友化学(株)製)、YH434L(新日鐵化学(株)製)、“jER(登録商標)”604(三菱化学(株)製)、“アラルダイド(登録商標)”MY720、MY721(ハンツマン・アドバンズド・マテリアルズ社製)等を使用することができる。テトラグリシジルジアミノジフェニルエーテルとしては、3,3’−TGDDE(東レファインケミカル(株)製)等を使用することができる。トリグリシジルアミノフェノールまたはトリグリシジルアミノクレゾールとしては、 “アラルダイド(登録商標)”MY0500、MY0510、MY0600(ハンツマン・アドバンズド・マテリアルズ社製)、“jER(登録商標)”630(三菱化学(株)製)等を使用することができる。テトラグリシジルキシリレンジアミンおよびその水素添加品として、“TETRAD(登録商標)”−X、“TETRAD(登録商標)”−C(三菱ガス化学(株)製)、トリグリシジルイソシアヌレート骨格を有するエポキシ樹脂として“TEPIC(登録商標)”B26(日産化学工業(株))等を使用することができる。
かかるエポキシ樹脂[C]としては、50℃以下の軟化点であるビスフェノールF型、ビスフェノールAD型、ビスフェノールS型、フェノールノボラック型エポキシ樹脂もしくはこれらのハロゲン、アルキル置換体、水添品等が用いられる。エポキシ樹脂[C]の市販品としては、“エピクロン(登録商標)”830、806(DIC(株)製)、“jER(登録商標)”152(三菱化学(株)製)などが挙げられる。
本発明における硬化剤[D]のエポキシ樹脂硬化剤としては、エポキシ樹脂を硬化させるものであれば特に限定はなく、芳香族アミン、脂環式アミンなどのアミン類、酸無水物類、ポリアミノアミド類、有機酸ヒドラジド類、イソシアネート類等が挙げられる。
アミン硬化剤は、力学特性や耐熱性に優れることから好ましく、芳香族アミンであるジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルメタンや、脂肪族アミンであるジシアンジアミドまたはその誘導体、ヒドラジド化合物等が用いられる。かかるジシアンジアミドの市販品としては、DICY−7、DICY−15(以上、三菱化学(株)製)などが挙げられる。ジシアンジアミドの誘導体は、ジシアンジアミドに各種化合物を結合させたものであり、エポキシ樹脂との反応物、ビニル化合物やアクリル化合物との反応物などが挙げられる。
さらに、硬化剤[D]としてジシアンジアミドまたはその誘導体を粉体として樹脂に配合することは、室温での保存安定性や、プリプレグ化時の粘度安定性の観点から好ましい。ジシアンジアミドまたはその誘導体を粉体として樹脂に配合する場合、その平均粒径は10μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは7μm以下である。例えば、プリプレグ製造工程において加熱加圧により強化繊維束にエポキシ樹脂組成物を含浸させる際、10μmを超える粒径を持つジシアンジアミドまたはその誘導体は、強化繊維束中に入り込まず、繊維束表層に取り残される場合がある。
また、かかる硬化剤の総量は、全エポキシ樹脂成分のエポキシ基に対し、活性水素基が0.6〜1.0当量の範囲となる量を含むことが好ましく、より好ましくは0.7〜0.9当量の範囲となる量を含むことである。活性水素基が0.6当量に満たない場合は、樹脂硬化物の反応率、耐熱性、弾性率が不足し、また、繊維強化複合材料のガラス転移温度や強度が不足する場合がある。また、活性水素基が1.0当量を超える場合は、樹脂硬化物の反応率、ガラス転移温度、弾性率は充分であるが、塑性変形能力が不足するため、繊維強化複合材料の耐衝撃性が不足する場合がある。
各硬化剤は、硬化促進剤や、その他のエポキシ樹脂の硬化剤と組み合わせて用いても良い。組み合わせる硬化促進剤としては、ウレア類、イミダゾール類、ルイス酸などが挙げられる。
かかるウレア化合物としては、例えば、N,N-ジメチル-N’-(3,4-ジクロロフェニル)ウレア、トルエンビス(ジメチルウレア)、4,4’-メチレンビス(フェニルジメチルウレア)、3-フェニル-1,1-ジメチルウレアなどを使用することができる。かかるウレア化合物の市販品としては、DCMU99(保土ヶ谷化学(株)製)、“Omicure(登録商標)”24、52、94(以上CVC SpecialtyChemicals,Inc.製)などが挙げられる。
イミダゾール類の市販品としては、2MZ、2PZ、2E4MZ(以上、四国化成(株)製)などが挙げられる。ルイス酸としては、三フッ化ホウ素・ピペリジン錯体、三フッ化ホウ素・モノエチルアミン錯体、三フッ化ホウ素・トリエタノールアミン錯体、三塩化ホウ素・オクチルアミン錯体などの、ハロゲン化ホウ素と塩基の錯体が挙げられる。
中でも、保存安定性と促進能力のバランスから、ウレア化合物が好ましく用いられる。かかるウレア化合物の配合量は、全エポキシ樹脂成分100質量部に対して1〜3質量部含むことが好ましい。かかるウレア化合物の配合量が1質量部に満たない場合は、反応が充分に進行せず、樹脂硬化物の弾性率と耐熱性が不足しがちである。また、かかるウレア化合物の配合量が3質量部を超える場合は、エポキシ樹脂の自己重合反応が、エポキシ樹脂と硬化剤との反応を阻害するため、樹脂硬化物の靭性が不足する上、弾性率も低下する。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物には、粘弾性を調整して作業性またはその樹脂硬化物の弾性率や耐熱性を向上させる目的で、エポキシ樹脂[A]〜[C]以外のエポキシ樹脂を、本発明の効果が失われない範囲で添加することができる。これらは1種類だけでなく、複数種組み合わせて添加しても良い。具体的には、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂、イソシアネート変性エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ポリエチレングリコール型エポキシ樹脂、N,N’−ジグリシジルアニリン、テトラグリシジルジアミノジフェニルスルホン、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂などが挙げられる。
フェノールノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては“エピコート(登録商標)”152、154(以上、三菱化学(株)製)、“エピクロン(登録商標)”N−740、N−770、N−775(以上、DIC(株)製)などが挙げられる。
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては、“エピクロン(登録商標)”N−660、N−665、N−670、N−673、N−695(以上、DIC(株)製)、“EOCN(登録商標)”1020、102S、104S(以上、日本化薬(株)製)などが挙げられる。
レゾルシノール型エポキシ樹脂の具体例としては、“デナコール(登録商標)”EX−201(ナガセケムテックス(株)製)などが挙げられる。
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の市販品としては“エピクロン(登録商標)”HP7200、HP7200L、HP7200H(以上、DIC(株)製)、“TACTIX(登録商標)”558(ハンツマン・アドバンスト・マテリアル社製)、XD−1000−1L、XD−1000−2L(以上、日本化薬(株)製)などが挙げられる。
ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂の市販品としては、“エピコート(登録商標)”YX4000H、YX4000、YL6616(以上、三菱化学(株)製)、NC−3000(日本化薬(株)製)などが挙げられる。
イソシアネート変性エポキシ樹脂の市販品としては、オキサゾリドン環を有する“AER(登録商標)”4152(旭化成イーマテリアルズ(株)製)やXAC4151(旭化成ケミカルズ(株)製)などが挙げられる。
アントラセン型エポキシ樹脂の市販品としては、YX8800(三菱化学(株)製)などが挙げられる。
ポリエチレングリコール型エポキシ樹脂の市販品としては、“デナコール(登録商標)”EX810、811、850、851、821、830、841、861(ナガセケムテックス(株)製)などが挙げられる。
N,N’−ジグリシジルアニリンの市販品としては、GAN(日本化薬(株))が挙げられる。
テトラグリシジルジアミノジフェニルスルホンの市販品としては、TG3DAS(小西化学工業(株)製)が挙げられる。
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂の市販品としては、“jER(登録商標)”828(三菱化学(株)製)などが挙げられる。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物には粘弾性を制御し、プリプレグのタックやドレープ特性や、繊維強化複合材料の耐衝撃性などの力学特性を改良するために、エポキシ樹脂に可溶性の熱可塑性樹脂や、ゴム粒子および熱可塑性樹脂粒子等の有機粒子や、無機粒子等を配合することができる。
エポキシ樹脂に可溶性の熱可塑性樹脂としては、樹脂と強化繊維との接着性改善効果が期待できる水素結合性の官能基を有する熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。水素結合性官能基としては、アルコール性水酸基、アミド結合、スルホニル基、カルボキシル基などを挙げることができる。
アルコール性水酸基を有する熱可塑性樹脂としては、ポリビニルホルマールやポリビニルブチラールなどのポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール、フェノキシ樹脂などを挙げることができる。アミド結合を有する熱可塑性樹脂としては、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリビニルピロリドンなどを挙げることができる。スルホニル基を有する熱可塑性樹脂としては、ポリスルホンなどを挙げることができる。ポリアミド、ポリイミドおよびポリスルホンは主鎖にエーテル結合、カルボニル基などの官能基を有してもよい。ポリアミドは、アミド基の窒素原子に置換基を有してもよい。カルボキシル基を有する熱可塑性樹脂としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミドイミドなどを挙げることができる。
エポキシ樹脂可溶で、水素結合性官能基を有する熱可塑性樹脂の市販品としては、ポリビニルアセタール樹脂としてデンカブチラール、およびポリビニルアルコール樹脂として“デンカポバール(登録商標)”(電気化学工業(株)製)、“ビニレック(登録商標)”(チッソ(株)製)、ポリアミド樹脂として“マクロメルト(登録商標)”(ヘンケル株式会社製)、“アミラン(登録商標)”CM4000(東レ株式会社製)、ポリイミドとして“ウルテム(登録商標)”(サビックイノベーティブプラスチックス社製)、“オーラム(登録商標)”(三井化学(株)製)、“ベスペル(登録商標)”(デュポン社製)PEEKポリマーとして“Victrex(登録商標)”(ビクトレックス社製)、ポリスルホンとして“UDEL(登録商標)”(ソルベイ アドバンストポリマーズ社製)、ポリビニルピロリドンとして、“ルビスコール(登録商標)”(ビーエーエスエフジャパン(株)製)を挙げることができる。
また、アクリル系樹脂は、エポキシ樹脂との高い相溶性を有し、粘弾性制御のために好ましく用いられる。アクリル樹脂の市販品としては、“ダイヤナール(登録商標)”BRシリーズ(三菱レイヨン(株)製)、“マツモトマイクロスフェアー(登録商標)”M、M100、M500(松本油脂製薬(株)製)などを挙げることができる。
ゴム粒子としては、架橋ゴム粒子、および架橋ゴム粒子の表面に異種ポリマーをグラフト重合したコアシェルゴム粒子が、取り扱い性等の観点から好ましく用いられる。
コアシェルゴム粒子の市販品としては、例えば、ブタジエン・メタクリル酸アルキル・スチレン共重合物からなる“パラロイド(登録商標)”EXL−2655、EXL−2611、EXL−3387(ロームアンドハーズ(株)製)、アクリル酸エステル・メタクリル酸エステル共重合体からなる“スタフィロイド(登録商標)”AC−3355、TR−2122(ガンツ(株)製)、“Nanostrength(登録商標)”M22、51、52、53(アルケマ社製)、“カネエース(登録商標)”MXシリーズ(カネカ(株)製)等を使用することができる。
熱可塑性樹脂粒子としては、ポリアミド粒子やポリイミド粒子が好ましく用いられる。ポリアミド粒子の市販品として、SP−500(東レ(株)製)、“オルガゾル(登録商標)”(アルケマ社製)等を使用することができる。
本発明において、S−B−M、B−M、およびM−B−Mからなる群から選ばれる少なくとも1種のブロック共重合体[E](以下略して、ブロック共重合体と記すこともある)をさらに含んでいることは、エポキシ樹脂組成物の優れた耐熱性を維持しつつ、靱性や耐衝撃性を向上させるために有効である。
ここで、前記のS、B、および、Mで表される各ブロックは共有結合によって連結されているか、何らかの化学構造を介して共有結合によって連結されている。
ブロックMは、ポリメタクリル酸メチルのホモポリマーまたはメタクリル酸メチルを少なくとも50質量%含むコポリマーである。ブロックBはブロックMに非相溶で、そのガラス転移温度が20℃以下である。ブロックBのガラス転移温度は、エポキシ樹脂組成物、およびブロック共重合体単体のいずれを用いた場合でも、動的粘弾性測定装置(RSAII:レオメトリックス社製、または、レオメーターARES:TAインスツルメント社製)を用いてDMA法により測定できる。すなわち、厚さ1mm、幅2.5mm、幅34mmの板状のサンプルにし、それを、−100〜250℃の温度で掃引し、ストレスを加える周期を1Hzとして測定し、その最大tanδ値をブロックBのガラス転移温度とする。ここで、サンプルの作製は次のようにして行う。エポキシ樹脂組成物を用いた場合は、エポキシ樹脂組成物を真空中で脱泡した後、1mm厚の“テフロン(登録商標)”製スペーサーにより厚み1mmになるように設定したモールド中で130℃の温度で2時間硬化させることでボイドのない板状樹脂硬化物が得られ、ブロック共重合体単体を用いた場合、2軸押し出し機を用いることで同様にボイドのない板が得られ、これらをダイヤモンドカッターにより上記サイズに切り出して評価することができる。
ブロックSはブロックBおよびMに非相溶であり、そのガラス転移温度は、ブロックBよりも高いものである。ブロックSのガラス転移温度または融点は、23℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましい。ブロックSの例として、芳香族ビニル化合物、例えばスチレン、α−メチルスチレンまたはビニルトルエンから得られるもの、アルキル鎖が1〜18の炭素原子を有するアルキル酸および/またはメタクリル酸のアルキルエステルから得られるものを挙げることができる。
また、ブロック共重合体がS−B−Mの場合は、S、B、Mのいずれかのブロックが、ブロック共重合体がB−MまたはM−B−Mの場合は、B、Mのいずれかのブロックが、エポキシ樹脂と相溶することは、靱性の向上の観点から好ましい。
かかるブロック共重合体[E]の配合量は、力学特性やコンポジット作製プロセスへの適合性の観点から、全エポキシ樹脂成分100質量部に対して、1〜10質量部であることが好ましく、さらに好ましくは2〜7質量部である。[E]が1質量部未満の場合、樹脂硬化物の靭性および塑性変形能力の向上が不足しがちで、繊維強化複合材料の耐衝撃性が不十分となる場合がある。10質量部を超える場合、樹脂硬化物の弾性率が低下して繊維強化複合材料の機械特性が不十分となる上、エポキシ樹脂組成物の粘度が高くなるため、取り扱い性に問題が生じる場合がある。
かかるブロックMに、メタクリル酸メチル以外のモノマーを共重合成分として導入することは、エポキシ樹脂との相溶性および樹脂硬化物の各種特性制御の観点から好ましく実施される。かかるモノマー共重合成分は、特に限定されるものではなく、上記観点から適宜選択可能だが、通常は、SP値の高いエポキシ樹脂への相溶性を得るために、ブロックMが添加するエポキシ樹脂に近いSP値を持つ成分が好ましい。また、共重合するメチルメタクリル酸メチルよりもSP値の高いモノマー、特に水溶性のモノマーさらに好ましく用いられる。中でも、アクリルアミド誘導体が好ましく使用でき、特にジメチルアクリルアミドがさらに好ましく用いられる。また、メタクリル酸メチル以外のモノマー共重合成分としては、反応性のモノマーも適用可能である。ここで反応性モノマーとは、エポキシ分子のオキシラン基または硬化剤の官能基と反応可能な官能基を有するモノマーを意味する。この反応可能な官能基としては、オキシラン基、アミン基またはカルボキシル基等をあげることが出来るが、これらに限定されるものではない。反応性モノマーとして、(メタ)アクリル酸(メタクリル酸とアクリル酸を総称して(メタ)アクリル酸と略記)または、加水分解されることにより(メタ)アクリル酸を生じる他の任意のモノマーを用いることもできる。反応性モノマーは、かかるブロック共重合体[E]とエポキシ樹脂との相溶性や、ブロック共重合体[E]とエポキシの界面接着性を向上させるため好ましく用いられる。
ブロックMを構成できる他のモノマーの例としては、メタクリル酸グリシジルまたはtert−ブチルメタクリレートが挙げられるが、ブロックMは少なくとも、60%がシンジオタクティックPMMA(ポリメタクリル酸メチル)から成るのが好ましい。
ブロックBのガラス転移温度は20℃以下、好ましくは0℃以下、より好ましくは−40℃以下である。かかるガラス転移温度は、靱性の観点では低ければ低いほど好ましいが、−100℃を下回ると繊維強化複合材料とした際に切削面が荒れるなどの加工性に問題が生じる場合がある。
ブロックBは、エラストマーブロックであることが好ましく、かかるエラストマーブロックを合成するために用いられるモノマーは、ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンおよび2−フェニル−1,3−ブタジエンから選択することができる。
かかるブロックBは、ポリジエン、特にポリブタジエン、ポリイソプレンおよびこれらのランダム共重合体または部分的または完全に水素化されたポリジエン類の中から選択するのが靱性の観点から好ましい。かかる部分的または完全に水素化されたポリジエン類は、通常の水素化方法に従って作製できる。ポリブタジエンの中では、1,2−ポリブタジエン(ガラス転移温度約0℃)などが好ましく挙げられるが、上記で列記したジエンの中で最も低いガラス転移温度を有する1,4−ポリブタジエン(ガラス転移温度約−90℃)を使用するのがより好ましい。ガラス転移温度がより低いブロックBを用いることは耐衝撃性や靱性の観点から有利だからである。
エラストマ−のブロックBを合成するために用いるモノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレートを用いることもできる。具体例としては、エチルアクリレート(−24℃)、ブチルアクリレート(−54℃)、2−エチルヘキシルアクリレート(−85℃)、ヒドロキシエチルアクリレート(−15℃)および2−エチルヘキシルメタアクリレート(−10℃)を挙げることができる。ここで、各アクリレートの名称の後のカッコ中に示した数値は、それぞれのアクリレートを用いた場合に得られるブロックBのガラス転移温度である。これらの中では、ブチルアクリレートを用いるのが好ましい。これらのブロックBを合成するモノマーとしてのアクリレートは、メタクリル酸メチルを少なくとも50質量%含むブロックMのアクリレートとは非相溶である。したがって、Bブロックとしては、主として1,4−ポリブタジエンもしくは、ポリブチルアクリレート、ポリ(2−エチルヘキシルアクリレート)から成ることがより好ましい。
ブロック共重合体[E]としてトリブロック共重合体M−B−Mを用いる場合、トリブロック共重合体M−B−Mの二つのブロックMは、互いに同一でも異なっていてもよい。また、同じモノマーによるもので分子量が異なるものにすることもできる。
ブロック共重合体[E]としてトリブロック共重合体M−B−Mとジブロック共重合体B−Mを併用する場合は、トリブロック共重合体M−B−MのブロックMがジブロック共重合体B−MのMブロックと同一でも、異なっていてもよく、また、M−B−MトリブロックのブロックBはジブロック共重合体B−Mと同一でも異なっていてもよい。
ブロック共重合体[E]としてトリブロック共重合体S−B−Mとジブロック共重合体B−Mおよび/またはトリブロック共重合体M−B−Mを併用する場合には、このトリブロック共重合体S−B−MのブロックMと、トリブロック共重合体M−B−Mの各ブロックMと、ジブロック共重合体B−MのブロックMとは互いに同一でも異なっていてもよく、トリブロック共重合体S−B−Mと、トリブロック共重合体M−B−Mと、ジブロック共重合体B−Mとの各ブロックBは互いに同一でも異なっていてもよい。
本発明の材料で使用されるブロック共重合体はアニオン重合によって製造でき、例えば欧州特許第EP524,054号公報や欧州特許第EP749,987号公報に記載の方法で製造できる。
トリブロック共重合体M−B−Mの具体例としては、メタクリル酸メチル−ブチルアクリレート−メタクリル酸メチルからなる共重合体として、Nanostrength M22(アルケマ社製)や、極性官能基をもつNanostrength M22N(アルケマ社製)が挙げられる。トリブロック共重合体S−B−Mの具体例としては、スチレン−ブタジエン−メタクリル酸メチルからなる共重合体として、アルケマ社製のNanostrength 123、Nanostrength 250、Nanostrength 012,Nanostrength E20,Nanostrength E40(以上、アルケマ社製)が挙げられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物の調製には、ニーダー、プラネタリーミキサー、3本ロールおよび2軸押出機などが好ましく用いられる。エポキシ樹脂として[A]、[B]、[C]を投入し、撹拌しながらエポキシ樹脂混合物の温度を130〜180℃の任意の温度まで上昇させ、エポキシ樹脂[A]、[B]、[C]を均一に溶解させる。このとき、硬化剤、硬化促進剤以外の、ブロック共重合体[E]などのその他の成分を添加し、ともに混練しても良い。その後、撹拌しながら好ましくは100℃以下、より好ましくは80℃以下の温度まで下げて硬化剤ならびに硬化促進剤を添加し混練、分散させる。この方法は、保存安定性に優れるエポキシ樹脂組成物を得ることができるため好ましく用いられる。
エポキシ樹脂[A]として、樹脂硬化物に高い靱性を与えることから、90℃以上の軟化点を有するビスフェノール型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。中でも、耐熱性と弾性率、靭性のバランスが良いことから、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、またはビスフェノールF型エポキシ樹脂がより好ましく用いられる。さらに好ましくは、高い弾性率を与えるビスフェノールF型エポキシ樹脂が用いられる。また、エポキシ樹脂[A]は、全エポキシ樹脂100質量部のうち20〜50質量部含むことが好ましく、全エポキシ樹脂100質量部のうち30〜50質量部含むことがより好ましい。20質量部に満たない場合、得られる樹脂硬化物が相分離構造を形成することが難しくなりがちであり、靭性が不足しやすい。50質量部を超える場合は、樹脂硬化物の弾性率や耐熱性が不足しがちであるだけでなく、エポキシ樹脂組成物の粘度が高くなりすぎる傾向がある。エポキシ樹脂組成物の粘度が高くなりすぎると、プリプレグを製造する際、強化繊維間にエポキシ樹脂組成物を充分に含浸できない場合がある。このために、得られる繊維強化複合材料中にボイドを生じ、繊維強化複合材料の強度が低下する恐れがある。
エポキシ樹脂[B]として、3官能以上のアミン型エポキシ樹脂を、全エポキシ樹脂100質量部のうち30〜50質量部含むことが好ましい。30質量部に満たない場合、得られる樹脂硬化物の弾性率が不足しやすく、相分離構造を形成しがたくなる。また、50質量部を超える場合は、樹脂硬化物の塑性変形能力と靭性が不足しやすい。3官能以上のアミン型エポキシ樹脂の中でも、3官能アミン型エポキシ樹脂が、樹脂硬化物に弾性率と靭性をバランス良く与えるため好ましい。さらに、3官能アミン型エポキシ樹脂の中でも、アミノフェノール型エポキシ樹脂は、靭性が比較的高く、より好ましい。
エポキシ樹脂[C]として、高い弾性率を与え、エポキシ樹脂[A]および[B]への相溶性が良好である450以下の数平均分子量を持つビスフェノールF型エポキシ樹脂を、全エポキシ樹脂100質量部のうち10〜40質量部用いることが好ましい。より好ましくは、450以下の数平均分子量を持つビスフェノールF型エポキシ樹脂が全エポキシ樹脂100質量部のうち20〜40質量部含まれることである。450以下の数平均分子量を持つビスフェノールF型エポキシ樹脂の配合量が10質量部に満たない場合、相分離構造周期が大きくなる傾向がある。また、40質量部を超える場合は、エポキシ樹脂[A]と[B]が相溶しやすく、相分離構造を形成し難いため、得られる樹脂硬化物の弾性率や靭性が不足しやすい。なお、本発明でいう数平均分子量を測定する方法としては、例えば、次の方法が挙げられる。測定装置としては、“HLC(登録商標)”8220GPC(東ソー株式会社製)、検出器としてUV−8000(254nm)、カラムにはTSK−G4000H(東ソー株式会社製)を用いる。エポキシ樹脂をTHFに、濃度0.1mg/mlで溶解させ、これを流速1.0ml/min、温度40℃で測定したサンプルの保持時間を、ポリスチレンの校正用サンプルの保持時間を用いて、分子量に換算して求める。エポキシ樹脂[C]の数平均分子量を450以下にすることにより、得られるエポキシ樹脂組成物の粘度を低くすることができる。したがって、プリプレグ製造工程において、前記エポキシ樹脂組成物が強化繊維間に含浸しやすくなるため、得られるプリプレグの繊維含有率を向上させることができる。一方で、エポキシ樹脂[C]の数平均分子量が450より大きい場合、エポキシ樹脂組成物の粘度が高くなりやすいため、プリプレグ製造工程において、エポキシ樹脂組成物が強化繊維間に含浸しにくくなり、プリプレグの繊維含有率を向上させにくい傾向がある。また、エポキシ樹脂[C]の数平均分子量を450以下であることで、相溶化剤としての効果が大きくなるため、微細な相分離構造を形成させやすい。エポキシ樹脂[C]の数平均分子量が450より大きい場合、エポキシ樹脂[C]はいずれか一方の相に相溶しやすくなるため、相溶化剤としての効果が小さくなる傾向がある。その結果、樹脂硬化物の相分離構造周期が大きくなる傾向がある。
かかる数平均分子量450以下のビスフェノールF型エポキシ樹脂の市販品としては、“エピクロン(登録商標)”830、806(DIC(株)製)などが挙げられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物をプリプレグのマトリックス樹脂として用いる場合、タックやドレープなどのプロセス性の観点から、エポキシ樹脂組成物の80℃における粘度は、0.5〜200Pa・sであることが好ましい。ここで、エポキシ樹脂組成物の80℃における粘度が0.5Pa・sに満たない場合、製造したプリプレグが形状を保持しがたく、プリプレグに割れを生じる可能性がある。また、繊維強化複合材料成形時に多くの樹脂フローを生じ、強化繊維含有量にばらつきが生じたりする可能性がある。また、80℃における粘度が200Pa・sを超える場合、プリプレグ製造する際、強化繊維間にエポキシ樹脂組成物を充分に含浸できない。このために、得られる繊維強化複合材料中にボイドを生じ、繊維強化複合材料の強度が低下する恐れがある。さらに、エポキシ樹脂組成物の80℃における粘度は、プリプレグ製造工程において、強化繊維間に樹脂が含浸しやすく、高繊維含有率のプリプレグを製造できるため、5〜50Pa・sの範囲にあることがより好ましい。粘度については、本発明の目的を損なうことのない範囲内で、下記の(1)〜(2)の少なくとも1つ以上の方法を行うことにより低粘度化でき、下記の(3)〜(4)の少なくとも1つ以上の方法を行うことにより高粘度化できる。
(1)軟化点の低いエポキシ樹脂[A]および/または[B]を用いて、低粘度化する。
(2)エポキシ樹脂[C]の質量部数を増量し、低粘度化する。
(3)軟化点の高いエポキシ樹脂[A]および/または[B]を用いて、高粘度化する。
(4)熱可塑樹脂の添加によって、エポキシ樹脂組成物が高粘度化する。
ここで粘度とは、動的粘弾性測定装置(レオメーターRDA2:レオメトリックス社製またはレオメーターARES:TAインスツルメント社製)を用い、直径40mmのパラレルプレートを用い、昇温速度1.5℃/分で単純昇温し、周波数0.5Hz、Gap 1mmで測定を行った複素粘弾性率ηのことを指している。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、その樹脂硬化物の弾性率が、3.8〜5.0GPaの範囲内であることが好ましい。より好ましくは、4.0〜5.0GPaである。かかる弾性率が3.8GPaに満たない場合、繊維強化複合材料とした際の静的強度が不充分となる場合がある。5.0GPaを超える場合、繊維強化複合材料とした際の塑性変形能力が不充分となりがちで、繊維強化複合材料の衝撃強度が不足する場合がある。ここで、弾性率については、本発明の目的を損なうことのない範囲内で、下記の少なくとも1つ以上の方法を行うことにより、向上させることができる。
(1)エポキシ樹脂[A]として弾性率の高いビスフェノールF型エポキシ樹脂を用いる。
(2)エポキシ樹脂[B]の質量部数を増やす。
(3)エポキシ樹脂[B]としてアミン型エポキシを用い、中でも弾性率の高いアミノフェノール型エポキシ樹脂を用いる。
(4)エポキシ樹脂[C]としてビスフェノールF型エポキシ樹脂を用いる。
ここで、かかる樹脂硬化物を得るための硬化温度や硬化時間は特に限定されず、配合する硬化剤や硬化促進剤に応じて、コストや生産性、また得られる樹脂硬化物の力学特性、耐熱性、品位等の観点から適宜選択できる。例えば、ジシアンジアミドとDCMUを組み合わせた硬化剤系では、130〜150℃の温度で90分〜2時間硬化させる条件が好ましく、ジアミノジフェニルスルホンを用いた場合には、180℃の温度で2〜3時間硬化させる条件が好ましい。
ここで、本発明における樹脂硬化物の弾性率の測定方法について説明する。まず、エポキシ樹脂組成物を真空中で脱泡した後、2mm厚の“テフロン(登録商標)”製スペーサーにより厚み2mmになるように設定したモールド中で所定の硬化条件で硬化させることでボイドのない板状樹脂硬化物を得る。この樹脂硬化物をダイヤモンドカッターにより幅10mm、長さ60mmに切り出し、樹脂硬化物の弾性率測定用のサンプルを得る。得られたサンプルを、万能力学試験機(インストロン社製)を用いて、スパンを32mm、クロスヘッドスピードを100mm/分とし、JIS K7171(1994)に従って3点曲げにより測定する。サンプル数n=5の平均値を、樹脂硬化物の弾性率とする。
本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化させた樹脂硬化物の樹脂靱性値は、1.1MPa・m0.5以上であることが好ましい。より好ましくは、1.3MPa・m0.5以上である。樹脂靱性値が1.1MPa・m0.5未満であると、繊維強化複合材料の耐衝撃性が不足する場合がある。ここで、本発明の範囲内で、下記の少なくとも1つ以上の方法を行うことにより、樹脂靱性値を向上させることができる。
(1)数平均分子量の大きなエポキシ樹脂[A]および/または[B]を用いる。
(2)エポキシ樹脂[A]の質量部数を増やす。
(3)ブロック共重合体[E]を配合する。
ここで、樹脂硬化物の樹脂靭性値の測定について説明する。まず、エポキシ樹脂組成物を真空中で脱泡した後、6mm厚の“テフロン(登録商標)”製スペーサーにより厚み6mmになるように設定したモールド中で所定の硬化条件で硬化させることでボイドのない板状樹脂硬化物を得る。得られた樹脂硬化物をダイヤモンドカッターにより幅12.7mm、長さ150mmに切り出し、幅方向の片端から5〜7mmの予亀裂を導入し、樹脂硬化物の樹脂靭性値の測定用サンプルを作製する。試験片への初期の予亀裂の導入は、液体窒素温度まで冷やした剃刀の刃を試験片にあて、ハンマーで剃刀に衝撃を加えることで行う。樹脂硬化物の樹脂靭性値は、上記で得たサンプルを用い、万能力学試験機(インストロン社製)を用い、ASTM D5045(1999)に従って測定する。サンプル数n=5の平均値を、樹脂硬化物の樹脂靱性値とする。
本発明に用いられる強化繊維は特に限定されるものではなく、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維等が用いられる。これらの繊維を2種以上混合して用いても構わない。この中で、軽量かつ高剛性な繊維強化複合材料が得られる炭素繊維を用いることが好ましい。中でも、230〜800GPaの引張弾性率を有する炭素繊維が好ましく用いられ、より好ましくは引張弾性率280GPaの炭素繊維が用いられる。230〜800GPaの高弾性率を有する高弾性率の炭素繊維を本発明のエポキシ樹脂組成物と組み合わせた場合に、本発明の効果が特に顕著に現れ、良好な耐衝撃性を得られる傾向がある。
強化繊維の形態は特に限定されるものではない、たとえば、一方向に引き揃えた長繊維、トウ、織物、マット、ニット、組み紐、10mm未満の長さにチョップした短繊維などが用いられる。ここでいう長繊維とは、実質的に10mm以上連続な単繊維もしくは繊維束のことをさす。また、短繊維とは10mm未満の長さに切断された繊維束である。特に、高い比強度、比弾性率を要求される用途には、強化繊維束を単一方向に引き揃えた配列が最も適している。
本発明の繊維強化複合材料の製造方法は、特に限定されるものではないが、プリプレグ積層成形法、レジントランスファーモールディング法、レジンフィルムインフュージョン法、ハンドレイアップ法、シートモールディングコンパウンド法、フィラメントワインディング法、プルトルージョン法、などにより製造することができる。
レジントランスファーモールディング法とは、強化繊維基材に直接液状の熱硬化性樹脂を含浸させ、硬化させる方法である。この方法は、プリプレグのような中間体を経由しないため、成形コスト低減のポテンシャルを有し、宇宙機、航空機、鉄道車両、自動車、船舶などの構造材料に好ましく用いることができる。
フィラメントワインディング法とは、ロービングを1〜数十本引き揃え、樹脂を含浸させながら回転する金型(マンドレル)に所定の厚さまでテンションを掛けて所定の角度で巻き付け、硬化後脱型する方法である。
プルトルージョン法は、強化繊維を液状の熱硬化樹脂組成物の満たされた含浸槽に連続的に通し、熱硬化樹脂組成物を含浸させ、スクイーズダイ及び、加熱金型を通して引張機によって連続的に引き抜きつつ、成形、硬化させる成形方法である。この方法は、繊維強化複合材料を連続的に成形できるという利点を有するため、釣竿、ロッド、パイプ、シート、アンテナ、建築構造物等の強化繊維プラスチック(FRP)の製造に用いられている。
プリプレグ積層成形法とは、プリプレグを賦形および/または積層後、賦形物および/または積層物に圧力を付与しながら樹脂を加熱硬化させる方法である。
中でもプリプレグ積層成形法が、繊維強化複合材料の剛性、強度に優れているため好ましい。
本発明のプリプレグは、前記本発明のエポキシ樹脂組成物を繊維基材に含浸させてなるものである。含浸させる方法としては、ウェット法とホットメルト法(ドライ法)等を挙げることができる。
ウェット法は、メチルエチルケトン、メタノール等の溶媒にエポキシ樹脂組成物を溶解させた溶液に強化繊維を浸漬した後、強化繊維を引き上げ、オーブン等を用いて強化繊維から溶媒を蒸発させ、エポキシ樹脂組成物を強化繊維に含浸させる方法である。ホットメルト法は、加熱により低粘度化したエポキシ樹脂組成物を直接強化繊維に含浸させる方法、または離型紙等の上にエポキシ樹脂組成物をコーティングしたフィルムを作製しておき、次いで強化繊維の両側または片側から前記フィルムを重ね、加熱加圧することにより強化繊維に樹脂を含浸させる方法である。なかでもプリプレグ中に残留する溶媒がないため、ホットメルト法を用いることが好ましい。
プリプレグの単位面積あたりの強化繊維量は、70〜200g/mであることが好ましい。かかる強化繊維量が70g/m未満の場合、繊維強化複合材料成形の際に所定の厚みを得るために積層枚数を多くする必要があり、積層作業が繁雑になることがある。一方で、強化繊維量が200g/mを超える場合、プリプレグのドレープ性が悪くなる傾向にある。また、繊維質量含有率は、好ましくは60〜90質量%であり、より好ましくは65〜85質量%であり、さらに好ましくは70〜80質量%である。繊維質量含有率が60質量%未満では、樹脂の比率が多すぎるため、比強度と比弾性率に優れる繊維強化複合材料の利点が得られないことや、繊維強化複合材料の硬化時の発熱量が高くなりすぎることがある。また、繊維質量含有率が90質量%を超える場合、樹脂の含浸不良を生じるため、得られる繊維強化複合材料はボイドの多いものとなる恐れがある。
ここで、プリプレグ積層成形法において、熱および圧力を付与する方法としては、プレス成形法、オートクレーブ成形法、バッギング成形法、ラッピングテープ法、内圧成形法等を適宜使用することができる。
オートクレーブ成形法は、所定の形状のツール版にプリプレグを積層して、バッギングフィルムで覆い、積層物内を脱気しながら加圧、加熱硬化させる方法であり、繊維配向が精密に制御でき、またボイドの発生が少ないため、力学特性に優れ、また高品位な成形体が得られる。成形時に掛ける圧力は0.3〜1.0MPaが好ましい。また、成形温度は90〜200℃の範囲であることが好ましい。
ラッピングテープ法は、マンドレル等の芯金にプリプレグを捲回して、繊維強化複合材料製の管状体を成形する方法であり、ゴルフシャフト、釣り竿等の棒状体を作製する際に好ましい方法である。より具体的には、マンドレルにプリプレグを捲回し、プリプレグの固定および圧力付与のため、捲回したプリプレグの外側に熱可塑性フィルムからなるラッピングテープを、張力をかけつつ捲回し、プリプレグに張力を加える。それらをオーブン中で樹脂を加熱硬化させた後、マンドレルを抜き取って管状体を得る方法である。ラッピングテープを巻く張力は20〜78Nであることが好ましい。また成形温度は80〜200℃の範囲であることが好ましい。
また、内圧成形法は、熱可塑性樹脂製のチューブ等の内圧付与体にプリプレグを捲回したプリフォームを金型中にセットし、次いで内圧付与体に高圧の気体を導入して圧力を付与すると同時に金型を加熱せしめ、成形する方法である。本方法は、ゴルフシャフト、バッド、テニスやバドミントン等のラケットの如き複雑な形状物を成形する際に好ましく用いられる。成形時に付与する圧力は0.1〜2.0MPaが好ましい。また成形温度は室温〜200℃の範囲であることが好ましく、80〜180℃の範囲であることがさらに好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物をマトリックス樹脂として用い、硬化させてなる繊維強化複合材料は、スポーツ用途、一般産業用途および航空宇宙用途に好ましくに用いられる。より具体的には、スポーツ用途では、ゴルフシャフト、釣り竿、テニスやバドミントンのラケット用途、ホッケー等のスティック用途、およびスキーポール用途に好ましく用いられる。さらに一般産業用途では、自動車、自転車、船舶および鉄道車両等の移動体の構造材、ドライブシャフト、板バネ、風車ブレード、圧力容器、フライホイール、製紙用ローラ、屋根材、ケーブル、および補修補強材料等に好ましく用いられる。
本発明のプリプレグを管状に硬化させてなる繊維強化複合材料製管状体は、ゴルフシャフト、釣り竿などに好ましく用いることができる。
以下、本発明を実施例により、さらに詳細に説明する。各種物性の測定は次の方法によった。なお、これらの物性は、特に断わりのない限り、温度23℃、相対湿度50%の環境で測定した。
(1)エポキシ樹脂組成物の調製
ニーダー中に、硬化剤、硬化促進剤以外の、ブロック共重合体[E]などのその他の成分を所定量加え、混練しつつ、150℃まで昇温し、150℃、1時間混練することで、透明な粘調液を得た。70℃まで混練しつつ降温させた後、硬化剤および硬化促進剤を所定量添加え、混練しエポキシ樹脂組成物を得た。各実施例、比較例の成分配合比は、表2〜4に示す通りである。
<エポキシ樹脂([A])>
・ビスフェノールA型エポキシ樹脂(“jER(登録商標)”1007、エポキシ当量:1925、三菱化学(株)製)
・ビスフェノールF型エポキシ樹脂(“jER(登録商標)”4007P、エポキシ当量:2270、三菱化学(株)製)
・ビスフェノールF型エポキシ樹脂(“jER(登録商標)”4010P、エポキシ当量:4400、三菱化学(株)製)。
<エポキシ樹脂([B])>
・テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(“スミエポキシ(登録商標)”ELM434、住友化学(株)製、エポキシ当量:125)
・トリグリシジル−p−アミノフェノール(“jER(登録商標)”jER630、エポキシ当量:98、三菱化学(株)製))
・トリグリシジル−p−アミノフェノール(“アラルダイド(登録商標)”MY0500、エポキシ当量:110、ハイツマン・アドバンスドマテリアル(株)製)
・3,3’−テトラグリシジルジアミノジフェニルエーテル(TG3DDE、エポキシ当量:122、東レファインケミカル(株)製)。
<エポキシ樹脂([C])>
・ビスフェノールF型エポキシ樹脂(“エピクロン(登録商標)”830、エポキシ当量:170、DIC(株)製)
・フェノールノボラック樹脂“jER(登録商標)”152(三菱化学(株)製)。
<硬化剤([D])>
・ジシアンジアミド(DICY7、三菱化学(株)製)。
<ブロック共重合体[E]>
・S−B−M共重合体(“Nanostrength(登録商標)” E40:Sがスチレン(Tg:約90℃)、Bが1,4−ブタジエン(Tg:約−90℃)、Mがメタクリル酸メチル(Tg:約130℃)。アルケマ(株)製)
・M−B−M共重合体(“Nanostrength(登録商標)” M22N:Bがブチルアクリレート(Tg:約−50℃)、Mがメタクリル酸メチルと極性官能基含有モノマーの共重合体(Tg:約130℃)、アルケマ(株)製)。
<その他の成分>
・多官能エポキシ樹脂(“jER(登録商標)”1031S、エポキシ当量:200、三菱化学(株)製)
・ビスフェノールA型エポキシ樹脂(“jER(登録商標)”1001、エポキシ当量:470、三菱化学(株)製)
・グリシジルフタルイミド (“デナコール(登録商標)” EX731、エポキシ当量:216、 ナガセケムテックス(株)製)
・ポリエチレングリコール型エポキシ樹脂(“デナコール(登録商標)”EX821、エポキシ当量:185、ナガセケムテックス(株)製)
・“ビニレック(登録商標)”PVF−K(ポリビニルホルマール)、チッソ(株)製)
・DCMU99(3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレア、硬化促進剤、保土ヶ谷化学工業(株)製)。
(2)数平均分子量測定
測定装置としては、“HLC(登録商標)”8220GPC(東ソー株式会社製)、検出器としてUV−8000(254nm)、カラムにはTSK−G4000H(東ソー株式会社製)を用いた。エポキシ樹脂をTHFに、濃度0.1mg/mlで溶解させ、これを流速1.0ml/分、温度40℃で測定したサンプルの保持時間を、ポリスチレンの校正用サンプルの保持時間を用いて、分子量に換算して求めた。数平均分子量測定結果を表1に示す。
(3)樹脂硬化物の弾性率
エポキシ樹脂組成物を真空中で脱泡した後、2mm厚のテフロン(登録商標)製スペーサーにより厚み2mmになるように設定したモールド中で特に断らない限り、130℃の温度で90分間硬化させ、厚さ2mmの樹脂硬化物を得た。この樹脂硬化物から、幅10mm、長さ60mmの試験片を切り出し、インストロン万能試験機(インストロン社製)を用い、スパンを32mm、クロスヘッドスピードを100mm/分とし、JIS K7171(1994)に従って3点曲げを実施し、弾性率を得た。サンプル数n=5とし、その平均値で比較した。表1に、エポキシ樹脂[C]と、エポキシ樹脂[C]に対して0.9当量のジシアンジアミドと、エポキシ樹脂[C]100質量部に対して2質量部のDCMUから得られるエポキシ樹脂組成物を、室温から130℃まで2.5℃/分で昇温し、130℃で90分間反応させて得られる樹脂硬化物の弾性率を示す。
(4)樹脂硬化物の樹脂靱性値の測定
エポキシ樹脂組成物を真空中で脱泡した後、6mm厚のテフロン(登録商標)製スペーサーにより厚み6mmになるように設定したモールド中で特に断らない限り、130℃の温度で90分間硬化させ、厚さ6mmの樹脂硬化物を得た。この樹脂硬化物を幅12.7mm、長さ150mmでカットし、試験片を得た。この樹脂硬化物から、幅12.7mm、長さ150mmの試験片を切り出し、ASTM D5045(1999)に従って、試験片を加工し、インストロン万能試験機(インストロン社製)を用い、測定をおこなった。試験片への初期の予亀裂の導入は、液体窒素温度まで冷やした剃刀の刃を試験片にあてハンマーで剃刀に衝撃を加えることで行った。ここでいう、樹脂靱性値とは、変形モードI(開口型)の臨界応力強度のことを指している。
(5)構造周期の測定
上記(4)で得られた樹脂硬化物を染色後、薄切片化し、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて下記の条件で透過電子像を取得した。染色剤は、モルホロジーに充分なコントラストが付くよう、OsOとRuOを樹脂組成に応じて使い分けた。
・装置:H−7100透過型電子顕微鏡(日立(株)製)
・加速電圧:100kV
・倍率:10,000倍。
これにより、[A]リッチ相、[B]リッチ相および[E]リッチ相の構造周期を観察した。[A]、[B]および[E]の種類や比率により、樹脂硬化物の相分離構造は、両相連続構造や海島構造を形成するのでそれぞれについて以下のように測定した。
両相連続構造の場合、顕微鏡写真の上に所定の長さの直線をランダムに3本引き、その直線と相界面の交点を抽出し、隣り合う交点間の距離を測定し、これらの数平均値を構造周期とした。かかる所定の長さとは、顕微鏡写真を基に以下のようにして設定するものとした。構造周期が0.01μmオーダー(0.01μm以上0.1μm未満)と予想される場合、倍率を20,000倍で写真撮影し、写真上で引いた20mmの長さ(サンプル上1μmの長さ)をいい、同様にして、相分離構造周期が0.1μmオーダー(0.1μm以上1μm未満)と予想される場合、倍率を2,000倍で写真撮影し、写真上でランダムに20mmの長さ(サンプル上10μmの長さ)をいい、相分離構造周期が1μmオーダー(1μm以上10μm未満)と予想される場合、倍率を200倍で写真撮影し、写真上でランダムに20mmの長さ(サンプル上100μmの長さ)をいうものとした。もし、測定した相分離構造周期が予想したオーダーより外れていた場合、該当するオーダーに対応する倍率にて再度測定した。
海島構造の場合、顕微鏡写真の上にかかる所定の領域を3箇所選出し、その領域内の島相サイズの数平均値である。島相のサイズは、相界面から一方の相界面へ島相を通って引く最短距離の線の長さをいう。島相が楕円形、不定形、または、二層以上の円または楕円になっている場合であっても、相界面から一方の相界面へ島相を通る最短の距離を用いるものとした。かかる所定の領域とは、顕微鏡写真を基に以下のようにして設定するものとした。相分離構造周期が0.01μmオーダー(0.01μm以上0.1μm未満)と予想される場合、倍率を20,000倍で写真撮影し、写真上でランダムに選ばれる4mm四方の領域(サンプル上0.2μm四方の領域)をいい、同様にして、相分離構造周期が0.1μmオーダー(0.1μm以上1μm未満)と予想される場合、倍率を2,000倍で写真撮影し、写真上でランダムに選ばれる4mm四方の領域(サンプル上2μm四方の領域)をいい、相分離構造周期が1μmオーダー(1μm以上10μm未満)と予想される場合、倍率を200倍で写真撮影し、写真上でランダムに選ばれる4mm四方の領域(サンプル上20μm四方の領域)をいうものとした。もし、測定した相分離構造周期が予想したオーダーより外れていた場合、該当するオーダーに対応する倍率にて再度測定した。
(6)プリプレグの作製
エポキシ樹脂組成物を、リバースロールコーターを使用し離型紙状に塗布し、樹脂フィルムを作製した。次に、シート状に一方向に整列させた炭素繊維“トレカ(登録商標)”T800SC−24K(東レ(株)製、引張弾性率:294GPa、引張強度:5880MPa)に樹脂フィルム2枚を炭素繊維の両面から重ね、加熱加圧してエポキシ樹脂組成物を含浸させ、単位面積辺りの炭素繊維質量125g/m、繊維質量含有率75質量%の、T800SC使い一方向プリプレグを作製した。また、炭素繊維としてT700SC−24K(東レ(株)製、引張弾性率:230GPa、引張強度:4900MPa)を用いたこと以外は上記と同様にして、単位面積辺りの炭素繊維質量125g/m、繊維質量含有率75質量%の、T700SC使い一方向プリプレグも作製した。
(7)一方向積層板の作製
次の(a)および(b)の操作により作成した。
(a)上記(6)で作成した一方向プリプレグを、繊維方向を揃えて20ply積層した。
(b)積層したプリプレグをナイロンフィルムで隙間のないように覆った。これをオートクレーブ中で135℃、内圧588kPaで2時間加熱加圧して硬化し、一方向積層板を作製した。
(8)円筒シャルピー衝撃試験用繊維強化複合材料製管状体の作製
次の(a)〜(e)の操作により、T800SC使い一方向プリプレグを、繊維方向が円筒軸方向に対して45°および−45°になるよう、各3plyを交互に積層し、さらにT800SC使い一方向プリプレグを、繊維方向が円筒軸方向に対して平行になるよう、3plyを積層し、内径が6.3mmの繊維強化複合材料製管状体を作製した。マンドレルは、直径6.3mm、長さ1000mmのステンレス製丸棒を使用した。
(a)上記(6)に従い作製したT800SC使い一方向プリプレグから、縦104mm、横800mmの長方形の形状(長辺の方向に対して繊維軸方向が45度となるように)に2枚切り出した。この2枚のプリプレグの繊維の方向をお互いに交差するように、かつ短辺方向に10mm(マンドレル半周分)ずらして張り合わせた。
(b)離型処理したマンドレルに張り合わせたプリプレグの長方形形状の長辺とマンドレル軸方向が同一方向になるように、マンドレルを捲回した。
(c)その上に、上記(6)に従い作製したT800SC使い一方向プリプレグを縦114mm、横800mmの長方形形状(長辺方向が繊維軸方向となる)に切り出したものを、その繊維の方向がマンドレル軸の方向と同一になるように、マンドレルに捲回した。
(d)さらに、その上から、ラッピングテープ(耐熱性フィルムテープ)を巻きつけて捲回物を覆い、硬化炉中、特に断らない限り、130℃で90分間、加熱成形した。なお、ラッピングテープの幅は15mm、張力は34N、巻き付けピッチ(巻き付け時のずれ量)は2.0mmとし、これを2plyラッピングした。
(e)この後、マンドレルを抜き取り、ラッピングテープを除去して繊維強化複合材料製管状体を得た。
また、T700SC使い一方向プリプレグを用いたこと以外は、上記(a)〜(e)の操作を同様にしてT700SC使い繊維強化複合材料製管状体も作製した。
(9)繊維強化複合材料製管状体のシャルピー衝撃試験
上記(8)で得た繊維強化複合材料製管状体を60mmでカットし、内径6.3mm、長さ60mmの試験片を作製した。秤量300kg・cmで管状体の側面から衝撃を与えてシャルピー衝撃試験を行った。振り上がり角から、下記の式、
E=WR[(cosβ−cosα)−(cosα'−cosα)(α+β)/(α+α')]
E:吸収エネルギー(J)
WR:ハンマーの回転軸の周りのモーメント(N・m)
α:ハンマーの持ち上げ角度(°)
α’:ハンマーの持ち上げ角αから空振りさせたときの振り上がり角(°)
β:試験片破断後のハンマーの振り上がり角(°)
に従って衝撃の吸収エネルギーを計算した。なお、試験片にはノッチ(切り欠き)は導入していない。測定数はn=5で行い、平均値で比較した。
(10)繊維強化複合材料の0°曲げ強度の測定方法
繊維強化複合材料の曲げ強度の指標として、一方向材の繊維強化複合材料の0°曲げ強度を測定した。一方向積層板を、厚み2mm、幅15mm、長さ100mmとなるように切り出した。インストロン万能試験機(インストロン社製)を用い、クロスヘッド速度5.0mm/分、スパン80mm、圧子径10mm、支点径 4mmで測定を行ない、曲げ強度を計算した。また、作製したプリプレグの目付に基づいて、実Vfを求めた後、得られた曲げ強度をVf60%に換算した。
(11)軟化点測定(環球法)
環球法JIS−K7234(2008年)にて測定した。結果を表1に示す。
(12)樹脂硬化物のエポキシ成分のガラス転移温度の測定
上記(3)と同様の方法で作製した樹脂硬化物をダイヤモンドカッターで幅13mm、長さ35mmに切り出し、かかる樹脂硬化物を動的粘弾性測定装置(DMAQ800:ティー・エイ・インスツルメンツ社製)を用い、40℃〜250℃まで昇温速度5℃/分で昇温し、周波数1.0Hzの曲げモードでガラス転移温度の測定を行った。このときの貯蔵弾性率のオンセット温度をガラス転移温度とした。表2〜4にその結果を示す。ただし、相分離構造を有する樹脂硬化物のガラス転移温度測定では、樹脂硬化物のガラス転移温度が2つ生じる場合があり、表2〜4に記載のガラス転移温度は、低い方のガラス転移温度である。
(12)樹脂硬化物のSP値の計算方法
樹脂硬化物のSP値は、Polym.Eng.Sci.,14(2),147−154(1974)に記載された、Fedorsの方法に基づき、分子構造から算出した。エポキシ樹脂に対して活性水素基が1当量となる量の硬化剤とを硬化させたときの樹脂硬化物のSP値を表1に示す。なお、DICYとエポキシ基との反応により形成される分子構造は、Thomas Guthner and Benedikt Hammer,J.Appl..Poly.Sci.,50,1453(1993)に記載の分子構造を採用した。
(実施例1)
[A]としてjER1007を40部、[B]としてjER630を20部、[C]としてエピクロン830を40部、硬化剤[D]としてDICY7を全エポキシ樹脂成分のエポキシ基に対し、活性水素基が0.9当量となる量、硬化促進剤としてDCMU99を2部用いて、エポキシ樹脂組成物を調製した。得られたエポキシ樹脂組成物の80℃での粘度は良好であった。得られたエポキシ樹脂組成物を2.5℃/分で昇温し、130℃、90分硬化した。得られた樹脂硬化物は、微細な相分離構造を形成し、力学特性は良好であった。その結果、得られたエポキシ樹脂組成物と炭素繊維T800SC−24Kを用いて作製した繊維強化複合材料製管状体の耐衝撃特性および一方向積層板の0°曲げ強度も良好であった。
(実施例2)
[A]としてjER1007を20部、[B]としてELM434を60部、[C]としてエピクロン830を20部、硬化剤[D]としてDICY7を全エポキシ樹脂成分のエポキシ基に対し、活性水素基が0.9当量となる量、硬化促進剤としてDCMU99を2部用いて、エポキシ樹脂組成物を調製した。得られたエポキシ樹脂組成物の80℃での粘度は良好であった。得られたエポキシ樹脂組成物を実施例1と同様の条件で硬化した。得られた樹脂硬化物は、微細な相分離構造を形成し、実施例1と比較して[B]の質量部数の増加により、樹脂弾性率が向上した。その結果、得られたエポキシ樹脂組成物と炭素繊維T800SC−24Kを用いて作製した一方向積層板の0°曲げ強度が向上した。
(実施例3)
[A]としてjER4010Pを10部、[B]としてELM434を50部、[C]としてエピクロン830を40部、硬化剤[D]としてDICY7を全エポキシ樹脂成分のエポキシ基に対し、活性水素基が0.9当量となる量、硬化促進剤としてDCMU99を2部用いて、エポキシ樹脂組成物を調製した。得られたエポキシ樹脂組成物の80℃での粘度は良好であった。得られたエポキシ樹脂組成物を実施例1と同様の条件で硬化した。得られた樹脂硬化物は、微細な相分離構造を形成し、良好な力学特性であった。その結果、得られたエポキシ樹脂と炭素繊維T800SC−24Kを用いて作製した繊維強化複合材料製管状体の耐衝撃特性および一方向積層板の0°曲げ強度も良好であった。
(実施例4)
[A]としてjER1007を60部、[B]としてjER630を30部、[C]としてエピクロン830を10部、硬化剤[D]としてDICY7を全エポキシ樹脂成分のエポキシ基に対し、活性水素基が0.9当量となる量、硬化促進剤としてDCMU99を2部用いて、エポキシ樹脂組成物を調製した。得られたエポキシ樹脂組成物の80℃での粘度は良好であった。得られたエポキシ樹脂組成物を実施例1と同様の条件で硬化した。得られた樹脂硬化物は、微細な相分離構造を形成し、良好な力学特性であった。その結果、得られたエポキシ樹脂と炭素繊維T800SC−24Kを用いて作製した繊維強化複合材料製管状体の耐衝撃特性および一方向積層板の0°曲げ強度も良好であった。
(実施例5)
[A]としてjER4007Pを20部、[B]としてMY0500を30部、[C]としてエピクロン830を50部、硬化剤[D]としてDICY7を全エポキシ樹脂成分のエポキシ基に対し、活性水素基が0.9当量となる量、硬化促進剤としてDCMU99を2部用いて、エポキシ樹脂組成物を調製した。得られたエポキシ樹脂組成物の80℃での粘度は良好であった。得られたエポキシ樹脂組成物を実施例1と同様の条件で硬化した。得られた樹脂硬化物は、微細な相分離構造を形成し、力学特性は良好であった。その結果、得られたエポキシ樹脂と炭素繊維T800SC−24Kを用いて作製した繊維強化複合材料製管状体の耐衝撃特性および一方向積層板の0°曲げ強度も良好であった。
(実施例6)
[A]としてjER1007を30部、[B]としてMY0500を40部、[C]としてエピクロン830を30部、硬化剤[D]としてDICY7を全エポキシ樹脂成分のエポキシ基に対し、活性水素基が0.9当量となる量、硬化促進剤としてDCMU99を2部用いて、エポキシ樹脂組成物を調製した。得られたエポキシ樹脂組成物の80℃での粘度は良好であった。得られたエポキシ樹脂組成物を実施例1と同様の条件で硬化した。得られた樹脂硬化物は、微細な相分離構造を形成し、力学特性は良好であった。その結果、得られたエポキシ樹脂と炭素繊維T800SC−24Kを用いて作製した繊維強化複合材料製管状体の耐衝撃特性および一方向積層板の0°曲げ強度も良好であった。
(実施例7)
[A]としてjER4007Pを30部用いた以外は、実施例6と同様に、エポキシ樹脂組成物を調製した。得られたエポキシ樹脂組成物の80℃での粘度は良好であった。得られたエポキシ樹脂組成物を実施例1と同様の条件で硬化した。得られた樹脂硬化物は、微細な相分離構造を形成し、実施例6と比較して、弾性率が向上した。その結果、得られたエポキシ樹脂と炭素繊維T800SC−24Kを用いて作製した一方向積層板の0°曲げ強度が向上した。
(実施例8)
[A]としてjER4007Pを40部、[B]としてELM434を40部、[C]としてjER152を20部、硬化剤[D]としてDICY7を全エポキシ樹脂成分のエポキシ基に対し、活性水素基が0.9当量となる量、硬化促進剤としてDCMU99を2部用いて、エポキシ樹脂組成物を調製した。得られたエポキシ樹脂組成物の80℃での粘度は良好であった。得られたエポキシ樹脂組成物を実施例1と同様の条件で硬化した。得られた樹脂硬化物は、微細な相分離構造を形成し、良好な力学特性であった。その結果、得られたエポキシ樹脂と炭素繊維T800SC−24Kを用いて作製した繊維強化複合材料製管状体の耐衝撃特性および一方向積層板の0°曲げ強度も良好であった。
(実施例9)
[C]としてエピクロン830を20部用いた以外は、実施例8と同様に、エポキシ樹脂組成物を調製した。得られたエポキシ樹脂組成物の80℃での粘度は良好であった。得られたエポキシ樹脂組成物を実施例1と同様の条件で硬化した。得られた樹脂硬化物は、微細な相分離構造を形成し、実施例8と比較して、弾性率が向上した。その結果、得られたエポキシ樹脂と炭素繊維T800SC−24Kを用いて作製した一方向積層板の0°曲げ強度も向上した。
(実施例10)
[B]としてMY0500を40部用いた以外は、実施例9と同様にして、エポキシ樹脂組成物を調製した。得られたエポキシ樹脂組成物の80℃での粘度は良好であった。得られたエポキシ樹脂組成物を実施例1と同様の条件で硬化した。得られた樹脂硬化物は、微細な相分離構造を形成し、実施例9と比較して樹脂弾性率が向上した。その結果、得られたエポキシ樹脂と炭素繊維T800SC−24Kを用いて作製した一方向積層板の0°曲げ強度も実施例9と比較して向上した。
(実施例11)
[B]としてjER630を40部用いた以外は、実施例10と同様にして、エポキシ樹脂組成物を調製した。得られたエポキシ樹脂組成物の80℃での粘度は良好であった。得られたエポキシ樹脂組成物を実施例1と同様に硬化した。得られた樹脂硬化物は、微細な相分離構造を形成し、実施例10と比較して樹脂弾性率が向上した。その結果、得られたエポキシ樹脂と炭素繊維T800SC−24Kを用いて作製した一方向積層板の0°曲げ強度も実施例10と比較して向上した。
(実施例12)
[A]としてjER4010Pを40部用いた以外は、実施例10と同様にして、エポキシ樹脂組成物を調製した。得られたエポキシ樹脂組成物の80℃での粘度は良好であった。得られたエポキシ樹脂組成物を実施例1と同様の条件で硬化した。得られた樹脂硬化物は、微細な相分離構造を形成し、実施例10と比較して樹脂靱性値が向上した。その結果、得られたエポキシ樹脂と炭素繊維T800SC−24Kを用いて作製した繊維強化複合材料製管状体の耐衝撃特性が実施例10と比較して向上した。
(実施例13)
[B]として3,3’−TGDDEを40部用いた以外は、実施例9と同様にして、エポキシ樹脂組成物を調製した。得られたエポキシ樹脂組成物の80℃での粘度は良好であった。得られたエポキシ樹脂組成物を実施例1と同様に硬化した。得られた樹脂硬化物は、微細な相分離構造を形成し、実施例3対比樹脂弾性率が向上した。その結果、得られたエポキシ樹脂と炭素繊維T800SC−24Kを用いて作製した一方向積層板の0°曲げ強度が実施例3対比向上した。
(実施例14)
[A]としてjER4007Pを45部、[B]としてMY0500を45部、[C]としてエピクロン830を10部、硬化剤[D]としてDICY7を全エポキシ樹脂成分のエポキシ基に対し、活性水素基が0.9当量となる量、硬化促進剤としてDCMU99を2部用いて、エポキシ樹脂組成物を調製した。得られたエポキシ樹脂組成物の80℃での粘度は良好であった。得られたエポキシ樹脂組成物を実施例1と同様の条件で硬化した。得られた樹脂硬化物は、微細な相分離構造を形成し、良好な樹脂靱性値と弾性率を有していた。その結果、得られたエポキシ樹脂組成物と炭素繊維としてT700SC−24Kからなるプリプレグを用いて作製した繊維強化複合材料製管状体の耐衝撃特性および一方向積層板の0°曲げ強度は、良好であった。
(実施例15)
炭素繊維としてT800SC−24Kを用いた以外は、実施例14と同様に繊維強化複合材料を得た。得られたエポキシ樹脂組成物の80℃での粘度は良好であった。得られた繊維強化複合材料製管状体の耐衝撃特性および一方向積層板の0°曲げ強度は、実施例14と比較して向上した。
(実施例16)
[A]としてjER4007Pを30部、[B]としてMY0500を50部、[C]としてエピクロン830を20部、硬化剤[D]としてDICY7を全エポキシ樹脂成分のエポキシ基に対し、活性水素基が0.9当量となる量、硬化促進剤としてDCMU99を2部用いて、エポキシ樹脂組成物を調製した。得られたエポキシ樹脂組成物の80℃での粘度は良好であった。得られたエポキシ樹脂組成物を実施例1と同様の条件で硬化した。得られた樹脂硬化物は、微細な相分離構造を形成し、実施例7と比較して、弾性率が向上した。その結果、得られたエポキシ樹脂と炭素繊維T800SC−24Kを用いて作製した一方向積層板の0°曲げ強度も向上した。
(実施例17)
[A]としてjER4007Pを50部、[B]としてMY0500を30部、[C]としてエピクロン830を20部、硬化剤[D]としてDICY7を全エポキシ樹脂成分のエポキシ基に対し、活性水素基が0.9当量となる量、硬化促進剤としてDCMU99を2部用いて、エポキシ樹脂組成物を調製した。得られたエポキシ樹脂組成物の80℃での粘度は良好であった。得られたエポキシ樹脂組成物を実施例1と同様の条件で硬化した。得られた樹脂硬化物は、微細な相分離構造を形成し、実施例16と比較して樹脂靱性値が向上した。その結果、得られたエポキシ樹脂と炭素繊維T800SC−24Kを用いて作製した繊維強化複合材料製管状体の耐衝撃特性が実施例16対比向上した。
(実施例18)
[A]としてjER4007Pを20部、[B]としてjER630を40部、[C]としてエピクロン830を40部、硬化剤[D]としてDICY7を全エポキシ樹脂成分のエポキシ基に対し、活性水素基が0.9当量となる量、硬化促進剤としてDCMU99を2部用いて、エポキシ樹脂組成物を調製した。得られたエポキシ樹脂組成物を実施例1と同様の条件で硬化した。得られた樹脂硬化物は、微細な相分離構造を形成し、良好な力学特性を有していた。しかし、エポキシ樹脂組成物の80℃での粘度が2Pa・sと低かったため、作製したプリプレグにわずかに割れが生じた。なお、得られたエポキシ樹脂と炭素繊維T800SC−24Kを用いて作製した繊維強化複合材料製管状体の耐衝撃特性および一方向積層板の0°曲げ強度は良好であった。
(実施例19)
[C]としてエピクロン830を20部、その他のエポキシ樹脂としてjER1031Sを20部用いた以外は実施例18と同様に、エポキシ樹脂組成物を調製した。得られたエポキシ樹脂組成物を実施例1と同様の条件で硬化した。得られた樹脂硬化物は、微細な相分離構造を形成し、実施例18と比較し弾性率はやや低下するが、ガラス転移温度が向上した。得られたエポキシ樹脂と炭素繊維T800SC−24Kを用いて作製した繊維強化複合材料製管状体の耐衝撃特性および一方向積層板の0°曲げ強度も良好であった。さらに得られたエポキシ樹脂組成物の80℃における粘度は16Pa・sと良好な粘度であったため、繊維強化複合材料製管状体の耐衝撃特性および一方向積層板の0°曲げ強度は、実施例18と比較して向上した。
(実施例20)
その他の成分として熱可塑樹脂であるポリビニルホルマール樹脂PVF−Kを10部添加した以外は、実施例18と同様に、エポキシ樹脂組成物を調製した。得られたエポキシ樹脂組成物の80℃での粘度は良好であった。得られたエポキシ樹脂組成物を実施例1と同様の条件で硬化した。得られた樹脂硬化物は、微細な相分離構造を形成し、力学特性は良好であった。さらに得られたエポキシ樹脂組成物の80℃における粘度は31Pa・sと適正な粘度であったため、繊維強化複合材料製管状体の耐衝撃特性および一方向積層板の0°曲げ強度は、実施例18と比較して向上した。
(実施例21)
[A]としてjER1007を30部、[B]としてELM434を40部、[C]としてエピクロン830を30部、硬化剤[D]としてDICY7を全エポキシ樹脂成分のエポキシ基に対し、活性水素基が0.9当量となる量、硬化促進剤としてDCMU99を2部用いて、エポキシ樹脂組成物を調製した。得られたエポキシ樹脂組成物の80℃での粘度は良好であった。得られたエポキシ樹脂組成物を実施例1と同様の条件で硬化した。得られた樹脂硬化物は、微細な相分離構造を形成し、良好な樹脂靱性値と弾性率を有していた。その結果、得られたエポキシ樹脂組成物と炭素繊維としてT800SC−24Kからなるプリプレグを用いて作製した繊維強化複合材料製管状体の耐衝撃特性および一方向積層板の0°曲げ強度は、良好であった。
(実施例22)
[A]としてjER4007Pを20部、[B]としてjER630を40部、[C]としてエピクロン830を40部、硬化剤[D]としてDICY7を全エポキシ樹脂成分のエポキシ基に対し、活性水素基が0.9当量となる量、ブロック共重合体[E]としてS−B−M共重合体を3部、硬化促進剤としてDCMU99を2部用いて、エポキシ樹脂組成物を調製した。得られたエポキシ樹脂組成物の80℃での粘度は良好であった。得られたエポキシ樹脂組成物を実施例1と同様の条件で硬化した。得られた樹脂硬化物は、微細な相分離構造を形成し、実施例20と比較し樹脂靱性値が向上した。その結果、得られたエポキシ樹脂組成物と炭素繊維としてT800SC−24Kからなるプリプレグを用いて作製した繊維強化複合材料製管状体の耐衝撃特性は、実施例20と比較し向上した。
(実施例23)
ブロック共重合体 [E]としてM−B−M共重合体を3部用いた以外は、実施例20と同様に、エポキシ樹脂組成物を調製した。得られたエポキシ樹脂組成物の80℃での粘度は良好であった。得られたエポキシ樹脂組成物を実施例1と同様の条件で硬化した。得られた樹脂硬化物は、微細な相分離構造を形成し、実施例20と比較し樹脂靱性値が向上した。その結果、得られたエポキシ樹脂組成物と炭素繊維としてT800SC−24Kからなるプリプレグを用いて作製した繊維強化複合材料製管状体の耐衝撃特性は、実施例20と比較し向上した。
(実施例24)
ブロック共重合体 [E]としてM−B−M共重合体を10部用いた以外は、実施例23と同様に、エポキシ樹脂組成物を調製した。得られたエポキシ樹脂組成物の80℃での粘度は良好であった。得られたエポキシ樹脂組成物を実施例1と同様の条件で硬化した。得られた樹脂硬化物は、微細な相分離構造を形成し、実施例23と比較し樹脂靱性値が大きく向上した。その結果、得られたエポキシ樹脂組成物と炭素繊維としてT800SC−24Kからなるプリプレグを用いて作製した繊維強化複合材料製管状体の耐衝撃特性は、実施例23と比較し向上した。
(比較例1)
[B]としてELM434を40部、[C]としてエピクロン830を20部、その他のエポキシ樹脂として軟化点90℃以下のjER1001を40部、硬化剤[D]としてDICY7を全エポキシ樹脂成分のエポキシ基に対し、活性水素基が0.9当量となる量、硬化促進剤としてDCMU99を2部用いて、エポキシ樹脂組成物を調製した。かかるエポキシ樹脂組成物を実施例1と同様の条件で硬化した。エポキシ樹脂[A]を用いなかったため、得られた樹脂硬化物は、相分離せず均一なものとなり、樹脂靱性値が不足した。その結果、繊維強化複合材料製管状体の耐衝撃特性が不足した。
(比較例2)
[A]としてjER4007Pを30部、[C]としてエピクロン830を20部、その他のエポキシ樹脂としてEX731を40部、硬化剤[D]としてDICY7を全エポキシ樹脂成分のエポキシ基に対し、活性水素基が0.9当量となる量、硬化促進剤としてDCMU99を2部用いて、エポキシ樹脂組成物を調製した。かかるエポキシ樹脂組成物を実施例1と同様の条件で硬化した。EX731の軟化点が50℃を越えるため、得られた樹脂硬化物は、相分離せず均一なものとなり、樹脂靱性値は不足した。その結果、繊維強化複合材料製管状体の耐衝撃特性が不足した。
(比較例3)
[A]としてjER1007を40部、[C]としてエピクロン830を30部、硬化剤[D]としてDICY7を全エポキシ樹脂成分のエポキシ基に対し、活性水素基が0.9当量となる量、硬化促進剤としてDCMU99を2部、その他のエポキシ樹脂としてEX821を30部用いて、エポキシ樹脂組成物を調製した。かかるエポキシ樹脂組成物を実施例1と同様の条件で硬化した。EX821のSP値と[A]のSP値との差が1.2に満たないため、得られた樹脂硬化物は、相分離せず均一なものとなり、弾性率が不足した。その結果、一方向積層板の0°曲げ強度が不足した。
(比較例4)
[B]としてMY0500を40部、[C]としてエピクロン830を20部、硬化剤[D]としてDICY7を全エポキシ樹脂成分のエポキシ基に対し、活性水素基が0.9当量となる量、硬化促進剤としてDCMU99を2部、その他のエポキシ樹脂としてEX731を40部用いて、エポキシ樹脂組成物を調製した。かかるエポキシ樹脂組成物を実施例1と同様の条件で硬化した。EX731のSP値と[B]のSP値との差が1.2に満たないため、得られた樹脂硬化物は、相分離せず均一なものとなり、樹脂靱性値が不足した。その結果、繊維強化複合材料製管状体の耐衝撃特性が不足した。
(比較例5)
[A]としてjER1007を50部、[B]としてELM434を50部、硬化剤[D]としてDICY7を全エポキシ樹脂成分のエポキシ基に対し、活性水素基が0.9当量となる量、硬化促進剤としてDCMU99を2部用いて、エポキシ樹脂組成物を調製した。得られたエポキシ樹脂組成物を実施例1と同様の条件で硬化した。エポキシ樹脂[C]を添加していないために、得られた樹脂硬化物は、粗大相分離構造を形成し、弾性率が不足した。さらにエポキシ樹脂組成物の80℃での粘度が200Pa・sを越えたために、繊維強化複合材料にボイドが生じた。その結果、繊維強化複合材料の力学特性が不足した。
(比較例6)
[A]としてjER4007Pを40部、[B]としてMY0500を40部、硬化剤[D]としてDICY7を全エポキシ樹脂成分のエポキシ基に対し、活性水素基が0.9当量となる量、硬化促進剤としてDCMU99を2部、その他のエポキシ樹脂としてEX821を20部用いて、エポキシ樹脂組成物を調製した。得られたエポキシ樹脂組成物を実施例1と同様の条件で硬化した。得られた樹脂硬化物は、微細な相分離構造を形成したが、EX821と、EX821に対して0.9当量のジシアンジアミドと、EX821 100質量部に対して2質量部のDCMUを有してなるエポキシ樹脂組成物を、室温から130℃まで2.5℃/分で昇温し、130℃で90分間反応させて得られる樹脂硬化物の弾性率が2.8GPaであったため、実施例10と比較して弾性率が不足した。その結果、一方向積層板の0°曲げ強度が不足した。
(比較例7)
[B]としてELM434を20部、[C]としてエピクロン830を45部、その他のエポキシ樹脂としてjER4004Pを35部、硬化剤[D]としてDICY7を全エポキシ樹脂成分のエポキシ基に対し、活性水素基が0.9当量となる量、硬化促進剤としてDCMU99を3部用いて、エポキシ樹脂組成物を調製した。得られたエポキシ樹脂組成物を実施例1と同様の条件で硬化した。得られた樹脂硬化物は、[A]を用いていないために、均一構造を形成し、弾性率と樹脂靱性値が不足した。その結果、得られたエポキシ樹脂と炭素繊維T800SC−24Kを用いて作製した一方向積層板の0°曲げ強度および繊維強化複合材料製管状体の耐衝撃特性が不足した。
Figure 2012197413
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Figure 2012197413
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本発明のエポキシ樹脂組成物は、高い弾性率と高い靱性を有し、さらに低粘度であるため、高繊維含有率のプリプレグ成形を可能にする。このため、エポキシ樹脂組成物と強化繊維を組み合わせることにより、優れた耐衝撃性と強度を併せ持つ繊維強化複合材料を得ることができる。このため、得られる繊維強化複合材料は、スポーツ用途、一般産業用途、さらに航空機用途に好ましく用いられる。

Claims (10)

  1. エポキシ樹脂[A]、エポキシ樹脂[B]、エポキシ樹脂[C]および硬化剤[D]を含み、かつ、以下の条件(1)〜(4)を満たすエポキシ樹脂組成物。
    (1)エポキシ樹脂[B]を硬化剤[D]と反応し硬化させて得られる樹脂硬化物[B’]のSP値が、エポキシ樹脂[A]と[C]をそれぞれ硬化剤[D]と反応し硬化させて得られる樹脂硬化物[A’]、[C’]のいずれのSP値に対してよりも1.2以上大きい
    (2)エポキシ樹脂[A]の軟化点が90℃以上であり、かつエポキシ樹脂[B]と[C]の軟化点がいずれも50℃以下である。
    (3)エポキシ樹脂[C]と、エポキシ樹脂[C]の全エポキシ基に対し活性水素基が0.9当量のジシアンジアミドと、エポキシ樹脂[C]100質量部に対して2質量部のDCMUを有してなるエポキシ樹脂組成物を、室温から130℃まで2.5℃/分で昇温し、130℃で90分間反応させて得られる樹脂硬化物の弾性率が、3.5GPa以上である
    (4)エポキシ樹脂組成物を硬化させて得られる樹脂硬化物が、[A]リッチ相と[B]リッチ相を含む相分離構造を有し、その相分離構造周期が1nm〜1μmである。
  2. 前記エポキシ樹脂組成物において、下記に示すエポキシ樹脂[A]〜[C]が全エポキシ樹脂成分100質量部に対して、以下の配合比を満たす、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
    [A]ビスフェノール型エポキシ樹脂 20〜50質量部
    [B]3官能以上のアミン型エポキシ樹脂 30〜50質量部
    [C]数平均分子量450以下のビスフェノールF型エポキシ樹脂 10〜40質量部
    (但し、エポキシ樹脂[A]〜[C]の合計量が100質量部を超えることはない。)
  3. エポキシ樹脂[B]が3官能のアミノフェノール型エポキシ樹脂である、請求項1または2に記載のエポキシ樹脂組成物。
  4. 硬化剤[D]がジシアンジアミドまたはその誘導体である、請求項1〜3のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
  5. さらに、S−B−M、B−MおよびM−B−Mからなる群から選ばれる少なくとも1種のブロック共重合体 [E](ここで、前記の各ブロックは共有結合によって連結されるか、一方のブロックに一つの共有結合形成を介して結合され、他方のブロックに他の共有結合形成を介して結合された中間分子によって連結されており、ブロックMはポリメタクリル酸メチルのホモポリマーまたは、メタクリル酸メチルを少なくとも50質量%含むコポリマーからなるブロックであり、ブロックBはブロックMに非相溶で、そのガラス転移温度が20℃以下であり、ブロックSはブロックBおよびMに非相溶で、かつ、そのガラス転移温度が、ブロックBのガラス転移温度よりも高いブロックである)を、全エポキシ樹脂成分100質量部に対して1〜10質量部含む、請求項1〜4に記載のエポキシ樹脂組成物。
  6. 前記ブロック共重合体[E]が、M−B−Mで表されるブロック共重合体であり、Mブロックがメタクリル酸メチルよりもSP値の高いモノマーを共重合成分として含有する、請求項5に記載のエポキシ樹脂組成物。
  7. エポキシ樹脂[A]〜[C]および硬化剤[D]、またはエポキシ樹脂[A]〜[C]と硬化剤[D]およびブロック共重合体[E]を調製して得られる、エポキシ樹脂組成物の80℃の粘度が0.5〜200Pa・sであり、かつ、エポキシ樹脂[A]〜[C]、またはエポキシ樹脂[A]〜[C]およびブロック共重合体[E]からなるエポキシ樹脂組成物を硬化剤[D]と反応し硬化させて得られる樹脂硬化物の樹脂靱性値が1.3MPa・m0.5以上である、請求項1〜6のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物と強化繊維からなるプリプレグ。
  9. 請求項8に記載のプリプレグを硬化させてなる繊維強化複合材料。
  10. 請求項1〜7のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を硬化させて得られる樹脂硬化物と、強化繊維からなる繊維強化複合材料。
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