JP2012195243A - 電池用分散剤、及びそれを用いた電池用組成物、及びリチウム二次電池 - Google Patents

電池用分散剤、及びそれを用いた電池用組成物、及びリチウム二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】導電助剤の導電性を阻害せずに分散安定化を図り導電助剤の電解液に対する濡れ性を向上させた電池用分散剤を提供する。
【解決手段】以下の式で示される電池用分散剤。
Figure 2012195243

(式中、X1、X2、およびX3は、それぞれ独立に、−SO31、−COOY2、−P(O)(OY3、もしくは−OY4を有してもよいアリール基などで表される基または水素原子を表す。)
【選択図】なし

Description

本発明は、電池を構成する電極を作製するために使用する電池用分散剤、組成物およびその製造方法に関する。特に、本発明の電極用組成物は、リチウム二次電池の作製に好適に用いられる。また、本発明は、大電流での放電特性あるいは充電特性、サイクル特性、および電極合材の導電性に優れ、電極集電体と電極合材との接触抵抗が小さい電極を具備するリチウム二次電池に関する。
近年、デジタルカメラや携帯電話のような小型携帯型電子機器が広く用いられるようになってきた。これらの電子機器には、容積を最小限にし、かつ重量を軽くすることが常に求められてきており、搭載される電池においても、小型、軽量かつ大容量の電池の実現が求められている。また、自動車搭載用などの大型二次電池においても、従来の鉛蓄電池に代えて、大型の非水電解質二次電池の実現が望まれている。
そのような要求に応えるため、リチウム二次電池の開発が活発に行われている。リチウム二次電池の電極としては、リチウムイオンを含む正極活物質と導電助剤と有機バインダーなどからなる電極合材を金属箔の集電体の表面に固着させた正極、及び、リチウムイオンの脱挿入可能な負極活物質と導電助剤と有機バインダーなどからなる電極合材を金属箔の集電体の表面に固着させた負極が使用されている。
一般的に、正極活物質としては、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム等のリチウム遷移金属複合酸化物が用いられているが、これらは電子伝導性が低く、単独での使用では十分な電池性能が得られない。そこで、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック)やグラファイト(黒鉛)等の炭素材料を導電助剤として添加することで導電性を改善し、電極の内部抵抗を低減することが試みられている。
この様に、とりわけ電極の内部抵抗を低減することは、大電流での放電を可能とすることや、充放電の効率を向上させる上で非常に重要な要素の一つとなっている。
しかしながら、導電性に優れた炭素材料(導電助剤)は、ストラクチャーや比表面積が大きいため凝集力が強く、リチウム二次電池の電極合材形成用スラリー中に均一混合・分散することが困難である。そして、導電助剤である炭素材料の分散性や粒度の制御が不十分な場合、均一な導電ネットワークが形成さないために電極の内部抵抗の低減が図れず、その結果、活物質であるリチウム遷移金属複合酸化物やグラファイトなどの性能を十分に引き出せないという問題が生じている。また、電極合材中の導電助剤の分散が不十分であると、部分的凝集に起因して電極板上に抵抗分布が生じ、電池として使用した際に電流が集中し、部分的な発熱および劣化が促進される等の不具合が生ずることがある。
また、金属箔などの電極集電体上に電極合材層を形成する場合、多数回充放電を繰り返すと、集電体と電極合材層の界面や、電極合材内部における活物質と導電助剤界面の密着性が悪化し、電池性能が低下する問題がある。これは、充放電におけるリチウムイオンのドープ、脱ドープにより活物質および電極合材層が膨張、収縮を繰り返すために、電極合材層と集電体界面および、活物質と導電助剤界面に局部的なせん断応力が発生し界面の密着性が悪化するためと考えられている。そしてこの場合も、導電助剤の分散が不十分であると、密着低下が著しくなる。これは、粗大な凝集粒子が存在すると、応力が緩和されにくくなるためであると思われる。
また、電極集電体と電極合材間の問題として、例えば正極の集電体としてアルミニウムを用いると、この表面に絶縁性の酸化皮膜が形成され、電極集電体と電極合材間の接触抵抗が上昇するといった問題もある。
前述の様な電極集電体と電極合材間の不具合に対して、いくつかの提案がなされている。例えば特許文献1および特許文献2には、カーボンブラック等の導電剤を分散した塗膜を、電極下地層として集電極上に形成する方法が試みられているが、この場合も導電剤の分散が悪いと十分な効果が得られない。
リチウム二次電池においては導電助剤である炭素材料の分散が重要なポイントの一つである。特許文献3、特許文献4には、カーボンブラックを溶剤に分散する際に、分散剤として界面活性剤を用いる例が記載されている。しかしながら、界面活性剤は炭素材料表面への吸着力が弱いため、良好な分散安定性を得るには界面活性剤の添加量を多くしなければならず、この結果、含有可能な活物質の量が少なくなり、電池容量が低下してしまう。また、界面活性剤の炭素材料への吸着が不十分であると、炭素材料が凝集してしまう。また、一般的な界面活性剤では、水溶液中での分散と比較して、有機溶剤中での分散効果が著しく低い。
また、特許文献5および特許文献6には、カーボンブラックを溶剤に分散する際に、分散樹脂を添加することでカーボンスラリーの分散状態を改善し、そのカーボンスラリーと、活物質とを混合して、電極用合材を作成する方法が開示されている。しかしながら、この方法では、カーボンブラックの分散性は向上するものの、比表面積の大きな微細なカーボンブラックの分散を行う場合には大量の分散樹脂が必要となること、および分子量の大きな分散樹脂がカーボンブラック表面を被覆してしまうことなどから、導電ネットワークが阻害され電極の抵抗が増大し、結果的にカーボンブラックの分散向上による効果を相殺してしまう場合がある。
更に、電極材料の分散性の向上と併せて、充放電の効率を向上させる上で重要な要素としては、電極の電解液に対する濡れ性の向上が挙げられる。電極反応は、電極材料表面と電解液との接触界面で起こるため、電解液が電極内部まで浸透し電極材料が良く濡れることが重要となる。電極反応を促進させる方法としては、微細な活物質や導電助剤を用いて電極の表面積を増大させる方法が検討されているが、特に炭素材料を用いる場合は、電解液に対する濡れが悪く、実際の接触面積が大きくならないため、電池性能の向上が難しいといった問題がある。
電極の濡れ性を改善する方法として、特許文献7には、電極中に繊維径1〜1000nmの炭素繊維を含有させることで、活物質粒子間に微細な空隙を持たせる方法が開示されている。しかしながら、通常、炭素繊維は複雑に絡み合っているため、均一な分散が難しく、炭素繊維を混ぜるだけでは、均一な電極を作製することができない。また、同文献では、分散制御のために炭素繊維の表面を酸化処理した炭素繊維を使用する方法も挙げられているが、炭素繊維を直接、酸化処理すると、炭素繊維の導電性や強度が低下してしまうという問題がある。また、特許文献8には、炭素粉末を主剤とする負極材料に高級脂肪酸アルカリ塩の様な界面活性剤を吸着させ、濡れ性を改善する方法が開示されているが、上述したように界面活性剤は特に非水系での分散性能が十分でないことが多く、均一な電極塗膜が得られない。これらの例では、いずれも電極材料の分散性を含めたトータルでの性能としては不十分であった。
リチウム二次電池においては、電池作動時において電池用分散剤の安定性は重要な要素である。安定性が低く分解反応などが起こる場合は、特に、特許文献9記載の電池用分散剤においては、塗膜の密着性に悪化、内部抵抗の上昇、放電容量維持率の低下などをもたらす為に、電池として、耐久性、性能、安全性に課題がある。
特開2000−123823号公報 特開2002−298853号公報 特開昭63−236258号公報 特開平8−190912号公報 特開2003−157846号公報 特表2006−516795号公報 特開2005−063955号公報 特開平6−60877号公報 特許4240157号公報 特開2002−241370号公報 特許2538997号公報
以上のような問題に鑑み、本発明は、電池用分散剤を含む電池用組成物において、導電助剤の導電性を阻害せずに分散安定化を図ること、炭素材料である導電助剤の電解液に対する濡れ性を向上させること、ならびに、電池用分散剤に電気化学耐性を付与することにより、これを用いて作製される電池の電池性能を向上させることを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、導電助剤としての炭素材料を溶剤に分散させる際に、電気化学耐性の優れる電池用分散剤を1種以上添加することにより、分散安定性に優れる炭素材料粒子の分散体を調製できることだけでなく、さらに、高耐久性、高性能、且つ安全性の優れることを見出した。
この電池用分散剤において、電気化学耐性及び分散安定性に優れることに起因していると思われる、密着性の改善、酸化分解が抑制効果をもたらし、最終的には放電容量維持率の向上効果があった。また電気化学耐性に優れているために電池作動中の分解反応が起こらず、安全性の優れた電池用分散剤を見出し、本発明に至ったものである。
すなわち、本発明は、下記一般式(1)または一般式(3)で示される電池用分散剤に関する。
一般式(1)
Figure 2012195243
(式中、X1、X2、およびX3は、それぞれ独立に、−SO31、−COOY2、−P(O)(OY3、もしくは−OY4を有してもよいアリール基、一般式(2)で表される基または水素原子を表す。
1、Y2、Y3、およびY4は、それぞれ独立に、水素イオン、金属イオン、またはアンモニウムイオンを表す。
但し、X1、X2、およびX3が同時に水素原子になることはない。
一般式(2)
−N(X4)X5
(式中、X4、およびX5は、それぞれ独立に、−SO35、−COOY6、−P(O)(OY7、もしくは−OY8を有してもよいアルキル基を表す。
5、Y6、Y7、Y8は、それぞれ独立に水素イオン、金属イオン、またはアンモニウムイオンを表す。)
一般式(3)
Figure 2012195243
(式中、X7、およびX8は、それぞれ独立に、−SO39、−COOY10、−P(O)(OY11、もしくは−OY12を有してもよいアリール基または水素原子を表す。
9、Y10、Y11、およびY12は、それぞれ独立に、水素イオン、金属イオン、またはアンモニウムイオンを表す。
6は、−SO313、−COOY14、−P(O)(OY15、もしくは−OY16を有してもよいアリール基、または一般式(4)で表される基を表す。
13、Y14、Y15、およびY16は、それぞれ独立に、水素イオン、金属イオン、またはアンモニウムイオンを表す。)
一般式(4)
−CH(COCH3)CONHX9
(式中、X9は、アルキル基、アルコキシル基、ハロゲン原子、−SO317、−COOY18、−P(O)(OY19もしくは−OY20を有してもよいアリール基を表す。
17、Y18、Y19、およびY20は、それぞれ独立に、水素イオン、またはアンモニウムイオンを表す。)
また、本発明は、一般式(1)の、X2、およびX3が、水素原子であってかつ、
1が、一般式(2)で表される基であり、一般式(2)の、X4、およびX5が、それぞれ独立に、−SO35、−COOY6、もしくは−OY8を有してもよいアルキル基である上記電池用分散剤に関する。
また、本発明は、一般式(2)の、X4、およびX5が、それぞれ独立に、−SO35、−COOY6、もしくは−OY8を有してもよいメチル基、エチル基もしくはプロピル基である上記電池用分散剤に関する。
また、本発明は、一般式(3)の、X7、およびX8が水素原子であってかつ、
6が、一般式(4)で表される基であり、一般式(4)の、X9が、アルキル基、アルコキシル基、−SO317、−COOY18、もしくは−OY20を有してもよいアリール基である上記電池用分散剤に関する。
また、本発明は、一般式(4)の、X9が、−SO317、−COOY18、もしくは−OY20を有してもよいアリール基である上記電池用分散剤に関する。
また、本発明は、上記電池用分散剤、溶剤、および導電助剤を含有する電池用組成物に関する。
また、本発明は、さらにバインダー樹脂および、または正極活物質を含むことを特徴とする上記電池用組成物に関する。
また、本発明は、上記電池用分散剤と、導電助剤である炭素材料とを溶剤に分散してなる分散体に、バインダー樹脂および、または正極活物質を混合する電池用組成物の製造方法に関する。
また、本発明は、集電体上に正極合材層を有する正極と、集電体上に負極合材層を有する負極と、リチウムを含む電解質とを具備するリチウム二次電池であって、前記正極合材層が、上記電池用組成物を含有することを特徴とするリチウム二次電池に関する。
本発明により、導電助剤の導電性を阻害せずに分散安定化され、炭素材料のような導電助剤の電解液に対する濡れ性を向上させ、さらに、電池用分散剤に電気化学耐性を付与することができ、これを用いて作製される電池の電池性能を向上させることができた。
本発明の電池用組成物は、リチウム二次電池、ニッケル水素二次電池、ニッケルカドニウム二次電池、アルカリマンガン電池、鉛電池、燃料電池、キャパシタなどに用いることができるが、特にリチウム二次電池に用いると好適である。
まず、本発明の電池用分散剤、電池用組成物に含まれる材料について説明する。
<電池用分散剤>
本発明の電池用分散剤は、下記一般式(1)または一般式(3)で示される。
本発明の電池用分散剤の有効性は、半経験的分子軌道計算より求められるHOMOのエネルギーからも裏づけされる。一般式(1)または一般式(3)は、酸化電位が4.5V以上であり、電池中での分解反応など起こらない。
一般式(1)
Figure 2012195243
式中、X1、X2、およびX3は、それぞれ独立に、−SO31、−COOY2、−P(O)(OY3、もしくは−OY4を有してもよいアリール基、一般式(2)で表される基または水素原子を表す。
1、Y2、Y3、およびY4は、それぞれ独立に、水素イオン、金属イオン、またはアンモニウムイオンを表す。但し、X1、X2、およびX3が同時に水素原子になることはない。
一般式(2)
−N(X4)X5

式中、X4、およびX5は、それぞれ独立に、−SO35、−COOY6、−P(O)(OY7、もしくは−OY8を有してもよいアルキル基を表す。Y5、Y6、Y7、Y8は、それぞれ独立に水素イオン、金属イオン、またはアンモニウムイオンを表す。
一般式(3)
Figure 2012195243
式中、X7、およびX8は、それぞれ独立に、−SO39、−COOY10、−P(O)(OY11、もしくは−OY12を有してもよいアリール基または水素原子を表す。
9、Y10、Y11、およびY12は、それぞれ独立に、水素イオン、金属イオン、またはアンモニウムイオンを表す。X6は、−SO313、−COOY14、−P(O)(OY15、もしくは−OY16を有してもよいアリール基、または一般式(4)で表される基を表す。
13、Y14、Y15、およびY16は、それぞれ独立に、水素イオン、金属イオン、またはアンモニウムイオンを表す。
一般式(4)
−CH(COCH3)CONHX9

式中、X9は、アルキル基、アルコキシル基、ハロゲン原子、−SO317、−COOY18、−P(O)(OY19もしくは−OY20を有してもよいアリール基を表す。
17、Y18、Y19、およびY20は、それぞれ独立に、水素イオン、またはアンモニウムイオンを表す。
本発明で言うアリール基としては、チオフェン、フラン、ピリジン、ピラゾール、ピロール、イミダゾール、イソインドリン、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、ベンズチアゾール、ベンズトリアゾール、インドール、キノリン、カルバゾール、アクリジン、ベンゼン、ナフタリン、アントラセン、フルオレン、フェナントレン、アントラキノン等が挙げられる。好ましくは、ベンゼン、ナフタリンが挙げられる。
1、X2、およびX3が、アリール基である場合は、無置換でもよく、−SO31、−COOY2、−P(O)(OY3、もしくは−OY4を有してもよい。
7、およびX8が、アリール基である場合は、無置換でもよく、−SO39、−COOY10、−P(O)(OY11、もしくは−OY12を有してもよい。
6が、アリール基である場合は、無置換でもよく、−SO313、−COOY14、−P(O)(OY15、もしくは−OY16を有してもよい。
9が、アリール基である場合は、無置換でもよく、−SO317、−COOY18、−P(O)(OY19、もしくは−OY20を有してもよい。
本発明で言うアルキル基としては、炭素数1〜40のアルキル基であり、分岐していてもよい。
4、およびX5が、アルキル基である場合は、無置換でもよく、−SO35、−COOY6、−P(O)(OY7、もしくは−OY8を有してもよい。
本発明で言うアルコキシル基としては、炭素数1〜40のアルコキシル基であり、分岐していてもよい。
本発明で言うハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
一般式(1)から(4)の式中のY1からY20のとしては、水素原子、金属イオン、アンモニウムイオンを用いることができる。
また、分散剤構造中にY1からY20を2つ以上有する場合、Y1からY20は水素原子、金属イオン、アンモニウムイオンのいずれかひとつのみでも良いし、これらの組み合わせでも良い。金属イオンの金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム、アルミニウム、ニッケル、コバルト等が挙げられる。アンモニウムイオンとしては、一般式(5)で示される構造を有する単一化合物または、混合物である。
一般式(5)
Figure 2012195243
1、R2、R3、R4は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、または置換基を有してもよいアリール基のいずれかを表す。
一般式(5)のR1、R2、R3、R4は、それぞれ同一でもよいし、異なっていてもよい。また、R1、R2、R3、R4が炭素原子を有する場合、炭素数は1〜40、好ましくは1〜30、更に好ましくは1〜20である。炭素数が40を超えると電極の導電性が低下する場合がある。
1、R2、R3が水素原子であり且つ、R4がアルキル基の場合が好ましく、更に好ましくは、アルキル基の炭素数が1〜20の場合である。
本発明において、一般式(5)を製造するにあたり、カップラー成分として、以下例示化合物がある。
アセトアセトアニリド、アセトアセト−o−トルイジド、アセトアセト−p−トルイジド、アセトアセト−o−キシリダイド、アセトアセト−m−キシリダイド、アセトアセト−p−キシリダイド、アセトアセト−2、3−ジメトキシアニライド、アセトアセト−2、4−ジメトキシアニライド、アセトアセト−2、5−ジメトキシアニライド、アセトアセト−2、6−ジメトキシアニライド、アセトアセト−2、3−ジメトキシ−4−クロロアニライド、アセトアセト−2、3−ジメトキシ−5−クロロアニライド、アセトアセト−2、3−ジメトキシ−6−クロロアニライド、アセトアセト−2、4−ジメトキシ−3−クロロアニライド、アセトアセト−2、4−ジメトキシ−5−クロロアニライド、アセトアセト−2、4−ジメトキシ−6−クロロアニライド、アセトアセト−2、5−ジメトキシ−3−クロロアニライド、アセトアセト−2、4−ジメトキシ−4−クロロアニライド、アセトアセト−2、4−ジメトキシ−6−クロロアニライド、アセトアセト−2、6−ジメトキシ−3−クロロアニライド、アセトアセト−2、6−ジメトキシ−4−クロロアニライド、アセトアセト−2、6−ジメトキシ−5−クロロアニライド、アセトアセト−o−クロロアニリド、アセトアセト−p−クロロアニリド、o−アセトアセチルアミノ安息香酸、2−ヒドロキシ−5−アセトアセチルアミノ安息香酸、2−ヒドロキシ−5−アセトアセチルアミノ安息香酸、2−アセトアセチルアミノ−ベンゼンスルホン酸、3−アセトアセチルアミノ−ベンゼンスルホン酸などがある。
一般式(1)または一般式(3)の好ましい例を以下に列記する。
一般式(1)の、X2、およびX3が、水素原子であってかつ、X1が、一般式(2)で表される基であり、一般式(2)の、X4、およびX5が、それぞれ独立に、−SO35、−COOY6、もしくは−OY8を有してもよいアルキル基である場合。
一般式(2)の、X4、およびX5が、それぞれ独立に、−SO35、−COOY6、もしくは−OY8を有してもよいメチル基、エチル基もしくはプロピル基である場合。
一般式(3)の、X7、およびX8が水素原子であってかつ、X6が、一般式(4)で表される基であり、一般式(4)の、X9が、アルキル基、アルコキシル基、−SO317、−COOY18、もしくは−OY20を有してもよいアリール基である場合。
また、一般式(4)の、X9が、−SO317、−COOY18、もしくは−OY20を有してもよいアリール基である場合。
<導電助剤>
本発明における導電助剤としては、炭素材料が最も好ましい。炭素材料としては、導電性を有する炭素材料であれば特に限定されるものではないが、グラファイト、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンファイバー、フラーレン等を単独で、もしくは2種類以上併せて使用することができる。導電性、入手の容易さ、およびコスト面から、カーボンブラックの使用が好ましい。
カーボンブラックとしては、気体もしくは液体の原料を反応炉中で連続的に熱分解し製造するファーネスブラック、特にエチレン重油を原料としたケッチェンブラック、原料ガスを燃焼させて、その炎をチャンネル鋼底面にあて急冷し析出させたチャンネルブラック、ガスを原料とし燃焼と熱分解を周期的に繰り返すことにより得られるサーマルブラック、特にアセチレンガスを原料とするアセチレンブラックなどの各種のものを単独で、もしくは2種類以上併せて使用することができる。また、通常行われている酸化処理されたカーボンブラックや、中空カーボン等も使用できる。
カーボンの酸化処理は、カーボンを空気中で高温処理したり、硝酸や二酸化窒素、オゾン等で二次的に処理したりすることより、例えばフェノール基、キノン基、カルボキシル基、カルボニル基の様な酸素含有極性官能基をカーボン表面に直接導入(共有結合)する処理であり、カーボンの分散性を向上させるために一般的に行われている。しかしながら、官能基の導入量が多くなる程カーボンの導電性が低下することが一般的であるため、酸化処理をしていないカーボンの使用が好ましい。
用いるカーボンブラックの比表面積は、値が大きいほど、カーボンブラック粒子どうしの接触点が増えるため、電極の内部抵抗を下げるのに有利となる。具体的には、窒素の吸着量から求められる比表面積(BET)で、20m2/g以上、1500m2/g以下、好ましくは50m2/g以上、1500m2/g以下、更に好ましくは100m2/g以上、1500m2/g以下のものを使用することが望ましい。比表面積が20m2/gを下回るカーボンブラックを用いると、十分な導電性を得ることが難しくなる場合があり、1500m2/gを超えるカーボンブラックは、市販材料での入手が困難となる場合がある。
また、用いるカーボンブラックの粒径は、一次粒子径で0.005〜1μmが好ましく、特に、0.01〜0.2μmが好ましい。ただし、ここでいう一次粒子径とは、電子顕微鏡などで測定された粒子径を平均したものである。
市販のカーボンブラックとしては、例えば、トーカブラック#4300、#4400、#4500、#5500等(東海カーボン社製、ファーネスブラック)、プリンテックスL等(デグサ社製、ファーネスブラック)、Raven7000、5750、5250、5000ULTRAIII、5000ULTRA等、Conductex SC ULTRA、Conductex 975 ULTRA等(コロンビヤン社製、ファーネスブラック)、#2350、#2400B、#30050B、#3030B、#3230B、#3350B、#3400B、#5400B等(三菱化学社製、ファーネスブラック)、MONARCH1400、1300、900、VulcanXC−72R、BlackPearls2000等(キャボット社製、ファーネスブラック)、ケッチェンブラックEC−300J、EC−600JD(アクゾ社製)、デンカブラック、デンカブラックHS−100、FX−35(電気化学工業社製、アセチレンブラック)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
<溶剤>
本発明に使用する溶剤としては、例えば、アルコール類、グリコール類、セロソルブ類、アミノアルコール類、アミン類、ケトン類、カルボン酸アミド類、リン酸アミド類、スルホキシド類、カルボン酸エステル類、リン酸エステル類、エーテル類、ニトリル類、水等が挙げられる。
これらの中でも、比誘電率が15以上の極性溶剤を使用することが好ましい。比誘電率は、溶剤の極性の強さを表す指標のひとつであり、浅原ほか編「溶剤ハンドブック」((株)講談社サイエンティフィク、1990年)等に記載されている。
例えば、メチルアルコール(比誘電率:33.1)、エチルアルコール(23.8)、2−プロパノール(18.3)、1−ブタノール(17.1)、1,2−エタンジオール(38.66)、1,2−プロパンジオール(32.0)、1,3−プロパンジオール(35.0)、1,4−ブタンジオール(31.1)、ジエチレングリコール(31.69)、2−メトキシエタノール(16.93)、2−エトキシエタノール(29.6)、2−アミノエタノール(37.7)、アセトン(20.7)、メチルエチルケトン(18.51)、ホルムアミド(111.0)、N−メチルホルムアミド(182.4)、N,N−ジメチルホルムアミド(36.71)、N−メチルアセトアミド(191.3)、N,N−ジメチルアセトアミド(37.78)、N−メチルプロピオンアミド(172.2)、N−メチルピロリドン(32.0)、ヘキサメチル燐酸トリアミド(29.6)、ジメチルスルホキシド(48.9)、スルホラン(43.3)、アセトニトリル(37.5)、プロピオニトリル(29.7)、水(80.1)等が挙げられるが、これらに限定されない。
とりわけ、比誘電率が15以上、200以下、好ましくは15以上、100以下、更に好ましくは、20以上、100以下の極性溶剤を使用することが、炭素材料の良好な分散安定性を得るのに好ましい。
比誘電率が15を下回る溶剤では分散剤の溶解性が著しく低下し良好な分散が得られないことが多く、また、比誘電率が200を超える溶剤を使用しても、顕著な分散向上効果が得られないことが多い。
また、炭素材料の分散安定性は、溶剤の電子供与性にも影響される傾向が見いだされた。電子供与効果の大きな溶剤の使用が好ましく、とりわけ溶剤のドナー数が15Kcal/mol以上の溶剤が好ましいが、20Kcal/mol以上、60Kcal/mol以下の溶剤が更に好ましい。
ドナー数は、各種溶剤の電子供与性の強さを測る尺度であり、基準のアクセプターとして、ジクロロエタン中10-3M SbCl5を選び、ドナーとの反応モルエンタルピー値として定義される値であって、値が大きいほどその溶剤の電子供与性が強いことを示す。また、いくつかの溶剤については、ドナー数はその溶剤中におけるNaClO423Na−NMRの化学シフトから間接的に推定されている。このドナー数については、V.グートマン(大瀧、岡田訳)「ドナーとアクセプター」(学会出版センター(株)1983年)に記載されている。溶剤が有する誘電率の大きさにもよるが、ドナー数が15Kcal/molを下回る溶剤を用いると、十分な分散安定化効果が得られない場合がある。また、ドナー数が60Kcal/molを超えた溶剤を用いても、顕著な分散向上効果はないものと思われる。
ドナー数が15Kcal/mol以上の溶剤としては、例えば、メチルアルコール(ドナー数:19)、エチルアルコール(20)、エチルアミン(55)、t−ブチルアミン(57)、エチレンジアミン(55)、ピリジン(33.1)、アセトン(17)、ホルムアミド(24)、N,N−ジメチルホルムアミド(26.6)、N,N−ジエチルホルムアミド(30.9)、N,N−ジメチルアセトアミド(27.8)、N,N−ジエチルアセトアミド(32.2)、N−メチルピロリドン(27.3)、ヘキサメチル燐酸トリアミド(38.8)、ジメチルスルホキシド(29.8)、酢酸エチル(17.1)リン酸トリメチル(23)、リン酸トリブチル(23.7)、テトラヒドロフラン(20.0)、イソブチロニトリル(15.4)、イソプロピオノニトリル(16.1)、水(18.0)等が挙げられるが、これらに限定されない。
分散剤の酸性官能基が分極ないしは解離するのを促す効果が大きい溶剤の使用が、炭素材料の良好な分散安定性を得るのには重要と思われる。酸性官能基の分極ないし解離のしやすさは、酸性官能基が結合している有機色素誘導体またはトリアジン誘導体の分子構造にも左右されるが、電子供与性の大きな溶剤は、これらの誘導体に対する溶媒和力が強いため、分散剤酸性官能基の分極を促し、そして比誘電率の大きな溶剤が分極した酸性官能基の解離を促すものと思われる。よって、炭素材料の良好な分散安定性を得るためには、比誘電率の大きな溶剤と、ドナー数の大きな溶剤とを組み合わせて使用するか、比誘電率およびドナー数がともに大きな溶剤を使用することが好ましい。
また、使用する溶剤としては、非プロトン性の極性溶剤であることが好ましい。非プロトン性の極性溶剤とは、溶剤自身にプロトンを放出する能力がなく、また自己解離もしない極性溶剤であり、非プロトン性の極性溶剤は水素結合による自己会合を生じず、溶剤自身の凝集性が弱い。そのため炭素材料の凝集体への浸透力が強く、分散促進効果が期待される。また、非プロトン性の極性溶剤は、溶剤自身の凝集性が弱いために溶解力が強く、種々の分散剤や樹脂を溶解することができるため、汎用性に優れる。更に、酸性官能基を有する有機色素誘導体、または酸性官能基を有するトリアジン誘導体から選ばれる分散剤を溶剤に溶解することを考えた場合、非プロトン性の極性溶剤は、カチオン種のみを溶媒和するため、酸性官能基におけるプロトンもしくはカウンターカチオンのみを溶媒和することとなる。このとき、有機色素誘導体またはトリアジン誘導体骨格を含むアニオン側は溶媒和されることなく裸のままであるため、有機色素誘導体またはトリアジン誘導体骨格部分の炭素材料表面への作用(例えば吸着)が阻害されにくい等の効果も期待される。
また、本発明における溶剤の選択は、酸性官能基を有する有機色素誘導体、または酸性官能基を有するトリアジン誘導体から選ばれる分散剤と、導電助剤としての炭素材料、および溶剤以外に後述する電極活物質もしくはバインダー成分等を更に添加する場合は、上述の分散性に与える溶剤の影響に加え、活物質との反応性、およびバインダー成分に対する溶解性等を鑑みつつ行う。分散性が高く、活物質との反応性が低く、バインダー成分の溶解性の高い溶剤を選択することが好ましい。
更に、環境負荷軽減や経済的有利性等から、電極製造工程において排出される溶剤を回収・再利用する場合は、混合溶剤ではなく、単一溶剤での使用が好ましい。
以上、炭素材料の分散安定性促進効果、活物質との反応性、およびバインダー成分の溶解性を満たし、単一使用での汎用性を有する溶剤としては、アミド系溶剤が好ましく、特に、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ヘキサメチル燐酸トリアミド等のアミド系非プロトン性溶剤の使用が好ましい。
<バインダー>
本発明の組成物には、更に、バインダー成分を含有させることが好ましい。使用するバインダーとしては、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、スチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、ビニルピロリドン等を構成単位として含む重合体または共重合体;ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂;カルボキシメチルセルロースのようなセルロース樹脂;スチレン−ブタジエンゴム、フッ素ゴムのようなゴム類;ポリアニリン、ポリアセチレンのような導電性樹脂等が挙げられる。また、これらの樹脂の変性体や混合物、および共重合体でも良い。特に、耐性面から分子内にフッ素原子を含む高分子化合物、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、テトラフルオロエチレン等の使用が好ましい。
また、バインダーとしてのこれらの樹脂類の重量平均分子量は、10,000〜1,000,000が好ましい。分子量が小さいとバインダーの耐性が低下することがある。分子量が大きくなるとバインダーの耐性は向上するものの、バインダー自体の粘度が高くなり作業性が低下するとともに、凝集剤として働き、合材成分が著しく凝集してしまうことがある。
<正極活物質及び負極活物質>
本発明の組成物を正極合材もしくは負極合材に用いる場合は、上記分散剤、導電助剤としての炭素材料、および溶剤以外に、少なくとも正極活物質または負極活物質を含有させる。
使用する正極活物質としては特に限定はされないが、リチウムイオンをドーピングまたはインターカレーション可能な金属酸化物、金属硫化物等の金属化合物、および導電性高分子等を使用することができる。例えば、Fe、Co、Ni、Mn等の遷移金属の酸化物、リチウムとの複合酸化物、遷移金属硫化物等の無機化合物等が挙げられる。具体的には、MnO、V25、V613、TiO2等の遷移金属酸化物粉末、層状構造のニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、スピネル構造のマンガン酸リチウムなどのリチウムと遷移金属との複合酸化物粉末、オリビン構造のリン酸化合物であるリン酸鉄リチウム系材料、TiS2、FeSなどの遷移金属硫化物粉末等が挙げられる。また、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性ポリマーを使用することもできる。また、上記の無機化合物や有機化合物を混合して用いてもよい。
使用する負極活物質としては特に限定はされないが、リチウムイオンをドーピングまたはインターカレーション可能な金属Li、またはその合金、スズ合金、シリコン合金負極、LiXFe23、LiXFe34、LiXWO2等の金属酸化物系、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレン等の導電性高分子、ソフトカーボンやハードカーボンといった、アモルファス系炭素質材料や、高黒鉛化炭素材料等の人造黒鉛、あるいは天然黒鉛等の炭素質粉末、カーボンブラック、メソフェーズカーボンブラック、樹脂焼成炭素材料、気層成長炭素繊維、炭素繊維などの炭素系材料が用いられる。
<本発明の分散剤、組成物の用途>
本発明の分散剤及び「組成物は、正極合材または負極合材に用いることができる。正極合材または負極合材に用いる場合は、上記分散剤、導電助剤としての炭素材料、溶剤を含む組成物に、正極活物質または負極活物質、好ましくは更にバインダー成分を含有させた正・負極合材ペーストとして使用することが好ましい。
電極合材ペースト中の総固形分に占める活物質の割合は、80重量%以上、98.5重量%以下が好ましい。また、電極合材ペースト中の総固形分に占める、酸性官能基を有する有機色素誘導体または酸性官能基を有するトリアジン誘導体から選ばれる1種以上の分散剤と、導電助剤としての炭素材料とを合わせた固形分の割合は、0.5重量%以上、19重量%以下が好ましい。そして、電極合材ペースト中の総固形分に占める、バインダー成分の割合は、1重量%以上、10重量%以下が好ましい。また、電極合材ペーストの適正粘度は、電極合材ペーストの塗工方法によるが、一般には、100mPa・s以上、30,000mPa・s以下とするのが好ましい。
正・負極合材ペーストは、導電助剤としての炭素材料粒子の分散性に優れるだけでなく、正・負極活物質の凝集を緩和する効果もある。導電助剤である炭素材粒子の分散性が優れるため、導電助剤としての炭素材料および正・負極活物質を溶剤に混合・分散する際のエネルギーが、炭素材料(導電助剤)の凝集物に阻害されることなく効率よく活物質に伝わり、結果的に正・負極活物質の分散性も向上させることができるものと思われる。
そして、正極合材ペーストでは、正極活物質の周りに導電助剤である炭素材料粒子を均一に配位・付着することができ、正極合材層に優れた導電性および密着性を付与できる。また、導電性が向上することにより、導電助剤としての炭素材料の添加量を減らすことができるため、正極活物質の添加量を相対的に増やすことができ、電池の大きな特性である容量を大きくすることができる。
さらに、本発明の正極合材ペーストは、正極活物質、炭素材料(導電助剤)の凝集が極めて少ないため、集電体に塗布した際に平滑性の高い均一な塗膜を得ることができ、集電体と正極合材との密着性が改善される。また、酸性官能基を有する分散剤が炭素材料(導電助剤)表面に作用(例えば吸着)しているため、リチウム遷移金属複合酸化物のような正極活物質の表面と炭素材料(導電助剤)表面との相互作用が強まり、酸性官能基を有する分散剤を使用しない場合と比較して正極活物質と炭素材料(導電助剤)との密着性が向上する。
また、負極合材ペーストでは、負極活物質として炭素材料系の活物質を使用した場合、分散剤として添加している酸性官能基を有する有機色素誘導体、または酸性官能基を有するトリアジン誘導体の効果により、炭素材料系活物質の凝集が緩和される。そして、負極活物質の周りに炭素材料粒子(導電助剤)を均一に配位・付着することができ、負極合材層に優れた導電性、密着性および濡れ性を付与できる。
本発明の組成物は、電極下地層にも用いることができる。電極下地層に用いる場合は、酸性官能基を有する有機色素誘導体、または酸性官能基を有するトリアジン誘導体から選ばれる1種以上の分散剤と、導電助剤としての炭素材料および溶剤とからなる分散体をそのまま使用しても良いが、上記バインダー成分を添加し、電極下地ペーストとして使用することが好ましい。電極下地層に用いる組成物の総固形分に占める導電助剤としての炭素材料の割合は、5重量%以上、95重量%以下が好ましく、10重量%以上、90重量%以下が更に好ましい。導電助剤としての炭素材料が少ないと、下地層の導電性が保てない場合があり、一方、導電助剤としての炭素材料が多すぎると、塗膜の耐性が低下する場合がある。また、電極下地ペーストの適正粘度は、電極下地ペーストの塗工方法によるが、一般には、100mPa・s以上、30,000mPa・s以下とするのが好ましい。
<本発明の分散剤及び組成物の製造方法>
次に、本発明の電池用分散剤の製造方法について説明する。
一般式(1)の製造方法としては、特許文献10記載にあるように、マロン酸誘導体とウレア誘導体を反応させることで合成することができる。
一般式(3)の製造方法のうち、X6が一般式(4)で表される基の場合においては、特許文献11記載にあるように、アミノグアニジン重炭酸塩を用いて合成することができる。
一般式(3)の製造方法のうち、X6一般式(4)で表される基の場合においては、特許文献12記載と同様の方法により合成することができる。
次に、本発明の電池用組成物の製造方法について説明する。
上記製造方法は、電池用分散剤から選ばれる1種以上の分散剤を、溶剤中に完全ないしは一部溶解させ、その溶液中に導電助剤としての炭素材料を添加、混合することで、これら分散剤を炭素材料に作用(例えば吸着)させつつ、溶剤に分散するものである。このときの分散体中における炭素材料の濃度は、使用する炭素材料の比表面積や表面官能基量などの炭素材料固有の特性値等にもよるが、1重量%以上、50重量%以下が好ましく、更に好ましくは5重量%以上、35重量%以下である。炭素材料の濃度が低すぎると生産効率が悪くなり、炭素材料の濃度が高すぎると分散体の粘度が著しく高くなり、分散効率や、後述するコンタミ除去工程の効率および、分散体のハンドリング性が低下する場合がある。とりわけ、コンタミを除く工程を入れる場合は、このときの分散体の粘度を好ましくは10,000mPa・s以下、より好ましくは5,000mPa・s以下、更に好ましくは3,000mPa・s以下とする。
電池用分散剤の添加量は、用いる導電助剤としての炭素材料の比表面積等により決定される。一般には、炭素材料100重量部に対して、分散剤を0.5重量部以上、40重量部以下、好ましくは1重量部以上、35重量部以下、さらに好ましくは、2重量部以上、30重量部以下である。分散剤の量が少ないと十分な分散効果が得られないとともに、電解液への濡れ性向上効果や、金属析出を抑制する効果が十分に得られない。また、過剰に添加しても顕著な分散向上効果は得られない。
導電助剤としての炭素材料の分散粒径は、0.03μm以上、2μm以下、好ましくは、0.05μm以上、1μm以下、更に好ましくは0.05μm以上、0.5μm以下に微細化することが望ましい。導電助剤としての炭素材料の分散粒径が0.03μm未満の組成物は、その作製が難しい場合がある。また、導電助剤としての炭素材料の分散粒径が2μmを超える組成物を用いた場合には、電極の抵抗分布のバラつきや、低抵抗化のために導電助剤の添加量を増やさなければならなくなるなどの不具合が生じる場合がある。ここでいう分散粒径とは、体積粒度分布において、粒子径の細かいものからその粒子の体積割合を積算していったときに、50%となるところの粒子径(D50)であり、一般的な粒度分布計、例えば、動的光散乱方式の粒度分布計(日機装社製「マイクロトラックUPA」)等で測定される。
また、上記分散剤を炭素材料に作用(例えば吸着)させつつ、炭素材料を溶剤に分散するための装置としては、顔料分散等に通常用いられている分散機が使用できる。例えば、ディスパー、ホモミキサー、プラネタリーミキサー等のミキサー類、ホモジナイザー(エム・テクニック社製「クレアミックス」、PRIMIX社「フィルミックス」等)類、ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、コボールミル等のメディア型分散機、湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、スギノマシン社製「スターバースト」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等)、エム・テクニック社製「クレアSS−5」、奈良機械社製「MICROS」等のメディアレス分散機、その他ロールミル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、分散機としては、分散機からの金属混入防止処理を施したものを用いることが好ましい。
例えば、メディア型分散機を使用する場合は、アジテーターおよびベッセルがセラミック製または樹脂製の分散機を使用する方法や、金属製アジテーターおよびベッセル表面をタングステンカーバイド溶射や樹脂コーティング等の処理をした分散機を用いることが好ましい。そして、メディアとしては、ガラスビーズや、ジルコニアビーズ、アルミナビーズ等のセラミックビーズを用いることが好ましく、中でもジルコニアビーズの使用が好ましい。また、ロールミルを使用する場合についても、セラミック製ロールを用いることが好ましい。分散装置は、1種のみを使用しても良いし、複数種の装置を組み合わせて使用しても良い。
また、炭素材料分散時に金属異物等のコンタミを除く工程を入れることが好ましい。カーボンブラック、グラファイトおよび、炭素繊維等の炭素材料には、それらの製造工程由来(ラインコンタミや触媒として)の金属異物が含まれている場合が多く、これら金属異物を除去することは、電池の短絡を防ぐために非常に重要となる。本発明では、酸性官能基を有する有機色素誘導体、または酸性官能基を有するトリアジン誘導体から選ばれる分散剤の効果により、炭素材料の凝集がよくほぐれること、および分散体の粘度が低くなるため、分散剤が未添加の場合に比して、分散体中の炭素材料濃度が高い場合でも、効率良く金属異物を取り除くことができる。金属異物を除く方法としては、磁石による除鉄や、ろ過、遠心分離等の方法が挙げられる。
バインダー成分の添加方法としては、上記分散剤の存在下、導電助剤としての炭素材料を溶剤に分散してなる分散体を攪拌しつつ、固形のバインダー成分を添加し、溶解させる方法が挙げられる。また、バインダー成分を溶剤に溶解したものを事前に作製しておき、上記分散体と混合する方法が挙げられる。また、バインダー成分を上記分散体に添加した後に、上記分散装置で再度分散処理を行っても良い。
また、酸性官能基を有する有機色素誘導体、または酸性官能基を有するトリアジン誘導体から選ばれる1種以上の分散剤の存在下、導電助剤としての炭素材料を溶剤に分散するときに、バインダー成分の一部ないしは全量を、同時に添加して分散処理を行うこともできる。
正極活物質または負極活物質の添加方法としては、上記分散剤の存在下、導電助剤としての炭素材料を溶剤に分散してなる分散体を攪拌しつつ、正極活物質または負極活物質を添加し、分散させる方法が挙げられる。また、酸性官能基を有する有機色素誘導体、または酸性官能基を有するトリアジン誘導体から選ばれる1種以上の分散剤の存在下、導電助剤としての炭素材料を溶剤に分散するときに、正極活物質または負極活物質の一部ないしは全量を、同時に添加して分散処理を行うこともできる。また、このときの混合、分散を行うための装置としては、通常の顔料分散等に用いられている上述の分散機が使用できる。
本発明の電池用組成物は、上述するように、通常は溶剤を含む分散体(液)、ペーストなどとして、製造、流通、使用される。これは、導電助剤や活物質と分散剤を乾燥粉体の状態で混合しても、導電助剤や活物質に均一に分散剤を作用させることはできず、液相法で、分散剤の存在下、導電助剤や活物質を溶剤に分散することにより、導電助剤や活物質に均一に分散剤を作用させることができるからである。また、以下に説明するように、集電体に電極合材層を形成する場合には、液状の分散体をできるだけ均一に塗布してこれを乾燥させることが好ましいからである。
しかしながら、例えば、液相法で作製した分散体を、運搬コストなどの理由から、一度溶剤を除去して乾燥粉体とすることも考えられる。そして、この乾燥粉体を適当な溶剤で再分散させて、電極合材層の形成に用いることも考えられる。したがって、本発明の組成物は、液状の分散体に限られず、このような、乾燥粉体の状態の組成物であってもよい。
<リチウム二次電池>
次に、本発明の組成物を用いたリチウム二次電池について説明する。
リチウム二次電池は、集電体上に正極合材層を有する正極と、集電体上に負極合材層を有する負極と、リチウムを含む電解質とを具備する。前記正極合材層と前記集電体との間や、前記負極合材層と前記集電体との間には、電極下地層が形成されていてもよい。
電極について、使用する集電体の材質や形状は特に限定されず、材質としては、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、ステンレス等の金属や合金が用いられるが、特に正極材料としてはアルミニウムが、負極材料としては銅の使用が好ましい。また、形状としては、一般的には平板上の箔が用いられるが、表面を粗面化したものや、穴あき箔状のもの、およびメッシュ状のものも使用できる。
集電体上に電極下地層を形成する方法としては、前述の電極下地ペーストを電極集電体に塗布、乾燥する方法が挙げられる。電極下地層の膜厚としては、導電性および密着性が保たれる範囲であれば特に制限されないが、一般的には0.05μm以上、20μm以下であり、好ましくは0.1μm以上、10μm以下である。
集電体上に電極合材層を形成する方法としては、集電体上に上述の電極合材ペーストを直接塗布し乾燥する方法、および集電体上に電極下地層を形成した後に電極合材ペーストを塗布し乾燥する方法などが挙げられる。また、電極下地層の上に電極合材層を形成する場合、集電体上に電極下地ペーストを塗布した後、湿潤状態のうちに電極合材ペーストを重ねて塗布し、乾燥を行っても良い。電極合材層の厚みとしては、一般的には1μm以上、500μm以下であり、好ましくは10μm以上、300μm以下である。
塗布方法については、特に制限はなく公知の方法を用いることができる。具体的には、ダイコーティング法、ディップコーティング法、ロールコーティング法、ドクターコーティング法、スプレーコティング法、グラビアコーティング法、スクリーン印刷法、静電塗装法等が挙げられる。また、塗布後に平版プレスやカレンダーロール等による圧延処理を行っても良い。
<電解液>
本発明のリチウム二次電池を構成する電解液としては、リチウムを含んだ電解質を非水系の溶剤に溶解したものを用いる。電解質としては、LiBF4、LiClO4、LiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiCF3SO3、Li(CF3SO22N、LiC49SO3、Li(CF3SO23C、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl、LiHF2、LiSCN、LiBPh4等が挙げられるがこれらに限定されない。
非水系の溶剤としては特に限定はされないが、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート類、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−オクタノイックラクトン等のラクトン類、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,2−メトキシエタン、1,2−エトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン等のグライム類、メチルフォルメート、メチルアセテート、メチルプロピオネート等のエステル類、ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホキシド類、アセトニトリル等のニトリル類、が挙げられる。またこれらの溶剤は、それぞれ単独で使用しても良いが、2種以上を混合して使用しても良い。
更に上記電解液を、ポリマーマトリクスに保持しゲル状とした高分子電解質とすることもできる。ポリマーマトリクスとしては、ポリアルキレンオキシドセグメントを有するアクリレート系樹脂、ポリアルキレンオキシドセグメントを有するポリホスファゼン系樹脂、ポリアルキレンオキシドセグメントを有するポリシロキサン等が挙げられるがこれらに限定されない。
本発明の組成物を用いたリチウム二次電池の構造については特に限定されないが、通常、正極および負極と、必要に応じて設けられるセパレーターとから構成され、ペーパー型、円筒型、ボタン型、積層型など、使用する目的に応じた種々の形状とすることができる。

以下、実施例に基づき本発明を更に詳しく説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。実施例中、部は重量部を、%は重量%をそれぞれ表す。
<電池用分散剤の合成方法>
以下、本発明の電池用分散剤の合成方法の例について述べる。
<実施例1>
表1の実施例1で示したA1の合成方法としては、N―(4スルホニル)ウレアA1aを1モルに対して、2−フェニルマロン酸A1b 1.1モル、無水酢酸3モル、及び酢酸エチル1Lを混合して、3時間還流した。次いで、メタノールを添加し、析出した結晶を濾取することにより電池用分散剤A1を得た。化合物の同定としてはマススペクトル(ブルカーダルトニクス社製、AutoflexII)により同定した(表1、表4、表5)。
<実施例2〜実施例6>
実施例1の反応において用いた原料A1aをA2a〜A6aに、A1bをA2b〜A6bに変更した以外は、実施例1と同じ方法で電池用誘導体A2からA6を得た。化合物の同定としてはマススペクトル(ブルカーダルトニクス社製、AutoflexII)により同定した(表1、表4、表5)。
<実施例7>
実施例1の反応において用いた原料A1aをA7aに、A1bをA7bに変更することにより、電池用誘導体A7の造塩前の化合物を得た。この化合物1モルを水1Lに混合した後、オクチルアミン1モルを添加した後70℃で加熱撹拌を行った後、濾過水洗を行い、電池用誘導体A7を得た。化合物の同定としてはマススペクトル(ブルカーダルトニクス社製、AutoflexII)により同定した(表1、表4、表5)。
<実施例8及び実施例9>
実施例7において用いた原料A7aをそれぞれA8a、A9aに、A7bをそれぞれA8b、A9b、オクチルアミンをそれぞれパルミチルアミン1モル、オクチルアミン2モルを用いて、電池用誘導体A8、A9を得た(化1、表2)。化合物の同定としてはマススペクトル(ブルカーダルトニクス社製、AutoflexII)により同定した(表1、表4、表5)。
Figure 2012195243
<実施例10>
表2の実施例10で示したB1の合成方法を示す。B1aを1モルに対して、B1b 1.1モル、無水酢酸3モル、及び酢酸エチル1Lを混合して、3時間還流する。次いで、メタノールを添加し、析出した結晶を濾取することにより中間体(1)を得た。さらにアニリン(B1c) 1モルに対して、塩酸1.5モル、亜硝酸ナトリウム1モルを加えることで、アミノ基をジアゾ化して、さらに中間体(1)を1モル加えて反応を行うことで、目的化合物B1を得た。化合物の同定としてはマススペクトル(ブルカーダルトニクス社製、AutoflexII)により同定した(表2、表4、表6)。
中間体(1)
Figure 2012195243
<実施例11から実施例15>
実施例10において用いた原料B1aをB2aからB6aに、B1bをB2bからB6b、B1cをB2cからB6cに変更したこと以外は実施例10と同じ方法で電池用誘導体B1からB6を得た。化合物の同定としてはマススペクトル(ブルカーダルトニクス社製、AutoflexII)により同定した(表2、表4、表6)。
<実施例16>
実施例10において用いた原料B1aをB7aに、B1bをB7bに、B1cをB7cに変更したこと以外は実施例10と同じ方法で電池用誘導体B7の造塩前の化合物を得た。この化合物1モルを水1Lに混合した後、カウンターアミンとしてオクチルアミン1モルを添加した後70度で加熱撹拌を行った後、濾過水洗を行うことで。実施例16で示される電池用誘導体B7を得た。化合物の同定としてはマススペクトル(ブルカーダルトニクス社製、AutoflexII)により同定した(表2、表4、表6)。
<実施例17及び実施例18>
実施例16において用いた原料B7aをそれぞれB8a、B9aに、B7bをそれぞれB8b、B8bに、B7cをそれぞれB8c、B9cに、オクチルアミンをそれぞれオクチルアミン、ドデシルアミンを用いることで、電池用誘導体B8、B9を得た(化○、表2)。
Figure 2012195243
<実施例19>
C1aを1モルに対して、マロン酸を1.1モル、無水酢酸3モル、及び酢酸エチル1Lを混合して、3時間還流する。次いで、メタノールを添加し、析出した結晶を濾取することにより中間体(2)を得た。さらに精製水450gと塩酸1.82モルの混合液中にアミノグアニジン重炭酸塩0.659モルを徐々に添加し、溶解させた中に、亜硝酸カリウム0.679モルを精製水100g中に溶解した水溶液を添加した後、中間体(2)の化合物0.600モルを添加して、加熱撹拌後、濾取することで中間体(3)を得ることができた。さらに、化合物(3) 1モルに対して、カップラー成分としてアセトアセトアニリドC1b 1モルとカップリング反応を行うことで、実施例19に示されるC1を得た。化合物の同定としてはマススペクトル(ブルカーダルトニクス社製、AutoflexII)により同定した(表3、表4、表7)。
中間体(2)
Figure 2012195243
中間体(3)
Figure 2012195243
<実施例20から実施例23>
実施例19において用いた原料C1aをC2a〜C5aにC1bをC2b〜C5bに変更したこと以外は実施例19と同じ方法で電池用誘導体C1からC5を得た。化合物の同定としてはマススペクトル(ブルカーダルトニクス社製、AutoflexII)により同定した(表3、表4、表7)。
<実施例24>
実施例19において用いた原料C1aをC6aに、C1bをC6bに変更したこと以外は実施例19と同じ方法で電池用誘導体C6の造塩前の化合物を得た。この化合物1モルを水1Lに混合した後、水酸化カリウム1モルを添加した後70度で加熱撹拌を行った後、濾過水洗を行うことで。実施例25で示される電池用誘導体C6を得た。化合物の同定としてはマススペクトル(ブルカーダルトニクス社製、AutoflexII)により同定した(表3、表4、表7)。
<実施例25>
実施例19において用いた原料C1aをC7aに、C1bをC7bに変更したこと以外は実施例24と同じ方法で電池用誘導体C7の造塩前の化合物を得た。この化合物1モルを水1Lに混合した後、ドデシルアミン1モルを添加した後70度で加熱撹拌を行った後、濾過水洗を行うことで。実施例25で示される電池用誘導体C7を得た(化○、表3)。
<実施例26及び実施例27>
実施例25において用いた原料C7aをC8aからC9aに、C7bをC8bからC9bに、ドデシルアミンをオクチルアミンからドデシルアミンに変更したこと以外は実施例25と同じ方法で電池用誘導体C8、C9を得た(表3、表4、表7)。
Figure 2012195243
本発明で一般式(1)で表される電池用分散剤の具体例としては、表5で示した。また一般式(3)で表される電池用分散剤の具体例としては、表6及び表7で示した。また、今回の電池用分散剤の比較例として、表8で表される分散剤を用いた。
Figure 2012195243
Figure 2012195243
Figure 2012195243
Figure 2012195243
Figure 2012195243
Figure 2012195243
Figure 2012195243
<電池用組成物の調整>
電池用分散剤、導電助剤、溶剤を含む電池用組成物の調整
<比較例1及び比較例4>
本発明の比較例としては、特許文献9の表2記載の分散剤記号F、表3記載の分散剤記号L、表4記載の分散剤記号M、Nをそれぞれ、電池用分散剤D1、D2、D3、D4として、本明細書の表8にまとめて記載した。
Figure 2012195243
[実施例28〜54]
電池用分散剤A1〜A8、B1〜B9、C1〜C9をそれぞれ0.5部、溶剤としてN−メチル−2−ピロリドン89.5部をガラス瓶に各仕込み、攪拌混合して分散剤を完全ないしは一部溶解させた。次に、導電助剤としてアセチレンブラック(デンカブラックHS−100、一次粒径48nm、比表面積48m2/g、電気化学工業社製)10部を加え、さらにメディアとしてジルコニアビーズを添加した後に、ペイントシェイカーで分散した。得られた分散液を磁石つきの攪拌翼でよく攪拌した後、更に20μmのフィルターを通すことにより電池用組成物Ba1〜Ba27を得た(表8)。
[比較例6〜10]
電池用分散剤D1〜D4をそれぞれ0.5部、溶剤としてN−メチル−2−ピロリドン89.5部をガラス瓶に各仕込み、攪拌混合して分散剤を完全ないしは一部溶解させた。次に、導電助剤としてアセチレンブラック(デンカブラックHS−100、一次粒径48nm、比表面積48m2/g、電気化学工業社製)10部を加え、さらにメディアとしてジルコニアビーズを添加した後に、ペイントシェイカーで分散した。得られた分散液を磁石つきの攪拌翼でよく攪拌した後、更に20μmのフィルターを通すことにより電池用組成物Ba28〜Ba31を得た(表8)。
[比較例11]
溶剤としてN−メチル−2−ピロリドン89.5部をガラス瓶に各仕込み、攪拌混合して分散剤を完全ないしは一部溶解させた。次に、導電助剤となるアセチレンブラック(デンカブラックHS−100、一次粒径48nm、比表面積48m2/g、電気化学工業社製)10.5部を加え、さらにメディアとしてジルコニアビーズを添加した後に、ペイントシェイカーで分散した。得られた分散液を磁石つきの攪拌翼でよく攪拌した後、更に20μmのフィルターを通すことにより電池用組成物Ba32を得た(表8)。
<CV測定用作用極の作製>
先に調整した電池用組成物Ba1−Ba32を、集電体となる厚さ20μmのアルミ箔上にドクターブレードを用いて塗布した後、減圧加熱乾燥、圧延処理して、厚さ10μmの正極合材層を作製した。
<電気化学耐性評価用塗膜の作製>
電気化学耐性評価を行う為にサイクリック・ボルタメトリー(CV)の測定を三極式ビーカーセルにて行った。金属リチウム箔(厚さ0.15mm)を対極として9mmに打ち抜き作用極として、金属リチウム箔(厚さ0.15mm)を対極として、作用極及び対極の間に多孔質ポリプロピレンフィルムからなるセパレーター(セルガード社製、#2400)を挿入積層し、電解液(エチレンカーボネートとジエチレンカーボネートを1:1に混合した混合溶媒にLiPF6を1Mの濃度で溶解させた非水電解液)を満たして二極密閉式金属セル(宝仙社製 HSフラットセル)を作成した。セルの作成はアルゴンガス置換したグローブボックス内で行い、セルを組み立てた後、所定の電池特性評価を行った。
CV評価としては、HOKUTO HSV-110を用いて、OCVよりプラス側に走査して、2.0−4.5Vの間を10サイクル行った。走査速度としては1mV/秒で行った。なおここで示した酸化電圧はブランク測定に対して、ピークが確認されるもっとも低電位側の電圧を示している(ピークの裾野の左端を示している)。ピークが検出されない場合は○と記した。評価後のセルを分解し、電極塗膜の外観を目視にて確認した。
Figure 2012195243
表9から分かるように、実施例28〜実施例54では、比較例6から比較例10に比べて、分散体の粘度低減効果、及びCV評価により酸化耐性の向上、密着性の向上効果が見られた。
<電池用組成物の調整>
電池用分散剤、導電助剤(炭素材料)、溶剤、バインダーを含む電池用組成物の調整
[実施例55−81]
電池用分散剤A1−A9、B1−B9、C1−C9をそれぞれ0.5部、溶剤としてN−メチル−2−ピロリドン80.5部をガラス瓶に各仕込み、攪拌混合して分散剤を完全ないしは一部溶解させた。次に、導電助剤となるアセチレンブラック(デンカブラックHS−100、一次粒径48nm、比表面積48m2/g、電気化学工業社製)10部を加え、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(KFポリマー、クレハ社製)9部を加え、さらにメディアとしてジルコニアビーズを添加した後に、ペイントシェイカーで分散した。得られた分散液を磁石つきの攪拌翼でよく攪拌した後、更に20μmのフィルターを通すことにより電池用組成物Bb1−Bb27を得た(表10)。
[比較例11−14]
電池用分散剤D1−D4をそれぞれ0.5部、溶剤としてN−メチル−2−ピロリドン80.5部をガラス瓶に各仕込み、攪拌混合して分散剤を完全ないしは一部溶解させた。次に、導電助剤となるアセチレンブラック(デンカブラックHS−100、一次粒径48nm、比表面積48m2/g、電気化学工業社製)10部を加え、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(KFポリマー、クレハ社製)9部を加え、さらにメディアとしてジルコニアビーズを添加した後に、ペイントシェイカーで分散した。得られた分散液を磁石つきの攪拌翼でよく攪拌した後、更に20μmのフィルターを通すことにより電池用組成物Bb28−Bb31を得た(表10)。
[比較例15]
溶剤としてN−メチル−2−ピロリドン80.5部をガラス瓶に各仕込み、攪拌混合して分散剤を完全ないしは一部溶解させた。次に、導電助剤となるアセチレンブラック(デンカブラックHS−100、一次粒径48nm、比表面積48m2/g、電気化学工業社製)10.5部を加え、、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(KFポリマー、クレハ社製)9部を加え、さらにメディアとしてジルコニアビーズを添加した後に、ペイントシェイカーで分散した。得られた分散液を磁石つきの攪拌翼でよく攪拌した後、更に20μmのフィルターを通すことにより電池用組成物Bb32を得た(表10)。
<CV測定用作用極の作製>
先に調整した正極合材ペーストBb1−Bb32を、集電体となる厚さ20μmのアルミ箔上にドクターブレードを用いて塗布した後、減圧加熱乾燥、圧延処理して、厚さ10μmの正極合材層を作製した。
<電気化学耐性評価用塗膜の作製>
電気化学耐性評価を行う為にサイクリック・ボルタメトリー(CV)の測定を三極式ビーカーセルにて行った。金属リチウム箔(厚さ0.15mm)を対極として9mmに打ち抜き作用極として、金属リチウム箔(厚さ0.15mm)を対極として、作用極及び対極の間に多孔質ポリプロピレンフィルムからなるセパレーター(セルガード社製、#2400)を挿入積層し、電解液(エチレンカーボネートとジエチレンカーボネートを1:1に混合した混合溶媒にLiPF6を1Mの濃度で溶解させた非水電解液)を満たして二極密閉式金属セル(宝仙社製 HSフラットセル)を組み立てた。セルの組み立てはアルゴンガス置換したグローブボックス内で行い、セルを組み立てた後、所定の電池特性評価を行った。
CV評価としては、HOKUTO HSV-110を用いて、OCVよりプラス側に走査して、2.0−4.5Vの間を10サイクル行った。走査速度としては1mV/秒で行った。なおここで示した酸化電圧はブランク測定に対して、ピークが確認されるもっとも低電位側の電圧を示している(ピークの裾野の左端を示している)。ピークが検出されない場合は○と記した。評価後のセルを分解し、電極塗膜の外観を目視にて確認した。
Figure 2012195243
表10から分かるように、実施例55〜実施例81では、比較例11から比較例15に比べて、分散体の粘度低減効果、及びCV評価により酸化耐性の向上、密着性の向上効果が見られた。
<電池用組成物の調整>
電池用分散剤、導電助剤である炭素材料を溶剤に分散してなる分散体に、バインダー成分と正極活物質を混合してなる電池用組成物の調整
[実施例82−108]
正極活物質としてはコバルト酸リチウムLiCoO2(HLC−22、平均粒径6.6μm、比表面積0.62m2/g、本荘ケミカル社製)90部、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(KFポリマー、クレハ社製)4.75部、溶剤としてN−メチル−2−ピロリドン66部をプラネタリーミキサーにより混練した後に、先に調整した、電池用組成物Bb1からBb27を50部(カーボン量として5部)加え、さらに混練し、電池用組成物Bc1からBc27とした。
[比較例16−19]
正極活物質としてはコバルト酸リチウムLiCoO2(HLC−22、平均粒径6.6μm、比表面積0.62m2/g、本荘ケミカル社製)90部、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(KFポリマー、クレハ社製)4.75部、溶剤としてN−メチル−2−ピロリドン66部をプラネタリーミキサーにより混練した後に、先に調整した、電池用組成物Bb28からBb31を50部(カーボン量として5部)加え、さらに混練し、電池用組成物Bc1からBc31とした。
[比較例20]
正極活物質としてはコバルト酸リチウムLiCoO2(HLC−22、平均粒径6.6μm、比表面積0.62m2/g、本荘ケミカル社製)90部、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(KFポリマー、クレハ社製)4.75部、溶剤としてN−メチル−2−ピロリドン66部をプラネタリーミキサーにより混練した後に、先に調整した、電池用組成物Bb32を50部(カーボン量として5部)加え、さらに混練し、電池用組成物Bc32とした。
<リチウム二次電池用正極の作製>
先に調整した正極合材ペーストBc1−Bc32を、集電体となる厚さ20μmのアルミ箔上にドクターブレードを用いて塗布した後、減圧加熱乾燥、圧延処理して、厚さ100μmの正極合材層を作製した。
<リチウム二次電池正極評価用セルの組み立て>
[実施例82−108]
先に作製した正極を、直径9mmに打ち抜き作用極として、金属リチウム箔(厚さ0.15mm)を対極として、作用極及び対極の間に多孔質ポリプロピレンフィルムからなるセパレーター(セルガード社製、#2400)を挿入積層し、電解液(エチレンカーボネートとジエチレンカーボネートを1:1に混合した混合溶媒にLiPF6を1Mの濃度で溶解させた非水電解液)を満たして二極密閉式金属セル(宝仙社製 HSフラットセル)を組み立てた。セルの組み立てはアルゴンガス置換したグローブボックス内で行い、セルを組み立てた後、所定の電池特性評価を行った(表11)。
[比較例16−20]
先に作製した正極を、直径9mmに打ち抜き作用極として、金属リチウム箔(厚さ0.15mm)を対極として、作用極及び対極の間に多孔質ポリプロピレンフィルムからなるセパレーター(セルガード社製、#2400)を挿入積層し、電解液(エチレンカーボネートとジエチレンカーボネートを1:1に混合した混合溶媒にLiPF6を1Mの濃度で溶解させた非水電解液)を満たして二極密閉式金属セル(宝仙社製 HSフラットセル)を組み立てた。セルの組み立てはアルゴンガス置換したグローブボックス内で行い、セルを組み立てた後、所定の電池特性評価を行った(表11)。
<リチウム二次電池正極特性評価>
[充放電サイクル特性 実施例82−108]
作製した電池評価用セルを室温(25℃)で、充電レート0.2C、1.0Cの定電流定電圧充電(上限電圧4.2V)で満充電とし、充電時と同じレートの定電流で放電下限電圧3.0Vまで放電を行う充放電を1サイクル(充放電間隔休止時間30分)とし、このサイクルを合計20サイクル行い、充放電サイクル特性評価(評価装置:北斗電工社製SM−8)を行った。また、評価後のセルを分解し、電極塗膜の外観を目視にて確認した。評価結果を表11に示した。
[充放電サイクル特性 比較例16−20]
作製した電池評価用セルを室温(25℃)で、充電レート0.2C、1.0Cの定電流定電圧充電(上限電圧4.2V)で満充電とし、充電時と同じレートの定電流で放電下限電圧3.0Vまで放電を行う充放電を1サイクル(充放電間隔休止時間30分)とし、このサイクルを合計20サイクル行い、充放電サイクル特性評価(評価装置:北斗電工社製SM−8)を行った。また、評価後のセルを分解し、電極塗膜の外観を目視にて確認した。評価結果を表11に示した。
Figure 2012195243
表11から分かるように、実施例82〜実施例108では、比較例16から比較例20に比べて、分散体の粘度低減効果、及びCV評価により酸化耐性の向上、密着性の向上効果が見られた。また、比較例に比して、20サイクル容量維持率及び20サイクル後の膜の外観が向上した。
































































Claims (9)

  1. 下記一般式(1)または一般式(3)で示される電池用分散剤。
    一般式(1)
    Figure 2012195243
    (式中、X1、X2、およびX3は、それぞれ独立に、−SO31、−COOY2、−P(O)(OY3、もしくは−OY4を有してもよいアリール基、一般式(2)で表される基または水素原子を表す。
    1、Y2、Y3、およびY4は、それぞれ独立に、水素イオン、金属イオン、またはアンモニウムイオンを表す。
    但し、X1、X2、およびX3が同時に水素原子になることはない。

    一般式(2)
    −N(X4)X5
    (式中、X4、およびX5は、それぞれ独立に、−SO35、−COOY6、−P(O)(OY7、もしくは−OY8を有してもよいアルキル基を表す。
    5、Y6、Y7、Y8は、それぞれ独立に水素イオン、金属イオン、またはアンモニウムイオンを表す。)

    一般式(3)
    Figure 2012195243
    (式中、X7、およびX8は、それぞれ独立に、−SO39、−COOY10、−P(O)(OY11、もしくは−OY12を有してもよいアリール基または水素原子を表す。
    9、Y10、Y11、およびY12は、それぞれ独立に、水素イオン、金属イオン、またはアンモニウムイオンを表す。
    6は、−SO313、−COOY14、−P(O)(OY15、もしくは−OY16を有してもよいアリール基、または一般式(4)で表される基を表す。
    13、Y14、Y15、およびY16は、それぞれ独立に、水素イオン、金属イオン、またはアンモニウムイオンを表す。)

    一般式(4)
    −CH(COCH3)CONHX9
    (式中、X9は、アルキル基、アルコキシル基、ハロゲン原子、−SO317、−COOY18、−P(O)(OY19もしくは−OY20を有してもよいアリール基を表す。
    17、Y18、Y19、およびY20は、それぞれ独立に、水素イオン、またはアンモニウムイオンを表す。)
  2. 一般式(1)の、X2、およびX3が、水素原子であってかつ、
    1が、一般式(2)で表される基であり、一般式(2)の、X4、およびX5が、それぞれ独立に、−SO35、−COOY6、もしくは−OY8を有してもよいアルキル基である請求項1記載の電池用分散剤。
  3. 一般式(2)の、X4、およびX5が、それぞれ独立に、−SO35、−COOY6、もしくは−OY8を有してもよいメチル基、エチル基もしくはプロピル基である請求項1または2記載の電池用分散剤。
  4. 一般式(3)の、X7、およびX8が水素原子であってかつ、
    6が、一般式(4)で表される基であり、一般式(4)の、X9が、アルキル基、アルコキシル基、−SO317、−COOY18、もしくは−OY20を有してもよいアリール基である請求項1〜3いずれか記載の電池用分散剤。
  5. 一般式(4)の、X9が、−SO317、−COOY18、もしくは−OY20を有してもよいアリール基である請求項1〜4いずれか記載の電池用分散剤。
  6. 請求項1〜5いずれか記載の電池用分散剤、溶剤、および導電助剤を含有する電池用組成物。
  7. さらにバインダー樹脂および、または正極活物質を含むことを特徴とする請求項6記載の電池用組成物。
  8. 請求項1〜5いずれか記載の電池用分散剤と、導電助剤である炭素材料とを溶剤に分散してなる分散体に、バインダー樹脂および、または正極活物質を混合する電池用組成物の製造方法。
  9. 集電体上に正極合材層を有する正極と、集電体上に負極合材層を有する負極と、リチウムを含む電解質とを具備するリチウム二次電池であって、前記正極合材層が、請求項6または7記載の電池用組成物を含有することを特徴とするリチウム二次電池。
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