JP2012193187A - アルコールの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 油脂を原料として触媒存在下、水素化反応によりアルコールを製造する方法であって、グリセリンを高収率で回収することができる、経済性に極めて優れた方法の提供。
【解決手段】 触媒存在下、油脂の水素化反応を行いアルコールを製造する方法であって、有機溶媒を共存させて、有機溶媒が亜臨界流体または超臨界流体となる条件で反応を行う、脂肪族アルコール及びグリセリンの製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】 触媒存在下、油脂の水素化反応を行いアルコールを製造する方法であって、有機溶媒を共存させて、有機溶媒が亜臨界流体または超臨界流体となる条件で反応を行う、脂肪族アルコール及びグリセリンの製造方法。
【選択図】 なし
Description
本発明は、油脂の水素化反応によるアルコールの製造方法であって、高収率でグリセリンを回収することのできるアルコールの製造方法に関する。
従来、脂肪族アルコールの工業的製造には、低級モノアルコール、好ましくはメタノールにより油脂をエステル交換して得られた低級アルコールの脂肪酸エステルを接触水素化して脂肪族アルコールを製造する方法が使用されている。あるいは加水分解した脂肪酸と脂肪族アルコールをエステル化して得られたWAXエステルを接触水素化する方法も使用されている。これらの2段階プロセスは、価値あるグリセリンが高収率かつ高純度で得られるため経済性に優れている。
一方、油脂の直接接触水素化は、工業的に重要な製品である脂肪族アルコールを、天然産の脂肪及び油から直接得ることができるが、工業的製造にはそれほど使用されていない。この油脂の直接水素化では最初に生成したグリセリンが、触媒表面上で水素化される副反応が起こり、高収率でグリセリンを得ることができず、2段階プロセスに経済的に競合できないためである。これが、工業的規模で油脂を直接水素化する方法が採用されていない一つの理由である。
油脂を直接水素化して、脂肪族アルコールを得る方法は、例えば特許文献1、2及び3に記載されている。特許文献4には、脂肪及び油から得られる油脂の水素化方法が記載されている。特許文献5及び6にも油脂を直接水素化する方法が記載され、これらの方法では、比較的穏やかな反応条件下で銅系触媒を使用することにより、油脂の脂肪族アルコールへの直接水素化を行っている。
米国特許第2094127号明細書
米国特許第2109844号明細書
米国特許第2241417号明細書
独国特許出願公開第1668219号明細書
米国特許第5364986号明細書
米国特許第5475160号明細書
特許文献1、2及び3に記載されている方法は、反応温度200〜400℃、水素圧力100〜300barで実施され、脂肪族アルコールが得られるが、所望の反応生成物であるグリセリンは少量しか得られず、代わりに多量のプロパン、プロパノール又はプロピレングリコールが得られる。特許文献4には、必要なグリセリンの代わりにプロピレングリコール、プロパノール又はプロパンが生成する副反応を制御できない問題が記載されている。特許文献5及び6に記載されている方法は、1,2−プロパンジオールが高収率で生成し、グリセリンの製造を目的としていない。
本発明の課題は、油脂を原料として触媒存在下、水素化反応によりアルコールを製造する方法であって、グリセリンを高収率で回収することができる、経済性に極めて優れた方法を提供することにある。
本発明は、触媒存在下、油脂の水素化反応を行いアルコールを製造する方法であって、有機溶媒を共存させて反応を行う、脂肪族アルコール及びグリセリンの製造方法を提供する。
本発明のアルコールの製造方法は、グリセリンの分解を抑制し、高収率でグリセリンを回収することができるため、経済性に優れ工業的に非常に有利である。
本発明の方法においては、油脂の水素化反応を有機溶媒を共存させて行うが、有機溶媒の種類については特に限定されるものではなく、メタン、エタン、プロパン、イソブタン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素;エテン、プロペン、ブテン、ペンテン等の不飽和炭化水素;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、デカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール等の直鎖アルコール類;イソプロパノール等の分岐鎖アルコール類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル等のエーテル類;アセトン等のケトン類;二酸化炭素等が挙げられ、これらの2種以上を混合した混合溶媒を用いても良い。また有機溶媒や混合溶媒は水を含んでいてもよい。これらの有機溶媒の中では、炭素数1〜6のアルコールが好ましく、反応後、回収分離が容易なメタノールが特に好ましい。
本発明の方法では、有機溶媒を共存させるにあたり、触媒を除く反応系が均一相を形成しない反応条件下で行うことが好ましい。均一相を形成しない反応条件は、温度、圧力、有機溶媒の量等で設定することができる。また、均一相を形成しない条件選定については、市販の相平衡計算ソフトを用いて計算することもできる。市販ソフトの例としてはPE2000(Technishe Universitat Hamburg-Harburg)やProde Properties(PRODE社)やAspen Plus(aspentech社)などが利用できる。また、実験的には耐圧容器を使った相平衡測定を行い確認することができる。
本発明の方法に用いる有機溶媒は、超臨界流体又は亜臨界流体であってもよい。ここで、超臨界流体とは有機溶媒の分圧が臨界圧力以上かつ反応温度が臨界温度以上の状態にある有機溶媒を示す。また、亜臨界流体とは有機溶媒の分圧が臨界圧力以上あるいは反応温度が臨界温度以上の状態にある有機溶媒である。
共存させる有機溶媒の量は、原料油脂に対し、有機溶媒/油脂(モル比)で、グリセリン選択性向上の観点から、1以上が好ましく、3以上が更に好ましく、6以上が特に好ましい。またエネルギー消費の観点から、500以下が好ましく、300以下が更に好ましく、200以下が特に好ましい。また、後述するように原料油脂が脂肪酸等の油脂以外のものを含有する場合、油脂のモル数と油脂以外の化合物のモル数の総和を油脂のモル数とし、これに対する有機溶媒のモル数が、上記範囲であることが好ましい。
有機溶媒を共存させる方法は特に限定されるものではなく、気体及び液体のどちらの状態で有機溶媒を供給してもよい。例えば、予め原料油脂と有機溶媒を混合させて反応器に供給する方法、反応器の手前で原料油脂と有機溶媒を混合して供給する方法、反応途中で有機溶媒を添加する方法等が挙げられる。必要によりこれらを組み合わせた方法でも良い。
本発明において、水素化反応の圧力は1〜50MPaが好ましく、2〜30MPaがさらに好ましい。また、温度は120〜300℃が好ましく、150〜280℃が更に好ましい。
本発明の製造に用いられる反応器としては接触水素化反応が可能なものがあれば特に限定されるものでなく、通常用いられる公知のものでよい。例えば、触媒を流体に分散させて接触水素化反応を行う懸濁床反応器、触媒層全体が重力で徐々に落下する間に流体を供給することで接触水素化反応を行う移動床反応器、触媒を充填固定化し流体を供給することで接触水素化反応を行う固定床反応器、触媒層温度を等温にできる多管式固定床反応器、あるいは反応槽に触媒、原料油脂及び有機溶媒を仕込み、水素化を行うバッチ式反応器等が挙げられる。
本発明の原料として用いられる油脂は特に限定されるものではないが、主としてグリセリドからなり、このグリセリドのモル数を油脂のモル数とする。油脂はトリグリセリドの他にジグリセリド、モノグリセリド、脂肪酸等を含んでいてもよく、大豆油、菜種油、椰子油、パーム油、パーム核油等の植物油、牛油、魚油等の動物油及び合成物の油脂を使用できる。油脂は単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。油脂は脱酸・脱硫処理等の前処理を行ったものあるいは前処理を行わないものどちらを使用してもよい。脱酸していない油脂を使用する場合、グリセリドと脂肪酸のモル数の総和が油脂のモル数となる。
本発明に用いられる触媒は公知のアルコール製造に用いられる水素化触媒あるいは水素化分解触媒でよく、特に限定されるものではない。例えば、Co/Mo、Co/Zr等のCo系触媒、Cu/Cr、Cu/Zn等のCu系触媒、その他にRe系、Ru系、Rh系及び白金等の貴金属系触媒を使用することができる。これらの触媒のなかでは、Cu系触媒が好ましい。
触媒の形態については特に限定されるものではなく、反応器の形式によって、粉末、顆粒、錠剤、ヌードル、薄膜状等の形態から適宜選択すればよい。触媒前駆体を使用する場合、触媒は還元性物質で還元することにより得られる。ここで使用する還元性物質とは水素、一酸化炭素、アンモニア、ヒドラジン、ホルムアルデヒドあるいはメタノール等であるが、単独あるいは混合した状態で使用してもよく、窒素等の不活性気体の存在下で使用してもよい。触媒前駆体を還元する場合、気相還元法、あるいは流動パラフィン等の炭化水素や、ジオキサン、アルコールあるいはエステル等の有機溶媒中で行う液相還元法のいずれの方法を用いてもよい。
本発明の製造方法により得られるアルコールは、原料油脂を構成する脂肪酸に由来する脂肪族アルコールと、グリセリンであり、脂肪族アルコールとともに、高収率でグリセリンを回収することができる。また、同時に生成する脂肪酸アルキルエステルは既知の方法で容易に水添でき、脂肪族アルコールを製造することが可能である。
実施例及び比較例では、原料油脂として脱酸処理したパーム核油(鹸化価244.8mg−KOH/g、水分0.05重量%、酸価0.17mg−KOH/g)を使用した。
実施例1
内径13mmの反応器に30ccの日揮化学社製Cu/Cr成形触媒(N202D)を充填した固定床反応器を用い、圧力19.8MPa、触媒層温度200℃、原料油脂に対する水素モル比75の条件で接触水素化反応を行った。
内径13mmの反応器に30ccの日揮化学社製Cu/Cr成形触媒(N202D)を充填した固定床反応器を用い、圧力19.8MPa、触媒層温度200℃、原料油脂に対する水素モル比75の条件で接触水素化反応を行った。
原料油脂を12cc/Hr、メタノールを原料油脂1モルに対して75モル倍相当の流量で反応器に供給し、反応器出口の原料油脂の反応率、油相中の脂肪族アルコール、脂肪酸アルキルエステルの含有量及びグリセリン選択性を、それぞれガスクロマトグラフ法で分析した。原料油脂の反応率は、油相中のトリグリセリドの重量%をTGtとし、下記式で定義した。
原料油脂の反応率(%)=100−TGt
また、グリセリン選択性は、ガスクロマトグラフ法にて検出された水相中の全有機物に対するグリセリンの割合(重量%)と定義した。油相中の脂肪族アルコール以外の物質は脂肪酸アルキルエステル、モノグリセリド、ジグリセリドが主であり、水相中のグリセリン以外の物質はプロピレングリコール、n−プロパノール、iso−プロパノールが主であった。
また、グリセリン選択性は、ガスクロマトグラフ法にて検出された水相中の全有機物に対するグリセリンの割合(重量%)と定義した。油相中の脂肪族アルコール以外の物質は脂肪酸アルキルエステル、モノグリセリド、ジグリセリドが主であり、水相中のグリセリン以外の物質はプロピレングリコール、n−プロパノール、iso−プロパノールが主であった。
実施例2
実施例1の方法に従い、原料油脂を12cc/Hr、メタノールを原料油脂1モルに対して60モル倍相当の流量で反応器に供給し、反応器出口の原料油脂の反応率、油相中の脂肪族アルコールの含有量、脂肪酸アルキルエステルの含有量及びグリセリン選択性を実施例1と同様に分析した。
実施例1の方法に従い、原料油脂を12cc/Hr、メタノールを原料油脂1モルに対して60モル倍相当の流量で反応器に供給し、反応器出口の原料油脂の反応率、油相中の脂肪族アルコールの含有量、脂肪酸アルキルエステルの含有量及びグリセリン選択性を実施例1と同様に分析した。
比較例1
内径13mmの反応器に30ccの日揮化学社製Cu/Cr成形触媒(N202D)を充填した固定床反応器を用い、圧力19.8MPa、触媒層温度200℃、原料油脂に対する水素モル比75の条件で接触水素化反応を行った。
内径13mmの反応器に30ccの日揮化学社製Cu/Cr成形触媒(N202D)を充填した固定床反応器を用い、圧力19.8MPa、触媒層温度200℃、原料油脂に対する水素モル比75の条件で接触水素化反応を行った。
原料油脂を12cc/Hrの流量で反応器に供給し、反応器出口のサンプルに水を加え油相と水相に分離し、原料油脂の反応率、油相中の脂肪族アルコールの含有量、脂肪酸アルキルエステルの含有量及びグリセリン選択性を実施例1と同様に分析した。
比較例2
原料油脂200gを容積500mlの回転攪拌式オートクレーブに仕込んだ。反応には日揮化学社製Cu/Cr成形触媒(N202D)15gをバスケットに入れて使用し、230℃に昇温後、全圧24.5MPa、攪拌速度900r/minの条件で0.2時間接触水素化反応を行った。また、触媒は予め水素圧力1MPa、温度200℃、2時間の条件で活性化したものを使用した。
原料油脂200gを容積500mlの回転攪拌式オートクレーブに仕込んだ。反応には日揮化学社製Cu/Cr成形触媒(N202D)15gをバスケットに入れて使用し、230℃に昇温後、全圧24.5MPa、攪拌速度900r/minの条件で0.2時間接触水素化反応を行った。また、触媒は予め水素圧力1MPa、温度200℃、2時間の条件で活性化したものを使用した。
比較例3
比較例2の方法に従い、5時間接触水素化反応を行った。
比較例2の方法に従い、5時間接触水素化反応を行った。
実施例1〜2及び比較例1〜3の結果を表1にまとめて示す。また、実施例1〜2、比較例1〜2について、原料油脂の反応率とグリセリン選択性との関係を図1に、油相中の脂肪族アルコール含有量とグリセリン選択性との関係を図2に示す。
上記の結果から実施例1,2ではこれまで、回収が不可能であったグリセリンが高収率で得られたことがわかる。一方、比較例1〜3では油脂の反応率によらず、グリセリンの選択性は極めて低く、水相中の有機物は大部分がグリセリンの分解物であるプロピレングリコール、n−プロパノール、iso−プロパノールであった。
Claims (7)
- 触媒存在下、油脂の水素化反応を行いアルコールを製造する方法であって、有機溶媒を共存させて、有機溶媒が亜臨界流体または超臨界流体となる条件で反応を行う、脂肪族アルコール及びグリセリンの製造方法。
- 触媒を除く反応系が均一相を形成しない条件で反応を行う、請求項1記載の脂肪族アルコール及びグリセリンの製造方法。
- 有機溶媒の原料油脂に対するモル比(有機溶媒/油脂)が1〜500である請求項1又は2に記載の脂肪族アルコール及びグリセリンの製造方法。
- 有機溶媒が、炭素数1〜6のアルコールである請求項1〜3いずれかに記載の脂肪族アルコール及びグリセリンの製造方法
- 油脂の水素化反応を、温度120〜280℃で行う、請求項1〜4いずれかに記載の脂肪族アルコール及びグリセリンの製造方法。
- 油脂の水素化反応を、圧力1〜30MPaで行う、請求項1〜5いずれかに記載の脂肪族アルコール及びグリセリンの製造方法。
- 反応器出口で水相を分離する工程を含む、請求項1〜6いずれかに記載の脂肪族アルコール及びグリセリンの製造方法。
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Citations (3)
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JPH04364140A (ja) * | 1990-12-27 | 1992-12-16 | Kao Corp | アルコールの製造方法 |
JP2000297053A (ja) * | 1999-04-13 | 2000-10-24 | Asahi Chem Ind Co Ltd | エステル類の水素化によりアルコール類を製造する方法 |
JP2006248899A (ja) * | 2005-03-08 | 2006-09-21 | Kao Corp | アルコールの製造方法 |
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2012
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Title |
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社団法人日本化学会, 化学便覧 基礎編 改正5版, JPN6013051648, 20 February 2004 (2004-02-20), pages 130 - 133, ISSN: 0002657992 * |
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